特許第6880887号(P6880887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880887
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】金属サイディング用金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/12 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   E04F13/12 C
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-56665(P2017-56665)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-159226(P2018-159226A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100182925
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 明弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 剛之
(72)【発明者】
【氏名】仲子 武文
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0091310(KR,A)
【文献】 特開2014−173247(JP,A)
【文献】 特開2011−094327(JP,A)
【文献】 特開2002−371690(JP,A)
【文献】 米国特許第04130974(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/12
B44C 1/24
B21D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅を有し、幅方向に連結するために幅方向両側に設けられる嵌合部と、該嵌合部よりも幅方向内側に設けられる柄部と、を備える金属サイディング用金属板の製造方法であって、
前記柄部は、長手方向全長にわたって形成される複数の溝で構成される長手方向目地と、所定の柄と、を備え、
エンボスロール成形により、所定の幅を有する金属原板のうち前記嵌合部となる幅方向両端部に波打ち防止用柄を形成するとともに、前記金属原板の前記幅方向両端部の内側に前記所定の柄を形成するエンボス形成工程と、
前記エンボス形成工程の後、前記金属原板の前記幅方向両端部の内側に前記長手方向目地を形成する溝形成工程と、
を含む金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項2】
前記所定の柄は、所定の凹凸で形成される模様を含む請求項1に記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項3】
前記エンボス形成工程において、前記長手方向目地が形成される領域に前記模様を形成する請求項2に記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項4】
前記模様の深さは、前記長手方向目地の深さよりも浅い請求項3に記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項5】
前記所定の柄は、幅方向に沿った複数の溝で構成される幅方向目地を含む請求項1〜4のいずれかに記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項6】
前記溝形成工程において前記長手方向目地が形成される領域に、前記エンボス形成工程において前記幅方向目地を幅方向両側に延長して形成する請求項5に記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項7】
前記幅方向目地の深さは、前記長手方向目地の深さよりも浅い請求項6に記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項8】
