特許第6880755号(P6880755)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880755
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/62 20060101AFI20210524BHJP
   B65D 33/20 20060101ALI20210524BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B65D75/62 A
   B65D33/20
   B65D33/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-3294(P2017-3294)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2018-111519(P2018-111519A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下野 貴裕
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−129687(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0038569(US,A1)
【文献】 特表2016−534053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00−33/38
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層とシーラント層を有する表面積層体及び裏面積層体の、シーラント層同士を対向させ、周縁を熱シールしてなる包装袋であって、
上部に開口予定部を有し、
表裏いずれかの積層体の外側でかつ前記開口予定部を含むかまたは含まない、開口予定部より下部に、再封止用粘着テープが貼着されており、
該再封止用粘着テープは、ヒートシーラブルPET樹脂フィルムを基材層とし、表面に自己粘着層を有し、自己粘着層同士が圧着されることにより、粘着性を発揮するものであり、
かつ、この再封止用粘着テープは、開口予定部の一部分を含む位置に貼着されており、
前記開口予定部に沿って、再封止用粘着テープ側からレーザーによるハーフカット加工が施されていることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記開口予定部は、包装袋の上角隅部を斜めに開口するものであり、前記再封止用粘着テープは水平に貼着されていることを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関し、特に再封止性と開封性に優れた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂フィルム等を貼り合せた積層体を製袋した包装袋は、食品を始めとするさまざまな物品を収納する目的で用いられている。包装袋に充填した内容物を小出しに使用する必要がある場合には、開口部に再封止性を付与した包装袋が用いられることがある。
【0003】
最も一般的な再封止性の包装袋としては、いわゆるチャック付き包装袋が挙げられる。チャック付き包装袋は、開口部の表面側と裏面側のそれぞれ内側に帯状に嵌合する合成樹脂製のファスナーを取り付けたもので一方側の凹部に他方側の凸部が嵌合する構造が一般的である。
【0004】
チャック付き包装袋は、多くの場合、ファスナーが矩形の包装袋の上辺に平行に取り付けられているため、袋の上角隅部を斜めに切り取って内容物を振り出すような使用方法が採れなかった。また粉末状の内容物の場合、使用回数を重ねる間に、ファスナーの凹部に粉末が入り込み、再封止性が低下するという問題もあった。
【0005】
特許文献1に記載された再開封可能包装袋は、上記の問題のうち、開口位置の問題を解決するものであり、包装袋の角隅部に、ファスナーを斜めに取り付けた包装袋である。この包装袋を製造するためには、ファスナーを斜めに取り付ける必要があるが、このような製袋には、非常に特殊な製造設備を必要とするため、容易に製造することが出来ないという問題があった。また先に説明したような、粉末がファスナーに付着するという問題は依然として解決されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5690483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、開口部の位置や形状に対する自由度が高く、しかも開封性及び再封止性に優れた包装袋を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材層とシーラント層を有する表面積層体及び裏面積層体の、シーラント層同士を対向させ、周縁を熱シールしてなる包装袋であって、上部に開口予定部を有し、表裏いずれかの積層体の外側でかつ前記開口予定部を含むかまたは含まない、開口予定部より下部に、再封止用粘着テープが貼着されており、該再封止用粘着テープは、表面に自己粘着層を有し、自己粘着層同士が圧着されることにより、粘着性を発揮するものであることを特徴とする包装袋である。
【0009】
本発明に係る包装袋は、開口予定部の下部の外側に自己粘着層を有する再封止用粘着テープが貼付されているので、粘着テープの中央部で折り返すことにより再封止が可能である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記開口予定部が、包装袋の上角隅部を斜めに開口す
るものであり、前記再封止用粘着テープは、開口予定部の一部分を含む位置に水平に貼着されていることを特徴とする請求項1に記載の包装袋である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記開口予定部に沿って、再封止用粘着テープ側からレーザーによるハーフカット加工が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る包装袋は、開口予定部より下部に、再封止用粘着テープが貼着されており、該再封止用粘着テープは、表面に自己粘着層を有し、自己粘着層同士が圧着されることにより、粘着性を発揮するものであるから、粘着テープの中央部で折り返すことにより、開口部を再封止することができる。
