特許第6880908号(P6880908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880908廃プラスチック混合物からの炭素繊維強化複合材料の分別回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880908
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】廃プラスチック混合物からの炭素繊維強化複合材料の分別回収方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/00 20060101AFI20210524BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20210524BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20210524BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20210524BHJP
   B03C 1/18 20060101ALI20210524BHJP
   B03C 1/24 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B29B17/00ZAB
   B03C1/00 BZAB
   B09B5/00 Q
   B29B17/02
   B03C1/18
   B03C1/24 101
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-62845(P2017-62845)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-165009(P2018-165009A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 透
【審査官】 武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−095001(JP,A)
【文献】 特開平10−272381(JP,A)
【文献】 特開2008−104915(JP,A)
【文献】 特開2004−181281(JP,A)
【文献】 特開2015−052467(JP,A)
【文献】 特開2015−075428(JP,A)
【文献】 特開2000−254919(JP,A)
【文献】 特開2003−033915(JP,A)
【文献】 特開2016−147437(JP,A)
【文献】 水上孝一,線状電流により炭素繊維強化複合材料に誘導される渦電流の解析解,日本複合材料学会誌,日本,一般社団法人 日本複合材料会,2016年,42/3,98−106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00
B29B 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化複合材料と廃プラスチックとを含む廃プラスチック混合物を、コンベア上に投入して搬送する投入搬送工程と、
前記コンベアにおける前記廃プラスチック混合物の投入位置よりも下流の位置に設置された磁石の回転による電磁誘導作用によって、該廃プラスチック混合物中の前記炭素繊維強化複合材料を、該コンベアの搬送経路外へ排出する排出工程と、
排出された前記炭素繊維強化複合材料と、前記コンベアに搬送される前記廃プラスチックとをそれぞれ別個に回収する回収工程と、を含む廃プラスチック混合物からの炭素繊維強化複合材料の分別回収方法。
【請求項2】
前記磁石が、永久磁石及び電磁石のうち少なくとも一種である請求項1に記載の分別回収方法。
【請求項3】
前記磁石が前記コンベアの搬送方向に沿って回転するようになっており、
前記磁石として、回転に連れてS極とN極とが交互に現れるように磁極が配置されたものを用いる請求項1又は2に記載の分別回収方法。
【請求項4】
更に磁性金属と非磁性金属とを含む前記廃プラスチック混合物を前記投入工程において前記コンベア上に投入し、
前記排出工程において、前記炭素繊維強化複合材料と、前記磁性金属と、前記非磁性金属とを同時に排出し、
