(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1から
図15を参照して、本発明に係る電子機器及びこれを含む時計の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
図1は、本実施形態における時計を示す正面図であり、
図2は、
図1におけるII-II線に沿う時計の断面図である。
図1に示すように、本実施形態における時計100は、ケース(以下、実施形態において「時計ケース1」とする。)を備えている。時計ケース1は、例えばステンレスやチタニウム等の金属やセラミック、各種の合成樹脂等で形成されている。なお、時計ケース1を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
本実施形態の時計ケース1は、中空の短柱形状に形成されており、時計100の表面側(時計における視認側)には、透明なガラス等で形成された風防部材11が取り付けられている。
また、時計100の裏面側には、裏蓋12が取り付けられている。
この時計ケース1の
図1における上下両端部、つまりアナログ方式の時計における12時方向側の端部及び6時方向側の端部には、図示しない時計バンドが取り付けられるバンド取付け部13が設けられている。
また、時計100は、時計ケース1の側部等に操作ボタン14を備えている。
操作ボタン14は、その挿入側の端部が時計ケース1内部に収容されているモジュール2(後述)と接続されている。本実施形態において、操作ボタン14は、操作ボタン14を押し込み又は回転させることによって各種操作が可能となるように構成された竜頭等である。
【0012】
時計ケース1内には、モジュール2を含む電子機器と、モジュール2内に設けられたモータ28等により動作し時刻等を表示させる表示部15等が収容されている。
なお、本実施形態では、後述するように、時計100は回転体としての機能車52(
図10等参照)を備えており、電子機器はモジュール2や機能車52等を含んで構成されている。
図1及び
図2に示すように、表示部15は、時計ケース1の内部であって、風防部材11の下側に設けられている。
本実施形態の表示部15は、
図1に示すように、文字板16及びこの文字板16の上方に配置された時針、分針、秒針、各種機能針等の指針17を備えるアナログ方式の表示部である。
文字板16の表面側の周縁部には、指針17(時針、分針、秒針)によって示される時刻の目安となる時字部材161が配置されている。
【0013】
また、本実施形態の時計100は、後述するように、周方向に沿って日付を示す数字等が付された回転体である日車51と、周方向に沿って世界各地の都市名等が付された回転体である機能車52とを備えており(
図9参照)、文字板16の外周部近傍であって、アナログ時計における4時に相当する位置には、日車51に付された日付を視認側に露出させる窓部162と、機能車52に付された都市名等の機能表示を視認側に露出させる窓部163とが設けられている。なお、窓部162,163の配置等は図示例に限定されない。
また、本実施形態では、指針17である時針、分針、秒針によって時刻を表示させる主たる表示部の他に、指針17である機能針を備える小表示部18等が表示部15内に設けられている。
小表示部18では、例えば時針、分針、秒針によって表示される主たる時刻(例えば、時計100を東京で使用する際には東京の現在時刻)とは異なる都市や地域の時刻(例えばニューヨークの現在時刻等)等を表示させることができる。
なお、表示部15の構成等は図示例に限定されず、小表示部18を備えない構成でもよい。また、表示部15は、液晶パネル等を備えるデジタル方式の表示部であってもよいし、指針17を備えるアナログ方式の表示部と液晶パネル等を有するデジタル方式の表示部の両方を含んでいてもよい。
【0014】
モジュール2は、例えば電波を受信するための複数のアンテナ装置(本実施形態では、後述するBLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27、
図4(a)、
図4(b)参照)や指針17を運針させるためのモータ28や輪列機構29(
図4(a)、
図4(b)参照)等で構成される時計ムーブメント、各種電子部品等を実装した基板(上基板22、下基板23、
図3参照)、時計100の各機能部に電力を供給するための電池24(
図3参照)等を含んでいる。
モジュール2からは、指針軸19が文字板16を貫通して文字板16の上に突出している。
なお、本実施形態の指針軸19は、時針、分針、秒針用の指針軸と、機能針用の指針軸等を含んでいる。時針、分針、秒針用の指針軸は、時針用、分針用、秒針用等の複数の回転軸が同一軸上に重ねて配置されたものであり、指針17である時針、分針、秒針は指針軸19の各回転軸にそれぞれ接続されている。
時計ムーブメントの動作によって指針軸19が回転すると、指針軸19に取り付けられた各種指針17が、指針軸19の軸周りに文字板16の上面をそれぞれ個別に回転するようになっている。
