【実施例1】
【0012】
以下、本発明に係る内燃機関のブローバイガス処理装置の実施例について、図面を用いて説明する。
図1〜
図7は、本発明に係る第1実施例の内燃機関のブローバイガス処理装置を示す図である。
【0013】
まず、構成を説明する。なお、
図1〜
図7において、左右前後方向は、運転席から見た車両の左右前後方向を表す。
【0014】
図1、
図2において、内燃機関としてのエンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に設けられたシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の上部に設けられたシリンダヘッドカバー4と、シリンダブロック2の下部に設けられたオイルパン5とを備えている。
【0015】
図1、
図6において、シリンダブロック2には、図示しないピストンを上下動自在に収容するシリンダ27が形成されている。また、シリンダブロック2には、ピストンの上下運動を回転運動に変換するクランク軸6等が収容されている。シリンダブロック2の下部には、クランク軸6を回転自在に支持するクランクケース部2Aが一体的に設けられている。
【0016】
クランクケース部2Aとオイルパン5との間には、
図4に示すようにクランク室24が形成されており、クランクケース部2Aは、シリンダ27の軸線方向において下方に向かうに従って車両の前後方向にスカート状に広がっている。
【0017】
図3において、シリンダヘッド3は、図示しない吸気カムを備えた吸気カム軸7と、図示しない排気カムを備えた排気カム軸8とを収容している。吸気カム軸7および排気カム軸8は、シリンダ27(
図6参照)の配列方向に沿って互いに平行に延びている。
【0018】
図1、
図2において、シリンダヘッド3の後面には吸気ポート29が形成されている。また、シリンダヘッド3の前面には排気ポート30が形成されている。吸気ポート29および排気ポート30は、吸気カム軸7および排気カム軸8の回転に伴って駆動される図示しない吸気バルブおよび排気バルブによって、図示しない燃焼室と連通状態もしくは非連通状態となる。
【0019】
図3において、吸気カム軸7の端部には吸気カムスプロケット9が設けられている。排気カム軸8の端部には排気カムスプロケット10が設けられている。クランク軸6の端部にはクランクスプロケット12が設けられている。
【0020】
吸気カムスプロケット9、排気カムスプロケット10およびクランクスプロケット12には、動力を伝達するタイミングチェーン11が巻き掛けられている。
【0021】
これにより、クランク軸6の回転は、クランクスプロケット12からタイミングチェーン11を介して吸気カムスプロケット9および排気カムスプロケット10に伝達され、吸気カム軸7および排気カム軸8が回転する。
【0022】
図1、
図2において、シリンダブロック2およびシリンダヘッド3の端部(エンジン1の右側面側)にはチェーンケース21が設けられている。チェーンケース21は、タイミングチェーン11を覆うとともに、シリンダブロック2とチェーンケース21との間でチェーン収容室22を形成している(
図3参照)。シリンダブロック2には、ボルト70が締結されるボルト用孔73が複数設けられている。チェーンケース21は、ボルト70によりシリンダブロック2およびシリンダヘッド3に固定される。チェーン収容室22の下部は、
図4に示すようにクランク室24に連通している。
【0023】
図1、
図6において、シリンダブロック2の後方側の側面にはオイルセパレータ17が形成されており、このオイルセパレータ17は、ブローバイガス中のオイルミストを分離する。
【0024】
オイルセパレータ17は、シリンダブロック2の側面に形成されたケース部40と、シリンダブロック2の側面に取付けられたカバー部材51とによってオイル分離室46を形成している。オイル分離室46は、シリンダブロック2の側面に形成された仕切壁45A、45B、45Cによって、4つのオイル分離室41、42、43、44に仕切られている。
【0025】
