(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態では、作業車両をトラクタ1として説明する。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。そして、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
図1は、実施形態に係るトラクタ1の自動停止システムの説明図、
図2は、同トラクタ1の説明図、
図3は、同トラクタ1の動力伝達経路を示す説明図、
図4は、同トラクタ1の自動停止システムにおける車両制御部100を中心とする制御ブロック図である。
【0021】
実施形態に係るトラクタ1の自動停止システムは、
図1に示すように、トラクタ1と、トラクタ1に設けられた通信ユニット110と、第1の作業者M1が携行する携帯通信端末3と、通信ユニット110が携帯通信端末3から信号を受信した場合、トラクタ1が無人であっても、その走行を停止させることのできる走行停止ユニットとして機能する車両制御部100とを備える。なお、本実施形態では、トラクタ1を遠隔操作可能なリモコン2がシステムに含まれている。かかるリモコン2は、第2の作業者M2が携行していることとする。なお、以下において、単に作業者を総称する場合は作業者Mと記す。
【0022】
本自動停止システムでは、通信ユニット110は、第1通信部111、第2通信部112、および第3通信部113を備えており、携帯通信端末3との間では、第1通信部111を介する第1の通信系統R1と、第2通信部112を介する第2の通信系統R2とで通信可能であり、リモコン2とは、第3通信部113を介する第3の通信系統R3で通信することができる。
【0023】
具体的には、携帯通信端末3からトラクタ1に対しては、停止信号を送信可能な第1の通信系統R1と、第1の通信系統R1よりも通信範囲が狭く、携帯通信端末3が所定の範囲内に存在することを示す検出信号を受信可能な第2の通信系統R2との複数の通信系統Rで通信することができる(
図4参照)。
【0024】
また、リモコン2と通信ユニット110との間を結ぶ第3の通信系統R3は、少なくとも第2通信系統R2よりも通信範囲が広く規定されており、第2の作業者M2は、リモコン2を用いて、トラクタ1の走行や作業などに関して遠隔操作することができる。
【0025】
トラクタ1と携帯通信端末3との間を結ぶ複数の通信系統Rのうち、第2の通信系統R2には、近距離無線通信規格が用いられる。トラクタ1の車両制御部100は、走行車体10の走行中に、携帯通信端末3が自動停止範囲S内に存在することを示す第2の信号を受信した場合、走行車体10の走行を停止するようにしている。ここで、自動停止範囲Sの長さは、第2の通信系統R2の通信可能範囲と同等であることは言うまでもない。
【0026】
このように、第1の通信系統R1には、第2の通信系統R2に用いられる近距離無線通信規格よりも広い通信範囲を有する無線通信規格が用いられるが、トラクタ1が走行中に通信ユニット110の第1通信部111が第1の信号を受信すると、車両制御部100は走行を停止させる。
【0027】
すなわち、本実施形態に係るトラクタ1の走行停止システムによれば、リモコン2からの信号でトラクタ1の走行や走行停止は遠隔操作が可能であるが、走行停止に関しては、リモコン2のみならず、携帯通信端末3からの信号によっても作動し、通信ユニット110が第1の信号あるいは第2の信号を受信すると緊急停止するようにしている。
【0028】
以下、本実施形態に係るトラクタ1の走行停止システムの機能を簡単に説明する。
図1に示すように、例えば、作業者M2が、少なくとも自動停止範囲Sを越えた位置からリモコン2を操作して、無人のトラクタ1を所定速度で発進させたとする。
【0029】
トラクタ1が前進して自動停止範囲Sに達したとする。この自動停止範囲S内に、携帯通信端末3を携行する第1の作業者M1が存在している場合、たとえリモコン2を携行している第2の作業者M2が第1の作業者M1の存在に気付いていなくても、無人のトラクタ1は、携帯通信端末3からの第2の信号を受信すると自動停止する。
【0030】
このように、本実施形態に係るトラクタ1の走行停止システムでは、リモコン2からの遠隔操作による停止信号の送信とは別に、近くに携帯通信端末3があることを検出することができる。したがって、トラクタ1を圃場などで自動走行させる場合、走行車体10の近傍における危険性をトラクタ1側で事前に検知して自動停止することができるため、自動走行するトラクタ1の安全性の向上に寄与することができる。
【0031】
ここで、本実施形態に係るトラクタ1の構成について説明する。トラクタ1は、走行車体10と、
