(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貫通孔の内周面は、前記クランクシャフトの軸線方向で隣り合う前記クランク室の一方に近づくにつれて拡径していく第1円錐面と、前記クランクシャフトの軸線方向で隣り合う前記クランク室の他方に近づくにつれて拡径していく第2円錐面と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のV型多気筒内燃機関のシリンダブロック。
前記貫通孔の内周面は、前記第1雌ねじ孔の軸線に沿って延びる第1直線部、及び前記第2雌ねじ孔の軸線に沿って延びる第2直線部を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のV型多気筒内燃機関のシリンダブロック。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第1バンク及び第2バンクには、シリンダヘッドがボルトによってそれぞれ取り付けられている。ここで、各ボルトの軸線方向が、各シリンダボア内を往復運動するピストンのストローク方向に一致する場合、シリンダブロックには、ピストンの往復運動に伴い、ピストンのストローク方向に荷重が作用する。そして、例えば、貫通孔が、各隔壁に対して、各ボルトの軸線と交わる位置に形成されていると、貫通孔の内周面において、ピストンのストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中し易い。貫通孔の内周面において、ピストンのストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中すると、貫通孔が変形して、クランクシャフトの軸線方向で隣り合うクランク室内の貫通孔を介した空気の行き来がし難くなり、ポンピングロスが低減され難くなってしまう。
【0006】
また、第1バンク及び第2バンクの各シリンダボアとクランクシャフトとを近づけることにより、シリンダブロックを小型化することが考えられている。例えば、特許文献1では、貫通孔が、各隔壁に対して、第1バンク及び第2バンクの各シリンダボアとクランクシャフトとの間に一つずつ形成されている。このような場合、貫通孔が形成されている分だけ、第1バンク及び第2バンクの各シリンダボアとクランクシャフトとを近づけることができなくなり、シリンダブロックの小型化を図ることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ポンピングロスの低減を図りつつも、小型化を図ることができるV型多気筒内燃機関のシリンダブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するV型多気筒内燃機関のシリンダブロックは、V型に配置される第1バンク及び第2バンクと、前記第1バンクに形成されるとともにクランクシャフトの軸線方向に複数配列される第1シリンダボアと、前記第2バンクに形成されるとともに前記クランクシャフトの軸線方向に複数配列される第2シリンダボアと、前記複数の第1シリンダボアのうちの一つ、及び前記複数の第2シリンダボアのうちの一つと連通するとともに前記クランクシャフトの軸線方向に複数配列されるクランク室と、前記クランクシャフトを回転可能に支持するとともに前記クランクシャフトの軸線方向で隣り合う前記クランク室同士を隔てる隔壁と、前記各隔壁に形成されるとともに前記クランクシャフトの軸線方向で隣り合う前記クランク室同士を連通させる貫通孔と、前記第1バンクにおける前記第1シリンダボアの周囲に形成され、前記第1バンクに第1シリンダヘッドを取り付けるための第1ボルトが螺合される第1雌ねじ孔と、前記第2バンクにおける前記第2シリンダボアの周囲に形成され、前記第2バンクに第2シリンダヘッドを取り付けるための第2ボルトが螺合される第2雌ねじ孔と、を有し、前記第1雌ねじ孔の軸線は、前記第1シリンダボア内を往復運動する第1ピストンのストローク方向に一致するとともに、前記第2雌ねじ孔の軸線は、前記第2シリンダボア内を往復運動する第2ピストンのストローク方向に一致しているV型多気筒内燃機関のシリンダブロックであって、前記貫通孔は、前記各隔壁における前記第1バンクと前記第2バンクとを接続する前記第1バンクと前記第2バンクとの間に設けられたバンク間領域に形成されるとともに、前記第1バンクにおける前記第1シリンダボアの周囲の前記バンク間領域側に形成された前記第1雌ねじ孔の軸線に対して前記第1シリンダボアとは反対側、且つ、前記第2バンクにおける前記第2シリンダボアの周囲の前記バンク間領域側に形成された前記第2雌ねじ孔の軸線に対して前記第2シリンダボアとは反対側に配置されている。
【0009】