仕切壁45Aは、シリンダ27の軸線方向に延びており、クランク軸6の軸線方向において、ケース部40をオイル分離室41とオイル分離室42とに仕切る。仕切壁45Bは、シリンダ27の軸線方向と直交する方向に延びており、クランク軸6の軸線方向と直交する方向において、ケース部40をオイル分離室42とオイル分離室43とに仕切る。仕切壁45Cは、シリンダ27の軸線方向に延びており、クランク軸6の軸線方向において、ケース部40をオイル分離室43とオイル分離室44とを仕切る。
【0026】
オイル分離室41にはブローバイガス導入口41Aが形成されており、ブローバイガス導入口41Aは、シリンダブロック2に形成された連通路23を介してチェーン収容室22に連通している。連通路23のチェーン収容室22側には、連通路23の第1開口部61が開口している。シリンダブロック2のチェーン収容室22側には、第1開口部61を取り囲む筒状の第1ボス部62が設けられている。
【0027】
クランク室24からチェーン収容室22に入り込んだブローバイガスは、矢印A1で示すように、連通路23の第1開口部61からブローバイガス導入口41Aを通ってオイルセパレータ17のオイル分離室46に流入する。オイル分離室46に流入したブローバイガスは、矢印A2で示すように、オイル分離室46内のオイル分離室41、42、43、44を通過する過程でオイルが分離される。
【0028】
オイル分離室42の底面にはオイルドレン孔42Aが形成されている。シリンダブロック2にはオイルドレン通路20が形成されており、オイルドレン孔42Aは、オイルドレン通路20を通してオイルパン5に連通している。
【0029】
図6において、カバー部材51は、平板部52と、平板部52からケース部40に向かって突出する仕切壁53、54、55とを含んで構成される。カバー部材51は、ケース部40を閉止するようになっており、平板部52が図示しないボルトによってシリンダブロック2の側面に固定される。
【0030】
図1、
図6において、カバー部材51の仕切壁53は、ケース部40の仕切壁45Aに突き当てられており、オイル分離室41は、仕切壁53および仕切壁45Aによってオイル分離室42、43と仕切られる。
【0031】
カバー部材51の仕切壁54は、ケース部40の仕切壁45Bに突き当てられており、オイル分離室42は、仕切壁54および仕切壁45Bによってオイル分離室43と仕切られる。
【0032】
カバー部材51の仕切壁55は、ケース部40の仕切壁45Cに突き当てられており、オイル分離室44は、仕切壁55および仕切壁45Cによってオイル分離室43と仕切られる。
【0033】
仕切壁55には一対の連通孔55Aが形成されており、連通孔55Aは、オイル分離室43からオイル分離室44にブローバイガスを通過させる。カバー部材51は、衝突壁56を有し、衝突壁56は、平板部52からケース部40に向かって突出している。
【0034】
衝突壁56は、仕切壁55の連通孔55Aに対向するようにしてオイル分離室44に設置されており、衝突壁56には連通孔55Aを通してオイル分離室44に流入するブローバイガスが衝突する。すなわち、衝突壁56は、仕切壁55に対してブローバイガスの流れ方向下流に設けられる。
【0035】
また、クランク軸6の軸線方向と直交する方向(車両の前後方向)に対する衝突壁56の一側面は、仕切壁45Cに突き当てられていないので、衝突壁56に衝突したブローバイガスは、仕切壁45Cと衝突壁56との間の空間からオイル分離室44に流入する。
【0036】
したがって、仕切壁55の連通孔55Aを通ってオイル分離室43からオイル分離室44にブローバイガスが通過する際に、衝突壁56に高速でブローバイガスが衝突して、オイルが分離される。連通孔55Aを通ったブローバイガスを衝突壁56に衝突させるこのような構造は、仕切壁55だけでなく、残りの仕切壁53、54にも設けられている。
【0037】
オイル分離室44の上部にはPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ37が設けられており、PCVバルブ37は、オイル分離室44から図示しないブローバイガス排出管に流れるブローバイガス流量を調整する。オイルセパレータ17に流入したブローバイガスは、オイルセパレータ17内のオイル分離室41、42、43、44においてオイルが分離された後、エンジン1の吸入負圧によってPCVバルブ37を通過して吸い出され、吸気通路に導入される。
【0038】
