(54)【発明の名称】SOFCシステム制御用プログラム、SOECシステム制御用プログラム、及び、リバーシブルSOCシステム制御用プログラム、並びに、SOFCシステム、SOECシステム、及びリバーシブルSOCシステム
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. SOFCシステム(1): アノードオフガス循環式]
[1.1. 構成]
図1に、本発明の第1の実施の形態に係るSOFCシステムの模式図を示す。
図1において、SOFCシステム10aは、アノードオフガス循環式のSOFCシステムであって、SOFC40aと、第1CO
2分離器14と、H
2O分離器22と、エジェクタ34とを備えている。これらの内、第1CO
2分離器14、H
2O分離器22、及びエジェクタ34は、それぞれ、アノードオフガスからCO
2及びH
2Oを除去した後に残る循環ガスをSOFC40aに戻すアノードオフガス循環手段の一部を構成する。
【0032】
なお、以下の説明では、便宜的に、SOFC40aのアノード流路を流れるガスを「A'」と略記する。同様に、第1CO
2分離器14の第1フィード流路を流れるガスを「B
1」、第1パージ流路を流れるガスを「C
1」と略記する。また、H
2O分離器22の第3フィード流路を流れるガスを「D」、第3パージ流路を流れるガスを「E」と略記する。さらに、入口ガスと出口ガスを区別する時は、それぞれ、「A'
in」又は「A'
out」のように、添え字「in」又は「out」を付記する。
【0033】
[1.1.1. SOFC]
SOFC40aは、炭化水素を改質するための改質器が内部にある間接内部型SOFCであって、SOFCセル42と、改質器44aとを備えている。なお、SOFC40aは、炭化水素を改質するための改質器が外部にある間接外部型SOFCであっても良い。間接内部型SOFC及び間接外部SOFCのいずれであっても、後述する制御用プログラムを適用することができる。
【0034】
SOFCセル42は、固体酸化物系電解質からなる電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)と、MEAの一方の面に形成された第1ガス流路(アノード流路)と、MEAの他方の面に形成された第2ガス流路(カソード流路)とを備えている。
改質器44aは、SOFC40aの内部において、燃料である炭化水素を水蒸気改質するためのものである。改質器44aの構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
【0035】
本実施の形態において、改質器44aは、改質器44a内の温度T
refを検出するための温度検出手段46と、改質器44a内の圧力
Prefを検出するための圧力検出手段48とをさらに備えている。検出された温度T
ref及び圧力P
refは、改質器44a内で生成する改質ガス流量V
i,IN(i=H
2、CO、H
2O、CO
2、CH
4)を算出する際に用いられる。また、V
i,INは、燃料利用率の推定値U'
f,calを算出する際に用いられる。V
i,IN、及びU'
f,calの算出方法については、後述する。
なお、本発明において、各変数に付された添え字「CH4」は、特にことわらない限り炭化水素C
nH
mを表し、メタンに限定する趣旨ではない。
【0036】
[1.1.2. 第1CO
2分離器]
第1CO
2分離器14は、SOFC40aのアノードオフガス(A'
out)からCO
2を分離し、CO
2の全部又は一部が除去されたオフガス(B
1out)と、主としてCO
2を含む分離ガス(C
1out)に分離するためのものである。B
1outは、H
2O分離器22で処理された後、SOFC40aに戻される。一方、C
1outは、系外に排出される。第1CO
2分離器14は、A'
outに含まれる未反応の燃料を回収し、SOFC40aに戻す機能を備えており、アノードオフガス循環手段の一部を構成する。第1CO
2分離器14の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
【0037】
例えば、第1CO
2分離器14は、分離膜を介して第1フィード流路と第1パージ流路とが隣接して配置されているものでも良い(以下、「分離膜方式」ともいう)。第1フィード流路にCO
2を含むガスが供給されると、CO
2のみが分離膜を通って第1パージ流路に排出される。
あるいは、第1CO
2分離器14は、CO
2を可逆的に吸蔵・放出することが可能なCO
2分離材が充填された2つの独立した流路を備えたものでも良い(以下、「バッチ切り替え式」ともいう)。第1フィード流路にCO
2を含むガスを流すと、CO
2分離材によりCO
2が吸収される。一方、第1パージ流路にパージガスを流すと、CO
2分離材からCO
2が放出される。所定時間経過後に、第1フィード流路と第1パージ流路を切り替えると、引き続き、CO
2の吸蔵・放出を行うことができる。
【0038】
図1に示す例において、第1CO
2分離器14は、第1フィード流路と、第1パージ流路とを備えている。第1フィード流路の入口はSOFC40aのアノード流路の出口に接続され、第1フィード流路の出口はH
2O分離器22の第3フィード流路の入口に接続されている。また、第1CO
2分離器14の第1パージ流路の出口は、第1流量計50aを介して、大気に接続されている。
【0039】
SOFC40aのアノード流路から排出されるオフガス(A'
out)は、通常、CO、H
2、CO
2、H
2O等を含む。このA'
outを第1フィード流路に供給すると、CO
2が分離され、第1フィード流路の出口からCO及びH
2を主成分とするオフガス(B
1out)が排出される。また、第1パージ流路の出口からCO
2を主成分とする分離ガス(C
1out)が排出される。
【0040】
第1CO
2分離器14のCO
2分離率η
CO2,SEP1は、第1CO
2分離器14の構造、及び分離条件が決まると一義的に定まる。η
CO2,SEP1は、第1フィード流路から排出されるCO
2の流量(すなわち、循環ガス中に含まれるCO
2の量V
CO2,RCY)、及び、第1フィード流路に供給されるCO
2の流量を見積もる際に用いられる。
第1流量計50aで検出されるCO
2流量をV
CO2,SEP1とすると、V
CO2,RCYは、V
CO2,RCY=(1−η
CO2,SEP1)×V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1と表される。また、第1フィード流路に供給されるCO
2の流量は、V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1と表される。これらの流量は、燃料利用率の推定値U'
f,calを算出する際に用いられる。
【0041】
η
CO2,SEP1は、種々の方法により取得することができる。例えば、第1CO
2分離器14がバッチ切り替え式のCO
2分離器である場合(すなわち、CO
2分離材(A)が充填された第1フィード流路と、CO
2分離材(B)が充填された第2フィード流路とを備えている場合)、第1CO
2分離器14は、CO
2分離材(A)の温度T
CO2,SEP1を検出する第2温度検出手段と、第1フィード流路のCO
2分圧P
CO2,SEP1を検出する第2圧力検出手段とをさらに備えているのが好ましい。
予め、T
CO2,SEP1、P
C02.SEP1、及び、η
CO2,SEP1の関係をメモリに記憶させておくと、SOFCシステムの作動時にT
CO2.SEP1、及びP
CO2.SEP1を検出すれば、検出されたT
CO2,SEP1、及びP
CO2.SEP1に対応するη
CO2,SEP1をメモリから読み出すことができる(手順e1)。
【0042】
[1.1.3. H
2O分離器]
H
2O分離器22は、B
1outからH
2Oを分離し、H
2Oの一部が除去されたオフガス(D
out)と、主としてH
2Oを含む分離ガス(E
out)に分離するためのものである。D
outは、SOFC40aに戻される。一方、E
outは、系外に排出される。H
2O分離器22は、A'
outに含まれる未反応の燃料を回収し、SOFC40aに戻す機能を備えており、アノードオフガス循環手段の一部を構成する。また、アノードオフガス循環式では、D
outに含まれるH
2Oを用いて水蒸気改質が行われる。H
2O分離器22の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。例えば、H
2O分離器22は、分離膜方式でも良く、あるいは、バッチ切り替え式でも良い。
【0043】
なお、本発明において、A'
outからCO
2、及びH
2Oが分離される。この場合、CO
2とH
2Oの分離順序は特に限定されない。すなわち、
図1に示す例では、SOFC40a→第1CO
2分離器→H
2O分離器22の順に接続されているが、SOFC40a→H
2O分離器22→第1CO
2分離器14の順に接続しても良い。
【0044】
図1に示す例において、H
2O分離器22は、第3フィード流路と第3パージ流路とを備えている。第3フィード流路の入口は、第1CO
2分離器14の第1フィード流路の出口に接続されている。第3フィード流路の出口は、第2流量計50bを介してエジェクタ34の吸引側に接続されている。また、H
2O分離器22の第3パージ流路の出口は、第3流量計50cを介して、大気に接続されている。
【0045】
H
2O分離器22のH
2O分離率η
H2O,SEPは、H
2O分離器22の構造、及び、分離条件が決まると、一義的に定まる。η
H2O,SEPは、第3フィード流路から排出されるH
2Oの流量(すなわち、循環ガス中に含まれるH
2Oの量V
H2O,RCY)、及び第3フィード流路に供給されるH
2Oの流量を見積もる際に用いられる。
第3流量計50cで検出されるH
2O流量をV
H2O,SEPとすると、V
H2O,RCYは、V
H2O,RCY=(1−η
H2O,SEP)×V
H2O,SEP/η
H2O,SEPと表される。また、第3フィード流路の供給されるH
2Oの流量は、V
H2O,SEP/η
H2O,SEPと表される。これらの流量は、燃料利用率の推定値U'
f,calを算出する際に用いられる。
【0046】
さらに、第2流量計50bは、循環ガスの流量V
RCYを検出するために用いられる。循環ガス中には、未反応の燃料に加えて、第1CO
2分離器14をそのまま通過したCO
2(V
CO2,RCY)、及びH
2O分離器22をそのまま通過したH
2O(V
H2O,RCY)が含まれている。V
RCYは、燃料利用率の推定値U'
f,calを算出する際に用いられる。
【0047】
η
H2O,SEPは、種々の方法により取得することができる。例えば、H
2O分離器22が分離膜方式のH
2O分離器である場合、H
2O分離器22は、第3フィード流路と第3パージ流路の圧力差ΔP
H2Oを検出する圧力差検出手段をさらに備えているのが好ましい。
予め、ΔP
H2O、U'
f,SET、第3フィード流路を流れるH
2OとCO
2の流量比(H
2O/CO
2比)、及び、η
H2O,SEPの関係をメモリに記憶させておくと、SOFCシステムの作動時にΔP
H2Oを検出すれば、検出されたΔP
H2O、U'
f,SET、及びH
2O/CO
