特許第6881263号(P6881263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881263
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20210524BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20210524BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   H02G3/04 062
   H01B7/00 301
   B60R16/02 620Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-230884(P2017-230884)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-103221(P2019-103221A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】銭谷 順平
(72)【発明者】
【氏名】月森 直人
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−150991(JP,A)
【文献】 特開2011−155763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H01B 7/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線及び該芯線を覆う絶縁被覆を備える電線と、
少なくとも前記芯線を覆って電磁シールドする電磁シールド部材と、
前記電線よりも曲げ剛性が高く、長尺状に形成された経路規制部材と、
前記電線と前記電磁シールド部材と前記経路規制部材とを覆う外装部材と、を有し、
前記経路規制部材に沿って前記電線が固定され
x本(但し、x≧2)の前記電線を備え、
x本の前記電線の内のy本(但し、1≦y≦x−1)の電線が第1固定部材によって前記経路規制部材に固定され、
x本の前記電線の内の、前記y本の電線とは異なる電線を少なくとも1本以上含むz本(但し、1≦z≦x)の電線が第2固定部材によって前記経路規制部材に固定されているワイヤハーネス。
【請求項2】
芯線及び該芯線を覆う絶縁被覆を備える電線と、
少なくとも前記芯線を覆って電磁シールドする電磁シールド部材と、
前記電線よりも曲げ剛性が高く、長尺状に形成された経路規制部材と、
前記電線と前記電磁シールド部材と前記経路規制部材とを覆う外装部材と、を有し、
前記経路規制部材に沿って前記電線が固定され、
前記経路規制部材の端部が保護部材に覆われているワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電磁シールド部材は、前記絶縁被覆の外側を覆う請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記電磁シールド部材は、前記経路規制部材を覆う請求項1〜3の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記経路規制部材は金属製である請求項1〜4の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記経路規制部材が、前記電磁シールド部材と同種の金属で構成される請求項1〜5の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスにおいては、電線の外側をコルゲートチューブ等の外装部材で覆われたワイヤハーネスが知られている(例えば特許文献1参照)。また、特許文献1のワイヤハーネスでは、経路規制の必要な箇所にプロテクタを用いている。
【0003】
また、電気自動車等に用いられるワイヤハーネスにおいては、電線に対して大電流が供給されることから、電磁ノイズ対策として電線の周囲が電磁シールド部材に覆われたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−51042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなワイヤハーネスでは、経路規制の必要な箇所にプロテクタを用いている。プロテクタは樹脂成形品であって、上面と前後面が開口した本体と、本体の上面を塞ぐ蓋とを備えている。本体の前後開口部が電線の出入口であり、本体と蓋の内側に電線の配線路が設けられている。したがって、配線経路を変更する場合は、プロテクタを成形する金型を作り直す必要があるため、コスト上昇を招く上、多大な時間を要する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、配線経路を容易に変更することが可能なワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するワイヤハーネスは、芯線及び該芯線を覆う絶縁被覆を備える電線と、少なくとも前記芯線を覆って電磁シールドする電磁シールド部材と、前記電線よりも曲げ剛性が高く、長尺状に形成された経路規制部材と、前記電線と前記電磁シールド部材と前記経路規制部材とを覆う外装部材と、を有し、前記経路規制部材に沿って前記電線が固定されている。
