特許第6880825号(P6880825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6880825板パネルの外観の定量評価方法、装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880825
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】板パネルの外観の定量評価方法、装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20210524BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   G01N21/88 Z
   G01B21/20 C
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-34697(P2017-34697)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2017-201297(P2017-201297A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2019年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-89311(P2016-89311)
(32)【優先日】2016年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亨
(72)【発明者】
【氏名】米村 繁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】白神 聡
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雅寛
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−292365(JP,A)
【文献】 特開平03−266194(JP,A)
【文献】 特開2011−197925(JP,A)
【文献】 再公表特許第2006/073036(JP,A1)
【文献】 特開2006−329898(JP,A)
【文献】 特開平08−123835(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0369446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板パネルに光源から光を照射して該板パネルの外観品質を定量的に評価する方法であって、
(1)前記板パネルの測定値または計算値に基づいて該板パネルの評価面を複数の要素に仮想的に分割するステップと、
(2)前記複数の要素それぞれの評価面の法線を求めるステップと、
(3)前記複数の要素それぞれの前記法線と、前記光源から照射される光とのなす角度を、前記複数の要素それぞれ毎に求めることにより、前記板パネルのハイライト線を評価するステップと
(4)前記板パネルの設計値に基づいて、前記(3)のステップで得られた前記角度に相当する角度を求め、求めた角度と、前記(3)のステップで得られた前記角度との差分である角度差分を求めるステップと
を備える、板パネルの外観の定量評価方法。
【請求項2】
前記(3)のステップで得られた、前記複数の要素それぞれの前記角度をコンター表示するステップを備える、請求項1に記載された板パネルの外観の定量評価方法。
【請求項3】
前記測定値は前記板パネルのCATデータまたは有限要素法により計算されたCAEデータである、請求項1または請求項2に記載された板パネルの外観の定量評価方法。
【請求項4】
前記設計値は前記板パネルのCADデータである、請求項1〜3のいずれかに記載された板パネルの外観の定量評価方法。
【請求項5】
前記(4)のステップで得られた、前記複数の要素それぞれの前記角度差分をコンター表示するステップを備える、請求項1〜4のいずれかに記載された板パネルの外観の定量評価方法。
【請求項6】
前記板パネルの特定の断面における前記角度を表示するステップを備える、請求項1〜のいずれかに記載された板パネルの外観の定量評価方法。
【請求項7】
前記板パネルの特定の断面における前記角度差分を表示するステップを備える、請求項のいずれかに記載された板パネルの外観の定量評価方法。
【請求項8】
前記板パネルは完成車両に装着された板パネルである、請求項1〜のいずれかに記載された板パネルの外観の定量評価方法。
【請求項9】