前記回収工程において、前記炭素繊維強化複合材料と、前記廃プラスチックと、前記磁性金属と、前記非磁性金属とをそれぞれ別個に且つ同時に回収する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の分別回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック混合物からの炭素繊維強化複合材料の分別回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維とは、アクリル繊維又はピッチを原料として高温で炭化して作った繊維であり、繊維径が数μmの非常に微細なものである。この炭素繊維をポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリスチレン等の熱可塑性樹脂又はフェノール樹脂若しくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と複合させて製造した炭素繊維強化複合材料(以下、「CFRP」と言うことがある)は、軽量でありながら強度や耐衝撃性などの力学的特性に優れるため、航空機部材、自動車部材、スポーツ用品等に幅広く利用されている。しかしCFRPは、リサイクルルートが確立されていないことから、利用後は廃プラスチックとして廃棄されている。廃プラスチックは熱エネルギー代替廃棄物としてキルンでの焼成用燃料等に利用されることがある。
【0003】
一方、CFRPを含む廃プラスチックを燃料として利用した場合、例えばキルンでの焼成用燃料として利用した場合、セメントキルン焼成排気ガス中の煤塵を捕集する電気集塵器において、煤塵の捕集効率の低下を引き起こす問題が生じる。これは、炭素繊維が導電性且つ難燃性であるため、電気集塵器に炭素繊維が入ることで荷電の低下が発生し、それに起因して電気集塵器の性能が低下してしまうことによる。炭素繊維による電気集塵器の荷電低下を防止するために、特許文献1では、CFRPを含む廃プラスチックをセメント製造装置において利用する場合に、廃プラスチックを一定の粒径以下に粉砕し、セメントキルン内の特定の位置に供給する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−131463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、CFRPを含む廃プラスチックを平均粒径3mm以下に粉砕する必要があるが、CFRPを含まない廃プラスチックは粉砕する必要はなく、過剰な粉砕を行うことになっていた。このため、廃プラスチックからCFRPを事前に選別できれば、CFRPのみを個別に処理して、CFRP以外の廃プラスチックは通常の方法で処理することができることが可能となり、廃棄物処理の観点から効率的である。しかしながら、現状、炭素繊維を選別する有効な手段は見出されていない。
【0006】
したがって本発明の課題は、廃プラスチック混合物から、CFRPなどの炭素繊維を含むプラスチックを効率的に選別して分別回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、電磁誘導を用いて炭素繊維強化複合材料に反発力を発生させ、炭素繊維強化複合材料のみを選択的に排出する工程を組み入れることで前記課題を解決できる知見を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、炭素繊維強化複合材料と廃プラスチックとを含む廃プラスチック混合物を、コンベア上に投入して搬送する投入搬送工程と、
前記コンベアにおける前記廃プラスチック混合物の投入位置よりも下流の位置に設置された磁石の回転による電磁誘導作用によって、該廃プラスチック混合物中の前記炭素繊維強化複合材料を、該コンベアの搬送経路外へ排出する排出工程と、
排出された前記炭素繊維強化複合材料と、前記コンベアに搬送される前記廃プラスチックとをそれぞれ別個に回収する回収工程と、を含む廃プラスチック混合物からの炭素繊維強化複合材料の分別回収方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、廃プラスチック混合物から炭素繊維強化複合材料を効果的に選別して分別回収することができる。また、選別された炭素繊維強化複合材料は別途粉砕し、セメントキルン焼成等の燃料として使用することが可能である。更に選別された炭素繊維強化複合材料は回収利用向けに供することも可能である。