【0008】
上記態様によれば、電線を、電線よりも曲げ剛性が高い経路規制部材に沿って固定することで、電線の経路規制を行うことができる。また、電線の配線経路の変更が必要になった場合は、例えばベンダー機を用いて、経路規制部材を二次元的又は三次元的に適宜曲げ加工すればよい。したがって、プロテクタを用いて電線の経路規制を行う場合と比べて、電線の配線経路を容易に変更することができる。
【0009】
上記ワイヤハーネスにおいて、前記電磁シールド部材は、前記絶縁被覆の外側を覆う構成としてもよい。
上記ワイヤハーネスにおいて、前記電磁シールド部材は、前記経路規制部材を覆う構成としてもよい。
【0010】
上記ワイヤハーネスにおいて、x本(但し、x≧2)の前記電線を備え、x本の前記電線の内のy本(但し、1≦y≦x−1)の電線が第1固定部材によって前記経路規制部材に固定され、x本の前記電線の内の、前記y本の電線とは異なる電線を少なくとも1本以上含むz本(但し、1≦z≦x)の電線が前記第2固定部材によって前記経路規制部材に固定されている構成としてもよい。
【0011】
上記ワイヤハーネスにおいて、前記経路規制部材は金属製であってもよい。
上記ワイヤハーネスにおいて、前記経路規制部材は、前記電磁シールド部材と同種の金属で構成してもよい。
【0012】
上記ワイヤハーネスにおいて、前記経路規制部材の端部が保護部材に覆われている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイヤハーネスによれば、配線経路を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態におけるワイヤハーネスの概略図。
図2】同実施形態におけるワイヤハーネスの断面図。
図3】同実施形態におけるワイヤハーネスの製造方法を説明するための説明図。
図4】同実施形態におけるワイヤハーネスの製造方法を説明するための説明図。
図5】同実施形態におけるワイヤハーネスの製造方法を説明するための説明図。
図6】第2実施形態におけるワイヤハーネスの断面図。
図7】同実施形態におけるワイヤハーネスの製造方法を説明するための説明図。
図8】同実施形態におけるワイヤハーネスの製造方法を説明するための説明図。
図9】同実施形態におけるワイヤハーネスの製造方法を説明するための説明図。
図10】同実施形態におけるワイヤハーネスの製造方法を説明するための説明図。
図11】変形例におけるワイヤハーネスの断面図。
図12】変形例におけるワイヤハーネスの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、ワイヤハーネスの第1実施形態について、図面に従って説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0016】
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、複数(ここでは、2本)の電線11と、複数の電線11を一括して覆う編組部材12と、前記複数の電線11が固定される経路規制部材13と、それら電線11、編組部材12及び経路規制部材13を覆う外装部材15とを有する。
【0017】
図2に示すように、各電線11は、それぞれ、芯線11aと、該芯線11aの外側を被覆する絶縁被覆11bとを有する。
芯線11aは、例えば撚り線や単芯線で構成される。絶縁被覆11bは、絶縁体で構成される。本実施形態では、例えば、絶縁被覆11bは合成樹脂から構成される。
【0018】
編組部材12は、例えば複数の導電性の金属細線をメッシュ状に編み込んで筒状に形成され、高い可撓性を有する。編組部材12の金属細線は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金から構成される。編組部材12によって、電線11は電磁シールドされている。
【0019】
