(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自系統の信号および他系統の信号を含む複数系統の信号を入力する入力部と、前記複数系統の信号のうち前記自系統の信号を出力する出力部と、を備えた信号処理装置を監視する監視装置であって、
前記信号処理装置における前記自系統の故障を検知する故障検知部と、
前記故障検知部が前記自系統の故障を検知した場合に、該故障を検知した信号処理装置の系統の信号を、他の信号処理装置において該他の信号処理装置の系統の信号とともに出力させる制御部と、
を備える、監視装置。
自系統の信号および他系統の信号を含む複数系統の信号を入力する入力部と、前記複数系統の信号のうち前記自系統の信号を出力する出力部と、を備えた信号処理装置を監視する監視装置を用いた信号処理方法であって、
前記監視装置が、
前記信号処理装置における前記自系統の故障を検知し、
前記自系統の故障を検知した場合に、該故障を検知した信号処理装置の系統の信号を、他の信号処理装置において該他の信号処理装置の系統の信号とともに出力させる、
信号処理方法。
自系統の信号および他系統の信号を含む複数系統の信号を入力する入力部と、前記複数系統の信号のうち前記自系統の信号を出力する出力部と、を備えた信号処理装置を監視する監視装置に実行されるプログラムであって、
前記監視装置に、
前記信号処理装置における前記自系統の故障を検知し、
前記自系統の故障を検知した場合に、該故障を検知した信号処理装置の系統の信号を、他の信号処理装置において該他の信号処理装置の系統の信号とともに出力させる、
プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、音響システムの構成を示すブロック図である。音響システムは、ノート型PC11、タブレット型PC12、オーディオミキサ13、スピーカ装置15、スピーカ装置16、スピーカ装置17、およびLAN(Local Area Network)20を備えている。
【0010】
ノート型PC11、タブレット型PC12、オーディオミキサ13、スピーカ装置15、スピーカ装置16、およびスピーカ装置17は、LAN20を介して互いに接続されている。ただし、本発明において、各機器の接続態様は、LANを介したネットワーク接続に限るものではない。例えば、各機器は、USB(Universal Serial Bus)、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)、シリアル通信ケーブル、またはオーディオケーブルで接続されていてもよい。オーディオケーブルで接続する場合には、音信号を変復調することで、情報を送受信することができる。また、各機器の接続態様は、無線(Wi−Fi(登録商標)、赤外線通信、またはBluetooth(登録商標)等)であっても有線(イーサネット(登録商標))であってもよい。
【0011】
ノート型PC11、タブレット型PC12、オーディオミキサ13、スピーカ装置15、スピーカ装置16、およびスピーカ装置17は、それぞれ本発明の信号処理装置の一例である。
【0012】
図2では、代表してスピーカ装置15の構成を示す。スピーカ装置15は、表示器101、ユーザインタフェース(I/F)102、CPU103、ROM104、RAM105、ネットワークI/F106、オーディオI/F107、DSP(Digital Signal Processor)108、アンプ(AMP)109、およびスピーカ110を備えている。
【0013】
表示器101、ユーザインタフェース(I/F)102、CPU103、ROM104、RAM105、ネットワークI/F106、オーディオI/F107、DSP108、およびアンプ(AMP)109は、バス115に接続されている。
【0014】
表示器101は、例えばLED(Light Emitting Diode)またはLCD(Liquid Crystal Display)からなり、種々の情報を表示する。ユーザI/F102は、マウス、キーボード、またはタッチパネル等からなり、ユーザの操作を受け付ける。
【0015】
CPU103は、記憶媒体であるROM104に記憶されているプログラムをRAM105に読み出して、所定の機能を実現する。例えば、CPU103は、スピーカ装置15の動作を統括的に制御する制御部として機能する。また、CPU103は、スピーカ装置15の各種構成における故障を検知する故障検知部として機能する。
