(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
デッキプレートと、前記デッキプレートの下面に溶接されたウェブを有する横リブと、前記ウェブを貫通して延びかつ一対の側壁部が前記デッキプレートおよび前記ウェブに溶接されたUリブと、を有する鋼床版において、前記Uリブ内に配置されて使用される押圧装置の制御装置であって、
前記押圧装置は、
本体部と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に移動できるように前記本体部を支持する支持部と、
前記本体部から一方の側壁部に向かって移動できるように前記本体部に支持される押圧部材と、
前記押圧部材が前記側壁部を前記Uリブの外側に向かって押圧するように前記押圧部材を駆動する第1駆動装置と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に沿って前進および後退するように前記支持部を駆動する第2駆動装置と、
前記押圧部材の前記外側への変位量を検出する第1検出装置と、
前記押圧部材に加わる荷重を検出する第2検出装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1駆動装置を制御して、前記押圧部材を移動させて前記側壁部に接触させるとともに、前記押圧部材が前記側壁部に接触した位置を基準位置として、前記基準位置からさらに前記押圧部材を移動させる負荷工程を開始する、第1の押圧制御と、
前記第1の押圧制御中に、前記第2検出装置によって検出される前記荷重が予め設定された所定荷重に達する前に前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が予め設定された目標変位量に達した場合、前記Uリブと前記ウェブとが交差していない非交差位置において前記押圧部材による負荷工程が完了したと判別し、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を終了させるとともに、前記押圧部材を前記一方の側壁部から離れるように移動させる除荷工程を実行し、その後、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を予め設定された第1前進距離前進させる、第1の前進制御と、
前記第1の押圧制御中に、前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達する前に前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達した場合、前記Uリブと前記ウェブとが交差している交差位置において前記押圧部材による前記負荷工程が実行されていると判別し、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を停止するとともに前記除荷工程を実行し、その後、前記非交差位置において前記負荷工程が実行されるように、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を移動させる、位置調整制御と、
を行う、押圧装置の制御装置。
前記第3の押圧制御中に、前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達する前に前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達したと判別されるまで、前記第2の後退制御および前記第3の押圧制御を繰り返し行い、
前記第3前進距離は、前記位置調整制御中における前記本体部の後退距離の合計よりも大きく設定される、請求項6に記載の押圧装置の制御装置。
前記Uリブの長さ方向を前後方向と定義し、前記一対の側壁部において、基準領域Rb、前記基準領域Rbよりも後方の後方領域Rr、および前記基準領域Rbよりも前方の前方領域Rfを、前記ウェブの板厚Tを用いて下記のように定義した場合に、
前記負荷工程において前記押圧部材が基準領域Rbに接触しないように後方領域Rrの少なくとも一部または前方領域Rfの少なくとも一部を押圧できるように、前記位置調整制御を行う、請求項1から7のいずれかに記載の押圧装置の制御装置。
基準領域Rb:前記ウェブの板厚中心線から後方に0.5Tの位置よりも前方でかつ前記板厚中心線から前方に0.5Tの位置よりも後方の領域。
後方領域Rr:前記板厚中心線から後方に0.5Tの位置よりも後方でかつ前記板厚中心線から後方に2.5Tの位置よりも前方の領域。
前方領域Rf:前記板厚中心線から前方に0.5Tの位置よりも前方でかつ前記板厚中心線から前方に2.5Tの位置よりも後方の領域。
デッキプレートと、前記デッキプレートの下面に溶接されたウェブを有する横リブと、前記ウェブを貫通して延びかつ一対の側壁部が前記デッキプレートおよび前記ウェブに溶接されたUリブと、を有する鋼床版において、前記Uリブ内に配置されて使用される押圧装置であって、
本体部と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に移動できるように前記本体部を支持する支持部と、
前記本体部から一方の側壁部に向かって移動できるように前記本体部に支持される押圧部材と、
前記押圧部材が前記側壁部を前記Uリブの外側に向かって押圧するように前記押圧部材を駆動する第1駆動装置と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に沿って前進および後退するように前記支持部を駆動する第2駆動装置と、
前記押圧部材の前記外側への変位量を検出する第1検出装置と、
前記押圧部材に加わる荷重を検出する第2検出装置と、
請求項1から8のいずれかに記載の制御装置と、
を備える、押圧装置。
デッキプレートと、前記デッキプレートの下面に溶接されたウェブを有する横リブと、前記ウェブを貫通して延びかつ一対の側壁部が前記デッキプレートおよび前記ウェブに溶接されたUリブと、を有する鋼床版において、前記Uリブ内に配置されて使用される押圧装置を制御する方法であって、
前記押圧装置は、
本体部と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に移動できるように前記本体部を支持する支持部と、
前記本体部から一方の側壁部に向かって移動できるように前記本体部に支持される押圧部材と、
前記押圧部材が前記側壁部を前記Uリブの外側に向かって押圧するように前記押圧部材を駆動する第1駆動装置と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に沿って前進および後退するように前記支持部を駆動する第2駆動装置と、
前記押圧部材の前記外側への変位量を検出する第1検出装置と、
前記押圧部材に加わる荷重を検出する第2検出装置と、
を備え、
前記制御方法は、
前記第1駆動装置を制御して、前記押圧部材を移動させて前記側壁部に接触させるとともに、前記押圧部材が前記側壁部に接触した位置を基準位置として、前記基準位置からさらに前記押圧部材を移動させる負荷工程を開始する、第1の押圧制御ステップと、
前記第1の押圧制御ステップ中に、前記第2検出装置によって検出される前記荷重が予め設定された所定荷重に達する前に前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が予め設定された目標変位量に達した場合、前記Uリブと前記ウェブとが交差していない非交差位置において前記押圧部材による負荷工程が完了したと判別し、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を終了させるとともに、前記押圧部材を前記一方の側壁部から離れるように移動させる除荷工程を実行し、その後、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を予め設定された第1前進距離前進させる、第1の前進制御ステップと、
前記第1の押圧制御ステップ中に、前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達する前に前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達した場合、前記Uリブと前記ウェブとが交差している交差位置において前記押圧部材による前記負荷工程が実行されていると判別し、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を停止するとともに前記除荷工程を実行し、その後、前記非交差位置において前記負荷工程が実行されるように、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を後退させる、位置調整制御ステップと、
を備える、押圧装置の制御方法。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁等の土木構造物において、鋼床版が用いられている。
