(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記風分布情報生成手段は、前記風分布情報の中に含まれる風速と予め定めた所定値を比較し、前記風分布情報に含まれる風速が前記所定値以上であった場合、前記報知手段より注意喚起情報を出力する請求項1に記載の風監視システム。
前記風分布情報生成手段は、前記風情報収集手段から収集した前記風分布情報の時間的な変化に基づいて風情報を予測することを特徴とする請求項1または2に風監視システム。
前記風情報には、前記空気調和機の室外機の設置方向の情報を含み、前記風分布情報生成手段は、該設置方向の情報より風向を検知することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の風監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0012】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
以下の詳細な説明では、本発明の一実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかであろう。他にも、図面を簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る風監視システムについて説明する。
【0015】
図1に示すように、風監視システム1は、風検知部23bを備えた複数の空気調和機2と、これら各空気調和機2がインターネット等のネットワーク3を介して接続された管理サーバ4を備えている。この管理サーバ4は、市町村の防災部署、テレビ局、ラジオ局等に設置されている。
【0016】
各空気調和機2は、戸建て家屋やマンション等に設置されたものであり、
図1(a)に示すように、室内機11と、室外機12とを備えている。室内機11は室内に配置され、室外機12は外気にさらされるように屋外に配置される。
【0017】
室内機11内には、図示しないが室内熱交換機と送風ファンとが組み込まれている。この送風ファンによって吸い込まれた室内空気は、室内熱交換器を通過することにより、冷媒と熱交換され、冷気流又は暖気流が生成される。生成された冷気流又は暖気流は、吹出口から室内に吹き出される。
【0018】
室内熱交換機には、室外機12に設けられた図示しない冷凍回路から冷媒が供給される。この冷凍回路は、図示しない四方弁、圧縮機、室外熱交換器、膨張弁、冷媒管の他、
図1(a)に示す室外ファン13を備え、室外ファン13を回転させることによって室外機12の内部に外気を取り込んで室外熱交換器を通過させ冷媒と外気との熱交換を促進している。
【0019】
室外機12は、室外ファン13を回転駆動する例えばブラシレスDCモータであるファンモータ14と、このファンモータ14を駆動する例えばインバータ回路を含む駆動回路15と、この駆動回路15に対して駆動電圧指令を出力する制御部16とを備えている。
【0020】
ファンモータ14には、ロータの回転位置を検出する位置検出回路17が設けられている。この位置検出回路17は、ファンモータに内蔵されたホール素子を用いて回転中のロータの位置を検出する。
【0021】
駆動回路15には、ファンモータ14の消費電流を検出する電流検出回路18が接続されている。
【0022】
制御部16は、室内機11との間で情報の送受信を行なう通信部21と、回転速度検出部22と、データ処理部23とを備えている。
【0023】
通信部21は、室内機11からの運転指令Dtを受信してデータ処理部23へ出力するとともに、データ処理部23からの運転状態情報Is、局所風情報Iowを室内機11に送信する。
【0024】
回転速度検出部22は、位置検出回路17から回転中のロータの位置情報が入力され、この回転位置情報に基づいてファンモータ14の回転数である回転速度Vmdを検出する。
【0025】
データ処理部23は、空調制御部23aと、風検知部23bとを備えている。
【0026】
空調制御部23aは、通信部21を介して室内機11から運転指令Dtが入力されると、運転指令Dtの内容に応じて(実際には圧縮機の動作状態、外気温度、室外熱交換器温度などの運転状態情報Itに応じて)ファンモータ14の目標回転速度Vm
*を決定し、決定した目標回転速度Vm
*と、回転速度検出部22から入力されるフィードバック信号となるファンモータ回転速度Vmdとの回転速度偏差ΔVmを演算し、演算した回転速度偏差ΔVmが零となるように例えばPID制御により駆動電圧指令値を求め、求めた駆動電圧指令値を駆動回路15に出力する。また、空調制御部23aでは、通信部21を介して室外機12の圧縮機の動作状態、外気温度、室外熱交換器温度などの運転状態情報Isを室内機11へ送信する。
【0027】
風検知部23bは、空気調和機2が運転を停止しているとき、外風によってファンモータ14が運転時の回転方向と異なる逆回転し、回転速度検出部22で検出したファンモータの回転速度Vmdを
図1(b)に示す風速変換テーブル24を参照して外風の風速Wsに変換し、変換した風速Wsを風速情報Iwとして通信部21を介して室内機11に送信する。
【0028】
ここで、風速変換テーブル24は、風洞実験等によって求められたものであり、ファンモータの回転速度と風速を対応付けたものである。
図2は風速変換テーブル24をグラフの形式で表わしたものであり、横軸に風速Ws〔m/s〕をとり、縦軸にファンモータ回転速度Vmd〔min
