特許第6880942号(P6880942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880942
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】経皮投与デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   A61M37/00 514
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-72236(P2017-72236)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171331(P2018-171331A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 賢洋
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−104312(JP,A)
【文献】 特開2016−131619(JP,A)
【文献】 特開2017−038781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体面を有する基体部、および、前記基体面から突き出た突起部であって、前記突起部の内部に当該突起部の周面に開口する流路を有する前記突起部を備える投与部と、
投与の対象に当接される先端面を有する複数の支持部を備える支持体と、
前記投与部を、複数の前記支持部によって囲まれる空間内の位置から当該空間外へ向けて変位させて前記突起部を前記投与の対象に刺す機構である駆動部と、を備え、
前記基体面と対向する方向から見て、前記複数の支持部は、相互に隣接する前記支持部の間に隙間を空けるとともに前記基体面と前記支持部との間に隙間を空けて前記基体面を囲み、
前記投与部は、前記突起部の先端が、前記支持部の前記先端面よりも前記支持体の基端側に位置する第1の位置から、前記突起部の先端が、前記第1の位置よりも前記支持部の前記先端面に近い第2の位置に変位可能に構成されている
経皮投与デバイス。
【請求項2】
前記第2の位置は、複数の前記支持部に囲まれた空間内の位置である
請求項1に記載の経皮投与デバイス。
【請求項3】
前記第2の位置は、複数の前記支持部に囲まれた空間外の位置である
請求項1に記載の経皮投与デバイス。
【請求項4】
前記基体面と対向する方向から見て、
すべての前記支持部が円の内部に位置する複数の仮想的な円のうち、最も小さい内径を有する円が最外円であり、
前記基体面の中心を中心とする仮想的な円であって、いずれの前記支持部も円の内部に位置しない複数の円のうち、最も大きい内径を有する円が最内円であり、
前記最外円の内側、かつ、前記最内円の外側となる領域の面積に対する、各支持部において投与の対象と接する端部が占める領域の面積の合計の比が、0.2以上0.8以下である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮投与デバイス。
【請求項5】
前記突起部の延びる方向において、各支持部における投与の対象と接する端部の位置は、互いに一致している
請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮投与デバイス。
【請求項6】
前記複数の支持部は、前記突起部の延びる方向において、前記支持部における投与の対象と接する端部の位置が、他の前記支持部とは異なる前記支持部を含む
請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮投与デバイス。
【請求項7】
前記基体面と対向する方向から見て、複数の支持部がそれぞれ図柄の一部を構成し、全体として単一の図柄を構成するように前記支持体が配置されている
請求項1〜のいずれか一項に記載の経皮投与デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の投与のために用いられる経皮投与デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン等の薬剤を体内に投与する方法として、マイクロニードルを用いる方法が知られている。マイクロニードルは、先端に向かって尖った針形状を有する突起部を基体部の表面に備えている。マイクロニードルを用いる投与方法は、突起部を皮膚に刺すことによって皮膚に孔を形成し、この孔から薬剤を皮内に送り込むことで薬剤を投与する方法である。突起部の長さは、皮膚における真皮層の神経細胞に達しない長さであるため、マイクロニードルを用いる投与方法では、注射針を用いて皮下に薬剤を投与する方法と比べて、皮膚に孔が形成されるときの痛みが抑えられる。
【0003】
