特許第6880781号(P6880781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880781
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/12 20060101AFI20210524BHJP
   F26B 3/08 20060101ALI20210524BHJP
   F26B 17/10 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F26B21/12
   F26B3/08
   F26B17/10 C
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-14334(P2017-14334)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-123979(P2018-123979A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 玉平
(72)【発明者】
【氏名】大原 宏明
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03288282(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0369194(US,A1)
【文献】 特開昭56−056226(JP,A)
【文献】 特開昭58−217521(JP,A)
【文献】 米国特許第04939850(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 21/12
F26B 3/08
F26B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水固形物の粒子群を収容する収容部と、
第1流速と前記第1流速より大きい第2流速とを所定の周波数で交互に切り換えて前記収容部にガスを供給するパルス流モード、および、第3流速で前記収容部にガスを供給する定常流モードを少なくとも含む複数のモードのうち、いずれかを設定するモード設定部と、
前記モード設定部によって設定されたモードで前記収容部にガスを供給するガス供給部と、
前記収容部内において形成される前記粒子群の流動層が流動化不良状態であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって流動化不良状態であると判定されると、前記モード設定部が設定する前記モードを前記パルス流モードに決定するモード決定部と、
を備える乾燥システム。
【請求項2】
前記パルス流モードには、前記第1流速と前記第2流速とを第1周波数で切り換える第1パルス流モード、および、前記第1流速と前記第2流速とを、前記第1周波数より高い第2周波数で切り換える第2パルス流モードが含まれ、
前記判定部は、前記流動層の流動化不良状態が前記第1流動化不良状態であるか否か、および、前記第1流動化不良状態より深刻ではない第2流動化不良状態であるか否かを判定し、
前記モード決定部は、前記判定部によって前記第1流動化不良状態であると判定されると、前記モード設定部が設定する前記モードを前記第1パルス流モードに決定し、前記判定部によって前記第2流動化不良状態であると判定されると、前記モード設定部が設定する前記モードを前記第2パルス流モードに決定する請求項1に記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記流動層の上部と下部との圧力差、および、前記流動層の上部と下部との温度差のいずれか一方または両方に基づいて、前記流動化不良状態を判定する請求項1または2に記載の乾燥システム。
【請求項4】
前記ガス供給部は、前記収容部の底面、または、前記収容部の底面および側面からガスを供給する請求項1から3のいずれか1項に記載の乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含水固体燃料等の含水固形物を乾燥させる乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は、可採年数が150年程度と、石油の可採年数の3倍以上であり、また、石油と比較して埋蔵地が偏在していないため、長期に亘り安定供給が可能な天然資源として期待されている。石炭は、炭素含有量の低い順に、泥炭、亜炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、半無煙炭、無煙炭に分類され、泥炭、亜炭、褐炭、亜瀝青炭(以下、含水固体燃料と称する)は、瀝青炭、半無煙炭、無煙炭(以下、無煙炭等と称する)と比較して水の含有率(含水率)が高い。
【0003】
含水固体燃料のうち、褐炭は、世界の石炭埋蔵量の半分を占めると言われているため、褐炭の有効利用が検討されている。しかし、上述したように、褐炭等の含水固体燃料は、無煙炭等と比較して含水率が高いため、単位重量あたりの発熱量が低く、輸送コストに対する燃料としてのエネルギー効率が低い。
【0004】
そこで、含水固体燃料を破砕して流動層室に投入し、流動層室において含水固体燃料の粒子の流動層を形成させて乾燥させる技術が開発されている(例えば、特許文献1)。しかし、含水固体燃料は、相対的に脆いため、破砕の過程で粒径を均一化することが難しく、破砕後の粒子の粒径分布の幅が広くなってしまう。このため、破砕した含水固体燃料を流動層室に投入する場合、相対的に大きい粒子に流動化ガスの速度を合わせて流動層を形成させると、相対的に小さい粒子が飛散してしまう。一方、相対的に小さい粒子に流動化ガスの速度を合わせて流動層を形成させると、相対的に大きい粒子が流動化せず、滞留してしまう。
【0005】