なお、指針軸19の数や指針軸19に取り付けられその軸周りに運針される指針17の数等は、図示例に限定されない。本実施形態のように、時針、分針、秒針の他に各種機能に関する表示を行う機能針が指針17として設けられていてもよいし、例えば時針等を支持する指針軸19のみを設けて、当該指針軸19に取り付けられる指針17が1つ設けられていてもよい。
【0015】
図3は、本実施形態におけるモジュールを、時計における非視認側(下側)に配置される側から見た一部分解斜視図である。また、
図4(a)は、モジュールを時計における視認側(上側)に配置される側から見た平面図であり、
図4(b)は、モジュールを時計における非視認側(下側)に配置される側から見た平面図である。
本実施形態におけるモジュール2は、
図3に示すように、ハウジング21と、ハウジング21の下面側(すなわち、時計100における非視認側)に配置される2枚の基板(すなわち、上基板22及び下基板23)等を備えている。
なお、
図4(a)では、表面(視認側)に現れない3つのアンテナ装置(BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27)を図示の都合上破線で表している。また、
図4(b)では、2枚の基板(上基板22及び下基板23)を取り外した状態を示し、図示の都合上、下基板23に配置されているアンテナ装置(BLEアンテナ25及びGPSアンテナ26)を二点鎖線で表している。
【0016】
ハウジング21は、例えば樹脂等で形成されており、地板211の周縁部に側壁部212が設けられたものである。
ハウジング21には、側壁部212の立ち上がり分だけ地板211の上下に空間が確保されており、この空間内に時計ムーブメントや各種の電子部品、基板等が組み付けられる。
本実施形態では、基板が上基板22と下基板23の2枚に分けられて2層構造となっており、この上基板22及び下基板23がハウジング21の地板211の裏面側(下側、時計100における非視認側)に組み付けられている。
具体的には、上基板(第1層目基板)22は視認側に配置され、この上基板22の下側(時計100における非視認側)に下基板(第2層目基板)23が配置され、上基板22と下基板23とはモジュール2の厚み方向に部分的に重畳している。
なお、
図3では、モジュール2を時計100における非視認側(下側)に配置される側から見た状態を図示しているため、視認側を上とした場合とは上下が反転している。
【0017】
下基板23の一部には電池配置部231が形成されている。本実施形態では、アナログ時計における6時側の位置に電池配置部231が設けられている。
電池配置部231は、電池24(本実施形態では
図3に示すようにボタン電池)の外形状に沿って切り欠かれた切欠き部であり、電池配置部231内には、電池24が配置される。
また、下基板23の視認側の面(すなわち、上基板22と対向する面)であって電池配置部231の近傍には、第1のアンテナ装置としてBLEアンテナ25が配置されている。
BLEアンテナ25は、BLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)の規格により比較的近距離での無線通信を行うためのアンテナである。
本実施形態の時計100は、BLEアンテナ25を介して比較的近距離に存在する他の機器との間で信号を送受信し、情報の共有、同期等の処理を行う。
【0018】
さらに、下基板23の視認側の面(上面、上基板22と対向する面)であって電池配置部231及びBLEアンテナ25が配置されている位置とは面方向における逆側の位置(すなわち、アナログ時計における12時側の位置)には、第2のアンテナ装置としてGPS(Global Positioning System)アンテナ26が配置されている。
GPSアンテナ26は、複数のGPS衛星から送信される信号(例えば、C/A(Coarse and Acquisitions)コードやP(Precise)コード等の測位符号、アルマナック情報(概略軌道情報)やエフェメリス情報(詳細軌道情報)等の航法メッセージ等)を受信するものである。GPSアンテナ26は、比較的高周波(例えば、L1帯(1575.42MHz)やL2帯(1227.6MHz))の信号を受信可能であり、例えばパッチアンテナが好適に用いられる。なお、モジュール2のサイズを小さくしてコンパクトな実装を可能とするために、できるだけ小型のアンテナ装置をGPSアンテナ26として採用することが好ましい。
本実施形態の時計100は、GPSアンテナ26によって受信された信号に基づいて、例えば、時計100が存在する地理的な3次元の位置(緯度、経度、高さ)を測定する測位処理を行う。
【0019】
ハウジング21には、下基板23をハウジング21の裏面側(下側、時計100における非視認側)に配置した際にGPSアンテナ26に対応する位置に、GPSアンテナ26が収容されるGPSアンテナ収容部213が形成されている。