マイクロニードルを用いた薬剤の投与方式の1つでは、突起部の延びる方向に基体部と突起部とを貫通する貫通孔が形成されたマイクロニードルが用いられ、貫通孔を通して液状の薬剤が皮内に投与される(例えば、特許文献1参照)。こうしたマイクロニードルは、例えば、注射針のように注射筒に取り付けられて用いられる。薬剤の投与に際しては、注射筒の備える押子が押されることによって、注射筒の外筒に充填されている薬剤が突起部に向けて押圧され、その結果、薬剤は、貫通孔を通って突起部の先端から出て皮内に入る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−70869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、皮膚は、皺や弛みを有していることもあれば、高い弾力性を有していることもある。それゆえ、突起部の長さに応じた深さまで突起部を皮膚に十分に刺すことや、薬剤が投与されている間、皮膚に刺さった突起部の姿勢を一定に保つことが難しい場合がある。そこで、マイクロニードルと、マイクロニードルを囲む環状の支持体とを備えた経皮投与デバイスを用いて薬剤の投与を行うことが提案されている。
【0006】
経皮投与デバイスを使用して薬剤を投与するとき、投与者は、支持体で皮膚を押さえることにより支持体で囲まれた領域の皮膚を伸ばし、この領域に突起部を刺した後、突起部へ向けて薬剤の加圧を行う。
【0007】
ここで、薬剤の加圧が続けられている間に突起部から放出された薬剤は、突起部を中心として皮内に広がっていく。しかしながら、支持体が皮膚を押圧しているため、皮膚のなかで支持体の下方に位置する部分よりも外側には、薬剤が広がりにくい。結果として、皮内に注入可能な薬剤の量は、支持体が囲む領域の大きさに制約を受ける。
【0008】
環状を有した支持体の内径を大きくすれば、薬剤の注入量を増大させることは可能ではあるが、内径の拡大は、環の中央部、すなわち、突起部が刺さる位置で支持体が皮膚を伸ばす能力の低下や、経皮投与デバイスの大型化を招いてしまう。
本発明は、皮膚への薬剤の注入量を増大することのできる経皮投与デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する経皮投与デバイスは、基体面を有する基体部、および、前記基体面から突き出た突起部であって、前記突起部の内部に当該突起部の周面に開口する流路を有する前記突起部を備える投与部と、投与の対象に当接される複数の支持部を備える支持体と、を備え、前記基体面と対向する方向から見て、前記複数の支持部は、相互に隣接する前記支持部の間に隙間を空けるとともに前記基体面と前記支持部との間に隙間を空けて前記基体面を囲み、前記投与部と前記支持体とは、前記複数の支持部によって囲まれる空間内の位置から前記空間外へ向けて、前記突起部の延びる方向に沿って、前記支持部に対して前記突起部が相対的に変位可能に構成されている。
【0010】
上記構成によれば、薬剤の投与に際して、皮膚のなかで、支持部の下方の領域、すなわち、支持部に押さえられている領域では、突起部を囲む領域の径方向の外側への薬剤の広がりが制限されるものの、支持部間の隙間の下方の領域では、この領域を超えて、上記径方向の外側へ薬剤が広がる。したがって、閉環状で環上に隙間を有さない支持体が用いられる場合と比較して、皮膚への薬剤の注入量の増大が可能である。
【0011】
上記構成において、前記基体面と対向する方向から見て、すべての前記支持部が円の内部に位置する複数の仮想的な円のうち、最も小さい内径を有する円が最外円であり、前記基体面の中心を中心とする仮想的な円であって、いずれの前記支持部も円の内部に位置しない複数の円のうち、最も大きい内径を有する円が最内円であり、前記最外円の内側、かつ、前記最内円の外側となる領域の面積に対する、各支持部において投与の対象と接する端部が占める領域の面積の合計の比が、0.2以上0.8以下であってもよい。
【0012】
上記構成によれば、皮膚を押圧する支持部の大きさと、支持部間の隙間の大きさとの双方が適度に確保される。したがって、支持体による皮膚を伸ばす機能が良好に発揮されることと、支持部間の隙間の下方から外側に広がる薬剤の量を好適に確保することとの両立が可能である。
上記構成において、前記突起部の延びる方向において、各支持部における投与の対象と接する端部の位置は、互いに一致していてもよい。
【0013】
上記構成によれば、皮膚の押圧が各支持部によって均等に行われやすいため、支持体による皮膚を伸ばす機能が良好に発揮され、また、皮膚に対する経皮投与デバイスの位置が安定しやすい。
【0014】
上記構成において、前記複数の支持部は、前記突起部の延びる方向において、前記支持部における投与の対象と接する端部の位置が、他の前記支持部とは異なる前記支持部を含んでもよい。
【0015】
上記構成によれば、支持部の端部の位置の調整によって、各支持部による皮膚の押圧のタイミングや押圧の大きさの調整が可能である。そのため、薬剤の投与の際に皮膚に残される跡の形状の調整も可能である。
上記構成において、前記基体面と対向する方向から見て、複数の支持部が単一の図柄の一部を構成するように前記支持体が構成されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、薬剤の投与後に、投与対象の皮膚には、基体面および支持部が位置していた部分を中心に形成される凹部と、支持部で囲まれていた領域、および、支持部間の隙間が位置していた領域から外側へ広がる領域を中心に形成される凸部とから構成される図柄が残る。したがって、投与の跡が残ることに対する被投与者の不快感、ひいては、薬剤の投与に対する被投与者の不快感を軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、皮膚への薬剤の注入量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】経皮投与デバイスの一実施形態について、経皮投与デバイスの断面構造の概略を示す断面図。