図1において、シリンダブロック2は、オイルが流通するオイル通路26を備えており、このオイル通路26の一部は、連通路23の下方で連通路23と平行に延伸している。シリンダブロック2の後側の壁面は、オイル通路26の部分において後方に突出している。
【0039】
オイル通路26は、シリンダブロック2のオイル通路26のチェーン収容室22側に、第2開口部63として開口している。シリンダブロック2のオイル通路26のチェーン収容室22側には、筒状の第2ボス部64が設けられており、第2ボス部64は、第2開口部63を取り囲み、第1ボス部62の下部に連結されている。
【0040】
図4に示すように、本実施例のエンジン1は、シリンダブロック2に設けられた図示しないオイルジェットからタイミングチェーン11にオイルを噴射することで、チェーン収容室22においてタイミングチェーン11を潤滑している。
【0041】
このため、タイミングチェーン11が回転すると、タイミングチェーン11から飛散したオイルの一部は、連通路23の第1開口部61の中心に向かう。タイミングチェーン11から第1開口部61の中心に向かうオイルの飛散方向は、仮想線L4で示すように、タイミングチェーン11を巻き掛けるクランクスプロケット12の法線、かつ、後述するブローバイガス通路60の下端部の入口60Aの中心を通る直線となる。
【0042】
第1開口部61にオイルが入り込んだ場合、オイルがブローバイガスとともに連通路23を通ってオイルセパレータ17に入り込んでしまい、オイルセパレータ17のオイル分離性能を低下させてしまう。
【0043】
そこで、本実施例では、以下に詳細を説明するように、連通路23にオイルが入りにくくなるように第1ボス部62と第2ボス部64との相対位置を決定している。また、本実施例では、後述するブローバイガス通路60において、連通路23に入る前のブローバイガスに対してオイル分離作用が働くように構成している。
【0044】
図3、
図4、
図7において、シリンダブロック2におけるチェーン収容室22の外縁部には、チェーン収容室22を密閉するようにチェーンケース21と接合する第1外壁部66が形成されている。
【0045】
第1ボス部62の上部は、第1外壁部66の固定孔65と第2ボス部64とに挟まれる位置で第1外壁部66に連結されている。固定孔65には図示しないボルトが締結され、このボルトによりチェーンケース21がシリンダブロック2に固定される。
【0046】
このように、シリンダブロック2は、第2ボス部64、第1ボス部62および第1外壁部66を備えることで、第2ボス部64と第1ボス部62と第1外壁部66とに挟まれた第1空間67を形成する。
【0047】
第1空間67は、第2ボス部64、第1ボス部62および第1外壁部66におけるチェーンケース21との接合面から窪んだ溝状の空間である。本実施例では、第1空間67は、クランク軸6の軸方向視で、第2ボス部64を中心とする円弧状に形成されている。
【0048】
一方、
図5、
図7において、チェーンケース21の内面には筒状の第3ボス部91が設けられており、この第3ボス部91は、第2開口部63を塞ぐように第2ボス部64と接合する。チェーンケース21の内面におけるチェーン収容室22の外縁部には第2外壁部92が設けられており、この第2外壁部92は、チェーン収容室22を密閉するように第1外壁部66と接合する。
【0049】
チェーンケース21の内面には壁部94が形成されており、この壁部94は、第3ボス部91と第2外壁部92との間を連結し、第1ボス部62のタイミングチェーン11側を遮蔽するように第1ボス部62と接合する。
【0050】
したがって、チェーンケース21は、第3ボス部91、壁部94および第2外壁部92を備えることで、第3ボス部91と壁部94と第2外壁部92とに挟まれた第2空間93を形成する。
【0051】
第2空間93は、第3ボス部91、壁部94および第2外壁部92におけるシリンダブロック2との接合面から窪んだ溝状の空間である。本実施例では、第2空間93は、クランク軸6の軸方向視で、第3ボス部91を中心とする円弧状に形成されている。
【0052】
そして、チェーンケース21をシリンダブロック2に装着した状態では、
図7に示すように、第1空間67と第2空間93とが合わさることでブローバイガス通路60が形成される。ブローバイガス通路60は、チェーン収容室22から第1ボス部62の第1開口部61を経て連通路23にブローバイガスを通過させる通路である。ブローバイガス通路60は、第2ボス部64におけるタイミングチェーン11から遠い側の外周面を回り込んで第1ボス部62に至るように、円弧状に湾曲している。