前記金属原板は、鋼板である請求項1〜7のいずれかに記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項9】
前記鋼板は、めっき鋼板である請求項8に記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【請求項10】
前記鋼板は、塗装鋼板である請求項8又は9に記載の金属サイディング用金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁等に用いられる金属サイディング用金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁材等として、耐久性、軽量性、防水性、断熱性等を有する金属サイディングが用いられている。
金属サイディングは、矩形状に構成され、断熱材や消音材として機能する発泡ポリウレタン等の芯材と、芯材の表面を被覆する金属板と、芯材の裏面を被覆するシート状の裏面材で構成される。
【0003】
このような金属サイディングに用いられる金属板は、通常、原板としての金属帯板にエンボスロール、プレス型等の成形型によるエンボス加工が施されることによって、幅方向の中央部に様々な凹凸形状や模様等を有する柄部が形成されている。また、金属サイディングを建物の外壁等に取り付ける際には、複数枚の金属サイディングを連結させる必要があるため、金属板の幅方向の両端部に嵌合部が形成されている。
【0004】
近年、金属サイディングには、さらなる高級感、重厚感が求められており、高意匠化が進んでいる。これに伴って、金属サイディングを構成する金属板の柄部の目地を深く形成することが望まれている。前述したように金属サイディングに用いられる金属板は、幅方向で中央部が柄部、両端部が嵌合部となっている。そのためエンボス加工では金属帯板の中央部のみに柄部を付与するが、両端部の嵌合部となる部分は平坦なままであるため、長手方向に縮んだ柄部に対して両端部が長く波打つ形状になる。このような金属帯板を用いて金属サイディングにすると、外観に波打った形状が残り、意匠性が低下してしまう。また、両端部が波打ったままの金属帯板をロール成形により成形して嵌合部を形成すると、金属板にシワや、ねじれ、反りが生じる等の問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1では、嵌合部となる金属帯板の幅方向両端部に、多数の小さい凹凸からなる波打ち防止用柄を設けることにより、柄部の加工歪みとバランスをとって柄部に歪みが生じないようにする方法が提案されている。
また、特許文献2では、エンボス加工時に、嵌合部となる金属帯板の幅方向両端部から柄部に材料が流入するのを拘束するために、金属帯板の幅方向両端部と柄部との間に長手方向全長にわたって材料流入防止用溝を設ける方法が提案されている。
【0006】
特許文献1及び2に記載の方法では、柄部、波打ち防止用柄及び材料流入防止用溝等は、1回のエンボス加工により形成されたが、特許文献3では、予備エンボス成形機及び本エンボス成形機の2つのエンボス成形機を用いてエンボス加工を2段に分けて、柄部を形成する方法が提案されている。1段目の予備エンボス加工で、長手方向目地及び幅方向目地における所定の深さの0.2〜0.6倍の深さまで加工し、2段目の本エンボス加工で、所定の深さまで加工することにより、歪を生じさせずに1.0〜1.3mm深さの目地を形成することが可能である。
【0007】
また、特許文献4では、2つのエンボス成形機を用いて、本エンボス成形機に対して予備エンボス成形機の金属帯板の送り出し速度を遅くすることにより、本エンボス成形機で成形される材料に上流側から張力をかけ、材料の引き込み量を調整することにより、3〜8mmの深さの目地を金属板のシワ、ねじれ、反り等なく形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−240294号公報
【特許文献2】特開2014−173247号公報
【特許文献3】特開平11−20398号公報
【特許文献4】特開2004−330577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜3に記載の方法によっても、近年、求められているさらに凹凸の深い模様や目地を形成すると、金属板にねじれや反りが発生してしまう。