図2】一実施形態の経皮投与デバイスについて、マイクロニードルおよび支持体の平面構造を示す平面図。
図3】一実施形態の経皮投与デバイスを用いた薬剤の投与の手順を示す図であって、支持体が皮膚上に配置された状態を示す図。
図4】一実施形態の経皮投与デバイスを用いた薬剤の投与の手順を示す図であって、突起部に皮膚が刺された状態を示す図。
図5】一実施形態の経皮投与デバイスを用いた薬剤の投与の手順を示す図であって、皮膚に薬剤が注入された状態を示す図。
図6】一実施形態の経皮投与デバイスを用いた薬剤の投与の手順を示す図であって、皮膚に薬剤が注入された状態を示す図。
図7】一実施形態の経皮投与デバイスを用いて薬剤が投与された後の皮膚の表面を模式的に示す図。
図8】経皮投与デバイスの他の形態について、マイクロニードルおよび支持体の平面構造を示す平面図。
図9】他の形態の経皮投与デバイスを用いて薬剤が投与された後の皮膚の表面を模式的に示す図。
図10】他の形態の経皮投与デバイスを用いた薬剤の投与の手順を示す図であって、皮膚に薬剤が注入された状態を示す図。
図11】他の形態の経皮投与デバイスを用いた薬剤の投与の手順を示す図であって、皮膚に薬剤が注入された状態を示す図。
図12】変形例の経皮投与デバイスの斜視構造を示す斜視図。
図13】実施例1の経皮投与デバイスにおける支持部の配置を示す図。
図14】実施例2の経皮投与デバイスにおける支持部の配置を示す図。
図15】実施例3の経皮投与デバイスにおける支持部の配置を示す図。
図16】(a)は、実施例1の経皮投与デバイスを用いて投与を行った後の皮膚の表面の写真を示す図、(b)は、図16(a)における凸領域と凹領域との配置を模式的に示す図。
図17】(a)は、実施例2の経皮投与デバイスを用いて投与を行った後の皮膚の表面の写真を示す図、(b)は、図17(a)における凸領域と凹領域との配置を模式的に示す図。
図18】(a)は、実施例3の経皮投与デバイスを用いて投与を行った後の皮膚の表面の写真を示す図、(b)は、図18(a)における凸領域と凹領域との配置を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図7を参照して、経皮投与デバイスの一実施形態について説明する。
[経皮投与デバイスの構成]
図1および図2を参照して、経皮投与デバイスの構成について説明する。
図1が示すように、経皮投与デバイス10は、投与部の一例であるマイクロニードル20と、投与対象の皮膚を支えるための支持体30とを備えている。
マイクロニードル20は、基体面21Sを有する基体部21と、基体面21Sから突き出た突起部22とを備えている。
【0020】
基体面21Sは、突起部22の基端を支持している。基体面21Sの形状は特に限定されず、基体面21Sは円形状であってもよいし、多角形形状であってもよい。基体部21は、例えば、図1に示すように、基体面21Sに対して突起部22とは反対方向に延びる筒状を有し、基体部21の有する2つの筒端の一方に端面として基体面21Sを備え、2つの筒端の他方が開口された構造を有する。基体部21は、2つの筒端の間に、外径が徐々に変化する部分や、外径が段階的に変化する部分を有していてもよい。基体部21の内側面は、マイクロニードル20に液状の薬剤を供給するための流路を構成する。あるいは、基体部21は平板状であって、上記流路を構成する筒状の部材と接続されていてもよい。
【0021】
突起部22の形状は、皮膚を刺すことが可能な形状であれば特に限定されない。突起部22は、円錐形状や角錐形状を有していてもよいし、円柱形状や多角柱形状を有していてもよい。あるいは、突起部22は、柱体の上面に錐体の底面が接続された形状を有していてもよいし、角柱や円柱をその延びる方向に対して斜めに切断した形状や、柱体の上面に錐体の底面が接続された立体を、その延びる方向に対して斜めに切断した形状を有していてもよい。
【0022】
突起部22には、突起部22の延びる方向に突起部22を貫通する貫通孔22aが形成されている。貫通孔22aのその延びる方向における両端部のうち、一方の端部は突起部22の周面に開口し、他方の端部は基体面21Sを貫通しており、貫通孔22a内の空間は、基体面21Sに対して突起部22が位置する側とは反対側に位置する薬剤の流路内の空間に連通している。そして、貫通孔22aの内側面は、この流路から繋がる薬剤の流路を構成している。
【0023】
マイクロニードル20の備える突起部22の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。マイクロニードル20が1つの突起部22を備える場合、突起部22は基体面21Sの中央に位置することが好ましい。また、マイクロニードル20が複数の突起部22を備える場合、複数の突起部22は、基体面21S上に、例えば、格子状や、円形状や、同心円状に配列される。
【0024】
突起部22の長さHは、突起部22の延びる方向、すなわち、基体面21Sと直交する方向における基体面21Sから突起部22の先端までの長さである。突起部22の長さHは、皮膚の最外層である角質層を貫通し、かつ、皮下へ到達しない長さであることが好ましく、具体的には200μm以上2000μm以下であることが好ましい。
