特許第6881282号(P6881282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6881282複合シートおよびその製造方法ならびにこれを用いた吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881282
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】複合シートおよびその製造方法ならびにこれを用いた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   A61F13/511 100
   A61F13/511 300
   A61F13/511 400
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-250765(P2017-250765)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-115460(P2019-115460A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝利
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−137101(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/084066(WO,A1)
【文献】 特開2010−133071(JP,A)
【文献】 特開2017−038925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で配列する多数の凹部が形成された液透過性のシート状をなす第1のフィルムと、
この第1のフィルムに重ね合わされて当該第1のフィルムの前記凹部の底面に接合される液透過性のシート状をなす第2のフィルムと
を具えた複合シートであって、個々の前記凹部は、
前記第1のフィルムの長手方向に沿って第1の方向に延在する溝状の第1の凹部と、
前記第1のフィルムの長手方向に沿って第1の方向とは異なる第2の方向に延在する溝状の第2の凹部と、
これら第1および第2の凹部が重なり合う交差領域と
を有し、この交差領域に接して開口部がそれぞれ形成されていることを特徴とする複合シート。
【請求項2】
個々の前記開口部の面積が0.19mm2から1.77mm2までの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
第1の長尺フィルムをその長手方向に第1の速度にて搬送するステップと、
この第1の長尺フィルムの搬送中に当該第1の長尺フィルムに所定間隔で配列する多数の凹部を成形するステップと、
第2の長尺フィルムを前記第1の速度でその長手方向に搬送するステップと、
前記第1の長尺フィルムに成形された前記凹部の底面と前記第2の長尺フィルムとが重なり合うようにして前記第1の長尺フィルムの凹部の底面と前記第2の長尺フィルムとをこれらの搬送中に接合するステップと、
接合後の前記第1および第2の長尺フィルムを前記第1の速度よりも速い第2の速度で搬送し、前記第1の長尺フィルムの凹部の底面と前記第2の長尺フィルムとの接合部分にて延伸破壊による開口部を形成させるステップと
を具えたことを特徴とする複合シートの製造方法。
【請求項4】
個々の前記凹部は、前記第1の長尺フィルムの長手方向に沿って第1の方向に延在する溝状の第1の凹部と、前記第1の長尺フィルムの長手方向に沿って第1の方向とは異なる第2の方向に延在する溝状の第2の凹部と、これら第1および第2の凹部が重なり合う交差領域とを有し、前記延伸破壊による開口部が前記交差領域に生ずる応力集中によって形成されることを特徴とする請求項3に記載の複合シートの製造方法。
【請求項5】
前記第2の速度が前記第1の速度の1.4倍から1.9倍までの範囲にあることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の複合シートの製造方法。
【請求項6】
個々の前記開口部の面積が0.19mm2から1.77mm2までの範囲にあることを特徴とする請求項3から請求項5までの何れか一項に記載の複合シートの製造方法。
【請求項7】
液不透過性のバックシートに吸収体を重ね合わせるステップと、
求項1または請求項2に記載の複合シートによるトップシートか、あるいは請求項3から請求項6までの何れか一項に記載された方法にて製造された複合シートによるトップシートを、前記吸収体を挟んで前記バックシートに重ね合わせるステップ
を具えことを特徴とする吸収性物品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に気泡チャンバーが形成された複合シートおよびその製造方法ならびにこの複合シートを液透過性のトップシートとして用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
