【文献】
松本哲宜,マトリックスに熱可塑性樹脂を用いたC−FRPの誘導加熱による成形方法,日本機械学会東海支部第62期総会講演会講演論文集,一般社団法人日本機械学会,2013年 3月18日,68/133,351-352
【文献】
三宅卓志,MHz域高周波電磁誘導による炭素繊維加熱を利用したCFRTP成形体中の繊維状態モニタ法の開発,材料,公益社団法人日本材料学会,2016年 8月15日,65/8,606-610
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明において炭素繊維とは、グラファイト構造を有する炭素からなる軽量、高強度、高弾性、高導電性の繊維であり、繊維中の炭素含有率が90%以上となっているものである。炭素繊維は、ポリアクリルニトリル(PAN)からなる繊維、又は石油精製・石油乾留副産物であるピッチからなる繊維を、大気中で150〜400℃で耐炎化処理を行い、更に酸素非存在下で800〜1500℃で炭素化処理することによって得ることができる。
【0012】
本発明において選別の対象となる炭素繊維強化複合材料(CFRP)は、炭素繊維と樹脂とが含まれるものである。CFRPに含まれる樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂又はフェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は炭素繊維と混合、溶融、溶着若しくは含浸する方法、又は炭素繊維表面をコーティングする方法で利用でき、CFRPの用途に応じて使用する炭素繊維及び樹脂の種類や含有量を適宜選択できる。
【0013】
CFRPは、軽量及び高強度等の炭素繊維の特性をそのまま有していることから、日用品、パソコン、家電、自動車、航空機、スポーツ用品及び建築土木分野等の様々な用途に使用されている。そのため、CFRPを含むプラスチックは一般家庭ごみや、CFRPの工業的な生産工程、自動車及び家電の廃棄処分で生じるシュレッダーダストとして排出されることが多く、CFRPの有無にかかわらずプラスチックの混合物として廃棄される。また、廃棄されたプラスチック混合物、すなわちCFRPと廃プラスチックとを含む廃プラスチック混合物には、分別が十分でないことに起因して、CFRPの他に、金属やゴムなどの異物が混入することがある。
【0014】
廃プラスチック混合物は、減量化及び資源化等を目的とした廃棄物中間処理の過程で、CFRPや混入した異物が完全に除去されることなく破砕され、その破砕物は最終処分として埋立処分されるか、又は燃料原料として再利用されていた。これに対して本発明によれば、以下に詳述するとおり、廃プラスチック混合物からCFRPを選別することができ、CFRPと廃プラスチックとを別個に回収することができる。以下に、廃プラスチック混合物からの炭素繊維強化複合材料の選別方法を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明の選別方法は、以下の(ア)−(エ)の工程に大別される。
(ア)炭素繊維強化複合材料と廃プラスチックを含む廃プラスチック混合物をコンベア上流側からコンベア上に投入する投入工程。
(イ) 前記コンベアによって搬送される廃プラスチック混合物に電磁誘導加熱を行う加熱工程。
(ウ)前記廃プラスチック混合物の温度分布を測定する温度測定工程。
(エ)前記温度測定工程で測定された前記温度分布に基づいて前記廃プラスチック混合物から前記炭素繊維強化複合材料を選別する選別工程。
【0016】
前記の(ア)−(エ)の工程を備えた本発明の分別回収方法は、例えば
図1に示す選別装置1によって好適に行うことができる。選別装置1は、貯蔵タンク2、供給装置3、コンベア4、電磁誘導加熱装置5、温度計6、信号処理装置7、制御装置8、空気噴射装置9及び選別回収容器10を具備している。
【0017】
<投入工程>
本発明における投入工程は、炭素繊維強化複合材料と廃プラスチックとを含む廃プラスチック混合物を、コンベア上に投入して搬送する工程である。