また、特許文献4に記載の方法によれば、特許文献1〜3に記載の方法に比べてさらに凹凸の深い模様や目地を形成することが可能であるが、鋼板等の強度が高い原板を加工する場合には、大きい張力を負荷する必要があるため、エンボス成形機のコスト増につながる。また、めっきや塗装が施された鋼板を用いる場合には、張力をかけながらエンボス加工を行うと、めっき層や塗膜層に割れやクラックが発生し、耐食性が低下してしまうおそれがある。
【0010】
従って、本発明は、凹凸の深い模様や目地を形成する場合であっても、張力を負荷せずに金属板に生じるねじれや反りを低減できる金属サイディング用金属板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、所定の幅を有し、幅方向に連結するために幅方向両側に設けられる嵌合部と、該嵌合部よりも幅方向内側に設けられる柄部と、を備える金属サイディング用金属板の製造方法であって、前記柄部は、長手方向全長にわたって形成される複数の溝で構成される長手方向目地と、所定の柄と、を備え、エンボスロール成形により、所定の幅を有する金属原板のうち前記嵌合部となる幅方向両端部に波打ち防止用柄を形成するとともに、前記金属原板の前記幅方向両端部の内側に前記所定の柄を形成するエンボス形成工程と、前記エンボス形成工程の後、前記金属原板の前記幅方向両端部の内側に前記長手方向目地を形成する溝形成工程と、を含む金属サイディング用金属板の製造方法に関する。
【0012】
また、前記所定の柄は、所定の凹凸で形成される模様を含むことが好ましい。
【0013】
また、前記溝形成工程において前記長手方向目地が形成される領域に、前記エンボス形成工程において前記模様が形成されることが好ましい。
【0014】
また、前記模様の深さは、前記長手方向目地の深さよりも浅いことが好ましい。
【0015】
また、前記所定の柄は、幅方向に沿った複数の溝で構成される幅方向目地を含むことが好ましい。
【0016】
また、前記溝形成工程において前記長手方向目地が形成される領域に、前記エンボス形成工程において前記幅方向目地が幅方向両側に延長して形成されることが好ましい。
【0017】
また、前記幅方向目地の深さは、前記長手方向目地の深さよりも浅いことが好ましい。
【0018】
また、前記金属原板は、鋼板であることが好ましい。
【0019】
また、前記鋼板は、めっき鋼板であることが好ましい。
【0020】
また、前記鋼板は、塗装鋼板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、エンボス形成工程で波打ち防止用柄と柄部のうち長手方向目地以外の柄とを形成することにより、金属原板を長手方向に均一に縮ませ、その後、溝形成工程で金属原板が長手方向に縮む影響の少ない長手方向目地を形成することで、ねじれや反りを低減した金属サイディング用金属板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る製造方法により製造された金属サイディング用の金属板の一実施形態を示す図である。
図2】本発明に係る製造方法の一例を示す概略説明図である。
図3図2において、エンボスロールを通過してエンボス加工された金属原板及びA−A断面における金属原板表面の形状を示す図である。
図4図2において、溝形成ロールを通過して長手方向目地が形成された金属原板及びB−B断面における金属原板表面の形状を示す図である。
図5】実施例において、長手方向における縮み量の測定箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
近年、金属サイディングは高意匠化に伴って深い(高低差が大きい)凹凸柄が要求されるようになり、上述の特許文献1に記載の波打ち防止用柄の採用によっても幅方向における長手方向収縮量の不均一を十分に低減することができなくなっている。
【0024】
また、特許文献2に記載の嵌合部が形成される金属板の両端部と柄部との境に、長手方向全長にわたって延びる溝を入れることで、長手方向の長さを、幅方向で均一にする方法でも、柄部の長手方向目地を構成する溝における長手方向の長さに対して、長手方向目地を構成する溝と溝の間の長さを同一にすることができない。
【0025】