【0013】
再封止用粘着テープは、自己粘着層同士が圧着されることによって初めて粘着性を発揮するものであるため、表裏同じ向きに重ねた袋同士が付着することはない。このため、充填機において、充填作業性を損なうようなことがない。
【0014】
再封止用粘着テープは、包装袋の外側に貼付されているため、内容物によって汚染されにくい。このため、多数回に亘って開封、再封止を繰り返したとしても再封性が劣化しにくいという特徴を持っている。
【0015】
再封止用粘着テープに、ある程度の幅を持たせることにより、開封口の形や大きさに対する許容度が高くなり、開封予定部の設計の幅が広がるという効果をもたらす。
【0016】
従って、請求項2に記載の発明のように、開口予定部が、包装袋の上角隅部を斜めに開口するものであっても、再封止用粘着テープは、開口予定部の一部分を含む位置に水平に貼着されていればよい。この事は、包装袋の製造が従来の一般的な製袋機で可能となる事を意味しており、包装袋の製造が容易になし得るものとなる。
【0017】
さらに、再封止用粘着テープは、レーザーの吸収性が良いため、開封予定部に沿ってレーザーによるハーフカット加工を施す際に、何らの障害となることがないばかりでなく、むしろハーフカット加工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係る包装袋の一実施態様を示した平面説明図である。
図2図2は、図1のA−A´断面を示した断面説明図である。
図3図3は、図1に示した包装袋を開封した状態を示した平面説明図である。
図4図4は、開封した包装袋を再封止した状態を示した平面説明図である。
図5図5は、本発明に係る包装袋を構成する積層体の層構成の一例を示した断面模式図である。
図6図6は、再封止用粘着テープの層構成の一例を示した断面模式図である。
図7図7は、比較例の包装袋の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る包装袋について詳細に説明する。図1は、本発明に係る包装袋の一実施態様を示した平面説明図である。また図2は、図1のA−A´断面を示した断面説明図である。また図3は、図1に示した包装袋を開封した状態を示した平面説明図である。また図4は、開封した包装袋を再封止した状態を示した平面説明図である。また図5は、包装袋を構成する積層体の層構成の一例を示した断面模式図である。また図6は、再封止用粘着テープの層構成の一例を示した断面模式図である。
【0020】
本発明に係る包装袋1は、少なくとも基材層15とシーラント層17を有する表面積層体11及び裏面積層体12の、シーラント層同士を対向させ、周縁を熱シールしてなる包装袋である。図5に示した積層体の例では、基材層15とシーラント層17の間にバリア層16が積層されている。
【0021】
図1〜4に示した例では、表面積層体11と裏面積層体12の間に底テープ13が挿入されて、トップシール部2、サイドシール部3、ボトムシール部4が形成されたスタンディングパウチの構造となっている。
本発明に係る包装袋1は、上部に開口予定部5を有し、表裏いずれかの積層体の外側でかつ開口予定部5を含むかまたは含まない、開口予定部5より下部に、再封止用粘着テープ14が貼着されており、再封止用粘着テープ14は、表面に自己粘着層20を有し、自己粘着層20同士が圧着されることにより、粘着性を発揮するものであることを特徴とする包装袋である。
【0022】
図1、2に示した例では、再封止用粘着テープ14は、表面積層体11の外側に貼着されている。また開口予定部5は、多くの部分が再封止用粘着テープの幅に収まっており、一部は再封止用粘着テープ14よりも上にはみ出している。
【0023】
この包装袋を図3に示したように開口予定部5に沿って開封し、さらに図4に示したように、再封止用粘着テープ14の中心線である折曲位置9で折り曲げると、自己粘着層20同士が圧着されて粘着性を発揮することで、再封止が可能となる。
【0024】
このように再封止用粘着テープ14の位置は、一部あるいは全部が開口予定部5よりも下にあって、再封止用粘着テープを中心線に沿って折り曲げることにより、開口部が封止されるような位置にあればよい。
【0025】
表面積層体11及び裏面積層体12、さらに図1の例では底テープ13の材質については、特に制約はなく、一般的に包装袋として用いられる各種合成樹脂フィルムが用いられる。基材層15としては、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリアミド系樹脂などが一般的に用いられる。
【0026】
バリア層16は、酸素や水蒸気の透過を防いで内容物の保存性を高めるためのものであり、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等にアルミニウム等の金属を蒸着した金属蒸着フィルムや、PETフィルムに酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層、あるいはアルミニウム箔等の金属箔などを用いることができる。
【0027】
シーラント層17としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0028】
図6は、再封止用粘着テープ14の層構成の一例を示した断面模式図である。この例では、基材層18と易接着層19と自己粘着層20がこの順序に積層されている。基材層18の材質は、包装袋本体を構成する積層体の基材層15の材質と、これに対してどのような方法で貼着するかによって、その材質を適宜選択する。
【0029】
