特許第6880944号(P6880944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880944未燃カーボン含有石炭灰の改質方法、未燃カーボン含有石炭灰の改質システムおよびコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880944
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】未燃カーボン含有石炭灰の改質方法、未燃カーボン含有石炭灰の改質システムおよびコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/10 20060101AFI20210524BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20210524BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C04B18/10 A
   C04B18/08 Z
   B09B5/00 NZAB
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-73123(P2017-73123)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172259(P2018-172259A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
(72)【発明者】
【氏名】土肥 浩大
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−059755(JP,A)
【文献】 特開2016−113319(JP,A)
【文献】 特開2011−132045(JP,A)
【文献】 特開2004−002165(JP,A)
【文献】 特開2008−126117(JP,A)
【文献】 特開2007−000780(JP,A)
【文献】 特開平09−002848(JP,A)
【文献】 特開2010−168256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未燃カーボン含有石炭灰のLab表色系におけるL値とb値を測定して、前記L値が54以上でかつ前記b値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別する受入れ工程と、
前記受入れ工程にて選別された前記未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて強制渦式遠心方式の分級装置を用いて分級する分級工程と、
を有することを特徴とする未燃カーボン含有石炭灰の改質方法。
【請求項2】
前記未燃カーボン含有石炭灰が、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰であることを特徴とする請求項1に記載の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法。
【請求項3】
前記分級工程において前記未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が5質量%以下となる条件にて分級することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法。
【請求項4】
未燃カーボン含有石炭灰のLab表色系におけるL値とb値を測定して、前記L値が54以上でかつ前記b値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別する受入れ部と、
前記受入れ工程にて選別された前記未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて分級する強制渦式遠心方式の分級装置と、
を備えることを特徴とする未燃カーボン含有石炭灰の改質システム。
【請求項5】
石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰を改質してコンクリート混和材用のフライアッシュを製造する方法であって、
前記未燃カーボン含有石炭灰を改質する方法が、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法であることを特徴とするコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未燃カーボン含有石炭灰の改質方法、未燃カーボン含有石炭灰の改質システムおよびコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚き火力発電所や流動床燃焼炉などで発生する石炭灰(フライアッシュともいう)を、コンクリートの混和材として利用することが検討されている。コンクリート混和材用のフライアッシュは、日本工業規格のJIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)で規定されている。しかしながら、石炭灰は一般に未燃カーボンを含んでおり、この未燃カーボンが、AE剤、AE減水剤、減水剤などの化学混和剤の成分を吸着することがある。このため、コンクリートに添加する石炭灰の未燃カーボン量が多いと、AE剤、AE減水剤、減水剤などの化学混和剤の添加量を多くする必要が生じることがある。また、未燃カーボン量が多い石炭灰をコンクリートに添加すると、コンクリートの空気量や流動性が変動したり、さらに硬化したコンクリートの表面に未燃カーボンによる黒い斑点が生じて見栄えが悪くなることがある。
【0003】
