(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記制御部は、前記冷却運転時に、前記温度センサにより検出される前記温度が、最大氷結晶生成帯の下限値より低い所定温度まで低下するように前記被冷却物を冷却した後に、前記冷凍機による冷却を継続しつつ、前記発生器による前記電磁場又は前記電場の発生を停止する、
請求項1に記載の冷却装置。
【発明を実施するための形態】
【0032】
  本発明の冷却装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
 
【0033】
  なお、下記の実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。下記の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
 
【0034】
  <第1実施形態>
  (1)全体構成
  本発明の第1実施形態に係る冷却装置100は、食品等の被冷却物Mを冷却する装置である。冷却装置100は、被冷却物Mに対して電磁波を照射しながら被冷却物Mを冷却することで、過冷却域で被冷却物Mを冷却可能な装置である。言い換えれば、冷却装置100は、被冷却物Mに対して電磁場を作用させながら、被冷却物Mを冷却することで、過冷却域で被冷却物Mを冷却可能な装置である。なお、以下では、被冷却物Mに対して電磁波を照射するという表現を、被冷却物Mに対して電磁場を作用させるという記載と同様の意味で使用している。
 
【0035】
  冷却装置100は、例えば、業務用の大型の冷凍庫に利用される。しかし、これに限定されるものではなく、冷却装置100は、輸送用の冷凍コンテナや、家庭用の冷蔵庫に利用されるものでもよい。
 
【0036】
  初めに、従来のように電磁波を照射することなく被冷却物Mを冷却する場合の被冷却物Mの温度の時間変化と、本冷却装置100を用いて被冷却物Mに電磁波を照射し(被冷却物Mに電磁場を作用させ)過冷却域で被冷却物Mを冷却する場合の被冷却物Mの温度の時間変化との違いについて、
図6を参照しながら説明する。
図6(a)は、電磁波を照射せずに被冷却物Mを冷却する場合の被冷却物Mの温度の時間変化の模式図である。
図6(b)は、冷却装置100を用いて被冷却物Mを冷却する場合の被冷却物Mの温度の時間変化の模式図である。
 
【0037】
  電磁波を照射せずに被冷却物Mを冷却する場合、被冷却物Mの温度が凝固点(多くの場合、最大氷結晶生成帯(−5〜−1℃)内の所定の温度)に到達すると、被冷却物Mは凍結し始める。そして、被冷却物Mが凍結し始めると、冷凍機の冷却能力のほとんどは被冷却物Mの相変化に用いられる。そのため、凍結開始後、凍結完了までは、被冷却物Mの温度はほとんど変化しない。そして、凍結が完了すると、被冷却物Mの温度が再び下がり始める(
図6(a)参照)。
 
【0038】
  一方、冷却装置100を用いて被冷却物Mを冷却する場合には、被冷却物Mに電磁波を照射しながら、過冷却域で被冷却物Mを冷却することで、被冷却物Mは凝固点や最大氷結晶生成帯に達しても凍結せずに温度が低下する。そして、被冷却物Mの温度が所定温度に到達し、冷却装置100が電磁波の照射を停止すると、被冷却物Mは凍結し始め、被冷却物Mの温度は凝固点まで一旦上昇する。そして、凍結完了までは、被冷却物Mの温度はほとんど変化せず、凍結が完了すると、被冷却物Mの温度が再び下がり始める(
図6(b)参照)。
 
【0039】
  冷却装置100を用いて被冷却物Mを冷却する場合、電磁波を照射することなく被冷却物Mを冷却する場合に比べて、凍結所要時間(凍結開始から凍結終了までの時間)を短縮できるという効果が得られる。さらに、冷却装置100を用いて被冷却物Mを冷却する場合、電磁波を照射することなく被冷却物Mを冷却する場合に比べて、最大氷結晶生成帯滞留時間(凍結開始後、凍結を終了し、最大氷結晶生成帯の下限値に到達するまでの時間)を短縮できるという効果が得られる。その結果、凍結中の被冷却物M中の氷の結晶の生成を抑制し、物品の品質低下を防止することができる。このような被冷却物Mの温度変化を実現するための冷却装置100の動作については後述する。
 
【0040】
  冷却装置100の構成について説明する。
 
【0041】
  冷却装置100は、ケーシング110と、冷凍機200と、電磁波照射器300と、コントローラ400と、被冷却物温度センサ500と、ケーシング内温度センサ600と、を主に含む(
図1及び
図2参照)。
 
【0042】
  ケーシング110は、冷却空間110aを内部に形成する筐体である。冷却空間110aは、被冷却物Mが収容され、冷却される空間である。冷却空間110aは、その周囲を、ケーシング110の壁面(天井面、側面及び底面を含む、図示省略)で覆われた空間である。ケーシング110の壁面は、断熱材で断熱されている。ケーシング110には、冷却空間110a内に被冷却物Mを搬入し、冷却空間110aから被冷却物Mを搬入するためのドア(図示せず)が設けられている。
 
【0043】
  冷凍機200は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを利用して、ケーシング110の内部の冷却空間110aを冷却する機器である。冷凍機200は、熱源側ユニットとしてのケーシング外ユニット200aと、利用側ユニットとしてのケーシング内ユニット200bとを有する(
図1参照)。ケーシング外ユニット200aとケーシング内ユニット200bとは、液冷媒連絡配管202及びガス冷媒連絡配管204を介して互いに接続されている(
図1参照)。ケーシング内ユニット200bは、冷却空間110aに冷風を吹き出し、冷却空間110a内の温度を下げることで、冷却空間110a内の被冷却物Mを冷却する。
 
【0044】
  電磁波照射器300は、被冷却物Mに作用させる電磁場を発生させる発生器の一例である。電磁波照射器300により被冷却物Mに電磁場を作用させながら冷凍機200で冷却することで、過冷却域で被冷却物Mを冷却することが可能である。ここでは、電磁波照射器300は、被冷却物Mに電磁波を照射し、被冷却物Mを内部発熱させることで、過冷却域で被冷却物Mを冷却することが可能である。電磁波照射器300は、高周波の電磁波を被冷却物Mに照射することで、被冷却物Mを誘電加熱する。被冷却物Mに電磁波を照射する1対の電極310は、冷却空間110a内に配置される(
図1参照)。被冷却物Mに電磁波を照射するため、冷却装置100により冷却される被冷却物Mは、1対の電極310間に挟まれるよう戴置される。なお、被冷却物Mは電極310に接触している必要はない。また、例えば、被冷却物Mと電極310との間には、電磁波が通過可能な材質の被冷却物Mを戴置するための台が配置されていてもよい。
 
【0045】
  電磁波照射器300では、照射する電磁波の周波数(発生させる電磁場の周波数)が可変である。電磁波照射器300は、照射する電磁波の周波数を、所定の設定可能周波数範囲(最小周波数fmin以上で最大周波数fmax以下の範囲)内で変更可能である。設定可能周波数範囲は、例えば、中波(300kHz〜3MHz)、短波(3〜30MHz)、及び超短波(30〜300MHz)の領域内に含まれる。例えば、設定可能周波数範囲は、限定するものではないが、1MHz〜50MHzである。設定可能周波数範囲は、冷却装置100の冷却対象と成り得る物品を高周波誘電加熱する上で適切な周波数が、その範囲内に含まれるように設計されることが好ましい。なお、電磁波照射器300は、周波数の値を、設定可能周波数範囲の任意の値に設定可能(連続的に変更可能)な機器であってもよいし、設定可能周波数範囲内の複数の離散値にだけ設定可能な機器であってもよい。
 