2比に対応するη
H2O,SEPをメモリから読み出すことができる(手順e2)。
【0048】
[1.1.4. エジェクタ]
エジェクタ34は、燃料源(図示せず)から供給される燃料をSOFC40aのアノードに供給するためのものである。また、エジェクタ34は、A'
outから回収された未反応の燃料をSOFC40aに戻すため、及びD
outに含まれるH
2Oを改質器44aに供給するためにも用いられる。
【0049】
図1に示す例において、エジェクタ34の駆動側の入口は、燃料源(図示せず)に接続されている。エジェクタ34の出口は、改質器44aの入口に接続されている。さらに、エジェクタ34の吸引側の入口は、第2流量計50bを介して、H
2O分離器22の第3フィード流路の出口に接続されている。
この状態で、燃料源から供給される燃料を駆動側のノズルから高圧で噴出させると、ノズル周囲の負圧によりH
2O分離器22のオフガス(D
out)が吸引される。燃料源から供給される燃料の流量V
CH4,SETは、図示しない流量計を用いて検出される。検出されたV
CH4,SETは、燃料利用率の推定値U'
f,calを算出する際に用いられる。
【0050】
[1.2. SOFCシステム制御用プログラム]
本実施の形態に係るSOFCシステム10aは、上述した手段に加えて、システムを制御するための制御手段をさらに備えている。また、制御手段には、本発明に係るSOFCシステム制御用プログラムが格納されている。SOFCシステム制御用プログラムは、具体的には、要求発電電力W'
SETを取得した時に、予め設定された燃料利用率U'
f,SETとなるように、燃料流量V
CH4,SET、及び電流密度Iを制御するためのプログラムである。
図2に、本発明に係るSOFCシステム制御用プログラムのフローチャートの一例を示す。
図2において、SOFCシステム制御用プログラムは、コンピュータに以下の手順を実行させるためのものからなる。
【0051】
[1.2.1. 手順a]
まず、ステップ1(以下、単に「S1」という。)において、要求発電電力W'
SET、及び燃料利用率U'
f,SETを入力し、メモリに記憶させる(手順a)。W'
SETの入力方法は、特に限定されない。U'
f,SETは、マニュアルで入力しても良く、あるいは、予め設定された値を選択しても良い。
U'
f,SETの値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に設定することができる。一般に、U'
f,SETが大きくなるほど、セル電圧は高くなるが、発電効率は低下する。しかし、アノードオフガス循環を行う場合において、U'
f,SETを相対的に低く設定すると、セル電圧を低下させることなく、発電効率を向上させることができる。
【0052】
[1.2.2. 手順b]
次に、S2において、W'
SET、及びU'
f,SETに基づいて、炭化水素の初期の流量V
CH4,SET、及び初期の電流密度Iを算出し、メモリに記憶させる(手順b)。通常、システムの仕様が既知である場合において、W'
SET、及びU'
f,SETが決まると、これらを実現するためのV
CH4,SET、及びIは、計算により求めることができる。V
CH4,SET、及びIの初期値には、このようにして得られた計算値を用いる。
なお、実際には、計算により求められたV
CH4,SET、及びIを用いて発電を行っても、実際の発電電力W'
meas、及び燃料利用率U'
fは、それぞれ、種々の要因により、設定されたW'
SET、及びU'
f,SETにならない場合が多い。本発明では、後述する手順を用いて、W'
meas、及びU'
fを設定値に近づける。
【0053】
[1.2.3. 手順c]
次に、S3において、V
CH4,SETに基づいて、水流量V
H2O,SUPを算出し、メモリに記憶させる(手順c)。V
H2O,SUPは、改質器44aに供給される水の量を表す。V
H2O,SUPは、水蒸気改質を行う際のSteam/Carbon比(S/C比)に依存し、V
H2O,SUP=S/C比×V
CH4,SETで表される。S/C比は、予め設定されており、メモリに記憶されている。S/C比の値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を設定することができる。
【0054】
なお、アノードオフガス循環式SOFCにおいて、水蒸気改質に必要な水は、H
2O分離器22から供給される。この場合、V
H2O,SUPは、循環ガスに含まれるH
2Oの流量(すなわち、前述したV
H2O,RCY)を表す。V
H2O,RCYは、循環ガス量V
RCYにより制御することができる。一方、後述するアノードオフガス循環なしのSOFCにおいては、外部の水供給源から改質器に水が供給される。この場合、V
H2O,SUPは、水供給源から供給される水の流量V
H2O,SETを表す。
【0055】
[1.2.4. 手順d]
次に、S4において、V
CH4,SET、I、及びV
H2O,SUPの条件下で発電を行う。この状態で、改質器44aの温度T
ref、改質器44aの圧力P
ref、第1CO
2分離器14の第1パージ流路を流れるCO
2の流量V
CO2,SEP1、及び、H
2O分離器22の第3パージ流路を流れるH
2Oの流量V
H2O,SEP、並びに、循環ガスの流量V
RCYを検出し、これらをメモリに記憶させる(手順d)。
【0056】
[1.2.5. 手順e]
次に、予め、以下の式(1)で表される改質ガス流量V
i,IN、並びに、第1CO
2分離器14のCO
2分離率η
CO2,SEP1、及び第H
2O分離器22のH
2O分離率η
H20,SEPをメモリに記憶させておき、検出されたT
ref、
Pref、V
CO2,SEP1、V
H2O,SEP、及びV
RCY、並びに、以下の式(2)及び式(3)を用いて、燃料利用率の推定値U'
f,calを算出する(手順e)。
【0058】
具体的には、S5において、V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1、及びV
H2O,SEP/η
H2O,SEPを算出する。上述したように、η
CO2,SEP1は、第1CO
2分離器14の構造、及び分離条件が決まると一義的に定まるため、これらの関係を予めメモリに記憶させておく。同様に、η
H2O,SEPもまた、H
2O分離器22の構造、及び分離条件が決まると一義的に定まるため、これらの関係を予めメモリに記憶させておく。U'
f,calを算出する際には、検出された入力値(分離条件)に対応する数値をメモリから読み出し、計算に用いる(手順e1、e2)。
【0059】
次に、S6において、算出されたV
CO,SEP12/η
CO2,SEP1、及びV
H2O,SEP/η
H2O,SEP、並びに、式(2)を用いて、循環ガスに含まれる未反応燃料(CO、H
2)の流量V
CO+H2,RCYを算出する。上述したように、式(2)の右辺第2項は循環ガスに含まれるCO
2の量を表し、右辺第3項は循環ガスに含まれるH
2Oの量を表す。
なお、後述するアノードオフガス循環なしのSOFCの場合には、循環ガスの流量V
RCYはゼロとなるので、S6の手順を省略することができる。
【0060】
次に、S7において、式(3)を用いてU'
f,calを算出する。改質ガス流量V
i,INは、改質器44aに供給される水流量V
H2O,SUP、炭化水素の流量V
CH4,SET、温度T
ref、及び圧力P
refが決まると、一義的に定まるので、これらの関係を予めメモリに記憶させておく。U'
f,calを算出する際には、設定されたV
H2O,SUP、及びV
CH4,SET、並びに、検出されたT
ref、及びP
refに対応する数値をメモリから読み出し、計算に用いる。
なお、U'
f,calの算出に用いるV
i,INは、同一構造のシステムを用いて実測された値でも良く、あるいは、数値計算により求められた値でも良い。
【0061】
式(3)中、V
CO,IN、及びV
H2,INは、それぞれ、改質ガスに含まれるCO
2の量、及びH
2Oの量を表す。式(3)の分母は、改質器44aから供給される燃料の流量(V
CO,IN+V
H2O,IN)と循環ガスに含まれる燃料の流量(V
CO+H2,RCY)の和、すなわち、SOFCセル42のアノード流路に供給される燃料(CO、H
2)の総流量を表す。
【0062】
式(3)中、V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1は、第1CO
2分離器14の第1フィード流路に供給されるCO
2の総流量を表す。V
CO2は、発電により新たに生成したCO
2の流量(すなわち、COの総消費量)と、循環ガスに含まれるCO
2の流量の和を表す。V
H2O,SEP/η
H2O,SEPは、H
2O分離器22の第3フィード流路に供給されるH
2Oの総流量を表す。V
H2Oは、発電により新たに生成したH
2Oの流量(すなわち、H
2の総消費量)と、循環ガスに含まれるH
2Oの流量の和を表す。V
CO2+H2O,RCYは、循環ガスに含まれるCO
2及びH
2Oの流量を表す。さらに、式(3)の分子は、実際に発電に消費された燃料の流量に対応する。
【0063】
[1.2.6. 手順f]
次に、S8において、U'
f,calが以下の式(4)を満たすか否かが判断される。式(4)中、ε
1は、設定値U'
f,SETと推定値U'
f,calの許容誤差を表す。ε
1の値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に設定することができる。
【数8】
【0064】
U'
f,calが式(4)を満たさない時(S8:NO)は、S9に進み、電流密度Iを増減させる。U'
f,cal>U'
f,SETである場合、必要以上に燃料が消費されていることを意味するので、このような場合にはIを減少させる。逆にU'
f,cal<U'
f,SETである場合には、Iを増加させる。ガス流量を一定に保ったまま、Iのみを増減させると、セル電圧が増減し、その結果としてU'
f,calも増減する。電流密度の増減幅ΔIの理論値ΔI
thは、ΔU'
f(=U'
f,SET−U'
f,cal)から算出することができる。実際の増減幅ΔIは、ΔI
thと同一であっても良く、あるいは、ΔI
thに適切な補正係数を乗算したものでも良い。
S9において、電流密度Iを増減した後、S4に戻り、新たに設定された電流密度Iを用いて、S4〜S9の各ステップを繰り返す(手順f)。
【0065】
[1.2.7. 手順g]
U'
f,calが式(4)を満たす時(S8:YES)は、S10に進む。S10では、発電電力W'
measを測定し、W'
measをメモリに記憶させる(手順g)。
【0066】
[1.2.8. 手順h]
次に、S11において、W'
measが以下の式(5)を満たすか否かが判断される。式(5)中、ε
2は、設定値W'
SETと実測値W'
measの許容誤差を表す。ε
2の値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に設定することができる。
【数9】
【0067】
W'
measが式(5)を満たさない時(S11:NO)は、S12に進み、燃料流量V
CH4,SETを増減させる。W'
meas>W'
SETである場合、必要以上に燃料が消費されていることを意味するので、このような場合にはV