これによれば、貫通孔が、各隔壁におけるバンク間領域に形成されるとともに、第1雌ねじ孔の軸線に対して第1シリンダボアとは反対側、且つ、第2雌ねじ孔の軸線に対して第2シリンダボアとは反対側に配置されているため、第1シリンダボア及び第2シリンダボアとクランクシャフトとを近づけることができる。よって、シリンダブロックの小型化を図ることができる。また、貫通孔が、各隔壁に対して、第1ボルトの軸線及び第2ボルトの軸線と交わる位置に形成されている場合に比べて、貫通孔の内周面において、第1ピストン及び第2ピストンのストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中してしまうことを抑制することができる。その結果、貫通孔の内周面において、第1ピストン及び第2ピストンのストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中することにより貫通孔が変形して、クランクシャフトの軸線方向で隣り合うクランク室内の貫通孔を介した空気の行き来がし難くなってしまうことを抑制することができる。以上のことから、ポンピングロスの低減を図りつつも、シリンダブロックの小型化を図ることができる。
【0010】
上記V型多気筒内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記貫通孔の内周面は、前記クランクシャフトの軸線方向で隣り合う前記クランク室の一方に近づくにつれて拡径していく第1円錐面と、前記クランクシャフトの軸線方向で隣り合う前記クランク室の他方に近づくにつれて拡径していく第2円錐面と、を有しているとよい。
【0011】
これによれば、クランクシャフトの軸線方向で隣り合うクランク室内の貫通孔を介した空気の行き来がし易くなるため、各クランク室内での圧力変動が緩和され易くなり、ポンピングロスの低減を効率良く行うことができる。
【0012】
上記V型多気筒内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記貫通孔の内周面は、前記第1雌ねじ孔の軸線に沿って延びる第1直線部、及び前記第2雌ねじ孔の軸線に沿って延びる第2直線部を有しているとよい。
【0013】
これによれば、貫通孔の内周面において、第1ピストン及び第2ピストンのストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中してしまうことをさらに抑制し易くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ポンピングロスの低減を図りつつも、小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、V型多気筒内燃機関のシリンダブロックを具体化した一実施形態を
図1〜
図5にしたがって説明する。本実施形態のV型多気筒内燃機関は車両に搭載されている。
図1に示すように、V型多気筒内燃機関10は、シリンダブロック11を備えている。シリンダブロック11は、本体部20と、本体部20に対してそれぞれ分岐して延びてV型に配置される第1バンク21及び第2バンク31と、を有している。本体部20内には、クランクシャフト12が収容されている。
【0017】
図2に示すように、第1バンク21には、第1シリンダボア22が4つ形成されている。4つの第1シリンダボア22は、クランクシャフト12の軸線方向(
図2において矢印X1で示す方向)に配列されている。よって、シリンダブロック11は、第1バンク21に形成されるとともにクランクシャフト12の軸線方向に複数配列される第1シリンダボア22を有している。
【0018】
第2バンク31には、第2シリンダボア32が4つ形成されている。4つの第2シリンダボア32は、クランクシャフト12の軸線方向に配列されている。よって、シリンダブロック11は、第2バンク31に形成されるとともにクランクシャフト12の軸線方向に複数配列される第2シリンダボア32を有している。本実施形態のV型多気筒内燃機関10は、V型の8気筒ディーゼルエンジンである。
【0019】
図1に示すように、第1シリンダボア22におけるクランクシャフト12側の開口端22eは、クランクシャフト12に向けて開口している。第1バンク21の各第1シリンダボア22内には、第1ピストン23が往復運動可能にそれぞれ収容されている。各第1ピストン23は、コネクティングロッド24を介してクランクシャフト12に連結されている。そして、コネクティングロッド24により各第1ピストン23の往復運動がクランクシャフト12の回転運動に変換される。
【0020】
また、第2シリンダボア32におけるクランクシャフト12側の開口端32eは、クランクシャフト12に向けて開口している。第2バンク31の各第2シリンダボア32内には、第2ピストン33が往復運動可能にそれぞれ収容されている。各第2ピストン33は、コネクティングロッド34を介してクランクシャフト12に連結されている。そして、コネクティングロッド34により各第2ピストン33の往復運動がクランクシャフト12の回転運動に変換される。
【0021】
図1及び
図3に示すように、シリンダブロック11は、複数の第1シリンダボア22のうちの一つ、及び複数の第2シリンダボア32のうちの一つと連通するとともにクランクシャフト12の軸線方向に複数配列されるクランク室13を有している。各クランク室13は、本体部20の内部に形成されている。クランク室13内には、クランクシャフト12のクランクピン12a及びバランスウェイト12bが配置されている。
【0022】