【0046】
  また、電磁波照射器300では、発生させる電磁場の強度が可変である。言い換えれば、電磁波照射器300では、照射する電磁波の出力(ワット数)が可変である。電磁波照射器300は、照射する電磁波の出力を、所定の設定可能出力範囲(最小出力Smin以上で最大出力Smax以下の範囲)内で変更可能である。電磁波の出力が最小出力Sminに設定された時、電磁場の強度は最小強度に設定される。電磁波の出力が最大出力Smaxに設定された時、電磁場の強度は最大強度に設定される。設定可能出力範囲は、冷却装置100の冷却対象と成り得る物品を過冷却する上で適切な出力範囲に設計されればよい。例えば、設定可能出力範囲の上限値(最大出力Smax)は、冷凍機200が所定の冷却能力で運転され、電磁波照射器300が最大出力Smaxで電磁波を被冷却物Mに照射した時に、被冷却物Mの温度が最大氷結晶生成帯に低下したとしても、被冷却物Mが凍結することがないような値に設定されることが好ましい。また、例えば、設定可能出力範囲の下限値(最小出力Smin)は、被冷却物Mの温度が最大氷結晶生成帯の上限値より高く、冷凍機200が所定の冷却能力で運転され、電磁波照射器300が最小出力Sminで電磁波を被冷却物Mに照射した時に、被冷却物Mの温度が低下していくような値に設定されることが好ましい。つまり、最小出力Sminは、最小出力Sminの電磁波を照射した時の被冷却物Mの内部発熱の熱量が、冷凍機200の所定の冷却能力を上回ることが無いような値に設定されることが好ましい。なお、電磁波照射器300は、出力の値を、設定可能出力範囲の任意の値に設定可能(連続的に変更可能)な機器であってもよいし、設定可能出力範囲内の複数の離散値にだけ設定可能な機器であってもよい。
 
【0047】
  コントローラ400は、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御する装置である。コントローラ400は、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御することで、3種類の運転(予備運転、通常冷却運転、過冷却運転)を行う。言い換えれば、コントローラ400は、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御することで、冷却装置100に3種類の運転(予備運転、通常冷却運転、過冷却運転)を実行させる。なお、冷却装置100は、これら以外の種類の運転も実施可能に構成されてもよい。
 
【0048】
  予備運転は、過冷却運転時周波数f1を決定するために行われる運転である。過冷却運転時周波数f1は、後述する過冷却運転時に電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の周波数である。予備運転は、ここでは、被冷却物Mの冷却を目的としない運転である。
 
【0049】
  具体的には、コントローラ400は、予備運転時に、冷凍機200は動作させずに、電磁波照射器300を動作させる。コントローラ400は、予備運転時に、電磁波照射器300が照射する電磁波の周波数を切り換え、被冷却物Mに対して複数の周波数の電磁波を照射するように、電磁波照射器300を制御する。そして、コントローラ400は、予備運転時に、過冷却運転時に電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の周波数である過冷却運転時周波数f1を決定する。コントローラ400による過冷却運転時周波数f1の決定については後述する。
 
【0050】
  通常冷却運転は、電磁波照射器300を停止した状態で、冷凍機200を運転して被冷却物Mを冷却する運転である。
 
【0051】
  過冷却運転は、冷却運転の一例である。コントローラ400は、予備運転後に(つまり過冷却運転時周波数f1が決定された後に)、過冷却運転を実行する。コントローラ400は、過冷却運転時に、電磁波照射器300が被冷却物Mに電磁波を照射している状態で(電磁波照射器300が電磁場を発生させた状態で)、冷凍機200が被冷却物Mを冷却するように、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御する。なお、コントローラ400は、過冷却運転時に、予備運転時に決定された過冷却運転時周波数f1の電磁波を照射するよう電磁波照射器300を制御する。過冷却運転は、被冷却物Mを過冷却域で冷却することを主な目的とする冷却装置100の運転である。
 
【0052】
  コントローラ400は、過冷却運転中に、後述する被冷却物温度センサ500により計測される被冷却物Mの温度に基づいて、電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の出力を調整する。言い換えれば、コントローラ400は、過冷却運転中に、被冷却物温度センサ500により計測される被冷却物Mの温度に基づいて、電磁波照射器300が発生させる電磁場の強度を調整する。過冷却運転中の、コントローラ400による電磁波照射器300の電磁波の出力の調整については後述する。
 
【0053】
  被冷却物温度センサ500は、被冷却物Mの温度を計測するセンサである。特に、ここでは、被冷却物温度センサ500は、被冷却物Mの表面温度を計測するセンサである。
 
【0054】
  被冷却物温度センサ500は、例えば、被冷却物Mの発生する赤外線を検知することで被冷却物Mの表面温度を計測する非接触式の赤外線センサである。被冷却物温度センサ500は、コントローラ400と電気的に接続されている。コントローラ400には、被冷却物温度センサ500が検出した被冷却物Mの温度に基づく信号(計測した被冷却物Mの温度をコントローラ400に知らせる信号が送信される。
 
【0055】
  ケーシング内温度センサ600は、ケーシング110内の冷却空間110aの温度を計測するセンサである。例えば、ケーシング内温度センサ600は、サーミスタである。ケーシング内温度センサ600は、コントローラ400と電気的に接続されている。コントローラ400には、ケーシング内温度センサ600が検出した冷却空間110aの温度に基づく信号(計測した冷却空間110aの温度をコントローラ400に知らせる信号)が送信される。
 
【0056】
  なお、ここで示した被冷却物温度センサ500及びケーシング内温度センサ600の種類は、例示であって、それぞれ被冷却物Mの温度及び冷却空間110aの温度を測定可能な各種のセンサが用いられればよい。
 
【0057】
  (2)詳細構成
  冷却装置100を構成する機器、特には、冷凍機200、電磁波照射器300及びコントローラ400についてより詳細に説明する。
 
【0058】
  (2−1)冷凍機
  冷凍機200は、ケーシング外ユニット200a、ケーシング内ユニット200b、及び冷凍機制御部290を主に有する(
図1参照)。
 
【0059】
  冷凍機200では、ケーシング外ユニット200aの圧縮機210、四路切換弁220、第2熱交換器250、膨張弁260及びアキュムレータ280と、ケーシング内ユニット200bの第1熱交換器230と、が冷媒配管で接続されることで、冷媒回路が構成される。
 
【0060】
  (2−1−1)ケーシング内ユニット
  ケーシング内ユニット200bは、第1熱交換器230と、ケーシング内ファン240と、を主に有する(
図1参照)。
 
【0061】
  第1熱交換器230は、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成された、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。第1熱交換器230は、冷媒配管により、液冷媒連絡配管202及びガス冷媒連絡配管204と接続されている(
図1参照)。第1熱交換器230は、被冷却物Mを冷却する通常運転時には冷媒の蒸発器(冷却器)として機能し、デフロスト運転時には冷媒の凝縮器(放熱器)として機能する。なお、デフロスト運転とは、第2熱交換器250に付着した霜を除去するために行われる運転である。デフロスト運転についての詳細な説明は省略する。
 
【0062】
  ケーシング内ファン240は、ファン用モータ(図示省略)によって駆動されるファンである。ファン用モータは、インバータ式であることが好ましい。ケーシング内ファン240は、第1熱交換器230に空気を供給することで、第1熱交換器230における空気と冷媒との熱交換を促進する。また、ケーシング内ファン240は、冷媒との熱交換によって冷却された、第1熱交換器230を通過して流れる空気を冷却空間110a内に吹き出すことで冷却空間110aの温度を低下させ、冷却空間110a内に置かれた被冷却物Mを冷却する。
 
【0063】
  (2−1−2)ケーシング外ユニット
  ケーシング外ユニット200aは、圧縮機210、四路切換弁220、第2熱交換器250、膨張弁260、ケーシング外ファン270、及びアキュムレータ280を主に有する(
図1参照)。
 
【0064】
  また、ケーシング外ユニット200aは、圧縮機210、四路切換弁220、第2熱交換器250、膨張弁260及びアキュムレータ280を接続する冷媒配管群206を含む(
図1参照)。冷媒配管群206には、吸入管206a、吐出管206b、第1ガス冷媒管206c、液冷媒管206d及び第2ガス冷媒管206eを含む(
図1参照)。
 
【0065】
  冷媒配管群206によるケーシング外ユニット200aの各構成の接続について説明する。吸入管206aは、圧縮機210の吸入口と四路切換弁220とを接続する配管である。吸入管206aにはアキュムレータ280が配置される。吐出管206bは、圧縮機210の吐出口と四路切換弁220とを接続する配管である。第1ガス冷媒管206cは、四路切換弁220と第2熱交換器250のガス側とを接続する配管である。液冷媒管206dは、第2熱交換器250の液側と液冷媒連絡配管202とを接続する配管である。液冷媒管206dには、膨張弁260が設けられる。第2ガス冷媒管206eは、四路切換弁220とガス冷媒連絡配管204とを接続する配管である。
 