CH4,SETを減少させる。逆に、W'
meas<W'
SETである場合には、V
CH4,SETを増加させる。燃料流量の増減幅ΔV
1の理論値ΔV
1thは、ΔW'(=W'
SET−W'
meas)から算出することができる。実際の増減幅ΔV
1は、ΔV
1thと同一であっても良く、あるいは、ΔV
1thに適切な補正係数を乗算したものでも良い。
S12において、燃料流量V
CH4,SETを増減した後、S3に戻り、新たに設定された燃料流量V
CH4,SETを用いて、S3〜S12の各ステップを繰り返す(手順h)。
【0068】
[1.2.7. 手順i〜手順j]
W'
measが式(5)を満たす時(S11:YES)は、S13に進む。S13では、SOFC運転を終了させるか否かが判断される。運転を終了しない場合(S13:NO)には、S14に進む。S14では、W'
SETが変更されたか否かが判断される。W'
SETが変更されない場合(S14:NO)には、定常作動に移行する(手順i)。具体的には、S4に戻り、上述したS4〜S14の各ステップを繰り返す。
【0069】
一方、SOFC運転中(S13:NO)において、W'
SETが変更された時(S14:YES)は、S1に戻る。そして、変更されたW'
SETを用いて、S1〜S14の各ステップを繰り返す(手順j)。
さらに、SOFC運転を終了させる場合(S13:YES)には、SOFC40aへの燃料供給を停止させる。なお、後述するリバーシブルSOCシステムにおいては、SOFC運転を終了させた後(S13:YES)、システムを停止させる前にSOECモードに移行する場合がある。
【0070】
[1.3. 改質ガス流量V
i,IN]
改質器44a内においては、式(a)で表される水蒸気改質反応と、式(b)で表される水性ガスシフト反応が起こる。
C
nH
m + nH
2O → nCO + (m/2+n)H
2 ・・・(a)
CO + H
2O → CO
2 + H
2 ・・・(b)
式(a)及び式(b)のいずれも、通常、反応は完全に右に進行しない。また、実際の水蒸気改質の際には、通常、水蒸気とCOの量論比(S/C比)が1より大きく設定される。そのため、改質ガスは、原料と反応生成物との混合物(すなわち、H
2、CO、H
2O、CO
2、及びC
nH
mの混合物)となる。
【0071】
改質ガスに含まれる各成分の比率(すなわち、改質ガス流量V
i,IN)は、温度T
ref、圧力P
ref、設定された炭化水素ガスの流量V
CH4,SET、及び改質器44aに供給される水の流量V
H2O,SUPが決まると、一義的に定まる。上述したように、V
i,INは、実測することもできるが、計算により求めることができる。
【0072】
図3〜
図5に、断熱平衡反応モデルを用いて算出された、改質器44aの温度T
ref、H
2O流量V
H2O,SUP、又は、改質器の圧力
Prefと、改質ガス流量V
i,IN(i=H
2、CO、H
2O、CO
2、CH
4)との関係の一例を示す。
図3〜
図5に示すように、改質器44aの入口ガスの流量と出口ガスの流量の関係を関数(マップ)化しておき、これをメモリに記憶させておくと、V
H2O,SUP、V
CH4,SET、T
ref、及びP
refが入力された時に、入力値に対応するV
i,INを出力することができる。
【0073】
[1.4. CO
2分離率η
CO2,SEP1]
例えば、第1CO
2分離器14がCO
2分離材を用いたバッチ切り替え式のCO
2分離器である場合、CO
2分離率η
CO2,SEP1は、CO
2吸収時の第1フィード流路の温度(吸収温度)T
CO2、及び第1フィード流路の圧力P
CO2が決まると、一義的に定まる。
そのため、η
CO2,SEP1を定数としても良いが、より正確なη
CO2,SEP1を知るためには、第1CO
2分離器14は、T
CO2を検出するための第2温度検出手段、及びP
CO2を検出するための第2圧力検出手段を備えているのが好ましい。U'
f,calを算出する際には、検出されたT
CO2、及びP
CO2を用いて、η
CO2,SEP1を推定する。
【0074】
図6に、第一元素系複合酸化物からなるCO
2分離材のCO
2吸収温度T
CO2とCO
2分離率η
CO2,SEP1との関係の一例を示す。
図6に示すように、T
CO2、P
CO2、及びη
CO2,SEP1の関係を関数(マップ)化しておき、これをメモリに記憶させておくと、T
CO2、及びP
CO2が入力された時に、入力値に対応するη
CO2,SEP1を出力することができる(手順e1、D1、D2)。
【0075】
図7に、第一元素系複合酸化物からなるCO
2分離材のCO
2放出温度とCO
2吸収率との関係の一例を示す。
図7より、CO
2分離材の温度を700℃以上にすると、全吸収量の98%以上が放出されることがわかる。そのため、SOFC作動時において、第1パージ流路の温度が700℃以上になるように運転条件を制御すると、連続的なCO
2の分離が可能となる。なお、この方法は、後述する第2CO
2分離器16、及びバッチ切り替え式のH
2O分離器22に対しても適用することができる。また、この方法は、後述するSOECシステムにも適用することができる。
【0076】
[1.5. H
2O分離率η
H2O,SEP]
例えば、H
2O分離器22が分離膜方式のH
2O分離器である場合、H
2O分離率η
H2O,SEPは、第3フィード流路と第3パージ流路の間の圧力差ΔP
H2O、U'
f,SET、及び、第3フィード流路に供給されるH
2OとCO
2の比(H
2O/CO
2比)が決まると、一義的に定まる。そのため、η
H2O,SEPを定数としても良いが、より正確なη
H2O,SEPを知るためには、H
2O分離器22は、ΔP
H2Oを検出するための圧力差検出手段を備えているのが好ましい。H
2O/CO
2比は、適切な手段を用いて実測しても良いが、V
CO2,SEP1、η
CO2,SEP1、V
H2O,SEP、及びη
H2O,SEPから算出することができる。
【0077】
図8に、圧力差ΔP
H2OとH
2O分離率η
H2O,SEPとの関係の一例を示す。
図9に、H
2O/CO
2比とH
2O分離率η
H2O,SEPとの関係の一例を示す。
図10に、U'
f,SETとH
2O分離率η
H2O,SEPとの関係の一例を示す。
図8〜10に示すように、ΔP
H2O、U'
f,SET、H
2O/CO
2比、及びη
H2O,SEPの関係を関数(マップ)化しておき、これをメモリに記憶させておくと、ΔP
H20、U'
f,SET、及びH
2O/CO
2比が入力された時に、入力値に対応するη
CO2,SEP1を出力することができる(手順e2、D3)。
なお、この方法は、分離膜方式のCO
2分離器に対しても適用することができる。また、この方法は、後述するSOECシステムにも適用することができる。
【0078】
[2. SOFCシステム(2): アノードオフガスなし]
[2.1. 構成]
図11に、本発明の第2の実施の形態に係るSOFCシステムの模式図を示す。
図11において、SOFCシステム10bは、アノードオフガス循環のないSOFCシステムであって、SOFC40bと、改質器44bと、第1CO
2分離器14と、蒸発器18と、H
2O分離器22と、燃焼器52とを備えている。
【0079】
[2.1.1. SOFC]
本実施の形態において、SOFC40bは、炭化水素を改質するための改質器が外部にある間接外部型SOFCからなる。SOFC40bに関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
[2.1.2. 改質器]
本実施の形態において、改質器44bは、SOFC40bの外部において、燃料である炭化水素を水蒸気改質するためのものである。改質器44bの構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
図11に示す例において、改質器44bは、燃料ガスを流すための改質流路(図示せず)と、改質器44b内の温度T
refを検出するための温度検出手段46と、改質器44b内の圧力
Prefを検出するための圧力検出手段48と、燃焼ガスを流すための燃焼ガス流路(図示せず)とを備えている。改質流路の入口は、蒸発器18の出口、及び燃料源(図示せず)の出口に接続されている。また、改質流路の出口は、SOFC40bのアノード流路の入口に接続されている。燃焼ガス流路の入口は燃焼器52の排ガス排出口に接続され、燃焼ガス流路の出口は大気に接続されている。改質器44bに関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0081】
[2.1.3. 第1CO
2分離器]
第1CO
2分離器14は、SOFC40bのアノードオフガス(A'
out)からCO
2を分離し、CO
2の全部又は一部が除去されたオフガス(B
1out)と、主としてCO
2を含む分離ガス(C
1out)に分離するためのものである。本実施の形態において、B
1outは、H
2O分離器22で処理された後、燃焼器52の燃料として用いられる。また、C
1outは、系外に排出される。すなわち、本実施の形態において、第1CO
2分離器14は、アノードオフガス循環手段の一部を構成しない。
【0082】
図11に示す例において、第1CO
2分離器14は、第1フィード流路と、第1パージ流路とを備えている。第1フィード流路の入口はSOFC40bのアノード流路の出口に接続され、第1フィード流路の出口はH
2O分離器22の第3フィード流路の入口に接続されている。また、第1CO
2分離器14の第1パージ流路の出口は、第1流量計50aを介して、大気に接続されている。第1CO
2分離器14に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0083】
[2.1.4. H
2O分離器]
H
2O分離器22は、B
1outからH
2Oを分離し、H
2Oの全部又は一部が除去されたオフガス(D
out)と、主としてH
2Oを含む分離ガス(E
out)に分離するためのものである。本実施の形態において、D
outは、燃焼器52の燃料として用いられる。また、E
outは、系外に排出される。すなわち、本実施の形態において、H
2O分離器22は、アノードオフガス循環手段の一部を構成しない。
【0084】
図11に示す例において、H
2O分離器22は、第3フィード流路と第3パージ流路とを備えている。第3フィード流路の入口は、第1CO
2分離器14の第1フィード流路の出口に接続されている。第3フィード流路の出口は、燃焼器52の燃料供給口に接続されている。また、H
2O分離器22の第3パージ流路の出口は、第3流量計50cを介して、大気に接続されている。H
2O分離器22に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
[2.1.5. 蒸発器]
蒸発器18は、水蒸気改質用の水を改質器44bに供給するためのものである。蒸発器18の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。蒸発器18から供給される水の流量V
H2O,SETは、燃料源から供給される燃料流量V
CH4,SETと共に、U'
f,calを算出する際に用いられる。