このため、未燃カーボン含有石炭灰中の未燃カーボンを除去するための方法が検討されている。例えば、特許文献1には、未燃カーボン含有石炭灰を粉砕し、その後、分級して微粉砕した未燃カーボンを除去する方法が記載されている。特許文献2および特許文献3には、静電気を利用して未燃カーボンを除去する方法が記載されている。特許文献4には、石炭灰中の未燃カーボンを焼成によって除去する方法が記載されている。
また、特許文献5には、石炭灰を化学成分や粉末度に応じて複数の貯蔵施設に振り分け、必要に応じて分級処理などを実施して要求品質に応じたフライアッシュを供給することによる有効利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−30885号公報
【特許文献2】特開2006−150231号公報
【特許文献3】特開2005−305344号公報
【特許文献4】特開平8−243526号公報
【特許文献5】特開2005−313165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている粉砕と分級のみでは、未燃カーボンを完全に除去することは難しい。また、特許文献2および特許文献3に記載されている静電気を利用する方法では、未燃カーボンだけでなく、プラスに帯電している微細な粒子が除去されるため、活性の高いガラス質粒子が除去されて活性が失われるおそれがある。また、特許文献4に開示されている未燃カーボンを焼成によって除去する方法は、燃料コストが高く、また焼成によって石炭灰の活性が低下して、コンクリート混和材用のフライアッシュとして利用するのが困難となるおそれがある。また、特許文献5に記載されているように、石炭灰を貯蔵施設で貯蔵する方法は、貯蔵施設を多数必要とするため広大な敷地面積を必要とし、また、貯蔵した石炭灰と需要のバランスが適合しない場合は、有効利用されない石炭灰を処分することが必要となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、石炭焚き火力発電所などで発生した未燃カーボン含有石炭灰を、比較的簡易な装置を用いて、JIS A 6201で規定されているようなコンクリート混和材用のフライアッシュとして有効に利用することが可能な石炭灰として改質できる未燃カーボン含有石炭灰の改質方法および未燃カーボン含有石炭灰の改質システムを提供することを目的とする。本発明はまた、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰を、比較的簡易な装置を用いてコンクリート混和材用のフライアッシュに改質できるコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法を提供することもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法は、未燃カーボン含有石炭灰のLab表色系におけるL値とb値を測定して、前記L値が54以上でかつ前記b値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別する受入れ工程と、前記受入れ工程にて選別された前記未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて強制渦式遠心方式の分級装置を用いて分級する分級工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
このような構成とされた本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法によれば、L値が54以上でかつb値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別して使用しているので、改質後の石炭灰は、MB吸着量が低く、かつ活性度指数が高くなる。また、本発明では、選別した未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて分級するので、未燃カーボンの付着量の多い粗大な石炭灰が効率よく除去される。このため、改質石炭灰は、微細で、かつ活性度指数が高くなるので、コンクリート混和材用のフライアッシュとして有効に利用することができる。従って、静電気や加熱という手段を用いずに比較的簡易な装置によって、コンクリート混和材用のフライアッシュとして有効に利用することができる石炭灰を得ることができる。
【0009】
ここで、本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法においては、未燃カーボン含有石炭灰が、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰であってもよい。
この場合、石炭焚き火力発電所にておいて大量に発生する未燃カーボン含有石炭灰を有効利用することができる。
【0010】
また、本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法においては、前記分級工程において前記未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が5質量%以下となる条件にて分級することが好ましい。
この場合、改質石炭灰の45μmふるい残分は5質量%以下となるので、微細で、かつ確実に活性度指数が高くなる。従って、この改質石炭灰は、コンクリート混和材用のフライアッシュとしてより有効に利用することができる。
【0011】