【0066】
  圧縮機210は、モータ(図示せず)で圧縮機構を駆動することで、吸入管206aから低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮機構で圧縮した高圧のガス冷媒を吐出管206bに吐出する。圧縮機210は、インバータ式であることが好ましい。
 
【0067】
  四路切換弁220は、冷媒が流れる方向を切り換える機構である。被冷却物Mの冷却運転時には、
図1に実線で示されるように、四路切換弁220は、吸入管206aと第2ガス冷媒管206eを接続するとともに、吐出管206bと第1ガス冷媒管206cを接続する。一方、デフロスト運転時には、
図1に破線に示されるように、四路切換弁220は、吸入管206aと第1ガス冷媒管206cとを接続するとともに、吐出管206bと第2ガス冷媒管206eとを接続する。
 
【0068】
  第2熱交換器250は、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成された、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。第2熱交換器250は、被冷却物Mを冷却する際には冷媒の凝縮器として機能し、デフロスト運転時には冷媒の蒸発器として機能する。
 
【0069】
  膨張弁260は、液冷媒管206dを流れる冷媒を減圧する膨張機構の一例である。膨張弁260は、開度可変の電動膨張弁である。
 
【0070】
  ケーシング外ファン270は、ファン用モータ(図示省略)によって駆動されるファンである。ケーシング外ファン270は、空気を第2熱交換器250に供給することで、第2熱交換器250における空気と冷媒との熱交換を促進する。
 
【0071】
  アキュムレータ280は、圧縮機210における液圧縮を避けるため(圧縮機210に液相の冷媒が送られるのを避けるため)、吸入管206aを流れる冷媒を気相と液相に気液分離器である。
 
【0072】
  (2−1−3)冷凍機制御部
  冷凍機制御部290は、冷凍機200の動作を制御するコンピュータである。例えば、冷凍機制御部290は、CPUやメモリを有するマイクロ・コントローラ・ユニット(MCU)である。なお、
図1中では、冷凍機制御部290をケーシング外ユニット200a側に描画しているが、冷凍機制御部290は、ケーシング外ユニット200a側のMCUと、ケーシング内ユニット200b側のMCUとが協働して冷凍機200の動作を制御するものであってもよい。
 
【0073】
  冷凍機制御部290は、図示は省略しているが、冷凍機200の各構成、例えば、圧縮機210、四路切換弁220、ケーシング内ファン240のファン用モータ、膨張弁260及びケーシング外ファン270のファン用モータに電気的に接続されている。冷凍機制御部290では、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することで、冷凍機200の制御を行う。
 
【0074】
  なお、冷凍機制御部290により制御された冷凍機200では、通常運転時(被冷却物Mを冷却する運転時)には、圧縮機210から吐出された冷媒は、四路切換弁220を通って第2熱交換器250へ流入し、ケーシング110外の空気に放熱して凝縮する。第2熱交換器250で凝縮した冷媒は、膨張弁260を通過する時に膨張する。その後、第1熱交換器230へと流入し、冷却空間110aの空気から吸熱して蒸発する。
 
【0075】
  さて、冷凍機制御部290は、コントローラ400とも電気的に接続されている(
図1及び
図2参照)。冷凍機制御部290は、コントローラ400からの冷凍機200の運転/停止指令や、冷却能力の調整指令に応じて、冷凍機200の各構成の動作を制御する。冷凍機200の冷却能力は、例えば、ケーシング外ファン270のファン用モータの回転数を変更してケーシング外ファン270の風量を増減することで調整される(風量を増加させると冷却能力が大きくなり、風量を減らすと冷却能力が小さくなる)。また、冷凍機200の冷却能力は、例えば、圧縮機210の回転数等を変更して第1熱交換器230で冷媒と熱交換した後の空気の温度を上昇/下降することで調整される(第1熱交換器230で冷媒と熱交換した後の空気の温度を下降させると冷却能力が大きくなり、第1熱交換器230で冷媒と熱交換した後の空気の温度を上昇させると冷却能力が小さくなる)。
 
【0076】
  (2−2)電磁波照射器
  電磁波照射器300は、被冷却物Mに作用させる電磁場を発生させる機器である。言い換えれば、電磁波照射器300は、被冷却物Mに電磁波を照射する機器である。
 
【0077】
  電磁波照射器300は、一対の電極310と、高周波電源320と、を主に含む。
 
【0078】
  電極310は、例えば金属製である。各電極310の形状は、平板状である。ただし、電極310の形状は、平板状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。一対の電極310は、ケーシング110内の冷却空間110aに、互いに対向するように配置されている。言い換えれば、一対の電極310は、互いに平行に配置されている。
 
【0079】
  電極310は、高周波電源320と接続されている(
図1参照)。なお、電極310は、負荷整合回路(図示せず)を介して高周波電源320と接続されてもよい。
 
【0080】
  高周波電源320は、周波数及び出力が可変の電源である。高周波電源320は、例えば自励発振回路を用いた高周波電源である。ただし、これに限定されるものではなく、高周波電源320は、他励発振回路を用いた高周波電源であってもよい。
 
【0081】
  高周波電源320は、コントローラ400と電気的に接続され、コントローラ400により制御される。電磁波照射器300は、高周波電源320に対するコントローラ400の指示に応じ、電磁波の照射/照射停止を切り換える。また、電磁波照射器300は、高周波電源320に対するコントローラ400の指示に応じ、前述した設定可能周波数範囲(最小周波数fmin以上で最大周波数fmax以下の範囲)内で、照射する電磁波の周波数を変更する。また、電磁波照射器300は、高周波電源320に対するコントローラ400の指示に応じ、前述した所定の設定可能出力範囲(最小出力Smin以上で最大出力Smax以下の範囲)内で、照射する電磁波の出力を変更する。言い換えれば、電磁波照射器300は、高周波電源320に対するコントローラ400の指示に応じ、電磁場の周波数や、電磁場の強度を変更する。
 
【0082】
  (2−3)コントローラ
  コントローラ400は、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御するコンピュータである。コントローラ400は、一般のコンピュータと同様に、CPUやメモリを有し、CPUがメモリに記憶されている冷却装置100の動作制御用のプログラムを実行することで、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御する。
 
【0083】
  コントローラ400は、冷凍機200の動作を制御するため冷凍機制御部290に電気的に接続されている(
図2参照)。また、コントローラ400は、電磁波照射器300の動作を制御するため高周波電源320に電気的に接続されている(
図2参照)。また、コントローラ400は、被冷却物温度センサ500及びケーシング内温度センサ600とも電気的に接続され(
図2参照)、それぞれから送信される被冷却物Mの温度を示す信号及び冷却空間110aの温度を示す信号を受信する。
 
【0084】
  なお、ここではコントローラ400として、コンピュータがプログラムを実行することで冷却装置100を制御することを想定しているが、コントローラ400は、同様の制御をハードウェアで実現するものであってもよい。
 
【0085】
  (3)冷却装置の動作
  冷却装置100の動作について以下に説明する。
 
【0086】
  コントローラ400が冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御することで、冷却装置100は、前述のように、少なくとも3種類の運転(予備運転、通常冷却運転、過冷却運転)を行う。
 
【0087】
  具体的には、例えば、コントローラ400は、冷却装置100の運転開始スイッチ(図示省略)が押下されると、
図3のようなフローチャートに従って、冷却装置100に各運転を実行させる。
 
【0088】
  まず、コントローラ400は、後に実行される過冷却運転時に電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の周波数(過冷却運転時周波数f1)を決定するため、予備運転を実行する(ステップS1)。言い換えれば、コントローラ400は、電磁波照射器300の動作を制御して、過冷却運転時に発生させる電磁場の周波数を決定するための予備運転を行う。なお、冷却装置100の運転開始時の被冷却物Mの温度は、最大氷結晶生成帯の上限値(−1℃)より高い温度である。つまり、予備運転は、被冷却物温度センサ500により検知される被冷却物Mの温度が、最大氷結晶生成帯の上限値より高い時に実行される運転である。また、予備運転は、被冷却物温度センサ500により検知される被冷却物Mの温度が、その被冷却物Mの凝固点より高い時に(つまり、被冷却物Mが未だ凍結し始めていない状態で)実行される運転であることが好ましい。
 