【0086】
[2.1.6. 燃焼器]
燃焼器52は、D
outを燃料源とし、SOFC40bから排出されるカソードオフガスを酸化剤源として、A'
outに含まれる可燃成分を燃焼させ、その燃焼熱を改質器44bに供給するためのものである。改質器44bでは、アノードオフガスの燃焼熱を用いて改質反応が行われる。燃焼器52の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
図11に示す例において、燃焼器52の燃料供給口は、H
2O分離器22の第3フィード流路の出口に接続され、空気供給口は、SOFC40bのカソード流路の出口に接続されている。さらに、燃焼器52の排ガス排出口は、改質器44bの燃焼ガス流路の入口に接続されている。
【0087】
[2.2. SOFCシステム制御用プログラム]
本実施の形態に係るSOFCシステム10bは、上述した手段に加えて、システムを制御するための制御手段をさらに備えている。また、制御手段には、本発明に係るSOFCシステム制御用プログラムが格納されている。SOFCシステム制御用プログラムは、具体的には、要求発電電力W'
SETを取得した時に、予め設定された燃料利用率U'
f,SETとなるように、燃料流量V
CH4,SET、及び電流密度Iを制御するためのプログラムである。
【0088】
本実施の形態に係るSOFCシステムは、アノードオフガス循環手段を備えていない。そのため、U'
f,calの算出に際しては、改質器44bに供給される水流量V
H2O,SUPには、蒸発器18から供給される水流量V
H2O,SETが用いられる。また、循環ガスの流量V
RCYの検出、並びに、V
CO2+H2,RCY、及びV
CO2+H2O,RCYの算出が不要となる。この点が、第1の実施の形態とは異なる。本実施の形態に係るSOFCシステム制御用プログラムに関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0089】
[3. SOECシステム(1): カソードオフガス循環式]
[3.1. 構成]
図12に、本発明の第3の実施の形態に係るSOECシステムの模式図を示す。
図12において、SOECシステム10cは、カソードオフガス循環式のSOECシステムであって、SOEC40cと、第1CO
2分離器14と、第2CO
2分離器16と、蒸発器18と、H
2O分離器22と、燃料製造器20と、貯蔵タンク28とを備えている。これらの内、第1CO
2分離器14、及びH
2O分離器22は、それぞれ、カソードオフガスに含まれるCO
2及びH
2OをSOEC40cに戻すカソードオフガス循環手段の一部を構成する。
【0090】
なお、以下の説明では、便宜的に、SOEC40cのカソード流路を流れるガスを「A」と略記する。同様に、第2CO
2分離器16の第2フィード流路を流れるガスを「B
2」、第2パージ流路を流れるガスを「C
2」と略記する。
【0091】
[3.1.1. SOEC]
SOEC40cは、H
2O/CO
2共電解を行うためのものである。SOEC40cは、用途が異なる以外は、SOFC40a、40bと同様の構造を備えている。すなわち、SOEC40cは、MEAと、MEAの一方の面に形成された第1ガス流路(カソード流路)と、MEAの他方の面に形成された第2ガス流路(アノード流路)とを備えている。SOEC40cは、改質器を備えたものでも良いが、SOECシステム10cにおいて改質器が用いられることはない。
【0092】
[3.1.2. 第1CO
2分離器]
第1CO
2分離器14は、SOEC40cのカソードオフガス(A
out)からCO
2を分離し、CO
2の全部又は一部が除去されたオフガス(B
1out)と、主としてCO
2を含む分離ガス(C
1out)に分離するためのものである。B
1outは、H
2O分離器22で処理された後、燃料製造器20に送られる。一方、C
1outは、SOEC40cに戻される。第1CO
2分離器14は、A
outに含まれる未反応の原料を回収し、SOEC40cに戻す機能を備えており、カソードオフガス循環手段の一部を構成する。
【0093】
図12において、第1CO
2分離器は、第1フィード流路と、第1パージ流路とを備えている。第1フィード流路の入口はSOEC40cのカソード流路の出口に接続され、第1フィード流路の出口はH
2O分離器22の第3フィード流路の入口に接続されている。また、第1CO
2分離器14の第1パージ流路の入口は、蒸発器18の出口に接続され、第1パージ流路の出口は、第1流量計50aを介して、第2CO
2分離器16の第2パージ流路の入口に接続されている。
【0094】
第1CO
2分離器14のCO
2分離率η
CO2,SEP1は、第1フィード流路に供給されるCO
2の流量を見積もる際に用いられる。第1フィード流路から第1パージ流路に排出される正味のCO
2流量をV
CO2,SEP1とすると、第1フィード流路に供給されるCO
2の流量は、V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1と表される。
本実施の形態において、V
CO2,SEP1を直接、検出することはできないが、第1流量計50aで検出される流量V
H2O+CO2,SEP1は、V
CO2,SEP1とパージガスであるH
2Oの流量(=V
H2O,SET+V
H2O,SEP)を合算したものに相当する。そのため、V
H2O+CO2,SEP1、及びV
H2O,SEPを検出すれば、V
CO2,SEP1を間接的に検出することができる。V
CO2,SEP1は、燃料利用率の推定値U
f,calを算出する際に用いられる。
第1CO
2分離器に関するその他の点については、第1〜第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0095】
[3.1.3. 第2CO
2分離器]
第2CO
2分離器16は、CO
2源から供給される排ガス(B
2in)からCO
2を分離し、CO
2を含むパージガス(C
2out)をSOEC40cに供給するためのものである。
図12に示す例において、第2CO
2分離器16は、第2フィード流路と、第2パージ流路とを備えている。第2フィード流路の入口は、外部のCO
2源(例えば、自動車、ボイラー等)に接続され、第2フィード流路の出口は、大気に開放されている。第2パージ流路の入口は、第1流量計50aを介して第1CO
2分離器14の第1パージ流路の出口に接続されている。さらに、第2パージ流路の出口は、第4流量計50dを介して、SOEC40cのカソード流路の入口に接続されている。
【0096】
第2CO
2分離器16のCO
2分離率η
CO2,SEP2は、第2フィード流路から第2パージ流路に排出されるCO
2の流量を見積もる際に用いられる。B
2inに含まれるCO
2の流量をV
CO2,SETとし、第2フィード流路から第2パージ流路に排出される正味のCO
2流量をV
CO2,SEP2とすると、V
CO2,SEP2=V
CO2,SET×η
CO2,SEP2の関係が成り立つ。
本実施の形態において、V
CO2,SEP2を直接、検出することはできないが、第4流量計50dで検出される流量V
H2O+CO2,SEP2は、V
CO2,SEP2とV
H2O+CO2,SEP1とを合算したものに相当する。そのため、V
H2O+CO2,SEP2とV
H2O+CO2,SEP1を検出すれば、V
CO2,SEP2を間接的に検出することができる。
あるいは、V
CO2,SEP2は、V
CO2,SET×η
CO2,SEP2とも表せるので、V
CO2,SETが既知である時は、η
CO2,SEP2を取得することにより、V
CO2,SEP2を間接的に検出することができる。
第2CO
2分離器16に関するその他の点については、第1CO
2分離器14と同様であるので、説明を省略する。
【0097】
[3.1.4. 蒸発器]
蒸発器18は、SOEC40cにH
2Oを供給するためのものである。蒸発器18の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。蒸発器18から供給される水の流量V
H2O,SETは、U
f,calを算出する際に用いられる。
【0098】
[3.1.5. H
2O分離器]
H
2O分離器22は、第1CO
2分離器14の第1フィード流路からのオフガス(B
1out)(又は、SOEC40cのカソード流路からのオフガス(A
out))からH
2Oを分離し、H
2Oの全部又は一部が除去されたオフガス(D
out)と、主としてH
2Oを含む分離ガス(E
out)に分離するためのものである。D
outは、燃料製造器20に送られる。一方、E
outは、SOEC40cに戻される。すなわち、H
2O分離器22は、A
outに含まれる未反応の原料を回収し、SOEC40cに戻す機能を備えており、カソードオフガス循環手段の一部を構成する。
【0099】
図12において、H
2O分離器は、第3フィード流路と、第3パージ流路とを備えている。第3フィード流路の入口は、第1CO
2分離器14の第1フィード流路の出口に接続され、第3フィード流路の出口は、燃料製造器20の入口に接続されている。また、H
2O分離器22の第3パージ流路の出口は、第3流量計50cを介して、蒸発器18の出口に接続されている。
【0100】
H
2O分離器22のH
2O分離率η
H2O,SEPは、第3フィード流路に供給されるH
2Oの流量を見積もる際に用いられる。
第3流量計50cで検出されるH
2O流量をV
H2O,SEPとすると、第3フィード流路に供給されるH
2Oの流量は、V
H2O,SEP/η
H2O,SEPと表される。この流量は、燃料利用率の推定値U
f,calを算出する際に用いられる。
H
2O分離器22に関するその他の点については、第1〜第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0101】
[3.1.6. 燃料製造器]
燃料製造器20は、H
2O分離器22の第3フィード流路から排出されたオフガス(D
out)を原料として、炭化水素(例えば、メタン)を製造するためのものである。燃料製造器20の構造は、特に限定されるものではなく、公知の装置を用いることができる。
【0102】
[3.1.8. 貯蔵タンク]
貯蔵タンク28は、燃料製造器20から排出される炭化水素を貯蔵するためのものである。貯蔵タンク28は、このような機能を奏するものである限りにおいて、その構造、容量等は特に限定されない。
【0103】
[3.2. SOECシステム制御用プログラム]
本実施の形態に係るSOECシステム10cは、上述した手段に加えて、システムを制御するための制御手段をさらに備えている。また、制御手段には、本発明に係るSOECシステム制御用プログラムが格納されている。SOECシステム制御用プログラムは、具体的には、要求発電電力W
SETを取得した時に、予め設定された燃料利用率U
f,SETとなるように、原料流量V
CO2,SET、V
H2O,SET、及び電流密度Iを制御するためのプログラムである。
図13に、本発明に係るSOECシステム制御用プログラムのフローチャートの一例を示す。
図13において、SOECシステム制御用プログラムは、コンピュータに以下の手順を実行させるためのものからなる。
【0104】
[3.2.1. 手順A]
