【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に関して鋭意検討した結果、廃棄物・副産物を利用して合成したケイ酸マグネシウム水和物及びハイドロガーネット系水和物を使用することで、セメント・コンクリートの耐硫酸性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ケイ酸マグネシウム水和物とハイドロガーネット系水和物を含むセメント・モルタル・コンクリート用の混和材を提供するものである。
本発明の混和材は、ケイ酸マグネシウム水和物とハイドロガーネット系水和物を含み、その他の無機酸化物又はその水和物を含んでいてもよい。本発明の混和材は、主に結晶性物質からなる固体であり、含有される前記ケイ酸マグネシウム水和物及びハイドロガーネット系水和物もまた、結晶性物質である。
【0009】
ケイ酸マグネシウム水和物は、酸化マグネシウムと酸化珪素と水とが結合した結晶性の固体物質であり、(xMgO・ySiO
2・zH
2O・+α)の組成で表される。前記組成の「+α」は、酸化マグネシウムと酸化珪素以外の無機酸化物が含有されていてもよいことを表す。より詳しくは、化学組成がaMgO・bAl
2O
3・cSiO
2・dNa
2O・eK
2O・fFe
2O
3・gH
2O(1≦a≦6,0≦b≦2,1≦c≦4,0≦d≦1,0≦e≦1,0≦f≦1,0<g≦8)で表される化合物である。具体例としては、2MgO・Al
2O
3・SiO
2・2H
2O(M
2ASH
2)、(Mg
3−x,Al
x)(Si
2−y,Al
y)O
5(OH)
4 (0≦x≦1,0≦y≦1)で表されるアメス石(Amesite)又はカオリナイト−リザード石系鉱物、Mg
3Si
4O
10(OH)
2で表される滑石(タルク)、(Mg,Fe)
6Si
4O
10(OH)
8で表されるアンチゴライトや(Mg,Al)
5Si
8(OH)
2(OH
2)4H
2Oで表されるセピオライト等が挙げられる。ケイ酸マグネシウム水和物は、上記のうち複数を含んでも良い。
好ましいケイ酸マグネシウム水和物は、2MgO・Al
2O
3・SiO
2・2H
2O(M
2ASH
2)である。
【0010】
ハイドロガーネット系水和物は、酸化カルシウムと酸化アルミニウムと水とが結合した結晶性の固体物質であり、(xCaO・yAl
2O
3・zH
2O・+α)の組成で表される。前記組成の「+α」は、酸化カルシウムと酸化アルミニウム以外の無機酸化物が含有されていてもよいことを表す。より詳しくは、CaO、Al
2O
3、MgO、Fe
2O
3、SiO
2、H
2Oを構成成分とするガーネット構造を有する水和物である。具体例としては、3CaO・Al
2O
3・(3−x)SiO
2・(2x)H
2O(0<x≦3)又は、Ca
3Al
2(SiO
4)
3−x(OH)
4x(0<x≦3)で表される化合物である。より具体的には3CaO・Al
2O
3・6H
2O(C
3AH
6)、3CaO・Al
2O
3・SiO
2・4H
2O(C
3ASH
4)、3CaO・Al
2O
3・2SiO
2・2H
2O(C
3AS
2H
2)、3CaO・(Al,Fe)O・2SiO
2・4H
2O)等が挙げられる。好ましいハイドロガーネット系水和物は、3CaO・Al
2O
3・6H
2Oである。
【0011】
本発明においては、ケイ酸マグネシウム水和物とハイドロガーネット系水和物の混和材中の存在量は、XRDを使用して、混和材中に含まれる各成分の結晶相の面積比を測定することによって近似的に求められる。
【0012】
本発明の混和材中に含まれるケイ酸マグネシウム水和物のXRDで測定される結晶相のピーク面積は、混和材中、3〜60%が好ましく、4〜50%がより好ましく、5〜25%がさらに好ましい。
本発明の混和材中に含まれるハイドロガーネット系水和物のXRDで測定される結晶相のピーク面積は、混和材中、3〜60%が好ましく、5〜50%がより好ましく、15〜45%がさらに好ましい。
本発明の混和材中に含まれるケイ酸マグネシウム水和物とハイドロガーネット系水和物のXRDで測定される結晶相のピーク面積比は、0.1〜10が好ましく、0.2〜5がより好ましく、0.5〜4がさらに好ましい。
【0013】
本発明の混和材に含まれる各結晶相のピーク面積は、以下の手順で求めることができる。すなわち、第一の工程として、混和材のXRDパターン中の各ピークについて結晶相・結晶面を同定する。次に第二工程として、第一工程で同定した各ピークとバックグラウンドのハローパターンとの接点を低角度側と高角度側とでそれぞれ決定する。続く第三工程では、低角度側の接点の角度(2θ)から高角度側の接点の角度(2θ)までX線回折強度を積分し、該積分値からバックグラウンドを高角度側の接点の角度(2θ)から低角度側の接点の角度(2θ)まで積分した値を差し引いて、結晶相のピーク面積とする。
図1に、測定されたXRDパターンにおいて結晶相のピーク面積を導出する模式図を示す。
なお、市販のX線回折用のフィティング解析ソフトウェア(例えばTOPAS:ブルカー・エイエックスエス株式会社製 など)を用い、ピークを精密化して算出したピーク面積の値を用いてもよい。
【0014】
本発明の混和材には、Al
2O
3が含有される。Al
2O
3は、ハイドロガーネット系水和物の必須成分であるが、ケイ酸マグネシウム水和物、又はその他の成分において含有されていてもよい。混和材中のAl
2O
3の含有量は、結晶水及び未燃炭素を除いた、鉱物の総量として1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、10〜15質量%がさらに好ましい。このような範囲でAl
2O
3を含む混和材であれば、製造時に廃棄物・産業副産物を有効利用することができる。なお、水和物から結晶水及び未燃炭素を除去する方法は特に限定されないが、例えばJIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」に記載の方法に従えば良い。具体的には、950±25℃で15分間の加熱と質量の計量とを強熱前後の質量差が0.0005g未満となるまで行う。Al
2O
3含有量は、JIS R 5202:2010「セメントの化学分析方法」に記載の方法に従って定量することができる。
【0015】
本発明の混和材は、固体中に、ケイ酸マグネシウム水和物とハイドロガーネット系水和物以外の結晶性無機酸化物又はその水和物を一種以上、含むことができる。結晶性無機酸化物又はその水和物の例として、トバモライト(5CaO・6SiO
2・5H
2O)、ゾノトライト、ジャイロライト、C
3SH
1.5、C
5S
2H等の珪酸カルシウム水和物、ブルーサイト(Mg(OH)
2)、消石灰、炭酸カルシウム、ドロマイト等が挙げられる。このような結晶性無機酸化物水和物のXRDで測定される結晶相の合計面積は、混和材中、37〜94%であり、60〜80%が好ましい。本発明の混和材は、それ以外に非晶質性無機酸化物又はその水和物を一種以上、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で含んでいてもよい。