図1に示す貯蔵タンク2には、選別の対象となる廃プラスチック混合物が、その種類や組成等に関係なく貯蔵されている。本発明で処理の対象となる廃プラスチック混合物には、CFRP30と廃プラスチック40とが少なくとも含まれており、更に金属やゴムなどの他の異物が含まれていてもよい。なお、「廃プラスチック」は、「CFRPを含まない廃プラスチック」を指すものであり、「廃プラスチック」は以下の説明においてもこの意味で使用される。
【0018】
処理の対象となる廃プラスチック混合物の形状に特に制限はなく、例えば球状、フレーク状、板状などの形状又はその組み合わせの形状のものを用いることができる。廃プラスチック混合物は破砕された状態のものが好ましい。廃プラスチック混合物の破砕方法には公知の手段を用いることができる。本発明においては、コンベアへの安定供給及び選別効率の観点から、後述する加熱工程の前に、廃プラスチック混合物を粒度別に予め選別しておく粒度選別工程を有していることが好ましい。粒度選別方法は特に制限はなく、ふるいなどの公知の粒度選別方法を用いることができる。
【0019】
図1に示す選別装置1における供給装置3は、該供給装置3の鉛直方向下方に設けられたコンベア4上に、廃プラスチック混合物を投入するためものである。供給装置3は、廃プラスチック混合物のコンベア4への投入量を定量的に調整できる装置であればその種類に特に制限はない。例えば供給装置3としてロータリーフィーダーなどの公知の定量供給装置を用いることができる。CFRPの選別を効果的に実施する観点から、廃プラスチック混合物をコンベア4の幅方向の中心部に集中し投入するのではなく、コンベア4の幅方向にわたり分散させて投入することが好ましい。幅方向とは、搬送方向Rに直交する方向をいう。
【0020】
図1に示す選別装置1におけるコンベア4は、該コンベア上に投入された廃プラスチック混合物を一方向に搬送するために用いられる。コンベア4の幅及び長さは特に制限はなく、処理の対象となる廃プラスチック混合物の量に応じて適宜選択することができる。コンベアの種類も特に制限はなく、ローラーコンベアや無端ベルトからなるベルトコンベア等を用いることができるが、廃プラスチック混合物を無駄なく選別に供する観点から、コンベア4として
図1に示すとおり無端ベルトからなるベルトコンベア43を用いることが好ましい。
【0021】
図1に示すとおり、ベルトコンベア43は、駆動ロール41と従動ロール42との間に架け渡されて、同図中符号Rで示す方向に周回運動をするようになっている。したがってベルトコンベア43上に投入された廃プラスチック混合物は、符号Rで示す方向に搬送される。
【0022】
<加熱工程>
本工程では、コンベア4によって搬送される廃プラスチック混合物に電磁誘導加熱を行う。この目的のために、選別装置1は電磁誘導加熱装置5を備えている。電磁誘導加熱装置5は、周回する無端ベルト43の周回軌道内に配置されている。電磁誘導加熱装置5は、廃プラスチック混合物の投入位置の直下又は該投入位置よりも若干下流の位置に配置されている。電磁誘導加熱装置5は、交流電源(図示せず)と交流電流を流すことが可能な銅などの金属製のコイル(図示せず)を備えている。コイルに交流電流を流すことで、コンベア4によって搬送される廃プラスチック混合物に電磁誘導効果を利用した加熱を行うことができる。具体的には、電磁誘導加熱装置5内のコイルに交流電源から供給された高周波交流電流を流すことで、コイルの周囲に方向及び強度の変化する磁力線を発生させる。発生した磁力線が、廃プラスチック混合物中に含まれる導電体を通過することによって、電磁誘導効果により導電体内部に渦電流が発生する。導電体内部に発生した渦電流は導電体自体が有する電気抵抗により、電磁誘導加熱装置5と物理的に非接触の状態で自己発熱する。加熱を効果的に行う観点から、交流の周波数は一般に100kHz以上であることが好ましく、特に後述する理由から2MHz以上であることが好ましい。
【0023】