【0089】
  予備運転の際、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作は、コントローラ400の一機能部である過冷却運転時周波数決定部410により主に制御される。過冷却運転時周波数決定部410は、後述するような方法で過冷却運転時周波数f1を決定する。予備運転の詳細(予備運転時の冷凍機200及び電磁波照射器300の動作や、過冷却運転時周波数決定部410による過冷却運転時周波数f1の決定方法)については、後述する。
 
【0090】
  予備運転が実施された後、コントローラ400は、通常冷却運転を開始する(ステップS2)。つまり、ステップS2において、コントローラ400は、電磁波照射器300は停止させたままで、冷凍機200の運転を開始する。
 
【0091】
  次に、ステップS3では、コントローラ400が、被冷却物温度センサ500の検出した温度が第1温度T1を下回っているか否かを判定する。ステップS3の判定は、被冷却物温度センサ500の検出した温度が第1温度T1を下回っていると判定されるまで繰り返し行われる。
 
【0092】
  第1温度T1は、最大氷結晶生成帯の上限値(−1℃)より高い所定値である。また、第1温度T1は、好ましくは被冷却物Mの凝固点よりも高い温度である。被冷却物Mの凝固点は、最大氷結晶生成帯の範囲に含まれる場合もあるが、最大氷結晶生成帯の上限値よりも高い場合もある。第1温度T1には、多様な被冷却物Mの凝固点を上回らないように適切な値が選ばれることが好ましい。例えば、限定するものではないが、第1温度T1は0℃である。
 
【0093】
  なお、ステップS3の判定は、通常冷却運転により被冷却物Mの温度が最大氷結晶生成帯の上限値より低い温度まで低下し、被冷却物Mが過冷却されずに凍結し始めることを避けるための処理である。そのため、ステップS3の判定処理は、比較的短い時間間隔で(前回判定時に第1温度T1より高かった被冷却物Mの温度が、次回判定時には最大氷結晶生成帯の上限値を下回ることがないような時間間隔で)、実行されることが好ましい。
 
【0094】
  ステップS3で被冷却物温度センサ500の検出した温度が第1温度T1を下回っていると判定されると、コントローラ400は、過冷却運転を開始する(ステップS4)。言い換えれば、コントローラ400は、電磁波照射器300の運転を開始する。
 
【0095】
  過冷却運転時には、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作は、コントローラ400の一機能部である電磁波出力/冷凍能力調整部420により主に制御される。電磁波出力/冷凍能力調整部420は、後述するような方法で電磁波照射器300の照射する電磁波の出力や冷凍機200の冷却能力を調整する。過冷却運転の詳細については後述する。
 
【0096】
  ステップS4において、所定条件が満たされた場合、コントローラ400は、運転していた電磁波照射器300の運転を停止する。すなわち、ステップS4において、所定条件が満たされた場合、コントローラ400は通常冷却運転を開始する(ステップS5)。どのような場合に、ステップS4からステップS5に工程が進むかは後述する。ステップS5において通常冷却運転が所定時間実行されることで、被冷却物Mの全体が凍結状態になる。そして、コントローラ400は、凍結した被冷却物Mの温度が、所定温度で維持されるよう、冷凍機200を制御する。
 
【0097】
  以下では、予備運転及び過冷却運転の詳細について更に説明する。
 
【0098】
  (3−1)予備運転
  予備運転時の冷却装置100の動作は、主にコントローラ400の過冷却運転時周波数決定部410により、例えば
図4のフローチャートのように制御される。なお、以下では特に説明を省略するが、過冷却運転時周波数決定部410は、予備運転中、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度を適宜取得している。
 
【0099】
  さて、過冷却運転時周波数決定部410は、予備運転が開始されると、電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数fを設定可能周波数範囲の最小周波数fminに設定する(ステップS11)。その上で、過冷却運転時周波数決定部410は、電磁波照射器300が電磁波の照射を開始するよう制御する(ステップS12)。なお、過冷却運転時周波数決定部410は、予備運転の間、電磁波照射器300が照射する電磁波の出力Sを一定値(例えば、最小出力Smin)に設定することが好ましい。
 
【0100】
  ステップS13では、電磁波照射器300が現在照射している周波数fで電磁波を照射し始めてから、所定時間(例えば5秒)が経過したか否かが判定される。ステップS13は、電磁波照射器300が現在照射している周波数fで電磁波を照射し始めてから所定時間が経過したと判定されるまで繰り返される。
 
【0101】
  ステップS14では、過冷却運転時周波数決定部410は、電磁波照射器300が現在照射している周波数fで電磁波を照射し始めた時の被冷却物Mの温度と、電磁波照射器300が現在照射している周波数fで電磁波を照射し始めてから所定時間が経過した時の被冷却物Mの温度(現在の被冷却物Mの温度)と、所定時間とから、周波数fの電磁波を照射した時の被冷却物Mの温度の変化率を算出する。そして、過冷却運転時周波数決定部410は、周波数fの値と、算出した周波数fの電磁波を照射した時の被冷却物Mの温度の変化率と、を関連付けて図示しないメモリに記憶する。
 
【0102】
  次にステップS15では、電磁波照射器300が照射していた電磁波の周波数fが、設定可能周波数範囲の最大周波数fmaxより小さいかが判定される。電磁波照射器300が照射していた電磁波の周波数fが設定可能周波数範囲の最大周波数fmaxより小さい場合にはステップS16に進み、電磁波照射器300が照射していた電磁波の周波数fが最大周波数fmaxになっている場合には、ステップS17へと進む。
 
【0103】
  ステップS16に進んだ場合、過冷却運転時周波数決定部410は、電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数fを、これまで使用していた周波数fからΔf増加させる。Δfは、例えば、最大周波数fmaxから最小周波数fminを差し引いた値をある整数で除した値である。なお、本実施形態では、ステップS16が実行される度に電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数fが一定量(Δf)ずつ増えるように変更されるが、これに限定されるものではない。例えば、電磁波照射器300の照射する電磁波の取り得る周波数が、F1,F2,F3,・・・FN(F1(=fmin)<F2<F3・・・<FN(=fmax))のN個である場合には、ステップS16の度に、電磁波の周波数fをF1からF2へ、F2からF3へ・・・と、段階的に変更してもよい。
 
【0104】
  ステップS16で電磁波照射器300が照射する電磁波の周波数fが変更されると、ステップS13に戻り、その周波数fで電磁波を照射し始めてから所定時間が経過したか否かが判定される。そして、ステップS13で所定時間が経過したと判定されると、過冷却運転時周波数決定部410は、その周波数fの電磁波を照射した時の被冷却物Mの温度の変化率を算出する(ステップS14)。また、ステップS14において、過冷却運転時周波数決定部410は、周波数fの値と、周波数fの電磁波を照射した時の被冷却物Mの温度の変化率と、を関連付けて図示しないメモリに記憶する。この処理が、ステップS15で電磁波照射器300により照射された周波数fがfmaxになったと判定されるまで繰り返される。
 
【0105】
  ステップS17では、過冷却運転時周波数決定部410は、複数回のステップS14で算出された複数の被冷却物Mの温度の変化率(図示しないメモリに記憶されている変化率)の中で最大値を特定し、その最大の変化率と関連付けられている周波数の値を過冷却運転時周波数f1に決定する。つまり、過冷却運転時周波数決定部410は、予備運転において、各周波数の電磁波の照射時に被冷却物温度センサ500により計測される温度に基づいて、過冷却運転時周波数f1を決定する。より具体的には、過冷却運転時周波数決定部410は、予備運転において、各周波数の電磁波の照射時に被冷却物温度センサ500により計測される温度の変化率に基づいて、過冷却運転時周波数f1を決定する、
  その後、ステップS18では、過冷却運転時周波数決定部410は、電磁波照射器300の運転を停止し、被冷却物Mに対する電磁波の照射を停止する。ステップS18の後、ステップS2へと進む。
 
【0106】
  なお、ここで説明した予備運転時の冷却装置100の動作は、一例であってこれに限定されるものではない。
 
【0107】
  例えば、各周波数の電磁波を被冷却物Mに照射する時間は一定ではなくてもよい。例えば、ステップS13では、各周波数の電磁波を被冷却物Mに照射し始めてからの経過時間が所定時間を超えたか否かが判定され、ステップS14では、各々異なる経過時間を用いて、各周波数の電磁波の照射時に被冷却物温度センサ500により計測される被冷却物Mの温度の変化率が算出されてもよい。
 