【0025】
突起部22の幅Dは、基体面21Sと平行な方向における突起部22の最大の長さである。例えば、突起部22が円錐形状を有するとき、基体面21S内に区画された突起部22の底面が示す円の直径が、突起部22の幅Dであり、突起部22が四角錐形状を有するとき、突起部22の底面が示す正方形の対角線の長さが、突起部22の幅Dである。突起部22の幅Dは、150μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0026】
支持体30は、複数の支持部31を備えている。各支持部31は、突起部22の延びる方向と同一の方向に延び、複数の支持部31は、基体面21Sとの間に隙間を空けて、マイクロニードル20を囲んでいる。
【0027】
突起部22の延びる方向において、支持部31における突起部22の先端側の端部の位置は、複数の支持部31において一致している。換言すれば、各支持部31が突起部22の先端側の端部に有する面である先端面は、基体面21Sと平行な1つの面内に位置する。支持部31における先端面とは反対側の端部の構成は特に限定されず、例えば、複数の支持部31は、先端面とは反対側の端部にて1つの部材に接続されていてもよい。
【0028】
経皮投与デバイス10は、マイクロニードル20を、支持体30の支持部31に対して、突起部22の基端から先端に向かう方向に変位させる機構である駆動部40を備えている。駆動部40は、突起部22を、複数の支持部31によって囲まれる空間内の位置から当該空間外へ向けて、突起部22の延びる方向に沿って相対的に変位させる。例えば、マイクロニードル20は、支持体30に対して、基体面21Sと垂直な方向に往復動が可能に構成されていてもよい。駆動部40は、駆動部40が含むばね等の機械的構造によりこうした変位を実現してもよいし、電圧の印加によって駆動する電気的構成によりこうした変位を実現してもよい。
【0029】
図2が示すように、基体面21Sと対向する方向から見て、複数の支持部31は、基体面21Sとの間に隙間を空けて、基体面21Sを囲んでおり、すなわち、複数の支持部31は、突起部22との間に隙間を空けて、突起部22を囲んでいる。そして、相互に隣接する支持部31の間にも隙間が空けられている。換言すれば、基体面21Sと対向する方向から見て、複数の支持部31は、基体面21Sおよび突起部22を囲む仮想的な環上に位置する。なお、マイクロニードル20が複数の突起部22を備える場合、上記環は、すべての突起部22の集合を囲む環である。図2においては、3つの支持部31が、基体面21Sおよび突起部22を囲む円環上に配置された例を示している。これらの支持部31の各々は、基体面21Sと対向する方向から見て、上記円環に沿って延びる帯形状を有している。
【0030】
支持部31ごとの離間距離Lsは、基体面21Sと対向する方向から見た場合の、当該支持部31と基体面21Sとの最短距離である。離間距離Lsは、支持部31ごとに異なっていてもよいし、複数の支持部31において一致していてもよい。離間距離Lsは、0.3cm以上2.0cm以下であることが好ましい。なお、基体面21Sと対向する方向から見た場合の、支持部31と突起部22との最短距離は、0.4cm以上2.5cm以下であることが好ましい。
【0031】
相互に隣接する支持部31ごとの隣接距離Lnは、基体面21Sおよび突起部22を囲む環に沿って互いに隣り合う支持部31の間の最短距離である。隣接距離Lnは、相互に隣接する2つの支持部31ごとに異なっていてもよいし、一致していてもよい。すなわち、相互に隣接する支持部31の間の隙間の大きさは一定でなくてもよいし、上記環に沿って、支持部31は等間隔に並んでいてもよい。隣接距離Lnは、0.3cm以上2.0cm以下であることが好ましい。
【0032】
支持体30の最大径Wmは、基体面21Sに沿った方向における支持体30の最大の長さである。すなわち、最大径Wmは、複数の支持部31のなかで最も離れた支持部31の端部間の距離である。最大径Wmは、0.8cm以上5.0cm以下であることが好ましい。さらには、最大径Wmは、1.0cm以上2.5cm以下であることが好ましい。
【0033】
基体面21Sと対向する方向から見て、すべての支持部31を囲む複数の仮想的な円、すなわち、すべての支持部31がその円の内部に位置する複数の仮想的な円のうち、最も内径の小さい円が最外円Coであり、基体面21Sの中心を中心とする仮想的な円であって、いずれの支持部31もその円の内部に位置しない複数の仮想的な円のうち、最も内径の大きい円が最内円Ciである。基体面21Sの中心は、基体面21Sの外形が示す図形の重心である。最外円Coは少なくとも1つの支持部31と接し、最内円Ciもまた、少なくとも1つの支持部31と接する。
【0034】
最外円Coの内側、かつ、最内円Ciの外側となる領域のなかで、すべての支持部31についての投与対象と接する端部が占める領域の割合が、占有比Orであり、占有比Orは0.2以上0.8以下であることが好ましい。換言すれば、占有比Orは、最外円Coの面積から最内円Ciの面積を引いた面積に対する、各支持部31における先端面の面積の合計の比である。
【0035】
[マイクロニードルの製造方法]
