特許第6880902号(P6880902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880902
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】ガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/16 20060101AFI20210524BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20210524BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F02C7/16 AZAB
   F02C3/30 A
   F02C7/22 B
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-61213(P2017-61213)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162759(P2018-162759A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年11月8日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「エネルギーキャリア」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 正宏
(72)【発明者】
【氏名】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】水谷 琢
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 司
(72)【発明者】
【氏名】藤森 俊郎
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−107703(JP,A)
【文献】 特開平02−055835(JP,A)
【文献】 特開2014−058979(JP,A)
【文献】 特開2015−190466(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/082360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/16
F02C 3/22
F02C 3/30
F02C 3/34
F02C 7/22
F01D 5/18
F01D 9/02
F01D 25/12
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硝触媒と還元剤としてのアンモニアとを用いて燃焼ガスを脱硝処理するガスタービンにおいて、
前記燃焼ガスの温度分布のうち平均値よりも高温となる前記燃焼ガスに曝されるタービン翼に、圧縮機から供給される冷却空気と共に前記アンモニアを供給し、前記タービン翼の温度を低下させ
前記タービン翼に供給される前記アンモニアは、前記タービン翼の冷却後に燃料として燃焼器に供給されることを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記タービン翼に供給される前記アンモニアは、前記タービン翼の冷却後に燃焼ガス流路内に噴射され、前記燃焼ガスと混合してからタービンから排出されることを特徴とする請求項1記載のガスタービン。
【請求項3】
前記アンモニアは、液体状態で供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記アンモニアは、前記冷却空気と予め混合されて前記タービン翼に供給されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスタービン。
【請求項5】
前記アンモニアを少なくとも燃料の一部として燃焼させて、前記燃焼ガスを発生させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスタービン。
【請求項6】
前記タービン翼は、内部に前記アンモニアの流路を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスタービン。
【請求項7】
前記タービン翼は、内部から外部に向けて前記アンモニアを排出する流路を持つことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、アンモニアを燃料として燃焼させる燃焼装置及びガスタービンが開示されている。すなわち、この燃焼装置及びガスタービンは、天然ガスにアンモニア(燃料用アンモニア)を予混合させて燃焼器に供給することによりタービンを駆動する燃焼排ガスを得ると共に、窒素酸化物(NOx)を低減することを目的として、燃焼器内の下流側に燃焼領域で発生した窒素酸化物(NOx)を還元用アンモニアを用いて還元する還元領域を形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−191507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記燃焼排ガス(主流)は、スクロールあるいはトランジションピース等、燃焼排ガスの流れを偏向する部材(偏向部材)を介して環状流に整流されて、複数の静翼が円環状に配置されたと静翼部及び複数の動翼が円環状に配置されたと動翼部に供給される。すなわち、上記タービンでは、偏向部材及び静翼部を介して動翼部に燃焼排ガス(燃焼ガス)が駆動流体として作用することにより動翼部に結合した主軸が回転駆動される。