まず、ステップ21(以下、単に「S21」という。)において、要求電解電力W
SET、及び燃料利用率U
f,SETを入力し、メモリに記憶させる(手順A)。W
SETの入力方法は、特に限定されない。U
f,SETは、マニュアルで入力しても良く、あるいは、予め設定された値を選択しても良い。
U
f,SETの値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に設定することができる。一般に、U
f,SETが大きくなるほど、未反応原料は少なくなるが、電解電圧が増加し、電解効率も低下する。しかし、カソードオフガス循環を行う場合において、U
f,SETを相対的に低く設定すると、未反応原料を増大させることなく、電解電圧を低下させ、かつ、電解効率を向上させることができる。
【0105】
[3.2.2. 手順B]
次に、S22において、W
SET、及びU
f,SETに基づいて、H
2Oの初期の流量V
H2O,SET、CO
2の初期の流量V
CO2,SET、及び電流密度Iを算出し、前記メモリに記憶させる(手順B)。通常、システムの仕様が既知である場合において、W
SET、及びU
f,SETが決まると、これらを実現するためのV
CO2,SET、V
H2O,SET、及びIは、計算により求めることができる。V
CO2,SET、V
H2O,SET、及びIの初期値には、このようにして得られた計算値を用いる。
なお、実際には、計算により求められたV
CO2,SET、V
H2O,SET、及びIを用いて電解を行っても、実際の電解電力W
meas、及び燃料利用率U
fは、それぞれ、種々の要因により、設定されたW
SET、及びU
f,SETにならない場合が多い。本発明では、後述する手順を用いて、W
meas、及びU
fを設定値に近づける。
【0106】
[3.2.3. 手順C]
次に、S23において、V
CO2,SET、V
H2O,SET、及びIの条件下で電解を行う。この状態で、第1CO
2分離器14の第1パージ流路を流れるCO
2の流量V
CO2,SEP1、及びH
2O分離器22の第3パージ流路を流れるH
2Oの流量V
H2O,SEP、又は、これらに加えて第2CO
2分離器16の第2パージ流路を流れるCO
2の流量V
CO2,SEP2を検出し、これらをメモリに記憶させる(手順C)。
なお、
図12に示す例では、V
CO2,SEP1、及びV
CO2,SEP2を直接、検出することはできないが、V
H2O,SEP、V
H2O+CO2,SEP1、及びV
H2O+CO2,SEP2を検出すると、間接的にV
CO2,SEP1、及びV
CO2,SEP2を検出することができる。また、η
CO2,SEP2を推定する場合には、V
CO2,SEP2の検出を省略することができる。
【0107】
[3.2.4. 手順D]
次に、S24において、検出されたV
CO2,SEP1、V
H2O,SEP、及びV
CO2,SEP2、並びに、以下の式(6)を用いて、燃料利用率の推定値U
f,calを算出する(手順D)。
【数10】
【0108】
具体的には、V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1、V
H2O,SEP/η
H2O,SEP、及びV
CO2,SEP2を算出する。上述したように、η
CO2,SEP1、及びη
CO2,SEP2は、それぞれ、第1CO
2分離器14及び第2CO
2分離器16の構造、並びに、分離条件が決まると一義的に定まるため、これらの関係を予めメモリに記憶させておく。同様に、η
H2O,SEPもまた、H
2O分離器22の構造、及び分離条件が決まると一義的に定まるため、これらの関係を予めメモリに記憶させておく。U
f,calを算出する際には、検出された入力値(分離条件)に対応する数値をメモリから読み出し、計算に用いる(手順D1、D2、D3)。
あるいは、
図12に示すように、V
H2O+CO2,SEP2とV
H2O+CO2,SEP1を検出すれば、間接的にV
CO2,SEP2を検出することができるので、η
CO2,SEP2を取得することなく、U
f,calを算出することもできる。
【0109】
式(6)中、V
CO2,IN、及びV
H20,INは、それぞれ、SOEC40cに供給されるCO
2の量、及びH
2Oの量を表す。式(6)の右辺第2項の分母は、SOEC40cに供給される原料の総流量を表す。また、式(6)の右辺第2項の分子は、電解反応に消費されなかった原料の総流量を表す。
【0110】
[3.2.5. 手順E]
次に、S25において、U
f,calが以下の式(7)を満すか否かが判断される。式(7)中、ε
3は、設定値U
f,SETと推定値U
f,calの許容誤差を表す。ε
3の値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に設定することができる。
【数11】
【0111】
U
f,calが式(7)を満たさない時(S25:NO)は、S26に進み、電流密度Iを増減させる。U
f,cal>U
f,SETである場合、必要以上に原料が消費されていることを意味するので、このような場合にはIを減少させる。逆にU
f,cal<U
f,SETである場合には、Iを増加させる。ガス流量を一定に保ったまま、Iのみを増減させると、電解電圧が増減し、その結果としてU
f,calも増減する。電流密度の増減幅ΔIの理論値ΔI
thは、ΔU
f(=U
f,SET−U
f,cal)から算出することができる。実際の増減幅ΔIは、ΔI
thと同一であっても良く、あるいは、ΔI
thに適切な補正係数を乗算したものでも良い。
S26において、電流密度Iを増減した後、S23に戻り、新たに設定された電流密度Iを用いて、S23〜S6の各ステップを繰り返す(手順E)。
【0112】
[3.2.6. 手順F]
U
f,calが式(7)を満たす時(S25:YES)は、S27に進む。S27では、電解電力W
measを測定し、W
measをメモリに記憶させる(手順F)。
【0113】
[3.2.7. 手順G]
次に、S28において、W
measが以下の式(8)を満たすか否かが判断される。式(8)中、ε
4は、設定値W
SETと実測値W
measの許容誤差を表す。ε
4の値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に設定することができる。
【数12】
【0114】
W
measが式(8)を満たさない時(S28:NO)は、S29に進み、原料流量V
CO2,SET、及びV
H2O,SETを増減させる。W
meas>W
SETである場合、必要以上に原料が消費されていることを意味するので、このような場合にはV
CO2,SET、及びV
H2O,SETを減少させる。逆に、W
meas<W
SETである場合には、V
CO2,SET、及びV
H2O,SETを増加させる。原料流量の増減幅ΔV
2、ΔV
3の理論値ΔV
2th、ΔV
3thは、ΔW(=W
SET−W
meas)から算出することができる。実際の増減幅ΔV
2、及びΔV
3は、それぞれ、ΔV
2th、及びΔV
3thと同一であっても良く、あるいは、ΔV
2th、及びΔV
3thに適切な補正係数を乗算したものでも良い。
S29において、原料流量V
CO2,SET、V
H2O,SETを増減した後、S23に戻り、新たに設定された原料流量V
CO2,SET、V
H2O,SETを用いて、S23〜S29の各ステップを繰り返す(手順G)。
【0115】
[3.2.7. 手順H〜手順I]
W
measが式(8)を満たす時(S28:YES)は、S30に進む。S30では、SOEC運転を終了させるか否かが判断される。運転を終了しない場合(S30:NO)には、S31に進む。S31では、W
SETが変更されたか否かが判断される。W
SETが変更されない場合(S31:NO)には、定常作動に移行する(手順H)。具体的には、S23に戻り、上述したS23〜S31の各ステップを繰り返す。
【0116】
一方、SOEC運転中(S30:NO)において、W
SETが変更された時(S31:YES)は、S21に戻る。そして、変更されたW
SETを用いて、S21〜S31の各ステップを繰り返す(手順I)。
さらに、SOEC運転を終了させる場合(S30:YES)には、SOEC40cへの原料供給を停止させる。なお、後述するリバーシブルSOCシステムにおいては、SOEC運転を終了させた後(S30:YES)、システムを停止させる前にSOFCモードに移行する場合がある。
【0117】
[4. SOECシステム(2): カソードオフガス循環なし]
[4.1. 構成]
図14に、本発明の第4の実施の形態に係るSOECシステムの模式図を示す。
図14において、SOECシステム10dは、カソードオフガス循環のないSOECシステムであって、SOEC40dと、第1CO
2分離器14と、第2CO
2分離器16と、蒸発器18と、H
2O分離器22と、燃料製造器20と、貯蔵タンク28とを備えている。
【0118】
[4.1.1. SOEC]
SOEC40dは、H
2O/CO
2共電解を行うためのものである。SOEC40dの詳細については、第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0119】
[4.1.2. 第1CO
2分離器]
第1CO
2分離器14は、SOEC40dのカソードオフガス(A
out)からCO
2を分離し、CO
2の全部又は一部が除去されたオフガス(B
1out)と、主としてCO
2を含む分離ガス(C
1out)に分離するためのものである。B
1outは、H
2O分離器22で処理された後、燃料製造器20に送られる。一方、C
1outは、そのまま系外に排出される。
【0120】
図14において、第1CO
2分離器14は、第1フィード流路と、第1パージ流路とを備えている。第1フィード流路の入口はSOEC40dのカソード流路の出口に接続され、第1フィード流路の出口はH
2O分離器22の第3フィード流路の入口に接続されている。第1パージ流路の出口は、第1流量計50aを介して、大気に接続されている。
第1CO
2分離器14に関するその他の点については、第1〜第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0121】
[4.1.3. 第2CO
2分離器]
第2CO
2分離器16は、CO
2源から供給される排ガス(B
2in)からCO
2を分離し、CO
2を含む分離ガス(C
2out)をSOEC40dに供給するためのものである。
図14において、第2CO
2分離器16は、第2フィード流路と、第2パージ流路とを備えている。第2フィード流路の入口は、外部のCO
2源(例えば、自動車、ボイラー等)に接続され、第2フィード流路の出口は、大気に開放されている。第2パージ流路の入口は、蒸発器18の出口に接続され、第2パージ流路の出口は、第4流量計50dを介して、SOEC40dのカソード流路の入口に接続されている。
第2CO
2分離器16に関するその他の点については、第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0122】
[4.1.4. 蒸発器]
蒸発器18は、SOEC40dにH
2Oを供給するためのものである。蒸発器18の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。蒸発器18から供給される水の流量V