図3に示すように、シリンダブロック11は、クランクシャフト12を回転可能に支持するとともにクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13同士を隔てる隔壁14を有している。各隔壁14の下面には、クランクシャフト12を回転可能に支持する軸受面14aがそれぞれ形成されている。
図1に示すように、軸受面14aは、各隔壁14の下面に対して、クランクシャフト12の外周面に沿う半円状に凹設されている。
【0023】
各隔壁14の下面には、クランクキャップ15がそれぞれ取り付けられている。クランクキャップ15は、例えば、取付ボルト16によって各隔壁14の下面に取り付けられている。クランクキャップ15における各隔壁14側の面には、クランクシャフト12を回転可能に支持する軸受面15aが複数形成されている。軸受面15aは、クランクキャップ15における各隔壁14側の面に対して、クランクシャフト12の外周面に沿う半円状である。そして、各軸受面15aは、各隔壁14の軸受面14aと協働してクランクシャフト12を回転可能に支持する。
【0024】
シリンダブロック11の本体部20には、オイルパン17が取り付けられている。オイルパン17は、本体部20に対して第1バンク21及び第2バンク31とは反対側の端面(下面)に取り付けられている。各クランク室13は、オイルパン17の内部に連通している。オイルパン17の内部は、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13同士を連通する。オイルパン17内には、エンジンオイルが貯留されている。なお、オイルパン17内にエンジンオイルが満たされている状態では、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13内の空気の行き来が、エンジンオイルの存在によって行われ難くなっている。
【0025】
第1バンク21は、本体部20から延びるとともに第2バンク31側に位置する第1バンク傾斜面21aを有している。第2バンク31は、本体部20から延びるとともに第1バンク21側に位置する第2バンク傾斜面31aを有している。本体部20は、第1バンク傾斜面21aと第2バンク傾斜面31aとを繋ぐ谷面20aを有している。そして、第1バンク傾斜面21aにおける谷面20aとは反対側の縁部と第2バンク傾斜面31aにおける谷面20aとは反対側の縁部とを繋ぐ仮想直線L10、第1バンク傾斜面21a、第2バンク傾斜面31a、及び谷面20aによって囲まれる空間は、第1バンク21と第2バンク31との間であるバンク間18になっている。
【0026】
各隔壁14は、第1バンク21と第2バンク31とを接続する第1バンク21と第2バンク31との間に設けられたバンク間領域19をそれぞれ有している。ここで、第1シリンダボア22の内周面におけるバンク間18に最も近い部分を第1シリンダボア22の軸線方向に通過する直線を第1仮想直線L11とし、第2シリンダボア32の内周面におけるバンク間18に最も近い部分を第2シリンダボア32の軸線方向に通過する直線を第2仮想直線L12とする。このとき、
図1における断面視において、バンク間領域19は、隔壁14における第1仮想直線L11及び第2仮想直線L12よりもバンク間18側に位置する領域である。
【0027】
V型多気筒内燃機関10は、第1バンク21に取り付けられる第1シリンダヘッド41を備えている。第1シリンダヘッド41は、第1ボルト41aによって第1バンク21における本体部20とは反対側の端面に取り付けられている。第1シリンダヘッド41は、第1シリンダボア22におけるクランクシャフト12とは反対側の開口を閉塞する。
【0028】
第1バンク21における第1シリンダボア22の周囲には、第1雌ねじ孔21hが形成されている。第1雌ねじ孔21hには、第1バンク21に第1シリンダヘッド41を取り付けるための第1ボルト41aが螺合される。第1雌ねじ孔21hは、第1バンク21における第1シリンダボア22の周囲のバンク間領域19側に形成されている。第1雌ねじ孔21hは、第1バンク21において、第1バンク傾斜面21aに隣接する部位に形成されている。よって、第1雌ねじ孔21hは、第1バンク21におけるバンク間18寄りの部位に形成されている。第1雌ねじ孔21hの軸線L1は、第1シリンダボア22内を往復運動する第1ピストン23のストローク方向に一致する。第1雌ねじ孔21hの軸線L1は、第1ボルト41aの軸線に一致する。よって、第1ボルト41aの軸線方向は、第1ピストン23のストローク方向に一致する。
【0029】
V型多気筒内燃機関10は、第2バンク31に取り付けられる第2シリンダヘッド42を備えている。第2シリンダヘッド42は、第2ボルト42aによって第2バンク31における本体部20とは反対側の端面に取り付けられている。第2シリンダヘッド42は、第2シリンダボア32におけるクランクシャフト12とは反対側の開口を閉塞する。
【0030】