【0016】
図3は、スピーカ装置の機能的構成と、各装置の接続関係を示す図である。
図3では、代表して、スピーカ装置15、スピーカ装置16、およびスピーカ装置17の機能的構成を示すが、ノート型PC11、タブレット型PC12、およびオーディオミキサ13においても、同様の構成および機能を実現することが可能である。
【0017】
スピーカ装置15は、機能的構成として、故障検知部150、制御部151、およびミキサ130を備えている。CPU103は、ROM104に記憶されているプログラムをRAM105に読み出して、該プログラムにより故障検知部150および制御部151を実現する。DSP108は、ミキサ130を実現する。
【0018】
オーディオI/F107は、外部の音源(ソース)から、複数系統の音信号を入力する。ミキサ130は、オーディオI/F107から該複数系統の音信号を入力する入力部となる。この例では、ミキサ130は、ソースAの音信号、ソースBの音信号、およびソースCの音信号を入力する。オーディオI/F107は、アナログオーディオ信号を入力してもよいし、デジタルオーディオ信号を入力してもよい。
【0019】
また、ミキサ130は、入力した複数系統の音信号のうち自系統の音信号を出力する出力部となる。スピーカ装置15のミキサ130は、ソースAの音信号、ソースBの音信号、およびソースCの音信号のうち、ソースAの音信号を出力する。
【0020】
アンプ109は、ミキサ130から出力されたソースAの音信号を増幅し、スピーカ110に出力する。なお、オーディオI/F107がデジタルオーディオ信号を入力し、ミキサ130がデジタルオーディオ信号を出力する場合には、アンプ109は、該デジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換して、該アナログオーディオ信号をスピーカ110に出力する。
【0021】
図4は、CPU103における故障検知時の動作を示すフローチャートである。故障検知部150は、定期的に自装置に故障があるか否かを判断する(S11)。なお、本実施形態で言う故障とは、各種ハードウェアにおける何らかの故障に限らず、音信号に異常音が含まれる、あるいは、ソフトウェア上のバグ等、あらゆる異常を含む概念である。
【0022】
故障検知部150は、例えば、DSP108のソフトウェア上のバグが発生したか否かを判断して、ミキサ130(DSP108)に故障があるか否かを判断する。また、故障検知部150は、アンプ109の温度または、過電流の有無を監視することで、アンプ109に故障があるか否かを判断する。また、故障検知部150は、ネットワークI/F106の故障を検知してもよい。ネットワークI/F106が故障した場合には他装置と通信することができない場合があるが、例えば、ネットワークI/F106が複数のLAN端子を有している場合、またはLAN以外の通信機能を有する場合において、いずれか1つの通信機能が故障した場合には、他の通信機能を用いて通信することができる。そのため、故障検知部150は、ネットワークI/F106が複数のLAN端子を有している場合には、ネットワークI/F106の故障として、各LAN端子の故障の有無を検知してもよい。
【0023】
制御部151は、故障検知部150の機能によって故障を検知した場合、他装置に故障通知を行なう(S12)。制御部151は、LAN20を介して接続されている全ての装置に対して故障通知を行なってもよいし、故障した内容に応じて予め定められた装置に対して故障通知を行なってもよい。
【0024】
まず、
図4では、全ての装置に対して故障通知を行なう場合の動作について説明する。例えばスピーカ装置15において、アンプ109が故障した場合、スピーカ装置15の制御部151は、ノート型PC11、タブレット型PC12、オーディオミキサ13、スピーカ装置16、およびスピーカ装置17に対して、故障通知を行なう(S12)。
【0025】
ノート型PC11、タブレット型PC12、オーディオミキサ13、スピーカ装置16、およびスピーカ装置17のそれぞれの制御部151は、スピーカ装置15から故障通知を受信する(S21)。ノート型PC11、タブレット型PC12、オーディオミキサ13、スピーカ装置16、およびスピーカ装置17のそれぞれの制御部151は、制御テーブルを参照する(S22)。