CFRPに含まれる炭素繊維は導電性であるのに対して、廃プラスチックは一般的に非導電性である。電磁誘導加熱装置5によって発生した磁力線にCFRPを通過させた場合には、CFRP30に含まれる炭素繊維内部に磁力線の変化に起因して渦電流が発生し、渦電流と炭素繊維の電気抵抗とによって炭素繊維が自己発熱する。炭素繊維が自己発熱した結果、炭素繊維を含有するCFRP30全体に熱が伝播し、CFRP30の温度が上昇する。それに対して、電磁誘導加熱装置5によって発生した磁力線に廃プラスチック40を通過させた場合、一般的に非導電性である廃プラスチック40は磁力線の影響を受けないため、磁力線の変化に起因した自己発熱を起こすことなく、廃プラスチック40の温度はCFRP30と比較して低くなる。この磁力線に対する自己発熱の発生に起因して、CFRP30と廃プラスチック40との間には温度差が生じ、コンベアベルト上の廃プラスチック混合物は異なる温度分布を有する状態で搬送される。
【0024】
コンベア4によって搬送される廃プラスチック混合物に対して均一に磁力線を当てて加熱する観点から、電磁誘導加熱装置5はベルト43の近傍に配置されることが好ましい。同様の観点から、電磁誘導加熱装置5はコンベア4の幅方向に略一致する幅を有していることが好ましい。
図1に示す実施形態では、電磁誘導加熱装置5は、ロール41,42の間において、ベルト43と物理的に非接触な状態で配置されている。電磁誘導加熱装置5の配置は、選別に供される廃プラスチック混合物に電磁誘導加熱を行うことができれば特に制限はなく、例えばベルト43上に供給された廃プラスチック混合物と直接対向する位置でベルト43の鉛直上方のみに配置されていてもよく、ベルト43の鉛直上方及び鉛直下方にベルト43を挟むように且つ電磁誘導加熱装置5が互いに対向するように配置されていてもよい。また、電磁誘導加熱装置5は単独で又は複数台を組み合わせて配置されていてもよい。
【0025】
このように本発明の選別方法では、電磁誘導及びそれに起因する熱が発生することを利用している。磁力や発熱による機器の故障や火災などの災害を防ぐ観点から、ロール41,42やベルト43などのコンベア4の構成材料は、電磁誘導加熱装置5から可能な限り離して設置することが好ましい。同様の観点から、コンベア4の構成材料として非導電体や耐熱性の素材を用いることが好ましい。例えばコンベア4の構成材料としてセラミックスや耐熱ゴムなどの素材を用いることが好ましい。
【0026】
<温度測定工程>
温度測定工程では、CFRP30と廃プラスチック40とを含む廃プラスチック混合物の温度分布を測定する。この目的のために、
図1に示す実施形態ではコンベア4の上方に温度計6が配置されている。温度計6は、電磁誘導加熱装置5よりもコンベア4の搬送方向の下流側に配置されている。温度計6は、搬送される廃プラスチック混合物中の発熱したCFRP30と、発熱していない廃プラスチック40とのそれぞれの温度分布を測定するものである。温度計6の種類に特に制限はない。搬送中の廃プラスチック混合物の温度分布測定を正確に行う観点から、非接触式の温度計を用いることが好ましく、特に赤外線放射温度計を用いることがより好ましい。温度計6の測定可能な面積範囲は、ベルト43の幅方向の全域にわたることが好ましい。
【0027】
温度計6は信号処理装置7と接続されている。信号処理装置7は、温度計6によって取得された温度分布及び位置のデータ信号を受信して、R方向に搬送される廃プラスチック混合物の温度データ及び位置データの収集を繰り返す。このように収集されたデータによって、信号処理装置7において搬送中の廃プラスチック混合物の温度差及びその位置が解析される。
【0028】
信号処理装置7によって解析された廃プラスチック混合物の温度及び位置は、信号処理装置7に接続された制御装置8に送信される。制御装置8は、信号処理装置7で解析され、信号処理装置7から送信された廃プラスチック混合物の温度及び位置に関する信号に基づいて、空気噴射装置9を制御する。具体的には、信号処理装置7によって解析された廃プラスチック混合物の温度が所定の閾値を超えた場合に、信号処理装置7から制御装置8を介して空気噴射装置9へ信号が送信され、信号を受信した空気噴射装置9を起動させ、コンベア4における所定の位置へ向けて空気を噴射する。
【0029】