第2バンク31における第2シリンダボア32の周囲には、第2雌ねじ孔31hが形成されている。第2雌ねじ孔31hには、第2バンク31に第2シリンダヘッド42を取り付けるための第2ボルト42aが螺合される。第2雌ねじ孔31hは、第2バンク31における第2シリンダボア32の周囲のバンク間領域19側に形成されている。第2雌ねじ孔31hは、第2バンク31において、第2バンク傾斜面31aに隣接する部位に形成されている。よって、第2雌ねじ孔31hは、第2バンク31におけるバンク間18寄りの部位に形成されている。第2雌ねじ孔31hの軸線L2は、第2シリンダボア32内を往復運動する第2ピストン33のストローク方向に一致する。第2雌ねじ孔31hの軸線L2は、第2ボルト42aの軸線に一致する。よって、第2ボルト42aの軸線方向は、第2ピストン33のストローク方向に一致する。
【0031】
図4に示すように、各隔壁14には、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13同士を連通する円孔状の貫通孔50がそれぞれ形成されている。各貫通孔50は、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13内の空気の行き来を許容する。
【0032】
各貫通孔50の内周面は、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の一方に近づくにつれて拡径していく第1円錐面51と、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の他方に近づくにつれて拡径していく第2円錐面52と、を有している。
【0033】
第1円錐面51におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の一方側の開口縁の内径と、第2円錐面52におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の他方側の開口縁の内径とは同じである。第1円錐面51におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の一方とは反対側の端縁と、第2円錐面52におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の他方とは反対側の端縁とは繋がっている。
【0034】
第1円錐面51におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の一方とは反対側の端縁と、第2円錐面52におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の他方とは反対側の端縁との連繋部位は、貫通孔50の内周面において、最も内径の小さい部分である。
【0035】
図5に示すように、各貫通孔50は、各隔壁14におけるバンク間領域19に形成されるとともに、第1雌ねじ孔21hの軸線L1に対して第1シリンダボア22とは反対側、且つ、第2雌ねじ孔31hの軸線L2に対して第2シリンダボア32とは反対側に配置されている。各貫通孔50は、第1シリンダボア22の開口端22e、第2シリンダボア32の開口端32eに対してバンク間18寄りであって、且つ第1雌ねじ孔21hの軸線L1及び第2雌ねじ孔31hの軸線L2に対してバンク間18寄りに配置されている。よって、各貫通孔50は、各隔壁14に対して、第1ボルト41aの軸線及び第2ボルト42aの軸線からずれた位置に形成されている。貫通孔50の内周面は、第1雌ねじ孔21hの軸線L1及び第2雌ねじ孔31hの軸線に対して、バンク間18寄りに離れている。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。
各クランク室13内では、第1シリンダボア22内での第1ピストン23の往復運動、及び第2シリンダボア32内での第2ピストン33の往復運動に伴い容積が変化することで圧力変動が生じる。このとき、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13内の各貫通孔50を介した空気の行き来が許容されるため、各クランク室13内での圧力変動が緩和され、V型多気筒内燃機関10の運転時における抵抗、所謂、ポンピングロスが低減される。
【0037】
また、第1ボルト41a及び第2ボルト42aの軸線方向が、第1ピストン23及び第2ピストン33のストローク方向に一致する場合、シリンダブロック11には、第1ピストン23及び第2ピストン33の往復運動に伴い、第1ピストン23及び第2ピストン33のストローク方向に荷重が作用する。このとき、貫通孔50は、各隔壁14におけるバンク間領域19に形成されるとともに、第1雌ねじ孔21hの軸線L1に対して第1シリンダボア22とは反対側、且つ、第2雌ねじ孔31hの軸線L2に対して第2シリンダボア32とは反対側に配置されており、第1ボルト41aの軸線及び第2ボルト42aの軸線からずれている。よって、貫通孔50が、各隔壁14に対して、第1ボルト41aの軸線及び第2ボルト42aの軸線と交わる位置に形成されている場合に比べて、貫通孔50の内周面において、第1ピストン23及び第2ピストン33のストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中してしまうことが抑制される。