板パネルに光源から光を照射して板パネルの外観品質を定量的に評価する装置であって、
前記板パネルの測定値または計算値に基づいて該板パネルの評価面を複数の要素に仮想的に分割する手(1)と、
前記複数の要素それぞれの評価面の法線を求める手(2)と、
前記複数の要素それぞれの前記法線と、前記光源から照射される光とのなす角度を、前記複数の要素それぞれ毎に求めることにより、前記板パネルのハイライト線を評価する手(3)
前記板パネルの設計値に基づいて、前記手段(3)で得られた前記角度に相当する角度を求め、求めた角度と、前記手段(3)で得られた前記角度との差分である角度差分を求める手段(4)と
を備える、板パネルの外観の定量評価装置。
【請求項10】
コンピュータに、板パネルに光源から光を照射して該板パネルの外観品質を定量的に評価する方法を実行させるプログラムであって、前記方法は、
(1)前記板パネルの測定値または計算値に基づいて該板パネルの評価面を複数の要素に仮想的に分割するステップと、
(2)前記複数の要素それぞれの評価面の法線を求めるステップと、
(3)前記複数の要素それぞれの前記法線と、前記光源から照射される光とのなす角度を、前記複数の要素それぞれ毎に求めることにより、前記板パネルのハイライト線を評価するステップと
(4)前記板パネルの設計値に基づいて、前記(3)のステップで得られた前記角度に相当する角度を求め、求めた角度と、前記(3)のステップで得られた前記角度との差分である角度差分を求めるステップと
を備える、板パネルの外観の定量評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板パネルの外観の定量評価方法、定量評価装置および定量評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の完成車両の外板パネル(例えば、フードアウターパネル、ドアーアウターパネル、フェンダーパネル、ルーフパネル、トランクリッドアウターパネル等)の外観品質を評価する手法の一つとして、ハイライト検査が従来から行われている。ハイライト検査では、完成車両に一定の光源から光を照射することにより生じるハイライト(正反射光近傍)の状態を観察する。光沢を有する外板パネルには、ハイライトが、その表面の曲面形状に基づいて表面からの反射光が相互に作用して、形成される。
【0003】
図13は、フロントドアーアウターパネルの表面に存在するハイライトの一例を示す説明図であり、図13(a)はCAD(computer aided design)の設計値に基づいて算出されるハイライトの一例を示し、図13(b)はCAT(computer aided testing)の実測値に基づいて算出されるハイライトの一例を示し、図13(c)は、図13(a)および図13(b)における同一断面(Y0軸断面)上でのCAD,CATによるフロントドアーアウターパネルの形状を示すグラフである。
【0004】
例えば車両の側面では、基本的に、フロントフェンダーパネルからフロントドアーアウターパネル、リアードアーアウターパネルおよびリアーフェンダーパネルまでの車両前後方向へ直線が伸び、外板の表面には車両前後方向に直交する面内に曲線が形成される。例えば、図13(a)および図13(b)に示すように、フロントドアーアウターパネルの表面は車両前後方向であるY方向へ向けてほぼ一定で、車幅方向へ向けて湾曲面が形成される。
【0005】
このため、車両前後方向へ向けて平行な何本かのハイライトが車両の側面に形成される。しかし、フロントドアーアウターパネルの実際の形状(CAT値)が設計値(CAD値)の形状から部分的に微小にずれる場合には、図13(a)および図13(b)を対比することにより理解されるように、ハイライトがゆがんだり、あるいは途中で切れたりするために車両の外観品質が低下する。このように、CAT値とCAD値とを対比することにより、完成車両のハイライトを評価でき、完成車両の外観品質の良、不良を評価できる。
【0006】
また、量産時の外板パネルは通常張り出し成形されるため、量産時には張り出し成形に用いる金型の磨耗に伴って、外板パネルに生じるハイライトも変化する。このため、ハイライトの変化を定量的に評価できれば、車両の量産工程の変更や改善(金型の交換や修正の時期の決定等)を適切に行うことができ、車両の製造ラインにおいて外板パネルの外観品質を効率的に維持することができる。
【0007】