【0026】
図5は、制御テーブルの一例である。制御テーブルは、故障系統と代替系統との対応関係を規定する。
図5の例では、制御テーブルは、系統Aが故障した場合には系統Bで代替し、系統Bが故障した場合には系統Aで代替し、系統Cが故障した場合には系統Bで代替する旨を規定する。この例では、制御テーブルは、系統A、系統Bまたは系統C等の系統名を用いて各系統の代替系統を記載しているが、例えばIPアドレス、MACアドレス、または製造番号等の機器固有の識別情報を用いることもできる。
【0027】
系統Bを自系統として出力するスピーカ装置16の制御部151は、制御テーブルに従って、ミキサ130に対して、A系統の音信号を、自身の系統であるB系統の音信号とともに出力するように設定する(S23)。一方で、故障を検知した側の制御部151は、故障した系統(系統A)の出力を停止する(S13)。
【0028】
これにより、系統Aの音は、スピーカ装置16のスピーカ110から出力される。したがって、複数の系統で構成される音響システムにおいて、各装置は、故障した系統の音の再生を残りの系統の音の再生で自動的に補完することができる。すなわち、音響システムは、故障発生時の再生品質の低下を低減することができる。また、音響システムは、故障発生時にも、再生音が全く途切れることがないようにすることができる。特に、音響システムがコンサート等のPA(Public Address)システムである場合には、再生音が途切れることがないことは重要である。したがって、本実施形態の音響システムは、PAシステムには好適である。
【0029】
なお、上述の例では、制御テーブルに従って、代替再生を行なう系統を決定する手法であるが、例えば、故障状態に合わせたルールを定め、制御部151が該ルールにしたがって、代替再生を行なう系統を決定してもよい。例えば、各系統には、所定の属性として、例えば、リズム、バッキング、またはボーカル等の演奏パート情報と、それぞれの入力音声の定位位置と、を設定する。例えば、A系統がリズムセクション、B系統がバッキングセクション、およびC系統がボーカルセクションの属性の場合においては、制御部151は、リズムセクションのA系統が故障した場合に、バッキングセクションのB系統で代替し、バッキングセクションのB系統が故障した場合に、ボーカルセクションのC系統で代替し、ボーカルセクションのC系統が故障した場合に、バッキングセクションのB系統で代替する、とのルールを定める。
【0030】
また、ボーカルセクションの定位置は、通常、センタである。バッキングセクションの定位位置は、通常、左右(L,R)である。すなわち、ボーカルセクションである系統Cは、センタスピーカに対応し、バッキングセクションである系統Aは、LスピーカおよびRスピーカに対応する。
【0031】
したがって、スピーカ装置17の制御部151は、自装置の系統Cが故障したと判定した場合に、LスピーカおよびRスピーカに対応するバッキングセクションの系統A(スピーカ装置15)で代替再生を行なうように指示する。スピーカ装置15の制御部151は、自装置においてボーカルセクションである系統Cを再生するために、センタの位置に定位する設定を行なう。スピーカ装置15は、
図3の例では1つのスピーカを備える態様であるが、仮に2つのLスピーカおよびRスピーカを備える場合には、ミキサ130に対して、LスピーカおよびRスピーカに均等な割合で系統Cの音を出力する設定を行なう。
【0032】
次に、
図6は、制御部151が故障した内容に応じて予め定められた装置に対して故障通知を行なう態様を示すフローチャートである。
図4と共通する動作については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
制御部151は、故障検知部150の機能によって故障を検知した場合、制御テーブルを参照する(S51)。系統Aを出力するスピーカ装置15の制御部151は、制御テーブルに従って、スピーカ装置16に対して、故障通知を行なう(S12)。このとき、制御部151は、故障通知において、自系統を識別する情報を送信する。スピーカ装置16の制御部151は、故障通知を受信すると、ミキサ130に対して、A系統の音信号を、自身の系統であるB系統の音信号とともに出力するように設定する(S52)。
【0034】