【0053】
図7において、ブローバイガスの通過経路を矢印Dで示している。ブローバイガス通路60内のブローバイガスは、矢印Dで示すように、第1ボス部62の外周面に衝突した後、第1ボス部62を迂回するように第1開口部61側に回り込み、第1開口部61から連通路23に流入する。したがって、ブローバイガス通路60上で第1ボス部62が壁として作用し、第1ボス部62にブローバイガスを衝突させることができるため、ブローバイガスに含まれるオイルを分離することができる。
【0054】
図4において、第2ボス部64の外径D2は、第1ボス部62の外径D1より大きく形成されている。また、クランク軸6の軸方向視において、第2ボス部64は、第1ボス部62よりもクランク軸6から水平方向に離れた位置に配置されている。
【0055】
第1開口部61の中心を通る鉛直線を第1仮想線L1とし、第2開口部63の中心を通る鉛直線を第3仮想線L3とした場合、第3仮想線L3は、第1仮想線L1よりもクランク軸6から後方に距離Sだけ離れている。したがって、第2ボス部64は、第1ボス部62よりもクランク軸6から水平方向に距離Sだけ離れた位置に配置されている。
【0056】
また、第1開口部61の中心と第2開口部63の中心とを通る直線を第2仮想線L2とした場合、この第2仮想線L2は、第1仮想線L1に対して角度θ1をなしており、下方に向かって後方側に傾いている。
【0057】
ここで、ブローバイガス通路60の入口60Aから離れた上部は、第2仮想線L2と平行に延伸しているため、仮想線L4(
図3参照)で示すオイル飛散方向に対して大きな角度で交差する。
【0058】
図3において、シリンダブロック2のチェーン収容室22側には、タイミングチェーンテンショナ71と、タイミングチェーンガイド72とが設けられている。タイミングチェーンテンショナ71はタイミングチェーン11に後方から接しており、タイミングチェーンガイド72はタイミングチェーン11に前方から接している。チェーンアジャスタ74は、油圧によりタイミングチェーンテンショナ71をタイミングチェーン11に押しつけることで、タイミングチェーン11の張力を調整する。タイミングチェーンガイド72は、タイミングチェーン11の通過位置を案内している。
【0059】
仮想線L4は、前述した通り、クランクスプロケット12の法線、かつ、ブローバイガス通路60の下端部の入口60Aの中心を通る直線であり、連通路23の第1開口部61の中心に向かうオイルの飛散方向である。
【0060】
クランクスプロケット12からブローバイガス通路60の入口60Aに向かって飛散したオイルは、矢印Bで示すように、チェーンアジャスタ74に衝突して落下する。
【0061】
図4において、シリンダブロック2には、クランク軸6を回転自在に支持するクランク軸支持部77が形成されており、このクランク軸支持部77の内部には図示しないオイル通路が形成されている。クランク軸支持部77は、シリンダブロック2の端部の壁面よりも厚肉に形成されており、シリンダブロック2の端部の壁面から膨出している。
【0062】
シリンダブロック2には、シリンダブロック2の端部の壁面から半円状に膨出する上流側オイル通路部78が形成されており、この上流側オイル通路部78の内部にはオイル通路が形成されている。上流側オイル通路部78はクランク軸支持部77と第2ボス部64とを連絡している。
【0063】
上流側オイル通路部78の内部のオイル通路は、クランク軸支持部77の内部のオイル通路と、第2ボス部64のオイル通路26(
図1参照)とに連通している。
【0064】
さらに、シリンダブロック2には、シリンダブロック2の端部の壁面から膨出するオイル通路部76が形成されており、このオイル通路部76の内部には図示しないオイル通路が形成されている。オイル通路部76の内部のオイル通路は、シリンダブロック2の内部の図示しないオイル通路とクランク軸支持部77の内部のオイル通路部とを連通している。
【0065】
シリンダブロック2の内部のオイル通路からオイル通路部76の内部のオイル通路に圧送されたオイルは、矢印Cで示すように、クランク軸支持部77の内部のオイル通路部を通って上流側オイル通路部78の内部のオイル通路に流入し、この上流側オイル通路部78から第2ボス部64のオイル通路26に供給される。