本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質システムは、未燃カーボン含有石炭灰のLab表色系におけるL値とb値を測定して、前記L値が54以上でかつ前記b値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別する受入れ部と、前記受入れ工程にて選別された前記未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて分級する強制渦式遠心方式の分級装置と、を備えることを特徴としている。
【0012】
このような構成とされた本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法によれば、L値が54以上でかつ前記b値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別する受入れ部と、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて分級する分級装置とを備えるので、静電力や加熱を行わずに簡易な方法によって、JIS A 6201で規定されているフライアッシュとして有効に利用することができる改質石炭灰を得ることができる。
【0013】
本発明のコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法は、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰を改質してコンクリート混和材用のフライアッシュを製造する方法であって、前記未燃カーボン含有石炭灰を改質する方法が、前述の本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法であることを特徴としている。
【0014】
このような構成とされた本発明のコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法によれば、未燃カーボン含有石炭灰の改質方法として前述の本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法を用いているので、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰を、比較的簡易な装置を用いてコンクリート混和材用のフライアッシュとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、石炭焚き火力発電所などで発生した未燃カーボン含有石炭灰を、比較的簡易な装置を用いて、JIS A 6201で規定されているようなコンクリート混和材用のフライアッシュとして有効に利用することが可能な石炭灰として改質できる未燃カーボン含有石炭灰の改質方法および未燃カーボン含有石炭灰の改質システムを提供することが可能となる。本発明によればまた、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰を、比較的簡易な装置を用いてコンクリート混和材用のフライアッシュに改質できるコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である未燃カーボン含有石炭灰の改質システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に係る未燃カーボン含有石炭灰の改質方法、未燃カーボン含有石炭灰の改質システムおよびコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法について、添付した図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、改質対象の未燃カーボン含有石炭灰は、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰とされている。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である未燃カーボン含有石炭灰の改質システムの構成を示すブロック図である。
図1において、未燃カーボン含有石炭灰の改質システム10は、未燃カーボン含有石炭灰の受入れ部11と、未燃カーボン含有石炭灰の受入れ部11に接続する改質用石炭灰貯留タンク12およびセメント原料用石炭灰貯留タンク13と、改質用石炭灰貯留タンク12に接続する分級装置14と、分級装置14と接続する検査部15と、検査部15に接続する改質石炭灰貯留タンク16を備える。
【0019】
未燃カーボン含有石炭灰の受入れ部11は、未燃カーボン含有石炭灰のLab表色系におけるL値とb値を測定する。そして、L値が54以上でかつb値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別する。
【0020】
Lab表色系においてL値は、一般に明度を表す。未燃カーボン含有石炭灰においてL値は、石炭灰表面の未燃カーボンの付着量と相関すると考えられる。すなわち、L値が低い(明度が低い=黒色に近い)と、石炭灰の未燃カーボンの付着量が多くなり、MB吸着量が高くなる。このため、本実施形態では、L値を54以上と設定している。なお、L値の上限は、一般に75以下である。
【0021】
Lab表色系においてb値は、一般に黄方向の色度を表す。未燃カーボン含有石炭灰のb値は、石炭灰表面の活性およびMB吸着量と相関があると考えられる。すなわち、b値が高い(黄方向の色度が高い)と、メチレンブルー(MB)吸着量が低く、また、石炭灰の活性度指数が低くなる。一方、b値が低くなりすぎると、MB吸着量が高くなりすぎる。MB吸着量が高いことは、セメントで利用される化学混和剤(AE剤、AE減水剤、減水剤)の成分を吸着しやすいことを意味する。このため、本実施形態では、MB吸着量と活性度指数のバランスを考慮し、b値を2以上10以下と設定している。
【0022】