さらに、特許文献4に記載の予備エンボス成形機を用いて長手方向目地となる溝を予備成形した上で、張力を負荷しながら本エンボス成形機でエンボス加工することで深い溝を設ける技術を用いた場合、金属板の長さが幅方向で均一になっても塗膜の割れが発生してしまう。
【0026】
本発明者らは、1段のエンボス成形では、金属原板の材料の流入しやすい幅方向の柄部両端と材料流入がない中央部で、長手方向の長さに差が出ることによって、エンボス加工された金属原板にねじれや反りが発生すると予測した。また、2段のエンボス成形では、1段目で付与した長手方向目地を構成する溝の長手方向の長さに対して、2段目のエンボスロールで加工される幅方向目地を構成する溝と表面の柄部における模様の加工によって縮んだ長手方向の長さが合わないことによると予測した。
【0027】
さらに、2段成形で塗膜が割れる原因は、張力を負荷しながら後段となるエンボスロールで幅方向目地を成形することによって、長手方向目地と幅方向目地が交差するコーナー部が張り出し成形となり、塗膜が割れると予測した。
【0028】
そこで、本発明者らは、塗膜の割れを防止しながら長手方向に深い目地を成形するため、張力を負荷せずに幅方向目地と模様をエンボスロールで成形し、後段となる成形機で長手方向全長にわたって延びる長手方向目地を成形する方法を発明した。
【0029】
本発明の実施形態に係る金属サイディング用金属板及びその製造方法について図面を用いて説明する。
本明細書では、金属原板表面に目地や模様等の凹凸柄を付ける加工をエンボス加工と称し、凹凸柄を付けるためのロールをエンボスロールと称する。エンボスロールは上下一対で金属原板を挟み圧下することで、凹凸柄を転写することができる。
【0030】
本実施形態に係る金属サイディング用の金属板1(以下、金属板1とする)は、一例として、所定の幅を有する金属帯板等の金属原板1’を図2に示すエンボスロール100及び溝成形機110により成形した後、後述の嵌合部等を形成する所定の加工を行うことにより得られる。金属板1は、図1に示すように、所定の幅を有し、幅方向の両側に嵌合部10が設けられ、嵌合部10よりも幅方向内側に柄部20が設けられる。
金属板1の原板となる金属原板1’の材質は、特に限定されない。例えば、アルミニウム合金板でも構わないが、アルミニウム合金板に比べて高強度である鋼板を用いることが好ましい。また、風雨に対する耐久性を考慮すると、耐食性を備えためっき鋼板や塗装鋼板を用いることが好ましい。本明細書においては、金属板1とは、波打ち防止用柄11や柄部20が形成された後、少なくとも嵌合部10が形成された状態の金属板を意味するものとする。また、金属原板1’とは、嵌合部10が形成される前の状態の金属板を意味するものとする。
【0031】
嵌合部10は、複数枚の金属サイディングを幅方向に連結するために設けられるものであり、金属原板1’の幅方向両端部10’に曲げ加工を施すことにより雄雌の嵌合構造が形成される。例えば、一方側を凸部に、他方側を凹部に形成して両者を嵌合させることで、金属サイディングを連結可能としている。
また、嵌合部10の曲げ加工を施す前に、金属原板1’の幅方向両端部10’よりも内側にエンボス加工が施されて柄部20が形成される。その際、長手方向において金属原板1’の幅方向両端部10’を柄部20と同等に縮ませるために波打ち防止用柄11がエンボスロール100により形成される。波打ち防止用柄11は、長手方向に収縮可能な柄であればどのような柄でもよく、本実施形態では、一例として幅方向に沿った凹部と凸部により形成される波目模様により構成される。これにより、金属原板1’の幅方向両端部10’の波打ちの発生を抑制できるので、嵌合部10の曲げ加工を良好に行うことができ、金属板1のねじれや反りの発生を低減できる。
【0032】
柄部20は、金属板1のうち嵌合部10が設けられる幅方向両端部10’の内側の全面にわたって設けられ、長手方向目地21と、所定の柄として模様22及び幅方向目地23と、を含んで構成される。本実施形態では、所定の柄として、模様22及び幅方向目地23の両方を含む構成を示したが、模様22及び幅方向目地23のうち一方のみで構成されていてもよい。
【0033】
模様22は、微小な凹凸により構成され、その凹凸の深さは長手方向目地や幅方向目地の深さよりも浅く、エンボスロール100により形成される。