この例において、制御部151は、故障検知部150が自系統の故障を検知した場合に、他系統の信号を出力する他装置(例えばスピーカ装置16)に、自系統の信号を出力させる態様である。系統Aの音は、スピーカ装置16のスピーカ110から出力する。したがって、複数の系統で構成される音響システムにおいて、各装置は、故障した系統の音の再生を残りの系統の音の再生で自動的に補完することができる。すなわち、音響システムは、故障発生時の再生品質の低下を低減することができる。
【0035】
なお、上述の例では、各スピーカ装置は、故障を検知した場合に、他系統において代替再生を行なう態様であるが、定期的に故障が発生しているか否かを示す情報を装置間で送受信するようにしてもよい。この場合、音響システム内のいずれかのスピーカ装置から情報を送受信できなくなった場合に、他のスピーカ装置において代替再生を行なう。この場合、例えば電源が切断された場合等、CPUを含むスピーカ装置自体が故障した場合にも、他のスピーカ装置は、代替再生を行なうことができる。
【0036】
また、故障検知部150が故障を検出した場合には、制御部151は、故障発生を示す旨を他装置に通知し、他装置において、実際に故障が発生しているか否かを判断してもよい。例えば、スピーカ装置は、ノート型PC11またはタブレット型PC12に故障発生の通知を送信する。ノート型PC11またはタブレット型PC12は、特定のスピーカ装置からのみ、故障通知を受信した場合、特定の系統においてのみ、異常が発生していると判断し、当該系統の音を他の系統で再生させるように指示する。ノート型PC11またはタブレット型PC12は、複数のスピーカ装置から同時に故障通知を受信した場合には、特定の系統において異常が発生しているのではなく、ネットワーク障害等、音の出力には関係しない、他の異常が発生していると判断し、表示部(不図示)に警告表示を行なう。ノート型PC11またはタブレット型PC12のユーザは、当該警告表示を見て、ネットワークケーブルまたはルータ機器等の検査を行なうことができる。このように、音響システムは、実際に異常が発生していないにも関わらず故障検知部150において異常が発生していると判断すること(誤動作)を防ぐことができる。
【0037】
図7は、変形例1に係るスピーカ装置の機能的構成と、各装置の接続関係を示す図である。
図7の例では、ネットワークI/F106が、LAN20を介して、外部の音源(ソース)から複数系統の音信号を入力する。ミキサ130は、ネットワークI/F106から該複数系統の音信号を入力する。この例でも、ミキサ130は、ソースAの音信号、ソースBの音信号、およびソースCの音信号を入力する。
【0038】
この場合も、制御部151は、故障検知部150が自系統の故障を検知した場合に、他系統の信号を出力する他装置に自系統の信号を出力させる、または他装置における他系統が故障した場合に、該他系統の信号を自系統の信号とともに出力部から出力させる。
【0039】
図8は、変形例2に係るスピーカ装置の機能的構成と、各装置の接続関係を示す図である。
図7と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。変形例2に係る音響システムは、制御装置19を備えている。制御装置19は、LAN20を介して、各装置と接続される。制御装置19は、制御部151の機能を備えている。制御装置19の制御部151は、各装置における故障検知部150が自系統の故障を検知した場合に、該故障を検知した装置が担当している系統の信号を、他の装置に代替して出力させる。代替する装置は、例えば上述の制御テーブルに従って決定する。なお、制御装置19は、CPUが実行するプログラムにより実現可能である。したがって、制御装置19は、プログラムを記憶する記憶媒体と、CPUと、を備えた汎用のコンピュータにより実現可能である。例えば、制御装置19は、ノート型PC11またはタブレット型PC12により実現可能である。
【0040】
図9は、変形例3に係るスピーカ装置の機能的構成を示す図である。
図7と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
図9の例では、スピーカ装置15は、信号監視部171、信号監視部172、および収音装置173をさらに備えている。
【0041】
また、