前記の閾値は、信号処理装置7によって解析されたCFRP30と廃プラスチック40との温度差に従って設定することができる。本発明の選別方法において、CFRP30と廃プラスチック40とを電磁誘導加熱後の温度差によって選別するためには、電磁誘導加熱後のCFRP30よりも低い温度であって、且つ電磁誘導加熱後の廃プラスチック40よりも高い温度に閾値を設定することが好ましい。また、CFRP30と廃プラスチック40との温度差は、廃プラスチック混合物の温度、廃プラスチック混合物の水分含有量、気温、並びに電磁誘導加熱装置5に印加する電流及び周波数等の条件によって変化するため、事前に実験を行い、CFRP30と廃プラスチック40とを正確に判別できる閾値を設定することが好ましい。このように信号処理装置7において閾値を設定することによって、閾値を超えた温度を有する廃プラスチック混合物はCFRP30と判定される一方、閾値を超えない温度を有する廃プラスチック混合物は廃プラスチック40と判定される。その判定信号は信号処理装置7から制御装置8へ送信される。
【0030】
CFRP30と廃プラスチック40との温度差に基づき閾値を適切に設定し、選別効率をより高める観点から、加熱工程の前に廃プラスチック混合物を予め乾燥させることが好ましい。すなわち本発明の選別方法は、廃プラスチック混合物の水分含有量を低下させる乾燥工程を含むことが好ましい。廃プラスチック混合物の水分含有量が高い状態では、電磁誘導加熱によってCFRPに生じた熱が水の潜熱又は蒸発熱に使用された結果、CFRPと廃プラスチックとの温度差が小さくなり、正確な選別を可能にする閾値を設定できなくなる場合がある。廃プラスチック混合物の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥やマイクロ波加熱による乾燥などを用いることができる。エネルギー効率及び水分を選択的に加熱できる観点からマイクロ波加熱による乾燥方法を採用することが好ましい。この乾燥工程は、加熱工程よりも前に行われればよく、先に述べた粒度選別工程と乾燥工程の先後は特に問われない。例えば粒度選別工程の後に乾燥工程を行い、その後に加熱工程を行うことができ、あるいは乾燥工程の後に粒度選別工程を行い、その後に加熱工程を行うことができる。
【0031】
CFRP30に含まれる炭素繊維は繊維径が数μmと細いものであり、電磁誘導によって発生した渦電流が小さく、発熱量が少ないことがある。発熱量が少ない場合は、CFRP30と廃プラスチック40との温度差が小さくなり、選別に必要な閾値を適切に設定できず、選別が困難になる場合がある。CFRP30と廃プラスチック40との温度差を大きくし、選別効率をより一層高める観点から、電磁誘導加熱装置5に用いる交流電源の周波数を高くすることによって、CFRP30に含まれる炭素繊維に発生する渦電流を大きくして、発熱量を大きくすることが好ましい。好適な交流電源の周波数は2MHz以上である。
【0032】
<選別工程>
選別工程では、前述の温度測定工程の結果に基づいて廃プラスチック混合物からCFRP30を選別する。この目的のために上述した空気噴射装置9を用いる。空気噴射装置9は、制御装置8から受信した信号に基づいて、所定の方向に空気を噴射し、所定の温度閾値を超えたCFRP30に外力を与えて、空気が噴射された方向に沿って吹き飛ばす装置である。空気噴射装置9はエアブローなどの公知の装置を使用することができる。
【0033】
電磁誘導加熱装置5を通過した廃プラスチック混合物は、廃プラスチック混合物中に含まれる原料及び温度に関係なく、コンベア4の搬送方向下流端から鉛直下方(下流端直下方向)に向けて自由落下する。その際に、CFRP30などの所定の温度閾値を超えたプラスチックに対して、信号処理装置7によって解析された位置に対応して、空気噴射装置9から噴射された空気を直接当てることによって、空気の噴射方向に沿ってCFRP30に外力を加え、自由落下位置から外れるようにCFRP30を吹き飛ばす。一方、所定の温度閾値以下と判定された廃プラスチック40には、空気噴射装置9から空気は噴射されずそのまま自由落下する。
【0034】