図1は、鋼床版を備えた橋梁の一例を示す図である。なお、
図1においては、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示している。X方向は橋梁1の長さ方向を示し、Y方向は橋梁1の幅方向を示し、Z方向は鉛直方向を示す。以下の説明では、橋梁1の長さ方向を前後方向ともいい、橋梁1の幅方向を、左右方向ともいう。
【0003】
図1に示す橋梁1は、鋼床版2を有している。
図2は、鋼床版2の一部を斜め下方から見た図である。なお、
図2においても、
図1と同様に、X方向、Y方向およびZ方向を示している。
【0004】
図1および
図2を参照して、鋼床版2は、デッキプレート3と、複数の主桁4(
図1参照)と、複数の横リブ5と、複数の縦リブ6とを有している。デッキプレート3、主桁4、横リブ5および縦リブ6はそれぞれ、鋼材からなる。
【0005】
図1を参照して、デッキプレート3は、平板形状を有する。デッキプレート3の表面3aは、舗装材7によって舗装されている。舗装材7としては、例えば、アスファルトまたはコンクリート等の種々の材料を用いることができる。
【0006】
主桁4は、Y−Z平面に平行な断面において、例えばI字形状を有している。主桁4は、橋梁1の長さ方向に延びるように設けられている。主桁4の上端部は、例えば、デッキプレート3の裏面3bに溶接されている。
【0007】
図1および
図2を参照して、横リブ5は、X−Z平面に平行な断面において、例えば逆T字形状を有している。横リブ5は、橋梁1の幅方向に延びるように設けられている。横リブ5の左右の端部は、例えば、主桁4に溶接されている。
【0008】
図2を参照して、横リブ5は、上下方向に延びる板状のウェブ5aと、ウェブ5aの下端から前後方向に延びる板状のフランジ5bとを有している。ウェブ5aの上端部は、例えば、デッキプレート3の裏面3bに溶接されている。
【0009】
ウェブ5aの上端部には、複数の凹部5cが設けられている。各凹部5cは、上方に向かって(デッキプレート3に向かって)開口するように形成されている。これにより、デッキプレート3とウェブ5aとの間に、縦リブ6を通すための孔が形成されている。
【0010】
図1および
図2を参照して、縦リブ6は、デッキプレート3側が開口するように開断面形状(U字形状)を有するUリブである。以下、縦リブ6を、Uリブ6という。具体的には、Uリブ6は、左右方向に延びる底壁部6aと、底壁部6aの左右方向における両端部から上方に延びる一対の側壁部6b,6cとを有する。側壁部6b,6cは、先端側(
図1においてはデッキプレート3側)ほど互いの間隔が広がるように、底壁部6aに対して傾斜している。Uリブ6は、橋梁1の長さ方向に延びるように、かつ横リブ5を貫通するように設けられている。側壁部6b,6cの上端部は、デッキプレート3の裏面3bに溶接されている。Uリブ6の外周面は、横リブ5のウェブ5aに溶接されている。
【0011】
図1を参照して、上記のような構成を有する橋梁1では、例えば、橋梁1上を自動車8が通過することによって、鋼床版2において疲労亀裂が発生する場合がある。この疲労亀裂は、例えば、デッキプレート3とUリブ6との接合部9において発生する。以下、接合部9における疲労亀裂の発生態様について説明する。
【0012】
図3は、デッキプレート3と側壁部6bとの接合部9を示す拡大図である。
図3に示すように、側壁部6bをデッキプレート3に溶接する際には、例えば、側壁部6bの先端部のうち外側の部分6dが溶接ビード10によってデッキプレート3に接合される。通常、溶接ビード10の溶け込み量は、Uリブの厚みの75%が基準とされており、側壁部6bの先端部のうち内側の部分6eは接合されない。このため、デッキプレート3と溶接ビード10と部分6eとの間に、切欠き状の空間11(以下、不溶着部11という。)が形成されている。このような接合部9では、溶接ビード10の近傍において、溶接時の膨張および溶接後の収縮によって、引張りの残留応力が発生している。
【0013】
ここで、自動車8が橋梁1上を通過すると、デッキプレート3に荷重が加わり、デッキプレート3が撓む。これにより、デッキプレート3と溶接ビード10との境界部および側壁部6bと溶接ビード10との境界部に、曲げ応力が発生したり、引張および圧縮の変動応力が発生したりする。これらの応力の内、鋼床版2の幅方向に生じる引張応力が上述の残留応力に重畳されることにより、接合部9では大きな引張応力が発生しやすい。そして、複数の自動車8が通過することによって、上記荷重がデッキプレート3に繰り返し加わると、デッキプレート3と溶接ビード10との境界部近傍および側壁部6bと溶接ビード10との境界部近傍において疲労亀裂が発生する場合がある。例えば、溶接ビード10のデッキプレート3側の止端12または側壁部6b側の止端13に疲労亀裂が発生したり、デッキプレート3側のルート部14に疲労亀裂が発生したりする。これにより、鋼床版2の強度が低下するおそれがある。
【0014】
ところで、鋼床版2では、止端12および止端13は、Uリブ6の外側に位置する。このため、止端12および止端13において発生した疲労亀裂は、橋梁1の点検時等に、作業者によって発見されやすい。この場合、疲労亀裂が発生した部分を早期に補修することができるので、鋼床版2の強度低下を抑制しやすい。
【0015】
一方、ルート部14は、Uリブ6の外側からは見えない位置にあるので、ルート部14において発生した疲労亀裂を発見することは難しい。また、仮に、ルート部14に疲労亀裂が発生していることを発見できたとしても、ルート部14をUリブ6の外側から補修することは難しい。このため、ルート部14に疲労亀裂が発生した場合は、Uリブ6の内側からルート部14を補修する必要があり、疲労亀裂の補修に時間および労力を要する。
【0016】
そこで、従来、ルート部14において疲労亀裂が発生することを抑制するための技術が提案されている。
【0017】
例えば、特許文献1には、ピーニング施工方法が記載されている。特許文献1に記載された方法では、Uリブを用いた鋼床版において、ピーニング工具によってデッキプレートの表面に打撃を与える。特許文献1には、上記のように打撃を与えることによって、Uリブの内側の部分に圧縮残留ひずみを与えることができると記載されている。特許文献1に記載された方法では、上記のようにして圧縮残留応力を与えることによって、Uリブの内側の部分に発生した疲労亀裂の進展を抑制していると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記の方法では、デッキプレートの表面側をピーニング工具によって打撃するので、デッキプレートの裏面側に十分な大きさの圧縮残留応力を与えることは難しい。この場合、疲労亀裂の発生または疲労亀裂の進展を十分に抑制できない。
【0020】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、鋼床版の疲労亀裂発生および疲労亀裂進展を抑制することを可能にする押圧装置、押圧装置の制御装置、および押圧装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、下記の押圧装置の制御装置、押圧装置、および押圧装置の制御方法を要旨とする。
【0022】
(1)デッキプレートと、前記デッキプレートの下面に溶接されたウェブを有する横リブと、前記ウェブを貫通して延びかつ一対の側壁部が前記デッキプレートおよび前記ウェブに溶接されたUリブと、を有する鋼床版において、前記Uリブ内に配置されて使用される押圧装置の制御装置であって、
前記押圧装置は、
本体部と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に移動できるように前記本体部を支持する支持部と、
前記本体部から一方の側壁部に向かって移動できるように前記本体部に支持される押圧部材と、
前記押圧部材が前記側壁部を前記Uリブの外側に向かって押圧するように前記押圧部材を駆動する第1駆動装置と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に沿って前進および後退するように前記支持部を駆動する第2駆動装置と、
前記押圧部材の前記外側への変位量を検出する第1検出装置と、
前記押圧部材に加わる荷重を検出する第2検出装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1駆動装置を制御して、前記押圧部材を移動させて前記側壁部に接触させるとともに、前記押圧部材が前記側壁部に接触した位置を基準位置として、前記基準位置からさらに前記押圧部材を移動させる負荷工程を開始する、第1の押圧制御と、
前記第1の押圧制御中に、前記第2検出装置によって検出される前記荷重が予め設定された所定荷重に達する前に前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が予め設定された目標変位量に達した場合、前記Uリブと前記ウェブとが交差していない非交差位置において前記押圧部材による負荷工程が完了したと判別し、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を終了させるとともに、前記押圧部材を前記一方の側壁部から離れるように移動させる除荷工程を実行し、その後、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を予め設定された第1前進距離前進させる、第1の前進制御と、