また、上基板22には、上基板22をハウジング21に組み付けた際にGPSアンテナ収容部213に対応する位置にGPSアンテナ26の外形状に沿う形状の切欠き部221が形成されている。
GPSアンテナ収容部213は、その深さがGPSアンテナ26の厚み分とほぼ同じ(GPSアンテナ26の厚み分−上基板22の厚み分)となっており、GPSアンテナ26を組み付けた下基板23がハウジング21の裏面側に上基板22と対向して配置された際にはGPSアンテナ26が上基板22の裏面とほぼ面一となるように切欠き部221及びGPSアンテナ収容部213内に収容されるようになっている。
本実施形態では、
図3に示すように、電池24とGPSアンテナ26とを同一平面に並列的に配置し、さらにGPSアンテナ26をハウジング21のGPSアンテナ収容部213内に収容するとともに、電池24を下基板23の切欠き部分である電池配置部231に配置していることで、できる限りハウジング21の裏面側の凹凸箇所をなくし、無駄なスペースを減らしてコンパクトな実装を実現することが可能となっている。
【0020】
ハウジング21の地板211の裏面側(下側、時計100における非視認側)であって、組み立て状態において下基板23に設けられているBLEアンテナ25の全部又は一部と重なり合う位置には、アンテナ保持部214が設けられている。このアンテナ保持部214内には、第3のアンテナ装置として標準電波アンテナ27が配置されている。
標準電波アンテナ27は、標準電波の送信局から送信される原子時計による日付・時刻情報のデジタル信号を受信可能なものであり、例えば磁性材料であるアモルファス金属やフェライト等からなるコアにコイルが巻回されて構成されている。
時計100は、標準電波アンテナ27によって受信された日付・時刻情報のデジタル信号に基づいて時刻修正等を行う。
なお、本実施形態では、上基板22におけるアンテナ保持部214に対応する部分は切り欠かれており、アンテナ保持部214及び標準電波アンテナ27が上基板22の高さよりも一段低い位置に配置されるようになっている。これにより、地板211の裏面側に標準電波アンテナ27を配置することで生ずる凹凸を最小限に止めることができる。
【0021】
BLEアンテナ25を用いて通信を行うBLE通信は2.4GHzの周波数帯を用いた近距離無線通信であり、40kHzや60kHzの周波数である標準電波を受信するアンテナ装置である標準電波アンテナ27とは互いに干渉し合わない。
このため、本実施形態では、複数のアンテナ装置のうち、BLEアンテナ25と標準電波アンテナ27とがモジュール2の厚み方向(すなわち後述する耐磁板の面方向と直交する厚み方向)に重なり合うように、重畳配置されている。なお、BLEアンテナ25と標準電波アンテナ27とは、少なくともその一部が重なり合っていればよく、その全部が重なり合っていなくてもよい。またBLEアンテナ25及び標準電波アンテナ27の具体的な配置は図示例に限定されない。
このようにアンテナ装置同士を重畳配置することにより、小さなスペースに複数のアンテナ装置(本実施形態ではBLEアンテナ25と標準電波アンテナ27)を効率よくコンパクトに実装することが可能となり、実装面積を小さくすることができる。
また、本実施形態では、後述するようにモータ28(
図5等参照)の耐磁性能を向上させるために耐磁板(すなわち、
図4(a)に示す表面側耐磁板31及び
図4(b)に示す裏面側耐磁板32)が配置されているが、アンテナ装置の近傍に耐磁板を配置するとアンテナ装置の受信感度が劣化するとの問題がある。この点、複数のアンテナ装置のうちの少なくとも一部を重畳配置することによりアンテナ装置を小さなスペースにコンパクトに実装することで、アンテナ装置の近傍を避けつつ、より広い範囲に耐磁板を配置することが可能となり、耐磁板を配置可能な範囲が拡大してモータ28の耐磁性能がより向上するとともに、モータ28や耐磁板の配置の自由度が向上する。
【0022】
ハウジング21の地板211の表面側(上側、時計100における視認側)には、複数のモータ28(本実施形態ではモータ28a〜モータ28fの6個。
図5参照)が配置されている。なお、単にモータ28としたときは、6個のモータ28a〜モータ28fを含むものとする。
モータ28は、例えばステータ281と、コア282にコイル283を巻回することで構成されステータ281と磁気的に接続されたコイルブロック284と、ステータ281の受容部内に配置されたロータ285とを備え、ステータ281と磁気的に連結されたコイルブロック284に適宜駆動パルスを印加することによりロータ285が所定のステップ角で回転するステッピングモータである。
本実施形態では、モータ28としてコイルブロック284を1つ備えるものが4つ(
図5において、モータ28b,28c,28e,28f)と、コイルブロック284を2つ備えるものが2つ(
図5において、モータ28a,28d)設けられている。