さらに、例えばフロントドアーアウターパネルおよびリアードアーアウターパネルの間の隙間(パーティング)付近では、フロントドアーおよびリアードアーの組み付け精度を高精度に維持することが容易ではないことに起因して、フロントドアーアウターパネルおよびリアードアーアウターパネルが滑らかで連続したハイライトを形成することは容易ではない。このため、この付近のハイライトを定量的に評価できれば、ボディシェルへのフロントドアーやリアードアーの組み付け精度も評価することも可能になる。
【0008】
このように、ハイライト検査によりハイライトを定量的に評価することができれば、外板パネルの外観品質の評価や、車両の製造ラインの工程管理、さらには各種部品の組み付け精度の評価等を適切に行うことができる。
【0009】
しかし、これまでのハイライト検査は、基本的に、完成車両をオフラインさせる最終工程で、製造ラインの両側に配置された蛍光灯を光源として車両に実際に光を照射し、検査員がハイライトを目視で観察する、いわゆる官能試験により行われてきた。
【0010】
このため、これまでのハイライト検査では、検査員の主観、技量、経験等の人為的な要因による誤差が必ず発生しており、外板パネルのハイライトを客観的かつ安定的に評価することは難しかった。
【0011】
特許文献1には、完成車両の外板パネルの表面の形状を評価するにあたって、まずハロゲン光源による平行光線を、遮光スリットを介して外板パネルに照射し、形成される縞状の光線/陰影パターン、すなわちハイライトを撮影し、得られた画像データを処理してn次回帰曲線を取得し、その曲率半径やその中心の向き、曲率半径の変曲点等に基づき、外板パネルの面品質を定量的に評価することによって、検査員の目視によらずにハイライトをチェックする発明が開示されている。
【0012】
また、外板パネルの設計データ(CADデータ)に基づいて、ハイライトをシミュレーションすることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平7−332950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1により開示された発明は、完成車両の外板パネルに光を照射して読み取ったイメージからハイライトを抽出するため、検査員によるハイライト検査では得られない安定した客観的な評価を行うことができる。しかし、特許文献1により開示された発明は、あくまでハイライト線の輪郭線を座標化して評価するものであり、外板パネル毎に定量評価値を算出できたとしても、3次元的にハイライトが歪む量やその原因を特定することはできない。外板パネルの表面の3次元座標上にハイライトの歪む位置を表示できなければ、それを直すためにパネルの(曲率)形状の修正位置を明確にすることはできない。
【0015】
また、従来のCADデータに基づくシミュレーションによるハイライト評価方法は、設計上のハイライトを数値化して評価するものであるため、外板パネルを設計する際の参考にはなるものの、量産される完成車両の外板パネルのハイライトを定量的に評価することはできない。
【0016】
本発明の目的は、例えば自動車の外板パネル(例えば鋼板パネルやアルミニウム合金板パネル、さらには樹脂板パネル)等の、光沢を有する板パネルの表面のハイライトを定量評価することによって、板パネルの外観品質をより客観的に安定して評価することができる、板パネルの外観の定量評価方法、定量評価装置および定量評価プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、板パネルに光源から光を照射して該板パネルの外観品質を定量的に評価する方法であって、板パネルの測定値または計算値に基づいて板パネルの評価面を複数の要素に仮想的に分割する第1ステップと、複数の要素それぞれの評価面の法線を求める第2ステップと、複数の要素それぞれの法線と、光源から照射される光とのなす角度を、複数の要素それぞれ毎に求めることにより、板パネルのハイライト線を評価する第3ステップとを備える、板パネルの外観の定量評価方法である。
【0018】
別の観点からは、本発明は、板パネルに光源から光を照射して板パネルの外観品質を定量的に評価する装置であって、板パネルの測定値または計算値に基づいて板パネルの評価面を複数の要素に仮想的に分割する第1手段と、複数の要素それぞれの評価面の法線を求める第2手段と、複数の要素それぞれの法線と、光源から照射される光とのなす角度を、複数の要素それぞれ毎に求めることにより、板パネルのハイライト線を評価する第3手段とを備える、板パネルの外観の定量評価装置である。
【0019】