前記第1の押圧制御中に、前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達する前に前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達した場合、前記Uリブと前記ウェブとが交差している交差位置において前記押圧部材による前記負荷工程が実行されていると判別し、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を停止するとともに前記除荷工程を実行し、その後、前記非交差位置において前記負荷工程が実行されるように、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を移動させる、位置調整制御と、
を行う、押圧装置の制御装置。
【0023】
(2)前記押圧部材は前記負荷工程において前記側壁部に接触する押圧面を有し、
前記第1前進距離は、前記Uリブの長さ方向における前記押圧面の長さ以上に設定される、上記(1)に記載の押圧装置の制御装置。
【0024】
(3)前記第1の前進制御後または前記位置調整制御後に、前記第1の押圧制御を再度行う、上記(1)または(2)に記載の押圧装置の制御装置。
【0025】
(4)前記位置調整制御として、
前記第1の押圧制御中に、前記交差位置において前記押圧部材による負荷工程が実行されていると判別した場合に、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を停止するとともに前記除荷工程を実行し、その後、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を予め設定された第1後退距離後退させる、第1の後退制御と、
前記第1の後退制御を行った後に、前記第1駆動装置を制御して前記負荷工程を開始する、第2の押圧制御と、
前記第2の押圧制御中に、前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達する前に前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達したと判別した場合に、前記第1駆動装置を制御して前記負荷工程を終了するとともに前記除荷工程を実行し、その後、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を、前記第1前進距離および前記第1後退距離よりも大きい第2前進距離前進させる、第2の前進制御と、
を行う、上記(1)から(3)のいずれかに記載の押圧装置の制御装置。
【0026】
(5)前記押圧部材は前記負荷工程において前記側壁部に接触する押圧面を有し、
前記第1後退距離は、前記Uリブの長さ方向における前記押圧面の長さ未満に設定される、上記(4)に記載の押圧装置の制御装置。
【0027】
(6)前記位置調整制御として、
前記第2の押圧制御中に、前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達する前に前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達した場合、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を停止するとともに前記除荷工程を実行し、その後、前記第2駆動装置によって、前記本体部を、前記第1後退距離以下の第2後退距離後退させる、第2の後退制御と、
前記第2の後退制御を行った後に、前記第1駆動装置を制御して前記負荷工程を開始する、第3の押圧制御と、
前記第3の押圧制御中に、前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達する前に前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達したと判別した場合に、前記第1駆動装置を制御して前記負荷工程を終了するとともに前記除荷工程を実行し、その後、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を、前記第1前進距離よりも大きく、かつ前記第1後退距離および前記第2後退距離の合計よりも大きい第3前進距離前進させる、第3の前進制御と、
をさらに行う、上記(4)または(5)に記載の押圧装置の制御装置。
【0028】
(7)前記第3の押圧制御中に、前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達する前に前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達したと判別されるまで、前記第2の後退制御および前記第3の押圧制御を繰り返し行い、
前記第3前進距離は、前記位置調整制御中における前記本体部の後退距離の合計よりも大きく設定される、上記(6)に記載の押圧装置の制御装置。
【0029】
(8)前記Uリブの長さ方向を前後方向と定義し、前記一対の側壁部において、基準領域Rb、前記基準領域Rbよりも後方の後方領域Rr、および前記基準領域Rbよりも前方の前方領域Rfを、前記ウェブの板厚Tを用いて下記のように定義した場合に、
前記負荷工程において前記押圧部材が基準領域Rbに接触しないように後方領域Rrの少なくとも一部または前方領域Rfの少なくとも一部を押圧できるように、前記位置調整制御を行う、上記(1)から(7)のいずれかに記載の押圧装置の制御装置。
基準領域Rb:前記ウェブの板厚中心線から後方に0.5Tの位置よりも前方でかつ前記板厚中心線から前方に0.5Tの位置よりも後方の領域。
後方領域Rr:前記板厚中心線から後方に0.5Tの位置よりも後方でかつ前記板厚中心線から後方に2.5Tの位置よりも前方の領域。
前方領域Rf:前記板厚中心線から前方に0.5Tの位置よりも前方でかつ前記板厚中心線から前方に2.5Tの位置よりも後方の領域。
【0030】
(9)デッキプレートと、前記デッキプレートの下面に溶接されたウェブを有する横リブと、前記ウェブを貫通して延びかつ一対の側壁部が前記デッキプレートおよび前記ウェブに溶接されたUリブと、を有する鋼床版において、前記Uリブ内に配置されて使用される押圧装置であって、
本体部と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に移動できるように前記本体部を支持する支持部と、
前記本体部から一方の側壁部に向かって移動できるように前記本体部に支持される押圧部材と、
前記押圧部材が前記側壁部を前記Uリブの外側に向かって押圧するように前記押圧部材を駆動する第1駆動装置と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に沿って前進および後退するように前記支持部を駆動する第2駆動装置と、
前記押圧部材の前記外側への変位量を検出する第1検出装置と、
前記押圧部材に加わる荷重を検出する第2検出装置と、
上記(1)から(8)のいずれかに記載の制御装置と、
を備える、押圧装置。
【0031】
(10)デッキプレートと、前記デッキプレートの下面に溶接されたウェブを有する横リブと、前記ウェブを貫通して延びかつ一対の側壁部が前記デッキプレートおよび前記ウェブに溶接されたUリブと、を有する鋼床版において、前記Uリブ内に配置されて使用される押圧装置を制御する方法であって、
前記押圧装置は、
本体部と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に移動できるように前記本体部を支持する支持部と、
前記本体部から一方の側壁部に向かって移動できるように前記本体部に支持される押圧部材と、
前記押圧部材が前記側壁部を前記Uリブの外側に向かって押圧するように前記押圧部材を駆動する第1駆動装置と、
前記本体部が前記Uリブの長さ方向に沿って前進および後退するように前記支持部を駆動する第2駆動装置と、
前記押圧部材の前記外側への変位量を検出する第1検出装置と、
前記押圧部材に加わる荷重を検出する第2検出装置と、
を備え、
前記制御方法は、
前記第1駆動装置を制御して、前記押圧部材を移動させて前記側壁部に接触させるとともに、前記押圧部材が前記側壁部に接触した位置を基準位置として、前記基準位置からさらに前記押圧部材を移動させる負荷工程を開始する、第1の押圧制御ステップと、