経路規制部材13は、例えば略円柱状をなしている。経路規制部材13は、長尺状に形成されている。例えば、経路規制部材13の経路長は、電線11の経路長よりも短くなっている。これにより、例えば電線11の端部に取り付けられたコネクタ(図示せず)と経路規制部材13が干渉することを抑制することができる。経路規制部材13は、例えば電線11(ワイヤハーネス10)の配線経路に合わせて二次元的又は三次元的に適宜曲げ加工される。経路規制部材13は、例えば金属からなる。経路規制部材13は、例えば編組部材12と同種の金属で構成されることが好ましく、本例ではアルミニウムを母材として構成される。これにより、編組部材12と経路規制部材13との間での電食の発生が抑えられる。
【0020】
経路規制部材13は、電線11よりも曲げ剛性が高く、電線11よりも曲がりにくくなっている。
複数の電線11は、編組部材12で一括して覆われた状態で、固定部材14によって、経路規制部材13に固定されている。経路規制部材13の外周面は、編組部材12の金属細線と接触している。固定部材14は、経路規制部材13と編組部材12との外側を覆うように設けられている。固定部材14の内周面は、経路規制部材13と編組部材12とに接触している。なお、固定部材14としては、例えばテープや結束バンドを用いることができる。
【0021】
固定部材14の設置位置は、特に限定されない。経路規制部材13の延在方向における任意の位置に固定部材14を設けることができる。例えば、経路規制部材13の直線部分に固定部材14を設けてもよいし、経路規制部材13の屈曲部分に固定部材14を設けてもよい。また、経路規制部材13の端部を覆うように固定部材14を設けてもよい。
【0022】
また、固定部材14の数は、特に限定されない。経路規制部材13の複数箇所に固定部材14を設けることができる。
各電線11、編組部材12及び経路規制部材13は、その外側が外装部材15によって覆われている。本例の外装部材15は、経路規制部材13全体を覆うように形成されている。すなわち、本例の外装部材15は、経路規制部材13の全長を覆うとともに、経路規制部材13の全周を覆うように形成されている。換言すると、本例の経路規制部材13は、外装部材15の外側に露出していない。
【0023】
外装部材15は、例えば略円筒状をなしている。外装部材15は、例えば可撓性を有するコルゲートチューブである。つまり、本実施形態の外装部材15は、環状凸部15aと環状凹部15bとが長手方向に交互に並んだ構成となっている。
【0024】
次に、ワイヤハーネス10の製造方法を説明する。
図3に示すように、配線経路に合わせて曲げ加工された経路規制部材13を準備する。
図4に示すように、編組部材12内に挿通した各電線11を、経路規制部材13に沿わせて配置する。
【0025】
図5に示すように、経路規制部材13に、各電線11及び編組部材12を固定部材14によって固定する。本例では4箇所を1種類の固定部材14によって固定している。
次いで、固定部材14によって固定された経路規制部材13、各電線11及び編組部材12を外装部材15内に挿通することで、図1に示すようなワイヤハーネス10が完成する。
【0026】
本実施形態の作用を説明する。
経路規制部材13は、電線11よりも高い曲げ剛性を有している。よって、電線11を曲げた状態で経路規制部材13に沿って固定させた際に、経路規制部材13は、例えば電線11が直線(固定前の状態)に戻ろうとする反発力に耐えて配線経路を維持することができる。また、電線11を経路規制部材13に沿って固定すると、固定部材14で固定された位置を支点にして、電線11が自重により変形することを抑制することができる。したがって、経路規制部材13は、電線11の経路規制を実施することができる。
【0027】
本実施形態の効果を記載する。
(1)電線11よりも曲げ剛性が高い経路規制部材13に電線11を固定することで、電線11の経路規制を行うことができる。よって、ワイヤハーネス10の配線経路の変更が必要になった場合は、例えばベンダー機を用いて、経路規制部材13を二次元的又は三次元的に適宜曲げ加工を施せばよい。したがって、プロテクタを用いてワイヤハーネス10の経路規制を行う場合と比べて、ワイヤハーネス10の配線経路を容易に変更することができる。
【0028】
(2)また、ワイヤハーネス10は、長尺状の経路規制部材13に、電線11固定することで経路規制を行っている。よって、経路規制部材13によって経路規制された区間のワイヤハーネス10は、プロテクタで経路規制する場合と比べて、当該区間のワイヤハーネス10が大型化するのを抑制することができる。したがって、ワイヤハーネス10が周辺部品等と干渉することを抑制できるため、ワイヤハーネス10の車両への組み付け性を向上させることができる。
【0029】