図4に示すように、車両制御部100と、通信ユニット110とを備える。走行車体10は、図示しないステアリングハンドルや操作ペダルおよび各種計器類が設けられた操縦部を備えるとともに、図示しない作業機や作業装置からなる作業部を後部に連結可能に構成される。かかる走行車体10の天井部には、複数の航法衛星から送信される電波を受信するDGPS(Differential Global Positioning System)アンテナ6が設けられる(
図1参照)。
【0032】
車両制御部100は、コンピュータにより構築され、電子制御によってトラクタ1の自動走行ユニット160をはじめとする各部を制御することができる。また、通信ユニット110は、リモコン2および携帯通信端末3と無線通信が行える。
【0033】
また、
図2および3に示すような動力伝達機構をはじめとする各種機構を備える。すなわち、
図2に示すように、トラクタ1は、走行車体10の左右側それぞれに、左右の前車軸406L,406Rに取付けられた前輪301L,301Rと、左右の後車軸405L,405Rに取付られた左右の後輪302L,302Rとを備える。なお、以下では、符号にLを付して左側を、Rを付して右側を示すことにするが、左右を区別する必要が無い場合は、例えば、前輪301、後輪302などのように記す場合がある。
【0034】
走行車体10の前部には、動力源となるエンジン321が搭載されており、かかるエンジン321から動力伝達機構を介して前輪301や後輪302へ動力が伝達される。なお、本実施形態に係るトラクタ1は、4WDクラッチ324を備えており、この4WDクラッチ324の切換えによって、後輪302のみ駆動する2WD方式と、前輪301および後輪302が共に駆動する4WD方式とに切換え自在に構成されている。
【0035】
後輪302への動力伝達機構は、エンジン321の後段に、前後進クラッチ322を介して主変速部323が配設され、さらにその後段に副変速部325が配設され、その後段には後輪差動歯車装置326が配設される。そして、この後輪差動歯車装置326と後輪302とを連結する後車軸405の基部には、それぞれブレーキ装置312を設けている。
【0036】
また、副変速部325の後段に設けられたアイドルギヤを介して変速軸404へ入力され、4WDクラッチ324、前輪差動歯車装置320を介して前輪301への動力伝達がなされる。
【0037】
本実施形態に係るトラクタ1は、自動走行ができるように、車両制御部100により制御される自動走行ユニット160(
図4参照)を備えている。そして、車両制御部100には、前輪301の操舵角を検出する操舵角センサ304が接続されており、自動走行時は、検出された実際の前輪301の操舵角をフィードバックしながら車両制御部100がステアリングシリンダ303を制御して操舵するようにしている。
【0038】
後輪302に設けたブレーキ装置312は、機体に設けたブレーキペダル310を操縦者が踏み込むことで、ブレーキシリンダ311が油圧により作用して機能する。すなわち、左後車軸405Lの基部に設けた左ブレーキ装置312Lを左ブレーキシリンダ311Lに接続するとともに、右後車軸405Rの基部に設けた右ブレーキ装置312Rを右ブレーキシリンダ311Rに接続する。
【0039】
図示するように、左右のブレーキシリンダ311L,311Rは、車両制御部100に接続した左右のブレーキソレノイド330L,330Rと接続している。そのため、車両制御部100に所定のブレーキ信号が入力されると、車両制御部100は、ブレーキソレノイド330を駆動して、左右のブレーキ装置312L,312Rのいずれか一方または両方を作動させることができる。なお、ブレーキソレノイド330は、例えば、油圧ポンプ341、リリーフバルブ340などと共に油圧回路を構成する。
【0040】
次に、
図3を参照しながら、トラクタ1のエンジン321から前輪301、後輪302までの動力の伝達経路について説明する。図示するように、エンジン321の出力軸は、前・後進を切り換える前後進クラッチ322を介して動力伝達軸と連結している。したがって、トラクタ1は、前後進クラッチ322を切換えることによって、動力伝達軸を選択的に正逆転することができる。
【0041】
また、動力伝達軸は、主変速部323、副変速部325に連結されている。主変速部323には、第1クラッチギヤ361と第3クラッチギヤ363とを有する一速/三速切換用クラッチ402と、第2クラッチギヤ362と第4クラッチギヤ364とを有する二速/四速切換用クラッチ403とが装着され、エンジン321からの動力を1速〜4速に変速して出力可能としている。
【0042】
さらに、主変速部323は、高低クラッチ365を装着しており、1速〜4速を、それぞれさらに高速あるいは低速に切換え可能としている。
【0043】