図9の例では、スピーカ装置15は、2つのスピーカ110Lおよびスピーカ110Rを備えている。ミキサ130は、A系統の音信号を、LチャンネルおよびRチャンネルの音信号に分配する。ミキサ130は、Lチャンネルの音信号をスピーカ110Lに出力し、Rチャンネルの音信号をスピーカ110Rに出力する。
【0042】
信号監視部171は、ミキサ130とアンプ109との間に接続される。信号監視部172は、アンプ109とスピーカ110との間に接続される。収音装置173は、スピーカ110の出力した音を収音する。収音装置173は、スピーカ110Lおよびスピーカ110Rの近傍に設置された複数のマイクを有する。収音装置173は、これら複数のマイクからLチャンネルおよびRチャンネルの音信号を取得する。
【0043】
CPU103における故障検知部150は、信号監視部171、信号監視部172、および収音装置173からLチャンネルおよびRチャンネルの音信号を入力する。故障検知部150は、信号監視部171から入力される音信号に基づいて、LチャンネルまたはRチャンネルの音信号に異常があるか否かを判断する。同様に、故障検知部150は、信号監視部172から入力される音信号に基づいて、LチャンネルまたはRチャンネルの音信号に異常があるか否かを判断する。また、故障検知部150は、収音装置173から入力される音信号に基づいて、スピーカ110Lおよびスピーカ110Rから出力される、LチャンネルまたはRチャンネルの音に異常があるか否かを判断する。
【0044】
故障検知部150は、例えば、所定時間以上の無音区間がある場合、異常なノイズがある場合、または異常な波形を検出した場合、等を検知した時に、各チャンネルに異常があると判断する。ただし、異常なノイズ、および異常な波形は、必ずしも故障とは限らない。したがって、故障検知部150は、異常なノイズ、および異常な波形を所定時間以上また所定回数以上、継続して検出した場合に、異常と判定することが好ましい。
【0045】
制御部151は、故障検知部150がLチャンネルまたはRチャンネルに異常があると判断した場合、ミキサ130に対して、異常があるチャンネルの音信号を他のチャンネルの音信号にミキシングさせる指示を行なう。制御部151は、例えばLチャンネルの音信号に異常があると判断した場合、Lチャンネルの音信号をRチャンネルの音信号にミキシングさせる。
【0046】
さらに、制御部151は、故障検知部150がLチャンネルおよびRチャンネルの音信号の両方に異常があると判断した場合、他系統の信号を出力する他装置(例えばスピーカ装置16)に、自系統の信号を出力させる。
【0047】
なお、故障検知部150は、ネットワークI/F106がミキサ130に出力する音信号、およびミキサ130の出力するチャンネルの情報を取得し、各種の音信号と、を比較してもよい。
【0048】
例えば、故障検知部150は、無音区間の検出として、ネットワークI/F106から入力される音信号の無音区間、ミキサ130の出力チャンネルの無音区間、信号監視部171、信号監視部172、および収音装置173で検出した無音区間を比較する。故障検知部150は、これらの無音区間の長さが一致しない場合、故障と判定する。
【0049】
また、故障検知部150は、ネットワークI/F106から入力される音信号、ミキサ130の出力チャンネルの音信号、信号監視部171、信号監視部172、および収音装置173で検出した音信号のレベルを比較してもよい。故障検知部150は、これら音信号のレベル差を求め、当該レベル差が所定の閾値を超える場合に、故障であると判定する。また、故障検知部150は、信号監視部171または信号監視部172で検出した音信号に基づいて、スピーカ110Lおよびスピーカ110Rから出力され、収音装置173に至る帰還音を推定し、推定した帰還音と、収音装置173で取得される実際の帰還音とを比較してもよい。例えば、故障検知部150は、アンプ109、スピーカ110L、およびスピーカ110Rの音響特性から推定したり、スピーカ110Lおよびスピーカ110Rが設置された環境で実際に測定して取得した伝達関数(インパルス応答)に基づいて、信号監視部171から出力され、アンプ109およびスピーカ110L(スピーカ110R)を経て、収音装置173で収音される音信号(帰還音)を推定する。故障検知部150は、推定した音信号(帰還音)を、収音装置173の音信号(実際の帰還音)から差し引く。すなわち、故障検知部150は、実際の帰還音に対し、推定した帰還音を逆位相で加算することで、当該帰還音を除去する処理を行なう。スピーカ110Lおよびスピーカ110Rから正しく音が出力され、推定した帰還音が正しい場合には、帰還音を除去した後の音信号(差分値)は、レベルが低下する。スピーカ110Lまたはスピーカ110Rから音が出力されない場合には、帰還音を除去する処理により、むしろレベルが上昇する(差分値が大きくなる)。したがって、故障検知部150は、該差分値が所定の閾値を超える場合に、故障であると判定する。なお、故障検知部150は、差分値の履歴を用いて、インパルス応答を更新することにより、帰還音を適応推定してもよい。