【0038】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)貫通孔50は、各隔壁14におけるバンク間領域19に形成されるとともに、第1雌ねじ孔21hの軸線L1に対して第1シリンダボア22とは反対側、且つ、第2雌ねじ孔31hの軸線L2に対して第2シリンダボア32とは反対側に配置されている。このため、第1シリンダボア22及び第2シリンダボア32とクランクシャフト12とを近づけることができ、シリンダブロック11の小型化を図ることができる。また、貫通孔50が、各隔壁14に対して、第1ボルト41aの軸線及び第2ボルト42aの軸線と交わる位置に形成されている場合に比べて、貫通孔50の内周面において、第1ピストン23及び第2ピストン33のストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中してしまうことが抑制される。その結果、貫通孔50の内周面において、第1ピストン23及び第2ピストン33のストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中することにより貫通孔50が変形して、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13内の貫通孔50を介した空気の行き来がし難くなってしまうことを抑制することができる。以上のことから、ポンピングロスの低減を図りつつも、シリンダブロック11の小型化を図ることができる。
【0039】
(2)各貫通孔50の内周面は、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の一方に近づくにつれて拡径していく第1円錐面51と、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の他方に近づくにつれて拡径していく第2円錐面52と、を有している。これによれば、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13内の貫通孔50を介した空気の行き来がし易くなるため、各クランク室13内での圧力変動が緩和され易くなり、ポンピングロスの低減を効率良く行うことができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図6に示すように、貫通孔60の内周面が、第1雌ねじ孔21hの軸線L1に沿って延びる第1直線部61、及び第2雌ねじ孔31hの軸線L2に沿って延びる第2直線部62を有していてもよい。貫通孔60は、クランクシャフト12の軸線方向から見て、略ホームベース形状である。
【0041】
貫通孔60の内周面は、本体部20の谷面20aに沿って延びる延在部63と、延在部63における第1バンク21側の端縁と第1直線部61とを繋ぐ第1バンク側角部64と、延在部63における第2バンク31側の端縁と第2直線部62とを繋ぐ第2バンク側角部65と、を有している。
【0042】
第1バンク側角部64は、第1直線部61から離れるにつれて第1雌ねじ孔21hの軸線L1から徐々に離れていく湾曲面である。第1バンク側角部64は、第1バンク21に向けて凸である湾曲面である。第1バンク側角部64における延在部63側の端部は、第1バンク側角部64において第1雌ねじ孔21hの軸線L1から最も離間した部分である。第1バンク側角部64における延在部63側の端部は、第1バンク側角部64において最も曲率が大きい部分である。
【0043】
第2バンク側角部65は、第2直線部62から離れるにつれて第2雌ねじ孔31hの軸線L2から徐々に離れていく湾曲面である。第2バンク側角部65は、第2バンク31に向けて凸である湾曲面である。第2バンク側角部65における延在部63側の端部は、第2バンク側角部65において第2雌ねじ孔31hの軸線L2から最も離間した部分である。第2バンク側角部65における延在部63側の端部は、第2バンク側角部65において最も曲率が大きい部分である。
【0044】
さらに、貫通孔60の内周面は、第1直線部61における第1バンク側角部64とは反対側の端縁と第2直線部62における第2バンク側角部65とは反対側の端縁とを繋ぐ連繋部66を有している。連繋部66は、クランクシャフト12に向けて凸となる弧状に湾曲した面である。連繋部66の曲率は、第1バンク側角部64における延在部63側の端部及び第2バンク側角部65における延在部63側の端部の曲率よりも小さい。
【0045】
貫通孔60の内周面が、第1雌ねじ孔21hの軸線L1に沿って延びる第1直線部61、及び第2雌ねじ孔31hの軸線L2に沿って延びる第2直線部62を有しているため、貫通孔60の内周面において、第1ピストン23及び第2ピストン33のストローク方向と直交する方向に位置する部分に応力が集中してしまうことがさらに抑制し易くなる。
【0046】
第1バンク側角部64における延在部63側の端部は、第1バンク側角部64において最も曲率が大きい部分であり、第2バンク側角部65における延在部63側の端部は、第2バンク側角部65において最も曲率が大きい部分である。しかし、第1バンク側角部64における延在部63側の端部は、第1バンク側角部64において第1雌ねじ孔21hの軸線L1から最も離間しており、第2バンク側角部65における延在部63側の端部は、第2バンク側角部65において第2雌ねじ孔31hの軸線L2から最も離間している。よって、シリンダブロック11に、第1ピストン23及び第2ピストン33のストローク方向に荷重が作用しても、第1バンク側角部64における延在部63側の端部、及び第2バンク側角部65における延在部63側の端部において応力が集中してしまうことが抑制されている。