経皮投与デバイス10の材料および製造方法について説明する。
突起部22を形成するための材料は特に限定されず、突起部22は、シリコンやステンレス、チタン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等の金属材料から形成されていてもよい。また、突起部22は、汎用のプラスチック、医療用のプラスチック、および、化粧品用のプラスチック等の樹脂材料から形成されていてもよい。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、アクリル、ウレタン樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、エポキシ樹脂、および、これらの樹脂の共重合材料等が挙げられる。基体部21の材料は特に限定されず、基体部21は、例えば、上述の突起部22の材料として例示した材料から形成されればよい。
【0036】
マイクロニードル20は、基体部21と突起部22とが一体に形成された一体成形物であってもよいし、基体部21と突起部22とが各別に形成された後に接合されることによって形成されてもよいし、金属材料と樹脂材料との組み合わせにより形成されていてもよい。基体部21と突起部22とが各別に形成される場合や、マイクロニードル20が金属材料と樹脂材料との組み合わせにより形成される場合には、必要に応じて、マイクロニードル20を構成する各別の部分を密接させるためのシール剤、接着剤、ガスケット、O−リング等を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
マイクロニードル20の形成方法としては、例えば、機械加工によって、基体部21と突起部22との外形を形成した後に、貫通孔22aを形成する方法が用いられる。あるいは、マイクロニードル20が樹脂材料から形成される場合には、複数の可動金型を用いた射出成形を利用して、マイクロニードル20が形成されてもよい。またあるいは、射出成形と機械加工との組み合わせによって、マイクロニードル20が形成されてもよい。例えば、射出成形によって基体部21と突起部22との外形が形成された後、機械加工によって貫通孔22aが形成される。貫通孔22aを形成するために用いられる機械加工方法としては、例えば、レーザー加工が挙げられる。
【0038】
支持体30を構成する支持部31を形成するための材料は特に限定されず、支持部31は、例えば、金属材料や樹脂材料から形成される。金属材料としては、アルミニウムやステンレス、真鍮が例示される。一方、樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、アクリル、ウレタン樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、エポキシ樹脂、および、これらの樹脂の共重合材料等が例示される。支持部31は、その材料に応じて、機械加工や射出成形等によって形成されればよい。
【0039】
[作用]
図3図7を参照して、本実施形態の経皮投与デバイス10の使用方法とともにその作用を説明する。
経皮投与デバイス10が薬剤の投与に用いられる直前において、突起部22の先端は、支持体30における支持部31の先端面よりも、支持体30の基端側に位置するように設定されている。すなわち、突起部22は、複数の支持部31によって囲まれる空間内に位置している。また、経皮投与デバイス10には液状の薬剤Mが充填されている。
【0040】
図3が示すように、薬剤の投与の際には、まず、薬剤の投与対象の皮膚Skに支持体30が押し当てられる。これにより、支持部31の先端面が皮膚Skに接し、支持部31は皮膚Skを押圧する。支持体30が押し当てられることによって、支持体30で押さえられている部分の内側の領域の皮膚Skが伸ばされて所定の位置に支持され、皮膚Skが張られる。
【0041】
図4が示すように、続いて、マイクロニードル20が降下される。すなわち、突起部22が、支持体30に対して、突起部22の基端から先端に向かう方向に動かされる。これにより、突起部22は先端から、支持体30で押さえられている部分の内側の領域の皮膚Skに刺さる。なお、皮膚Skに刺さった状態において、突起部22は、複数の支持部31によって囲まれる空間内に位置してもよいし、この空間外へ飛び出していてもよい。
【0042】
図5が示すように、続いて、経皮投与デバイス10に充填されている薬剤Mが加圧される。その結果、薬剤Mは突起部22の貫通孔22aを通って突起部22の先端付近から皮内に出る。
【0043】
薬剤Mの加圧が継続されている間、薬剤Mは突起部22から連続的に放出され続け、皮内に広がっていく。薬剤Mが広がった領域では、液体の薬剤Mが皮内に溜まることにより皮膚Skが膨れて盛り上がる。このとき、皮膚Skのなかで支持部31から押圧されている領域、すなわち、支持部31の下方に位置する領域である押圧領域Psでは、支持部31からの押圧を受けることにより組織が詰まっているため、薬剤Mが広がりにくい。また、押圧領域Psでは、支持部31からの押圧によって、皮膚Skの盛り上がりが規制される。そのため、突起部22を囲む領域のうち、突起部22を中心として径方向の先に押圧領域Psが位置する領域では、押圧領域Psよりも径方向の内側の領域を中心に薬剤Mが広がる。また、基体面21Sによって押圧されている領域でも、皮膚Skの盛り上がりが抑えられる。