H2O,SETは、U
f,calを算出する際に用いられる。
【0123】
[4.1.5. H
2O分離器]
H
2O分離器22は、第1CO
2分離器14の第1フィード流路からのオフガス(B
1out)(又は、SOEC40dのカソード流路からのオフガス(A
out))からH
2Oを分離し、H
2Oの全部又は一部が除去されたオフガス(D
out)と、主としてH
2Oを含む分離ガス(E
out)に分離するためのものである。D
outは、燃料製造器20に送られる。一方、E
outは、そのまま系外に排出される。
【0124】
図14において、H
2O分離器22は、第3フィード流路と、第3パージ流路とを備えている。第3フィード流路の入口は、第1CO
2分離器14の第1フィード流路の出口に接続され、第3フィード流路の出口は、燃料製造器20の入口に接続されている。また、第3パージ流路の出口は、第3流量計50cを介して、大気に接続されている。H
2O分離器22に関するその他の点については、第1〜第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0125】
[4.1.6. 燃料製造器]
燃料製造器20は、H
2O分離器22の第3フィード流路から排出されたオフガス(D
out)を原料として、炭化水素(例えば、メタン)を製造するためのものである。燃料製造器20の詳細については、第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0126】
[4.1.7. 貯蔵タンク]
貯蔵タンク28は、燃料製造器20から排出される炭化水素を貯蔵するためのものである。貯蔵タンク28の詳細については、第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0127】
[4.2. SOECシステム制御用プログラム]
本実施の形態に係るSOECシステム10dは、上述した手段に加えて、システムを制御するための制御手段をさらに備えている。また、制御手段には、本発明に係るSOECシステム制御用プログラムが格納されている。SOECシステム制御用プログラムは、具体的には、要求発電電力W
SETを取得した時に、予め設定された燃料利用率U
f,SETとなるように、原料流量V
CO2,SET、V
H2O,SET、及び電流密度Iを制御するためのプログラムである。
【0128】
本実施の形態に係るSOFCシステムは、アノードオフガス循環手段を備えていない。そのため、U
f,calの算出に際しては、検出されたV
CO2,SEP1をそのまま用いることができる。また、V
H2O+CO2,SEP2は、蒸発器18から供給される水流量V
H2O,SETと、第2パージ流路に排出されるCO
2流量V
CO2,SEP2(=V
CO2,SET×η
CO2,SEP2)の和を表す。本実施の形態に係るSOECシステム制御用プログラムに関するその他の点については、第3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0129】
[5. リバーシブルSOCシステム: アノード/カソードオフガス循環式]
[5.1. 構成]
図15に、本発明の第5の実施の形態に係るリバーシブルSOCシステムの模式図を示す。
図15において、リバーシブルSOC(R−SOC)システム10eは、アノード/カソードオフガス循環式のR−SOCシステムであって、リバーシブルSOC(R−SOC)40eと、第1CO
2分離器14と、第2CO
2分離器16と、蒸発器18と、H
2O分離器22と、燃料製造器20と、貯蔵タンク28と、第1調圧器30と、第2調圧器32、エジェクタとを備えている。すなわち、R−SOCシステム10eは、
図12に示すSOECシステム10cに対して、さらにエジェクタ34とアノードオフガス循環手段が付加されたものである。
【0130】
[5.1.1. R−SOC]
R−SOC40eは、
(a)カソード流路(第1ガス流路)に供給されたCO
2及びH
2Oを含む原料ガス(A
in)から合成ガスを生成させ、合成ガスを含むオフガス(A
out)を排出するSOECモードと、
(b)アノード流路(第1ガス流路)に供給された炭化水素を含む燃料ガス(A'
in)を用いて発電を行い、CO
2及びH
2Oを含むオフガス(A'
out)を排出するSOFCモードと
を切り替え可能なものからなる。
【0131】
R−SOC40eは、使用方法が異なるだけで、その構造は
図1に示すSOFC40aと同一である。すなわち、R−SOC40eは、さらに、改質器(図示せず)と、改質器内の温度T
refを検出するための温度検出手段46と、改質器内の圧力
Prefを検出するための圧力検出手段48とを備えている。
R−SOC40eに関するその他の点については、第1〜第4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0132】
[5.1.2. 第1CO
2分離器]
第1CO
2分離器14の第1パージ流路の出口は、第1流量計50a、及び第3三方弁(V3)36cを介して、第2CO
2分離器16の第2パージ流路の入口に接続されている。第3三方弁(V3)36cの残りの出口は、大気に接続されている。第1CO
2分離器14のその他の点については、第1〜第4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0133】
[5.1.3. 第2CO
2分離器]
第2CO
2分離器16の第2パージ流路の出口は、第4流量計50d、及び第1三方弁(V1)36aを介して、R−SOC40eの第1ガス流路の入口に接続されている。第1三方弁(V1)36aの残りの入口は、エジェクタ34の出口に接続されている。第2CO
2分離器16のその他の点については、第1〜第4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0134】
[5.1.4. 蒸発器]
蒸発器18の詳細については、第1〜第4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[5.1.5. H
2O分離器]
H
2O分離器22の第3フィード流路の出口は、第2三方弁(V2)36bを介して燃料製造器20の入口に接続されている。第2三方弁(V2)36bの残りの出口は、第2流量計50bを介して、エジェクタ34の吸引側の入口に接続されている。H
2O分離器22に関するその他の点については、第1〜第4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0135】
[5.1.6. 燃料製造器]
燃料製造器20の出口は、第1調圧器30を介して貯蔵タンク28の入口に接続されている。燃料製造器20に関するその他の点については、第1〜第4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[5.1.7. 貯蔵タンク]
貯蔵タンク28の出口は、第2調圧器32、及び第4開閉弁(V4)36dを介して、エジェクタ34の駆動側の入口に接続されている。貯蔵タンク28に関するその他の点については、第1〜第4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0136】
[5.1.8. 第1調圧器、第2調圧器]
第1調圧器30及び第2調圧器32は、炭化水素を貯蔵・放出する際に、炭化水素の圧力を増減するためのものである。例えば、R−SOC40eの内部圧力が高圧であり、貯蔵タンク28の内部圧力が低圧である場合、第1調圧器30としてエキスパンダ(減圧器)を用い、第2調圧器32としてコンプレッサ(昇圧器)を用いるのが好ましい。これにより、SOECモード時にシステム内で製造された高圧ガスを低圧で貯蔵できる。また、SOFCモード時には、所定の圧力に昇圧した状態で使用することができる。
逆に、R−SOC40eの内部圧力が低圧であり、貯蔵タンク28の内部圧力が高圧である場合、第1調圧器30としてコンプレッサを用い、第2調圧器32としてエキスパンダを用いるのが好ましい。
【0137】
[5.1.9. エジェクタ]
エジェクタ34は、貯蔵タンク28に貯蔵された炭化水素をR−SOC40eのアノード(SOFCモード時)に供給するためのものである。また、エジェクタ34は、A'
outから回収された未反応の燃料をR−SOC40eに戻すため、及びD
outに含まれるH
2Oを改質器に供給するためにも用いられる。
貯蔵タンク28の出口をエジェクタ34の駆動側に接続し、H
2O分離器22の第3フィード流路の出口をエジェクタ34の吸引側に接続する。この状態で、貯蔵タンク28から供給される炭化水素を駆動側のノズルから高圧で噴出させると、ノズル周囲の負圧によりH
2O分離器22のオフガス(D
out)が吸引される。
【0138】
[5.2. 使用方法]
[5.2.1. SOFCモード]
図16に、R−SOCシステム10eがSOFCモードにある時のガスの流れの模式図を示す。R−SOCシステム10eをSOFCモードで運転する場合には、第2CO
2分離器16、蒸発器18、及び燃料製造器20を休止状態とする。また、
(a)第1三方弁(V1)36aをエジェクタ34/R−SOC40e側に、
(b)第2三方弁(V2)36bをH
2O分離器22/エジェクタ34側に、
(c)第3三方弁(V3)36cを第1CO
2分離器14/大気側に、
それぞれ、切り替える。
【0139】
この状態から、第4開閉弁(V4)36dを開とすると、貯蔵タンク28から燃料が放出される。燃料は、第2調圧器32で減圧又は昇圧された後、エジェクタ34を介して、R−SOC40eに供給される。また、これと同時に、カソード流路(図示せず)に酸化剤ガスを供給する。その結果、R−SOC40eから電力を取り出すことができる。
オフガス(A'
out)は、第1CO
2分離器14でCO
2が分離され、H
2O分離器22でH
2Oが分離される。そのため、H
2O分離器22の第3フィード流路の出口から、高濃度の未反応燃料を含むオフガス(D
out)が排出される。D
outは、第2三方弁(V2)36bを介してエジェクタ34に吸引され、発電及び改質に再利用される。
【0140】
一方、H
2O分離器22の第3パージ流路に排出されたH
2Oを含む分離ガス(E
out)は、第1CO
2分離器14の第1パージ流路に送られ、CO
2のパージガスとして用いられる。その結果、第1CO
2分離器14の第1パージ流路の出口から、CO
2及びH
2Oを含む分離ガス(C
1out)が排出される。C
1outは、第3三方弁(V3)36cを介して大気に放出される。
【0141】
[5.2.2. SOECモード]
図17に、R−SOCシステム10eがSOECモードにある時のガスの流れの模式図を示す。R−SOCシステム10eをSOECモードで運転する場合には、
(a)第1三方弁(V1)36aを第2CO
2分離器16/R−SOC40e側に、
(b)第2三方弁(V2)36bをH
2O分離器22/燃料製造器20側に、
(c)第3三方弁(V3)36cを第1CO
2分離器14/第2CO
2分離器16側に、
それぞれ、切り替える。
【0142】
この状態から、第2CO
2分離器16の第2フィード流路にCO