そこで、流動層室を2つに分割し、破砕した含水固体燃料(含水固体燃料の粒子)を第1室に投入するとともに、第1室の流動化ガスの速度を第2室より大きくする技術が開発されている(例えば、特許文献2)。特許文献2の技術では、第1室で粗粒子の流動層を形成させて乾燥させるとともに、第1室から第2室へ微細粒子をオーバーフローさせ、第2室で微細粒子の流動層を形成させて乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/021469号
【特許文献2】国際公開第2012/141217号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、含水固体燃料は、水によって粒子同士が架橋(以下、「水架橋」と称する)されているため、上記特許文献2の技術では、第1室において、粗粒子の流動層が形成されるまでに長時間を要してしまう。また、含水率によっては、水架橋のため、複数の粗粒子が凝集して、粒子の流動性が損なわれ、流動化不良が生じる(流動化できなくなる)という課題がある。
【0008】
本開示は、このような課題に鑑み、含水固体燃料等の含水固形物の粒子の流動化不良を解消することが可能な乾燥システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る乾燥システムは、含水固形物の粒子群を収容する収容部と、第1流速と前記第1流速より大きい第2流速とを所定の周波数で交互に切り換えて前記収容部にガスを供給するパルス流モード、および、第3流速で前記収容部にガスを供給する定常流モードを少なくとも含む複数のモードのうち、いずれかを設定するモード設定部と、前記モード設定部によって設定されたモードで前記収容部にガスを供給するガス供給部と、前記収容部内において形成される前記粒子群の流動層が流動化不良状態であるか否かを判定する判定部と、前記判定部によって流動化不良状態であると判定されると、前記モード設定部が設定する前記モードを前記パルス流モードに決定するモード決定部と、を備える。
【0010】
また、前記パルス流モードには、前記第1流速と前記第2流速とを第1周波数で切り換える第1パルス流モード、および、前記第1流速と前記第2流速とを、前記第1周波数より高い第2周波数で切り換える第2パルス流モードが含まれ、前記判定部は、前記流動層の流動化不良状態が前記第1流動化不良状態であるか否か、および、前記第1流動化不良状態より深刻ではない第2流動化不良状態であるか否かを判定し、前記モード決定部は、前記判定部によって前記第1流動化不良状態であると判定されると、前記モード設定部が設定する前記モードを前記第1パルス流モードに決定し、前記判定部によって前記第2流動化不良状態であると判定されると、前記モード設定部が設定する前記モードを前記第2パルス流モードに決定してもよい。
【0011】
また、前記判定部は、前記流動層の上部と下部との圧力差、および、前記流動層の上部と下部との温度差のいずれか一方または両方に基づいて、前記流動化不良状態を判定してもよい。
【0012】
また、前記ガス供給部は、前記収容部の底面、または、前記収容部の底面および側面からガスを供給してもよい。
【発明の効果】
【0013】
含水固体燃料等の含水固形物の粒子の流動化不良を解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自由水および結合水を説明するための図である。
図2】乾燥システムの概略図を示す図である。
図3】圧力差と第1流動化ガスの流速との関係を説明する図である。
図4】開閉弁の開閉タイミング、およびパルス流と定常流とを説明する図である。
図5】周波数を設定する際の気泡および粒子のモデルを示す図である。
図6】周波数と流動化率との関係を説明する図である。
図7】変形例にかかる第1乾燥炉を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
褐炭等の含水固形物は、自由水と結合水とを含んでいる。自由水は、含水固形物の表面、含水固形物内部のマクロな空隙に存在する水であり、バルク水と同じ熱物性を示す。結合水は、含水固形物の毛細管に凝縮した水、含水固形物の表面で多層または単層となっている吸着水、含水固形物の表面の水素に結合した結合水である。結合水は、自由水より蒸発し難い水であるため、結合水を蒸発させるためには、自由水より大きな熱エネルギーを必要とする。
【0017】
図1は、自由水および結合水を説明するための図である。なお、図1中、褐炭に含まれている水の割合(褐炭の含水率)を横軸に示し、褐炭に接触させる水蒸気の温度(℃)を縦軸に示す。図1に示すように、常圧で100℃の水蒸気を褐炭に接触させて加熱した場合、褐炭の含水率が30%程度まで低下する。このように、褐炭に含まれる水のうち、100℃程度で気化する水が自由水である。
【0018】
一方、100℃を上回り200℃未満の水蒸気を褐炭に接触させて加熱した場合、褐炭の含水率が3%程度まで低下する。このように、褐炭に含まれる水のうち、100℃を上回り200℃未満で気化する水が結合水である。
【0019】
つまり、自由水は、結合水よりも、気化に要する熱エネルギー(気化熱、蒸発熱)が小さい。そこで、本実施形態の乾燥システム100では、まず、含水固形物から自由水を気化させて除去し、続いて、自由水が除去された含水固形物から結合水を気化させて除去する。ここで熱エネルギーは、含水固形物に含まれる水を気化させるために必要なエネルギー(kJ/mol)である。
【0020】
(乾燥システム100)
図2は、乾燥システム100の概略図を示す図である。なお、図2中、褐炭の流れを一点鎖線の矢印で、水蒸気および排気ガス等のガスの流れを実線の矢印で、信号の流れを破線の矢印で示す。また、理解を容易にするために、図2中、相対的に大きい粒子を実際より大きい黒丸で示す。本実施形態では、含水固形物として褐炭を乾燥させる場合を例に挙げて説明する。