さらに別の観点からは、本発明は、コンピュータに、板パネルに光源から光を照射して板パネルの外観品質を定量的に評価する方法を実行させるプログラムであって、前記の方法は、板パネルの測定値または計算値に基づいて板パネルの評価面を複数の要素に仮想的に分割する第1ステップと、複数の要素それぞれの評価面の法線を求める第2ステップと、複数の要素それぞれの法線と、光源から照射される光とのなす角度を、複数の要素それぞれ毎に求めることにより、板パネルのハイライト線を評価する第3ステップとを備える、板パネルの外観の定量評価プログラムである。
【0020】
これらの本発明では、第3ステップで得られた、複数の要素それぞれの角度をコンター表示する第4ステップを備えることが望ましい。
【0021】
これらの本発明では、測定値は板パネルのCATデータまたは有限要素法により計算されたCAEデータであることが望ましい。
【0022】
これらの本発明では、板パネルの設計値に基づいて、第3ステップで得られた角度に相当する角度を求め、求めた角度と、第3ステップで得られた角度との差分である角度差分を求める第5ステップを備えることが望ましい。
【0023】
これらの本発明では、設計値は板パネルのCADデータであることが望ましい。
【0024】
これらの本発明では、第5ステップで得られた、複数の要素それぞれの角度差分をコンター表示する第6ステップを備えることが望ましい。
【0025】
これらの本発明では、板パネルの特定の断面における角度を表示する第7ステップを備えることが望ましい。
【0026】
これらの本発明では、板パネルの特定の断面における角度差分を表示する第8ステップを備えることが望ましい。
【0027】
さらに、これらの本発明では、板パネルは完成車両に装着された板パネルであることが望ましい。
【0028】
これらの本発明における板パネルは、いずれもハイライトを生成可能な程度の光沢を有する板パネルであり、例えば鋼板パネルやアルミニウム合金板パネルといった金属板パネルや、樹脂板パネルであることが例示される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、例えばフードアウターパネル、ドアーアウターパネル、フェンダーパネル、ルーフパネル、トランクリッドアウターパネル等の自動車の外板パネル(例えば、鋼板パネル、アルミニウム合金板パネル、樹脂板パネル等)といった、光沢を有する板パネルの表面のハイライトを定量評価することによって、板パネルの外観品質をより客観的かつ安定的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一例の機能ブロック図である。
図2図2は、CADによるハイライトとCATによるハイライトとの差を示す説明図である。
図3図3は、ドアーアウターパネルの表面で算出された2種類のハイライト線を重ね合わせて示す説明図である。
図4図4は、本発明に係る評価方法により評価するドアーアウターパネルの一例を示す説明図である。
図5図5は、本発明に係る評価方法の一例を示す説明図である。
図6図6は、レイトレーシング法を概念的に示す説明図である。
図7図7は、面法線と光源からの光源ベクトルとのなす角度のコンター図である。
図8図8は、光源と面法線の角度差分のコンター図である。
図9図9は、有限要素法による計算結果を用いた場合の面法線と光源からの光源ベクトルとのなす角度のコンター図である。
図10図10は、有限要素法による計算結果を用いた場合の光源と面法線の角度差分のコンター図である。
図11図11は、ドアーアウターパネルのハンドルエンボス部付近の指定断面(Y=35,−35)における角度を表示するグラフである。
図12図12は、ドアーアウターパネルのハンドルエンボス部付近の指定断面(Y=35,−35)における角度差分を表示するグラフである。
図13図13は、フロントドアーアウターパネルの表面に存在するハイライトの一例を示す説明図であり、図13(a)はCAD(computer aided design)の設計値に基づいて算出されるハイライトの一例を示し、図13(b)はCAE(computer aided testing)の実測値に基づいて算出されるハイライトの一例を示し、図13(c)は、図13(a)および図13(b)における同一断面(Y0軸断面)上でのCAD,CATによるフロントドアーアウターパネルの形状を示すグラフである。
図14図14は、従来の手法によりCADデータに基づいて生成したハイライトの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る板パネルの外観の定量評価方法、装置およびプログラムを、添付図面を参照しながら説明する。以降の説明では、自動車の外板パネルとしてドアーアウターパネルを例にとり、ドアーアウターパネルの外観評価、すなわちハイライト(正反射光近傍)の定量評価が、ドアーアウターパネルの設計から車両完成に至る各段階でどのようにして行われるかを説明する。しかし、本発明は、ドアーアウターパネルの定量評価には限定されず、所定の光源の光により一定のハイライトを生ずる表面を有する外板パネル(例えばフードアウターパネル、フェンダーパネル、ルーフパネル、トランクリッドアウターパネル等)であれば、本発明は等しく適用される。