−1〕をとったときに、A機種では、実線図示の特性直線L1で示すように、風速Wsが0〜3〔m/s〕の間ではファンモータ回転速度Vmdが零を維持し、風速Wsが3〔m/s〕を超えると、風速Wsの増加に比例してファンモータ回転速度Vmdが上昇して行く。これに対して、B機種では、点線図示の特性直線L2で示すように、風速Wsが0〜7〔m/s〕の間では、ファンモータ回転速度Vmdが零を維持し、風速Wsが7〔m/s〕を超えると、風速Wsの増加に比例して特性直線L1の傾きより大きな傾きでファンモータ回転速度Vmdが上昇して行く。このように機種によって風速Ws−ファンモータ回転速度Vmdの特性が異なることから、機種毎に、
図2の風速変換テーブル24を作成し、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに記憶しておくとよい。このように風速検知手段は、室外ファン13、位置検出回路17、回転速度検出部22、風検知部23b、風速変換テーブル24で構成され、室外ファンの回転速度でから風速を検知するものである。
【0029】
また、空気調和機2が運転中でファンモータ14を回転駆動制御している状態でも、外風が室外ファン13に作用すると、室外ファン13を逆回転させる負荷となることから、外風が無い場合に比較して、回転速度検出部22で検出されるファンモータ回転速度Vmd〔min
−1〕が小さい値となる。したがって、目標回転速度Vm
*とファンモータ回転速度Vmdとの回転速度偏差ΔVmが大きくなることから、風洞実験によって、回転速度偏差ΔVmと外風の風速Wsとの関係を表す風速変換テーブルを作成することにより、室外機12の運転中でも外風の風速Wsを検知することができる。または、ファンモータ14の負荷電流から風速を求めても良い。
【0030】
データ処理部23は、風検知部23bによって検知した風速Wsを風速情報Iwとして、通信部21を介して室内機11へ送信する。
【0031】
室内機11は、室外機12のデータ処理部23から風速情報Iwを受信すると、この風速情報Iwを含む局所風情報Iowを外部のネットワーク3を介して管理サーバ4へ送信する。このとき、局所風情報Iowには、風速情報Iwの他に、室外機12の設置位置(緯度、経度)を表す設置位置情報Ieが付加されている。この設置位置情報Ieは、室外機12の設置時に作業者などが制御部16の記憶部25に記憶させてもよいし、図示しない設置位置検出手段により検出したデータを用いてもよい。また、設置位置情報Ieには、室外ファン13の設置方向を表す情報を含めてもよい。
【0032】
このように、各家庭に設けられた空気調和機2がネットワーク3を介して市町村の防災部署等に配置された管理サーバ4に局所風情報Iowを送信することにより、管理サーバ4では、各空気調和機2から送信される局所風情報Iowに基づいて風分布情報Imwを生成することが可能となる。
【0033】
すなわち、管理サーバ4は、
図1に示すように、風情報収集手段4a、風分布情報生成手段4b、報知手段4c及び記憶手段4dを備えている。
【0034】
風情報収集手段4aは、各空気調和機2からネットワーク3を介して送信される複数の局所風情報Iowを収集して記憶手段4dに記憶する。
【0035】
風分布情報生成手段4bは、記憶手段4dに記憶された複数の局所風情報Iowから
図4に示す風分布情報Imwを生成し、記憶手段4dに記憶する。
図4の風分布情報Imwには、対象地域の室外機の設置場所が示され、その矢印の方向が設置向きを示している。室外機を示すものに黒塗りと白塗りしたものがある。黒塗りされた室外機は、強風を検知していることを示し、白塗りされた室外機は、強風を検知していない室外機を示している。そして、風分布情報生成手段4bは、強風を判断するために予め定めた所定値である強風値Wss以上の風速情報Iwが含まれているか否かを判定し、強風値Wss以上の風速情報Iwが含まれている場合、強風が吹いていることを検知する。そして、局所風情報Iowに含まれる設置位置情報Ieを用いて、強風値Wss以上の風速情報Iwを含む局所風情報Iowを送信した空気調和機が分布している範囲が広域であるか局地的地域であるか(例えば、
図4の円で示すように半径1Kmの範囲より広い地域であるか半径1Kmの範囲内の地域であるか)を判定する。ここでは、局地的地域だけに分布している場合を竜巻等の局地的な突風が発生しているものとし、局地的な突風と区別するために広域で分布している場合を強風とする。強風値Wss以上の風速情報Iwが広域で分布している場合を強風とし、局地的地域の場合を局地的な突風が発生しているとする。また、風分布情報生成手段4bは、風分布情報の時間的な変化に基づいて今後の風情報を予測する。
【0036】
報知手段4cは、風分布情報生成手段4bで強風または突風の発生を検知したとき、または発生が予測される該当地域に防災無線や公共電波等を利用して該当地域住民に報知して注意喚起を行う。
【0037】
次に、管理サーバ4で実行する風情報解析・報知処理について
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
この風情報解析処理は、まず初めに各空気調和機2から送信される局所風情報Iowを管理サーバ4の風情報収集手段4aで収集する(ステップS1)。
【0039】
次いで、管理サーバ4の風分布情報生成手段4bは、風情報収集手段4aで収集した風速情報Iwと設置位置情報Ieを含む局所風情報Iowから風分布情報Imwを生成するとともに生成した風分布情報Imwを生成した時刻とともに記憶手段4dに記憶させる(ステップS2)。
【0040】
風分布情報生成手段4bは、ステップS2で作成した風分布情報Imwに予め設定した突風と判断する強風値Wss以上の風速情報Iwが含まれているか否かを判定し(ステップS3)、強風値Wss以上の風速が含まれていればステップS4に移行し、含まれていなければ突風が発生していないと判断し、ステップS1に戻って再び風情報解析を始める。