【0005】
ここで、偏向部材の入口において燃焼ガスの入口温度分布が不均一であった場合、円環状に配置された複数の静翼及び動翼における熱応力が不均一になる。すなわち、温度が比較的高い燃焼ガスに曝される静翼は、温度が比較的低い燃焼ガスに曝される静翼よりも応力が高くなる。また、動翼には、温度が比較的高い燃焼ガスと温度が比較的低い燃焼ガスとが交互に曝される。したがって、偏向部材の入口における燃焼ガスの温度不均一は、静翼部及び動翼部の故障つまりガスタービンの故障を招来させるので是正する必要がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数の静翼及び動翼に作用する燃焼ガスの温度分布を均一化あるいは抑制するガスタービンの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、ガスタービンに係る第1の解決手段として、脱硝触媒と還元剤としてのアンモニアとを用いて燃焼ガスを脱硝処理するガスタービンにおいて、前記燃焼ガスの温度分布のうち平均値よりも高温となる前記燃焼ガスに曝される前記タービン翼に、圧縮機から供給される冷却空気と共に前記アンモニアを供給し、前記タービン翼の温度を低下させる、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、ガスタービンに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記タービン翼に供給される前記アンモニアは、前記タービン翼の冷却後に燃料として燃焼器に供給する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、ガスタービンに係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記タービン翼に供給される前記アンモニアは、前記タービン翼の冷却後に燃焼ガス流路内に噴射され、前記燃焼ガスと混合してからタービンから排出される、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、ガスタービンに係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記アンモニアは、液体状態で供給される、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、ガスタービンに係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、前記アンモニアは、前記冷却空気と予め混合されて前記タービン翼に供給される、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、ガスタービンに係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記アンモニアを少なくとも燃料の一部として燃焼させて、前記燃焼ガスを発生させる、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、ガスタービンに係る第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれかの解決手段において、前記タービン翼は、内部に前記アンモニアの流路を有する、という手段を採用する。
【0014】
本発明では、ガスタービンに係る第8の解決手段として、上記第1〜第7のいずれかの解決手段において、前記タービン翼は、内部から外部に向けて前記アンモニアを排出する流路を持つ、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の静翼及び動翼に作用する燃焼ガスの温度分布を均一化あるいは抑制するガスタービンを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンの全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態におけるタービンの詳細構成を示す第1の模式図である。
図3】本発明の一実施形態におけるタービンの詳細構成を示す第2の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るガスタービンAは、図1に示すように圧縮機1、燃焼器2、タービン3、脱硝チャンバ4、タンク5、ポンプ6及び気化器7を備えている。このようなガスタービンAは、発電機Gの駆動源であり、燃料であるアンモニアを燃焼させることにより回転動力を発生させる。
【0018】
圧縮機1は、外気から取り込んだ空気を所定圧まで圧縮して圧縮空気を生成する多段式の軸流圧縮機である。この圧縮機1は、上記圧縮空気の一部を燃焼用空気として燃焼器2に供給し、また上記圧縮空気の一部を冷却空気としてタービン3に供給する。燃焼器2は、気化器7から供給された気体アンモニアを圧縮機1から供給された燃焼用空気を酸化剤として燃焼させ、燃焼ガスをタービン3に出力する。
【0019】
タービン3は、上記燃焼ガスを駆動ガスとして用いることにより回転動力を発生する多段式の軸流タービンである。このタービン3は、図示するように圧縮機1及び発電機Gと軸結合しており、自らの回転動力によって圧縮機1及び発電機Gを回転駆動する。
【0020】