【0032】
また、以降の説明では、板パネルが鋼板パネルである場合を例にとるが、本発明は、鋼板パネルには限定されず、例えばアルミニウム合金板パネルといった金属板パネルや樹脂板パネルにも同様に適用される。
【0033】
図14は、従来の手法によりCADデータに基づいて生成したハイライトの一例を示す説明図である。
【0034】
従来は、図14に示すように、CADデータに基づきレイトレーシングすることにより、実際に設計値通りにドアーアウターパネルの表面形状が製造された場合にその表面に現れるであろう、ハイライトの様子1201をシミュレーションすることができ、これにより、設計段階において最終製品の形状を確認することができる。
【0035】
しかし、実際には、ドアーアウターパネルを設計値通りに製作しても、ドアーインナーパネルとのヘム加工による組み立て、さらにドアー内部への各種部品の組み付け、さらにボディシェルへの装着を完了して車両として組み上がった状態では、ドアーアウターパネルの表面形状が微妙に変化し、ハイライトも微妙に変化する。
【0036】
この変化は、完成車両に光を照射してハイライトを検査員が目視で検査することにより確認することはできるものの、車両完成後にドアーアウターパネルの表面形状の不良が確認されても、既に終了しているドアーアウターパネルの設計やそのプレス用の生産金型の形状を変更することは、現実には容易でない。
【0037】
そこで、本発明では、製品の設計や製造の任意の段階において、ドアーアウターパネルの表面形状の測定を行い、実測の表面形状のデータに基づいてレイトレーシングなどのレンダリング手法を用いてハイライト画像を生成し、設計段階で得られたCADデータに基づくハイライト画像と対比することにより、ハイライトの状態を定量的に評価する。
【0038】
1.装置構成
図1は、本発明の一例の機能ブロック図である。
【0039】
本実施形態では、図1に例示すようなシステムにより、設計データ(CAD)および表面の実測データ(CAT)に基づき、各々レイトレーシング法等によりハイライト画像を取得し、2つのデータを比較して種々の差異を抽出することによって、設計から量産に至る様々な段階におけるドアーアウターパネルの評価や改良に役立てることができる。
【0040】
本発明で用いるシステムは、図示しないCPU,ROM,RAMや各種外部とのインタフェースを備える装置に、データベース103,104や出力部105が接続される。図5に示すフローチャートを参照しながら後述する本発明に係る定量評価方法は、このような装置上で動作することができるが、この構成には限定されない。また、ネットワークに接続してデータベースと必要なデータのやり取りをすることもできるなど、本技術分野で知られた種々のシステム構成が可能である。
【0041】
2.本実施形態の2種類のハイライトと差異
図2は、CADによるハイライトとCATによるハイライトとの差を示す説明図である。
【0042】
後述するような手法によりCADデータからレイトレーシング法を実行して図2に示すようなハイライト画像201を取得する。また、完成製品でなくても、製造過程の特定の段階、例えば図2に示すように車体のドアーでは、ドアーとして組み上がった段階などで表面形状を実際に測定し、その測定データ(CATデータ)に基づいてレイトレーシング処理を実行し、ハイライト画像202を取得する。
【0043】
一般に、パネルあるいは外板を張り合わせたり、組み込んだりして筐体を形成する製品、例えば自動車のドアーでは、ドアーアウターパネルや部品の各単体を設計目標形状通りに製造できたとしても、ドアーとして組み上げると様々な原因によりドアーアウターパネルの表面形状が変化する。
【0044】
例えば、上述した図13(a)〜図13(c)に示すように、ドアパネル401,402の進行方向に直交する任意の縦軸(図13(c)のグラフではZ軸)に沿って観察した場合に車体上部から下部へかけてのドアーアウターパネルの凹凸、すなわちX軸方向の値の変化は、CADデータに基づくものは曲線403により表され、実測、すなわちCATデータに基づくものは曲線404により表される。
【0045】