主変速部323の動力が入力される副変速部325には、図示しない副変速レバーで操作される二連の副変速クラッチの第1のシフター381と第2のシフター382と複数の伝達ギヤとを備える。かかる第1のシフター381と第2のシフター382とがいずれの伝達ギヤと係合するかにより、超低速、低速、中速および高速とに変速することができる。そして、副変速部325の出力軸の回転が、後輪差動歯車装置326から車軸および後輪遊星歯車機構391を介して後輪302へ伝動される。
【0044】
また、主変速部323から副変速部325へ入力される動力が、アイドルギヤを介して4WDクラッチ324を装備した変速軸404へ入力されることにより、前輪301への駆動力伝動がなされる。4WDクラッチ324の作用により、通常の前輪駆動から増速された前輪駆動への切り換えも可能となっている。なお、4WDクラッチ324を中立にすると、前輪301の駆動が断たれて後輪のみの駆動、すなわち2WDとなる。
【0045】
こうして、4WDクラッチ324の後段部に伝達された動力は、前輪差動歯車装置320と前輪遊星歯車機構390とを介して前輪301へと伝達される。
【0046】
また、作業車両であるトラクタ1は、PTO(Power Take Off)クラッチ366を備えており、PTOクラッチ366を繋ぐことで、エンジン321からの動力をPTO軸392へと伝達することができる。
【0047】
PTO軸392は、前段側にPTO変速第1シフタ371およびPTO変速第2シフタ372が設けられており、これらが操作されることにより、低速から高速でPTO軸392を順回転させることができるとともに、逆転させることも可能となっている。
【0048】
次に、
図4を参照しながら、トラクタ1の自動停止システムにおける制御系について説明する。図示するように、本実施形態に係るトラクタ1は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、制御系の中核をなす車両制御部100を備える。車両制御部100は、例えば、リモコン2や携帯通信端末3からの指令信号を通信ユニット110を介して受信することにより、自動走行ユニット160を制御して自動走行することができる。
【0049】
トラクタ1が備える車両制御部100は、各種プログラムや各種の必要データ類が格納された、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶装置140と、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部をはじめROM,RAMなどで構成される複数のコントローラ120,130,150を備える。
【0050】
コントローラ120,130,150としては、例えば、走行系を制御する走行系コントローラ120、エンジン321を制御するエンジンコントローラ130、機体後部に連結する耕耘装置などの作業部を制御する作業機系コントローラ150などがある。
【0051】
走行系コントローラ120、エンジンコントローラ130、および作業機系コントローラ150は、これらについても、いずれもCPUなどを有する処理部や、制御プログラムが格納されるROM、作業領域用のRAMなどのストレージ部、さらには入出力部が設けられており、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能となっている。なお、ストレージ部のROMには、各コントローラ120,130,150の制御対象に応じた制御プログラムなどがそれぞれ格納される。
【0052】
また、車両制御部100には、非常停止スイッチ210、ステアリング駆動用モータ(不図示)や
図2および
図3に示した伝動機構を含む走行駆動装置220、また、例えばトラクタ1に搭載した前・後方カメラやコーナー検出ソナーなどを含む障害物検知センサ群や、ステアリングハンドルの切れ角を検出する操舵角検出センサ(共に不図示)などを含む走行系各種センサ230が接続される。さらに、車両制御部100には、DGPSアンテナ6(
図1参照)を含むナビシステムや方位センサ、車速センサなどが接続される。
【0053】
また車両制御部100には、作業機昇降装置(不図示)などを含む作業機昇降駆動装置240、PTOクラッチ366を入り切り操作するPTO入・切操作スイッチ250、作業部やPTO関連装置を制御するために必要な作業機系・PTO駆動用各種センサ260、また、エンジン駆動装置270やエンジン駆動用各種センサ280などが接続される。
【0054】
こうして、トラクタ1は、作業者が機体に搭乗して走行しながら所定の作業を実行するほか、例えばリモコン2を操作して自動走行ユニット160の駆動を車両制御部100により制御することで、自動走行させながら所定の作業を実行させることができる。
【0055】
トラクタ1を自動走行させる場合、例えば、作業内容に応じた予定走行経路を予め圃場毎に定めておき、これをデータ化して記憶装置140に格納しておく。かかる予定走行経路は、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、そして作物の種類などに応じて設定される。