幅方向目地23は、幅方向に沿った複数の溝で構成され、エンボスロール100により形成される。
長手方向目地21は、長手方向全長にわたって延びる複数の溝で構成され、その深さは幅方向目地23の深さよりも深く、溝成形機110により形成される。
【0034】
次に、本実施形態に係る金属板1の製造方法について説明する。金属板1の製造方法は、エンボスロール100を用いたエンボス形成工程と、該エンボス形成工程の後に、長手方向目地21となる溝を形成する溝形成工程と、を含んで構成される。
【0035】
<エンボス形成工程>
エンボス形成工程では、図3に示すように、所定の幅を有する金属原板1’の幅方向両端部10’に波打ち防止用柄11を形成するとともに、金属原板1’の幅方向両端部10’の内側に柄部20のうち長手方向目地21を除いて、模様22及び幅方向目地23を形成する(図3左方のA−A断面における金属原板1’表面の形状を参照)。これにより、長手方向について均一に金属原板1’を縮ませながら、エンボス加工を施すことができる。よって、エンボス加工の際に張力を負荷しなくても金属板1に生じるねじれや反りを低減させることができる。
【0036】
また、エンボス加工の際、長手方向目地21が設けられる領域にも模様22や幅方向の両側に延長して幅方向目地23を形成することが好ましい。長手方向目地21が設けられる領域に何も加工を施さない場合は、長手方向目地21が設けられる領域と、模様22や幅方向目地23が形成された領域とで縮む量が異なるために歪が生じる。それに対して、長手方向目地21が設けられる領域にも模様22や幅方向に延長して幅方向目地23を付与した場合には、長手方向目地21が設けられる領域も含めて長手方向にさらに均一に金属原板1’を縮ませることができる。
【0037】
<溝形成工程>
溝形成工程では、溝成形機110の一例としてロール成形機110A〜110C(図2参照)を用いて、長手方向目地21となる複数の溝を複数段に分けて成形する。具体的には、金属原板1’の幅方向両端部10’の内側に、台形状の溝が幅方向に4本、均等な間隔で3段に分けて成形されて、図4に示すように長手方向全長にわたって長手方向目地21が形成される(図4左方のB−B断面における金属原板1’表面の形状を参照)。ここで、ロール成形機の他、プレス加工機により溝を形成してもよいが、生産性の観点からロール成形機を用いる方が好ましい。また、エンボスロール100のすぐ下流にロール成形機110を配置することにより、エンボス形成工程及び溝形成工程間における柄部20の位置ずれを低減することができる。
【0038】
前述した、エンボス形成工程において長手方向目地21が形成される領域にも模様22や幅方向両側に延長された幅方向目地23が形成される場合について説明する。
溝形成工程において長手方向目地21が形成されると、長手方向目地21の深さの方が模様22の深さ及び幅方向目地23の深さよりも深いため、長手方向目地21が形成される領域に形成された模様22や幅方向目地23は消失する。従って、エンボス形成工程と溝形成工程とで、幅方向に多少の位置ずれが生じても、柄部の柄を同調させやすい。
【0039】
以上、説明したように、本発明の製造方法によれば、エンボス形成工程で、波打ち防止用柄11と柄部20のうち長手方向目地21を除く柄とを形成して、長手方向に均一に金属原板1’を縮ませる。その後、溝形成工程で、長手方向に金属原板1’が縮む影響の少ない長手方向目地21となる溝を形成する。これにより、深い目地や模様を形成する場合であっても、張力を負荷せずにねじれや反りを低減した金属板1を得ることができる。また、本発明の製造方法は、張力の負荷が必要ないので、高強度の鋼板にも好適である。また、めっきや塗装が施された鋼板に適用しても、加工途中におけるめっき層や塗装層の割れやクラックの発生を抑制できる。
【0040】
上述の製造工程を経て、波打ち防止用柄11及び柄部20が形成された金属原板1’を、嵌合部10を成形するロールスタンドへ通板して嵌合部10が形成される。その後、適当な長さに裁断して金属板1を得てもよいが、生産性を考慮すると次のように製造する方が好ましい。波打ち防止用柄11及び柄部20が形成された金属原板1’に、嵌合部10を形成後、芯材となる発泡性ウレタン等を充填し、発泡性ウレタン等の裏面をシート状の裏面材で被覆し、必要に応じて加熱して発泡性ウレタン等を発泡させ、その後、適当な長さに裁断すれば金属板1を含んで構成される金属サイディングを一つのラインで製造することができる。