2を含むガス(B
2in)を供給し、蒸発器18を作動させると、第2CO
2分離器16の第2パージ流路の出口から、CO
2及びH
2Oを含む分離ガス(C
2out)が排出される。C
2outを原料ガス(A
in)としてR−SOC40eの第1ガス流路に供給すると同時に、R−SOC40eに電力を供給すると、H
2O+CO
2の共電解が行われる。その結果、第1ガス流路の出口から、H
2及びCOを含むオフガス(A
out)が排出される。
【0143】
A
outは、第1CO
2分離器14でCO
2が分離され、H
2O分離器22でH
2Oが分離された後、燃料製造器20に送られる。燃料製造器20では、高濃度のH
2及びCOを含むオフガス(D
out)を用いて、炭化水素の製造が行われる。製造された炭化水素は、第1調圧器30で昇圧又は減圧された後、貯蔵タンク28に貯蔵される。
H
2O分離器22の第3パージ流路に排出されたH
2Oを含む分離ガス(E
out)は、第1CO
2分離器14の第1パージ流路に送られる。第1CO
2分離器14から排出されたCO
2、及びH
2O分離器22から排出されたH
2Oは、いずれも共電解に再利用される。
【0144】
[5.3. R−SOCシステム制御用プログラム]
本実施の形態に係るR−SOCシステム10eは、上述した手段に加えて、システムを制御するための制御手段をさらに備えている。また、制御手段には、本発明に係るR−SOCシステム制御用プログラムが格納されている。R−SOCシステム制御用プログラムは、具体的には、要求発電電力W'
SET、又は要求電解電力W
SETを取得した時に、予め設定された燃料利用率U'
f,SET、又はU
f,SETとなるように、燃料流量V
CH4,SET、又は原料流量V
CO2,SET、V
H2O,SET、及び電流密度Iを制御するためのプログラムである。
【0145】
図18に、本発明に係るR−SOCシステム制御用プログラムのフローチャートの一例を示す。本発明に係るR−SOCシステム制御用プログラムは、本発明に係るSOFCシステム制御用プログラムと、SOECシステム制御用プログラムの双方を備えており、選択されたモードに応じていずれか一方のプログラムを実行する。
【0146】
すなわち、まず、S41において、SOFCモードを選択するか否かが判断される。SOFCモードを選択する場合(S41:YES)、
図2のS1に進み、SOFCシステム制御用プログラムを実行する。また、SOECモードを選択する場合(S41:NO)、
図13のS21に進み、SOECシステム制御用プログラムを実行する。
【0147】
SOFC運転を終了させる場合(S13:YES)、又はSOEC運転を終了させる場合(S30:YES)には、
図18のS42に戻る。S42では、モード変更するか否かが判断される。モード変更がある場合(S42:YES)には、S41に戻り、モードを変えて運転を継続する。一方、モード変更がない場合(S42:NO)には、システムを停止させる。
【0148】
[6. 作用]
[6.1. アノードオフガス循環なしのSOFCシステム]
アノードオフガス燃焼方式では、燃料改質器により生成される可燃成分(CO、H
2、CH
4)は、SOFC発電、及びカソードオフガスを助燃空気とした燃焼により、燃料改質器における改質用熱源として利用される。高い改質器効率:(改質ガス中のH
2、COの低位発熱量[kW])/{(投入燃料CH
4の低位発熱量[kW])+(アノードオフガス中のH
2、CO、CH
4の低位発熱量[kW])}を確保するには、高転化率となる改質温度を維持すること、及びアノードオフガスからの可燃成分の燃焼熱量を低減することが必要である。
【0149】
また、高い発電効率を確保するためには、アノードオフガス燃焼による改質用熱量を必要最低限(水蒸気改質反応熱量+改質ガス及び燃焼ガスの顕熱変化量+外周放熱量)とし、改質器の内部熱収支を維持することにより、作動温度を一定とする必要がある。また、より多くの可燃成分がSOFC発電に利用されることが好ましい。
以上の理由から、SOFCにおける燃料利用率U'
fを予測し、セルスタック電流密度を調整することにより、U'
fを一定に制御することが必要不可欠となる。
【0150】
アノードオフガスからCO
2及びH
2Oを分離する第1CO
2分離器、及びH
2O分離器において、パージ流路の出口ガス流量を検出すると、設定されたガス分離率η
CO2,SEP1、η
H2O,SEPと、検出された出口ガス流量V
CO2,SEP1、V
H2O,SEPから、フィード流路に供給される分離ガス成分(CO
2、H
2O)の流入量を予測することができる。
一方、断熱平衡モデル等を用いて、改質ガスに含まれる各成分(H
2、CO、CO
2、H
2O、CH
4)の流量V
i,IN、改質器内部の温度T
ref及び圧力P
ref、並びに、改質原料(H
2O、CH
4)の流量の関係を予め関数化しておくと、T
ref及びP
refを検出することにより、V
i,INを予測することが可能となる。
【0151】
また、これらの検出量から、SOFCのアノードへ流入する燃料成分(H
2+CO)の合計流量:V
H2,IN+V
CO,INと、SOFCで利用された燃料流量:(V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1−V
CO2,IN)+(V
H2O,SEP/η
H2O,SEP−V
H2O,IN)を求めることができる。また、これらの比から、燃料利用率の推定値U'
f,calを推定することができる。
【0152】
さらに、燃料利用率の推定値U'
f,calと設定値U'
f,SETとの差が目標偏差ε
1以下となるように、SOFCの設定電流密度Iが増減される。また、発電電力の測定値W'
measと要求電力W'
SETとの差が目標偏差ε
2以下となるように、SOFCの燃料流量
VCH4,SET、及び水流量V
H2O,SUPが制御される。例えば、S/C比が2である場合、V
H2O,SUP/V
CH4,SET=2となるように、これらの流量が制御される。
これにより、適切な燃料利用率の設定が可能となり、改質器の内部熱収支を維持することができる。また、これによって高転化率の改質温度に制御することができ、より多くの可燃成分をSOFC発電用として利用することが可能となる。
【0153】
[6.2. アノードオフガス循環式SOFCシステム]
アノードオフガス循環方式では、SOFCで利用されなかった可燃成分(H
2、CO、CH
4等)に加えて、燃料改質用H
2Oを循環させ、改質用燃料として利用する。そのため、SOFCの燃料利用率を低く設定しつつ、システムの燃料利用率を1とすることができる。また、これによって、高い発電効率を得ることが可能となり、改質用の水タンクも不要となる。
【0154】
また、内部間接型SOFCの場合、改質反応とアノードにおける電気化学反応を別空間にて進行させつつ、隔壁を介した熱交換(発熱:電気化学反応/吸熱:水蒸気改質反応)が可能となる。これにより、循環ガス中の水蒸気量を低減しても、水蒸気量不足により発生するアノード上のカーボン析出を抑制することができる。また、隔壁熱伝導を介した直接熱交換により、SOFC発電に伴い発生する熱を有効利用することができる。そのため、電池冷却用のカソード空気量を低減し、発電効率を向上させることが可能となる。
【0155】
さらに、高い発電効率を確保するためには、アノードオフ循環ガスから、発電に伴い発生する生成物を除去(H
2Oは一部除去、CO
2はほぼ全量除去)しつつ、SOFCの燃料利用率を低く設定し、生成成分の濃度増加に起因する濃度分極によるセル電圧の増大を抑制することが必要となる。以上の理由から、SOFCにおける燃料利用率U'
fを予測し、セルスタック電流密度を調整することにより、U'
fを一定に制御することが必要不可欠となる。
【0156】
アノードオフガスからCO
2及びH
2Oを分離する第1CO
2分離器、及びH
2O分離器において、パージ流路の出口ガス流量を検出すると、設定されたガス分離率η
CO2,SEP1、η
H2O,SEPと、検出された出口ガス流量V
CO2,SEP1、V
H2O,SEPから、フィード流路に供給される分離ガス成分(CO
2、H
2O)の流入量を予測することができる。
一方、断熱平衡モデル等を用いて、改質ガスに含まれる各成分(H
2、CO、CO
2、H
2O、CH
4)の流量V
i,IN、改質器内部の温度T
ref及び圧力P
ref、並びに、改質原料(H
2O、CH
4)の流量の関係を予め関数化しておくと、T
ref及びP
refを検出することにより、V
i,INを予測することが可能となる。
【0157】
また、循環ガス中のCO
2+H
2O流量V
CO2+H2O,RCYは、設定されたガス分離率η
CO2,SEP1、η
H2O,SEPと、パージガス流量V
CO2,SEP1、V
H2O,SEPと、循環ガス全量V
RCYから算出することができる。なお、循環ガス中のCH
4は、改質器作動温度:650〜700℃において、1Dry%以下であるため、ゼロに設定することができる。
これにより、SOFCのアノードに流入する燃料成分(H
2+CO)の合計流量:V
H2,IN+V
CO,IN+V
H2+CO,RCYと、SOFCで利用された燃料流量:(V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1−V
CO2,IN−V
CO2,RCY)+(V
H2O,SEP/η
H2O,SEP−V
H2O,IN−V
H2O,RCY)を求めることができる。また、これらの比から、SOFCにおける燃料利用率の推定値U'
f,calを推定することができる。
【0158】
さらに、燃料利用率の推定値U'
f,calと設定値U'
f,SETとの差が目標偏差ε
1以下となるように、SOFCの設定電流密度Iが増減される。また、発電電力の測定値W'
measと要求電力W'
SETとの差が目標偏差ε
2以下となるように、SOFCの燃料流量
VCH4,SET、及び水流量V
H2O,SUP(=V
H2O,RCY)が制御される。例えば、S/C比が2である場合、V
H2O,RCY/V
CH4,SET=2となるように、これらの流量が制御される。
これにより、適切な燃料利用率の設定が可能となり、生成成分の濃度増加に起因する濃度分極によるセル電圧の増大を抑制することができる。
【0159】
[6.3. カソードオフガス循環なしのSOECシステム]
SOECシステムでは、電解用原料(H
2O、CO
2)と電力から合成ガスを生成させ、燃料製造器によりCH
4などの炭化水素系燃料を製造する。高い燃料製造効率を得るためには、必要電解エネルギーと電解用原料の予熱(蒸発潜熱、及び顕熱)を極力抑制するために、燃料利用率U
fを高く設定する必要がある。
また、高い合成ガス濃度(H
2、CO)を得るためには、第1CO
2分離器及びH
2O分離器を用いて、カソードオフガス中のH
2O、CO
2を除去する必要がある。
このため、SOECにおける燃料利用率U
fを予測し、セルスタック電流密度を調整することにより、U
fを一定に制御することが必要不可欠となる。
【0160】
カソードオフガスからCO
2及びH
2Oを分離する第1CO
2分離器、及びH
2O分離器において、パージ流路の出口ガス流量を検出すると、設定されたガス分離率η
CO2,SEP1、η