【0066】
また、上流側オイル通路部78の一部79は、チェーンアジャスタ74(
図3参照)が取り付けられるチェーンアジャスタ取付部75に連絡されており、上流側オイル通路部78の内部のオイルは、チェーンアジャスタ取付部75を経てチェーンアジャスタ74に供給される。
【0067】
本実施例において、上流側オイル通路部78およびクランク軸支持部77は、シリンダブロック2の壁面から膨出しているため、シリンダブロック2の壁面を補強する補強材としても機能する。そして、上流側オイル通路部78は、クランク軸支持部77と第2ボス部64とを連絡しているため、上流側オイル通路部78は、第2ボス部64を介して第1ボス部62の周辺の剛性を高めることができる。
【0068】
以上説明したように、本実施例において、シリンダブロック2は、連通路23のチェーン収容室22側に開口する第1開口部61を取り囲む第1ボス部62と、オイル通路26のチェーン収容室22側に開口する第2開口部63を取り囲み、第1ボス部62の下部に連結された第2ボス部64と、チェーン収容室22の外縁部に形成され、チェーン収容室22を密閉するようにチェーンケース21と接合する第1外壁部66と、を有している。
【0069】
また、チェーンケース21は、第2開口部63を塞ぐように第2ボス部64と接合する第3ボス部91と、チェーン収容室22の外縁部に形成され、チェーン収容室22を密閉するように第1外壁部66と接合する第2外壁部92と、第3ボス部91と第2外壁部92との間を連結し、第1ボス部62のタイミングチェーン11側を遮蔽するように第1ボス部62と接合する壁部94と、を有している。さらに、第1ボス部62の上部は、第1外壁部66の固定孔65と第2ボス部64とに挟まれる位置で第1外壁部66に連結されている。
【0070】
そして、シリンダブロック2における第2ボス部64と第1ボス部62と第1外壁部66とに挟まれた第1空間67と、チェーンケース21における第3ボス部91と壁部94と第2外壁部92とに挟まれた第2空間93とが合わさることで、チェーン収容室22から連通路23にブローバイガスが通過するブローバイガス通路60が形成される。
【0071】
これにより、連通路23の第1開口部61を取り囲む第1ボス部62の下方に、第2ボス部64および第3ボス部91が位置しているため、タイミングチェーン11から飛散して連通路23の第1開口部61に向かうオイルは第2ボス部64および第3ボス部91に衝突して流下する。したがって、タイミングチェーン11から飛散して連通路23の第1開口部61に向かうオイルを第2ボス部64および第3ボス部91によって遮ることができ、オイルが連通路23に侵入することを抑制できる。
【0072】
また、ブローバイガス通路60を通過するブローバイガスに対して、第1ボス部62の外周面が衝突壁として機能するため、第1ボス部62にブローバイガスが衝突することでブローバイガスに含まれるオイルを分離することができる。
【0073】
また、第1ボス部62が第2ボス部64と第1外壁部66とに連結されたことで第1ボス部62の剛性を高めることができるので、クランク軸6の回転による振動を受けた際に第1ボス部62が変形することを抑制できる。このため、第1ボス部62の変形により第1ボス部62と第3ボス部91との接合面に隙間が生じてブローバイガスが漏れることを防止できる。したがって、オイル分離性能を向上させることができる。
【0074】
また、第1外壁部66と第1ボス部62と第2ボス部64とによってブローバイガス通路60の第1空間67が形成されており、第2外壁部92と壁部94と第3ボス部91とによってブローバイガス通路60の第2空間93が形成されているため、新たに部品を追加することなくブローバイガス通路60を形成でき、ブローバイガス通路60においてブローバイガスからオイルを分離できる。この結果、新たに部品を追加することなくオイル分離性能を向上させることができる。
【0075】
本実施例では、第2ボス部64の外径D2が第1ボス部62の外径D1より大きく形成されている。
【0076】