(3)経路規制部材13は金属から構成される。この構成によれば、経路規制部材13が樹脂から構成される場合と比べて、例えば曲げ加工時に経路規制部材13にヒビや割れが発生し難い。よって、経路規制部材13の曲げ加工性が優れるため、経路規制部材13を二次元的又は三次元的に曲げ加工する際に、より曲率半径の小さな箇所を経路規制部材13に設けることができる。したがって、経路規制部材13が樹脂から構成される場合と比べて、ワイヤハーネス10をより多様な経路で経路規制することができる。
【0030】
(4)電磁シールド部材である編組部材12は、電線11の絶縁被覆11bの外側を覆っている。編組部材12が絶縁被覆11bの内側に存在する場合は、編組部材12をアース接続する際に、絶縁被覆11bを剥いで編組部材12を露出させる必要がある。一方、この構成によれば、編組部材12は絶縁被覆11bの外部に存在するため、アース接地するために、絶縁被覆11bを剥いで編組部材12を露出させる工程が必要ない。したがって、ワイヤハーネス10を電磁シールドするために、編組部材12をアース接続する際の作業性を向上させることができる。
【0031】
(5)電線11と電線11が内挿された編組部材12が、二次元的又は三次元的な曲げ加工が施された経路規制部材13に沿って固定されている。すなわち、経路規制部材13は編組部材12内に挿通されていない。よって、例えば三次元的な曲げ加工が施された経路規制部材13を編組部材12に挿通させる必要がないため、ワイヤハーネス10の組立作業が複雑になることを抑制できる。したがって、経路規制部材13を編組部材12に挿通させる場合と比べて、ワイヤハーネス10の組立作業性を向上させることができる。
【0032】
(6)編組部材12は、複数の金属細線が編み込まれて構成されているため、その表面積は大きく電食の影響を受け易い。さらに、金属細線は細い金属線であるから、電食により金属細線が断線し、シールド性能が著しく低下する虞がある。これに対し、本実施形態では、経路規制部材13を、電磁シールド部材である編組部材12と同種の金属で構成するようにした。これにより、仮に経路規制部材13と編組部材12との接触部分に水等の液体がかかった場合であっても、編組部材12に電食が発生することを抑制できる。したがって、電食によって編組部材12の金属細線が断線して、シールド性能が低下することを抑制することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、ワイヤハーネスの第2実施形態を説明する。なお、本実施形態では第1実施形態との相違点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して、説明の一部又は全部を割愛する場合がある。
【0034】
図6に示すように、本実施形態のワイヤハーネス20は、第1実施形態と同様に2本の電線11と、編組部材12と、経路規制部材13と、外装部材15とを有する。
本実施形態のワイヤハーネス20では、第1固定部材21と第2固定部材22によって、2本の電線11が経路規制部材13に固定されている。第1固定部材21は、2本の電線11の内の一方の電線11を、経路規制部材13に固定している。さらに、第2固定部材22は、2本の電線11の両方を経路規制部材13に固定している。
【0035】
第1固定部材21及び第2固定部材22の設置位置は、特に限定されない。第1固定部材21及び第2固定部材22は、経路規制部材13の延在方向における任意の位置に設けることができる。例えば、経路規制部材13の直線部分に第1固定部材21及び第2固定部材22を設けてもよいし、経路規制部材13の屈曲部分に第1固定部材21及び第2固定部材22を設けてもよい。また、経路規制部材13の端部を覆うように第1固定部材21及び第2固定部材22を設けてもよい。また、第1固定部材21と第2固定部材22は、互いに径方向に重なるように設けてもよいし、互いに径方向に重ならないように設けてもよい。
【0036】
また、第1固定部材21及び第2固定部材22の数は、特に限定されない。経路規制部材13の複数箇所に第1固定部材21及び第2固定部材22を設けることができる。
また、第1固定部材21及び第2固定部材22が固定する電線11の本数は、特に限定されない。例えば、第1固定部材21が2本の電線11の内の一方の電線11を固定し、第2固定部材22が2本の電線11の内の他方の電線11を固定してもよい。
【0037】
第1固定部材21及び第2固定部材22は、例えばテープや結束バンドを用いることができる。第1固定部材21及び第2固定部材22は、テープ同士であったり結束バンド同士であったり、一方がテープで他方が結束バンドであってもよい。
【0038】