子供用または大人用のおむつ,女性用生理用品,軽中度失禁パッド,ペット用排泄処理用品など、液透過性のトップシートとバックシートとの間に吸収体を介在させた各種吸収性物品が知られている。このような吸収性物品において、着用者の肌に直接接触するトップシートに気泡チャンバーを形成することにより、トップシートに対する肌触りの改善と同時に着用者の肌とトップシートとの接触面積を少なくし、通気性などの向上を意図したものが提案されている。例えば、特許文献1には、トップシートを上下二枚のフィルムで構成すると共にアッパーフィルムに凹凸パターンを形成し、アッパーフィルムの凹部を平滑なロアーフィルムに接合したものが開示されている。このようなトップシートは、アッパーフィルムの凸部とロアーフィルムとの間に気泡緩衝部材の如き多数の気泡チャンバーが形成され、クッション性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−50538号公報
【特許文献2】特開2016−138358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二枚のフィルムを用いて気泡チャンバーを形成した従来の吸収性物品のトップシートは、アッパーフィルムの凹部とロアーフィルムとの接合領域が熱融着される結果、この接合部分の液透過性が低下する傾向を持つ。このため、アッパーフィルムの凹部に流れ込む尿などの液状物がトップシートのアッパーフィルムからロアーフィルムを通過して吸収体へと円滑に流動しにくくなる可能性がある。このような不具合を解消するため、特許文献2にはアッパーフィルムとロアーフィルムとの接合時に針を用いてこれらの接合部分に開口を形成するようにした技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されたような針を用いてアッパーフィルムとロアーフィルムとの接合部分に穴を開ける場合、針の折損事故により商品に針の一部が混入する可能性がある。このため、トップシートの製造中に針の折損の有無を常に監視しなければならず、そのためのコストが増大する。また、針でトップシートに穴を開ける場合、針を加熱してトップシートを溶融させる必要があるため、これによって形成される開口が硬質化し、トップシートの風合いの低下を招いてしまう。
【0006】
本発明の目的は、二枚のフィルムを用いて気泡チャンバーを形成し、風合いを低下させることなく、二枚のフィルムの接合部分の液透過性を良好に維持し得る複合シートおよびその製造方法ならびにこの複合シートを用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態は、所定間隔で配列する多数の凹部が形成された液透過性のシート状をなす第1のフィルムと、この第1のフィルムに重ね合わされて当該第1のフィルムの前記凹部の底面に接合される液透過性のシート状をなす第2のフィルムとを具えた複合シートであって、個々の前記凹部は、前記第1のフィルムの長手方向に沿って第1の方向に延在する溝状の第1の凹部と、前記第1のフィルムの長手方向に沿って第1の方向とは異なる第2の方向に延在する溝状の第2の凹部と、これら第1および第2の凹部が重なり合う交差領域とを有し、この交差領域に接して開口部がそれぞれ形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、第1のフィルムの溝状をなす第1および第2の凹部の交差領域に接して開口部がそれぞれ形成されており、液体は第1および第2のフィルムを透過することに加え、この開口部をも通り抜ける。
【0009】
本発明の第1の形態による複合シートにおいて、個々の開口部の面積が0.19mm(直径がおよそ0.5mmに相当する)から1.77mm(直径がおよそ1.5mmに相当する)までの範囲にあることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の形態は、第1の長尺フィルムをその長手方向に第1の速度にて搬送するステップと、この第1の長尺フィルムの搬送中に当該第1の長尺フィルムに所定間隔で配列する多数の凹部を成形するステップと、第2の長尺フィルムを前記第1の速度でその長手方向に搬送するステップと、前記第1の長尺フィルムに成形された前記凹部の底面と前記第2の長尺フィルムとが重なり合うようにして前記第1の長尺フィルムの凹部の底面と前記第2の長尺フィルムとをこれらの搬送中に接合するステップと、接合後の前記第1および第2の長尺フィルムを前記第1の速度よりも速い第2の速度で搬送し、前記第1の長尺フィルムの凹部の底面と前記第2の長尺フィルムとの接合部分にて延伸破壊による開口部を形成させるステップとを具えたことを特徴とする複合シートの製造方法にある。