【0044】
一方、図6が示すように、突起部22を囲む領域のうち、径方向の先に、押圧領域Psが存在しない領域、すなわち、支持部31間の隙間の下方の領域が位置する領域では、薬剤Mの放出量に応じて、薬剤Mが径方向の外側に向けて広がっていく。
薬剤Mの投与が完了すると、突起部22が皮膚から引き抜かれ、支持体30による皮膚の押圧が解除される。
図7は、薬剤の投与後、経皮投与デバイス10が取り除かれた後の皮膚の表面を模式的に示す図である。
【0045】
図7が示すように、皮膚Skの表面と対向する方向から見て、薬剤が注入されることによって盛り上がっている凸領域R1と、押圧の跡が残ることによって窪んでいる凹領域R2とが観察される。なお、凸領域R1および凹領域R2以外の領域は、薬剤の投与前と同等の平坦さが保たれている領域である。
【0046】
基体面21Sが押し当てられていた領域、および、支持部31の先端面が押し当てられていた領域、すなわち、押圧領域Psであった領域では、薬剤の注入による皮膚の盛り上がりが抑えられ、さらに、押圧によって皮膚が窪んでおり、これらの領域を中心とする領域は、凹領域R2となる。すなわち、凹領域R2は、中央に位置する1つの凹領域R2を囲む環上にその他の凹領域R2が並ぶように位置する。
【0047】
突起部22を中心として径方向の先に押圧領域Psが位置していた領域では、押圧領域Psの部分に形成された凹領域R2よりも径方向の内側の領域、すなわち、上記環の内側の領域を中心に凸領域R1が形成されている。一方、突起部22を中心として径方向の先に、支持部31間の隙間の下方の領域が位置していた領域では、上記環の内側の領域に加えて、周囲の凹領域R2の隙間から上記環の径方向の外側まで凸領域R1が広がる。
【0048】
このように、薬剤の投与後の皮膚には、凸領域R1と凹領域R2とから構成されるパターンが形成される。こうしたパターンは、薬剤の体内への吸収や拡散によって徐々に消える。
【0049】
以上のように、本実施形態の経皮投与デバイス10によれば、薬剤の投与に際して、支持部31の下方の領域では、突起部22を囲む領域の径方向の外側への薬剤の広がりが制限されるものの、支持部31間の隙間の下方の領域では、この領域を超えて上記径方向の外側へ薬剤が広がる。したがって、閉環状で環上に隙間を有さない支持体が用いられる場合と比較して、支持体の環を拡大せずとも、皮膚への薬剤の注入量の増大が可能である。
【0050】
そのため、多量の投与が必要な薬剤、例えば、200μL以上の投与が必要な薬剤であっても、投与量を削減するための濃縮等の工程を要さずに、投与が可能である。したがって、本実施形態の経皮投与デバイス10は、特に、200μL以上の薬剤の投与に適しており、こうした薬剤の円滑な投与が可能である。
【0051】
[支持体の他の形態]
上述の説明においては、支持部31の数が3である形態を例示したが、支持体30が備える支持部31の数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、上述の説明においては、複数の支持部31が基体面21Sを囲む仮想的な円環上に位置する形態を例示したが、複数の支持部31が位置する仮想的な環は、矩形やその他の多角形からなる環であってもよいし、楕円からなる環であってもよいし、こうした図形に含まれない直線や曲線の組み合わせによって構成される形状を有する環であってもよい。また、基体面21Sと対向する方向から見た支持部31の形状、すなわち、支持部31の先端面の形状は、帯状でなくてもよい。
【0052】
図8は、基体面21Sと対向する方向から見て、3つの支持部31が、単一の絵柄の一部を構成するように、その形状および配置を有している例を示す。3つの支持部31は、顔の一部、具体的には眉、目、口を表すように構成されている。さらに、基体面21Sも、顔の一部、具体的には鼻を表すように構成されており、支持部31および基体面21Sが、絵柄の一部を構成している。この場合も、離間距離Ls、隣接距離Ln、最大径Wm、および、占有比Orは、図2を用いた上述の説明と同様に定義される。
【0053】
図9は、図8に示す形状および配置の支持部31を有する支持体30を備える経皮投与デバイス10を用いて薬剤の投与を行った後、経皮投与デバイス10が取り除かれた後の皮膚の表面を模式的に示す図である。
【0054】
図9が示すように、基体面21Sおよび支持部31が押し当てられていた領域を中心とする領域に、凹領域R2が形成される。凸領域R1は、支持部31で囲まれていた領域に形成されるとともに、支持部31間の隙間の下方に位置していた領域から外側へ広がるように形成される。これにより、凸領域R1および凹領域R2によって、凹領域R2が眉、目、鼻、口に見え、凸領域R1が頬や額に見える、顔状の絵柄が形成される。
【0055】
このように、基体面21Sと対向する方向から見て、複数の支持部31および基体面21Sが、凹凸によって構成される図柄の凹部を構成する位置に配置されている構成であれば、薬剤の投与後に投与対象の皮膚には、投与の跡として凹凸からなる図柄が残る。したがって、投与の跡が残ることに対する被投与者の不快感、ひいては、薬剤の投与に対する被投与者の不快感を軽減することができる。なお、図柄には、図形、絵柄、模様、文字、記号、数字等が含まれる。
【0056】