モータ28は、時計100の各動作部を動作させるものであり、歯車等で構成される輪列機構29とともに、時計ムーブメントを構成している。
各モータ28は、複数のアンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27の3つのアンテナ装置)からできるだけ距離を離して配置されることが好ましい。
なお、
図4(b)等に示すモータ28の数や種類、配置等は一例であり、ここに例示したものに限定されない。
【0023】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、地板231の表裏には、それぞれ耐磁板が配置されている。
具体的には、
図4(a)に示すように、地板231における時計100の視認側(表面側)には、表面側耐磁板31が設けられており、
図4(b)に示すように、地板231における時計100の非視認側(裏面側)には、裏面側耐磁板32が設けられている。
図5は、表面側耐磁板31と各モータ28の位置関係を示す斜視図であり、
図6(a)〜
図6(c)は、
図5の要部拡大図である。また、
図7は、耐磁板が配置されたハウジングの概略断面図であり、
図8は、表面側耐磁板31とモータ28の位置関係を示す要部断面図である。
各耐磁板は、複数のモータ28それぞれの全部又は一部を覆うとともに、複数のアンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27の3つのアンテナ装置)と重なり合う部分には切欠き部315が設けられている。
具体的には、表面側耐磁板31は、地板231における時計100の視認側(表面側)であって、複数のアンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27の3つのアンテナ装置)を避けて、アンテナ装置と重なり合わない位置に配置されている。
また、本実施形態において耐磁板は、
図7に示すように、視認側に配置された表面側耐磁板31と非視認側に配置された裏面側耐磁板32とからなり、表面側耐磁板31と裏面側耐磁板32とによりモータ28を上下(時計100における表裏)から挟み込むように構成されている。
【0024】
耐磁板は、外部からの磁界を歪ませてモータ28に伝えないようにするものであり、磁気的なシールド効果を有する。
各耐磁板(表面側耐磁板31及び裏面側耐磁板32)は、例えばSPCC(Cold-reduced carbon steel sheets and strips 冷間圧延鋼板及び鋼帯)やパーマロイ等により形成されている。
なお、耐磁板は、モータ28に影響を及ぼすような磁界をモータ28に伝えないようにシールドする効果が期待できるものであればよく、耐磁板を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
【0025】
図4(a)及び
図5に示すように、本実施形態において、表面側耐磁板31は、アンテナ装置や輪列機構29にかかる部分が切りかかれた異形状に形成されている。なお、表面側耐磁板31の形状は図示例に限定されない。
また、本実施形態の表面側耐磁板31は、モータ28の視認側の面を覆う耐磁板本体311と、この耐磁板本体311に連設されモータ28の側面を覆う側部被覆部312と、を備えている。
本実施形態では、6つのモータ28a〜28fのうち、モジュール2の外周部近傍に配置された3つのモータ28a,28b,28dについて側面被覆部312により側面を覆っている。なお、側面被覆部312により側面を覆うモータ28は図示例に示したものに限定されない。例えば全てのモータ28に対応して側面被覆部312を設け、その側面を覆うようにしてもよい。
【0026】
図6(a)は、モータ28aとその側面を覆う側面被覆部312を示し、
図6(b)は、モータ28bとその側面を覆う側面被覆部312を示し、
図6(c)は、モータ28dとその側面を覆う側面被覆部312を示した要部斜視図である。
本実施形態において、表面側耐磁板31は、材料となる板を所定の形状に打ち抜き加工した後、折り曲げ加工等を施すことにより、一枚の板状部材で一繋がりに形成されている。具体的には
図6(a)から
図6(c)に示すように、耐磁板本体311にブリッジ部313を介して側部被覆部312が連設されている。
このように、モータ28の視認側の面を覆う耐磁板本体311と、モータ28の側面を覆う側部被覆部312とを一繋がりに形成した場合には、それぞれを別部材として形成してモータ28の周囲に配置した場合と比べて、表面側耐磁板31を、切れ目のない広い面積の耐磁板とすることができ、高い耐磁効果を期待することができる。
【0027】
側部被覆部312はコイルブロック284の側面に沿うように配置されるように、コイルブロック284の両サイドを覆うように屈折した形状とすることが好ましい。
この側部被覆部312の屈折部分の長さは少なくともコア282におけるコイル283の巻線部分の延長方向を覆うような位置まで延在していることが好ましい。
なお、