これにより、タイミングチェーン11から飛散して連通路23の第1開口部61に直線的に向かうオイルの大半を、第1ボス部62よりも外径の大きな第2ボス部64に衝突させることができる。このため、第1ボス部62よりも外径の大きな第2ボス部64によって、タイミングチェーン11からブローバイガス通路60に向かって飛散するオイルを効果的に遮ることができる。
【0077】
本実施例では、クランク軸6の軸方向視において、第2ボス部64は、第1ボス部62よりもクランク軸6から水平方向に離れた位置に配置される。
【0078】
これにより、ブローバイガス通路60の下端部の入口60Aがクランク軸6から水平方向に離れる方向に配置されるため、ブローバイガス通路60の入口60Aに到達したオイルを第1外壁部66に衝突させて流下させることができ、ブローバイガス通路60の内部にオイルを侵入しにくくできる。
【0079】
また、ブローバイガス通路60が、第2ボス部64を中心に円弧状に湾曲し、長く延伸する形状になるため、ブローバイガス通路60の内部に僅かにオイルが入り込んだ場合であっても、このオイルを第1開口部61に到達しにくくすることができる。
【0080】
本実施例では、タイミングチェーン11を巻き掛けるクランクスプロケット12の法線、かつ、ブローバイガス通路60の下端部の入口60Aの中心を通る直線となる仮想線L4上であって、ブローバイガス通路60とクランク軸6との間に、チェーンアジャスタ74が配置される。
【0081】
これにより、クランクスプロケット12の位置からブローバイガス通路60の入口60Aに向かって飛散するオイルをチェーンアジャスタ74によって遮ることができ、ブローバイガス通路60に直接的にオイルが侵入することを抑制できる。
【0082】
本実施例では、シリンダブロック2に、クランク軸6を回転自在に支持するクランク軸支持部77と、このクランク軸支持部77と第2ボス部64とを連絡する上流側オイル通路部78とが形成され、上流側オイル通路部78の一部79と、チェーンアジャスタ74が取り付けられるチェーンアジャスタ取付部75とが連絡されている。
【0083】
これにより、第1ボス部62の下部に連結されている第2ボス部64を、上流側オイル通路部78を介してクランク軸支持部77およびチェーンアジャスタ取付部75で支持することができる。したがって、第1ボス部62の周辺の剛性を高めることができ、クランク軸6の回転による振動が第1ボス部62に伝達された際に、第1ボス部62が変形することを抑制できる。また、第1ボス部62の変形により第1ボス部62と第3ボス部91との接合面に隙間が生じてブローバイガスが漏れることを防止できる。
【0084】
この結果、ブローバイガスが第1ボス部62と第3ボス部91との接合面を通って第1開口部61からチェーン収容室22に漏れることを防止でき、ブローバイガスのオイル分離室46側への排出性能を高めることができる。
【0085】
図8、
図9、
図10は、本発明に係る第2実施例の内燃機関のブローバイガス処理装置を示す図であり、第1実施例と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
図8、
図9、
図10において、左右前後方向は、運転席から見た車両の左右前後方向を表す。
【0086】
図9、
図10において、シリンダブロック2は、ブローバイガス通路60における第1空間67に第1隔壁部81を有しており、この第1隔壁部81は、ブローバイガス通路60を横切るように第2ボス部64と第1外壁部66とを連結している。
【0087】
図8、
図10において、チェーンケース21は、ブローバイガス通路60における第2空間93に第2隔壁部101、102を有しており、この第2隔壁部101、102は、第1隔壁部81とは接触せず、ブローバイガス通路60を横切るように第3ボス部91と第2外壁部92とを連結している。
【0088】
本実施例では、第2隔壁部101がブローバイガス通路60の第2空間93における第1隔壁部81より上流側に配置されており、第2隔壁部102がブローバイガス通路60の第2空間93における第1隔壁部81より下流側に配置されている。
【0089】
したがって、ブローバイガス通路60において、ブローバイガスは、矢印Eで示すように、第2隔壁部101、第1隔壁部81、第2隔壁部102を順次迂回するように大きく向きを変えて流れる。
【0090】
このため、ブローバイガス通路60におけるブローバイガスの経路長を長くすることができる。したがって、ブローバイガス通路60をいわゆるラビリンス式のオイル分離構造にすることができる。