【0021】
図2に示すように、乾燥システム100は、含水固形物導入部110と、第1乾燥炉210と、制御部310と、第2乾燥炉410と、冷却部510とを含んで構成される。
【0022】
本実施形態の乾燥システム100では、含水固形物導入部110によって第1乾燥炉210に未乾燥の褐炭が導入され、第1乾燥炉210において、褐炭に含まれる自由水を気化させて除去し、第2乾燥炉410において、自由水が除去された褐炭に含まれる結合水を気化させて除去し、冷却部510において、第2乾燥炉410において乾燥された褐炭を冷却する。
【0023】
以下、含水固形物導入部110、第1乾燥炉210、制御部310、第2乾燥炉410、冷却部510の具体的な構成について説明する。
【0024】
(含水固形物導入部110)
含水固形物導入部110は、主連通管112と、破砕部114と、搬送部116と、返送配管118とを含んで構成される。
【0025】
主連通管112は、褐炭の供給源と、第1乾燥炉210を構成する後述の第1収容部212とを連通する配管である。破砕部114は、主連通管112に設けられ、供給源または後述する返送配管118から導かれた褐炭を破砕する。搬送部116は、例えば、スクリューフィーダで構成され、主連通管112における破砕部114の下流側に設けられ(破砕部114と第1収容部212との間)、破砕部114によって破砕された褐炭を第1乾燥炉210に搬送する。
【0026】
返送配管118は、第1収容部212の内部下部(側壁の下部に開口された排出口)と、主連通管112における破砕部114の上流側とを接続する配管である。詳しくは後述するが、搬送部116によって破砕された褐炭が第1収容部212に搬送されると、第1収容部212の内部下部に偏析された褐炭(大粒子)が、返送配管118を通じて破砕部114に押し出されることとなる。
【0027】
(第1乾燥炉210)
第1乾燥炉210は、第1収容部212(収容部)と、第1ガス供給部220(ガス供給部)と、第1伝熱部230と、気液分離部240と、圧力差測定部250とを含んで構成される。第1収容部212は、含水固形物導入部110によって導入された褐炭の粒子群を収容する。
【0028】
第1ガス供給部220は、風箱222と、ブロワ224、226と、開閉弁228とを含んで構成され、第1収容部212の底面から第1流動化ガスを供給する。
【0029】
風箱222は、第1収容部212の下方に設けられ、乾燥システム100を運転する際には、風箱222を通じて第1収容部212の底面から当該第1収容部212内に第1流動化ガスが供給されることとなる。具体的に説明すると、風箱222の上部は、第1収容部212の底面としても機能し、通気可能である分散板222aで形成されている。分散板222aは、例えば、褐炭(褐炭の粒子のうち最小の粒径の粒子)の粒径よりも小さい径の開孔が複数設けられた板や、褐炭の粒径よりも小さい径の開孔が設けられたノズルを設置した板で構成される。
【0030】
ブロワ224は、第1流動化ガス(例えば、水蒸気)を風箱222に送り込む。本実施形態において、ブロワ224は、第1収容部212を通過する第1流動化ガスの流速が、予め定められた第1流速または第3流速となるように第1流動化ガスを風箱222に送り込む。ここで、第1流速は、褐炭の平均粒径の粒子の最小流動化速度以上であり、本実施形態では、褐炭の平均粒径の粒子の最小流動化速度に設定される。第3流速については、後に詳述する。
【0031】
ブロワ226は、第1流動化ガスを風箱222に送り込む。本実施形態において、ブロワ226は、第1収容部212を通過する第1流動化ガスの流速が第2流速になるように、第4流速で第1流動化ガスを風箱222に送り込む。具体的に説明すると、ブロワ226によって第1流動化ガスが風箱222に送り込まれると、ブロワ224による第1流動化ガスと混合された後、第1収容部212に供給される。このため、第2流速は、第1流速と、第1収容部212に導入される褐炭のうち、最も大きい粒子の最小流動化速度とに基づいて設定され、例えば、第1流速と第2流速との平均流速が、最も大きい粒子の最小流動化速度となるように、第2流速が設定される。
【0032】
開閉弁228は、ブロワ226と風箱222との間に設けられる。開閉弁228は、後述するモード設定部316によって開閉制御される。モード設定部316による開閉弁228の制御は、後に詳述する。
【0033】
第1ガス供給部220によって第1収容部212に供給された第1流動化ガスは、第1収容部212内で褐炭を流動させて、流動層を形成するとともに、第1流動化ガスを褐炭と接触させることで褐炭に含まれる自由水の一部を気化させる。なお、第1収容部212に供給される第1流動化ガスは、自由水を効率よく蒸発させる温度(例えば、120℃)に調整される。
【0034】
第1伝熱部230は、例えば、熱媒体が流通する配管で構成され、第1収容部212の内部上部(小粒子の流動層が形成される領域)に配される。第1伝熱部230は、熱媒体の流通過程において、熱媒体が有する熱で褐炭(小粒子)を加熱する。本実施形態において、第1伝熱部230には、熱媒体として、ブロワ232によって、水蒸気が供給される。なお、ブロワ232によって第1伝熱部230に供給される水蒸気(熱媒体)は、褐炭の自由水を効率よく蒸発させる温度(例えば、120℃)および流量に調整される。
【0035】
第1伝熱部230を備える構成により、第1収容部212内において、熱媒体と、第1流動化ガスとの間で熱交換が行われ、上方に移動する第1流動化ガスをさらに加熱することができる。したがって、第1流動化ガスによる褐炭(小粒子)の乾燥(自由水の気化)がより促進されることとなる。
【0036】
