(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記緊急性は、前記自車両が行った制動行動及び離反行動の状況のいずれか一方又は両方に基づいて決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る運転支援装置を自動四輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明に係る運転支援装置を他のタイプの車両(例えば、自動二輪輪車、自動三輪車等の鞍乗型車両)に適用してもよい。
【0014】
<概要>
ヒヤリハットには、例えば、自車両の運転者が歩行者を見逃して急ブレーキを踏んだような自車両に起因するもの、及び、他車両による自車直前への割込みや極端な幅寄せによって急ブレーキを踏んだり、急ハンドルを切ったりするような他車両に起因するものの両方がある。
【0015】
本件発明者は、他車両に起因する自車両へのヒヤリハットが、その場限りの記憶に留まり、断片的な記憶になり易い傾向が、自車両に起因するものに比べてより強いことに気が付き、これを予防安全対策の向上に寄与すると考えた。
【0016】
そこで、本件発明者は、自車両による他車両に対する回避行動を検知し、継続的に分析及び評価することにより、他車両に起因するヒヤリハットを間接的に評価し、その結果に応じて自車両の運転者に対して案内を行うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の運転支援装置は、自車両による他車両に対する回避行動を検知する回避行動検知手段と、前記回避行動についてその緊急性に基づいた重み付けを加えた評価点を付与する評価点付与手段と、前記回避行動について前記評価点を累積して累積点数を得る評価点累積手段と、前記累積点数が所定の基準点数を超えた場合に前記自車両の運転者に対して案内を行う案内出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0018】
<運転支援装置>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照してより詳細に説明する。まず、本実施の形態に係る運転支援装置100の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る運転支援装置の概略構成図である。なお、運転支援装置100が適用される自車両(自動四輪車とも記す)1において、自動四輪車が通常備えている構成(エンジン、タイヤ等)は備えているものとし、説明は省略する。
【0019】
本実施の形態に係る運転支援装置100(
図1参照)は、処理部の一例であるECU(Electronic Control Unit)101を備えている。ECU101は、例えば、各種処理を実行するプロセッサにより構成される。
【0020】
ECU101は、処理部としてプログラムを実行することにより、自車両1による他車両に対する回避行動を検知する回避行動検知手段102と、回避行動についてその緊急性に基づいた重み付けを加えた評価点を付与する評価点付与手段103と、回避行動について評価点を累積して累積点数を得る評価点累積手段104と、累積点数が所定の基準点数を超えた場合に自車両1の運転者に対して案内を行う案内出力手段105と、を実現可能に構成されている。
【0021】
また、運転支援装置100は、他車両を検知し、距離を測定する車両検知手段の一例として、赤外線レーザレーダ(以下、単にレーザレーダという)111と、超音波センサ112と、を備えている。
【0022】
また、運転支援装置100は、自車両1の回避行動を検知するために、ハンドル回転角センサ113、加速度センサ114、車速センサ115及びブレーキペダルセンサ116を備え、それらの出力がECU101に入力されるように電気的に接続されている。
【0023】
また、ECU101は、ABS(アンチロックブレーキシステム)117を構成する一つのユニットとしてABSが作動したことを把握できるように構成されている。
【0024】
また、ECU101には、記憶手段121、音声出力手段122、通信手段123、表示手段124、ナビゲーション装置125及びGPS受信部126が、相互に信号を送受信、或いは、一方向で信号を送信又は受信が可能なように電気的に接続されている。
【0025】
なお、ナビゲーション装置125は、表示手段124及びGPS受信部126に電気的に接続され、表示手段124を制御すると共に、GPS受信部126からGPS信号が入力されるように構成されている。