空気噴射装置9を用いて空気を噴射する方向は、コンベア下流端から自由落下している廃プラスチック混合物に対して、自由落下の方向と交差する方向に何らかの外力を与える方向であれば特に制限はない。例えば搬送方向Rと対向する方向又は同一の方向に空気を噴射してもよく、斜め下方に角度を有するように空気を噴射してもよい。搬送方向Rと対向する方向に空気を噴射して選別する場合は、例えば
図1に示すとおり、コンベア4の下流端から更に下流に離間する位置であって、且つコンベア4の周回軌道よりも鉛直下方の位置に空気噴射装置9を配置し、コンベア4の搬送方向Rに対向する方向に空気が噴射できるように空気噴射装置9を配置すればよい。また、搬送方向Rと同一方向に空気を噴射し選別する場合は、例えば従動ロール42の下方に空気噴射装置9を配置し、自由落下している廃プラスチック混合物に対してコンベア4から離れる方向に向けて、すなわち搬送方向Rと同一方向に向けて空気が噴射できるように配置すればよい。
【0035】
自由落下している廃プラスチック混合物からCFRP30を適切に選別する観点から、空気噴射装置9は、
図1に示すとおり、コンベア4の下流端から更に下流に離間する位置であって、且つコンベア4の周回軌道よりも鉛直下方の位置に配置されていることが好ましい。同様の観点から、空気噴射装置9はコンベア4の幅方向の全域にわたり空気の噴射が可能なように、単体又は複数個配置されていることが好ましい。また、空気噴射装置9から噴射される空気の量、圧力及び方向は、廃プラスチック混合物からCFRP30を分離できるように適宜設定することができる。
【0036】
コンベア4の鉛直方向下方には、廃プラスチック混合物をCFRP30と廃プラスチック40とにそれぞれ選別回収できるように、選別回収容器10が設けられている。選別回収容器10としては、
図1に示すように、空気噴射によって外力が加えられたCFRPを選別回収するCFRP用回収容器10Aと、コンベア搬送方向下流端から自由落下する廃プラスチック用回収容器10Bとをそれぞれ個別に設けて、廃プラスチック混合物からそれぞれ選別回収するような構成をとることができる。
【0037】
選別回収効率を高める観点から、CFRP用回収容器10Aは、CFRPが空気噴射の外力を受けて落下する位置に設置されることが好ましい。特に、CFRP用回収容器10Aにおける開口部10A’が、空気噴射装置9に対向するように設置されることが好ましい。同様の観点から、廃プラスチック用回収容器10Bは、廃プラスチック混合物が自由落下する位置であるコンベア搬送方向下流端の直下に配置されていることが好ましい。なお、CFRP30が空気噴射の外力を受けて落下する位置は空気噴射装置9から噴射される空気の量及び圧力等に影響されるため、CFRP30が落下する距離を予め試験し、CFRP30を適切に分別回収できる位置にCFRP用回収容器10Aを設置すればよい。
【0038】
このように本発明の選別方法によれば、廃プラスチック混合物にCFRP30が含まれている場合であっても廃プラスチック混合物からCFRP30を選別して、分別回収することができる。廃プラスチック40には、CFRP30が含まれないので、例えばキルン焼成燃料としてそのまま使用できる。一方、CFRP40は、分別回収後に適切な前処理を行うことでキルン焼成燃料として使用できる。
【0039】
以上の実施形態では、コンベア4の搬送速度が一定であることを前提として説明したが、実際の選別処理におけるコンベア4による搬送は、コンベア4や電磁誘導加熱装置5への過負荷及び電源周波数の変動等によってコンベア4の搬送速度が変動する場合がある。コンベア4の搬送速度が変動した場合、信号処理装置によって解析された廃プラスチック混合物の温度及び位置と、空気噴射装置が空気を噴射する位置とが異なり、空気噴射によってCFRPを適切に選別することができなくなる場合がある。そこで、コンベア4の搬送速度が変動した場合においても、空気噴射によってCFRPを適切に選別する観点から、
図2に示すように、ベルトコンベア4に位置検出器20を組み込むことが好ましい。位置検出器20はコンベア4に組み込まれており、且つ信号処理装置7に接続されている。
図2に示す実施形態では、位置検出器20はコンベア4の従動ロール42内に組み込まれているが、コンベア4の搬送速度の変化が感知できる位置であれば、設置する位置及び方法に制限はない。位置検出器20としては、ロータリエンコーダーなどの公知の位置検出器を用いることができる。