また、このタービン3は、図2に示すように、取込口3a、スクロール流路3b、複数の静翼3d及び複数の動翼3eを備えている。なお、静翼3d及び動翼3eは、本発明におけるタービン翼である。取込口3aは、燃焼器2と連通し、当該燃焼器2から燃焼ガスを取り込む開口である。スクロール流路3bは、この取込口3aに連通しており、取込口3aから取り込んだ燃焼ガスを環状流Sに整流する。
【0021】
複数の静翼3dは、上記スクロール流路3bの中心側に円環状に配列した初段の固定翼であり、静翼部を構成している。複数の動翼3eは、このような複数の静翼3dに対して紙面奥側に配置された初段の可動翼であり、動翼部を構成している。複数の動翼3eは、複数の静翼3dと同様にスクロール流路3bの中心に位置する回転軸Jに対して円環状に配列している。このような静翼部と動翼部とは、回転軸Jの延在方向(紙面垂直方向)において交互に多段配置されている。
【0022】
このような複数の静翼3d及び動翼3eにおいて、図2の符号Hは、燃焼ガスの温度分布のうち、平均値よりも高温の燃焼ガスが流入する高温領域を示している。すなわち、取込口3aに流入する燃焼ガスの温づ分布が均一ではなく、図2における右側が左側よりも温度が高い関係で、高温領域Hに位置する静翼3dは、平均温度よりも高い温度の燃焼ガスに曝される。
【0023】
ここで、圧縮機1がタービン3に向けて出力する冷却空気(圧縮空気)は、図3に示すように分岐流路3fを介してタービン3の各静翼3dに分配供給される。また、各静翼3dのうち、上述した高温領域Hに位置する静翼3dに対応する分岐流路3fには、図示するように液体アンモニアが供給される。すなわち、高温領域Hに位置する静翼3dに対応する分岐流路3fは液体アンモニアの流路であり、液体アンモニアは、各静翼3dの前段に設けられた分岐流路3f内で冷却空気(圧縮空気)と予混合された後に各静翼3dに供給される。
【0024】
冷却空気は各静翼3dに分配供給されるので各静翼3dを略均等に冷却するが、液体アンモニアは、高温領域Hに位置する静翼3dのみを内側から冷却する冷却剤として機能する。また、各静翼3dには表面をフィルム冷却するための孔(フィルム冷却孔)が多数形成されている。静翼3dに供給された冷却空気及び液体アンモニアの一部は、上記フィルム冷却孔を介して静翼3dの内部から表面側に漏れ出して静翼3dを表面からの燃焼ガスを冷却する。
【0025】
この結果、各静翼3dの表面は冷却空気によって略均等に冷却され、また高温領域Hに位置する静翼3dの表面は液体アンモニアによってさらに冷却される。さらに、静翼3dの表面の液体アンモニアは、燃焼ガスの熱によって気化して気体アンモニアとなり、後段に位置する動翼3eを表面から冷却する。すなわち、高温領域Hを通過する動翼3eは、液体アンモニアによって効果的に冷却される。すなわち、各静翼3dは、内部から外部に向けて液体アンモニアを排出するフィルム冷却孔(流路)を備え、表面上に燃焼ガスよりも低温の気体アンモニア層(ガス層)を形成する。
【0026】
このようなタービン3は、動力回収した後の燃焼ガスを脱硝チャンバ4に向けて排出する。このタービン3から脱硝チャンバ4に排出される燃焼ガスは、上述した分岐流路3f内に噴射された液体アンモニアに由来する気体アンモニアが含まれている。脱硝チャンバ4は、内部に脱硝触媒が充填されており、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を上記気体アンモニアを還元剤として脱硝処理することにより窒素(N)に還元する。
【0027】
タンク5は、所定量の液体アンモニアを貯留する燃料タンクであり、液体アンモニアをポンプ6に供給する。ポンプ6は、タンク5から供給された液体アンモニアを所定圧に加圧して気化器7及びタービン3に供給するポンプである。気化器7は、ポンプ6から供給された液体アンモニアを気化させることにより気体アンモニアを生成する。この気化器7は、気体アンモニアを燃料(燃料用アンモニア)として燃焼器2に供給する。
【0028】
次に、本実施形態に係るガスタービンAの動作(定常動作)について詳しく説明する。
このガスタービンAでは、ポンプ6が作動することによって液体アンモニアがタンク5から気化器7及びタービン3に供給される。気化器7では上記液体アンモニアが気化して気体アンモニア(燃料用アンモニア)が生成され、タービン3では液体アンモニアが圧縮機1から供給される冷却空気に混合される。そして、気化器7で発生した気体アンモニア(燃料用アンモニア)は、燃焼器2に供給される。
【0029】
一方、圧縮機1が作動することによって圧縮空気が燃焼用空気として燃焼器2に供給される。燃焼器2では、気化器7から供給された気体アンモニア(燃料用アンモニア)が圧縮機1から供給された燃焼用空気を酸化剤として燃焼することにより燃焼ガスが発生する。そして、この燃焼ガスがタービン3に駆動ガスとして作用することにより、タービン3は圧縮機1及び発電機Gを駆動する回転動力を発生する。
【0030】
ここで、タービン3の詳細動作をさらに説明すると、タービン3では、気化器7から供給された燃焼ガスが取込口3aからスクロール流路3bに流れ込むことにより環状流Sになる。そして、このような燃焼ガスは、スクロール流路3bの内側に円環状に配置された複数の静翼3dの間を通過し、複数の静翼3dに隣接して同じく円環状に配置された複数の動翼3eに噴きつけることによって回転軸Jに回転動力を発生させる。
【0031】