編組部材12は、第1固定部材21並びに第2固定部材22によって、各電線11を経路規制部材13に沿わせた状態で経路規制部材13に対して固定した組付体30全体を覆うようになっている。
【0039】
次に、ワイヤハーネス20の製造方法を説明する。
図7に示すように、配線経路に合わせて曲げ加工された経路規制部材13に対して1本の電線11を沿わせる。
【0040】
図8に示すように、経路規制部材13と該経路規制部材13に沿わせた1本の電線11とを第1固定部材21によって固定する。
図9に示すように、1本の電線11が固定された経路規制部材13に対して、残りの1本の電線11を沿わせる。
【0041】
図10に示すように、1本の電線11が固定された経路規制部材13と該経路規制部材13に沿わせた残りの1本の電線11とを、第2固定部材22によって固定する。この際、第2固定部材22は、2本の電線11と経路規制部材13とを包囲して固定している。
【0042】
次いで、各電線11及び経路規制部材13を、編組部材12内に挿通する。
その後、編組部材12、各電線11及び経路規制部材13を、外装部材15内に挿通することで、編組部材12の外側が外装部材15に覆われて、ワイヤハーネス20が完成する。
【0043】
本実施形態の作用を説明する。
本実施形態のワイヤハーネス20では、第1固定部材21と第2固定部材22を用いて、経路規制部材13に対して電線11を固定している。例えば、電線11(芯線11a)の線径が大きい場合には、電線11を経路規制部材13に沿わせる際に、電線11から生じる反発力が大きくなることが考えられる。そこで、電線11のうち1本を経路規制部材13に沿わせて第1固定部材21で固定する。さらに、1本の電線11が固定された経路規制部材13と該経路規制部材13に沿わせた残りの1本の電線11とを、第2固定部材22によって固定する。第1固定部材21と第2固定部材22を用いて、段階的に電線11を固定することで、2本の電線11を同じ固定部材で固定した場合と比較して、電線11の反発力を小さくすることができる。電線11の反発力を小さくすることで、例えば経路規制部材13に曲率半径の小さな箇所が設けられた場合であっても、各電線11を経路規制部材13に固定することが容易になる。なお、例えば各電線11の断面積が30平方cm以上である場合、さらに40平方cm以上である場合に電線11の反発力が大きくなるため、前述した構成を採用することが効果的である。
【0044】
以上説明したワイヤハーネス20によれば、第1実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて以下の効果を奏する。
(7)複数の電線11を個別に1つの経路規制部材13に対して固定することで、複数の電線11を同時に1つの経路規制部材13に対して固定する場合と比較して、電線11による反発力を抑えることができる。これにより、経路規制部材13に曲率半径の小さな箇所が設けられた場合であっても、容易に経路規制部材13に沿って各電線11を固定することが可能となる。したがって、ワイヤハーネス20の組立作業性を向上させることができる。
【0045】
(8)編組部材12には、第1固定部材21並びに第2固定部材22によって各電線11を経路規制部材13に沿わせた状態で経路規制部材13に対して固定した組付体30が挿通されている。さらに、組付体30と編組部材12を、外装部材15内に挿通することで、ワイヤハーネス20が完成する。この構成によれば、ワイヤハーネス20を組み立てる際に、組付体30と外装部材15との間に編組部材12が存在するため、組付体30は外装部材15と直接接触しない。よって、例えば組付体30を外装部材15に挿通する際に、組付体30と外装部材15との間の摩擦により、第1固定部材21や第2固定部材22の固定位置がずれることを抑制することができる。特に、第1固定部材21や第2固定部材22がテープであった場合、組付体30と外装部材15との間の摩擦により、テープが剥がれて電線11が経路規制部材13から脱落することを抑制することができる。したがって、ワイヤハーネス20の組立信頼性を向上させることができる。
【0046】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第2実施形態では、1つの編組部材12内に、各電線11及び経路規制部材13を挿通する構成としたが、これに限らない。
【0047】
図11に示すように、各電線11を個別に編組部材12によって覆うような構成を採用してもよい。このような構成であっても、第2実施形態と同様の効果を奏する。
・上記各実施形態では、2本の電線11を1つの経路規制部材13に固定する構成としたが、これに限らない。例えば、各電線11に対してそれぞれ個別の経路規制部材13を用いる構成を採用してもよい。