【0091】
以上説明したように、本実施例において、シリンダブロック2は、ブローバイガス通路60における第1空間67に、ブローバイガス通路60を横切るように第2ボス部64と第1外壁部66とを連結する第1隔壁部81を有する。
【0092】
また、チェーンケース21は、ブローバイガス通路60における第2空間93に、第1隔壁部81とは接触せず、ブローバイガス通路60を横切るように第3ボス部91と第2外壁部92とを連結する少なくとも1つの第2隔壁部101、102を有する。
【0093】
これにより、ブローバイガス通路60において、ブローバイガスが第1隔壁部81および第2隔壁部101、102を迂回するように流れ方向を変えながら長い距離を移動するため、より多くのオイルをブローバイガスから分離することができる。また、ブローバイガスがブローバイガス通路60を通過する間に第2隔壁部101、第1隔壁部81、第2隔壁部102に順次衝突することで、ブローバイガスに含まれるオイルを分離することができ、オイル分離性能を向上させることができる。
【0094】
また、第1隔壁部81によって第2ボス部64と第1外壁部66とを連結したことで第2ボス部64の剛性を高めることができ、第2隔壁部101、102によって第3ボス部91と第2外壁部92とを連結したことで第2ボス部64の剛性を高めることができる。このため、クランク軸6の振動が第2ボス部64に作用した際に第2ボス部64と第3ボス部91との接合面に隙間が生じてブローバイガスが漏れることを防止できる。
【0095】
図11、
図12は、本発明に係る第3実施例の内燃機関のブローバイガス処理装置を示す図であり、第1実施例および第2実施例と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
図11、
図2において、左右前後方向は、運転席から見た車両の左右前後方向を表す。
【0096】
図11、
図12において、チェーンケース21は、ブローバイガス通路60における第2空間93に遮蔽壁103を有している。遮蔽壁103は、ブローバイガス通路60を横切るように第3ボス部91と第2外壁部92とを連結し、かつ、ブローバイガス通路60を遮蔽するように第1ボス部62と接合している。
【0097】
遮蔽壁103には、ブローバイガスが通過する複数の通過孔103Aが設けられている。通過孔103Aは、遮蔽壁103における第1ボス部62との接合面から窪んだ溝として、切削加工等により形成されており、遮蔽壁103と第1ボス部62とが接合することで小径の孔状の通路となる。遮蔽壁103に通過孔103Aを設けたことで、通過孔103Aにおいてブローバイガス通路60の流路が狭められる。このため、ブローバイガス通路60において、ブローバイガスは、矢印Fで示すように、遮蔽壁103の通過孔103Aを通過する際に流速が高められ、高速で壁部94に衝突する。したがって、ブローバイガス通路60をいわゆるインパクタ式のオイル分離構造にすることができる。
【0098】
以上説明したように、本実施例において、チェーンケース21は、ブローバイガス通路60における第2空間93に、ブローバイガス通路60を横切るように第3ボス部91と第2外壁部92とを連結し、かつ、ブローバイガス通路60を遮蔽するように第1ボス部62と接合する遮蔽壁103を有している。また、遮蔽壁103に、ブローバイガスが通過する通過孔103Aが設けられている。
【0099】
これにより、遮蔽壁103の通過孔103Aを通過することでブローバイガスの流速が高められ、高速のブローバイガスがチェーンケース21の第2外壁部92に衝突することで、ブローバイガスに含まれるオイルを効率的に分離することができ、オイル分離性能を向上させることができる。なお、通過孔103Aは、遮蔽壁103に設けることに限定されず、第1ボス部62に設けられていてもよい。
【0100】
また、遮蔽壁103によって第3ボス部91の剛性を高めることができるので、クランク軸6の振動を受けた際に第3ボス部91と第1ボス部62との合わせ面に隙間が生じることを防止でき、ブローバイガスが漏れることを防止できる。
【0101】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。