【0040】
図2に示す実施形態によれば、位置検出器20によって検出された位置のデータ信号と、温度計6によって取得された温度及び位置のデータ信号とを、信号処理装置7によって処理することにより、温度変化があった廃プラスチック混合物の位置を一層正確に解析することができる。この解析情報が、信号として制御装置8を介して空気噴射装置9へ送信されることで、空気噴射装置9を適切なタイミングで起動させることができ、CFRPを一層正確に選別することができる。なお
図2に示す実施携帯について特に詳述しない点については、
図1に示す実施形態の説明が適宜適用される。
【0041】
次に、本発明の別の実施形態について、
図3を参照して説明する。本実施形態については、前述の各実施形態と異なる点を主として説明し、特に説明しない点については前述の各実施形態に関する説明が適宜適用される。また
図3において
図1及び
図2と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0042】
廃プラスチック混合物には、粉砕又は廃棄の過程で金属異物が混入している場合があり、プラスチックの焼却利用等の再利用の妨げとなっている。そこで本実施形態では、廃プラスチック混合物に、CFRP及び廃プラスチックに加えて金属が含まれている場合に、選別工程において、CFRPと金属と廃プラスチックとを同時に選別する。具体的には以下に述べる手法によってこれらを選別する。
【0043】
CFRP、廃プラスチック及び金属が含まれている廃プラスチック混合物を、電磁誘導加熱装置5によって発生した磁力線に通過させた場合、金属はCFRPに含まれる炭素繊維と比較して磁力線の影響を受けやすいことに起因して、金属内部に炭素繊維と比較して強い渦電流が発生し、金属内部に発生した渦電流と電気抵抗とによって金属が自己発熱する。金属の自己発熱に起因した温度上昇は、炭素繊維を含むCFRPの温度上昇と比較して高いため、金属とCFRPとの間の温度差、及びCFRPと廃プラスチックとの間の温度差がそれぞれ生じることになる。具体的には、金属の発熱温度が最も高く、次にCFRPの発熱温度が高く、廃プラスチックは発熱しないことから最も低温となる。これらの間の温度差は、温度計6によって検出され、信号処理装置7において温度差及びその位置が解析され、また空気噴射装置9を起動の有無が判定される。信号処理装置7によって解析された廃プラスチック混合物の温度が所定の閾値を超えた場合に、信号処理装置7から制御装置8を介して空気噴射装置9へ信号が送信され、信号を受信した空気噴射装置9を起動させ、所定の位置へ空気を噴射する。
【0044】
図3に示す実施形態における閾値は、金属50とCFRP30との間の温度差、及びCFRP30と廃プラスチック40との間の温度差によって設定することができる。CFRP30と廃プラスチック40と金属50とを電磁誘導加熱後の温度差によってそれぞれ選別するためには、電磁誘導加熱後の廃プラスチック40よりも高い温度であって且つ電磁誘導加熱後のCFRP30よりも低い温度を閾値Aとして設定し、電磁誘導加熱後のCFRP30よりも高い温度であって且つ電磁誘導加熱後の金属50よりも低い温度を閾値Bとして設定するという、二段階の閾値を設定することが好ましい。なお、金属50とCFRP30との間の温度差、及びCFRP30と廃プラスチック40との間の温度差は、廃プラスチック混合物の温度、廃プラスチック混合物の水分含有量、気温、高周波誘導加熱装置に印加する電流、周波数等の条件によって変化するため、事前に実験を行い、金属とCFRPと廃プラスチックとを正確に判別できる閾値を設定することが好ましい。
【0045】
このように信号処理装置7において二段階の閾値を設定することによって、閾値Aを超えない温度を有する廃プラスチック混合物は廃プラスチック40と判定され、閾値Aを超えるが閾値Bを超えない温度を有する廃プラスチック混合物はCFRP30と判定され、閾値Bを超えた温度を有する廃プラスチック混合物は金属50と判定されることとなる。この判定信号及び位置信号は、信号処理装置7から制御装置8を介して空気噴射装置9へ送信される。