図6(a)から
図6(c)等に示した側部被覆部312の具体的な形状は一例であり、図示例の形状に限定されるものではない。
【0028】
また、本実施形態の電子機器を含む時計100は、前述のように、日付等を表示させるための日車51及び都市名等の各種機能表示を行うための機能車52を備えている。
日車51及び機能車52は、非金属材料で形成されたドーナツ型の板状の回転ディスクであり、モータ28が駆動することにより、面方向に回転可能に構成されている回転体である。
日車51及び機能車52を形成する非金属材料は、例えばアクリル樹脂やポリカーボネート等の各種合成樹脂である。なお、日車51及び機能車52を形成する非金属材料はここに例示したものに限定されない。
日車51及び機能車52を形成する材料は同じでもよいし、異なってもよい。
また、日車51及び機能車52の厚み、色、大きさ等は特に限定されず、時計100のデザイン等に応じて適宜決定される。
【0029】
図9は、モジュール2のハウジング21に日車51及び機能車52を組み付けた状態を示した斜視図であり、
図10は、機能車52と本実施形態における複数のアンテナ装置(すなわち、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27の3つのアンテナ装置)との位置関係を示す図である。
また、
図11は、
図10におけるXI線に沿う要部断面図であり、
図12は、
図10におけるXII線に沿う要部断面図である。
回転体である日車51及び機能車52は、一部に窓部162,163が形成された装飾板である文字板16の非視認側(すなわち下側)に配置される(
図15参照)。
なお、本実施形態において特徴的構成を有する回転体は機能車52のみであるため、
図10から
図12では、日車51の図示を省略している。
図9に示すように、本実施形態の機能車52は、日車51よりも面方向における外側に、ハウジング21の側壁部212の内側面に沿うように配置されている。
そして、回転体である機能車52は、前述のように、面方向に回転するドーナツ型の板状の回転ディスクであり、どの位置でも常に平面視において前記アンテナ装置の全部又は一部を覆うように配置される。
具体的には、
図10から
図12に示すように、機能車52は、平面視において、GPSアンテナ26の半分程度を覆う(
図10及び
図11参照)他、BLEアンテナ25及び標準電波アンテナ27のほぼ全部を覆う(
図10及び
図12参照)ように配置される。
【0030】
図13は、本実施形態における機能車52の斜視図であり、
図14は、
図13において一点鎖線で囲んだ部分の拡大斜視図である。
また、
図15は、機能車52と文字板16との位置関係を示す要部斜視図である。
図13及び
図14に示すように、機能車52はドーナツ状の本体部521と、この本体部521内周面に形成された鋸歯状の歯車部522を備えている。
機能車52は、歯車部522が輪列機構29の歯車と噛み合っており、この輪列機構29等を介してモータ28と接続されている。そして、モータ28が駆動すると輪列機構29の歯車と噛み合っている歯車部522が回転し、機能車52全体が面方向に回転するようになっている。
【0031】
回転体である機能車52の本体部521の上面(視認側の面)には、金属調の外観を有する金属調部523が設けられている。
本実施形態において金属調部523は、例えば、蒸着やスパッタリングにより形成された金属薄膜である。
金属調部523を形成する材料としては各種の金属を適用可能であり、例えばAu、Cr、Al、Pt、Ni、Pd、Rh等を用いることができる。
なお、金属調部523を設ける手法は金属薄膜を形成可能な手法であれば広く適用可能であり、ここに挙げたものに限定されない。例えばイオンプレーティング等によってもよい。
また、金属成分のアンテナ装置への影響をできるだけ少なくするために、金属調部523は金属調の外観を表現するのに必要な最低限の膜厚があればよい。膜厚をどの程度とするかは金属調部523を形成するのに用いる金属材料の種類や、金属調部523を形成する手法等により適宜設定されるが、例えば500Å〜5000Å程度である。
【0032】
なお、金属薄膜も金属成分であるため、アンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27)の近傍に配置されると、アンテナの受信感度の劣化を引き起こすおそれがある。このため、金属調部523はできるだけ必要最小限の範囲のみに設けることが好ましい。
したがって、外観に影響を与えない部分である本体部521の下面(裏面側、非視認側の面)には金属調部523を設けない。
また、歯車部522に金属蒸着等を行うと歯車同士が噛み合って擦れ合ううちに金属粉が時計ケース1内に落下する等の不具合を生じるおそれがある。また歯車部522は外部に露出しない部分である。このため、歯車部522については上面・下面ともに金属調部523を設けない。
また、金属調部523は、本体部521の上面全体に設けられている必要はなく、