また、第1伝熱部230(第1伝熱部230を構成する管の外面)において、熱媒体と第1流動化ガスとで熱交換がなされると、熱媒体の一部が第1伝熱部230内で凝縮することとなる。そこで、気液分離部240を設けておき、気液分離部240によって、第1伝熱部230から送出された熱媒体を気液分離する。こうして、分離された、凝縮した熱媒体(液体の水)は、外部に送出されることとなる。
【0037】
このように、第1乾燥炉210では、第1収容部212に未乾燥の褐炭が導入され、第1ガス供給部220および第1伝熱部230によって褐炭(小粒子)が加熱され、褐炭から自由水が気化されて除去される。一方、褐炭の流れについて説明すると、搬送部116によって、第1収容部212に未乾燥の褐炭が導入されると、導入された褐炭の体積分、流動層の体積が増加する。そうすると、自由水が除去された褐炭(小粒子)が第1収容部212の出口からオーバーフローして(排出されて)、第1収容部212と第2乾燥炉410の第2収容部412とを連通する配管を通じて第2収容部412に導入されるとともに、第1収容部212の内部下部に偏析された褐炭(大粒子)が、返送配管118を通じて破砕部114に押し出されることとなる。
【0038】
つまり、搬送部116は、第1収容部212の内部下部に偏析された大粒子を抜き出す抜出部として機能する。そして、抜き出された大粒子は、破砕部114で破砕されて第1収容部212に再度導入され、乾燥されることとなる。したがって、第1収容部212において流動化してはいるものの、乾燥されない大粒子を抜き出して再度破砕して第1収容部212に導入することにより、大粒子を乾燥することができる。
【0039】
また、第1乾燥炉210において気化された自由水(103℃程度の水蒸気)は、ブロワ224、226によって風箱222に再度送り込まれたり、ブロワ232によって第1伝熱部230に供給されたりすることとなる。
【0040】
圧力差測定部250は、第1収容部212の内部上部(粒子の流動層が形成される領域の上部)と、内部下部(粒子の流動層が形成される領域の下部)との圧力差ΔPを測定する。
【0041】
(制御部310)
制御部310は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。制御部310は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、第1乾燥炉210全体を制御する。本実施形態において、制御部310は、判定部312、モード決定部314、モード設定部316として機能する。
【0042】
判定部312は、圧力差測定部250が測定した圧力差ΔPを取得する。そして、判定部312は、圧力差ΔPに基づいて、第1収容部212内において形成される褐炭の粒子群の流動層が流動化不良を起こしている状態(以下、「流動化不良状態」と称する)であるか否かを判定する。流動化不良状態は、第1収容部212内に収容された全粒子のうち流動層を形成する粒子の割合が所定値未満である場合をいう。
【0043】
図3は、圧力差ΔPと第1流動化ガスの流速との関係を説明する図である。なお、図3中、縦軸に圧力差ΔPを示し、横軸に第1流動化ガスの流速を示す。また、図3中、正常に流動層が形成される場合を実線で示し、流動化不良状態である場合を破線で示す。
【0044】
図3に示すように、正常に流動層が形成される、すなわち、第1収容部212内の粒子すべてが流動化している場合には、流速が上昇するにしたがって、圧力差ΔP(圧力損失)が大きくなる。そして、第1流速以上になると、圧力差ΔPがPAとなり、以降、流速を上昇させても圧力差ΔPは一定(PA)となる。なお、PAは、第1収容部212の層内面積(流動層の水平断面積)と、流動化したすべての粒子とに基づいて決定される。
【0045】
一方、流動化不良状態、すなわち、流動層が全く形成されない(チャネリング)、もしくは、流動層が一部しか形成されない状態では、流速が上昇すると圧力差ΔPが一旦PAより大きくなる。しかし、さらに、流速が上昇すると、圧力差ΔPは低下し、第1流速に到達してもPAを下回ることとなる。これは、流動化不良状態となると、分散板222aから供給された第1流動化ガスが粒子を流動化(浮上)させることなく、そのまま上方にショートカットして流出してしまうためである。
【0046】
そこで、判定部312は、連続運転中に、圧力差ΔPがPA以上であるか否かを判定し、PA以上であると判定すると、流動化不良状態ではないと判定する。一方、判定部312は、圧力差ΔPがPA未満であると判定すると、流動化不良状態であると判定する。
【0047】
なお、本実施形態において、判定部312は、圧力差ΔPがPA未満であり、かつ、PA未満のPB未満である場合に、第1流動化不良状態であると判定する。また、判定部312は、圧力差ΔPがPA未満であり、かつ、PB以上である場合、第2流動化不良状態であると判定する。なお、流動化不良状態が深刻であるほど、つまり、第1収容部212内に収容された全粒子のうち流動層を形成する粒子の割合が低いほど、ショートカットする第1流動化ガスの量が多くなるため、圧力差ΔPは小さくなる。このため、第1流動化不良状態は、第2流動化不良状態より、流動化不良が深刻な状態であると言える。
【0048】
モード決定部314は、モード設定部316が設定するモードを決定する。本実施形態において、モード決定部314は、定常流モード、第1パルス流モード、および、第2パルス流モードの複数のモードのうち、いずれかを決定する。ここで、定常流モードは、第3流速で第1収容部212に第1流動化ガスを供給するモードである。また、第1パルス流モードは、第1流速と第2流速とを第1周波数で交互に切り換えて第1収容部212に第1流動化ガスを供給するモードである。第2パルス流モードは、第1流速と第2流速とを、第1周波数より高い第2周波数で交互に切り換えて第1収容部212に第1流動化ガスを供給するモードである。
【0049】