また、複数の支持部31は、突起部22の延びる方向において、支持部31における突起部22の先端側の端部の位置、すなわち、投与対象と接する端部の位置が、他の支持部31とは異なる支持部31を含んでもよい。換言すれば、すべての支持部31の先端面は、基体面21Sと平行な1つの面内に位置しなくてもよい。
【0057】
支持部31の先端面が、より下方に、すなわち、突起部22の延びる方向においてより先端側に位置するほど、支持部31による皮膚の押圧の力、すなわち、皮膚Skの盛り上がりを規制する力は大きくなる。
【0058】
図10は、突起部22の延びる方向における先端面の位置が互いに異なる支持部31を支持体30が備えている例を示す。例えば、薬剤の投与が開始された初期は、薬剤の注入量が少ないため皮膚Skの盛り上がりがまだ小さい。そのため、先端面が最も先端側に位置する支持部31aの下方の領域では、支持部31aに押圧されて、突起部22を囲む領域の径方向の外側への薬剤の広がりが制限されるものの、先端面が相対的に基端側に位置する支持部31bの下方の領域では、支持部31bの押圧が弱く、上記径方向の外側への薬剤の広がりが制限されにくい。
【0059】
図11が示すように、薬剤の注入量が増加し、皮膚Skの盛り上がりが大きくなると、支持部31bの下方の領域でも、支持部31bからの押圧を受けて、上記径方向の外側への薬剤の広がりが制限される。その結果、突起部22を囲む領域のなかで、径方向に支持部31間の隙間の下方の領域が位置する領域、支持部31aの下方の領域の内側および外側の領域、支持部31bの下方の領域の内側および外側の領域、これらの領域において、薬剤の広がり方や薬剤の投与後の皮膚に形成される凹凸の高さ等を変えることができる。
【0060】
このように、支持部31の端部の位置の調整によって、各支持部31による皮膚の押圧のタイミングや押圧の大きさの調整が可能である。そのため、薬剤の投与の際に皮膚に残される跡の形状の調整も可能である。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)複数の支持部31が、相互に隣接する支持部31の間、および、基体面21Sと支持部31との間に隙間を空けて基体面21Sおよび突起部22を囲んでいる。そのため、薬剤の投与に際して、皮膚のなかで、支持部31の下方の領域では、突起部22を囲む領域の径方向の外側への薬剤の広がりが制限されるものの、支持部31間の隙間の下方の領域では、この領域を超えて、上記径方向の外側へ薬剤が広がる。したがって、閉環状で環上に隙間を有さない支持体が用いられる場合と比較して、皮膚への薬剤の注入量の増大が可能である。
【0062】
(2)占有比Orが、0.2以上0.8以下である構成では、皮膚を押圧する支持部31の大きさと、支持部31間の隙間の大きさとの双方が適度に確保される。したがって、支持体30による皮膚を伸ばす機能が良好に発揮されることと、支持部31間の隙間の下方から外側に広がる薬剤の量を好適に確保することとの両立が可能である。
【0063】
(3)突起部22の延びる方向において、各支持部31における突起部22の先端側の端部の位置が互いに一致している構成では、皮膚の押圧が各支持部31によって均等に行われやすいため、支持体30による皮膚を伸ばす機能が良好に発揮され、また、皮膚に対する経皮投与デバイス10の位置が安定しやすい。
【0064】
(4)複数の支持部31が、突起部22の延びる方向において、支持部31における突起部22の先端側の端部の位置が、他の支持部31とは異なる支持部31を含む構成では、支持部31の端部の位置の調整によって、各支持部31による皮膚の押圧のタイミングや押圧の大きさの調整が可能である。そのため、薬剤の投与の際に皮膚に残される跡の形状の調整も可能である。
【0065】
(5)基体面21Sと対向する方向から見て、複数の支持部31が、単一の図柄の一部を構成するように配置されている構成では、薬剤の投与後に、投与対象の皮膚には、凹凸によって構成される図柄が残る。したがって、投与の跡が残ることに対する被投与者の不快感、ひいては、薬剤の投与に対する被投与者の不快感を軽減することができる。
【0066】
[変形例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・突起部22は、その内部に当該突起部22の周面に開口する流路を有していればよく、この流路は、貫通孔22aのように、突起部22をその延びる方向に貫通していなくてもよい。図12が示すように、例えば、上記流路は、突起部22の延びる方向に延びる流路であって、その端部のうち、突起部22の基端側の端部が基体面21Sを貫通し、突起部22の先端側の端部が閉塞されている主流路25mと、主流路25mから延びて突起部22の周面に開口する副流路25sとから構成される折れ曲がった流路であってもよい。また、図12が示すように、突起部22は、複数の副流路25sを有していてもよい。こうした構成によれば、皮膚の広がる方向に突起部22から薬剤が放出されるため、薬剤が皮内に広がりやすい。
【0067】
また、副流路25sの数と、支持部31間の隙間の数が一致し、基体面21Sと対向する方向から見て、主流路25mに対して支持部31間の隙間が位置する方向の各々に副流路25sが1つずつ延びていることが好ましい。こうした構成によれば、皮膚のなかで支持部31間の隙間の下方に位置する領域、すなわち、薬剤が広がりやすい領域に向けて、副流路25sの開口から薬剤が放出される。したがって、薬剤を皮内に効率よく拡散させることができる。