【0048】
また、3本以上の電線11を、1つの経路規制部材13に固定する構成を採用してもよい。ここで、上記第2実施形態の構成において例えば3本の電線11を備えた場合の変形例を説明する。3本の電線11の内のy本(但し、1≦y≦2)の電線が第1固定部材21によって経路規制部材13に固定される。3本の電線11の内の、前記y本の電線とは異なる電線を少なくとも1本以上含むz本(但し、1≦z≦3)の電線が第2固定部材22によって経路規制部材13に固定される。このような構成であっても第2実施形態の(7)の効果と同様の効果を奏する。
【0049】
更に、コルゲートチューブ等の外装部材15内に挿通される電線11の全てが、経路規制部材13に固定されてもよいし、複数の電線11の内の一部が経路規制部材13に固定されてもよい。
【0050】
・上記各実施形態では、2つの電線11を用いる構成したが、電線11の数は適宜変更可能である。
・上記各実施形態では、電磁シールド部材としての編組部材12によって電線11の絶縁被覆11bの外側を覆う構成としたが、これに限らず、例えば芯線11aと絶縁被覆11bとの間に電磁シールド部材を介在する構成を採用してもよい。
【0051】
・上記各実施形態では、編組部材12によって電磁シールド部材を構成したが、これに限らず、例えば金属箔や導電性シートを筒状に巻き付けて電磁シールド部材としてもよい。
【0052】
・上記各実施形態では、経路規制部材13を円柱状、すなわち中実体で構成したが、これに限らず、経路規制部材13を円筒状としてもよい。また、経路規制部材13を多角柱状や多角筒状としてもよい。なお、経路規制部材13を筒状とした場合に、例えば、複数の電線11の内の1つを経路規制部材13の内部に挿通する構成を採用してもよい。
【0053】
・上記各実施形態では特に言及していないが、電線11の長手方向において離間するように複数の経路規制部材13を配置する構成を採用してもよい。このような構成においては、例えば各経路規制部材13毎に対応するようにコルゲートチューブ等の外装部材15を配置し、各外装部材15間にプロテクタを用いる場合もある。また、1つの外装部材15内に各経路規制部材13を電線11の長手方向において離間するように設ける場合もある。
【0054】
・上記各実施形態の経路規制部材13の材料は、金属に限定されず、樹脂などを用いてもよい。
・上記各実施形態では、外装部材15の一例としてコルゲートチューブを採用したが、これに限らず、例えばツイストチューブ等の可撓性を有する他の外装部材を採用してもよい。
【0055】
・上記各実施形態では特に言及していないが、例えば図12に示すように経路規制部材13の端部13aに、該端部を覆う保護部材40を設ける構成を採用してもよい。保護部材40は、例えば両端が開口された伸縮可能なチューブである。保護部材40を径方向に伸ばして開口部を拡口させることで、経路規制部材13の端部に保護部材40が取り付けられている。
【0056】
この構成によれば、経路規制部材13の経路長が電線11の経路長よりも短い場合であっても、経路規制部材13の端部13aが、電線11の絶縁被覆11bと直接接触しない。よって、例えば、電線11を経路規制部材13に固定する際に、経路規制部材13の端部13aの角部分と絶縁被覆11bが接触して、絶縁被覆11bが損傷することを抑制できる。さらに、ワイヤハーネス10,20を車体へ組み付けた後に、車両走行時の振動により電線11が揺動した場合であっても、経路規制部材13の端部の角部分によって、絶縁被覆11bが損傷することを抑制できる。したがって、ワイヤハーネス10,20の耐久性を向上させることができる。
【0057】
なお、保護部材40として伸縮可能なチューブに限らず、経路規制部材13の端部13aが電線11の絶縁被覆11bに直接接触しない構成であれば適宜変更可能である。例えば、保護部材40として、テープを採用してもよく、略有底筒状として一方のみが開口したキャップを採用してもよい。また、固定部材14,21,22の一部を経路規制部材13の端部13aに巻き付けることで保護部材としてもよい。
【0058】
・上記各実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…ワイヤハーネス、11…電線、11a…芯線、11b…絶縁被覆、12…編組部材(電磁シールド部材)、13…経路規制部材、13a…端部、14…固定部材、15…外装部材、20…ワイヤハーネス、21…第1固定部材、22…第2固定部材、30…組付体、40…保護部材。
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図12