【0026】
車両検知手段の一例であるレーザレーダ111としては、一般的に市場で入手可能な赤外線レーザレーダを用いることができる。本実施の形態では、検知可能範囲の実用域が20mの赤外線レーザレーダを用いている。レーザレーダ111に代えて、検知可能範囲の実用域が50mの準ミリ波レーダを用いてもよい。
【0027】
車両検知手段の一例である超音波センサ112としては、一般的に市場で入手可能な超音波センサを用いることができる。本実施の形態では、検知可能範囲の実用域が6mである超音波センサを用いている。
【0028】
本実施の形態では、検知可能範囲が異なるレーザレーダ111及び超音波センサ112を併用しているが、いずれか一方を用いてもよい。
【0029】
ハンドル回転角センサ113、加速度センサ114、車速センサ115、ブレーキペダルセンサ116及びABS117は、周知のものであり、当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0030】
加速度センサ114は、本発明の実現のためには、少なくとも自動四輪車1及び自動二輪車2の横方向(水平方向)の加速度(横G)を検知可能であることが必要である。
【0031】
図2は、本実施の形態に係る運転支援装置100(
図1)を搭載した車両を示す模式図である。
図2Aは、本実施の形態に係る運転支援装置100を搭載した自車両の一例である自動四輪車1を示し、
図2B及び
図2Cは、本実施の形態に係る運転支援装置100を搭載した自車両の一例である自動二輪車2を示す。
【0032】
図2Aに示すように、自動四輪車1において、レーザレーダ111及び超音波センサ112は、例えば、自動四輪車1のフロント部分の、前面側の中央及び左右並びに両側面に取り付けられる。レーザレーダ111及び超音波センサ112の取り付け位置及び数は、検知可能範囲が、自動四輪車1の進行方向を0°とした場合、おおよそ、−90°〜+90°になるように適宜決定することができる。
【0033】
また、例えば、ハンドル回転角センサ113はステアリングシャフト(不図示)に取り付けられる。また、加速度センサ114は、自動四輪車1のエンジンルーム内であって横方向中央付近に取り付けられる。
【0034】
図2B及び
図2Cに示すように、自動二輪車2において、超音波センサ112は、例えば、自動二輪車2のフロントライト近傍、及び、燃料タンクの両側面部に取り付けられる。超音波センサ112の取り付け位置及び数は、検知可能範囲が、自動二輪車2の進行方向を0°とした場合、おおよそ、−90°〜+90°になるように適宜決定することができる。
【0035】
また、例えば、加速度センサ114は、自動二輪車2のボディの、自動二輪車2の前後方向の略中央に取り付ける。また、加速度センサ114は、地面から高い位置の方が、加速度を計測しやすく、後述するようにバンクでの計測結果を基準として離反行動を判定するので好ましい。
【0036】
また、運転支援装置100(
図1)において、記憶手段121は、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。
【0037】
音声出力手段122は、例えば、スピーカ(不図示)から音声合成された案内文を出力するように構成されている。
【0038】
音声出力手段122に代えて、警報音発生手段を備えていてもよい。警報音発生手段は、自車両1の運転者に対して警報を行うものである。警報音発生手段は、例えば、警報音発生器及びスピーカで構成されてもよい。
【0039】
通信手段123の一例は、携帯型情報処理端末(例えば、スマートフォン)と通信を行うための短距離無線通信手段である。通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)及びWi−Fi(登録商標)を利用することができるが特に限定されない。
【0040】
通信手段123の他の例は、インターネットに接続するための移動体無線通信手段である。通信方式としては、例えば、携帯電話通信(3G、4G及びLTEなど)を利用することができるが特に限定されない。
【0041】
表示手段124としては、例えば、後述のナビゲーション装置125が備えたディスプレイを利用してもよいし、インストルメントパネル(不図示)のディスプレイを用いてもよい。
【0042】
表示手段124に代えて、インストルメントパネルが備える警告灯を用いて案内を行ってもよい。