更に、本発明によれば、廃プラスチック混合物に含まれる金属異物も炭素繊維強化複合材料と同時に選別して分別回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、炭素繊維強化材料及び廃プラスチックを選別して分別回収する選別装置の模式図である。
図2図2(a)は、磁石の磁極方向を示した断面図であり、図2(b)は、図2(a)に示す磁石の平面視における磁極の領域を示した図である。
図3図3は、炭素繊維強化材料、廃プラスチック、磁性金属、及び非磁性金属の混合物を選別して分別回収する選別装置の模式図である。
図4図4は、図1及び図3に示す実施形態の選別装置の別の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明において炭素繊維とは、グラファイト構造を有する炭素からなる繊維であり、繊維中の炭素含有率が90質量%以上となっているものである。炭素繊維は、この構造に由来して一般に軽量、高強度、高弾性及び高導電性のものである。炭素繊維は、例えばポリアクリルニトリル(PAN)からなる繊維、又は石油精製・石油乾留副産物であるピッチからなる繊維を、大気中で150〜400℃で耐炎化処理を行い、更に酸素非存在下で800〜1500℃で炭素化処理することによって得ることができる。
【0012】
本発明において分別の対象となる炭素繊維強化複合材料(CFRP)は、炭素繊維と樹脂とが含まれるものである。CFRPに含まれる樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレン等の熱可塑性樹脂、並びにフェノール樹脂及びエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられるが、これらに限られない。これらの樹脂は炭素繊維と混合、溶融、溶着若しくは含浸する方法、又は炭素繊維表面をコーティングする方法で利用でき、CFRPの用途に応じて使用する炭素繊維及び樹脂の種類や含有量を適宜選択できる。
【0013】
CFRPは、軽量及び高強度等の炭素繊維の特性をそのまま有していることから、日用品、パソコン、家電、自動車、航空機、スポーツ用品及び建築土木分野等の様々な用途に使用されている。そのため、CFRPを含むプラスチックは一般家庭ごみや、CFRPの工業的な生産工程、自動車及び家電の廃棄処分で生じるシュレッダーダストとして排出されることが多く、CFRPの有無にかかわらずプラスチックの混合物として廃棄される。また、廃棄されたプラスチック混合物、すなわちCFRPと廃プラスチックとを含む廃プラスチック混合物には、分別が十分でないことに起因して、CFRPの他に、金属やゴムなどの異物が混入することがある。
【0014】
これで廃プラスチック混合物は、減量化及び資源化等を目的とした廃棄物中間処理の過程で、CFRPや混入した異物が完全に除去されることなく破砕され、その破砕物は最終処分として埋立処分されるか、又は燃料原料として再利用されていた。これに対して本発明によれば、以下に詳述するとおり、廃プラスチック混合物からCFRPを選別することができ、CFRPと廃プラスチックとを別個に回収することができる。以下に、廃プラスチック混合物からの炭素繊維強化複合材料の分別回収方法を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明の分別回収方法は、以下の(ア)−(ウ)の工程に大別される。
(ア)炭素繊維強化複合材料と廃プラスチックとを含む廃プラスチック混合物を、コンベア上に投入して搬送する投入搬送工程。
(イ)前記コンベアにおける前記廃プラスチック混合物の投入位置よりも下流の位置に設置された磁石の回転による電磁誘導作用によって、該廃プラスチック混合物中の前記炭素繊維強化複合材料を、該コンベアの搬送経路外へ排出する排出工程。
(ウ)排出された前記炭素繊維強化複合材料と、前記コンベアに搬送される前記廃プラスチックとをそれぞれ別個に回収する回収工程。
【0016】
前記の(ア)−(ウ)の工程を備えた本発明の分別回収方法は、例えば図1に示す選別装置1によって好適に行うことができる。選別装置1は、貯蔵タンク2、供給装置3、コンベア4、磁石5及び分別回収容器6を具備している。
【0017】
<投入工程>
本発明における投入工程は、炭素繊維強化複合材料と廃プラスチックとを含む廃プラスチック混合物を、コンベア上に投入して搬送する工程である。図1に示す貯蔵タンク2には、選別の対象となる廃プラスチック混合物が、その種類や組成等に関係なく貯蔵されている。本発明で処理の対象となる廃プラスチック混合物には、CFRPと廃プラスチックとが少なくとも含まれており、更に金属やゴムなどの他の異物が含まれていてもよい。なお、「廃プラスチック」は、「CFRPを含まない廃プラスチック」を指すものであり、「廃プラスチック」以下の説明においてもこの意味で使用される。