【0056】
なお、トラクタ1の自動走行については、本実施形態のようにリモコン2を介して車両制御部100により実行させる他、適宜設定することができる。
【0057】
また、トラクタ1の車両制御部100と複数の通信系統Rで接続される携帯通信端末3は、記憶部31と、表示部32と、操作部33とを備える。記憶部31は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成され、表示部32および操作部33は、例えば、タッチパネルにより構成される。なお、操作部33としては、各種キーやボタンなどが設けられていてもよい。
【0058】
かかる携帯通信端末3と、車両制御部100との間で信号の送受信が可能な複数の通信系統Rは、相対的に広い通信範囲を有する通信規格が用いられ、第1の信号を送受信する第1の通信系統R1と、少なくとも第1の通信系統R1よりも通信範囲が狭い近距離無線通信規格が用いられ、第2の信号を送受信する第2の通信系統R2とを有する。
【0059】
そして、車両制御部100は、走行車体10が走行している際に第2の信号を受信した場合、走行車体10の走行を停止するとともに、作業部への動力をエンジン321から取り出すPTO軸392の駆動を停止するようにしている。
【0060】
したがって、トラクタ1の近くに携帯通信端末3があるときは、トラクタ1の走行を自動的に停止させることができるとともに、PTO軸392の駆動も停止させることができるため、トラクタ1の自動走行における安全性を向上させることができる。
【0061】
また、車両制御部100は、走行車体10が走行している際に、自動停止範囲Sの外にいる作業者Mが携行する携帯通信端末3から第1の信号を受信した場合でも、走行車体10の走行を停止する。そして、同時に作業部への動力をエンジン321から取り出すPTO軸392の駆動を停止する。
【0062】
このように、作業者Mは、携帯通信端末3を用いることにより、トラクタ1と比較的に離れた位置からでもトラクタ1の停止については操作することができる。しかも、その際には作業部についても停止することから、安全性をより向上させることができる。
【0063】
次に、トラクタ1を遠隔操作可能なリモコン2の構成について説明する。
図4に示すように、リモコン2は、第3の通信系統R3によってトラクタ1の第3通信部113と無線通信が可能である。また、リモコン2は、操作部として、トラクタ1を走行させるための前進「入・切」スイッチ21および後進「入・切」スイッチ22と、エンジン321の回転数を切換えるENG回転数スイッチ24と、トラクタ1を緊急停止させることが可能な車両停止スイッチ26とを備える。
【0064】
また、リモコン2は、作業部を操作するためのPTO「入・切」スイッチ23と、作業機「上・下」スイッチ25とを備える。
【0065】
このように、作業者Mは、リモコン2を操作することにより、トラクタ1を所定の速度で前進・後進させるとともに、停止させたりすることができるほか、作業部を上昇させて所定の動力で作業させることができる。
【0066】
上述した構成のトラクタ1およびトラクタ1の自動停止システムにおける停止処理について、
図5を用いて説明する。
図5は、トラクタ1の自動停止処理の一例を示すフローチャートである。なお、本実施形態に係る車両制御部100は、携帯通信端末3から第1の通信系統R1を介して受信した第1の信号や、第3の通信系統R3を介してリモコン2から走行指令信号を受信した場合、車両制御部100は、走行指示フラグを立てるようにしているものとする。
【0067】
図10に示すように、車両制御部100は、先ず、上述した走行指示フラグがあるか否かを判定する(ステップS110)。そして、走行指示フラグがないと判定した場合は処理を終える一方(ステップS110:No)、走行指示フラグがあると判定した場合(ステップS110:Yes)、走行指示を出力する(ステップS120)。すなわち、自動走行ユニット160を駆動して、トラクタ1を発進させる。
【0068】
次いで、車両制御部100は、第2の通信系統R2による検出信号が有るか否かを判定する(ステップS130)。すなわち、第2の通信系統R2による検出信号があるということは、
図1に示す自動停止範囲S内に、携帯通信端末3を携行した作業者Mが存在する可能性が高いということになる。
【0069】
したがって、車両制御部100は、第2の通信系統R2による検出信号が有ると判定すると(ステップS130:Yes)、処理をステップS170に移し、車両停止処理を実行してトラクタ1の走行を停止する。具体的には、ブレーキソレノイド330を駆動してブレーキシリンダ311を駆動し、ブレーキ装置312を作動させる(
図2参照)。
【0070】