【0043】
ナビゲーション装置125は、例えば、自らの内部に備えた記憶手段に格納された地図データに基づいて自らが備えたディスプレイに地図を表示するように構成されている。
【0044】
GPS受信部126は、GPS衛星からGPS信号を受信し、ECU101及びナビゲーション装置125へ出力するように構成されている。
【0045】
以上、
図1を参照して自動四輪車1に搭載された運転支援装置100について説明した。自車両の他の例である自動二輪車2(
図1参照)に運転支援装置100を搭載することも可能である。自動四輪車1と自動二輪車2との相違は、例えば、方向転換の行動の違いから、自動二輪車2の場合にはハンドル回転角センサ113を設けず、加速度センサ114のみを設ける点である。また、自動二輪車2は、自動四輪車1よりも小回りが利き、制動距離も短いため、検知可能範囲が短い超音波センサ112のみを備えている。しかしながら、自動四輪車1と自動二輪車2とで運転支援装置100が同じ構成であってもよいことは言うまでもない。なお、以下の説明で単に自車両1と説明した場合には、自動四輪車1及び自動二輪車2の両方を意味している。
【0046】
次に、本実施の形態に係る運転支援装置100の制御フローについて説明する。
図3は、本実施の形態に係る運転支援装置100の制御フローを示す図である。
【0047】
まず、回避行動検知手段102(
図1参照)は、自車両1と併走する他車両(併走車両ともいう)が存在するか否か判定する(ST101)。この判定は、例えば、車両検知手段からの信号に基づいて、検知可能範囲内であって自車両1の左右いずれかの側面方向に他車両を検知したならば、ST101においてYESと判定する。
【0048】
本実施の形態では、車両検知手段としてレーザレーダ111及び超音波センサ112を併用しているため、少なくともいずれか一方を用いて、併走車両が存在するか否か判定する。
【0049】
ST101において、判定がNOであれば、ST101を繰り返す。
【0050】
<回避行動検知処理>
ST101において、判定がYESであれば、回避行動検知手段102は、回避行動検知処理を実施する(ST102)。
【0051】
本実施の形態において、回避行動検知手段102が検知する回避行動は、(A)制動行動及び(B)離反行動である。
【0052】
(A)制動行動
制動行動は、運転者がブレーキを作動させて自車両1の進行方向前方にいる他車両からの距離を確保する行動をいう。
【0053】
例えば、回避行動検知手段102が、ブレーキペダルセンサ116の出力信号及びABS117の作動状況に基づいて制動行動を検知することが可能である。
【0054】
併走車両が存在する状態から行われた制動行動は、他車両からの影響によって生じた蓋然性が高い。したがって、他車両に起因するヒヤリハットが発生した可能性が高い。
【0055】
(B)離反行動
離反行動は、他車両との接触を回避するために自車両1が他車両から遠ざかるように自車両1の進行方向を変更、すなわち方向転換する行動をいう。
【0056】
自動四輪車1の場合、運転者が操舵(ハンドリング)して方向転換を行うので、例えば、ハンドル回転角センサ113及び加速度センサ114(
図1参照)の出力に基づいて離反行動を検知することができる。運転者がハンドルを切ったときのハンドルの角速度又は角加速度を用いることができる。また、自車両の方向転換で発生する自動四輪車1に対する横方向(水平方向)の加速度(横G)を加速度センサ114で測定して離反行動の検知に用いることができる。
【0057】
自動二輪車2の場合、方向転換は、運転者が体重移動を行い、自動二輪車2をバンクさせることで行われる。このため、バンク時に生じる自動二輪車2に対する横方向(水平方向)の加速度(横G)を加速度センサ114(
図1参照)で測定して離反行動の検知に用いることができる。
【0058】
併走車両が存在する状態から行われた離反行動は、他車両からの影響によって生じた蓋然性が高い。したがって、他車両に起因するヒヤリハットが発生した可能性が高い。
【0059】
図3に示すように、回避行動検知手段102(
図1参照)は、回避行動検知処理(ST102)の結果に基づいて回避行動があったか否か判定を行う(ST103)。ST103において、判定がNOであれば、ST101に戻る。
【0060】
<車間距離判定>
ST103において、判定がYESであれば、回避行動が行われる前の自車両1(