【0050】
この場合、故障検知部150は、例えば、ミキサ130が特定チャンネルの音信号の出力を停止する状態である場合には、該特定チャンネルの音信号が入力されない場合でも、異常であると判断しない。逆に、故障検知部150は、ネットワークI/F106からミキサ130に音信号が入力されていて特定チャンネルの音信号を出力させる状態であるにも関わらず、信号監視部171から音信号を入力しない場合には、異常が発生していると判断する。
【0051】
なお、
図9の例では、スピーカ110Lおよびスピーカ110Rの両方から各系統の音を出力する態様であるが、スピーカ装置は、複数のスピーカのうちいずれか1つのスピーカを再生用とし、残りのスピーカを故障検知用としてもよい。この場合、故障検知用のスピーカは、相対的に低い音量で音を出力する。再生用のスピーカが故障した場合には、故障検知用のスピーカが再生用スピーカとなる。スピーカの数が3つ以上である場合には、故障検知用のスピーカがさらに増えて、多重化することができる。また、スピーカ110Lおよびスピーカ110Rが駆動すると、音信号に応じた逆起電力生じる。したがって、信号監視部172は、スピーカ110Lおよびスピーカ110Rの逆起電力を測定してもよい。この場合、信号監視部172は、収音装置173に代えて、スピーカ110Lおよびスピーカ110Rから出力するLチャンネルおよびRチャンネルの音信号を取得することができる。
【0052】
図10は、変形例4に係るスピーカ装置および監視装置の構成を示す図である。
図9と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
図10の例では、音響システムは、監視装置70をさらに備えている。監視装置70は、LAN20を介して、スピーカ装置15と接続されている。
【0053】
監視装置70は、故障検知部150の機能と、通知部155の機能を備えている。通知部155は、監視装置70のCPUが実行するプログラムにより実現可能である。したがって、監視装置70は、プログラムを記憶する記憶媒体と、CPUと、を備えた汎用のコンピュータにより実現可能である。例えば、監視装置70は、ノート型PC11またはタブレット型PC12により実現可能である。
【0054】
監視装置70は、
図9で示した故障検知部150と同様に、LチャンネルまたはRチャンネルに異常があるか否かを判断する。
【0055】
図10の構成によれば、仮にCPU103が故障した場合でも、監視装置70により、スピーカ装置の状態を把握することができる。例えば、スピーカ装置15において、A系統の音の再生は正常であるにも関わらず、CPU103だけがハングアップして動作しない場合がある。この場合、仮にB系統で代替再生がなされると、A系統の音が2重に出力されることになる。しかし、
図10の構成によれば、CPU103がハングアップしても、監視装置70によりスピーカ装置15の状態を把握することができるため、監視装置70が、代替再生が必要であるか否かを適切に判断することができる。
【0056】
なお、故障検知部150は、ミキサ130の出力するチャンネルの情報を取得し、ミキサの出力するチャンネルと、信号監視部171の音信号と、を比較してもよい。この場合、監視装置70の故障検知部150は、ミキサ130に入力されているチャンネルの状態(チャンネル番号および音信号の有無等)を制御部151から取得する。故障検知部150は、例えば、ミキサ130が特定チャンネルの音信号の出力を停止する状態である場合でも、該特定チャンネルの音信号が入力されない場合は、異常であると判断しない。逆に、故障検知部150は、ネットワークI/F106からミキサ130に音信号が入力されていて特定チャンネルの音信号を出力させる状態であるにも関わらず、信号監視部171から音信号を入力しない場合には、異常が発生していると判断する。
