特許第6881320号(P6881320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特許6881320非水電解質電池用リード線及びそれを含む非水電解質電池
<>
  • 特許6881320-非水電解質電池用リード線及びそれを含む非水電解質電池 図000004
  • 特許6881320-非水電解質電池用リード線及びそれを含む非水電解質電池 図000005
  • 特許6881320-非水電解質電池用リード線及びそれを含む非水電解質電池 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881320
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】非水電解質電池用リード線及びそれを含む非水電解質電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/543 20210101AFI20210524BHJP
   H01M 50/572 20210101ALI20210524BHJP
   H01M 50/172 20210101ALI20210524BHJP
   H01M 50/183 20210101ALI20210524BHJP
【FI】
   H01M2/30 B
   H01M2/34 B
   H01M2/06 K
   H01M2/08 K
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-563624(P2017-563624)
(86)(22)【出願日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】JP2017032267
(87)【国際公開番号】WO2018074090
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2020年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-203186(P2016-203186)
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139387
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100144691
【弁理士】
【氏名又は名称】小副川 みさ子
(74)【代理人】
【識別番号】100155527
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 優
(74)【代理人】
【識別番号】100157794
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100159374
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 顕
(74)【代理人】
【識別番号】100168620
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英明
(72)【発明者】
【氏名】松村 友多佳
(72)【発明者】
【氏名】福田 豊
(72)【発明者】
【氏名】西川 信也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 圭太郎
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−111303(JP,A)
【文献】 特開2011−103245(JP,A)
【文献】 特開2005−116322(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/104058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/00−50/183
H01M50/50−50/572
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード導体と、前記リード導体の少なくとも一部を直接被覆する第一の絶縁層と、前記第一の絶縁層を被覆する第二の絶縁層とを有する非水電解質電池用リード線であって、
前記第二の絶縁層は、オレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマーと、ポリプロピレンとを質量比10:90〜40:60で含有する樹脂組成物の架橋体である、非水電解質電池用リード線。
【請求項2】
前記第一の絶縁層が酸変性ポリオレフィンからなる、請求項1に記載の非水電解質電池用リード線。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の非水電解質電池用リード線を含む非水電解質電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池用リード線及びこれを含む非水電解質電池に関するものである。
本出願は、2016年10月17日出願の日本出願第2016−203186号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化に伴って、これらの機器に使用される電池、コンデンサなどの電気部品についても小型化、軽量化が求められている。このため、例えば、袋体を封入容器として用い、その内部に非水電解質(電解液)、正極、及び負極を封入してなる非水電解質電池が採用されている。非水電解質としてはLiPF、LiBFなどのフッ素を含有するリチウム塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどに溶解した電解液が使用されている。
【0003】
封入容器には電解液やガスの透過、外部からの水分の浸入を防止する性質が求められる。このため、アルミニウム箔などの金属層を樹脂で被覆したラミネートフィルムが封入容器の材料として用いられ、2枚のラミネートフィルムの端部を熱融着して封入容器を形成する。
【0004】
封入容器の一端は開口部とし、この内部には非水電解質、正極板、負極板、セパレータ等を封入する。さらに正極板及び負極板にその一端が接続されたリード導体を封入容器の内部から外部へ延びるように配置して、最後に開口部をヒートシール(熱融着)することで封入容器の開口部を閉じると共に、封入容器とリード導体とを接着して開口部を封止する。この最後に熱融着される部分をシール部と呼ぶ。
【0005】