前記第1の押圧制御ステップ中に、前記第2検出装置によって検出される前記荷重が予め設定された所定荷重に達する前に前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が予め設定された目標変位量に達した場合、前記Uリブと前記ウェブとが交差していない非交差位置において前記押圧部材による負荷工程が完了したと判別し、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を終了させるとともに、前記押圧部材を前記一方の側壁部から離れるように移動させる除荷工程を実行し、その後、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を予め設定された第1前進距離前進させる、第1の前進制御ステップと、
前記第1の押圧制御ステップ中に、前記第1検出装置によって検出される前記押圧部材の前記基準位置からの変位量が前記目標変位量に達する前に前記第2検出装置によって検出される前記荷重が前記所定荷重に達した場合、前記Uリブと前記ウェブとが交差している交差位置において前記押圧部材による前記負荷工程が実行されていると判別し、前記第1駆動装置を制御して、前記負荷工程を停止するとともに前記除荷工程を実行し、その後、前記非交差位置において前記負荷工程が実行されるように、前記第2駆動装置を制御して、前記本体部を後退させる、位置調整制御ステップと、
を備える、押圧装置の制御方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、Uリブおよび横リブを有する鋼床版において、溶接ビードのルート部における疲労亀裂発生および疲労亀裂進展を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。なお、本明細書において疲労亀裂の発生を抑制するとは、疲労亀裂が新たに発生することを抑制するだけではなく、既に存在している疲労亀裂がさらに進展して拡大することを抑制することも意味する。
【0035】
(押圧装置の構成)
まず、本発明の一実施形態に係る押圧装置について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る押圧装置100の概略構成を示す平面図である。
【0036】
図4を参照して、押圧装置100は、本体部20、一対の押圧部材22a,22b、複数の車輪24a〜24d、車軸26a,26b、第1駆動装置28、第2駆動装置30、第1検出装置32、第2検出装置34、第3検出装置36、および制御装置38を備えている。なお、本実施形態においては、押圧装置100が移動する方向を前後方向とする。また、押圧装置100の平面視において、前後方向を基準として、左右方向を規定する。以下においては、左右方向を押圧装置100の幅方向ともいう。
【0037】
本実施形態では、第1駆動装置28、第2駆動装置30、第1検出装置32、第2検出装置34、および第3検出装置36は、本体部20に取り付けられている。車輪24a,24bは、車軸26aを介して、本体部20に回転可能に支持されている。車輪24c,24dは、車軸26bを介して、本体部20に回転可能に支持されている。本実施形態では、複数の車輪24a〜24dおよび車軸26a,26bが、本体部20を支持する支持部に相当する。
【0038】
押圧部材22a,22bは、本体部20の前後方向における中央部において、左右方向に移動可能に本体部20に支持されている。後述の
図5に示すように、本実施形態では、押圧部材22a,22bは、車輪24a〜24dよりも上方に設けられている。
【0039】
なお、後述の
図5に示すように、押圧部材22aの先端には押圧面23aが形成され、押圧部材22bの先端には押圧面23bが形成されている。前後方向に垂直な断面において、押圧面23a,23bはそれぞれ、押圧装置100の幅方向外方に向かって凸となるように、円弧形状を有している。後述するように押圧部材22a,22bによってUリブ6の側壁部6b,6cを押圧する際には、押圧部材22a,22bは、押圧面23a,23bにおいて側壁部6b,6cに接触する。
【0040】
図4を参照して、本実施形態では、前後方向における押圧面23a,23bの長さLは、例えば、横リブ5のウェブ5aの厚みT(後述の
図8参照)の2倍よりも大きく設定される。また、押圧面23a,23bの長さLは、例えば、ウェブ5aの厚みTの4倍以下に設定される。また、後述の
図5を参照して、押圧装置100の前後方向に垂直な断面において、押圧面23a,23bの曲率半径はそれぞれ、例えば、5〜80mmに設定される。
【0041】
第1駆動装置28は、押圧部材22a,22bを左右方向(押圧装置100の幅方向)に移動させる。本実施形態では、第1駆動装置28は、油圧ポンプおよび油圧シリンダを含む。押圧部材22a,22bは、油圧シリンダに設けられる。本実施形態では、油圧ポンプにおいて発生された油圧が、油圧シリンダを介して押圧部材22a,22bに伝達され、押圧部材22a,22bが左右方向に移動する。なお、油圧ポンプおよび油圧シリンダとしては、公知の種々の構成を採用できるので、詳細な説明は省略する。また、第1駆動装置28の構成は、油圧によって押圧部材22a,22bを移動させる構成に限定されず、押圧部材22a,22bを左右方向に移動させることができる公知の種々の構成を採用できる。例えば、電動モータと、その電動モータの回転運動を直線運動に変換する複数のギアを用いて第1駆動装置28を構成してもよい。
【0042】
第2駆動装置30は、車軸26aを介して車輪24a,24bを回転駆動する。これにより、押圧装置100が移動する。第2駆動装置30としては、例えば電動モータを用いることができる。
【0043】
第1検出装置32は、押圧部材22a,22bの左右方向における変位量(移動距離)を検出する。第1検出装置32の検出結果は、制御装置38に与えられる。なお、第1検出装置32としては、例えば、公知の種々の変位センサを用いることができる。したがって、第1検出装置32の詳細な説明は省略する。なお、第1検出装置32は、1つの変位センサを用いて構成されてもよく、複数の変位センサを用いて構成されてもよい。
【0044】
第2検出装置34は、押圧部材22a,22bにかかる荷重を検出する。第2検出装置34の検出結果は、制御装置38に与えられる。本実施形態では、第2検出装置34は、例えば、第1駆動装置28の油圧シリンダに設けられ、油圧シリンダ内の油圧に基づいて、押圧部材22a,22bにかかる荷重を検出することができる。なお、第2検出装置34としては、押圧部材22a,22bおよび第1駆動装置28の構成に応じて、公知の種々の荷重センサを用いることができる。したがって、第2検出装置34の詳細な説明は省略する。なお、第2検出装置34は、1つの荷重センサを用いて構成されてもよく、複数の荷重センサを用いて構成されてもよい。
【0045】
第3検出装置36は、押圧装置100(本体部20)の前後方向における変位量(移動距離)を検出する。第3検出装置36の検出結果は、制御装置38に与えられる。なお、第3検出装置36としては、例えば、公知の種々の変位センサを用いることができる。したがって、第3検出装置36の詳細な説明は省略する。
【0046】
制御装置38は、第1検出装置32、第2検出装置34および第3検出装置36の検出結果に基づいて、第1駆動装置28および第2駆動装置30を制御する。制御装置38の制御動作については後述する。
【0047】
(押圧装置の基本動作)
まず、押圧装置100の基本的な動作を説明する。
図5および
図6は、本実施形態に係る押圧装置100の基本動作を説明するための図である。なお、
図5および6においては、図面が煩雑になることを避けるために、押圧装置100のうち、押圧部材22a,22bおよび車輪24a〜24d以外の構成要素の図示は省略している。また、
図5および
図6においては、横リブ5の図示は省略しているが、本実施形態に係る押圧装置100は、横リブ5が設けられた状態の鋼床版2において使用される。以下の説明では、上下方向およびUリブ6の長さ方向に対して垂直な方向をUリブ6の幅方向とする。
図5および6においては、左右方向がUリブ6の幅方向になる。なお、本実施形態に係る押圧装置100が使用される鋼床版2において、デッキプレート3の厚みは、例えば、12〜16mmであり、Uリブ6の厚みは、例えば、3〜12mmである。
【0048】
図5を参照して、本実施形態では、押圧装置100は、鋼床版2のUリブ6内に設置され、Uリブ6内から押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cを押圧することによって、ルート部14(
図3参照)に疲労亀裂が発生することを抑制する。
【0049】
なお、本実施形態に係る押圧装置100は、橋梁1の構成要素として用いられる前の鋼床版2において使用されてもよく、橋梁1の構成要素として用いられている状態の鋼床版2において使用されてもよい。また、本実施形態に係る押圧装置100は、主桁4が設けられていない鋼床版において使用されてもよく、主桁4が設けられた状態の鋼床版において使用されてもよい。
【0050】