【0041】
以上説明した本実施形態に係る製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
【0042】
(1)本発明は、嵌合部10と、長手方向目地と所定の柄とを含む柄部20と、を備える金属サイディング用金属板1を、エンボスロール成形により、金属原板1’に波打ち防止用柄11と所定の柄とを形成するエンボス加工工程と、該エンボス加工工程の後に長手方向目地21を形成する溝形成工程と、を含んで製造するものとした。これにより、エンボス加工において、柄部20のうち長手方向目地21を除いた所定の柄を形成して、金属原板1’を長手方向について均一に縮ませた後、溝形成工程において、金属原板1’を長手方向に縮ませる影響の少ない長手方向目地21を形成するので、張力を負荷することなく、金属原板1’の幅方向両端部10’における波打ちの発生等を低減することができる。よって、シワやねじれ、反り等の発生を低減した金属板1を得ることができる。
【0043】
(2)所定の柄は、所定の凹凸で形成される模様22を含むものとした。これにより、エンボス形成工程において、波打ち防止用柄11及び模様22が形成されるので、金属原板1’を長手方向において均一に縮ませることができる。
【0044】
(3)溝形成工程において長手方向目地21が形成される領域に、エンボス形成工程において模様22が形成されるものとした。これにより、長手方向目地21が形成される領域も含めて、長手方向にさらに均一に金属原板1’を縮ませることができる。
【0045】
(4)模様22の深さは、長手方向目地21の深さよりも浅くするものとした。これにより、エンボス形成工程において長手方向目地21が形成される領域に形成された模様22は、溝形成工程において長手方向目地21が形成されることにより消失する。よって、エンボス形成工程と溝形成工程とで、幅方向に多少の位置ずれが生じても、柄部の柄を同調させやすい。
【0046】
(5)所定の柄は、幅方向に沿った複数の溝で構成される幅方向目地23を含むものとした。これにより、エンボス形成工程において、波打ち防止用柄11及び幅方向目地23が形成されるので、金属原板1’を長手方向において均一に縮ませることができる。
【0047】
(6)溝形成工程において長手方向目地21が形成される領域に、エンボス形成工程において幅方向目地23が幅方向両側に延長して形成されるものとした。これにより、長手方向目地21が形成される領域も含めて、長手方向にさらに均一に金属原板1’を縮ませることができる。
【0048】
(7)幅方向目地23の深さは、長手方向目地21の深さよりも浅くするものとした。これにより、エンボス形成工程において長手方向目地21が形成される領域に形成された幅方向目地23は、溝形成工程において長手方向目地21が形成されることにより消失する。よって、エンボス形成工程と溝形成工程とで、幅方向に多少の位置ずれが生じても、柄部の柄を同調させやすい。
【0049】
(8)金属原板1’は、鋼板であるものとした。本発明の製造方法は、金属原板1’に加工時に張力を負荷する必要がないので、金属原板1’として強度の高い鋼板を用いても、良好に加工してねじれや反りの発生を低減した金属板1を得ることができる。
【0050】
(9)金属原板1’の鋼板は、めっき鋼板であるものとした。本発明の製造方法は、加工時に張力を負荷する必要がないので、金属原板1’としてめっき鋼板を用いても、めっき層における割れやクラックの発生を低減した金属板1を得ることができる。
【0051】
(10)金属原板1’の鋼板は、塗装鋼板であるものとした。本発明の製造方法は、加工時に張力を負荷する必要がないので、金属原板1’として塗装鋼板を用いても、塗装層における割れやクラックの発生を低減した金属板1を得ることができる。
【実施例】
【0052】
次に、本実施形態の製造方法で製造した実施例の金属板1と、従来技術を用いて製造した比較例の金属板について示す。比較例1として、1対のエンボスロールのみを用いて、長手方向目地、幅方向目地、目地で囲まれる模様及び波打ち防止用柄が形成された比較例1の金属板1aを製造した。また、比較例2として成形ロールと1対のエンボスロールとを用いて、長手方向目地の有無によって、エンボス加工時に与える影響を比較するための比較例2の金属板1bを製造した。