リード導体のシール部に対応する部分には絶縁層が被覆されており、絶縁層とリード導体とを備えたものが非水電解質電池用リード線と呼ばれている。封入容器とリード導体とはこの絶縁層を介して接着(熱融着)される。したがってこの絶縁層には封入容器の金属層とリード導体との短絡を発生させることなくリード導体と封入容器との接着性を維持できるという特性が求められる。
【0006】
特許文献1には、絶縁層を二層構造とし、ゲル分率が20〜90%である架橋ポリオレフィン樹脂からなる架橋層と、熱可塑性ポリオレフィン樹脂からなる熱可塑層とを含む絶縁体を有する非水電解質電池用リード線が開示されている。ゲル分率が20〜90%である架橋オレフィン樹脂からなる架橋層は融点が高いため、熱融着時に絶縁体の溶融によるリード導体と金属層との間の短絡を防ぐことができる。また熱可塑性ポリオレフィンからなる熱可塑層は導体との接着性が高いため、熱融着時に溶融して導体と袋体との接着性が確保され、電解液の漏出が防止される。
【0007】
特許文献2には、リード導体の両面側に一対の絶縁フィルムが張り付けられたリード部材であって、絶縁フィルムを架橋層と接着層との2層構造としたものが開示されている。架橋層はポリプロピレンをベース樹脂とし、0.5重量%以上10重量%以下の架橋助剤を含んでいる。また接着層にはメルトフローレートが4g/10分以上7g/10分以下のポリプロピレン樹脂をベース樹脂としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−102016号公報
【特許文献2】特開2011−103245号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様に係るリード線は、リード導体と、前記リード導体の少なくとも一部を直接被覆する第一の絶縁層と、前記第一の絶縁層を被覆する第二の絶縁層とを有する非水電解質電池用リード線であって、前記第二の絶縁層は、オレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマーと、ポリプロピレンとを質量比10:90〜40:60で含有する樹脂組成物の架橋体である、非水電解質電池用リード線である。
【0010】
本発明の別の一態様に係る非水電解質電池は、上記非水電解質電池用リード線を含む非水電解質電池である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る非水電解質電池の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る非水電解質電池の部分断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るリード線の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1及び特許文献2に記載されているように、非水電解質電池用リード線において、絶縁層の一部に架橋層を用いることで熱融着時に封入容器の金属層とリード導体との短絡を防ぐことができる。架橋層としては通常ポリプロピレンの架橋体が使用されている。
【0013】
ポリプロピレンはポリエチレンと比べて架橋しにくい材料であるため、特許文献2に記載されているように架橋助剤と混合して使用される。具体的にはポリプロピレンと架橋助剤を混合したものをシート状に成形した後、電子線などを照射して架橋させる。架橋助剤は低分子量であるため融点が低く、成形加工時の熱によって揮発することがある。揮発した架橋助剤の蒸気は成型設備の別の場所で冷却されて成形設備や製品に付着し、製品に悪影響を及ぼす恐れがある。架橋助剤の量を少なくした場合にはこのようなことが起こらないが、そうするとポリプロピレンの架橋が不充分となり、非水電解質電池の製造時、リード線と封入容器とを熱融着する際に、封入容器の金属層とリード導体とが短絡する可能性がある。
【0014】
そこで本発明は、成形設備や製品に悪影響を及ぼすことがなく製造できるとともに、封入容器の金属層とリード導体との短絡を発生させることなくリード導体と封入容器との接着性を維持できる非水電解質電池用リード線及びそれを含む非水電解質電池を提供することを課題とする。
【0015】
[発明の効果]
本発明の実施形態によれば、成形設備や製品に悪影響を及ぼすことがなく製造できるとともに、封入容器の金属層とリード導体との短絡を発生させることなくリード導体と封入容器との接着性を維持できる非水電解質電池用リード線及びそれを含む非水電解質電池を提供できる。
【0016】
[本願発明の実施形態の説明]
図1は非水電解質電池の一実施形態を模式的に表す正面図であり、図2図1のA−A’部における部分断面図である。この非水電解質電池1は、略長方形の封入容器2と、封入容器2の内部から外部に延びるリード導体3を有している。リード導体3と封入容器2とは、第一の絶縁層4bと第二の絶縁層4aを介してシール部9で接続されている。
【0017】
封入容器2は、図2に示されるように、金属層5と、金属層5を被覆する樹脂層6、樹脂層7とからなる3層のラミネートフィルム8からなる。金属層5はアルミニウム箔などの金属から形成される。封入容器の外側に位置する樹脂層6としては6,6−ナイロン、6−ナイロンなどのポリアミド樹脂や、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。また封入容器2の内部に位置する樹脂層7には非水電解質に溶解せず、また加熱して溶融する絶縁性樹脂を用いることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、酸変性スチレン系エラストマーが例示される。封入容器2は、2枚のラミネートフィルム8を重ね合わせて、リード導体が貫通する辺以外の3辺をヒートシールして作製する。封入容器の外周部では、2つの金属層5は樹脂層7を介して接着される。
【0018】
シール部9において、リード導体3は第一の絶縁層4b及び第二の絶縁層4aを介して封入容器(ラミネートフィルム8)と接着(熱融着)される。非水電解質電池の内部には、更に、リード導体3の端部に接続された正極集電体10および負極集電体11、非水電解質13、並びにセパレータ12が封入される。
【0019】
図3はリード線の概略断面図である。板状のリード導体3の表面に第一の絶縁層4bが被覆され、さらにその外側を第二の絶縁層4aが被覆している。第二の絶縁層4aの外側にさらに絶縁層を設けても良い。絶縁層4a及び絶縁層4bはヒートシール時の熱によって溶融して封入容器とリード導体とを接着する。なおリード線はタブリードと呼ばれることもある。