押圧装置100を使用する際には、まず、Uリブ6内において、底壁部6a上に押圧装置100を配置する。具体的には、押圧装置100がUリブ6の長さ方向に前進および後退できるように、Uリブ6内に押圧装置100を配置する。このように押圧装置100を配置することによって、押圧部材22aの押圧面23aが側壁部6bの内面に対向し、押圧部材22bの押圧面23bが側壁部6cの内面に対向する。
【0051】
本実施形態では、押圧面23a,23bの曲率中心16a,16bとデッキプレート3の裏面3bとの距離d1は、例えば、側壁部6b,6cの厚みtの1.5倍以上に設定され、好ましくは2倍以上に設定され、より好ましくは3倍以上に設定される。また、距離d1は、例えば、側壁部6b,6cの厚みtの7倍以下に設定され、好ましくは5倍以下に設定され、より好ましくは4倍以下に設定される。なお、距離d1は、デッキプレート3の厚み方向(
図5では上下方向)における長さである。また、厚みtは、例えば、側壁部6b,6cの平均の厚みとして算出される。
【0052】
次に、
図5および
図6(a)を参照して、押圧部材22a,22bをUリブ6の外側に向かって移動させて、押圧面23a,23bを側壁部6b,6cの内面に接触させる。なお、
図5を参照して、本実施形態では、側壁部6b,6cは、デッキプレート3から離れるほど互いの間隔が狭くなるように、デッキプレート3に対して傾斜している。このため、
図6(a)を参照して、押圧部材22aの押圧面23aと側壁部6bとの接触部17は、曲率中心16aよりも下方に位置する。説明は省略するが、押圧部材22bも同様に側壁部6cに接触する。なお、以下においては、側壁部6bと押圧部材22aとの関係について説明するが、側壁部6cと押圧部材22bとの関係も同様である。
【0053】
次に、
図6(b)に示すように、押圧部材22aをUリブ6の外側に向かってさらに移動させる(負荷工程)。これにより、Uリブ6の内側から側壁部6bに対して圧力が加えられる。その結果、側壁部6bは、Uリブ6の外側に向かって膨らむように変形する。なお、負荷工程における押圧部材22aの変位量(移動距離)d2は、例えば、0.05〜10mmに予め設定される。以下、予め設定される負荷工程における押圧部材22a,22bの変位量d2を、押圧部材22a,22bそれぞれの目標変位量d2ともいう。本実施形態では、負荷工程において、例えば、ルート部14の近傍が塑性変形するように、押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cに圧力を加える。言い換えると、ルート部14の近傍を塑性変形させることができるように、目標変位量d2が設定される。目標変位量d2は、押圧部材22a,22bが側壁部6b,6cに接触した時点の押圧部材22a,22bの位置を基準位置として、基準位置からUリブ6外方への押圧部材22a,22bの変位量(移動距離)を示す。
【0054】
次に、
図6(c)を参照して、押圧部材22aを側壁部6bから離れるように移動させる(除荷工程)。これにより、負荷工程で側壁部6bに加えられた圧力が除かれる。その結果、側壁部6bは、負荷工程前の側壁部6bの形状に戻るように変形する。なお、本実施形態では、上述のように、負荷工程においてルート部14の近傍を塑性変形させている。そのため、除荷工程後の側壁部6bは、負荷工程前の側壁部6bの形状に完全には戻らない。
【0055】
ここで、Uリブ6の長さ方向に垂直な断面において、負荷工程前の側壁部6bの位置と除荷工程後の側壁部6bの位置との左右方向における距離を残留変位量とする。本実施形態では、Uリブ6の長さ方向に垂直な断面において、負荷工程前の側壁部6bの外面(または内面)の任意の位置と除荷工程後の側壁部6bの外面(または内面)の任意の位置との左右方向における距離を残留変位量とする。
図6(c)においては、裏面3bからデッキプレート3の厚み方向に距離d1離れた位置における残留変位量d3が示されている。本実施形態では、残留変位量d3が0.01〜3mmになるように、負荷工程および除荷工程が実行される。なお、Uリブ6の形状および断面係数、ならびに横リブ5の面外座屈の抑制等を考慮して、残留変位量d3の目標値は適宜設定される。残留変位量d3は0.1mm以上であることが好ましい。なお、残留変位量d3は、例えば、ダイヤルゲージまたはレーザー変位計を用いて測定することができる。
【0056】
(押圧装置の基本動作による効果)
以下、押圧装置100の基本動作による効果を説明する。
図7は、本実施形態に係る押圧装置100の基本動作による効果を説明するための図である。
【0057】
図7を参照して、上述したように、溶接ビード10のルート部14近傍においては、溶接時の膨張および溶接後の収縮によって、引張の残留応力が発生している。この状態で、上述の負荷工程を実行することによって、側壁部6bは、Uリブ6の外側に向かって移動しようとする。これにより、溶接ビード10がUリブ6の外側に向かって引っ張られ、ルート部14近傍の引張応力は一時的に大きくなる。
【0058】
その後、除荷工程を実行することによって、側壁部6bは、Uリブ6の内側に向かって移動しようとする。これにより、溶接ビード10がUリブ6の内側に向かって押し付けられる。すなわち、いわゆるスプリングバックの効果が生じる。これにより、ルート部14近傍に圧縮方向の力を加えることができる。その結果、ルート部14近傍の引張残留応力を低減できる、またはルート部14近傍に圧縮残留応力を発生させることができる。これにより、例えば、鋼床版2に荷重が繰り返し加わった場合でも、ルート部14の近傍において大きな引張応力が発生することを防止することができる。その結果、ルート部14の近傍において疲労亀裂が発生することを抑制することができる。また、ルート部14の近傍に疲労亀裂が既に発生している場合には、その亀裂先端の引張残留応力を低減できる、または亀裂先端に圧縮残留応力を発生させることができるので、疲労亀裂が進展することを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、デッキプレート3に直接力を加える必要がない。これにより、デッキプレート3の変形および損傷を防止できる。
【0060】
また、本実施形態では、円弧状に湾曲した押圧面23a,23bによって側壁部6b,6cに圧力が加えられるので、Uリブ6の内面が損傷することを抑制できる。
【0061】
(押圧装置の動作の詳細)
以下、押圧装置100による押圧動作についてさらに詳細に説明する。上述したように、本実施形態に係る押圧装置100は、横リブ5を有する鋼床版2において使用される。本発明者らの種々の検討の結果、横リブ5を有する鋼床版2において押圧装置100を使用する際に、以下のような問題が生じることが分かった。
【0062】
図8は、横リブ5、側壁部6bおよび押圧部材22aの位置関係を模式的に示す平面図である。なお、
図8においては、側壁部6bおよび押圧部材22aの関係を示しているが、側壁部6cおよび押圧部材22bの関係も同様である。
【0063】
まず、本発明者は、上述の負荷工程および除荷工程を、押圧装置100を移動(前進または後進)させながら実行することを考えた。具体的には、
図8に示すように、押圧装置100を前進させることによって、押圧部材22aを、実線で示す位置、一点鎖線で示す位置、および二点差線で示す位置に順に配置して、各位置においてそれぞれ、負荷工程および除荷工程を実行することを考えた。
【0064】
図9は、負荷工程において押圧部材22aが側壁部6bを押圧する際に押圧部材22aに加わる荷重の変化を示した図である。
図9において、横軸は、負荷工程における押圧部材22aのUリブ6外方への変位量を示し、縦軸は、側壁部6bから押圧部材22aに加わる荷重を示す。なお、
図9では、負荷工程において、押圧面23aが側壁部6bに最初に接触した時点の押圧面23aの位置を基準位置(零点)として、押圧部材22aに加わる荷重の変化を示している。
【0065】
また、
図9において実線は、押圧部材22aが
図8に実線で示す位置(Uリブ6とウェブ5aとが交差していない位置:以下、非交差位置ともいう。)において側壁部6bを押圧する場合に押圧部材22aに加わる荷重の変化の一例を示している。
図9において一点鎖線は、押圧部材22aが
図8に一点鎖線で示す位置(Uリブ6とウェブ5aとが交差する位置:以下、交差位置ともいう。)においていて側壁部6bを押圧する場合に押圧部材22aに加わる荷重の変化の一例を示している。
【0066】
また、
図9において荷重P1は、
図8に実線で示す非交差位置で押圧部材22aが側壁部6bを押圧する場合において、押圧部材22aの変位量が目標変位量d2(
図6(b)参照)に達したときに押圧部材22aに加わる荷重を示す。
図9において荷重P2は、
図8に一点鎖線で示す交差位置で押圧部材22aが側壁部6bを押圧する場合において、押圧部材22aの変位量が目標変位量d2に達したときに押圧部材22aに加わる荷重を示す。なお、図示は省略するが、押圧部材22aが
図8に二点鎖線で示す位置において側壁部6bを押圧する場合に押圧部材22aに加わる荷重は、
図9に実線で示した荷重と同様である。
【0067】
図8を参照して、交差位置において側壁部6bを押圧する場合には、押圧部材22aの押圧方向に、側壁部6bに加えて、横リブ5のウェブ5aが存在する。このため、交差位置において押圧部材22aの変位量が目標変位量d2(