具体的に説明すると、連続運転中において、基本的には定常流モードで第1流動化ガスが供給されるが、含水固形物導入部110によって供給された褐炭の性状によって、第1流動化不良状態または第2流動化不良状態になり得る。そこで、モード決定部314は、判定部312によって流動化不良状態ではないと判定されると、定常流モードに決定する。また、モード決定部314は、判定部312によって第1流動化不良状態であると判定されると、第1パルス流モードに決定する。さらに、モード決定部314は、判定部312によって第2流動化不良状態であると判定されると、第2パルス流モードに決定する。なお、第1流動化不良状態になった場合には、第2流動化不良状態を経由して、流動化不良状態ではない状態(正常状態)に推移する。
【0050】
モード設定部316は、モード決定部314によって決定されたモードに設定し、第1ガス供給部220は、モード設定部316によって設定されたモードで第1収容部212に第1流動化ガスを供給する。
【0051】
具体的に説明すると、モード設定部316は、定常流モードに設定する場合、第1収容部212を通過する第1流動化ガスの流速が第3流速となるように、ブロワ224が供給する第1流動化ガスの流速を設定する。また、モード設定部316は、開閉弁228を閉状態とする。これにより、第1ガス供給部220は、第3流速で第1流動化ガスを第1収容部212に常時供給することになる。
【0052】
一方、モード設定部316は、第1パルス流モードまたは第2パルス流モードに設定する場合、第1収容部212を通過する第1流動化ガスの流速が第1流速となるように、ブロワ224が供給する第1流動化ガスの流速を設定する。また、モード設定部316は、開閉弁228を、開状態と閉状態とに周期的に交互に切り換える。これにより、ブロワ226から風箱222に送り込まれる第1流動化ガスの流速がゼロ(0)と、第4流速とで周期的に交互に切り換わる。なお、本実施形態において、開閉弁228が開状態となる時間と、閉状態となる時間の比率(デューティー比)は、1:1である。
【0053】
このように、第1パルス流モードまたは第2パルス流モードに設定されると、第1収容部212には、ブロワ224から第1流動化ガスが常時供給されるとともに、ブロワ226から間欠的に第4流速で第1流動化ガスが供給されることとなる。つまり、第1ガス供給部220は、第1流動化ガスの流速を、第1流速と第2流速とで周期的に交互に切り換えて、第1流動化ガス(以下、流速が周期的に交互に切り換わるガスの流れを「パルス流」と称する)を供給することとなる。
【0054】
第1ガス供給部220がパルス流で第1流動化ガスを供給する構成により、定常流モード(第1流動化ガスを定常流で供給する場合)と比較して、褐炭のうち、相対的に粒径が大きい、もしくは、質量が大きい粒子(以下、「大粒子」と称する)の流動層の形成時間を短縮することができる。
【0055】
図4は、開閉弁228の開閉タイミング、および、パルス流と定常流とを説明する図である。なお、図4中、開閉弁228の開閉タイミングを太線で示し、パルス流を実線で示し、定常流を一点鎖線で示す。上記したように、褐炭は、粒子同士が水で架橋されている。定常流モードでは、大粒子の流動化に適した流速(例えば、第2流速)で第1流動化ガスを供給すれば、供給された第1流動化ガスの気泡によって水架橋を切断することができ、大粒子の流動層を形成することができる。しかし、相対的に粒径が小さい、もしくは、質量が小さい粒子(以下、「小粒子」と称する)が飛散してしまうという問題がある。そこで、定常流モードにおいて、第1流動化ガスの流速を、褐炭の平均粒径の粒子の最小流動化速度(第1流速)と第2流速の中間である第3流速に設定し、小粒子の飛散を防止する。このように、定常流モードでは、小粒子の飛散を防止する流速に設定されているため、大粒子の流動性が低くなり、褐炭の含水率によっては、水架橋のため、大粒子が凝集して、大粒子の流動性が損なわれ、流動化できなくなってしまうこともある。
【0056】
一方、図4に示すように、開閉弁228の開閉をパルス状に切り換え、第1流速と第2流速とが周期的に交互に切り換わる、第1パルス流モードまたは第2パルス流モードでは、第2流速で第1流動化ガスが供給されている期間が間欠的となる。つまり、連続的に第2流速で第1流動化ガスが供給されるわけではないので、小粒子の飛散を防止しつつ、大粒子の流動層を効率よく形成することができる。これにより、褐炭(大粒子)の流動性を向上させることができ、褐炭が凝集してしまう事態を回避することが可能となる。したがって、第1収容部212における粒子(褐炭)の流動化不良を解消することが可能となる。
【0057】
また、第1パルス流モードに設定する場合、開閉弁228が第1流動化ガスの流速を切り換える周波数(開閉弁228による第1流動化ガスの切り換え頻度)は、第1周波数に設定される。また、第2パルス流モードに設定する場合、開閉弁228が第1流動化ガスの流速を切り換える周波数は、第1周波数より高い第2周波数に設定される。
【0058】
以下、開閉弁228が流速を切り換える周波数の設定ついて詳述する。
【0059】
(周波数の設定)
図5は、周波数を設定する際の気泡および粒子のモデルを示す図である。図5に示すように、ガスを供給すると、流動層内において気泡が形成される。そして、気泡の周囲に褐炭の粒子が複数配されると仮定して、効率よく流動層を形成できる周波数の範囲を導出した。なお、この周波数の範囲は、例えば、Y. Liu, et al., Pulsation-assisted fluidized bed for the fluidization of easily agglomerated particles with wide size distributions, Powder Technol. (2016)を参照して導出することができる。
【0060】
上記したように、褐炭は、粒子同士が水によって架橋されている。したがって、まず、褐炭の粒子間の水架橋の力Fを導出する。2つの粒子間の水架橋の力Fは、下記式(1)から導出される。