図15に示す装飾板としての文字板16の窓部163から露出する可能性のある部分に設けられていればよい。すなわち、金属調部523は、窓部163の大きさに応じて、窓部163の幅寸法よりも若干広い幅で設けられていればよい。
【0033】
次に、本実施形態における電子機器及び時計100の作用について説明する。
【0034】
時計100を組み立てる際には、ハウジング21の地板211の視認側の面に複数のモータ28及びこれと接続される輪列機構29を組み付け、複数のモータ28それぞれの全部又は一部を覆うとともに複数のアンテナ装置と重なり合う部分に切欠き部が設けられた表面側耐磁板31をモータ28の表面側に被せるように配置する。また、本実施形態では、モータ28a,28b,28dについてはコイルブロック284の側面を覆う側面被覆部312が設けられており、ブリッジ部313を非視認側にほぼ90度折り曲げるとともに、側面被覆部312をそれぞれモータ28a,28b,28dのコイルブロック284の側面形状に沿うように屈曲させてコイルブロック284の側面を側面被覆部312により被覆する。
また、地板211の非視認側の面に、複数のモータ28それぞれの全部又は一部に対応する部分を覆うとともに複数のアンテナ装置と重なり合わないように裏面側耐磁板32を配置する。
【0035】
さらに、地板211の非視認側の面であってアンテナ保持部214内に標準電波アンテナ27を取り付ける。
また、地板211の非視認側の面に、GPSアンテナ収容部213と切欠き部221との位置を合わせて、上基板22を配置する。
また、下基板23上であって、上基板22の非視認側の面と対向する面にBLEアンテナ25及びGPSアンテナ26を取り付ける。なお、このとき、BLEアンテナ25は、組み付け状態において標準電波アンテナ27とほぼ重なり合う位置に配置される。また、GPSアンテナ26は、ハウジング21のGPSアンテナ収容部213及び上基板22の切欠き部221に嵌る位置に取り付けられる。
そして、下基板23を上基板22に重ね合わせ、GPSアンテナ26をGPSアンテナ収容部213内に嵌め込み、さらに下基板23の切欠き部231内に電池24を配置する。これにより、本実施形態のモジュール2が完成する。
さらに、モジュール2の視認側に日車51及び機能車52を配置して、本実施形態の電子機器が完成する。
【0036】
次に、電子機器を時計ケース1内にセットして、裏蓋12により時計ケース1の非視認側の開口部を閉塞し、電子機器の日車51及び機能車52の上に文字板16、指針17等を備える表示部15を配置する。
さらに、時計ケース1の視認側の開口部に風防部材11を取り付けて閉塞する。
これにより本実施形態の時計100が完成する。
【0037】
時計100の内部には、外部から磁界が進入するが、この外部磁界がモータ28に作用すると、モータ28の動作精度に影響を及ぼす。
この点、本実施形態では、モータ28の全部又は一部を覆う耐磁板を、モータ28の上面側(視認側)と下面側(非視認側)とに設けて、上面側に配置される表面側耐磁板31と下面側に配置される裏面側耐磁板32とで挟み込む構成となっている。これにより、外部からの磁界を耐磁板31,32によって歪ませてモータ28に作用しないようにモータ28を磁気的にシールドする。さらに、一部のモータ28(本実施形態ではモータ28a,28b,28dの3つのモータ)については、耐磁板本体311に連設された側部被覆部312によってコイルブロック284の側面も磁気的にシールドする。このため、より高い耐磁効果を得ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、基板を上基板22と下基板23とに分けてそれぞれに電子部品等を分散配置させている。このため、実装効率を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態の時計100は、回転体としての機能車52を備え、文字板16に設けられた窓部163から都市名等の機能表示を行わせることができるようになっている。
この回転体としての機能車52は、アンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27)の全部又は一部を覆う位置に配置され、例えば腕時計のように小さな時計ケース1内に配置される場合には機能車52とアンテナ装置との距離が近くなる。
この点、本実施形態では機能車52を樹脂等の非金属材料で形成しているため、機能車52によるアンテナ装置の受信感度の劣化が生じない。
ただ、機能車52はその上面が窓部163から露出するものであるところ、一見して樹脂製と分かるものでは高級感に欠ける。この点、本実施形態では、機能車52の上面に金属薄膜を形成することで金属調部523を設けている。このため、窓部163から機能車52の上面が露出した際、金属製であるように見せることができる。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、電子機器及びこれを備える時計100が、アンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27)と、面方向に回転可能に構成され、平面視においてアンテナ装置の全部又は一部を覆うように配置される非金属材料で形成された回転体である機能車52とを備えている。