【0108】
  また、例えば、各周波数の電磁波を被冷却物Mに照射する時間が一定である場合、ステップS14では被冷却物温度センサ500により計測される温度の変化量が算出されてもよい。そして、ステップS17では、過冷却運転時周波数決定部410は、複数回のステップS14で算出された複数の被冷却物Mの温度の変化量の中で最大値を特定し、その最大値と関連付けられている周波数の値を過冷却運転時周波数f1に決定してもよい。
 
【0109】
  また、
図4のフローチャートでは、予備運転中に電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数fが段階的に大きくなるよう変更されるが、これに限定されるものではない。例えば、予備運転中には、電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数fが最大周波数fmaxから段階的に小さくなるよう変更されてもよい。
 
【0110】
  また、例えば、
図4のフローチャートにおける各ステップの順序は、過冷却運転時周波数f1の算出という目的に矛盾しない範囲で変更されてもよい。例えば、ステップS17とステップS18の順番は逆であってもよい。
 
【0111】
  また、例えば、
図4のフローチャートでは、ステップS12で電磁波の照射が開始されてからステップS18で電磁波の照射が停止されるまで、電磁波は常に照射されているが、これに限定されるものではなく、例えば照射する電磁波の周波数が変更される度に、電磁波照射器300による電磁波の照射が停止/再開されてもよい。
 
【0112】
  また、例えば、
図4のフローチャートでは、設定可能周波数範囲の最小周波数fminから最大周波数fmaxの範囲で電磁波の周波数が変更されるが、これに限定されるものではない。例えば、過冷却運転時周波数決定部410は、設定可能周波数範囲の中の更に一部範囲について、照射する電磁波の周波数を変更するように構成されてもよい。
 
【0113】
  (3−2)過冷却運転
  過冷却運転時の冷却装置100の動作は、主にコントローラ400の電磁波出力/冷凍能力調整部420により、例えば、
図5のフローチャートのように制御される。
 
【0114】
  なお、前提として、過冷却運転の開始時には、冷凍機200は所定の冷却能力で運転されているものとする。所定の冷却能力は、例えば、冷凍機200の最小の冷却能力と最大の冷却能力との間の中間的な冷却能力である。ただし、これに限定されるものではなく、所定の冷却能力は、例えば、冷凍機200の最小の冷却能力や、冷凍機200の最大の冷却能力であってもよい。また、以下では特に説明を省略するが、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、過冷却運転時に、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度と、ケーシング内温度センサ600が検出する冷却空間110aの温度と、を適宜取得している。
 
【0115】
  さて、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、まず、電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数を過冷却運転時周波数f1に設定する(ステップS21)。電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数は、過冷却運転中変更されない。
 
【0116】
  次に、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波照射器300の照射する電磁波の出力Sを設定可能出力範囲の下限値(最小出力Smin)に設定する(ステップS22)。つまり、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波照射器300の発生させる電磁場の強度を設定可能な範囲の下限値(最小強度)に設定する。
 
【0117】
  そして、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波照射器300に、ステップS21で設定された過冷却運転時周波数f1及びステップS22で設定された出力Sで電磁波の照射を開始させる(ステップS23)。つまり、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波照射器300の照射する電磁波の出力Sを最小出力Sminに設定した状態で、過冷却運転(電磁波を被冷却物Mに照射している状態で、冷凍機200で被冷却物Mを冷却する運転)を開始する。
 
【0118】
  次に、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、過冷却運転中に、被冷却物温度センサ500が検出する温度の変化率に基づき、被冷却物Mが凍結状態になる兆候を検知する(ステップS24)。
 
【0119】
  被冷却物Mの凍結する兆候の検知は、以下の様にして行われる。
 
【0120】
  被冷却物Mの凍結する時、被冷却物Mの温度は以下のいずれかの変化を示す。
 
【0121】
  1)相変化に熱が利用されるため被冷却物Mの温度は概ね一定となる(
図6(a)の状態Iを参照)。
 
【0122】
  2)被冷却物Mが過冷却状態から凍結状態に変化する際に被冷却物の温度が上昇する(
図6(b)の状態IIを参照)。
 
【0123】
  そこで、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度の変化率に基づいて、被冷却物Mが凍結状態になる兆候を検知する。具体的には、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度の変化率が、ゼロである場合(被冷却物Mの温度の低下量が所定値より小さい場合を含む)、あるいは、プラスの値である場合(温度が次第に上昇している場合)、被冷却物Mが凍結状態になる兆候があると判定する。
 
【0124】
  ステップS24で、被冷却物Mが凍結状態になる兆候がないと判定されると、ステップS25へと進む。ステップS24で、被冷却物Mが凍結状態になる兆候が検知された場合には、ステップS30へと進む。
 
【0125】
  ステップS25では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度が予め定めた所定の第2温度T2以下になったか否かを判定する。第2温度T2は、最大氷結晶生成帯の下限値(−5℃)より低い温度である。ステップS25で、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度が第2温度T2以下になったと判定された場合には、ステップS26へと進む。ステップS25で、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度が第2温度T2より高いと判定された場合には、ステップS24に戻る。
 
【0126】
  ステップS26では、冷凍機200による冷却は維持しつつ(冷凍機200は運転を継続しつつ)、電磁波照射器300による被冷却物Mに対する電磁波の照射を停止し(電磁波照射器300による電磁場の発生を停止し)、
図3のステップS5へと進む。つまり、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度が第2温度T2まで低下するように被冷却物Mを冷却した後に、冷凍機200による冷却は維持しつつ、電磁波照射器300による被冷却物Mに対する電磁波の照射(電磁場の発生)を停止する。なお、ステップS26からステップS5に進む時に、コントローラ400は、好ましくは、冷却能力を上げるように(例えば冷却能力が最大になるように)冷凍機200を制御する。
 
【0127】
  ステップS24からステップS30に工程が進んだ場合(つまり、過冷却運転中に、電磁波出力/冷凍能力調整部420が、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度の変化率に基づいて被冷却物Mが凍結状態になる兆候を検知した場合)について説明する。
 
【0128】
  ステップS30では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の出力Sが、設定可能出力範囲の上限値(最大出力Smax)であるか否かを判定する。
 
【0129】
  電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物Mの凍結する兆候を検知した場合、後述するステップS31で電磁波照射器300が照射する電磁波の出力(電磁場の強度)を上昇させることで被冷却物Mの過冷却状態を維持しようとする。これに対し、既に電磁波の出力Sが最大出力Smaxに設定されている場合には、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物Mを過冷却状態で維持することが困難であるため(電磁波の出力Sを上げられないため)、過冷却運転から、通常冷却運転へと運転を変更するため、ステップS26へと進む。一方、ステップS30において、電磁波出力/冷凍能力調整部420が、電磁波の出力Sが最大出力Smaxでないと判定した場合には、工程はステップS31に進む。
 
【0130】
  ステップS31では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の出力をΔS(所定値)上昇させる(電磁場の強度を所定量だけ上昇させる)。ΔSは、例えば、最大出力Smaxから最小出力Sminを差し引いた値を、所定の整数で除した値である。つまり、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度に基づいて、より具体的には、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度の変化率に基づいて(変化率がゼロ又は正の値である場合に)、電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の出力Sを調整する。
 
【0131】
  ステップS31で、電磁波照射器300の被冷却物Mに照射する電磁波の出力SがΔS上昇させられた後、工程はステップS32に進む。ステップS32では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回っているか否かを判断する。
 
【0132】
  具体的には、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、ケーシング内温度センサ600が検出している冷却空間110aの温度が上昇傾向にあるか否かを判断する。ステップS32において、電磁波出力/冷凍能力調整部420が、ケーシング内温度センサ600が検出している冷却空間110aの温度が上昇傾向にあると判断した場合(電磁波により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回っていると判断される場合)には、ステップS40に進む。
 
【0133】
  また、ステップS32では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物温度センサ500が連続的に検出している被冷却物Mの温度が、所定時間以上連続して上昇しているか否かを判断する。
 