【数1】
…式(1)
ここで、Rは水架橋の長さであり、最大で粒子の半径と同一である。また、rは水の表面張力(例えば、30℃の空気と接触している場合には、0.0712N/m)である。なお、褐炭は、含水率が高いほど水架橋を作りやすく、粒子間の水架橋の力Fが大きくなる。
【0061】
こうして導出された水架橋の力Fを上回る浮力を粒子が受ければ、粒子間の水架橋を切断することができ、効率よく流動層を形成することが可能となる。粒子の浮力Fは、下記式(2)から導出される。
【数2】
…式(2)
ここで、Fは流動層内に形成される気泡(パルス流によって形成される気泡)の浮力であり、nは1の気泡の周囲に配される粒子の粒子数である。
【0062】
気泡の浮力Fは、下記式(3)から導出される。
【数3】
…式(3)
ここで、εmfは平均粒径の粒子の最小流動化速度時の層内空隙率、ρは粒子の質量密度、gは重力加速度、Vは気泡の体積を示す。
【0063】
また、粒子数nは、下記式(4)から導出される。
【数4】
…式(4)
ここで、Dは気泡の直径、dは粒子の直径である。
【0064】
したがって、式(3)、(4)を式(2)に代入すると、粒子の浮力Fは下記式(5)で表すことができる。
【数5】
…式(5)
したがって、下記式(6)の関係となる直径Dの気泡を生成すれば、水架橋を切断できる浮力Fを粒子に与えることができ、効率よく流動層を形成することが可能となる。
【数6】
…式(6)
そこで、下記式(7)、式(8)、式(9)を用いて、上記式(6)の関係となる直径Dの気泡が生成できる周波数Fを導出する。
【数7】
…式(7)
ここで、Umfは平均粒径の粒子の最小流動化速度(第1流速)であり、Uは第2流速の際の流動化ガスの空塔速度であり、hは層高である。
【数8】
…式(8)
ここで、μはガスの動粘度であり、Arはアルキメデス数であり、ρは流動化ガスの質量密度であり、Mは粒子の平均含水率である。
【数9】
…式(9)
ここで、αは流動化ガスの平均総流量に対するパルス流の流量の比であり、Uは流動化ガスの空塔速度であり、Fqは流速を切り換える周波数(開閉弁228の開閉周波数)であり、tは気泡が直径Dに成長するまでの時間であり、βは1周期における開閉弁228の開放割合である。
【0065】
上記式(7)から式(9)に基づいて、周波数を導出すると、高含水率(例えば、25wt%〜30wt%の範囲の所定の値以上)の粒子の水架橋を効率よく切断できる(効率よく流動層を形成できる)周波数Fは、1Hz〜3Hzであり、低含水率(例えば、25wt%〜30wt%の範囲の所定の値未満)の粒子の水架橋を効率よく切断できる周波数Fは、3Hz〜10Hzであることが分かった。
【0066】
図6は、周波数と流動化率との関係を説明する図である。なお、図6中、高含水率の粒子を実線で示し、低含水率の粒子を破線で示し、含水率0%の粒子を一点鎖線で示す。図6に示すように、高含水率の粒子では、2Hzまでは、周波数が大きくなると流動化率が向上し、2Hzで最も流動化率が高くなる。そして、2Hzを超えると周波数が大きくなるに従って流動化率が低下し、3Hzを超えると流動化率が一定となる。なお、高含水率では、3Hzを超えると、定常流でガスを供給した場合と同一の、殆ど流動化しない流動化率となる。
【0067】
低含水率の粒子では、3Hzまでは、周波数が大きくなると流動化率が向上し、3Hzで最も流動化率が高くなる。そして、3Hzを超えると周波数が大きくなるに従って流動化率が低下し、4Hzを超えると流動化率が一定となる。なお、低含水率では、4Hzを超えると、定常流でガスを供給した場合と同一の流動化率となる。
【0068】
一方、含水率0%の粒子では、6Hzまでは、周波数が大きくなると流動化率が向上し、6Hzを超えると流動化率が一定となり、定常流でガスを供給した場合と同一の流動化率となる。
【0069】
つまり、含水率0%の粒子では、水架橋が存在しないため、パルス流よりも定常流の方が流動化率が高い。これに対し、褐炭等の含水固形物は、水架橋が存在するため、定常流よりもパルス流の方が流動化率が高いことが分かる。
【0070】
上記したように、含水率が高いほど水架橋を作りやすく、粒子間の水架橋の力Fが大きくなる。したがって、高含水率の粒子の流動層は、流動化不良状態が深刻である。このため、制御部310は、流動化不良状態が相対的に深刻な第1流動化不良状態の場合に決定される第1パルス流モードでは、第1周波数として、高含水率に適した周波数、例えば、1Hz以上3Hz未満を設定する。一方、制御部310は、流動化不良状態が相対的に深刻ではない第2流動化不良状態の場合に決定される第2パルス流モードでは、第2周波数として、低含水率に適した周波数、例えば、3Hz以上10Hz未満を設定する。かかる構成により、流動化不良状態に応じて、効率よく流動化不良を解消することが可能となる。
【0071】
(第2乾燥炉410)
図2に戻って説明すると、第2乾燥炉410は、第2収容部412と、第2ガス供給部420と、第2伝熱部430と、気液分離部440とを含んで構成される。第2収容部412は、第1乾燥炉210によって自由水が除去された褐炭を収容する。
【0072】
第2ガス供給部420は、第1乾燥炉210を構成する第1ガス供給部220と同様に、風箱422と、風箱422に第2流動化ガスを送り込むブロワ424とを含んで構成され、第2収容部412の底面からガスを供給する。
【0073】
風箱422は、第2収容部412の下方に設けられ、乾燥システム100を運転する際には、風箱422を通じて第2収容部412の底面から当該第2収容部412内に第2流動化ガスが供給されることとなる。具体的に説明すると、風箱422の上部は、第2収容部412の底面としても機能し、通気可能である分散板422aで形成されている。分散板422aは、例えば、褐炭(褐炭の粒子のうち最小の粒径の粒子)の粒径よりも小さい径の開孔が複数設けられた板や、褐炭の粒径よりも小さい径の開孔が設けられたノズルを設置した板で構成される。