図13(c)のグラフに示すように、ドアーアウターパネルなどの製品の筐体を構成する外板パネルは、もともとの単体部品のときの形状が筐体として組み込まれる際に様々な要因により変形し、ドアーアウターパネルのX値を表した曲線403,404のように設計データと実測値とは異なるものとなる。
【0046】
具体的には、ドアーアウターパネルとドアーインナーパネルとをヘム加工により組み付ける際の応力により、ドアーアウターパネルの曲りが設計値よりもきつくなり、図13(c)のグラフに示すように、凹凸が大きくなる。
【0047】
なお、一般に自動車の側面形状は、空気抵抗を低減するために進行方向へ延びたエクステリアデザインとなることが多いので、主に凹凸は縦方向(Z方向)において車幅方向(X方向)へ変化する。したがって、このような外形上の差異からドアーアウターパネルのハイライトの現れ方も異なる。このため、CADデータとCATデータとでハイライト画像をそれぞれ算出すると、図2に示すハイライト画像201,202のように、異なるハイライト画像になる。
【0048】
図3は、ドアーアウターパネルの表面で算出された2種類のハイライト線を重ね合わせて示す説明図である。
【0049】
図3に示すように、このような2種類のハイライト画像を単に合成した画像301を作成しても、2つのハイライトが相違することは認識できても、どの部分がどの程度異なるのか、すなわちハイライトを定量的に評価することはできない。
【0050】
そこで、本発明に係るドアーアウターパネルの外観形状の定量評価方法を用いて、設計上のハイライトと実際のハイライトとを比較することにより、従来、人間の検査員に任され、あるいは定性評価しかできなかったハイライトについて、一定の定量評価を行うことができる。
【0051】
また、本発明によれば、設計,試作,量産の各段階において、実測値によるドアーアウターパネルのハイライトの外観評価が可能になるため、得られた外観評価の数値に基づいて、ドアーアウターパネルの設計変更や製造ラインの変更(プレス金型の形状調整)等を、迅速かつ的確なタイミングで行うことができる。
【0052】
なお、本実施形態ではCADデータによるハイライトとCATデータによるハイライトとの差異を抽出することにより、ハイライトの定量評価を行うが、CATデータに代えてCAE解析により得られたデータを用いてハイライト画像を生成し、CADデータによるハイライト画像と比較することにより、ハイライトを評価する際の定量評価の指標とすることもできる。
【0053】
基本的には、CAE解析によるデータを用いても、CATデータを用いても、CADデータとは異なる性質、すなわち単に設計上のデータとは異なるデータに基づいてハイライト画像を得るという点では同じであり、ハイライトの評価には大きな違いはなく、以降説明する別の評価指標においても、CATデータに代えてCAE解析によるデータも同様に使用することができる。
【0054】
[本実施形態の処理]
図4は、本発明に係る評価方法により評価するドアーアウターパネルの一例を示す説明図である。以降の説明では説明を簡略化するため、図4に示すように、ドアーアウターパネルの中でも外面形状の設計精度を得難いハンドルエンボス部401a,402aを例にとって説明する。
【0055】
図5は、本発明に係る評価方法の一例を示す説明図である。以下、本実施形態のドアーアウターパネルの外観形状の定量評価方法を、図5に示すフローチャートを参照しながら、図1の各部での処理をより詳細に説明する。
【0056】
以降の説明では、仮に自動車の製造ラインの検討する際の外観評価をする場合を前提として説明するが、これに限らず、ドアーアウターパネルの設計や製造の任意の段階において本発明に係る評価方法を用いることができる。そこで、現時点でドアーの組み立てまでが完了しているものとする。
【0057】
最初に、CADデータ103に基づいてレイトレーシング部101がレイトレーシング処理を実行し、ハイライト画像を生成する。ここで、本実施形態では、レイトレーシング法によってハイライト画像を取得する。
【0058】
図6は、レイトレーシング法を概念的に示す説明図である。
【0059】
レイトレーシング法は、本技術分野では知られたレンダリング法の一つであり、視点601から、例えばドアーアウターパネル602を、光源604より発せられる光603により観察するといった条件を前提として見た場合、どのようにドアーアウターパネル602が見えるかを画像として表現するものである。
【0060】
具体的には、光源604からの光603がどの点を通り、どの面で反射して、さらにどのように進むかをトレースして、その結果視点の位置にはどのような画像が投影されるかシミュレーションすることによりレンダリングを実行する。
【0061】