【0011】
本発明の第2の形態による複合シートの製造方法において、個々の前記凹部は、前記第1の長尺フィルムの長手方向に沿って第1の方向に延在する溝状の第1の凹部と、前記第1の長尺フィルムの長手方向に沿って第1の方向とは異なる第2の方向に延在する溝状の第2の凹部と、これら第1および第2の凹部が重なり合う交差領域とを有し、この交差領域に生ずる応力集中によって延伸破壊による開口部が形成されているものであってよい。
【0012】
また、第2の速度が第1の速度の1.4倍から1.9倍までの範囲にあることが好ましい。
【0013】
同様に、個々の開口部の面積が0.19mm(直径がおよそ0.5mmに相当する)から1.77mm(直径がおよそ1.5mmに相当する)までの範囲にあることが好ましい。
【0014】
本発明の第3の形態は、液不透過性のバックシートと、このバックシートに重ね合わされる吸収体と、この吸収体を挟んで前記バックシートに重ね合わされ、本発明の第1の形態の複合シートによるトップシートか、本発明の第2の形態による方法にて製造された複合シートによるトップシートとを具えていることを特徴とする吸収性物品にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の複合シートによると、第1のフィルムの長手方向に沿ってそれぞれ異なる方向に延在する溝状の第1および第2の凹部が重なり合う交差領域に接して開口部をそれぞれ形成したので、液状物が開口部を通過することができる。
【0016】
個々の開口部の面積が0.19mmから1.77mmまでの範囲にある場合、液状物を効率よく通過させることができる。
【0017】
本発明の複合シートの製造方法によると、第1の長尺フィルムの凹部の底面と第2の長尺フィルムとの接合部分にて延伸破壊による開口部を形成させるようにしたので、開口部を形成するための針などを使用する必要がなくなり、針の折損などを監視する必要もなくなる。
【0018】
延伸破壊による開口部を交差領域に生ずる応力集中によって形成させる場合、開口部の位置や大きさなどをより正確に調整することができる。
【0019】
第2の速度を第1の速度の1.4倍から1.9倍までの範囲に設定した場合、個々の開口部の面積を容易に0.19mmから1.77mmまでの範囲にすることができる。
【0020】
本発明の吸収性物品によると、本発明の複合シートによるトップシートか、あるいは本発明の方法にて製造された複合シートによるトップシートを具えているので、良好な液透過性および風合いを持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による吸収性物品をパンツ型使い捨ておむつに適用した一実施形態の外観を模式的に表す立体投影図である。
図2図1に示した実施形態の閉じ合わせ部を破って展開した状態の一部破断平面図である。
図3図2に示した展開状態のおむつを分解した立体投影図である。
図4図2中のIV−IV矢視に沿った断面図である。
図5図2に示した実施形態における吸収体の部分を抽出拡大した断面図である。
図6図5に示した吸収体におけるトップシートの一部を抽出拡大した平面図である。
図7図6中のVII−VII矢視に沿った断面図である。
図8図6に示したトップシートの製造過程を模式的に表す概念図である。
図9図6に示したトップシートの他の一実施例の外観を表す平面図である。
図10図9中のX−X矢視に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による吸収性物品をパンツ型使い捨ておむつに適用した実施形態について、図1図10を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態に限らず、その特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能である。
【0023】
本実施形態によるパンツ型使いすておむつの外観を図1に示し、その閉じ合わせ部を破って肌当接面側を表にして展開した状態の外観を図2に示し、これをさらに分解した状態の外観を図3に示し、図2中のIV−IV矢視に沿った断面構造を模式的に図4に示す。
【0024】
すなわち、本実施形態におけるパンツ型使いすておむつ10は、前身頃カバーシート11Fおよび後身頃カバーシート11Rと、バックシート12と、吸収体13と、トップシート14と、左右一対のサイドシート15と、ウエスト周りシート16とを有する。
【0025】