図1参照)及び他車両の車間距離を判定する(ST104)。本実施の形態では、車両検知手段として、検知可能範囲が長いレーザレーダ111及び検知可能範囲が短い超音波センサ112を併用しているので、検知可能範囲の違いを利用して車間距離を判定する。
【0061】
すなわち、レーザレーダ111及び超音波センサ112の両方が他車両を検知している場合、車間距離は近いと判定する。一方、レーザレーダ111が他車両を検知しているが、超音波センサ112が他車両を検知していない場合、車間距離は遠いと判定する。
【0062】
ここでは、理解がしやすいように「遠い」及び「近い」と車間距離の判定結果を説明しているが、単にレーザレーダ111及び超音波センサ112の検知の有無を車間距離の判定結果としてそのまま利用してもよいことは、当業者であれば容易に理解し、実現可能であろう。
【0063】
<評価点付与処理>
上述のような回避行動検知処理(ST102)及び車間距離判定(ST103)の結果に基づいて、評価点付与手段103が評価点付与処理を行う(ST105)。
【0064】
評価点の付与には、例えば、下記表1に示す自車両の回避行動に評価点を対応付けた評価表Aを用いる。
【0066】
評価表Aの考え方は、次の通りである。まず、他車両の自車両との状況を想定し、その危険度に従ってランク付けを行う。他車両の自車両との状況とは、自車両に対する他車両からの影響であり、ヒヤリハットの要因となり得る。
【0067】
評価表Aに示した自車両との状況及びランクは一例に過ぎず、自車両との状況の数やどのような状況に高いランクを設定するかは任意に行うことができる事項であり、特に限定されるものではない。
【0068】
次に、自車両との状況に対応した自車両の行動とその緊急性を想定する。自車両の行動は、回避行動であり、自車両との状況の危険度に応じて回避行動の種類及びその緊急性が変わると想定される。そこで、回避行動の種類及びその緊急性を決定し、自車両との状況を推定することとする。
【0069】
本実施の形態では、上述の通り、回避行動検知処理(
図3中、ST102)で検知した制動行動及び離反行動について、それらの緊急性を決定することができる。
【0070】
以下、本実施の形態における回避行動の緊急性の決定について説明する。
【0071】
(A)割込み
まず、他車両が自車両1(
図1参照)に対して割込みを行った場合について説明する。割込みの際の他車両の自車両1との状況は、評価表Aのランク1、2、3、5に設定されているように、自車両1の前方に、ある程度距離をおいて割り込んできたときと、自車両1の直前の、至近距離に割り込んできたときとで、危険度が異なり、前者よりも後者の方が、危険度が高いと考えることができる。つまり、割込み直後の自車両1と他車両との車間距離が近いほど危険度が高い。
【0072】
また、他車両が、自車両1から距離をおいて割り込んできたときと、自車両1の近くから割り込んできたときとでは、危険度が異なり、前者よりも後者の方が、危険度が高いと考えることができる。つまり、割込み直前の自車両1と他車両との車間距離が近いほど危険度が高い。
【0073】
評価表Aでは、割込み直前の車間距離及び割込み直後の車間距離の組み合わせに応じて危険度を設定し、ランク付けを行っている。
【0074】
本実施の形態では、実際に他車両の動きをモニタして自車両1との状況を認識し、危険度を決定するのではなく、自車両1の行動、すなわち、回避行動の緊急性に基づいて自車両1との状況を推定している。
【0075】
評価表Aでのランクが低い方から説明すると、ランク5の自車両1の前方に割込みが行われた場合、自車両1の運転者は、他車両との車間距離をとって衝突を回避するため、ブレーキペダルを踏み、制動行動を行うことが想定される。この際の制動行動は、割込み直後の車間距離が比較的確保されているため、急ブレーキではないことが多い。そこで、評価表Aには、自車両との状況「自車両1の前方への割込み」に対応して、自車両の行動として、ブレーキ作動、ただし、減速が基準値以下である場合を設定する。
【0076】
ここで、基準値は、例えば、個々の車両を事前にテストして決め、記憶手段121(
図1参照)に格納しておき、用いることができる。基準値の決定は、以下の説明でも同様である。
【0077】
また、ランク1、2、3の自車両1の近くから前方又は直前に割込みが行われた場合、自車両1の運転者は、急激な制動行動及び急激な離反行動により衝突を回避することが想定される。
図4〜
図7は、他車両が自車両1に対して割込みを行ったときの自車両1の行動を示す模式図である。