図6に示す面光源604を用いることにより、自然の環境でドアーアウターパネル602の表面を観察する場合に近い情報を得ることができる。なお、レイトレーシング法でハイライト画像を取得するに当たって、使用するソフトウェアや設定パラメータ等、より詳細な使用法は、本技術分野で知られたいずれのソフトウェア、装置、方法も用いることができる。
【0062】
また、本実施形態では、レイトレーシング法を主に使用して説明するが、CADデータ等、外観形状を定めるいずれかのデータを用いてハイライトの状態を表す一定の定量的データが算出されれば、レイトレーシング法以外のレンダリング手法も用いることができる。また、後述するようにハイライト画像を等高線化してハイライト線(等高線)が明らかな状態で表示するが、これに限られず、レンダリングで得られたデータをそのまま使用してもよいし、その他の様々な加工を施してから以降の処理をすることができる。
【0063】
次に、CADデータによるハイライト画像と同様に、レイトレーシング部101にてCATデータによるハイライト画像を取得する。本実施の形態の説明では、一例として、組み上がったドアーアウターパネルの表面形状を光学式測定器により測定してCATデータとしているが、一般にCATデータは設計から製品化のある段階における外板の外観形状を実測したデータである。
【0064】
例えば、光学式の三次元測定機を使用してドアーアウターパネルの表面の形状を測定することもできるし、接触により測定することもでき、CADデータと同程度の精度で外観形状を特定できる方法であればいずれの方法を用いることもできる。また、この説明では自動車のドアーアウターパネルを一度組み上げた段階で外観形状を測定するが、本発明を様々な段階で適用する場合は、その段階に合わせた測定を行うことができる。
【0065】
次に、図5に示すように、S1において、差異抽出部102が、CADデータおよびCATデータそれぞれによるドアーアウターパネル401,402を、微小な多数の要素(三角形形状)500に要素分割する。
【0066】
この微小な多数の要素とは、点群から面を生成(表示)するための要素であり、三角形である必要はない。通常の測定結果(CATデータ)の標準フォーマット(STLファイル)では、三角形の要素になる。
【0067】
次に、S2において、S1において得た各要素500の面法線502を、各要素500毎に計算する。面法線502を用いて評価することによりハイライトに対応した視覚的な設計意匠からの微小なずれを定量的に評価することが可能になる。
【0068】
次に、S3において、差異抽出部102が、面法線502と、光源604からの光源ベクトル501とのなす角度を計算し、S4において、出力部105が、S3で求めた角度をコンター表示する。ドアーアウターパネル602の外観(意匠性)を視覚的に評価する際に、光源604からの反射等で映り込みがきれいかどうかを頭の中で自然に判断しているため、光源604とドアーアウターパネル602の表面との角度を評価することは、客観的な評価を行うことに有効である。
【0069】
図7は、面法線502と、光源604からの光源ベクトル501とのなす角度のコンター図である。
【0070】
図7に示すように、CADデータに基づくドアーアウターパネル401のハイライトはハンドルエンボス部401aを含めて全域で直線的にゆがみ無く示されるが、CATデータに基づくドアーアウターパネル402のハイライトは、ハンドルエンボス部402a付近を中心にゆがんでいることが、ゆがみの程度とともに定量的に示されている。
【0071】
このように、面法線502と、光源604からの光源ベクトル501とのなす角度を求めることにより、ハイライトに対応した微小な歪み量を定量化(数値化)でき、ドアーアウターパネル402の外観形状を定量的に評価することが可能である。
【0072】
次に、S5において、差異抽出部102が、CATデータに基づく上記角度と、CADデータに基づく上記角度との差分(角度差分)を計算し、S6において、出力部105が、S5で求めた角度差分をコンター表示する。
【0073】
図8は、光源604と面法線502の角度差分のコンター図である。
【0074】
図8に示すように、CADデータに基づくドアーアウターパネル401のハイライトはハンドルエンボス部401aを含めて全域でゆがみ無く示されるが、CATデータに基づくドアーアウターパネル402のハイライトは、ハンドルエンボス部402a付近を中心にゆがんでいることが、ゆがみの程度とともに定量的に示されている。
【0075】
このように、光源604と面法線502の角度差分を求めることにより、設計意匠に対するハイライトの微小な歪み原因となる位置を特定し、定量化(数値化)でき、ドアーアウターパネル402の外観形状を定量的に評価することが可能である。