未燃カーボン含有石炭灰のL値およびb値を測定する方法としては、バッチ法(回分式)および連続法を用いることができる。バッチ法は、未燃カーボン含有石炭灰の一部をサンプリングし、サンプリングした未燃カーボン含有石炭灰についてL値およびb値を測定する方法である。連続法は、未燃カーボン含有石炭灰を、ベルトコンベアなどの搬送手段によって連続的に搬送しながら、そのL値およびb値を測定する方法である。
【0023】
改質用石炭灰貯留タンク12は、未燃カーボン含有石炭灰の受入れ部11にて選別されたL値が54以上でかつb値が2以上10以下の条件を満たす未燃カーボン含有石炭灰を貯留するための容器である。
【0024】
セメント原料用石炭灰貯留タンク13は、L値が54以上でかつb値が2以上10以下の条件を満たさない未燃カーボン含有石炭灰を貯留するための容器である。
【0025】
分級装置14は、乾式分級装置を用いる。乾式分級装置としては、粒子の遠心力を利用して分級する遠心方式の分級装置と、粒子の慣性力を利用して分級する慣性方式の分級装置とを用いることができる。また、遠心方式の分級装置としては、強制渦式と、半自由渦式と、自由渦式とを使用できる。強制渦式の分級装置は、装置内部に回転体(分級ロータともいう)が備えられていて、その回転体を高速で回転させることで強制的に渦を形成する分級装置である。半自由渦式の分級装置は、回転体の代わりに、装置内部に渦を生成させる案内板(スリットともいう)が備えられている分級装置である。自由渦式の分級装置は、サイクロンに代表されるように、装置内部の接線方向に気体を吹き込んで渦を生成させる分級装置である。これらの分級装置の中では、強制渦式遠心方式の分級装置が好ましい。強制渦式遠心方式の分級装置では、回転体の回転数を調整することによって、分級後の粉末の粒子径を精度よく調節することができる。
【0026】
分級装置14では、未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて分級する。
45μmふるい残分を8質量%を超える高い値に設定すると、未燃カーボンが多く付着した石炭灰の除去効率が低下するおそれがある。このため、本実施形態では、分級条件を、分級後の石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件と設定している。未燃カーボンが多く付着した石炭灰の除去効率を高くするためには、分級後の改質石炭灰の45μmふるい残分が5質量%以下となる条件と設定することがより好ましい。
一方、45μmふるい残分を低い値に設定すると、改質石炭灰の回収率が過度に低下するおそれがある。このため、本実施形態では、分級条件を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が0.5質量%以上とすることが好ましく、1.0質量%以上とすることが特に好ましい。
【0027】
検査部15は、分級装置14にて分級されて改質された改質石炭灰(微粉)を回収し、その回収した石炭灰に対して、コンクリート混和材用のフライアッシュとして要求される物性を測定する。測定される物性としては、例えば、粒度、L値、b値、強熱減量(ig.loss)を挙げることができる。
【0028】
改質石炭灰貯留タンク16は、検査部15にて、コンクリート混和材用のフライアッシュとして要求される物性を満たしていることが確認された改質石炭灰を貯留するための容器である。
【0029】
次に、上述の未燃カーボン含有石炭灰の改質システム10を用いたコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法について説明する。
【0030】
まず、石炭焚き火力発電所から輸送された未燃カーボン含有石炭灰は、未燃カーボン含有石炭灰の受入れ部11に送られる。未燃カーボン含有石炭灰の受入れ部11未燃カーボン含有石炭灰のLab表色系におけるL値とb値を測定して、前記L値が54以上でかつ前記b値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別する。
【0031】
未燃カーボン含有石炭灰の受入れ部11にて選別されたL値が54以上でかつb値が2以上10以下の条件を満たす未燃カーボン含有石炭灰は、改質用石炭灰貯留タンク12に送られ、一旦、貯留される。
【0032】
一方、L値が54以上でかつb値が2以上10以下の条件を満たさない未燃カーボン含有石炭灰は、セメント原料用石炭灰貯留タンク13に送られ一旦、貯留される。セメント原料用石炭灰貯留タンク13に貯留された未燃カーボン含有石炭灰は、その後、セメント原料として、他のセメント原料と共に焼成されて、セメントクリンカーとなる。
【0033】
改質用石炭灰貯留タンク12に貯留された未燃カーボン含有石炭灰は、分級装置14に送られる。分級装置14は、未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて分級する。
【0034】
分級されて改質された改質石炭灰(微粉)は、検査部15に送鉱される。検査部15では、送鉱された石炭灰に対して、コンクリート混和材用のフライアッシュとして要求される物性を測定する。一方、分級装置14にて除去された粗粉は、セメント原料用石炭灰貯留タンク13に送られる。
【0035】
検査部15にて、コンクリート混和材用のフライアッシュとして要求される物性を満たしていることが確認された改質石炭灰は、改質石炭灰貯留タンク16に送られ、一旦、貯留される。そして、改質石炭灰貯留タンク16から、コンクリート混和材用のフライアッシュとして取り出され、利用される。一方、フライアッシュとして要求される物性を満たさない石炭灰は、セメント原料用石炭灰貯留タンク13に送られる。
【0036】