【0053】
実施例1及び比較例2では、金属原板1’及び金属原板1b’として、板厚0.27mm、幅516.5mmの帯状の塗装鋼板を用い、比較例1では、金属原板として板厚0.27mm、幅512mmの帯状の塗装鋼板を用いた。実施例1及び比較例2の方が比較例1よりも長い幅の塗装鋼板を用いた理由は、ロール成形機110で溝が折り曲げられて形成されることにより、幅方向に縮む分を考慮したためである。
塗装鋼板としては、原板規格がJIS G3321−1998に適合し、めっき付着量が両面3点法平均付着量で120g/m以上である溶融55%アルミニウム―亜鉛合金めっき鋼板に、表裏面ともポリエステル樹脂系塗料を塗装した一般的な塗装鋼板を使用した。
【0054】
本発明の金属サイディング用金属板1を得るためのエンボスロール100として、径が300mm、幅方向の長さが600mmの一対の上下ロール100A、100Bを用いた。一対の上下ロールには、金属原板1’の厚みと同等までクリアランスを近づけて金属原板1’を通した時に、以下に説明する柄が金属原板1’の表面に形成されるように彫刻を施した。
【0055】
柄部20が形成される領域は、金属原板1’の表面側の形状が、高さ(深さ)が3mm、幅方向に沿う底辺の長さが381mm、幅方向に沿う上辺の長さが375mmの台形を長手方向の断面形状とする凸形状であり、幅方向目地となる溝及び模様が形成される。
【0056】
長手方向目地21となる領域は、何も加工が施されない4本の帯状の領域で構成される。4本の帯状の領域は、柄部20が形成される領域において、幅方向で均等の間隔で長手方向全長にわたって延びる。
幅方向目地は、高さ(深さ)が2mm、長手方向に沿う底辺の長さが2mm、長手方向に沿う上辺の長さが6mmの台形を幅方向の断面形状とする複数の溝により構成される。これら複数の溝は、長手方向目地となる帯状の領域間を繋ぐように長手方向に100mmから300mmの間隔で不規則に配置される。
模様として、長手方向目地と幅方向目地とで囲まれた角錐台の上面に石調の細かい柄が形成される。
これら、長手方向目地、幅方向目地及び模様が形成されて金属原板1’の表面がブロック調となるように、一対の上下ロール100A、100Bに彫刻が施される。
【0057】
また、嵌合部10となる金属原板1’の幅方向両端部10’に、波打ち防止用柄11として、幅方向端面から幅方向内側に向けて長さ69mm、長手方向に1.0mm間隔、深さ0.4mmの波目模様が形成されるように、一対の上下ロール100A、100Bに彫刻が施される。
【0058】
本発明の金属サイディング用金属板1を得るための溝成形機110として、エンボス加工を施した金属原板1’に、高さ(深さ)が3mm、幅方向に沿う底辺の長さが5mm、幅方向に沿う上辺の長さが11mmの台形を長手方向の断面形状とする溝が4本、幅方向で均等の間隔に3段で長手方向全長にわたって成形されるように設計したロール成形機110A〜110Cを使用した。
【0059】
成形プロフィールは、1段目のロール110Aを用いて幅方向で2本目と3本目を深さ2.0mmとなるように成形し、2段目のロール110Bを用いて1本目と4本目が深さ1.5mm、2本目と3本目は深さ2.5mm、3段目のロール110Cを用いて全てに溝が深さ3mmとなるように成形した。
【0060】
比較例1の金属板1aを得るためのエンボスロールとして、径が300mm、幅方向の長さが600mmの一対の上下ロールを用いた。一対の上下ロールには、金属原板1a’の厚みと同等までクリアランスを近づけて金属原板1a’を通した時に、以下に説明する柄が金属原板1a’の表面に形成されるように彫刻を施した。
【0061】
柄部が形成される領域は、金属原板1a’の表面から、高さ(深さ)が3mm、幅方向に沿う底辺の長さが381mm、幅方向に沿う上辺の長さが375mmの台形を長手方向の断面形状とする凸形状であり、長手方向目地となる溝、幅方向目地となる溝及び模様が形成される。
【0062】
長手方向目地は、高さ(深さ)が3mm、幅方向に沿う底辺の長さが5mm、幅方向に沿う上辺の長さが11mmの台形を長手方向の断面形状とする4本の溝により構成される。4本の溝は、柄部20が形成される領域において、幅方向で均等の間隔で長手方向全長にわたって形成される。