本実施形態における液不透過性の前身頃カバーシート11Fおよび後身頃カバーシート11Rは、パンツ型使いすておむつ(以下、単におむつと記述する)10の前身頃領域および後身頃領域にそれぞれ対応する。これらカバーシート11F,11Rは、相互に貼り合わされるアウターフィルム11oとインナーフィルム11iとで構成されるが、これに限定されない。また、股下領域を介してこれらを一体的に形成することも可能であり、本実施形態に限定されない。相互に重ね合わされるアウターフィルム11oとインナーフィルム11iとの間には、着用時のフィット性を向上させるための糸ゴム17がおむつ10のウエスト周り開口部10wに沿って相互に平行に伸長状態で多数本配されている。これらの糸ゴム17は、前身頃カバーシート11Fおよび後身頃カバーシート11Rとそれぞれ一体化されている。これら糸ゴム17により、おむつ10のウエスト周り開口部10wにはウエストギャザー17gが形成される。なお、吸収体13が重ね合わされるカバーシート11F,11Rの領域には糸ゴム17を介在させず、吸収体13に幅方向の圧縮力が作用しないように配慮している。
【0026】
なお、上述したアウターフィルム11oおよびインナーフィルム11iをポリオレフィンのスパンボンド不織布などで形成することができるが、他の周知の材料をその目的に応じて適宜採用することも可能である。
【0027】
前身頃カバーシート11Fおよび後身頃カバーシート11Rの内側、すなわちインナーフィルム11iには、一対のサイドシート15の長手方向(図2中、上下方向)両側部分、すなわち前身頃部分と後身頃部分とが重ね合わされ、それぞれ一体的に接合されている。また、幅方向(図2中、左右方向)両側部分が一対のサイドシート15に重ね合わされるバックシート12の前身頃部分および後身頃部分が前身頃カバーシート11Fおよび後身頃カバーシート11Rに重ね合わされ、これらと一体的に接合されている。換言すると、本実施形態におけるおむつ10の股下領域にはカバーシート11F,11Rが存在せず、一対のサイドシート15およびバックシート12の股下部分が露出した状態となっている。
【0028】
図2に示したバックシート12と吸収体13とトップシート14とで構成される吸収性本体18の部分を抽出拡大して図5に示す。液不透過性のバックシート12には液透過性のトップシート14が重ね合わされ、これらバックシート12とトップシート14との間には吸収体13が配され、トップシート14の周縁部が吸収体13を囲むようにバックシート12に接合されている。
【0029】
本実施形態における液不透過性のサイドシート15は、その幅方向外側端縁を画成する第1の折り返し部15aと、幅方向内側端縁を画成する第2の折り返し部15bと、自由端を画成する第3の折り返し部15cとを有する。幅方向一端側がバックシート12に重ね合わされるサイドシート15の幅方向他端部は、トップシート14の幅方向側端部に重ね合わされ、トップシート14に対して一体的に接合され、立体ギャザー19gの起立線15dを画成する。バックシート12の幅方向側端部とサイドシート15との間および第1の折り返し部15aには、複数本(図示例では3本)の糸ゴム20が伸長状態で配され、脚周り開口部10tにレッグギャザー20gを画成して着用者の脚周りのフィット性を良好にする。また、このサイドシート15の自由端、すなわち第3の折り返し部15cの直近には、立体ギャザー19gを画成するための複数本(図示例では3本)の糸ゴム19が伸長状態で配されている。サイドシート15の長手方向両端部は、第1の折り返し部15aと第2の折り返し部15bとの間および第2の折り返し部15bと第3の折り返し部15cとの間のサイドシート15が相互に重ね合わされた状態のまま、トップシート14に接合されている。
【0030】
なお、上述したサイドシート15をポリオレフィンのスパンボンド不織布などで形成したり、通気性を持たせたポリエチレンフィルムにてバックシート12を形成したりすることができるが、他の周知の材料をその目的に応じて適宜採用することができる。
【0031】
本実施形態における吸収体13は、おむつ10の前身頃領域から股下領域を通って後身頃領域まで達するように、これらに対応した前身頃部分と股下部分と後身頃部分とを有する。吸収体13の股下部分には、一対の円弧状凹部13cが形成され、股下部分の幅が前身頃部分および後身頃部分の幅に比べて狭くなっているが、これに限定されない。吸収体13は、シート状をなす吸収性コア13aと、この吸収性コア13aを包んで型崩れを阻止するための難水溶性のコア被覆材、すなわちコアラップ13bとで構成される。吸収性コア13aは、フラッフ状パルプ、すなわちセルロース系吸水性繊維および高分子吸収部材としてのSAPなどを含む。コアラップ13bは、その坪量が30g/m以下の不織布またはティシュにて構成されるが、これに限定されない。
【0032】