【0018】
処理の対象となる廃プラスチック混合物の形状に特に制限はなく、例えば球状、フレーク状、板状などの形状又はその組み合わせの形状のものを用いることができる。廃プラスチック混合物は破砕された状態のものが好ましい。廃プラスチック混合物の破砕方法には公知の手段を用いることができる。本発明においては、コンベアへの安定供給及びCFRPの選別の容易さの観点から、100mm四方程度以下となるように破砕されたものを用いることが好ましい。
【0019】
図1に示す選別装置1における供給装置3は、該供給装置3の鉛直方向下方に設けられたコンベア4上に、廃プラスチック混合物を投入するためものである。供給装置3は、廃プラスチック混合物のコンベア4への投入量を定量的に調整できる装置であればその種類に特に制限はない。例えば供給装置3としてロータリーフィーダーなどの公知の定量供給装置を用いることができる。CFRPの選別を効果的に実施する観点から、廃プラスチック混合物をコンベア4の幅方向の中心部に集中し投入するのではなく、コンベア4の幅方向にわたり分散させて投入することが好ましい。
【0020】
図1に示す選別装置1におけるコンベア4は、該コンベア上に投入された廃プラスチック混合物を一方向に搬送するために用いられる。コンベア4の幅及び長さは特に制限はなく、処理の対象となる廃プラスチック混合物の量に応じて適宜選択することができる。コンベアの種類も特に制限はなく、ローラーコンベアや無端ベルトからなるベルトコンベア等を用いることができるが、廃プラスチック混合物を無駄なく選別に供する観点から、コンベア4として図1に示すとおり無端ベルトからなるベルトコンベア43を用いることが好ましい。コンベアとしてベルトコンベアを採用した場合、コンベア4のベルトは非磁性材料製、例えば樹脂製であることが好ましい。この理由は、廃プラスチック混合物からのCFRFの選別に磁石を用いるからである。
【0021】
図1に示すとおり、ベルトコンベア43は、駆動ロール41と従動ロール42との間に架け渡されて、同図中符号Rで示す方向に周回運動をするようになっている。したがってベルトコンベア43上に投入された廃プラスチック混合物は、符号Rで示す方向に搬送される。
【0022】
<排出工程>
排出工程においては、磁石の回転による電磁誘導作用によって、廃プラスチック混合物中のCFRPを排出する。この目的のために、磁石を、コンベア4における廃プラスチック混合物の投入位置よりも下流の位置に設置しておく。図1に示す実施形態においては、ベルトコンベア43の搬送方向Rに沿う下流の位置に設置された従動ロール42の内部に磁石5が配置されている。磁石5は円筒状の形状をなしている。磁石5の長手方向の長さは、ベルトコンベアの搬送方向Rに直交する幅と概ね一致している。また、図2(a)に示すとおり、磁石5は、該磁石5の長手方向と直交する断面において、磁石5の外周面に磁石のS極とN極とが円周方向に向けて交互に位置するように磁極が配されている。したがって、磁石5を平面視した場合、図2(b)に示すとおり、磁石5の回転に連れてS極とN極とが交互に現れるようになる。その結果、磁石5の直上においては磁極が連続して変化し、その変化に起因して電磁誘導作用が生じる。
【0023】
磁石5は、永久磁石であってもよく、あるいは電磁石であってもよい。永久磁石と電磁石を組み合わせて使用してもよい。また磁石5は駆動ロールと別の動力装置(図示せず)を用い、駆動ロールよりも高速で回転させることが好ましい。この場合、磁石5は、コンベア4のベルト43の移動方向と同方向に回転し、その回転速度は1500rpm〜3000rpm程度であることが好ましい。
【0024】
コンベア4によって搬送された廃プラスチック混合物が磁石5の上方に搬送されて来た際に、高速回転する磁石5によってCFRPに電磁誘導作用を生じさせ、CFRPの内部に渦電流を発生させる。その結果、コンベア4のベルト43面に対向する方向に発生した電磁気的な反発力(以下、単に「反発力」とも言う。)によって廃プラスチック混合物に含まれるCFRPがコンベア4から弾き飛ばされ、搬送経路外へ排出される。それに対して、廃プラスチックは磁力に起因する作用を受けないため、反発力が発生せず、コンベア43上に残存し、コンベアの下流端から鉛直下方に向けて自由落下することになる。