図4は、自車両及び他車両の双方が自動二輪車2である場合を示す。他の自動二輪車10が、自動二輪車2の近くから前方又は直前に割り込んできた場合、自動二輪車2の運転手は、他の自動二輪車10との接触を回避するため、車体を急激にバンクさせて方向転換を行うことが想定される。そして、自動二輪車2には、急激な方向転換によって横G(
図4中の矢印で示す)がかかる。そこで、加速度センサ114(
図1参照)からの信号に基づいて、横方向(水平方向)の加速度(横G)が所定の基準値を超えたかどうかで、急激な方向転換が行われたことを推定することができる。
【0078】
図5は、自車両が自動二輪車2であり、他車両が他の自動四輪車11である場合を示すが、回避行動の緊急性の考え方は、
図4に示す場合と同様である。
【0079】
図6は、自車両及び他車両の双方が自動四輪車である場合を示し、
図7は、自車両が自動四輪車1であり、他車両が他の自動二輪車10である場合を示す。自動四輪車1の場合も、回避行動の緊急性の考え方は、
図4を参照して説明した自動二輪車2の場合と基本的に同様であるが、方向転換のための行動の点で相違する。すなわち、
図6に示すように、他の自動四輪車11が、自動四輪車1の近くから前方又は直前に割り込んできた場合、自動四輪車1の運転手は、他の自動二輪車10との接触を回避するため、急激にハンドルをきり、方向転換を行うことが想定される。
【0080】
この場合も、
図4を参照して説明したように、加速度センサ114(
図1参照)からの信号に基づいて、横方向(水平方向)の加速度(横G)が所定の基準値を超えたかどうかで、急激な方向転換が行われたことを推定することができる。
【0081】
自動四輪車1の場合は、ハンドル回転角センサ113(
図1参照)からの信号に基づいて、ハンドルの回転角速度又は回転角加速度が所定の基準値を超えたかどうかで、急激な方向転換が行われたことを推定することもができる。
図7に示す場合も同様である。
【0082】
また、割込みがあったとき、運転者がブレーキを作動させることも考えられ、割り込み直後の自車両1と他車両(他の自動二輪車10及び他の自動四輪車11)との車間距離、すなわち、割込みが前方で行われたか、直前で行われたかによって、制動行動の緊急度、つまり急ブレーキをかけるかどうかが変わってくる。
【0083】
さらに、急ブレーキの程度については、ブレーキ作動による減速が基準値を超えている場合と、ブレーキ作動によりABS117(
図1参照)が作動した場合とで、制動行動の緊急性が異なり、前者よりも後者の方が、緊急性が高いと考えることができる。
【0084】
以上の点を考慮にいれて、評価表Aには、まず、ランク3として、自車両の状況「自車両の近くから前方への割込み」に対応して、急ブレーキ作動(すなわち、ブレーキ作動であり、且つ、減速が基準値を超える場合)、且つ、横方向(水平方向)の加速度(横G)が所定の基準値を超えた場合を設定する。
【0085】
なお、急激な方向転換とは、
図4、
図5を参照して説明した自動二輪車2の場合、横方向の加速度(横G)が所定の基準値を超えたときであり、
図6、
図7を参照して説明した自動四輪車1の場合、ハンドルの回転角速度又は回転角加速度が所定の基準値を超えたときである。
【0086】
また、評価表Aには、ランク1、2として、自車両の状況「自車両の近くから直前に割込み」に対応して、急ブレーキが作動し、ABS117(
図1参照)が作動した場合をランク2に、ABS117の作動に加えて横方向の加速度(横G)が所定の基準値を超えた場合をランク1に、それぞれ設定する。
【0087】
評価表Aのランク1、2、3において、自車両1との状況として、自車両1の近くから割込みがあったかどうかを考慮に入れているが、割込み前にST101(
図3参照)で車両検知手段が検知した他車両(併走車両)が検知できなくなったことに基づいて決定してもよい。
【0088】
図8は、自車両1に対して割込みを行う他車両の動きと車両検知手段による検知可能範囲との関係を示す模式図である。
図8に示すように、自車両である自動四輪車1及び自動二輪車2に対し、他車両である他の自動二輪車10及び自動四輪車11が割込みを行うとき、
図8中の二点鎖線で示すように他の自動二輪車10及び自動四輪車が動くため、自動四輪車1及び自動二輪車2の車両検知手段(レーザレーダ111及び超音波センサ112)の検知可能範囲(