図5に示したトップシート14の一部を抽出拡大して図6に示し、そのVII−VII矢視に沿った断面構造を模式的に図7に示す。本発明における複合シートとしてのトップシート14は、所定間隔で配列する多数の凹凸パターンが形成されたシート状をなすアッパーフィルム21と、このアッパーフィルム21と重ね合わされる平滑なロアーフィルム22とで構成されている。アッパーフィルム21の凹部21dの底面とロアーフィルム22とが一体的に接合されてトップシート14を構成している。アッパーフィルム21の凸部21sとロアーフィルム22との間に多数の気泡チャンバー14cが形成され、本実施例では個々の気泡チャンバー14cを連続させているが、それぞれ独立構成にすることも可能である。本実施形態におけるアッパーフィルム21に形成された凹凸パターンは、特開2016−137145号公報の図3などに記載されたものと同じであり、アッパーフィルム21の凹部21dの底面を図6中の斜線で示している。すなわち、本実施形態における凹部21dは、円弧溝状の第1の凹部21dと、この円弧溝状の第1の凹部21dと逆向きの円弧溝状をなす第2の凹部21dと、これら第1および第2の凹部21d,21dが重なり合う交差領域21dとを有する。第1の凹部21dは、アッパーフィルム21の長手方向に沿って第1の方向に延在し、第2の凹部21dは、アッパーフィルム21の長手方向に沿って第1の方向とは異なる第2の方向に延在する。このトップシート14には、アッパーフィルム21の交差領域21dにそれぞれ接する開口部23が形成されている。個々の開口部23の面積は、直径が0.5mmにほぼ対応する0.19mmから、直径がほぼ1.5mmに対応する1.77mmまでの範囲にあることがアッパーフィルム21の凹部21dに流れ込む液状物の吸収体13への円滑な浸透を可能にする点で好ましい。
【0033】
なお、トップシート14を構成するアッパーフィルム21およびロアーフィルム22は、織布,不織布,又は多孔性フィルムなどの液透過性材料で形成することができるが、特に不織布を用いることが好ましい。また、エアースルー方式やヒートボンド方式やスパンボンド方式やメルトブローン方式やスパンレース方式やニードルパンチ方式など、任意の方式で製造される公知の不織布を用いることができる。しかしながら、開口部23の加工性の観点からPPおよびPE/PETおよびPE/PPのうちの少なくとも一種類を含むことが好ましいと言える。本実施形態では、ポリオレフィン/ポリエステル製の不織布をアッパーフィルム21およびロアーフィルム22として用いている。また、アッパーフィルム21およびロアーフィルム22のそれぞれの厚みは、0.3mm〜2.0mmの範囲にあることが、トップシート14の液透過性および風合いならびに開口部23の加工性の観点から好ましい。
【0034】
本実施形態におけるウエスト周りシート16は、スパンボンド方式で製造された液不透過性のポリオレフィン不織布にて形成されるが、エアースルー方式で製造された液不透過性のポリオレフィン不織布を用いることも可能である。また、このウエスト周りシート16は、おむつ10のウエスト周り開口部10wに沿って配されているが、これに限定されない。このウエスト周りシート16は、カバーシート11F,11Rのインナーフィルム11iと、サイドシート15およびトップシート14のアッパーフィルム21の長手方向両端部とを覆うようにこれらに接合されている。
【0035】
上述したようなトップシート14の製造装置の一例の概念を模式的に図8に示す。この製造装置は、長尺のアッパーフィルム21Eが巻回された図示しない第1のフィルムロールと、長尺のロアーフィルム22Eが巻回された図示しない第2のフィルムロールとを具えている。また、長尺のアッパーフィルム21Eに所定の凹凸パターンを形成するための雌型成形ロール24および雄型成形ロール25と、雌型成形ロール24と共働してアッパーフィルム21Eとロアーフィルム22Eとを接合するための平ロール26とを具えている。また、製造された長尺のトップシート14Eを巻き取るための図示しない巻き取りロールと、一対の成形ロール24,25および平ロール26を第1および第2のフィルムロールと共に同期駆動回転させる同期駆動手段とを具えている。これらに加え、巻取りロールを駆動回転させる巻き取り手段や、これら同期駆動手段および巻き取り手段の作動を制御する制御装置(何れも図示せず)などを具え、これらで主要部を構成している。
【0036】
雄型成形ロール25の外周面には、アッパーフィルム21Eに形成される気泡チャンバー14cの形状に対応した凹凸パターンが形成され、雌型成形ロール24の外周面には、雄型成形ロール25の外周面に対して相補的な凹凸パターンが形成されている。これら一対の成形ロール24,25が同期回転し、これら成形ロール24,25の凹凸パターンがこれらの噛み合い位置にて相互に噛み合うように、雄型成形ロール25および雌型成形ロール24の回転位相と、これらの軸間距離とが適切に設定されている。長尺のアッパーフィルム21Eが巻き掛けられる雌型成形ロール24の領域には、アッパーフィルム21Eを雌型成形ロール24の外周面に密着させるための図示しない周知の空気吸引システムが組み込まれている。また、アッパーフィルム21Eに形成される凹部21dの底面を成形する雌型成形ロール24の最外周部(これは図6中の斜線で示す領域に対応する)には、発熱体27が配されている。
【0037】