【0074】
ブロワ424は、第2流動化ガス(例えば、水蒸気)を風箱422に送り込む。本実施形態において、ブロワ424は、第2収容部412を通過する第2流動化ガスの流速が、予め定められた第5流速となるように第2流動化ガスを風箱222に送り込む。ここで、第5流速は、第2収容部412に導入される褐炭の平均粒径の粒子の最小流動化速度以上である。
【0075】
こうして、第2ガス供給部420によって第2収容部412に供給された第2流動化ガスは、第2収容部412内で褐炭を流動させて、流動層を形成するとともに、第2流動化ガスを褐炭と接触させることで褐炭に含まれる結合水の一部を気化させる。なお、第2収容部412に供給される第2流動化ガスは、結合水を効率よく蒸発させる温度(例えば、115℃)に調整される。
【0076】
第2伝熱部430は、第1乾燥炉210を構成する第1伝熱部230と同様に、例えば、熱媒体が流通する配管で構成され、第2収容部412内に配される。第2伝熱部430は、熱媒体の流通過程において、熱媒体が有する熱で褐炭を加熱する。本実施形態において、第2伝熱部430には、熱媒体として、水蒸気(例えば、200℃)が供給される。
【0077】
第2伝熱部430を備える構成により、第2収容部412内において、熱媒体と、第2流動化ガスとの間で熱交換が行われ、上方に移動する第2流動化ガスをさらに加熱することができる。したがって、第2流動化ガスによる褐炭の乾燥(結合水の気化)がより促進されることとなる。
【0078】
また、第2伝熱部430(第2伝熱部430を構成する管の外面)において、熱媒体と第2流動化ガスとで熱交換がなされると、熱媒体の一部が第2伝熱部430内で凝縮することとなる。そこで、気液分離部440を設けておき、気液分離部440によって、第2伝熱部430から送出された熱媒体を気液分離する。こうして、分離された、凝縮した熱媒体(液体の水)は、外部に送出されることとなる。
【0079】
このように、第2乾燥炉410では、第1乾燥炉210において自由水が除去された褐炭が第2収容部412に導入され、第2ガス供給部420および第2伝熱部430によって褐炭が加熱され、褐炭から結合水が気化されて除去される。一方、褐炭の流れについて説明すると、第1乾燥炉210から第2収容部412に自由水が除去された褐炭が導入されると、導入された褐炭の体積分、流動層の体積が増加する。そうすると、結合水が除去された褐炭(流動層)が第2収容部412の出口からオーバーフローして、第2収容部412と冷却部510の第3収容部512とを連通する配管を通じて第3収容部512に導入されることとなる。また、第2乾燥炉410において気化された結合水(115℃程度の水蒸気)は、ブロワ424によって、風箱422に再度送り込まれたり、ブロワ432によって第2伝熱部430に供給されたりすることとなる。
【0080】
(冷却部510)
冷却部510は、第3収容部512と、冷却ガス供給部520とを含んで構成される。第3収容部512は、第2乾燥炉410によって結合水が除去された褐炭を収容する。冷却ガス供給部520は、第1ガス供給部220、第2ガス供給部420と同様に、風箱522と、風箱522に冷却ガス(例えば、空気)を送り込むブロワ524とを含んで構成される。風箱522は、第3収容部512の下方に設けられ、乾燥システム100を運転する際には、風箱522を通じて第3収容部512の底面から当該第3収容部512内に冷却ガスが供給されることとなる。
【0081】
具体的に説明すると、風箱522の上部は、第3収容部512の底面としても機能し、通気可能である分散板522aで形成されている。分散板522aは、例えば、褐炭の粒径よりも小さい径の開孔が複数設けられた板や、褐炭の粒径よりも小さい径の開孔が設けられたノズルを設置した板で構成される。
【0082】
冷却部510を備える構成により、自由水および結合水が除去された褐炭を冷却(例えば、50℃程度まで)することができる。こうして冷却された褐炭は、後段の褐炭利用設備に送出されることとなる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態にかかる乾燥システム100では、パルス流で第1流動化ガスを供給する構成により、褐炭の粒子の流動性を向上させることができ、流動化不良状態を解消することが可能となる。したがって、第1収容部212において、粒子の流動層を形成させることができ、効率的に褐炭の乾燥を行うことが可能となる。
【0084】
(変形例)
上記実施形態において、第1ガス供給部220は、第1収容部212の底面のみからガスを供給する構成を例に挙げて説明した。しかし、第1ガス供給部は、第1収容部212の底面および側面から第1流動化ガスを供給してもよい。
【0085】
図7は、変形例にかかる第1乾燥炉610を説明する図である。なお、図7中、理解を容易にするために、第1伝熱部230、気液分離部240、圧力差測定部250を省略する。また、上記第1乾燥炉210と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0086】
第1乾燥炉610は、第1収容部212と、第1ガス供給部620(供給部)と、第1伝熱部230と、気液分離部240と、圧力差測定部250とを含んで構成される。
【0087】
図7(a)に示すように、第1ガス供給部620は、風箱222と、ブロワ224と、ノズル622と、ブロワ624と、開閉弁626とを含んで構成される。
【0088】