図8中、鎖線で示す)から逸脱し、検知不能になる。このような場合を、他車両が、自車両の近くから割込みを行ったと考えることができる。したがって、評価表Aのランク1、2、3に対応する自車両の行動の判定基準に、回避行動(ブレーキ作動及び方向転換)の直前に車両検知手段が他車両を検知不可能になったことを追加してもよい。
【0089】
さらに、本実施の形態の運転支援装置100(
図1参照)のように、車両検知手段として検知可能範囲が異なるものを併用している場合、さらに自車両1と他車両との車間距離を認識し、自車両1の行動の判定基準として利用することができる。
図9は、自車両1(
図1参照)に対して割込みを行う他車両の動きと車両検知手段による検知可能範囲との関係を示す模式図である。
図9中、自車両1のレーザレーダ111(
図1参照)の検知可能範囲を太い破線で示し、超音波センサ112(
図1参照)の検知可能範囲を細い破線で示す。他の自動二輪車10が超音波センサ112の検知可能範囲内で併走している状態から自車両1に対して割込みを行う場合、以下の3つの検知パターンが考えられる。
【0090】
(a)割込みが終わるまで超音波センサ112が検知可能である場合(
図9中、実線の矢印)
他の自動二輪車10が超音波センサ112の検知可能範囲(実用域6m以内)で急激に方向転換し、割込みを行った場合であり、極めて危険な状態であると考えられる。
【0091】
(b)割込み直前で超音波センサ112が検知不可能になるが、レーザレーダ111が検知可能である場合(
図9中、一点鎖線の矢印)
他の自動二輪車10が、超音波センサ112の検知可能範囲外であるがレーザレーダ111の検知可能範囲(実用域20m以内)で方向転換し、割込みを行った場合であり、危険度がかなり高いと考えられる。
【0092】
(c)割込み直前でレーザレーダ111及び超音波センサ112の両方が検知不可能になる場合(
図9中、二点鎖線の矢印)
他の自動二輪車10が、レーザレーダ111の検知可能範囲外で方向転換し、割込みを行った場合であり、危険度は(a)、(b)に比べれば低いと考えられる。
【0093】
このように、レーザレーダ111及び超音波センサ112を併用すれば、さらに詳細に他車両の動きを評価に反映することが可能になる点で優れている。
【0094】
(B)幅寄せ
次に、他車両が自車両1(
図1参照)に対して幅寄せを行った場合について説明する。本実施の形態では、幅寄せを自車両との状況「自車両の近くに接近」としてランク4に設定している。
【0095】
幅寄せを、自車両の行動、すなわち回避行動で捉えると、併走する他車両(併走車両)が急激に接近してきたため、自車両1(
図1参照)の運転手が、急激にハンドルを切ったり、車体をバンクさせて方向転換を行うと考えられることができる。一方、他車両は自車両1と併走状態のままであるため、自車両1の運転手が急激な制動行動(急ブレーキ)を行うことは想定しにくい。
【0096】
そこで、評価表Aにて、ランク4として、自車両の状況「自車両の近くに接近」に対応して、自車両1の行動として、加速度センサ114(
図1参照)からの信号に基づいて、横方向(水平方向)の加速度(横G)が所定の基準値を超えた場合を設定する。
【0097】
また、この場合に、回避行動(方向転換)が行われる直前に、車両検知手段(レーザレーダ111及び超音波センサ112)が他車両を検知していたか否かによって、他車両の自車両1との状況(他車両からの影響)が、幅寄せなのか、割込みなのか判定することができる。すなわち、割込みであれば、
図7で説明したように他車両(他の自動二輪車10及び自動四輪車11)は、車両検知手段の検知可能範囲外に出て検知不可能になる。これに対して、幅寄せは、車両検知手段の検知可能範囲内で行われる。
【0098】
上述のように、評価点付与手段103は、回避行動検知処理(ST102)の検知結果に基づいて、自車両1の行動、すなわち回避行動の緊急性に基づいて、他車両と自車両1との状況(他車両からの自車両1に対する影響)に基づいて定めたランクを決定することができる。
【0099】
さらに、評価表Aには、ランク1〜5に対応して評価点が設定されている。ここで、評価表Aでは、自車両1(
図1参照)の種類毎、すなわち自動二輪車2及び自動四輪車1(
図2参照)で別々に評価点が設定されている。自車両1の種類毎に評価点を設定しているのは、自車両1の特性、すなわち、大きさ及び俊敏性に応じて設定することが好ましいからである。
【0100】