このように、各種の機能表示を行う機能車52を備えているため、都市名等の表示を行うことができ、時計100としての機能が拡大する。
また、この機能車52は、樹脂等の非金属材料で形成されているため、アンテナ装置の近傍に機能車52を設けても、そのことによってアンテナ装置の受信感度に影響を与えない。
さらに、機能車52の視認側(上面)には金属製のような外観を有する金属調部523が設けられている。このため、アンテナ装置の受信感度を良好に保ちつつも、金属製の機能車52を備えるかのような仕上がりとすることができ、デザイン性に優れた高級感のある外観を実現することができる。
特に、回転体は板状の回転ディスクである機能車52であり、一部に窓部163が形成された装飾板である文字板16の非視認側に配置され、その上面が窓部163から露出するため時計100の外観に影響を与える。この点、本実施形態では、機能車52の上面に金属薄膜を形成することで金属調部523を設けている。このため、窓部163から機能車52の上面が露出した際、金属製の機能車52を備えているように見せることができ、デザイン性に優れ、高級感のある仕上がりとすることができる。
また、金属調部523は、窓部163から露出する可能性のある部分のみに設けられ、機能車52の裏面や歯車部522、機能車52の視認側(上面)のうち窓部163から露出する可能性のない幅方向の両端部等には、金属調部523を設けないようにしている。
また、金属調部523は、蒸着又はスパッタリングにより形成された金属薄膜であるため、アンテナ装置への影響を低く抑えることができる。
さらに、金属調部523は金属材料の薄膜で形成されていることから多少アンテナ装置の受信感度に影響を及ぼすおそれがあるところ、このように、金属調部523を必要最小限度の範囲内のみに設けることで、アンテナ装置への影響を最小限とすることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、電子機器及びこれを備える時計100が、アンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27)と、複数のモータ28(本実施形態ではモータ28a〜29f)を備える場合に、複数のモータ28それぞれの全部又は一部を覆うとともに複数のアンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27)と重なり合う部分に切欠き部315が設けられた耐磁板を配置している。
これにより、モータ28が磁気的にシールドされ、モータ28の動作に影響を及ぼす外部磁界がモータ28に到達し難くなる。このため、モータ28の誤作動等を防いで動作精度が向上し、例えば耐磁時計としてJIS規格(日本工業規格)で要求されているような高度な耐磁規格を満たすことが可能となる。
特に本実施形態では、耐磁板は、モータ28の視認側の面又は非視認側の面を覆う耐磁板本体311と、この耐磁板本体311に連設されモータ28の側面を覆う側部被覆部312とを備え、モータ28の側面についても耐磁板によってシールドすることができる。
このため、モータ28に対する外部からの磁界の影響を極力低減させることができ、耐磁性能をより向上させることができる。
また、耐磁板がアンテナ装置の近傍に配置されるとアンテナ装置の受信感度の劣化が生ずるおそれがあるが、本実施形態では、耐磁板は、アンテナ装置を避けるように配置される。このため、耐磁性能は確保しつつも、アンテナ装置(本実施形態では、BLEアンテナ25、GPSアンテナ26、標準電波アンテナ27)の受信感度を良好に保つことができる。
さらに本実施形態では、複数のアンテナ装置の少なくとも一部(本実施形態では、BLEアンテナ25と標準電波アンテナ27)が、耐磁板の面方向と直交する厚み方向に重畳配置されている。このため、アンテナ装置の実装範囲をコンパクトに抑えることでき、機器全体の小型化、省スペース化を実現することができるとともに、耐磁板を配置できない範囲が少なくなり、より広範囲に大きな耐磁板を配置できるスペースが確保できるため、耐磁性能の一層の向上を期待することができる。
また、本実施形態では、耐磁板は、時計100の視認側に配置された表面側耐磁板31と非視認側に配置された裏面側耐磁板32とからなり、表面側耐磁板31と裏面側耐磁板32とによりモータ28を挟み込むように構成されている。
このため、モータ28に対する外部からの磁界の影響を効率よく排除することができ、耐磁性能を一層向上させることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0043】