【0076】
別の実施形態として、有限要素法を用いたパネルの計算結果を用いて、本発明による評価をすることもできる。有限要素法としては市販のソフトウェアであるLS−DYNA、PAMSTAMP、AUTOFORM等を用いることができる。有限要素法のソフトウェアで得られたCAEデータ(有限要素に分割された節点の座標値や要素の構成情報)をそのまま使用してもよいし、また、形状を再分割して使用しても良い。また、測定データと同じように三角形要素の標準フォーマット(STLファイル)として出力しても良い。用いるCAEデータは成形解析後にスプリングバック解析まで行って得られた形状を用いるのが評価に適するが、成形解析後の結果をそのまま用いてもよい。
【0077】
図9は、有限要素法による計算結果を用いた場合の面法線502と、光源604からの光源ベクトル501とのなす角度のコンター図である。
【0078】
図9に示すように、CADデータに基づくドアーアウターパネル401のハイライトはハンドルエンボス部401aを含めて全域で直線的にゆがみなく示されるが、CAEデータに基づくドアーアウターパネル402のハイライトは、ハンドルエンボス部402a付近を中心にゆがんでいることが、ゆがみの程度とともに定量的に示されている。
【0079】
このように、面法線502と、光源604からの光源ベクトル501とのなす角度を求めることにより、ハイライトに対応した微小な歪み量を定量化(数値化)でき、ドアーアウターパネル402の外観形状を計算値から定量的に評価することが可能である。
【0080】
次に、S5において、差異抽出部102が、CATデータに基づく上記角度と、CADデータに基づく上記角度との差分(角度差分)を計算し、S6において、出力部105が、S5で求めた角度差分をコンター表示する。
【0081】
図10は、有限要素法による計算結果を用いた場合の光源604と面法線502の角度差分のコンター図である。
【0082】
図10に示すように、CADデータに基づくドアーアウターパネル401のハイライトはハンドルエンボス部401aを含めて全域でゆがみなく示されるが、CAEデータに基づくドアーアウターパネル402のハイライトは、ハンドルエンボス部402a付近を中心にゆがんでいることが、ゆがみの程度とともに定量的に示されている。
【0083】
このように、有限要素法によって計算されたCAEデータを用いても、光源604と面法線502の角度差分を求めることにより、設計意匠に対するハイライトの微小な歪み原因となる位置を特定し、定量化(数値化)でき、ドアーアウターパネル402の外観形状を定量的に評価することが可能である。
【0084】
本発明により、金型製作前にドアーアウターパネルの外観事前評価ができることから、金型を製作して試作する上での、金型修正工数や試作回数を大幅に低減することが可能となり、得られる効果は非常に大きい。
【0085】
さらに、S7において、出力部105が、指定した断面における角度または角度差分を抜き出して示す。
【0086】
図11は、ドアーアウターパネル402のハンドルエンボス部402a付近の指定断面(Y=35,−35)における角度を表示するグラフであり、図12は、ドアーアウターパネル402のハンドルエンボス部402a付近の指定断面(Y=35,−35)における角度差分を表示するグラフである。
【0087】
図11,12のグラフに示すように、本発明により、指定した断面における角度または角度差分を抜き出して示すことにより、ドアーアウターパネル402の外観形状を定量的に評価することが可能である。
【0088】
このように、本発明によれば、ドアーアウターパネル402のハイライト処理を定量評価することができ、これにより、ドアーアウターパネル402のデザイナーが意図した意匠が、ドアーアウターパネル402の製造過程でどの程度再現されているかを定量的に評価することができる。
【0089】
また、本発明によれば、ドアーアウターパネル402のCAD値に対するCAT値の差分を評価することにより、ドアーアウターパネル402同士のデザインの再現性を定量的に評価することができる。
【0090】
さらに、本発明によれば、ドアーアウターパネル402のハイライトのゆがみの原因となる意匠性の不良部を具体的かつ定量的に特定することができる。
【符号の説明】
【0091】
401,402 ドアーアウターパネル
500 微小な多数の要素
501 光源ベクトル
502 面法線
604 光源
図1
図2
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