図6(b)参照)に達したときに押圧部材22aに加わる荷重P2(
図9参照)は、非交差位置において押圧部材22aの変位量が目標変位量d2に達したときに押圧部材22aに加わる荷重P1(
図9参照)よりも大きくなる。言い換えると、交差位置において押圧部材22aを目標変位量d2(
図6(b)参照)移動させるためには、非交差位置において押圧部材22aを目標変位量d2(
図6(b)参照)移動させる場合よりも、第1駆動装置28(
図4参照)において大きな力を発生させる必要がある。
【0068】
ここで、例えば、
図9に示すように、第1駆動装置28が負担可能な限界荷重Pb(以下、限界負荷荷重Pbと記載する。)が、荷重P2よりも小さい場合には、第1駆動装置28は、交差位置において、押圧部材22aを目標変位量d2移動させることができない。この場合、交差位置の近傍において、ルート部14を塑性変形させることが難しくなる。一方、第1駆動装置28の出力を大きくして限界負荷荷重を荷重P2よりも大きくすれば、交差位置においても、押圧部材22aを目標変位量d2移動させることができる。この場合、ルート部14を塑性変形させることができるが、大きな第1駆動装置28を用いる必要があり、押圧装置100自体が大型化するので好ましくない。
【0069】
そこで、本発明者らは、押圧装置100の動作についてさらに検討を行った。その結果、本発明者らは、押圧装置100の動作を制御装置38によって以下に説明するように制御することによって、出力の大きな第1駆動装置28を用いることなく、交差位置近傍においてもルート部14を塑性変形させることができることを見出した。以下、押圧装置100の動作について詳しく説明する。
【0070】
図10は、押圧装置100の制御系を示すブロック図である。また、
図11は、制御装置38の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0071】
図10を参照して、制御装置38は、第1駆動制御部38a、第2駆動制御部38bおよび判定部38cを有している。なお、本実施形態に係る制御装置38は、後述のステップS1〜S11の処理を実行させるプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、実現することができる。この場合、制御装置38となるコンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、第1駆動制御部38a、第2駆動制御部38bおよび判定部38cとして機能し、処理を行なう。また、本実施形態に係る制御装置38は、複数のコンピュータによって構築されてもよい。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、第1駆動制御部38a、第2駆動制御部38bおよび判定部38cのいずれかとして機能してもよい。
【0072】
図4、
図5、
図10および
図11を参照して、本実施形態では、上述のようにUリブ6内に配置された押圧装置100において、制御装置38の電源がオンになると、制御装置38は、第1駆動装置28を制御して、押圧部材22a,22bを左右方向に移動させる(ステップS1)。本実施形態では、ステップS1の制御が、第1の押圧制御に相当する。
【0073】
具体的には、ステップS1において、まず、制御装置38の第1駆動制御部38aは、押圧部材22a,22bを移動させて押圧面23a,23bを側壁部6b,6cに接触させる。以下、押圧面23a,23bが側壁部6b,6cに接触した時点の押圧面23a,23bの位置を基準位置とする。その後、第1駆動制御部38aは、押圧部材22a,22bを基準位置からさらにUリブ6の外側に向かって移動させて、上述の負荷工程の実行を開始する。
【0074】
次に、判定部38cは、第1検出装置32および第2検出装置34の検出結果に基づいて、上述の負荷工程において、押圧部材22a,22bに加わる荷重が予め設定された所定荷重に達する前に、押圧部材22a,22bの変位量が目標変位量d2に達したか否かを判別する(ステップS2)。
【0075】
具体的には、判定部38cは、まず、第2検出装置34が検出した荷重に基づいて、押圧部材22a,22bが側壁部6b,6cに接触した時点を検知する。すなわち、判定部38cは、第2検出装置34が検出した荷重に基づいて、押圧部材22a,22bの基準位置を検知する。その後、判定部38cは、第1検出装置32および第2検出装置34の検出結果に基づいて、基準位置に対する押圧部材22a,22bの変位量と、押圧部材22a,22bに加わる荷重とを比較する。そして、判定部38cは、上記のように、押圧部材22a,22bに加わる荷重が予め設定された所定荷重に達する前に、押圧部材22a,22bの変位量が目標変位量d2に達したか否かを判別する。
【0076】
なお、ステップS2および後述のステップS6,S10における所定荷重は、第1駆動装置28が負担可能な限界荷重(例えば、
図9の限界負荷荷重Pb参照)に基づいて設定される。本実施形態では、例えば、所定荷重は、限界負荷荷重よりも小さい値に設定される。また、
図8を参照して、所定荷重は、上述の非交差位置において押圧部材22a,22bが側壁部6b,6cを押す場合において、押圧部材22a,22bの移動距離が目標変位量d2に達したときに押圧部材22a,22bに加わる荷重(例えば、
図9の荷重P1)よりも大きい値に設定される。
【0077】
本実施形態では、上記のステップS2の処理によって、制御装置38は、押圧部材22a,22bが交差位置および非交差位置のいずれを押圧しているのかを判別することができる。具体的には、ステップS2において判定部38cが「Yes」と判別した場合は、押圧部材22a,22bが非交差位置を押圧している場合であり、「No」と判別した場合は、押圧部材22a,22bが交差位置を押圧している場合である。
【0078】
図11を参照して、ステップS2において、押圧部材22a,22bに加わる荷重が所定荷重に達する前に、押圧部材22a,22bの変位量が目標変位量d2に達したと判別された場合(判定部38cが「Yes」と判別した場合)、制御装置38は、押圧装置100を予め設定された第1前進距離前進させる(ステップS3)。その後、制御装置38は、ステップS1に戻り、押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cを押圧する。本実施形態では、ステップS2において「Yes」と判別し、ステップS3を実行する制御装置38の制御が、第1の前進制御に相当する。
【0079】
具体的には、ステップS2において判定部38cが「Yes」と判別した場合、第1駆動制御部38aは、負荷工程が完了したとして、第1駆動装置28を制御して、押圧部材22a,22bを側壁部6b,6cから離れる方向に移動させる。すなわち、第1駆動制御部38aは、負荷工程を終了して、上述の除荷工程を実行する。その後、第2駆動制御部38bが、第2駆動装置30を制御して、押圧装置100を第1前進距離前進させる。なお、第1前進距離は、例えば、押圧面23a,23bの長さL(
図4参照)の0.5倍以上に設定される。施工効率を向上させる観点からは、第1前進距離は、例えば、押圧面23a,23bの長さL以上に設定されることが好ましい。また、第1前進距離は、押圧面23a,23bの長さLの2倍以下に設定される。本実施形態では、第1前進距離は、例えば、長さLに設定される。なお、ステップS3では、第2駆動制御部38bは、第3検出装置36の検出結果に基づいて、押圧装置100の前後方向の移動距離を把握することができる。後述のステップS4、S7およびS8においても同様である。
【0080】
なお、
図12(a)を参照して、ステップS2において「Yes」と判別される場合とは、上述したように、非交差位置において、押圧部材22a,22b(
図12には押圧部材22aのみ図示。)が側壁部6b,6c(
図12には側壁部6bのみ図示)を押圧した場合である。この場合、押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cを適切に押圧できるので、ルート部14の近傍を適切に塑性変形させることができる。その後、
図12(b)に示すように、ステップS3の処理で押圧装置100が第1前進距離前進し、再度ステップS1の処理が行なわれる。これにより、交差位置の前後において、側壁部6b,6cを押圧部材22a,22bによって押圧することができる。なお、
図12は、ステップS3の第1前進距離が押圧面23a,23bの長さLに設定された場合を示している。
【0081】
図11を参照して、ステップS2において、押圧部材22a,22bの変位量が目標変位量d2に達する前に、押圧部材22a,22bに加わる荷重が所定荷重に達したと判別した場合(判定部38cが「No」と判別した場合)、制御装置38は、第2駆動装置30を制御して、押圧装置100を予め設定された第1後退距離後退させる(ステップS4)。本実施形態では、ステップS2において「No」と判別し、ステップS4を実行する制御装置38の制御が、第1の後退制御に相当する。また、本実施形態では、ステップS2において「No」と判別し、ステップS4および後述のステップS5〜S11を実行する制御が、位置調整制御に相当する。