【0068】
なお、図12においては、四角柱の上面に四角錐の底面が接続された立体を、その延びる方向に対して斜めに切断した形状を突起部22が有する形態を例示した。
【0069】
・経皮投与デバイス10は、薬剤を備えており、薬剤が充填された状態で保管されてもよいし、薬剤を備えず、投与の直前に経皮投与デバイス10に薬剤が供給されてもよい。
【0070】
・マイクロニードル20によって薬剤を投与される対象は、人に限らず、他の動物であってもよい。また、上述した実施形態の構成、および、変形例の構成の各々は、適宜組み合わせて実施することができる。
【0071】
[実施例]
上述したマイクロニードルについて、具体的な実施例を用いて説明する。
<実施例1>
マイクロニードルの材料としてポリカーボネートを用い、射出成形によって、筒状の基体部とともに、底面が正方形である四角柱の上面に接続された四角錐をその延びる方向に対して斜めに切断した形状の構造体であって、薬剤の流路となる貫通孔を有する構造体を形成した。これによって実施例1のマイクロニードルを得た。
【0072】
支持部の材料としてポリカーボネートを用い、切削によって、円筒における周方向の一部に相当する形状を有する2つの支持部を形成した。2つの支持部を、マイクロニードルの基体面を囲む円環上に配置して、支持体とマイクロニードルとを組み付けることにより、実施例1の経皮投与デバイスを得た。
【0073】
図13は、実施例1の経皮投与デバイスにおける支持部の配置を示す図である。実施例1の経皮投与デバイスにおいて、隣接距離Lnは6mmで一定であり、最大径Wmは16mmである。また、基体面は円形であってその直径は3mmであり、離間距離Lsは4mmで一定であり、占有比Orは0.75である。また、突起部の長さHは、750μmである。
【0074】
<実施例2>
実施例1と同様の工程によって、実施例1と同様の形状のマイクロニードルを得た。また、実施例1と同様の工程によって、円筒における周方向の一部に相当する形状を有する3つの支持部を形成した。3つの支持部を、マイクロニードルの基体面を囲む円環上に配置して、支持体とマイクロニードルとを組み付けることにより、実施例2の経皮投与デバイスを得た。
【0075】
図14は、実施例2の経皮投与デバイスにおける支持部の配置を示す図である。実施例2の経皮投与デバイスにおいて、隣接距離Lnは6mmで一定であり、最大径Wmは16mmである。また、基体面は円形であってその直径は3mmであり、離間距離Lsは4mmで一定であり、占有比Orは0.63である。
【0076】
<実施例3>
実施例1と同様の工程によって、実施例1と同様の形状のマイクロニードルを得た。また、実施例1と同様の工程によって、円筒における周方向の一部に相当する形状を有する4つの支持部を形成した。4つの支持部を、マイクロニードルの基体面を囲む円環上に配置して、支持体とマイクロニードルとを組み付けることにより、実施例3の経皮投与デバイスを得た。
【0077】
図15は、実施例3の経皮投与デバイスにおける支持部の配置を示す図である。実施例3の経皮投与デバイスにおいて、隣接距離Lnは6mmで一定であり、最大径Wmは16mmである。また、基体面は円形であってその直径は3mmであり、離間距離Lsは4mmで一定であり、占有比Orは0.5である。
【0078】
<投与試験>
実施例1〜実施例3の経皮投与デバイスを用いて、薬剤の投与試験を行った。各経皮投与デバイスに、薬剤として純水を充填し、12週齢のウィスターラットから摘出した皮膚に支持体を押し付け、さらに、突起部を刺した。そして、薬剤を突起部に向けて加圧し、600μLの薬剤を注入した。薬剤の投与後、皮膚上から経皮投与デバイスを取り除き、皮膚の表面を観察した。図16(a)は、実施例1の経皮投与デバイスを用いて投与を行った後の皮膚の表面の写真であり、図16(b)は、図16(a)における凸領域と凹領域との配置を模式的に示す図である。図17(a)は、実施例2の経皮投与デバイスを用いて投与を行った後の皮膚の表面の写真であり、図17(b)は、図17(a)における凸領域と凹領域との配置を模式的に示す図である。図18(a)は、実施例3の経皮投与デバイスを用いて投与を行った後の皮膚の表面の写真であり、図18(b)は、図18(a)における凸領域と凹領域との配置を模式的に示す図である。
【0079】
図16図18が示すように、いずれの実施例についても、支持部間の隙間の下方の領域を超えて外側へ凸領域が広がっている。したがって、閉環状の支持体が用いられる場合と比較して、皮膚への薬剤の注入量の増大が可能であることが示唆される。
【符号の説明】
【0080】
10…経皮投与デバイス、20…マイクロニードル、21…基体部、21S…基体面、22…突起部、30…支持体、31…支持部、40…駆動部、Co…最外円、Ci…最内円、Sk…皮膚、Ps…押圧領域、Ln…隣接距離、Ls…離間距離、Wt…最大径、R1…凸領域、R2…凹領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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