【0134】
  前述のように、被冷却物Mが過冷却状態から凍結状態に変化する際には、被冷却物Mの温度が上昇する。この性質を利用して、ステップS24では、被冷却物Mが凍結状態になる兆候が検知される。しかし、被冷却物Mが過冷却状態から凍結状態に変化する際の被冷却物Mの温度の上昇であれば、比較的短時間で温度上昇は停止し、被冷却物Mの温度は概ね一定となるはずである。これに対し、所定時間を経過しても被冷却物Mの温度が上昇し続けているとすれば、電磁波により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回っていると考えられる。そこで、ステップS32において、電磁波出力/冷凍能力調整部420が、被冷却物温度センサ500が検出している被冷却物Mの温度が、所定時間以上連続して上昇していると判断した場合にも、ステップS40に進む。
 
【0135】
  なお、ステップS32において、電磁波出力/冷凍能力調整部420が、電磁波により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回っていないと判断した場合には、工程はステップS24に戻る。
 
【0136】
  ステップS40では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、冷凍機200の冷却能力が、電磁波により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量を上回るように冷凍機200又は電磁波照射器300の動作を制御する。
 
【0137】
  具体的には、ステップS40において、冷凍機200の冷却能力を上昇させる余地がある場合には、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、冷凍機200の冷凍能力を上昇させる。ステップS40において冷凍能力をどの程度上昇させるかは、適宜決定されればよい。また、ステップS40において、冷凍機200の冷却能力が既に最大となっている場合には、電磁波照射器300の照射する電磁波の出力をΔS減少させる(電磁波照射器300が発生させる電磁場の強度を下降させる)。
 
【0138】
  なお、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、ここでは、冷凍機200の冷凍能力の調整を優先し、冷凍機200の冷凍能力を調整できない場合に電磁波照射器300の照射する電磁波の出力を調整するが、これに限定されるものではない。例えば、冷凍機200の冷凍能力と、電磁波照射器300の照射する電磁波の出力とが、同時に調整されてもよい。また、ここでは、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、冷凍機200の冷凍能力及び電磁波照射器300の照射する電磁波の出力の両方を調整し、両方を調整することが好ましいが、これに限定されるものではなく、いずれか一方だけを調整の対象としてもよい。
 
【0139】
  ステップS40の実施後、ステップS41へと進む。
 
【0140】
  ステップS41では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回っているか否かを判断する。ステップS41で行われる判断の処理は、ステップS32で行われる判断の処理と同様である。ステップS41で、電磁波により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回っていると判断されればステップS42へ進む。ステップS41で、電磁波により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回っていないと判断されればステップS24へと戻る。
 
【0141】
  ステップS42では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、冷凍機200の冷却能力が最大で、かつ、電磁波照射器300の照射する電磁波の出力Sが最小出力Sminであるか否かを判定する。ステップS42で、冷凍機200の冷却能力が最大で、かつ、電磁波照射器300の照射する電磁波の出力Sが最小出力Sminであると判定された場合には、電磁波照射器300が被冷却物Mに電磁波を照射し続けていると、被冷却物Mの温度が次第に上昇してしまうことを意味する。そこで、過冷却運転を停止し、冷却装置100の運転を通常冷却運転へと切り換えるため、ステップS26に進む。ステップS42で、冷凍機200の冷却能力が最大でない、又は、電磁波照射器300の照射する電磁波の出力Sが最小出力Sminでない、と判定された場合には、ステップS40へと戻る。
 
【0142】
  なお、ここで説明した過冷却運転時の冷却装置100の動作は、一例であってこれに限定されるものではない。
 
【0143】
  例えば、
図5のフローチャートにおける各ステップの順序は、適宜変更されてもよい。例えば、ステップS21とステップS22の順番は逆であってもよい。
 
【0144】
  例えば、ステップS32及びステップS41では、冷却空間110aの温度が上昇傾向にあると判断した場合にだけ、電磁波の照射による被冷却物Mの内部発熱の熱量が、冷凍機200の冷却能力を上回っていると判断されてもよい。
 
【0145】
  (4)特徴
  (4−1)
  本実施形態に係る冷却装置100は、冷凍機200と、発生器の一例としての電磁波照射器300と、制御部の一例としてのコントローラ400と、温度センサの一例としての被冷却物温度センサ500と、を備える。冷凍機200は、被冷却物Mを冷却する。電磁波照射器300は、被冷却物Mに作用させる電磁場を発生させる。電磁波照射器300が発生させる電磁場の強度は可変である。コントローラ400は、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御し、電磁場を発生させた状態で、冷凍機200で被冷却物Mを冷却する冷却運転を行う。被冷却物温度センサ500は、被冷却物Mの温度を計測する。コントローラ400は、冷却運転中に、被冷却物温度センサ500により計測された温度に基づいて、電磁波照射器300が発生させる電磁場の強度を調整する。
 
【0146】
  言い換えると、本実施形態に係る冷却装置100は、冷凍機200と、電磁波照射器300と、コントローラ400と、被冷却物温度センサ500と、を備える。冷凍機200は、被冷却物Mを冷却する。電磁波照射器300は、被冷却物Mを内部発熱させるため被冷却物Mに電磁波を照射する。電磁波照射器300の照射する電磁波の出力は可変である。コントローラ400は、冷凍機200及び電磁波照射器300の動作を制御し、電磁波を被冷却物Mに照射しながら冷凍機200で被冷却物Mを冷却する冷却運転を行う。被冷却物温度センサ500は、被冷却物Mの温度を計測する。コントローラ400は、冷却運転中に、被冷却物温度センサ500により計測された温度に基づいて、電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の出力を調整する。
 
【0147】
  本冷却装置100では、発生させる電磁場の強度を予め決定しておくのではなく、冷却中の被冷却物Mの温度に基づき電磁場の強度が調整される。そのため、本冷却装置100では、どのような被冷却物Mに対しても省電力で効率よく被冷却物Mの過冷却状態を生成することができる。
 
【0148】
  (4−2)
  本実施形態に係る冷却装置100では、コントローラ400は、冷却運転中に、温度の変化率に基づいて、電磁場の強度(電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の出力)を調整する。
 
【0149】
  本冷却装置100では、過冷却状態が実現されているか否かを判断する指標とすることが容易な冷却中の被冷却物Mの温度の変化率に基づき電磁場の強度が適宜調整される。そのため、本冷却装置100では、省電力で効率よく被冷却物Mの過冷却状態を生成できる。
 
【0150】
  (4−3)
  本実施形態に係る冷却装置100では、コントローラ400は、冷却運転中に、温度の変化率に基づき被冷却物Mが凍結状態になる兆候を検知し、兆候が検知された場合に電磁場の強度を上昇させる。
 
【0151】
  本冷却装置100では、被冷却物Mが凍結する兆候が見られると、被冷却物Mが凍結しないように電磁場の強度が上昇させられる。そのため、本冷却装置100では、被冷却物Mが過冷却状態から外れて最大氷結晶生成帯で凍結することを防止することができる。
 
【0152】
  なお、被冷却物Mが凍結する時、被冷却物Mの温度は、通常、以下のいずれかの変化を示す。
 
【0153】
  1)相変化に熱が利用され被冷却物Mの温度は概ね一定となる。
 
【0154】
  2)被冷却物Mが過冷却状態から凍結状態に変化する際に被冷却物Mの温度が上昇する。
 
【0155】
  そこで、コントローラ400は、このような被冷却物Mの温度変化を検出することで被冷却物Mが凍結する兆候を検知することが好ましい。
 
【0156】
  (4−4)
  本実施形態に係る冷却装置100では、コントローラ400は、冷却運転時に、被冷却物温度センサ500により検出される温度が、最大氷結晶生成帯の下限値より低い所定温度まで低下するように被冷却物Mを冷却した後に、冷凍機200による冷却を継続しつつ、電磁波照射器300による電磁場の発生を停止する。
 
【0157】
  本冷却装置100では、最大氷結晶生成帯の下限値より低い所定温度まで被冷却物Mを冷却した後に、電磁場の発生を止めて冷却だけを継続する。そのため、最大氷結晶生成帯における被冷却物Mの凍結時間を短縮して、被冷却物Mの品質の劣化を抑制しつつ被冷却物Mを冷凍することができる。
 
【0158】
  (4−5)
  本実施形態に係る冷却装置100では、コントローラ400は、電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁場の強度を最小強度に設定した状態(電磁波の出力を最小出力Sminに設定した状態)で冷却運転を開始する。
 