【0082】
具体的には、ステップS2において判定部38cが「No」と判別した場合、第1駆動制御部38aは、第1駆動装置28を制御して、押圧部材22a,22bを側壁部6b,6cから離れる方向に移動させる。すなわち、第1駆動制御部38aは、負荷工程を停止して、除荷工程を実行する。その後、第2駆動制御部38bが、第2駆動装置30を制御して、押圧装置100を第1後退距離前進させる。なお、第1後退距離は、第1前進距離よりも短く設定される。また、第1後退距離は、押圧面23a,23bの長さLよりも短く設定される。本実施形態では、第1後退距離は、例えば、長さLの1/2の長さに設定される。
【0083】
次に、制御装置38は、ステップS1と同様に第1駆動装置28を制御して、押圧部材22a,22bを左右方向に移動させる(ステップS5)。本実施形態では、ステップS5の制御が、第2の押圧制御に相当する。
【0084】
また、制御装置38は、ステップS2と同様に、押圧部材22a,22bに加わる荷重が予め設定された所定荷重に達する前に、押圧部材22a,22bの基準位置からの変位量が目標変位量d2に達したか否かを判別する(ステップS6)。
【0085】
ステップS6において、押圧部材22a,22bに加わる荷重が所定荷重に達する前に、押圧部材22a,22bの変位量が目標変位量d2に達したと判別した場合(判定部38cが「Yes」と判別した場合)、制御装置38は、第2駆動装置30を制御して、押圧装置100を予め設定された第2前進距離前進させる(ステップS7)。その後、制御装置38は、ステップS1に戻り、押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cを押圧する。本実施形態では、ステップS6において「Yes」と判別し、ステップS7を実行する制御装置38の制御が、第2の前進制御に相当する。
【0086】
具体的には、ステップS6において判定部38cが「Yes」と判別した場合、第1駆動制御部38aは、負荷工程が完了したとして、第1駆動装置28を制御して、押圧部材22a,22bを側壁部6b,6cから離れる方向に移動させる。すなわち、第1駆動制御部38aは、負荷工程を終了して、除荷工程を実行する。その後、第2駆動制御部38bが、第2駆動装置30を制御して、押圧装置100を第2前進距離前進させる。なお、第2前進距離は、例えば、ステップS4における第1後退距離よりも大きく設定される。本実施形態では、第2前進距離は、例えば、押圧面23a,23bの長さLの1.5倍に設定される。
【0087】
なお、ステップS6において「Yes」と判別される場合とは、例えば、以下のような場合である。
図13(a)に示すように、まず、ステップS1において、押圧部材22a,22bが、交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。次に、
図13(b)に示すように、押圧装置100がステップS4で第1後退距離後退し、ステップS5において、押圧部材22a,22bが、非交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。この場合、押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cを適切に押圧できるので、ルート部14の近傍を適切に塑性変形させることができる。その後、
図13(c)に示すように、ステップS7の処理で押圧装置100が第2前進距離前進し、再度ステップS1の処理が行なわれる。これにより、交差位置の前後において、側壁部6b,6cを押圧部材22a,22bによって適切に押圧することができる。なお、
図13は、ステップS4の第1後退距離が押圧面23a,23bの長さLの1/2の長さに設定され、ステップS7の第2前進距離が長さLの1.5倍の長さに設定された場合を示している。
【0088】
図11を参照して、ステップS6において、押圧部材22a,22bの変位量が目標変位量d2に達する前に、押圧部材22a,22bに加わる荷重が所定荷重に達したと判別した場合(判定部38cが「No」と判別した場合)、制御装置38は、第2駆動装置30を制御して、押圧装置100を予め設定された第2後退距離後退させる(ステップS8)。本実施形態では、ステップS6において「No」と判別し、ステップS8を実行する制御装置38の制御が、第2の後退制御に相当する。
【0089】
具体的には、ステップS6において判定部38cが「No」と判別した場合、第1駆動制御部38aは、第1駆動装置28を制御して、押圧部材22a,22bを側壁部6b,6cから離れる方向に移動させる。すなわち、第1駆動制御部38aは、負荷工程を停止して、除荷工程を実行する。その後、第2駆動制御部38bが、第2駆動装置30を制御して、押圧装置100を第2後退距離後退させる。なお、第2後退距離は、例えば、第1後退距離以下に設定され、好ましくは、第1後退距離未満に設定される。本実施形態では、第2後退距離は、例えば、押圧面23a,23bの長さLの1/4の長さに設定される。
【0090】
次に、制御装置38は、ステップS1,S5と同様に第1駆動装置28を制御して、押圧部材22a,22bを左右方向に移動させる(ステップS9)。本実施形態では、ステップS9の制御が、第3の押圧制御に相当する。
【0091】
また、制御装置38は、ステップS2,S6と同様に、押圧部材22a,22bに加わる荷重が予め設定された所定荷重に達する前に、押圧部材22a,22bの基準位置からの変位量が目標変位量d2に達したか否かを判別する(ステップS10)。
【0092】
ステップS10において、押圧部材22a,22bに加わる荷重が所定荷重に達する前に、押圧部材22a,22bの変位量が目標変位量d2に達したと判別した場合(判定部38cが「Yes」と判別した場合)、制御装置38は、第2駆動装置30を制御して、押圧装置100を第3前進距離前進させる(ステップS11)。その後、制御装置38は、ステップS1に戻り、押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cを押圧する。本実施形態では、ステップS10において「Yes」と判別し、ステップS11を実行する制御装置38の制御が、第3の前進制御に相当する。なお、第3前進距離は、例えば、第1前進距離よりも大きく設定される。また、第3前進距離は、例えば、位置調整制御中における本体部20の後退距離の合計(例えば、第1後退距離および第2後退距離の合計)よりも大きく設定される。なお、第3前進距離は、第2前進距離と等しくてもよく、第2前進距離よりも大きくてもよい。本実施形態では、第3前進距離は、例えば、押圧面23a,23bの長さLの1.5倍に設定される。
【0093】
ステップS10において「Yes」と判別される場合とは、例えば、以下のような場合である。
図14(a)に示すように、まず、ステップS1において、押圧部材22a,22bが、交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。次に、
図14(b)に示すように押圧装置100はステップS4で第1後退距離後退するが、ステップS5において押圧部材22a,22bが再び交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。その後、
図14(c)に示すように押圧装置100がステップS8でさらに第2後退距離後退し、ステップS9において、押圧部材22a,22bが、非交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。この場合、押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cを適切に押圧できるので、ルート部14の近傍を適切に塑性変形させることができる。その後、
図14(d)に示すように、ステップS11の処理で押圧装置100が第3前進距離前進し、再度ステップS1の処理が行なわれる。これにより、交差位置の前後において、側壁部6b,6cを押圧部材22a,22bによって適切に押圧することができる。なお、
図14は、ステップS4の第1後退距離が押圧面23a,23bの長さLの1/2の長さに設定され、ステップS8の第2後退距離が長さLの1/4の長さに設定され、ステップS11の第3前進距離が長さLの1.5倍の長さに設定された場合を示している。
【0094】
図11を参照して、ステップS10において、押圧部材22a,22bの変位量が目標変位量d2に達する前に、押圧部材22a,22bに加わる荷重が所定荷重に達したと判別された場合(判定部38cが「No」と判別した場合)、制御装置38は、ステップS8〜S10の処理を再度行なう。
【0095】
なお、ステップS8〜S10の処理が再度行われる場合とは、例えば、以下のような場合である。