すなわち、燃焼ガスは、円環状に配置され複数の静翼3dの間に放射状に形成された複数の隙間に進入し、多段に設けられた複数の静翼3dと複数の静翼3dをの間を通過する間に回転軸Jに回転動力を発生させる。そして、複数の静翼3dは、固定翼であるが故に取込口3aにおける燃焼ガスの温度分布に応じた温度環境に曝される。
【0032】
例えば、燃焼器2から取込口3aに流れ込んだ燃焼ガスのうち、スクロール流路3bの内側に相当する領域の燃焼ガスの温度が他の領域の燃焼ガスの温度よりも高い場合、図2に示すように、スクロール流路3bの内側かつ入口近傍に高温領域Hが発生する。そして、この高温領域Hに位置する静翼3dは、他の静翼3dよりも高い温度に曝されることになる。また、回転する複数の動翼3eは、温度が比較的高い燃焼ガスと温度が比較的低い燃焼ガスとに交互に曝されることになる。
【0033】
このような高温領域Hは、取込口3aにおける燃焼ガスの温度分布を予め計測することによって、その位置を特定することが可能である。本実施形態におけるタービン3では、燃焼ガスの温度分布を予め計測することにより高温領域Hを特定し、その結果として高温領域Hに対応する分岐流路3fに液体アンモニアを選択的に供給する。そして、この液体アンモニアによって、高温領域Hの静翼3dの冷却能力を他の静翼3dの冷却能力よりも向上させる。
【0034】
そして、このようなタービン3の後段に設けられた脱硝チャンバ4では、予混合冷却空気に含まれる気体アンモニアが還元剤として機能することにより、燃焼ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)が脱硝処理される。すなわち、高温領域Hの静翼3dの冷却に寄与した気体アンモニアは、脱硝チャンバ4において還元剤として機能し脱硝処理される。
【0035】
このような本実施形態に係るガスタービンAによれば、複数の静翼3d及び動翼3eに作用する燃焼ガスの温度分布を均一化あるいは抑制することができる。また、この結果として、タービン3の寿命低下を抑制することが可能である。
【0036】
ここで、上記予混合冷却空気は、圧縮機1から出力された冷却空気にポンプ6から供給された液体アンモニアが混合したものである。周知のように、アンモニアの比熱は3.0kJ/(K・kg)であり、これに対して空気の比熱は1.1kJ/(K・kg)である。アンモニアの比熱は空気の比熱よりも大幅に大きいので、予混合冷却空気は、同じエネルギを受け取った場合に冷却空気単体よりも冷却能力が落ち難い。
【0037】
圧縮機1からタービン3に供給される冷却空気は、圧縮空気であり、よって温度が常温よりも高いが、これに対して液体アンモニアの温度は冷却空気よりも大幅に低い。つまり、予混合冷却空気の温度は、冷却空気単体の温度よりも低いので、冷却空気に液体アンモニアを混合させることによってタービン3の冷却効率を向上させることが可能である。
【0038】
例えば、大気温度を15℃、冷却空気の圧力を12気圧とした場合、冷却空気の温度は390℃程度になるが、液体アンモニアは例えば20気圧まで加圧しても100℃以下である。したがって、冷却空気に液体アンモニアを混合させることにより、タービン3の冷却効率を確実に向上させることが可能である。
【0039】
また、本実施形態に係るガスタービンAでは、気化器7から出力される気体アンモニアではなく、ポンプ6から出力される液体アンモニアを冷却空気に混合させることにより予混合冷却空気としている。すなわち、このガスタービンAでは、液体アンモニアが冷却空気に混合されて蒸発する際の気化熱によって冷却空気が冷却される。したがって、このガスタービンAでは、冷却空気に液体アンモニアを混合させた予混合冷却空気を採用しているので、冷却空気に気体アンモニアを混合させる場合よりも、高温領域Hの静翼3dを効果的に冷却することができる。
【0040】
さらに、予混合冷却空気には逆火のリスクがあるが、アンモニアは燃焼速度が一般的な炭化水素系の燃料、例えば天然ガスよりも燃焼速度が遅いので、上記逆火のリスクは極めて小さい。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、予混合冷却空気を燃焼ガスの比較的高温な領域(高温領域H)に噴射したが、本発明はこれに限定されない。必要に応じて冷却空気と液体アンモニアとを燃焼ガスに向けて個別に噴射しても良い。
【0042】
(2)上記実施形態では、冷却空気に液体アンモニアを混合させて予混合冷却空気を生成したが、本発明はこれに限定されない。必要に応じて冷却空気に気体アンモニアを混合させて予混合冷却空気を生成しても良い。
【0043】
(3)上記実施形態では、気体アンモニアを燃料とするガスタービンAについて説明したが、本発明はこれに限定されない。気体アンモニア以外の炭化水素を燃料としたり、あるいは炭化水素とアンモニアとを燃料としても良い。
【0044】
(4)上記実施形態では、液体アンモニアを分岐流路3f内に噴射したが、アンモニアには金属に対する腐食性があるので、分岐流路3f以降の燃焼ガスの流路にはアンモニアに対して耐食性のある金属材料を用いることが好ましい。
また、予混合冷却空気を用いても逆火のリスクが極めて小さい旨説明したが、必要に応じて逆火検出用のセンサ(温度計)をスクロール流路3b内に設けても良い。
【符号の説明】
【0045】
H 高温領域
S 環状流
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
3a 取込口
3b スクロール流路
3d 静翼(タービン翼)
3e 動翼(タービン翼)
3f 分岐流路
4 脱硝チャンバ
5 タンク
6 ポンプ
7 気化器
図1
図2
図3