【0159】
  本冷却装置100では、被冷却物Mに電磁場を作用させることで被冷却物Mを過冷却状態で冷却する過冷却運転を、電磁波の強度を最小強度に落とした状態で開始する。そのため、本冷却装置100では、省電力で効率よく被冷却物Mの過冷却状態を生成することが容易である。
 
【0160】
  ただし、これに限定されるものではなく、コントローラ400は、電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁場の強度を最小強度以外に設定した状態で冷却運転を開始してもよい。
 
【0161】
  (4−6)
  本実施形態に係る冷却装置100では、コントローラ400は、電磁場により発生する被冷却物Mの内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回っていると判断される場合に、冷凍機200の冷却能力を上昇させる、及び/又は、電磁波照射器300が被冷却物Mに照射する電磁波の出力を下降させる。
 
【0162】
  本冷却装置100では、電磁波による内部発熱の熱量が冷凍機200の冷却能力を上回ってしまった場合に、冷凍機200の冷却能力が向上させられるように、及び/又は、電磁波の出力が下降させられるように制御される。そのため、被冷却物Mの温度を上昇させることなく冷却することができる。
 
【0163】
  (4−7)
  本実施形態に係る冷却装置100において、電磁波照射器300では、発生させる電磁場の周波数が可変である。コントローラ400は、少なくとも電磁波照射器300の動作を制御して、冷却運転時に発生させる電磁場の周波数を決定するための予備運転を行う。
 
【0164】
  本冷却装置100では、発生させる電磁場の周波数も被冷却物別に予め決定しておくのではなく、被冷却物Mそのものを用いて、発生させる電磁場の周波数を決定する予備運転が実行される。そのため、どのような被冷却物Mを取り扱う場合にも、被冷却物Mを効率良く内部発熱させることのできる周波数の電磁場を用いて冷却運転を行うことができる。
 
【0165】
  (5)変形例
  以下に上記実施形態の変形例を説明する。なお、各変形例の構成の一部又は全部は、他の変形例の構成の一部又は全部と互いに矛盾しない範囲で複数組み合わされてもよい。
 
【0166】
  (5−1)変形例A
  上記実施形態では、電磁波照射器300の設定可能周波数範囲は、中波、短波、及び超短波の領域内に含まれる。しかし、電磁波照射器300の設定可能周波数範囲は、被冷却物Mを内部加熱可能な周波数を含むものであればよく、中波、短波、及び超短波以外の領域を含むように構成されてもよい。
 
【0167】
  例えば、電磁波照射器300の照射可能な電磁波の周波数(設定可能周波数範囲)には、極超短波(300MHz〜3GHz)、センチメートル波(3〜30GHz)、ミリ波(30〜300GHz)及びサブミリ波(300GHz〜3THz)の少なくとも1つの周波数帯の周波数が含まれてもよい。より好ましくは、電磁波照射器300の照射可能な電磁波の周波数には、極超短波(300MHz〜3GHz)及びセンチメートル波(3〜30GHz)の少なくとも1つの周波数帯の周波数が含まれてもよい。なお、電磁波照射器が極超短波(300MHz〜3GHz)、センチメートル波(3〜30GHz)、ミリ波(30〜300GHz)及びサブミリ波(300GHz〜3THz)の少なくとも1つの周波数の電磁波を照射する機器である場合、電磁波照射器は、例えば電子レンジのように、マイクロ波発生装置(マグネトロン)で発生した電磁波を被冷却物Mに照射する装置であってもよい。
 
【0168】
  さらに、電磁波照射器300の照射可能な電磁波の周波数は、上記の周波数帯以外の周波数であって、被冷却物Mを過冷却状態で冷却することが可能な周波数を含むものであってもよい。
 
【0169】
  (5−2)変形例B
  上記実施形態では、被冷却物温度センサ500は、被冷却物Mの表面温度を計測するセンサであるが、これに限定されるものではなく、被冷却物Mの内部の温度を計測するセンサであってもよい。例えば、被冷却物温度センサ500は、光ファイバープローブが挿入された被冷却物Mの内部の温度を計測する、光ファイバー式温度センサであってもよい。
 
【0170】
  (5−3)変形例C
  上記実施形態では、被冷却物Mの温度が第2温度T2まで降下すると、電磁波照射器300による電磁波の照射が中止され、その後、通常冷却運転が実行されて被冷却物Mが凍結させられるが、これに限定されるものではない。例えば、冷却装置100は、被冷却物Mが過冷却状態で維持されるように、被冷却物Mの温度によらず電磁波照射器300による電磁波の照射を継続するものであってもよい。
 
【0171】
  (5−4)変形例D
  上記実施形態では、過冷却運転中に、電磁波照射器300が照射する電磁波の出力が一定量(ΔS)ずつ上昇/下降させられることで電磁波の出力の調整が行われるが、これに限定されるものではない。
 
【0172】
  例えば、過冷却運転中の電磁波の出力の調整量は毎回一定でなくてもよい。また、例えば、過冷却運転中に電磁波の出力を増加させる場合の出力の調整量と、過冷却運転中に電磁波の出力を減少させる場合の出力の調整量とは、異なる値であってもよい。
 
【0173】
  (5−5)変形例E
  上記実施形態では、予備運転後に通常冷却運転が実施され、その後に過冷却運転が実施されるという流れで冷却装置100が運転されるが、これに限定されるものではない。例えば、冷却装置100は、予備運転後に直ちに過冷却運転を実行するものであってもよい。ただし、省エネルギーの観点からは、被冷却物Mの温度が被冷却物Mの凍結が問題とならないような温度である場合には、電磁波照射器300による電磁波の照射は行われないことが好ましい。
 
【0174】
  (5−6)変形例F
  上記実施形態では、予備運転時には冷凍機200は運転されないが、これに限定されるものではない。例えば、被冷却物Mの温度上昇による品質の劣化や、被冷却物Mの温度を早期に低下させるという観点からは、予備運転は冷凍機200を運転しながら実行されてもよい。
 
【0175】
  なお、この場合には、予備運転中には冷凍機200は一定の冷却能力で運転されることが好ましい。そして、過冷却運転時周波数決定部410は、各周波数の電磁波の照射時の被冷却物Mの温度の上昇率が最も高い周波数を、あるいは、各周波数の電磁波の照射時に被冷却物Mの温度がいずれも下降している場合には、温度の下降率が最も低い周波数を、過冷却運転時周波数f1に決定することが好ましい。
 
【0176】
  (5−7)変形例G
  上記実施形態では、予備運転時に、被冷却物Mの温度に基づいて過冷却運転時周波数f1を決定するが、これに限定されるものではない。例えば、過冷却運転時周波数決定部410は、電磁波を被冷却物Mに照射する時の冷却空間110aの温度変化をモニタリングし、その温度上昇が最大となる電磁波の周波数を過冷却運転時周波数f1としてもよい。
 
【0177】
  (5−8)変形例H
  上記実施形態では、予備運転も過冷却運転も同じケーシング110内で実行されるがこれに限定されるものではない。例えば、予備運転は別の筐体内で実行され、その後、この筐体からケーシング110内へと被冷却物Mがコンベア等で搬送され、ケーシング110で通常冷却運転及び過冷却運転が行われてもよい。この場合、冷却装置100は、電磁波照射器や被冷却物温度センサを複数有し、予備運転時と過冷却運転時とで、異なる電磁波照射器や被冷却物温度センサを用いてもよい。
 
【0178】
  なお、予備運転も過冷却運転も同じケーシング110内で実行される場合であっても、冷却装置100は、例えば電磁波照射器を複数有し、予備運転時と過冷却運転時とで、異なる電磁波照射器を用いてもよい。
 
【0179】
  (5−9)変形例I
  上記実施形態の電磁波照射器300では、設定可能周波数範囲内の周波数の電磁波の照射が1台の高周波電源320を用いて行われるが、これに限定されるものではない。例えば、電磁波照射器300は、複数の高周波電源320を有し、照射する電磁波の周波数に応じて異なる高周波電源が用いられてもよい。
 
【0180】
  (5−10)変形例J
  上記実施形態のコントローラ400は、独立した機器ではなくてもよい。例えば、冷凍機200の冷凍機制御部290が、コントローラ400と同様の制御を行ってもよい。
 