図15(a)に示すように、まず、ステップS1において、押圧部材22a,22bが、交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。次に、
図15(b)に示すように、押圧装置100はステップS4で第1後退距離後退するが、ステップS5において押圧部材22a,22bが再び交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。次に、
図15(c)に示すように押圧装置100がステップS8でさらに第2後退距離後退するが、ステップS9において押圧部材22a,22bは再び交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。次に、
図15(d)に示すように、ステップS8,S9の処理が繰り返され、押圧装置100がさらに第2後退距離後退し、押圧部材22a,22bが非交差位置において側壁部6b,6cを押圧する。この場合、押圧部材22a,22bによって側壁部6b,6cを適切に押圧できるので、ルート部14の近傍を適切に塑性変形させることができる。その後、
図15(e)に示すように、ステップS11の処理で押圧装置100が第3前進距離前進し、再度ステップS1の処理が行なわれる。これにより、交差位置の前後において、側壁部6b,6cを押圧部材22a,22bによって適切に押圧することができる。なお、
図15は、ステップS4の第1後退距離が押圧面23a,23bの長さLの1/2の長さに設定され、ステップS8の第2後退距離が長さLの1/4の長さに設定され、ステップS7の第2前進距離が長さLの1.5倍の長さに設定された場合を示している。
【0096】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態では、制御装置38は、ステップS2,S6,S10において、第1検出装置32および第2検出装置34の検出結果に基づいて、押圧部材22a,22bが交差位置および非交差位置のいずれを押圧しているのかを判別することができる。そして、制御装置38は、押圧部材22a,22bが交差位置を押圧していると判別した場合(ステップS2,S6,S10において「No」の場合)には、押圧部材22a,22bが非交差位置を押圧できるように、押圧装置100を1回、または複数回後退させる。このとき、押圧装置100の1回当たりの後退距離は、押圧部材22a,22bの押圧面23a,23bの長さLよりも小さく設定される。これにより、交差位置の近傍の側壁部6b,6cのうち交差位置の近傍の部分を、押圧部材22a,22bによって適切に押圧することができ、ルート部14を塑性変形させることができる。その結果、押圧部材22a,22bを駆動するために大型の駆動装置を用いなくても、鋼床版2に疲労亀裂が発生することを抑制できる。
【0097】
なお、本実施形態では、制御装置38は、例えば、押圧部材22a,22bのうち予め決められた一方の押圧部材について、ステップS2,S6,S10における判別を行なってもよい。また、制御装置38は、ステップS2,S6,S10において、少なくとも一方の押圧部材に加わる荷重が所定荷重に達する前にその押圧部材の変位量が目標変位量に達した場合に「Yes」と判別し、各押圧部材の変位量が目標変位量に達する前に各押圧部材に加わる荷重が所定荷重に達した場合に「No」と判別してもよい。また、制御装置38は、ステップS2,S6,S10において、各押圧部材に加わる荷重が所定荷重に達する前に各押圧部材の変位量が目標変位量に達した場合に「Yes」と判別し、少なくとも一方の押圧部材の変位量が目標変位量に達する前にその押圧部材に加わる荷重が所定荷重に達した場合に「No」と判別してもよい。
【0098】
また、本実施形態では、制御装置38は、押圧部材22a,22bに加わる荷重の合計値と、押圧部材22a,22bの変位量の合計値とに基づいて、ステップS2,S6,S10における判別を行なってもよい。例えば、制御装置38は、ステップS2,S6,S10において、押圧部材22a,22bに加わる荷重の平均値が所定荷重に達する前に、押圧部材22a,22bの変位量の平均値が目標変位量に達した場合に、「Yes」と判別してもよい。
【0099】
(変形例)
上述の実施形態では、複数の車輪24a〜24dのうち、車輪24a,24bが第2駆動装置30によって回転駆動される場合について説明したが、車輪24a〜24dのうちの少なくともひとつの車輪が第2駆動装置30によって回転駆動される駆動輪に設定されていればよい。
【0100】
上述の実施形態では、一対の押圧部材22a,22bを有する押圧装置100について説明したが、押圧装置100が有する押圧部材の数は上述の例に限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0101】
上述の実施形態では、位置調整制御の一例として、
図11のステップS4からS11の処理を行なう場合について説明したが、位置調整制御は上述の例に限定されない。例えば、ステップS6およびステップS8〜S11の処理を設けずに、ステップS5の処理の後にステップS7の処理に進んでもよい。また、例えば、ステップS10の処理を設けずに、ステップS9の処理の後にステップS11の処理に進んでもよい。なお、これらの場合、後退距離および前進距離は、押圧面23a,23bの長さLおよびウェブ5aの板厚Tに応じて適切に設定する必要がある。
【0102】
(好ましい押圧位置)
以下、押圧部材22a,22bによる側壁部6b,6cの好ましい押圧位置について説明する。以下に説明する好ましい押圧位置は、本発明者らの詳細な検討によって見出されたものである。
図16は、側壁部6b,6cの好ましい押圧位置を説明するための図である。なお、
図16は、Uリブ6および押圧部材22a,22bを模式的に示した平面図である。
【0103】
図16に示すように、本発明者らは、まず、一対の側壁部6b,6cにおいて、基準領域Rb、後方領域Rr、および前方領域Rfを定義した。具体的には、一対の側壁部6b,6cにおいて、ウェブ5aの板厚中心線Cから後方に0.5T(Tはウェブ5aの板厚)の位置P1よりも前方でかつ板厚中心線Cから前方に0.5Tの位置P2よりも後方の領域を、基準領域Rbと定義した。言い換えると、一対の側壁部6b,6cのうち、ウェブ5aと交差する領域を、基準領域Rbと定義した。また、一対の側壁部6b,6cにおいて、板厚中心線Cから後方に0.5Tの位置P1よりも後方でかつ板厚中心線Cから後方に2.5Tの位置P3よりも前方の領域を、後方領域Rrと定義した。さらに、一対の側壁部6b,6cにおいて、板厚中心線Cから前方に0.5Tの位置P2よりも前方でかつ板厚中心線Cから前方に2.5Tの位置P4よりも後方の領域を、前方領域Rfと定義した。
【0104】
本発明者らの検討の結果、後方領域Rrにおいて上述の負荷工程および除荷工程を実施するとともに、前方領域Rfにおいて上述の負荷工程および除荷工程を実施することが好ましいことが分かった。なお、以下においては、後方領域Rrにおいて実行される負荷工程を、後方負荷工程といい、前方領域Rfにおいて実行される負荷工程を、前方負荷工程という。
【0105】
より具体的には、後方負荷工程では、基準領域Rbに接触しないように、押圧部材22a,22bが後方領域Rrの少なくとも一部に接触しつつ一対の側壁部6b,6cを押圧することが好ましい。また、前方負荷工程では、基準領域Rbに接触しないように、押圧部材22a,22bが前方領域Rfの少なくとも一部に接触しつつ一対の側壁部6b,6cを押圧することが好ましい。この場合、後方負荷工程および前方負荷工程において、押圧部材22a,22b、交差位置(すなわち、基準領域Rb)を押圧しないので、小さな力で、側壁部6b,6cを十分に変形させることができる。それにより、側壁部6b,6cのうち、基準領域Rbの前後の領域(後方領域Rrおよび前方領域Rf)において、小さな押圧力で、スプリングバックの効果を十分に得ることができる。
【0106】
そこで、本実施形態に係る押圧装置100では、前記押圧部材が基準領域Rbに接触しないように後方領域Rrの少なくとも一部または前方領域Rfの少なくとも一部を押圧できるように、上述の位置調整制御(
図11のステップS4からS11)の各条件(前進距離および後退距離)が調整されるとともに、押圧面23a,23bの長さLが適切な値に調整される。
【0107】
なお、後方負荷工程および前方負荷工程において基準領域Rbは押圧されないので、基準領域Rbにおいてはスプリングバックの効果を十分に得られない場合がある。しかしながら、上記のように、基準領域Rbの前後の領域(後方領域Rrおよび前方領域Rf)においてスプリングバックの効果を十分に得ることができる。このため、仮に、基準領域Rbにおいて亀裂が発生したとしても、その亀裂の進展を、後方領域Rrおよび前方領域Rfにおいて十分に抑制することができる。すなわち、本実施形態によれば、横リブ5の周辺のルート部14において疲労亀裂が発生すること、または疲労亀裂が進展することを、小さな押圧力で十分に抑制することができる。