H2O,SEPと、検出された出口ガス流量V
CO2,SEP1、V
H2O,SEPから、フィード流路に供給される分離ガス成分(CO
2、H
2O)の流入量を予測することができる。
これにより、SOECのカソードに流入する原料成分(H
2O+CO
2)の合計流量:V
H2O,IN+V
CO2,INと、SOECで利用された原料流量:V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1+V
H2O,SEP/η
H2O,SEPを求めることができる。また、これらの比から、SOECにおける燃料利用率の推定値U
f,calを推定することができる。
【0161】
さらに、燃料利用率の推定値U
f,calと設定値U
f,SETとの差が目標偏差ε
1以下となるように、SOECの設定電流密度Iが増減される。また、電解電力の測定値W
measと要求電力W
SETとの差が目標偏差ε
2以下となるように、SOECの原料流量
VCO2,SET、及びV
H2O,SETが制御される。例えば、S/C比が3である場合、V
H2O,SET/V
CO2,SET=3となるように、これらの流量が制御される。
これにより、適切な燃料利用率の設定が可能となり、電解用原料の予熱(潜熱、及び顕熱)を極力抑制することで、高い燃料製造効率を得ることができる。
【0162】
[6.4. カソードオフガス循環式SOECシステム]
SOECシステムでは、電解用原料(H
2O、CO
2)と電力から合成ガスを生成させ、燃料製造器によりCH
4などの炭化水素系燃料を製造する。高い燃料製造効率を得るためには、必要電解エネルギーと電解用原料の予熱(蒸発潜熱、及び顕熱)を極力抑制するために、燃料利用率U
fを高く設定する必要がある。
【0163】
カソードオフガス循環式SOECシステムにおいて、第1CO
2分離器及びH
2O分離器を用いてカソードオフガスからCO
2、及びH
2Oを分離し、かつ、H
2O分離器から排出されるパージガス(H
2O)を用いて第1CO
2分離器から排出されるCO
2をパージすると、排出されたCO
2及びH
2Oを電解用原料として再利用することができる。また、パージガスを再利用することで、原料の予熱に必要な熱エネルギー(蒸発潜熱、及び顕熱)を抑制することができる。
また、SOECの燃料利用率を低く設定することで、電解反応により生成するガス成分(H
2、CO)の濃度増加に起因する濃度分極による電解電圧の増大を抑制し、必要電解エネルギーを低減することが可能となる。
【0164】
また、高い合成ガス濃度(H
2、CO)を得るためには、第1CO
2分離器、及びH
2O分離器によりカソードオフガス中のH
2O、及びCO
2を除去する必要がある。このため、SOECにおける燃料利用率U
fを予測し、セルスタック電流密度を調整することにより、U
fを一定に制御することが必要不可欠となる。
【0165】
カソードオフガスからCO
2及びH
2Oを分離する第1CO
2分離器、及びH
2O分離器において、パージ流路の出口ガス流量を検出すると、設定されたガス分離率η
CO2,SEP1、η
H2O,SEPと、検出された出口ガス流量V
CO2,SEP1、V
H2O,SEPから、フィード流路に供給される分離ガス成分(CO
2、H
2O)の流入量を予測することができる。
これにより、SOECのカソードに流入する原料成分(H
2O+CO
2)の合計流量:V
H2O,IN+V
CO2,IN(=V
CO2,SET/η
CO2,SEP2)と、SOECで利用された原料流量:V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1+V
H2O,SEP/η
H2O,SEPを求めることができる。また、これらの比から、SOECにおける燃料利用率の推定値U
f,calを推定することができる。
【0166】
さらに、燃料利用率の推定値U
f,calと設定値U
f,SETとの差が目標偏差ε
1以下となるように、SOECの設定電流密度Iが増減される。また、電解電力の測定値W
measと要求電力W
SETとの差が目標偏差ε
2以下となるように、SOECの原料流量
VCO2,SET、及びV
H2O,SETが制御される。例えば、S/C比が3である場合、V
H2O,SET/V
CO2,SET=3となるように、これらの流量が制御される。
これにより、適切な燃料利用率の設定が可能となり、電解用原料の予熱(潜熱、及び顕熱)を極力抑制することで、高い燃料製造効率を得ることができる。
【0167】
[6.5. R−SOCシステム]
アノードオフガスからCO
2及びH
2Oを分離する第1CO
2分離器、及びH
2O分離器において、パージ流路の出口ガス流量を検出すると、設定されたガス分離率η
CO2,SEP1、η
H2O,SEPと、検出された出口ガス流量V
CO2,SEP1、V
H2O,SEPから、フィード流路に供給される分離ガス成分(CO
2、H
2O)の流入量を予測することができる。
一方、断熱平衡モデル等を用いて、改質ガスに含まれる各成分(H
2、CO、CO
2、H
2O、CH
4)の流量V
i,IN、改質器内部の温度T
ref及び圧力P
ref、並びに、改質原料(H
2O、CH
4)の流量の関係を予め関数化しておくと、T
ref及びP
refを検出することにより、V
i,INを予測することが可能となる。
【0168】
また、循環ガス中のCO
2+H
2O流量V
CO2+H2O,RCYは、設定されたガス分離率η
CO2,SEP1、η
H2O,SEPと、パージガス流量V
CO2,SEP1、V
H2O,SEPと、循環ガス全量V
RCYから算出することができる。なお、循環ガス中のCH
4は、改質器作動温度:650〜700℃において、1Dry%以下であるため、ゼロに設定することができる。
これにより、SOFCのアノードに流入する燃料成分(H
2+CO)の合計流量:V
H2,IN+V
CO,IN+V
H2+CO,RCYと、SOFCで利用された燃料流量:(V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1−V
CO2,IN−V
CO2,RCY)+(V
H2O,SEP/η
H2O,SEP−V
H2O,IN−V
H2O,RCY)を求めることができる。また、これらの比から、SOFCにおける燃料利用率の推定値U'
f,calを推定することができる。
【0169】
さらに、燃料利用率の推定値U'
f,calと設定値U'
f,SETとの差が目標偏差ε
1以下となるように、SOFCの設定電流密度Iが増減される。また、発電電力の測定値W'
measと要求電力W'
SETとの差が目標偏差ε
2以下となるように、SOFCの燃料流量
VCH4,SET、及び水流量V
H2O,SUPが制御される。例えば、S/C比が2である場合、V
H2O,SUP/V
CH4,SET=2となるように、これらの流量が制御される。
これにより、適切な燃料利用率の設定が可能となり、生成成分の濃度増加に起因する濃度分極によるセル電圧の増大を抑制することができる。
【0170】
一方、カソードオフガスからCO
2及びH
2Oを分離する第1CO
2分離器、及びH
2O分離器において、パージ流路の出口ガス流量を検出すると、設定されたガス分離率η
CO2,SEP1、η
H2O,SEPと、検出された出口ガス流量V
CO2,SEP1、V
H2O,SEPから、フィード流路に供給される分離ガス成分(CO
2、H
2O)の流入量を予測することができる。
これにより、SOECのカソードに流入する原料成分(H
2O+CO
2)の合計流量:V
H2O,IN+V
CO2,IN(=V
CO2,SET/η
CO2,SEP2)と、SOECで利用された原料流量:V
CO2,SEP1/η
CO2,SEP1+V
H2O,SEP/η
H2O,SEPを求めることができる。また、これらの比から、SOECにおける燃料利用率の推定値U
f,calを推定することができる。
【0171】
さらに、燃料利用率の推定値U
f,calと設定値U
f,SETとの差が目標偏差ε
1以下となるように、SOECの設定電流密度Iが増減される。また、電解電力の測定値W
measと要求電力W
SETとの差が目標偏差ε
2以下となるように、SOECの原料流量
VCO2,SET、及びV
H2O,SETが制御される。例えば、S/C比が3である場合、V
H2O,SET/V
CO2,SET=3となるように、これらの流量が制御される。
これにより、適切な燃料利用率の設定が可能となり、電解用原料の予熱(潜熱、及び顕熱)を極力抑制することができ、高い燃料製造効率を得ることができる。
【0172】
[6.6. CO
2分離率の推定モデル]
CO
2分離材として第一元素系複合酸化物等(M
4AO
4+CO
2⇔M
2AO
3+M
2CO
3、M=Li
+、Na
+、K
+、Rb
+等、A=Si、Ti、Zr等)をフィード流路に充填したCO
2分離器では、少なくとも2台以上のCO
2分離器をバッチ作動させることで、連続的にアノードオフガスからCO
2を分離することができる。吸収したCO
2は、CO
2分離材温度≧700℃に設定することで、全吸収量の98%を放出することが可能となる。
【0173】
CO
2分離率は、分離材温度T
CO2の上昇と、分圧P
CO2の上昇により増大し、T
CO2、P
CO2の関数として与えることができる。そのため、98%以上のCO
2を放出したCO
2分離材のCO
2分離率η
CO2,SEP1を関数化(マップ化)しておくと、CO
2分離器フィードライン圧力P
CO2と、分離材温度T
CO2を検出することにより、CO
2分離率η
CO2,SEP1を推定することができる。
これにより、SOFC、SOEC、あるいはR−SOCの燃料利用率を予測し、目標の燃料利用率となるように制御することが可能となる。
【0174】
[6.7. H
2O分離率の推定モデル]
H
2O分離膜として、耐熱性のフッ素系樹脂の中空糸膜等を用いたH
2O分離器において、第3フィード流路に分離成分(H
2O)を含む混合ガスを供給すると、混合ガスからH
2Oが分離され、分離されたH
2Oは第3パージ流路に排出される。このような分離膜式のH
2O分離器において、混合ガスに含まれる各成分の透過係数が異なっているために、H
2O分離率は、フィード/パージ流路間の圧力差ΔPだけでなく、混合ガスの組成によっても異なる。
【0175】
例えば、圧力差ΔPが増大すると、第3フィード流路から第3パージ流路へのH
2Oの透過が促進されるため、H
2O分離率は増大する。また、設定されたH
2O/CO
2比を増加させると、第3フィード流路のH
2O分圧が上昇するため、H
2O分離率は増大する。さらに、燃料利用率U
f,SETを増加させると、第3フィード流路におけるH
2O分圧が低下するため、H
2O分離率は減少する。
【0176】
そのため、フィード/パージ流路間の圧力差ΔP、設定H
2O/CO
2比、及び設定燃料利用率U
f,SETの関係を関数化(マップ化)しておくと、ΔP、及びH
2O/CO
2比を検出することにより、H
2O分離率を推定することができる。
これにより、SOFC、SOEC、あるいは、R−SOCの燃料利用率を予測し、目標の燃料利用率となるように制御することが可能となる。
【0177】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。