【0181】
  (5−11)変形例K
  上記実施形態では、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波の照射による被冷却物Mの内部発熱の熱量が、冷凍機200の冷却能力を上回っていると判断される場合に、冷凍機200の冷凍能力を上昇させたり、電磁波の出力Sを減少させたりするが、これに限定されるものではない。
 
【0182】
  例えば、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、電磁波の照射による被冷却物Mの内部発熱の熱量が、冷凍機200の冷却能力に比較して比較的大きいと判断される場合に、冷凍機200の冷凍能力を上昇させたり、電磁波の出力Sを減少させたりしてもよい。例えば具体的には、電磁波出力/冷凍能力調整部420は、被冷却物Mの温度低下率が所定値より低い場合にも、冷凍機200の冷凍能力を上昇させたり、電磁波の出力Sを減少させたりしてもよい。
 
【0183】
  (5−12)変形例L
  上記実施形態では、電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数は可変である。電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数は可変であることが好ましいが、電磁波照射器300の照射する電磁波の周波数は可変でなくてもよい。
 
【0184】
  <第2実施形態>
  本発明の第2実施形態に係る冷却装置1100も、第1実施形態に係る冷却装置100と同様に、食品等の被冷却物Mを冷却する装置である。冷却装置1100は、被冷却物Mに対して電場(静電場)を作用させながら被冷却物Mを冷却することで、過冷却域で被冷却物Mを冷却可能な装置である。
 
【0185】
  冷却装置1100は、電磁波照射器300に代えて電場発生器1300を有する。また、冷却装置1100は、電磁場に代えて電場を利用するため、制御部の一例としてのコントローラ1400の制御が一部異なる。
 
【0186】
  冷却装置1100は、冷却装置100と共通する点も多いため、ここでは主に相違点について説明する。
 
【0187】
  冷却装置1100は、ケーシング110と、冷凍機200と、電場発生器1300と、コントローラ1400と、被冷却物温度センサ500と、ケーシング内温度センサ600と、を主に含む(
図1及び
図2参照)。ケーシング110、冷凍機200、被冷却物温度センサ500、及びケーシング内温度センサ600については、第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
 
【0188】
  電場発生器1300は、被冷却物Mに作用させる電場(静電場)を発生させる発生器の一例である。電場発生器1300により被冷却物Mに電場を作用させながら冷凍機200で冷却することで、過冷却域で被冷却物Mを冷却することが可能である。
 
【0189】
  電場発生器1300は、電磁波照射器300とは異なり、高周波電源320に代えて直流電源1320を有する。電場発生器1300では、発生させる電場の強度(高周波電源320の出力)が可変である。電場発生器1300は、電場の強度を、所定の範囲内で変更可能である。
 
【0190】
  コントローラ1400は、冷凍機制御部290及び直流電源1320に電気的に接続され、冷凍機200及び電場発生器1300の動作を制御する装置である。コントローラ1400は、冷凍機200及び電場発生器1300の動作を制御することで、冷却装置1100に2種類の運転(通常冷却運転、過冷却運転)を実行させる。冷却装置1100は、冷却装置100とは異なり、周波数の決定工程が不要であるため、予備運転は行わない。
 
【0191】
  通常冷却運転は、電場発生器1300を停止した状態で、冷凍機200を運転して被冷却物Mを冷却する運転である。
 
【0192】
  過冷却運転は、冷却運転の一例である。コントローラ1400は、過冷却運転時に、電場発生器1300が電場を発生させた状態で、冷凍機200が被冷却物Mを冷却するように、冷凍機200及び電場発生器1300の動作を制御する。
 
【0193】
  コントローラ1400は、過冷却運転中に、被冷却物温度センサ500により計測される被冷却物Mの温度に基づいて、電場発生器1300が発生させる電場の強度を調整する。
 
【0194】
  冷却装置1100の動作について以下に説明する。
 
【0195】
  コントローラ1400は、冷却装置1100の運転開始スイッチ(図示省略)が押下されると、
図8のようなフローチャートに従って、冷却装置1100に各運転を実行させる。
図8のフローチャートは、第1実施形態の冷却装置100の冷却処理のフローチャートと、予備運転が実行されない点を除き同様であるので説明は省略する。
 
【0196】
  次に、冷却装置1100の過冷却運転について説明する。
 
【0197】
  過冷却運転時の冷却装置1100の動作は、コントローラ1400により、例えば、
図9のフローチャートのように制御される。
 
【0198】
  なお、前提として、過冷却運転の開始時には、冷凍機200は所定の冷却能力で運転されているものとする。また、以下では特に説明を省略するが、コントローラ1400は、過冷却運転時に、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度を適宜取得している。
 
【0199】
  まず、コントローラ1400は、電場発生器1300の発生させる電場の強度を設定可能な範囲の下限値(最小強度)に設定する(ステップS201)。そして、コントローラ1400は、電場発生器1300の動作を制御して、電場の発生を開始する(ステップS202)。
 
【0200】
  次に、コントローラ1400は、過冷却運転中に、被冷却物温度センサ500が検出する温度の変化率に基づき、被冷却物Mが凍結状態になる兆候を検知する(ステップS203)。ステップS203の処理については、第1実施形態の
図5のフローチャートのステップS24の処理と同様であるため、説明は省略する。
 
【0201】
  ステップS203で、被冷却物Mが凍結状態になる兆候がないと判定されると、ステップS204へと進む。ステップS203で、被冷却物Mが凍結状態になる兆候が検知された場合には、ステップS210へと進む。
 
【0202】
  ステップS204では、コントローラ1400は、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度が予め定めた所定の第2温度T2以下になったか否かを判定する。第2温度T2は、最大氷結晶生成帯の下限値(−5℃)より低い温度である。ステップS204で、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度が第2温度T2以下になったと判定された場合には、ステップS205へと進む。ステップS204で、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度が第2温度T2より高いと判定された場合には、ステップS203に戻る。
 
【0203】
  ステップS205では、冷凍機200による冷却は維持しつつ(冷凍機200は運転を継続しつつ)、電場発生器1300による電場の発生を停止し、
図8のステップS104へと進む。つまり、コントローラ1400は、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度が第2温度T2まで低下するように被冷却物Mを冷却した後に、冷凍機200による冷却は維持しつつ、電場発生器1300による電場の発生を停止する。なお、ステップS205からステップS104に進む時に、コントローラ1400は、好ましくは、冷却能力を上げるように(例えば冷却能力が最大になるように)冷凍機200を制御する。
 
【0204】
  ステップS203からステップS210に工程が進んだ場合(つまり、過冷却運転中に、コントローラ1400が、被冷却物温度センサ500が検出する被冷却物Mの温度の変化率に基づいて被冷却物Mが凍結状態になる兆候を検知した場合)について説明する。
 
【0205】
  ステップS210では、コントローラ1400は、電場発生器1300が発生させる電場の強度が、設定可能な範囲の上限値(最大強度)であるか否かを判定する。
 
【0206】
  コントローラ1400は、被冷却物Mの凍結する兆候を検知した場合、後述するステップS211で電場発生器1300が発生させる電場の強度を上昇させることで被冷却物Mの過冷却状態を維持しようとする。これに対し、既に電場の強度が最大強度に設定されている場合には、コントローラ1400は、被冷却物Mを過冷却状態で維持することが困難であるため(電場の強度を上げられないため)、過冷却運転から、通常冷却運転へと運転を変更するため、ステップS205へと進む。一方、ステップS210において、コントローラ1400が、電場の強度が最大強度でないと判定した場合には、工程はステップS211に進む。
 
【0207】
  ステップS211では、コントローラ1400は、電場発生器1300が被冷却物Mに照射する電場の強度を所定量だけ上昇させる。その後ステップS203に進む。
 
【0208】
  なお、冷却装置1100においても、冷却装置100の
図5のフローチャートのステップS40〜ステップS42と同様に、被冷却物Mの温度が上昇傾向にある場合に、冷凍機200の冷却能力を上昇させたり、電場の強度を下降させたりする制御が行われてもよい。
 
【0209】
  第2実施形態の冷却装置1100は、電磁場を発生させるか電場を発生させるかで違いはあるものの、第1実施形態の冷却装置100の特徴として記載した(4−1)〜(4−5)と同様の特徴を有する。
 
【0210】
  また、第2実施形態の冷却装置100に対しても、第1実施形態の変形例が矛盾のない範囲で適用されてもよい。