【0025】
一般的に炭素繊維は金属と比較して導電性に劣り、炭素繊維の繊維径は数μmと細いものであるため、電磁誘導作用に起因して炭素繊維中に流れる渦電流は金属中に流れる渦電流よりも小さくなりがちである。炭素繊維中に流れる渦電流が小さいとCFRPに働く反発力が弱いものとなり、その結果、CFRPをコンベア上から排出することが困難になり、更にはCFRPと廃プラスチックとの選別が困難になる場合がある。そこで、CFRPの選別を一層効率的に行う観点から、磁石5の回転を利用した磁界の変化を増大させ、CFRPに働く反発力を強くする方法を採用することが好ましい。具体的には、(i)磁石5として永久磁石及び電磁石の少なくとも一種を使用する方法、(ii)磁石5の回転速度を上げる方法、又は(iii)磁石5を多く使用するなどにより、磁石の外周面に露出する磁極数を増やすことで磁石1回転あたりの磁界変化を増大する方法、が挙げられる。このいずれの方法を採用しても、炭素繊維中に発生する渦電流を高くさせることに起因してCFRPに働く反発力を強くでき、CFRPの選別を一層効率的に行うことができる。また、これらの方法を複数組み合わせて行うこともできる。
【0026】
上述の(i)の方法において使用される永久磁石としては、アルニコ磁石、フェライト磁石及びネオジム磁石などが挙げられる。磁界の変化に起因した強力な反発力をCFRPに発生させる観点から、ネオジム磁石を用いることが好ましい。
【0027】
上述の(i)において使用される電磁石においては、永久磁石等の磁石を使用した場合と同様に、電磁石の外周面にS極とN極とが円周方向に交互に出現するように電磁石を配置することが好ましい。またその場合、電磁石に流す交流電源を高い周波数にする方法、及び/又は電磁石に流す電圧を上げる方法を採用することにより、CFRP中の炭素繊維に発生する渦電流を大きくすることができ、それに起因した強い反発力によってCFRPの選別効率を更に上げることができる。
【0028】
上述の(ii)において、CFRPの選別効率を上げる観点から、磁石の回転速度は、コンベア4のベルト43の移動方向と同方向に2000rpm以上であることが好ましく、2500rpm以上であることがより好ましい。上述の(iii)において、使用する磁石の数は、磁石5の1回転での磁極の変化が4回以上8回以下生じるような数であることが好ましい。
【0029】
<回収工程>
回収工程では、廃プラスチック混合物からCFRPと廃プラスチックとを分別して回収する。この目的のために、図1に示すとおり、コンベア4の下流端の位置及び下流端よりも下流の位置に分別回収容器6が設けられている。コンベア4における下流側の位置に上述した磁石5が設けられていることより、コンベア4のベルト43上から排出されたCFRPと、コンベア4のベルト43面上に残存する廃プラスチックとを、それぞれコンベア4の下流端に設けられた分別回収容器6によって回収することができる。
【0030】
再利用の容易さの観点から、CFRPと廃プラスチックとはそれぞれ別個に回収することが好ましい。分別回収容器6としては、図1に示すとおり、CFRP用回収容器61と、廃プラスチック用回収容器62とを用いることが好ましい。この場合、廃プラスチック用回収容器62をコンベア4の下流端の位置に配置して、自由落下する廃プラスチックを容器62内に直接回収することが好ましい。一方、CFRP用回収容器61は、磁石5によるCFRPの弾き飛ばされ具合に応じ、コンベア4の下流端の位置から更に下流に向けて離れた位置に配することが好ましい。CFRP用回収容器61の好適な設置位置は、CFRPが排出される距離を予め試験し、適切に分別回収できる位置に設置することが有利である。
【0031】
このように本発明の分別回収方法によれば、廃プラスチック混合物にCFRPが含まれている場合であっても廃プラスチック混合物からCFRPを選別して、分別回収することができる。廃プラスチックには、CFRPが含まれないので、例えばキルン焼成燃料としてそのまま使用できる。一方、CFRPは、分別回収後に適切な前処理を行うことでキルン焼成燃料として使用できる。
【0032】
次に、本発明の別の実施形態について、図3を参照して説明する。なお本実施形態については、先に説明した実施形態と異なる点を主として説明し、同様の点については、先に説明した実施形態に関する説明が適宜適用される。また図3において図1及び図2と同じ部材には同じ符号を付した。
【0033】