自動四輪車1の場合、車両検知手段はレーザレーダ111を基本とする。自動四輪車1は、自動二輪車2に比べて大きく、また、俊敏な動きがとり難いため、自車両1と他車両との車間距離が遠くてもヒヤリハットが生じやすい傾向があるので、車間距離を長めに想定することが好ましい。このため、評価表Aでは、自動四輪車1のレーザレーダ111を用いた場合、自動二輪車2の超音波センサ112を用いた場合に比べて、車間距離が長めであるのにもかからず、評価点を同じに設定している。
【0101】
さらに、自動四輪車1の場合、本実施の形態では、レーザレーダ111及び超音波センサ112を併用している。この場合、回避行動を検知する直前に超音波センサ112が他車両を検知不能になったときは、車間距離が短く、自動二輪車2に比べて危険度が高まるので、同じレベルであっても、評価点を高く設定している。
【0102】
評価点付与手段103は、上述のような評価表Aを参照して、回避行動の緊急性に基づいてランクを決定し、当該ランクに対応して設定された評価点を、回避行動に対して付与する評価点として決定する(ST105)。
【0103】
<評価点の累積>
評価点累積手段104(
図1参照)は、ST105において決定した評価点を、前回までの累積点数に加算する(ST106)。累積点数は、例えば、記憶手段121(
図1参照)に記憶されている。
【0104】
評価点の累積は、任意の単位毎に行うことができる。ここで単位としては、例えば、地点、地域、道路等の地理的単位、時間帯、曜日、期間等の時間的単位、及び、例えばエンジンの始動から終了までを一単位とした運転関連単位などが挙げられるが特に限定されない。
【0105】
例えば、地理的単位のうち地点を単位として評価点を累積する場合を例に挙げて説明する。評価点累積手段104は、GPS受信部126から出力された位置情報(座標)に基づいて、ある地点を基準地点とし、基準地点から所定の範囲内で発生した回避行動を対象として、当該回避行動に付与された評価点を累積する。基準地点は、初めて回避行動が検知され、且つ、当該地点から所定の範囲内で回避行動が検知されたことがない地点を設定することができるが、特に限定されない。例えば、交差点、学校等のランドマークを基準地点として設定してもよい。
【0106】
<累積点数の判定>
次いで、案内出力手段105(
図1参照)は、累積点数が基準点数を超えたか否か判定する(ST107)。
【0107】
基準点数は、任意に設定することができるが、ハインリッヒの法則を利用することが好ましい。ハインリッヒの法則とは、1つの重大事故の背景には、29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するという経験則である。この異常がヒヤリハットに相当すると考えると、事故数(重大事故数1+軽微な事故数29=30)÷ヒヤリハットの数(300)=1/10になる。したがって、10回のヒヤリハットを経験した場合、1度の重大な事故又は軽微な事故に遭遇していてもおかしくないと考えることができる。そこで、基準点数を10に設定し、基準点数を超えた場合に案内を行い、運転者に安全運転を喚起することは、予防安全に有効である。
【0108】
ST107において、判定がNOであれば、ST101に戻る。
【0109】
<案内の出力>
ST107において、判定がYESであれば、案内出力手段105は、案内の出力を行う(ST108)。
【0110】
案内の出力には様々な態様が考えられる。例えば、表示手段124(
図1参照)の一例であるディスプレイに記憶手段121に記憶された案内文、アイコン等を表示することである。上述のように、ナビゲーション装置125が備えるディスプレイを使用する場合は、案内出力手段105は、ナビゲーション装置125に案内文等の表示を行うように指示する。また、インストルメントパネルのディスプレイを用いる場合、案内出力手段105は、インストルメントパネルの制御装置(不図示)に案内文等の表示や、警告灯の点灯を行わせる。
【0111】
また、案内出力手段105は、上述のような表示手段124による案内の出力に代えて、又は、同時に、音声出力手段122(
図1参照)に、音声合成された案内文を出力させたり、警報音発生手段(不図示)に警報音を発生させたり、させることができる。
【0112】
また、案内出力手段105は、通信手段123(
図1参照)を制御して、例えば、短距離通信手段又は移動体無線通信手段を用いて、携帯型情報端末と通信して、案内文の表示及び/又は案内文の音声出力或いは警報音の発生を行わせてもよい。移動体無線通信手段を用いるときには、携帯型情報端末との通信は、インターネット上のサーバを介して行う場合と、携帯型情報端末と直接通信する場合と、の両方が含まれる。