以上のような構成とされた本実施形態の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法および改質システムによれば、L値が54以上でかつb値が2以上10以下である未燃カーボン含有石炭灰を選別して使用しているので、改質後の石炭灰は、MB吸着量が低く、かつ活性度指数が高くなる。また、本実施形態では、この未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下となる条件にて分級するので、未燃カーボンの付着量の多い粗大な石炭灰が効率よく除去され、分級後の改質石炭灰は、微細で、かつ活性度指数が高くなる。このため、分級後の改質石炭灰は、JIS A 6201で記載されているフライアッシュとして有効に利用することができる。従って、静電気や加熱による未燃カーボンの除去を行わずに簡易な方法によって、JIS A 6201で規定されているフライアッシュとして有効に利用することができる石炭灰を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、未燃カーボン含有石炭灰が、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰とされているので、石炭焚き火力発電所にておいて大量に発生する未燃カーボン含有石炭灰を有効利用することができる。
【0038】
さらに、本実施形態の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法においては、分級工程において未燃カーボン含有石炭灰を、分級によって改質された改質石炭灰の45μmふるい残分が5質量%以下となる条件にて分級しているので、改質後の石炭灰は、確実に微細で、かつ活性度指数が高くなる。従って、改質後の石炭灰は、JIS A 6201に規定するフライアッシュとしてより有効に利用することができる。
【0039】
また、本実施形態のコンクリート混和材用のフライアッシュの製造方法によれば、未燃カーボン含有石炭灰の改質方法として前述の本発明の未燃カーボン含有石炭灰の改質方法を用いているので、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰を、比較的簡易な装置を用いてコンクリート混和材用のフライアッシュとすることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、セメント原料用石炭灰貯留タンク13に貯留された石炭灰をセメント原料用として利用するものとしたが、セメント原料用石炭灰貯留タンク13に貯留された石炭灰を静電気や加熱によって改質して、コンクリート用フライアッシュとして利用してもよい。
また、分級装置としては、乾式分級装置を用いてが、湿式分級装置を使用してもよい。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を本発明例と比較例により説明する。
【0042】
[本発明例1〜6、比較例1〜7]
複数の石炭焚き火力発電所にて発生した各種の石炭灰を受入れた。受入れた受入石炭灰のL値とb値を、測色色差計(日本電色工業(株)製、型式:ZE2000)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
次いで、受入石炭灰を、強制渦式遠心方式の分級装置(ターボクラシファイアー、日清エンジニアリング(株)製)を用いて分級し、分級された石炭灰(微粉)を回収した。
なお、分級条件は、分級後の石炭灰の45μmふるい残分が8質量%以下なる条件とした。
【0044】
分級後の石炭灰(微粉)について、45μmふるい残分、メチレンブルー(MB)吸着量、活性度指数を、下記の方法により測定した。そして、MB吸着量が0.8mg/g以下で、かつ活性度指数が80%以上である石炭灰を、JIS A 6201に規定のコンクリート用混和材に適合したものとして「○」、それ以外を「×」と判定した。その結果を、表1に示す。
【0045】
(45μmふるい残分)
JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)の付属書1:45μmふるい残分試験方法(網ふるい方法)に規定されている方法に準拠して測定した。
【0046】
(MB吸着量)
セメント協会の「JCAS I−61:2008」(フライアッシュのメチレンブルー吸着量試験方法)に準拠して測定した。
【0047】
(活性度指数)
JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)に規定されている方法に準拠して測定した。なお、表1の値は材齢28日の値である。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果から、L値とb値とが本発明の範囲にある受入石炭灰を、本発明の条件で分級して得た石炭灰(本発明例1〜6)は、MB吸着量と活性度指数のバランスがよく、JIS A 6201に規定のコンクリート用混和材として有用であることが確認された。
【0050】
これに対して、L値が本発明の範囲よりも低い受入石炭灰を分級して得た石炭灰(比較例1、2)は、MB吸着量が高くなった。これは、石炭灰に多量のカーボンが付着しているためであると推察される。
b値が本発明の範囲よりも低い受入石炭灰を分級して得た石炭灰(比較例3、4)もまた、活性度指数は高いものの、MB吸着量が高くなった。これは、石炭灰表面の活性が高すぎるためであると推察される。
一方、b値が本発明の範囲よりも高い受入石炭灰を分級して得た石炭灰(比較例5、6、7)は、MB吸着量は低いものの、活性度指数が低くなった。これは、石炭灰表面の活性が低すぎるためであると推察される。
【符号の説明】
【0051】
10 未燃カーボン含有石炭灰の改質システム
11 未燃カーボン含有石炭灰の受入れ部
12 改質用石炭灰貯留タンク
13 セメント原料用石炭灰貯留タンク
14 分級装置
15 検査部
16 改質石炭灰貯留タンク
図1