廃プラスチック混合物には、粉砕又は廃棄の過程で金属異物が混入している場合があり、プラスチックの焼却利用等の再利用の妨げとなっている。そこで本実施形態では、廃プラスチック混合物に、CFRP及び廃プラスチックに加えて磁性金属と非磁性金属とが含まれている場合に、排出工程において、CFRPと、磁性金属と、非磁性金属とを同時に排出する。
【0034】
磁性金属を含む廃プラスチック混合物を処理対象とした場合、磁性金属には磁石の吸引力が作用するとともに、磁石5の回転による磁界の変化によって、電磁誘導作用に起因した反発力が発生する。この場合、磁石への吸引力の方が、電磁誘導作用に起因した反発力と比較して強いので、図3に示すとおり、磁性金属9はベルト43から排出されることなくベルト43に付着したまま従動ロール42の外周に沿ってコンベア4の下部まで搬送される。そしてベルト43が従動ロール42の周面から離れ始めるに連れて、磁石5の磁力が磁性金属に及びにくくなり、磁性金属の磁石5への吸引力が小さくなってベルト43から離れて自由落下する。
【0035】
一方、非磁性金属を含む廃プラスチック混合物を処理対象とした場合、該非磁性金属には磁石5の吸引力は作用しないが、非磁性金属は導電性を有するために渦電流の発生に起因した反発力が発生する。非磁性金属はCFRPに比べて導電性が良好なので渦電流の発生が多くなり、非磁性金属に生じる反発力がCFRPと比較して大きくなる。そのことに起因して、図3に示すとおり非磁性金属10はCFRP7よりも遠くまで弾き飛ばされて、コンベア4の搬送経路から排出される。
【0036】
このように、CFRP、廃プラスチック、磁性金属及び非磁性金属では、磁石の吸引力と、磁石の回転による電磁誘導作用によって生じる反発力とがそれぞれ異なることから、これらの違いを利用してCFRPと磁性金属と非磁性金属とを同時にコンベアの搬送経路外へ排出させることができる。なお、磁性金属とは、強磁性を有する金属のことを指し、強磁性を有する金属単体及び強磁性を有する金属との合金を包含する。また、非磁性金属とは、常磁性又は反磁性の金属のことを指し、常磁性又は反磁性の金属単体及び常磁性又は反磁性の金属との合金を包含する。
【0037】
本実施形態においては、図3に示すとおり、選別装置1の分別回収容器6として、CFRP用回収容器61、プラスチック用回収容器62に加えて、磁性金属用回収容器63及び非磁性金属用回収容器64を用いることが好ましい。磁性金属用回収容器63は、プラスチック用回収容器62よりも駆動ロール41側に設置することが好ましく、ベルト43が従動ロール42の下部から離れ始める位置の直下よりも若干駆動ロール41寄りの位置に設置することがより好ましい。
【0038】
非磁性金属用回収容器64は、CFRP用回収容器61よりもコンベア4の下流端から更に下流寄りに離れた位置に設置されていることが好ましい。なお、磁性金属用回収容器63及び非磁性金属用回収容器64の好適な設置位置は、磁性金属及び非磁性金属が排出される距離を予め試験し、適切に分別回収できる位置に設置すればよい。
【0039】
このように本実施形態によれば、廃プラスチック混合物にCFRPや金属類が含まれている場合であっても、CFRPと、廃プラスチックと、磁性金属と非磁性金属とを同時に且つ個別に選別して回収することができる。回収された廃プラスチックにはCFRPが含まれないので、キルン焼成燃料としてそのまま使用できる。また、回収されたCFRPは適切な前処理を行うことでキルン焼成燃料として使用できる。更に、回収された非磁性金属及び磁性金属はそれぞれ別個にリサイクルすることが可能となる。
【0040】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の各実施形態においては、コンベア4の下流端に設置された従動ロール42内に磁石5を設置したが、磁石5の設置位置はこれに限られず、例えば図4に示すとおり、コンベア4の下流端の位置、すなわち従動ロール42の設置位置よりも上流寄りの位置に磁石5を回転自在に配置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 選別装置
2 貯蔵タンク
3 供給装置
4 コンベア
5 磁石
6 分別回収容器
61 CFRP用回収容器
62 プラスチック用回収容器
63 磁性金属用回収容器
64 非磁性金属用回収容器
7 炭素繊維強化複合材(CFRP)
8 廃プラスチック
9 磁性金属
10 非磁性金属
図1
図2
図3
図4