【0041】
ステップS4で風分布情報生成手段4bは、風分布情報Imwに基づいて風速が強風値Wss以上の風速が局地的地域だけに分布しているか否かを判定する。局地的地域の判定方法として風分布情報生成手段4bは、
図4で示す風分布情報Imwにおいて、強風値Wss以上の風速を検知した空気調和機2の設置位置情報に局地的地域を表す半径1Kmの円を重ねて、強風値Wss以上の風速を検知した空気調和機2が、円の内側だけに分布するか否かで判定する。
図4の円で示す局地的地域だけに分布している場合(ステップS4−Y)、報知手段4Cによって該当地域の住民に突風の発生を報知して注意喚起を行う(ステップS5)。なお、精度を高めるために、例えば、所定の台数以上の空気調和機2が強風値Wss以上の風を検知した場合に報知するようにしてもよい。
【0042】
ステップS4で局地的地域だけに分布していない場合(ステップS4−N)、風速が強風値Wss以上の風が対象地域(広域)全体に分布していると判断し、報知手段4Cによって対象地域の住民に強風の発生を報知して注意喚起を行い(ステップS9)、ステップS1に戻って次の風情報解析・報知処理を始める。
【0043】
ステップS5に次いで、風分布情報生成手段4bは、生成した風分布情報Imwに基づいて強風値Wss以上の風の分布が、時間とともに一定の方向に移動しているか否かを判定し(ステップS6)、一定の方向に移動していると判定された場合(ステップS6−Y)、予測される移動先の地域の住民に報知手段4Cで突風の発生を報知して注意喚起を行い(ステップS7)、ステップS1に戻って再び風情報解析を始める。
【0044】
また、ステップS6で一定の方向に移動していないと判定された場合(ステップS6−N)、報知手段4Cで局地的地域の周辺地域の住民にも隣接地域で突風が発生していることを報知して注意喚起を行い(ステップS7)、ステップS1に戻って次の風情報解析・報知処理を始める。
【0045】
このように、上記実施形態によると、空気調和機2の室外ファン13を駆動するファンモータ14のファンモータ回転速度Vmdから風速情報Iwを検知し、この風速情報Iwと室外機12の設置位置情報Ieを含む局所風情報Iowを、ネットワーク3を介して各地域に配置された空気調和機2を連携させて管理サーバ4で収集する。このため、専用の風速計等の気象計測器を多数設置することなく風速情報として収集することができ、空気調和機2の設置対象の地域での風監視システムを低コストで構築することができる。
【0046】
しかも、局所風情報Iowの空気調和機2の設置場所及び設置方向を表す設置位置情報Ieにより、検知した突風の地域や風向きを特定することが可能となり、この風向きの変化から竜巻であるか、ダウンバーストであるかおよその判断することができる。
【0047】
例えば、竜巻は直径が数十〜数百メートルで風向きは円を描くように変化するのに対して、ダウンバーストの風の範囲は数百メートル〜十キロメートル程度で風向きは中心部から円形や楕円形に面的に広がる特徴がある。
【0048】
また、局所風情報Iowを送信している空気調和機2の設置場所が直径0.2km未満の領域であるときには竜巻と判断することができ、これより広い場合には、ダウンバーストであると判断することもできる。
【0049】
しかも、風の検知は、室外ファン13が駆動停止している場合に回転した場合には、回転速度検出部22で検出したファンモータ回転速度Vmdから外風の風速Wsを検知することができる。また、室外ファン13が稼働状態であるときには、外風が室外ファン13を正規の回転方向とは逆方向に回転するように作用するので、ファンモータ14の目標回転速度Vm
*と実際に検出したファンモータ回転速度Vmdとの回転速度偏差ΔVmから風速を検知することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、ファンモータ回転速度Vmdから
図2の風速変換テーブル24を参照して風速Wsに変換する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、風速変換テーブル24の特性直線を方程式として記憶し、この方程式にファンモータ回転速度Vmdを代入して風速Wsを算出するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、管理サーバ4で実行する風情報解析処理で竜巻などの突風を判別する強風値Wss以上の風が分布している場合について説明したが、これに限定されるものではなく、各空気調和機2のデータ処理部23で、強風値Wss以上の風速Wsを検知したときに、局所風情報Iowを送信するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、局所風情報Iowに風速情報Iwと設置位置情報Ieとを含める場合について説明したが、これに限定されるものではなく、局所風情報Iowとして風速情報Iwと各空気調和機2に固有の識別コードとを含めるようにし、管理サーバ4で識別コードと、各空気調和機2の設置場所及び設置方向を表す設置位置情報Ieとを格納するデータベースを備えるようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、インターネット等のネットワークを適用した場合について説明したが、これに代えて携帯電話や固定電話の通信網や他の任意のネットワークを適用することもできる。
【0054】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例又は実施形態も網羅すると解すべきである。