幅方向目地は、高さ(深さ)が2mm、長手方向に沿う底辺の長さが2mm、長手方向に沿う上辺の長さが6mmの台形を幅方向の断面形状とする複数の溝により構成される。これら複数の溝は、長手方向目地を構成する溝と溝とを繋ぐように長手方向に100mmから300mmの間隔で不規則に配置される。
模様として、長手方向目地と幅方向目地とで囲まれた角錐台の上面に石調の細かい柄が形成される。
これら、長手方向目地、幅方向目地及び模様が形成されて金属原板1’の表面がブロック調となるように、一対の上下ロールに彫刻が施される。
【0063】
また、嵌合部10となる金属原板1’の幅方向両端部10’に、波打ち防止用柄11として、幅方向端面から幅方向内側に向けて長さ69mm、長手方向に1.0mm間隔、深さ0.4mmの波目模様が形成されるように、一対の上下ロールに彫刻が施される。
【0064】
比較例2を得るための溝成形機110として実施例1で用いたロール成形機110A〜110Cと、エンボスロール100として実施例1で用いた一対の上下ロール100A及び100Bを用いた。
【0065】
上記、実施例1、比較例1及び2とも、ライン速度15m/minで金属原板を通板した。予め帯状の金属原板には長手方向の任意の個所に1m間隔で幅方向のケガキ線を入れておいた。それぞれの実施例1、比較例1及び2について、金属原板に波打ち防止用柄、長手方向目地、幅方向目地及び模様が付与された後、嵌合部を形成する前の状態において、ケガキ線の間隔を測定した。これら測定結果から、それぞれの金属原板における長手方向の縮み量を算出して、縮み量の比較をした。図5におけるA〜Cの位置における長手方向の縮み量(%)を溝がある時とない時で測定した結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
本発明によるエンボス成形によりエンボス加工を行った後に、長手方向目地を形成した実施例1の場合、長手方向目地における溝と溝の間の位置(A)では「1.20%」縮んだのに対し、長手方向目地を構成する溝の位置(B)では「1.15%」縮み、材料流入しやすい柄部の両端(C)では「1.15%」縮んだ。よって、(B)の位置と(A)の位置には「0.05%」しか差異が発生しなかった。さらに、実施例1で得られた金属原板1’に嵌合部を形成して金属サイディングにしたところ、金属板1の表面に塗膜割れも生じず、金属板1及び金属サイディング自体に反りとねじれも生じなかった。
【0068】
従来の1段のエンボスロールで成形した比較例1の場合、長手方向目地における溝と溝の間の位置(A)では「1.43%」縮んだのに対し、長手方向目地を構成する溝の位置(B)では「1.33%」縮み、材料流入しやすい柄部の両端(C)では「1.45%」縮んだ。よって、(B)の位置と(A)の位置に「0.1%」の差異が生じた。さらに、比較例1で得られた金属原板1a’に嵌合部を形成して金属サイディングにしたところ、金属板1aの表面に塗膜割れが生じ、金属板1a及び金属サイディング自体に反りとねじれが生じた。
【0069】
次に、先に長手方向目地を形成し、その後にエンボス成形によりエンボス加工を行った比較例2の場合、長手方向目地における溝と溝の間の位置(A)では「1.28%」縮んだのに対し、長手方向目地を構成する溝の位置(B)では「1.20%」縮み、材料流入しやすい柄部の両端(C)では「1.25%」縮んだ。よって、(B)の位置と(A)の位置に「0.8%」の差異が生じた。さらに、比較例2で得られた金属原板1b’に嵌合部を形成して金属サイディングにしたところ、金属板1bの表面に塗膜割れが生じ、金属板1b及び金属サイディング自体に反りとねじれが生じた。
【0070】
以上の結果から、本発明に係る金属サイディング用金属板の製造方法によれば、柄部の長手方向の縮み量を均一化でき、金属板に生じるねじれや反りを低減した良好な外観の柄部を呈する金属サイディング用金属板が得られることが理解できる。
【符号の説明】
【0071】
1 金属板
1’ 金属原板
10 嵌合部
11 波打ち防止用柄
20 柄部
21 長手方向目地
22 模様
23 幅方向目地
100 エンボスロール
110 溝成形機
図1
図2
図3
図4
図5