例えば、本実施形態では、複数のアンテナ装置としてBLEアンテナ25とGPSアンテナ26と標準電波アンテナ27とを備えている場合を例示したが、電子機器及び時計100に設けられるアンテナ装置はこれに限定されない。
また、アンテナ装置として方位センサー等の磁気センサーや各種センサーを備えていてもよい。
また、アンテナ装置は複数あればよく、3つに限定されない。2つでもよいし、4つ以上備えていてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、回転体である機能車52の金属調部523が蒸着等により形成される金属薄膜である場合を例示したが、金属調部523は、金属薄膜に限定されない。
例えば、回転体である機能車52が金型を用いた成形により形成されている場合に、金属調部523は、金属加工であるレコード挽きや旭光等の模様に合せた表面加工を金型に施すことで回転体の視認側に形成されたものであってもよい。
この場合には、回転体である機能車52を樹脂材料のみで形成することができるため、アンテナ装置への影響をなくすことができるとともに、回転体である機能車52の外観を金属製のように見せることができ、高級感のある仕上がりとすることができる。
なお、金型に表面加工を施して回転体の表面に模様を付すとともに、さらに本実施形態で示したような表面処理により金属薄膜を設けてもよい。
このようにすることで、アンテナ装置への影響を抑えつつ、より一層金属のような質感を実現することができる。
【0045】
また、本実施形態では、金属調部523を機能車52のみに設ける場合を例示したが、例えば、日車51についても同様の金属調部を設けてもよい。
また、機能車52や日車51の視認側(上面)のうち窓部163、162から露出させない部分には、金属調部523を設けないようにしてもよい。この場合、アンテナ装置が受信中等の動作中は、機能車52や日車51を回転させて、金属調部523を設けない部分がアンテナ装置と重なるようにすることで、アンテナ装置の受信感度を良好に保ち、アンテナ装置への影響をより一層抑えることができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、回転体がほぼドーナツ状の機能車52である場合を例示したが、回転体は、面方向に回転可能に構成され、平面視においてアンテナ装置の全部又は一部を覆うように配置されるものであればよく、ドーナツ状の部材に限定されない。
回転体は、例えばディスク針のような円盤状の部材であってもよい。
回転体がディスク針のような円盤状のものである場合にも、回転機構がついているため、モータ28の近傍に配置せざるを得ない。そして、時計等の小型の電子機器においては、モータ28の近傍に配置される回転体は、GPSアンテナ等、電子機器内に設けられるアンテナ装置とも近距離に配置されることとなる。
【0047】
また、本実施形態では、電子機器が時計100に適用される場合を例として説明したが、電子機器が時計100に適用される場合に限定されない。例えば、GPSアンテナ等の各種のアンテナ装置やモータを備える機器に広く適用することが可能である。
例えば、歩数計、心拍数計、高度計、気圧計等や、携帯電話機等の端末装置について、本発明の電子機器を適用してもよい。
【0048】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
電波を受信するためのアンテナ装置と、
面方向に回転可能に構成され、平面視において前記アンテナ装置の全部又は一部を常に覆うように配置される非金属材料で形成された回転体と、
を備え、
前記回転体は、視認側に金属調の外観を有する金属調部を備えていることを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記回転体は、板状の回転ディスクであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記回転体は、一部に窓部が形成された装飾板の非視認側に配置され、
前記金属調部は、前記窓部から露出する可能性のある部分に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
<請求項4>
前記金属調部は、蒸着又はスパッタリングにより形成された金属薄膜であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項5>
前記アンテナ装置は、複数設けられており、
前記複数のアンテナ装置の少なくとも一部は、モジュールの厚み方向に重畳配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項6>
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子機器と、
時刻を表示させる表示部と、
前記電子機器及び前記表示部を収容するケースと、
を備えることを特徴とする時計。