【0046】
図3に示す実施形態における空気噴射装置9は、信号処理装置7から制御装置8を介して受信した判定信号及び位置信号に基づいて、CFRPと判定された廃プラスチック混合物に向けて空気を噴射する第1空気噴射装置9Aと、金属と判定された廃プラスチック混合物に向けて空気を噴射する第2空気噴射装置9Bを備えている。
【0047】
空気噴射装置9A,9Bはコンベア下流端から自由落下している廃プラスチック混合物に対して、鉛直下方と交差するに何らかの外力を与える方向に向けて配置されていれば、その配置位置に特に制限はない。
図3に示すとおり、第1及び第2空気噴射装置9A,9Bは互いに対向して配置することができる。この場合、第1及び第2空気噴射装置9A,9Bを、それぞれ異なった角度を向くように設置することが望ましい。これに代えて第1及び第2空気噴射装置9A,9Bの双方が同一方向を向くようにこれらを配置してもよいが、その場合には、CFRP30と金属50とを異なる位置に落下させるように、第1及び第2空気噴射装置9A,9Bから噴射される空気の量、圧力、及び/又は角度を調節することが好ましい。
【0048】
コンベア4の鉛直方向下方には、廃プラスチック混合物から、CFRP30、廃プラスチック40及び金属50をそれぞれ選別回収できるように、選別回収容器10が設けられている。選別回収容器10としては、
図3に示すように、第1空気噴射装置9Aによって外力が加えられたCFRP30を選別回収するCFRP用回収容器10Aと、コンベア搬送方向下流端から自由落下する廃プラスチック40を選別回収する廃プラスチック用回収容器10Bと、第2空気噴射装置9Bによって外力が加えられた金属50を選別回収する金属用回収容器10Cとをそれぞれ個別に設けて、廃プラスチック混合物からそれぞれを選別回収するような構成を採用することができる。
【0049】
選別回収効率を高める観点から、CFRP用回収容器10A及び金属用回収容器10Cは、CFRP30及び金属50が空気噴射の外力を受けて落下する位置に設置されることが好ましい。特に、第1空気噴射装置9AとCFRP用回収容器10Aにおける開口部10A’とが対向するように、且つ第2空気噴射装置9Bと金属用回収容器10Cにおける開口部10C’とが対向するように設置されていることが好ましい。また廃プラスチック用回収容器10Bは、廃プラスチック混合物が自由落下する位置であるコンベア搬送方向下流端の直下に配置されていることが好ましい。
【0050】
なお、CFRP30及び金属50が空気噴射の外力を受けて落下する位置は第1及び第2空気噴射装置9A,9Bから噴射される空気の量及び圧力等に影響されるため、CFRP30及び金属50が落下する距離を予め試験し、CFRP30及び金属50を適切に分別回収できる位置に選別回収容器10A,10Cを設置すればよい。
【0051】
図3に示す実施形態においては、第1空気噴射装置9Aは、コンベア4の下流端から更に下流に離間する位置であって、且つコンベア4の周回軌道よりも鉛直下方の位置に配置され、第2空気噴射装置9Bは、コンベア4の下流端よりも若干上流の位置であって、且つコンベア4の周回軌道よりも鉛直下方の位置に配置されているが、これに代えて、第1及び第2空気噴射装置9A,9Bの配置位置をそれぞれ入れ替えても、CFRP30、廃プラスチック40及び金属50をそれぞれ好適に選別回収することができる。更に、
図3に示す実施形態においては、
図2に示す実施形態における位置検出器20を使用することによって、更に好適にCFRP30、廃プラスチック40及び金属50をそれぞれ選別回収することができる。
【0052】
このように本実施形態によれば、廃プラスチック混合物にCFRPや金属類が含まれている場合であっても、CFRP30と、廃プラスチック40と、金属50とを同時に且つ個別に選別して回収することができる。回収された廃プラスチック40にはCFRPが含まれないので、キルン焼成燃料としてそのまま使用できる。また、回収されたCFRP40は適切な前処理を行うことでキルン焼成燃料として使用できる。更に、回収された金属50はリサイクルすることが可能となる。