一方、ステップS130において、第2の通信系統R2による検出信号がないと判定した場合(ステップS130:No)、車両制御部100は、他の通信系統による各種指令があるか否かを判定する(ステップS140)。例えば、第1の通信系統R1を介しての携帯通信端末3からの車両停止信号が有るか、あるいは第3の通信系統R3を介してリモコン2からの各種指令信号があるか否かを判定する。
【0071】
そして、他の通信系統からの各種指令信号はないと判定すると(ステップS140:No)、処理を終える一方、他の通信系統からの各種指令信号があると判定すると(ステップS140:Yes)、車両制御部100は、その信号が停止指示信号であるか否かを判定する(ステップS150)。
【0072】
ステップS150において、受信した信号が停止指示信号ではない場合(ステップS150:No)、車両制御部100は、受信した指令信号に応じた処理を実行する(ステップS160)。すなわち、減速や増速指示であれば、エンジン321の出力を変更したり、作業部の出力に関する指令信号であれば、例えばPTO軸392の回転を増減したりして、本処理を終了する。
【0073】
また、ステップS150において、受信した信号が停止指示信号である場合(ステップS150:Yes)、車両制御部100は、処理をステップS170に移して車両停止処理を実行し、トラクタ1を速やかに停止させる。
【0074】
なお、
図5においては省略したが、ステップS170では、車両停止処理と同時に作業部の停止処理も実行することができる。すなわち、作業部への動力をエンジン321から取り出すPTO軸392の駆動を停止する。
【0075】
なお、PTO軸392の駆動停止処理は、車両停止と同時ではなく、車両停止処理の直後に引き続いて実行するようにしてもよい。
【0076】
上述した処理を実行することにより、本実施形態に係るトラクタ1は、自動運転を行う場合でも、その安全性を著しく高めることができる。
【0077】
なお、上述した処理において、ステップS130の処理とステップS140の処理の順序は後先入れ替わっても構わない。
【0078】
上述してきた実施形態より、以下のトラクタ1(作業車両)、およびトラクタ1の自動停止システムが実現する。
【0079】
(1)作業部および走行部への動力源となるエンジン321を備える走行車体10と、携帯通信端末3との間で信号の送受信が可能な通信ユニット110と、通信ユニット110が受信した携帯通信端末3からの信号に基づいて走行部を制御可能な車両制御部100とを備え、通信ユニット110と携帯通信端末3との間には複数の通信系統Rが設けられ、複数の通信系統Rは、携帯通信端末3から第1の信号を送信可能な第1の通信系統R1と、第1の通信系統R1よりも通信範囲が狭く、携帯通信端末3が所定の範囲S内に存在することを示す第2の信号を受信可能な第2の通信系統R2とを含む作業車両。
【0080】
(2)上記(1)において、第2の通信系統R2には、近距離無線通信規格が用いられ、車両制御部100は、走行車体10の走行中に第2の信号を受信した場合、走行車体10の走行を停止する作業車両。
【0081】
(3)上記(2)において、車両制御部100は、第2の信号を受信した場合、作業部への動力をエンジン321から取り出すPTO軸392の駆動を停止する作業車両。
【0082】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、第1の通信系統R1には、近距離無線通信規格よりも広い通信範囲を有する通信規格を用い、車両制御部100は、走行車体10の走行中に第1の信号を受信した場合、走行車体10の走行を停止する作業車両。
【0083】
(5)上記(4)において、車両制御部100は、第1の信号を受信した場合、作業部への動力をエンジン321から取り出すPTO軸392の駆動を停止する作業車両。
【0084】
(6)走行部を有するトラクタ1などの作業車両と、携帯通信端末3と、携帯通信端末3との間で複数の通信系統Rを介して信号の送受信が可能な通信ユニット110と、通信ユニット110が携帯通信端末3から信号を受信した場合、作業車両の走行を停止させる走行停止ユニットとしての走行系コントローラ120とを有し、複数の通信系統Rは、携帯通信端末3から作業車両に対して停止信号を送信可能な第1の通信系統R1と、第1の通信系統R1よりも通信範囲が狭く、携帯通信端末3が所定の範囲S内に存在することを示す検出信号を受信可能な第2の通信系統R2と、が含まれる作業車両の自動停止システム。
【0085】
上述してきた実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。例えば、作業車両としてはトラクタ1に限定するものではなく、圃場8において走行しながら作業を行うものは全て含まれる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。