【0113】
図3に示すようにST108で案内の出力が終了した後、案内出力手段105(
図1参照)は、運転が終了しているかどうかを例えばエンジン稼働中かどうかに基づいて判定する(ST109)。ST109において、判定がNOであれば、ST101に戻り、判定がYESであれば全体の処理を終了する。
【0114】
案内出力手段105(
図1参照)は、ナビゲーション装置125が備えるディスプレイを使用し、自車両1の走行予定経路を含む地図上に累積点数を表示させてもよい。
図10は、本実施の形態に係る案内支援装置が表示する地図の一例を示す模式図である。
図10に示すように、ナビゲーション装置125は、地
図200をディスプレイに表示する。地
図200は、自宅201から勤務地202までの通勤経路203を含む。案内出力手段105は、ナビゲーション装置125に、自車両1(
図1参照)の、地点を単位とした累積点数を、例えば、丸数字で地
図200上に表示させ、運転者へ、ヒヤリハットが発生し、評価点が付いた地点を明示する。これにより、運転者は、運転開始時にどのような危険がどのような地点で発生する可能性があるかを把握することができ、予防安全をいっそう向上することができる。
【0115】
例えば、地
図200中の地点Aでは、学校204が近くにあり、雨の日などは送迎で無理な車間変更や割込みがあり、ヒヤリハットが発生していたことが一目でわかる。
【0116】
また、地点B1、B2では、Y字交差点であり、車線変更による割込みがあり、ヒヤリハットが発生していたことが一目でわかる。
【0117】
また、地点C1付近の道路では、ほぼ直進路である車線も片側2車線であったが、市街地域205が近づき、1車線に減少する合流地点の近くでの割込みがあり、ヒヤリハットが発生していたことが一目でわかる。地点C2の市街地域内の道路も同様である。
【0118】
このように、地
図200に、ヒヤリハットを経験した地点をプロットすれば、走行時の危険マップが出来上がる。地
図200により、危険度が高い地点を視覚で認識することができるので、運転者は、ヒヤリハットを経験した地点での記憶を甦らせ、再確認することができ、予防安全効果が上がる。
【0119】
さらに、地
図200には、予防安全の向上の観点から、渋滞ポイント等の交通状況を併記することが好ましい。
【0120】
図10に示すように、他の車両、特に自動二輪車での評価結果として、同一地点(例えば、
図10中、地点B1、C1)での累積点数を、例えば四角数字で併記することが好ましい。これにより、自動四輪車及び自動二輪車の双方の運転者の気持ちを互いに理解でき、相手に配慮した安全運転の参考になる。なお、他車両の累積点数は、通信手段123(
図1参照)を用い、例えばインターネット上のサーバを介して取得することができる。
【0121】
以上説明した運転支援装置100における制御フローに示した各処理の順番は一例であり、当業者であれば変更が可能であることは容易に理解できるであろう。
【0122】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ヒヤリハットの他危険を運転者や経路(例えば、通勤経路)に係る交通安全評価に生かすことができる。また、ヒヤリハットの体験を継続的に分析、評価し、交通事故の防止としての予防安全対策に活用できる。
【0123】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0124】
例えば、上記の実施の形態においては、表1に示す評価表Aを参照して説明したように、自動四輪車1(
図1参照)においてレーザレーダ111及び超音波センサ112を併用し、それらの検知可能範囲の違いを利用し、他車両との車間距離に基づいて緊急性を決定し、評価点に重み付けを行っている。これに対して、表2に示す評価表Bのように、レーザレーダ111のみを用い、レーザレーダ111で他車両との車間距離を測定し、例えば2段階(6m以内か、6m超20m以内か)で車間距離を判定し、当該車間距離に基づいて緊急性を決定し、評価点に重み付けを行うことも可能である。なお、ここでの車間距離は、回避行動を検知した直前での自車両1との他車両との車間距離である。
【0126】
また、運転支援装置100(
図1参照)にドライブレコーダ(不図示)を併用することも可能である。この場合、他車両の映像を記録できるので、ヒヤリハットの要因となった他車両を特定でき、状況を詳細に把握したい場合には効果が上がる。