ノズル622は、図7(b)に示すように、第1収容部212の側面212aに設けられる。具体的に説明すると、ノズル622は、第1収容部212における、粒子の移動方向上流側に配される側面212aに設けられる。換言すれば、ノズル622は、主連通管112に最も近い側面212aに設けられる。また、ノズル622の鉛直方向の位置は、第1収容部212における流動層の上部に対応する位置である。さらに、ノズル622は、先端が、第1収容部212内に突出して設けられる。
【0089】
ブロワ624は、第1収容部212を通過する第1流動化ガスの流速が第2流速になるように、第6流速の第1流動化ガスをノズル622に送り込む。開閉弁626は、ブロワ624とノズル622との間に設けられる。開閉弁626は、上記開閉弁228と同様に、モード設定部316によって開閉制御される。
【0090】
以上説明したように、第1収容部212の底面のみならず、側面212aから第1流動化ガスを供給することによっても、粒子同士の水架橋を切断することが可能となる。これにより、褐炭の粒子の流動性を向上させることができ、流動化不良状態を解消することが可能となる。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に技術的範囲に属するものと了解される。
【0092】
例えば、上記実施形態において、含水固形物として褐炭を例に挙げて説明した。しかし、乾燥システム100は、水を含んで構成されるものであれば、泥炭、亜炭、亜瀝青炭等の含水固体燃料や、他の含水固形物を乾燥させることができる。
【0093】
また、上記実施形態において、第1流速を、平均粒径の褐炭の粒子の最小流動化速度に設定する構成を例に挙げて説明した。しかし、第1流速は、平均粒径の褐炭の粒子の最小流動化速度以上であればよい。
【0094】
また、上記実施形態において、モード決定部314が、定常流モード、第1パルス流モード、第2パルス流モードのうち、いずれか1のモードに決定する構成を例に挙げて説明した。しかし、モード決定部314は、定常流モード、または、パルス流モードのうち、いずれかに決定してもよい。この場合、判定部312が、圧力差ΔPがPA未満である(流動化不良状態である)と判定した場合に、モード決定部314は、パルス流モードに決定する。なお、パルス流モードは、第1流速と第2流速とを所定の周波数(例えば、1Hz以上10Hz未満の所定の周波数)で交互に切り換えて第1収容部212に第1流動化ガスを供給するモードである。
【0095】
また、上記実施形態において、第2乾燥炉410において定常流のみが供給される構成を例に挙げて説明したが、第2乾燥炉でも、定常流およびパルス流が供給されてもよい。
【0096】
また、上記実施形態において、開閉弁228が開状態となる時間と、閉状態となる時間の比率は、1:1である構成を例に挙げて説明した。しかし、開状態となる時間と、閉状態となる時間の比率は、1:1に限らず、適宜設定される。例えば、式(9)におけるαを小さくすると瞬間流速を大きくすることができ、一方、αを大きくすると第1乾燥炉210の運転の状態変化を低く抑えることが可能となる。
【0097】
また、上記実施形態において、判定部312は、圧力差ΔPに基づいて、第1収容部212内において形成される褐炭の粒子群の流動層が流動化不良状態であるか否かを判定する構成を例に挙げて説明した。しかし、判定部は他の情報に基づいて、流動化不良状態か否かを判定してもよい。
【0098】
例えば、第1収容部212の内部上部と、内部下部との温度差ΔTに基づいて、流動化不良状態を判定してもよい。この場合、温度差ΔTを測定する温度差測定部を備え、判定部312は、温度差測定部が測定した温度差ΔTを取得する。そして、判定部312は、温度差ΔTに基づいて、第1収容部212内において形成される褐炭の粒子群の流動層が流動化不良状態であるか否かを判定する。具体的に説明すると、正常に流動層が形成される場合には、第1流動化ガスによって満遍なく粒子が混合されるため、流動層の温度が平均化される。したがって、温度差ΔTは、相対的に小さい。一方、流動化不良状態では、上記したように、第1流動化ガスがショートカットしてしまうため、粒子が混合されず、流動層の上部は、下部と比較して低温となる。したがって、温度差ΔTは相対的に大きくなる。したがって、判定部312は、温度差ΔTが所定の温度閾値以上である場合に、流動化不良状態であると判定する。
【0099】
また、判定部は、圧力差ΔPおよび温度差ΔTの両方に基づいて、流動化不良状態であるか否かを判定してもよい。これにより、高精度に流動化不良状態であるか否かを判定することができる。
【0100】
また、判定部は、第1収容部212内の画像に基づいて、流動化不良状態を判定してもよい。この場合、第1収容部212内に、赤外線、紫外線、X線等を照射して第1収容部212内の画像を取得するとよい。
【0101】
また、上記変形例において、ノズル622が、主連通管112に最も近い側面212aに設けられる構成を例に挙げて説明した。しかし、ノズル622は、側面212a以外の側面に設けられてもよい。
【0102】
また、上記実施形態において、乾燥システム100が2つの乾燥炉(第1乾燥炉210、第2乾燥炉410)を備える場合を例に挙げて説明した。しかし、乾燥システムは、第1乾燥炉210を1つのみ備えるとしてもよい。
【0103】
また、第1乾燥炉210、第2乾燥炉410、冷却部510は、それぞれ1つの収容部で構成されてもよいし、複数の収容部を含んで構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示は、含水固体燃料等の含水固形物を乾燥させる乾燥システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
100 乾燥システム
212 第1収容部(収容部)
220 第1ガス供給部(供給部)
312 判定部
314 モード決定部
316 モード設定部
620 第1ガス供給(供給部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7