例えば包装袋本体を構成する積層体の基材層15の材質がポリエチレンテレフタレート(PET)であり、これに対して再封止用粘着テープ14を熱融着しようとするのであれば、基材層18をヒートシーラブルPETとすることによって、目的が達成される。
【0030】
再封止用粘着テープ14を接着剤によって貼着するのであれば、積層体の基材層15と再封止用粘着テープ14の基材層18との材質の選択の幅は広がる。
【0031】
自己粘着層20としては、天然ゴムラテックスと水溶性接着剤の混合液を塗布、乾燥してなる塗膜などが使用できる。
【0032】
再封止用粘着テープ14を製造する方法としては、基材層18に易接着層19を塗布し、乾燥した後、自己粘着層20を貼り合せて製造することができる。
【0033】
図1、3、4に示した例では、開口予定部5が、包装袋1の上角隅部を斜めに開口するものであり、再封止用粘着テープ14は、開口予定部の一部分を含む位置に水平に貼着されている。
【0034】
このように、再封止用粘着テープ14を水平に貼着する構成とした場合には、包装袋1を製袋機によって製袋する際に、表面積層体11と裏面積層体12と底テープ13をそれぞれ巻き出して製袋する製袋機において再封止用粘着テープ14を同様に巻き出すことにより、連続的に製袋することができる。このことは、包装袋1が、既存の製袋機に最小限の改造を施すだけで製造できることを意味しており、その効果は大きい。
【0035】
開口予定部5には、特に図示しないが、開封開始部に開封のきっかけとなるノッチを設けてもよい。また開口予定部に沿って、刃物やレーザー加工によるハーフカット線を設けることにより、開封が円滑に、また容易に行われるようになる。
【0036】
特にレーザーによるハーフカット加工は、再封止用粘着テープ14によるレーザー光の吸収性が高いため、再封止用粘着テープの側からレーザー光の照射を行うことにより、効率的に行うことができる。
【0037】
実際にレーザー加工によるハーフカットの効果を確認するために、以下の実験を行った。サンプル1として、再封止用粘着テープ/基材層/シーラント層の構成の積層体を作成した。サンプル2として、基材層/シーラント層の構成の積層体を作成した。それぞれ基材層としては、厚さ12μmのPETフィルムを用いた。シーラント層としては、厚さ70μmのLLDPEフィルムを用いた。
【0038】
再封止用粘着テープとしては、基材層/易接着層/自己粘着層の構成からなり、基材層として厚さ12μmのヒートシーラブルPETを用いた。易接着層としては、印刷インキを塗布及び乾燥させたものを、また自己粘着層としては、天然ゴムラテックスと水溶性接着剤の混合液を塗布、乾燥してなる塗膜を用いた。
【0039】
サンプル1とサンプル2の積層体から、フィルムの流れ方向(MD)、幅方向(TD)、45°方向の3方向について、幅50mm、長さ150mmの試験片を切り出し、試験片の長手方向に、中心線に沿って炭酸ガスレーザー加工機を用いてハーフカット線を設けた。レーザーの照射条件は、出力21W、スキャン速度1000mm/秒とした。
【0040】
試験片の中心線に沿って、長さの半分(75mm)に亘ってスリットを形成し、スリットの両側を引っ張り試験機のチャックに固定してトラウザー法に準じて引き裂き強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
この結果から、再封止用粘着テープが存在する方が、無いものに比較して引き裂き性に優れ、開封性が良いことが分かる。以下実施例に基づいて本発明に係る包装袋について、さらに具体的に説明する。
【実施例】
【0043】
基材層として厚さ12μmのPET樹脂フィルムを用い、バリア層として厚さ9μmのアルミニウム箔を用い、シーラント層として厚さ50μmのLLDPEフィルムを用いた。これら3層をドライラミネート法によって貼り合わせて表面積層体、裏面積層体、底テープとした。
【0044】
再封止用粘着テープとしては、基材層として厚さ12μmのヒートシーラブルPET樹脂フィルムを用い、易接着層として印刷インキを塗布及び乾燥させたものを、また自己粘着層としては、天然ゴムラテックスと水溶性接着剤の混合液を塗布、乾燥してなる塗膜を用いた。
【0045】
再封止用粘着テープを作成する方法としては、基材層に易接着層をグラビアコーティングして乾燥させ、自己粘着層をドライラミネートする方法を採用した。
再封止用貼着テープを表面積層体にヒートシールした後、裏面積層体、底テープと共に製袋して図1に示したような包装袋を作成した。
【0046】
<比較例>
比較例として、実施例に用いたと同じ積層体を用いて、図7に示したような包装袋を作成した。開口部には、ファスナー(出光ユニテック社製 LL−210)を取り付けた。
【0047】
実施例と比較例の包装袋にそれぞれ食塩200グラムを充填し、開口部より1回につき約10グラムを振り出した後、再封止を行った。この操作を1セットとし、1〜10セット行って、再封止性を確認した。その結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
比較例のようにチャックを用いた一般的な包装袋では、5セット目にチャックの嵌合部に食塩が目詰まりして再封止性が発揮できなくなるのに対して、本発明に係る包装袋では、10セット繰り返しても再封止性は衰えなかった。
【0050】
また別の実験で、実施例1の包装袋に無洗米100グラムを充填し、再封止した後、逆さにして上下に5回振っても内容物が零れることはなかった。
【符号の説明】
【0051】
1・・・包装袋
2・・・トップシール部
3・・・サイドシール部
4・・・ボトムシール部
5・・・開口予定部
6・・・ハーフカット加工
7・・・チャックテープ
8・・・開口部
9・・・折曲位置
11・・・表面積層体
12・・・裏面積層体
13・・・底テープ
14・・・再封止用粘着テープ
15・・・基材層
16・・・バリア層
17・・・シーラント層
18・・・基材層
19・・・易接着層
20・・・自己粘着層
22・・・比較例の包装袋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7