【0047】
○
図7に示すように、貫通孔70が、クランクシャフト12の軸線方向から見て、楕円孔形状であってもよい。貫通孔70は、クランクシャフト12の軸線方向から見て、貫通孔70の長手方向が本体部20の谷面20aに対して直交する方向に延びるように隔壁14に形成されている。したがって、貫通孔70は、クランクシャフト12の軸線方向から見て、貫通孔70の短手方向が本体部20の谷面20aに平行に延びるように隔壁14に形成されている。貫通孔70の内周面は、第1雌ねじ孔21hの軸線L1及び第2雌ねじ孔31hの軸線L2に対して、バンク間18寄りに離れている。
【0048】
○ 実施形態において、貫通孔50は、クランクシャフト12の軸線方向から見て、矩形形状、三角形状、台形形状等の多角形状であってもよく、貫通孔50におけるクランクシャフト12の軸線方向から見た形状は、特に限定されるものではない。
【0049】
○ 実施形態において、貫通孔50の配置位置は、クランクシャフト12の摺動部分である軸受面14a,15aへオイルを供給するためのオイルホールの形成位置に応じて適宜ずらしてもよい。要は、貫通孔50が、各隔壁14におけるバンク間領域19に形成されるとともに、第1雌ねじ孔21hの軸線L1に対して第1シリンダボア22とは反対側、且つ、第2雌ねじ孔31hの軸線L2に対して第2シリンダボア32とは反対側に配置されていればよい。
【0050】
○ 実施形態において、V型多気筒内燃機関10は、貫通孔50に、例えば、バランスシャフトが挿通されている構成であってもよい。バランスシャフトは、クランクシャフト12の回転が伝達されて、クランクシャフト12と同じ回転数で回転する。貫通孔50にバランスシャフトが挿通されている場合、バランスシャフトにおける貫通孔50内に位置する部分の外径が、バランスシャフトにおける貫通孔50から突出している部分の外径よりも小さくなっているのが好ましい。これによれば、バランスシャフトにおける貫通孔50内に位置する部分の外径と、バランスシャフトにおける貫通孔50から突出している部分の外径とが同じ場合に比べて、貫通孔50内を通過する空気の流路面積を確保することができる。
【0051】
○ 実施形態において、第1円錐面51におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の一方側の開口縁、及び第2円錐面52におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の他方側の開口縁が面取りされていてもよい。これによれば、第1円錐面51におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の一方側の開口縁、及び第2円錐面52におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の他方側の開口縁がピン角である場合に比べて、空気の流れが乱れ難くなる。その結果、クランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13内の貫通孔50を介した空気の行き来がし易くなるため、各クランク室13内での圧力変動が緩和され易くなり、ポンピングロスの低減を効率良く行うことができる。
【0052】
○ 実施形態において、第1雌ねじ孔21hが、第1バンク21における第1シリンダボア22の周囲において、第1バンク傾斜面21aとは反対側であるオイルパン17側の部位にも形成されていてもよい。
【0053】
○ 実施形態において、第2雌ねじ孔31hが、第2バンク31における第2シリンダボア32の周囲において、第2バンク傾斜面31aとは反対側であるオイルパン17側の部位にも形成されていてもよい。
【0054】
○ 実施形態において、貫通孔50の内周面は、第1円錐面51におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の一方とは反対側の端縁と、第2円錐面52におけるクランクシャフト12の軸線方向で隣り合うクランク室13の他方とは反対側の端縁との間を繋ぐ面を有していてもよい。
【0055】
○ 実施形態において、貫通孔50の内周面は、第1円錐面51及び第2円錐面52を有しておらず、内周面全体がクランクシャフト12の軸線方向に延びていてもよい。
○ 実施形態において、第1バンク21の第1シリンダボア22の数、及び第2バンク31の第2シリンダボア32の数は特に限定されるものではなく、例えば、第1シリンダボア22及び第2シリンダボア32の数が3つずつであってもよい。よって、V型多気筒内燃機関10は、V型の6気筒ディーゼルエンジンであってもよい。
【0056】
○ 実施形態において、V型多気筒内燃機関10はディーゼルエンジン以外でもよく、例えばガソリンエンジンでもよい。