平ロール26には、長尺のアッパーフィルム21Eとほぼ同じ搬送速度で第2のフィルムロールから繰り出される長尺のロアーフィルム22Eが巻き掛けられる。この平ロール26は、その外周面がアッパーフィルム21Eとロアーフィルム22Eとの接合部分を挟んだ状態で雌型成形ロール24の最外周面、つまり発熱体27が配された部分と適切な接触圧にて転接するように配されている。
【0038】
第1のフィルムロールから繰り出される長尺のアッパーフィルム21Eは、上述した一対の成形ロール24,25の間に第1の搬送速度V(例えば毎分100m〜400m)で送り込まれ、雌型成形ロール24の表面の凹凸パターンに密着するように変形する。一方、第2のフィルムロールから繰り出される長尺のロアーフィルム22Eは、雌型成形ロール24と平ロール26との間に第1の搬送速度V(厳密には雌型成形ロール24の最外周部分の周速度とほぼ同じ速度)で送り込まれる。そして、平ロール26に巻き掛けられたロアーフィルム22Eと成形後のアッパーフィルム21Eとが、平ロール26と雌型成形ロール24との間を通過する。この間に、アッパーフィルム21Eの凹部21dの底面とロアーフィルム22Eとが130℃〜150℃の表面温度を有する発熱体27によって加熱されて軟化(一部溶融)し、一体的に接合されて第2の搬送速度Vにて巻き取りロールに巻き取られて行く。ここで入側の搬送速度Vに対して出側の搬送速度Vを1.4倍〜1.9倍に設定し(上述した例では毎分140m〜760m)、適切な張力を接合後のトップシート14に与える。これにより、アッパーフィルム21Eの凹部21dの底面とロアーフィルム22Eとの接合部分、特に大きな応力集中が起こる交差領域21dに発生する延伸破壊により、0.19mm〜1.77mmの範囲の面積を持つ開口部23をトップシート14に形成することができる。
【0039】
前述したように、本実施形態におけるトップシート14に形成された第1および第2の凹部21d,21dの詳細については、特開2016−137145号公報などに開示されているが、これに限定されない。アッパーフィルム21の凹部21dの底面とロアーフィルム22とを接合することにより、これらのフィルム21,22間に独立形または連続形の気泡チャンバーが形成されるトップシート14であれば、どのような形状の凹部であってもかまわない。しかしながら、開口部23の再現性を高めるため、トップシート14の巻き取り中に発生する引っ張り力により、接合部分の特定個所に発生する応力集中によって延伸破壊を生じさせることが有効である。このため、第1および第2の凹部21d,21dの形状やこれらが重なり合う交差領域21dを開口部23の形成位置として設定することが有効である。
【0040】
例えば、本発明の他の実施形態によるトップシート14の接合部分を模式的に図9に示し、そのX−X矢視断面構造を模式的に図10に示す。本実施形態における第1の凹部21dは、トップシート14の長手方向(図9の上下方向)に対して第1の方向に傾斜する直線状をなし、第2の凹部21dは、第1の方向と逆方向にトップシート14の長手方向(図9の上下方向)に対して傾斜する直線状をなす。つまり、第1および第2の凹部21d,21dによって格子状に仕切られた気泡チャンバー14cがロアーフィルム22とアッパーフィルム21との間に画成される。それで、第1および第2の凹部21d,21dが重なり合う交差領域21dに応力集中による延伸破壊が生じ、開口部23を形成することができる。しかしながら、前述したように、トップシート14を構成するアッパーフィルム21およびロアーフィルム22の材質や厚さおよびこれらの接合温度や張力の大きさなどを適宜変更することによって、開口部23を交差領域21d以外にも形成することが可能である。
【0041】
また、本発明による吸収性物品は、上述したパンツ型使い捨ておむつ10に限らず、テープ型の使い捨ておむつや尿漏れパッドなどの各種吸収性物品に適用可能である。例えば、本発明を尿漏れパッドに適用させる場合、上述した吸収性本体18をそのまま尿漏れパッド、すなわち吸収性物品として用いることができる。
【0042】
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のない構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0043】
10 パンツ型使い捨ておむつ(おむつ)
12 バックシート
13 吸収体
14 トップシート
14E 長尺のトップシート
14c 気泡チャンバー
18 吸収性本体
21 アッパーフィルム
21E 長尺のアッパーフィルム
21d 凹部
21d 第1の凹部
21d 第2の凹部
21d 交差領域
21s 凸部
22 ロアーフィルム
22E 長尺のロアーフィルム
23 開口部
第1の搬送速度
第2の搬送速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10