【0057】
なお、信号監視部171と監視装置70とは、デジタルオーディオケーブルで接続されていてもよい。また、信号監視部172と監視装置70とは、アナログオーディオケーブルで接続されていてもよい。また、収音装置173と監視装置70とは、アナログオーディオケーブルで接続されていてもよい。この場合、監視装置70は、アナログオーディオ信号をデジタルオーディオ信号に変換する機能を備える。あるいは、故障検知部150は、信号監視部171、信号監視部172、および収音装置173の出力する音信号は、制御部151およびLAN20を介して取得してもよい。
【0058】
また、監視装置70は、系統毎に設けられていることが好ましい。
【0059】
図11は、変形例5に係るスピーカ装置および監視装置の構成を示す図である。
図10と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
図11の例では、スピーカ装置15のCPU103は、第2故障検知部157を備える。
【0060】
第2故障検知部157は、故障検知部150と同じ機能を有し、LチャンネルまたはRチャンネルに異常があるか否かを判断する。この場合、スピーカ装置とは独立した監視装置でスピーカ装置の状態を監視しつつ、スピーカ装置においても、自装置の状態を監視する。すなわち、スピーカ装置は、2重に監視を行うことにより、いずれか一方が故障しても正常動作を続けることが可能となる。
【0061】
なお、各スピーカ装置は、他のスピーカ装置の状態を監視する第3故障検知部を備えていてもよい。この場合、さらに、他装置の状態を監視することにより、多重監視を行なうことができる。
【0062】
図12は、変形例6に係る音響システムの構成を示す図である。
図12の例では、ミキサ130がスピーカ装置15ではなく、他の制御装置90に設けられている点で、
図11と異なる。他の構成については、
図11と同様である。
【0063】
制御装置90は、DSPおよびCPUを有し、機能的に、ミキサ130および制御部950を備える。また、制御装置90は、ネットワークI/F906を介してLAN20に接続し、他の装置と接続する。
【0064】
制御装置90のミキサ130は、ソース機器から各系統の音信号を入力し、スピーカ装置に分配する。例えば、ミキサ130は、A系統の音信号をスピーカ装置15に送信し、B系統の音信号をスピーカ装置16に送信し、C系統の音信号をスピーカ装置17に送信する。
【0065】
この場合も、各系統において故障を検知した場合には、他の系統のスピーカ装置が、故障した系統の音を代替再生する。
【0066】
例えば、スピーカ装置15を監視する監視装置70が故障を検知した場合に、監視装置70は、制御装置90に、系統Aの故障通知を行なう。制御装置90の制御部950は、ミキサ130に対して、A系統の音信号を他装置(例えばスピーカ装置16)に送信する設定を行なう。これにより、制御装置90は、A系統の音信号をスピーカ装置16で代替再生させる。
【0067】
なお、各スピーカ装置のCPU103が故障した場合、あるいはネットワークI/F106が故障した場合には、該スピーカ装置は、LAN20を介して通信できない状態となる。この場合も、監視装置70が、スピーカ装置の再生機能が故障しているか否かを判断するため、制御装置90は、代替再生を行なうか否かを適切に判断することができる。
【0068】
なお、制御装置90は、全ての系統の音信号を、ブロードキャストで送信してもよい。この場合、各スピーカ装置のネットワークI/F106は、全ての系統の音信号を受信する。ネットワークI/F106は、受信した全系統の音信号のうち、自装置の系統の音信号を後段の信号監視部171に出力する。この場合も、各系統において故障を検知した場合には、故障した系統の音信号が他の系統のスピーカ装置において代替再生される。例えば、スピーカ装置15の故障を監視する監視装置70が、故障を検知した場合に、制御装置90に、系統Aの故障通知がなされる。制御装置90は、代替再生させるスピーカ装置(例えばスピーカ装置16)に対して、A系統の音信号を再生させるための指示情報を送信する。スピーカ装置16は、自装置のB系統とともに、A系統の音信号を出力する。
【0069】
最後に、本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。