【0020】
第一の絶縁層4bには、ヒートシール時の熱によって溶融可能で金属(リード導体)及びオレフィン系樹脂(第二の絶縁層4a)への接着性がある樹脂を使用できる。オレフィン系樹脂との接着性の良い樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アイオノマー樹脂などを使用できる。またこれらの樹脂は酸変性されていると金属との接着性が向上し、好ましい。たとえばマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、エポキシ基によって変性された、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アイオノマー樹脂などを使用でき、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましく使用できる。
【0021】
第二の絶縁層4aは、オレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマーと、ポリプロピレンとを質量比10:90〜40:60で含有する樹脂組成物の架橋体を使用する。オレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマーはポリプロピレンとの相溶性に優れているとともに架橋性にも優れている。このため、第二の絶縁層4aを構成する樹脂組成物は、架橋助剤の量を少なくしても架橋可能となり、樹脂組成物をシート状に加工する際の成形設備や製品に悪影響を及ぼすことがなく製造できる。オレフィン結晶部分としては、結晶性のポリエチレンコポリマーが好ましく使用される。またポリプロピレンとしては、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、エポキシ変性プロピレンなどを使用できる。
【0022】
第二の絶縁層4aは、加速電子線やγ線などの電離放射線の照射によって架橋して使用する。架橋することで耐熱性を高めることができ、使用時の温度が上がった場合の接着力の低下や、リード導体と金属層との短絡を防止することができる。
【0023】
オレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマー(CEBC)と、ポリプロピレンとの質量比は10:90〜40:60が好ましい。この範囲よりもポリプロピレンの量が多くなると架橋性が悪くなり、熱融着時に溶融してリード線と金属層とが短絡するおそれがある。またこの範囲よりもポリプロピレンの量が少ない場合は、柔軟でタック性の強いCEBCの量が相対的に増えることで、絶縁層4aがほこりなどのごみを吸着する可能性がある。
【0024】
第二の絶縁層4aを構成する樹脂組成物には、本発明の趣旨を損ねない範囲で架橋助剤を混合しても良い。架橋助剤は分子中に不飽和基を少なくとも2個以上含む化合物からなる。架橋助剤としてはトリアリルイソシアヌレート(TAIC(登録商標))、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を使用できる。架橋助剤の量は、樹脂成分100質量部に対して4質量部以下が好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0025】
第一の絶縁層及び第二の絶縁層にはこれらの樹脂の他に、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、着色剤等の各種添加剤を混合することが可能である。これらの樹脂材料及び添加剤をオープンロール、加圧ニーダー、単軸混合機、2軸混合機などの既知の混合装置を用いて混合した後押出成形などによってフィルム状の絶縁層を作製する。第一の絶縁層及び第二の絶縁層の厚みはリード導体の厚みに依存するが、30μm〜200μmが好ましい。
【0026】
リード導体3としてはアルミニウム、ニッケル、銅、ニッケルめっき銅などの金属が使用される。リチウムイオン電池の場合は正極にはアルミニウム、負極にはニッケルまたはニッケルめっき銅が用いられることが多い。リード導体の形状は特に限定されないが、厚み50μm〜2mm、幅1mm〜200mm、長さ5mm〜200mmの平板形状の金属が好ましく使用できる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
(実施例1〜6、比較例1〜9)
[絶縁層形成用樹脂組成物の作製]
絶縁層形成用樹脂組成物の調整に用いた化合物を以下に示す。
(樹脂成分)
ランダムポリプロピレン(ランダムPP):ノバテック(登録商標)FX4G(融点130℃、MFR5g/10min)
酸変性ランダムポリプロピレン混合物(酸変性ランダムPP混合物):アドマー(登録商標)QF551(融点135℃、MFR6g/10min)
オレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマー(CEBC):ダイナロン(登録商標)6200P
エチレンブテン共重合体1:タフマー(登録商標)DF640(融点55℃、MFR6g/10min)
エチレンブテン共重合体2:タフマー(登録商標)DF610(融点55℃、MFR3g/10min)
エチレンプロピレン共重合体:タフマー(登録商標)P280(融点55℃、MFR5g/10min)
エチレンオクテン共重合体:エンゲージ(登録商標)8150(融点55℃、MFR1g/10min)
(架橋助剤)
架橋助剤1:トリアリルイソシアヌレート
架橋助剤2:トリメチロールプロパントリメタクリレート
(酸化防止剤)
酸化防止剤1:イルガノックス(登録商標)1010
酸化防止剤2:イルガノックス(登録商標)1076
【0029】
[絶縁層の形成]
上記材料を用い、表1及び表2に示す配合(質量部)で各材料を混合して絶縁層形成用樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をTダイ法を用いてシート状に成形した。ニップロール方式を用いて、Tダイのダイス厚みを0.05mm、ダイス−冷却ロール間のエアギャップを50mmに設定し、厚み0.05mmの絶縁層を形成した。成膜速度を徐々に上げ、良好にシートを作製可能な成膜速度を測定した。成膜速度10m/min以上を合格値とした。なお成膜時の室温は10℃とし、成膜時の架橋助剤の蒸気発生量を目視で観察した。
【0030】
[γ線の照射による架橋]
得られた絶縁層に120kGyのγ線を照射して架橋させた。
【0031】
[ブリードアウト特性(ブリードが一定量に達するまでの期間)]
上記架橋した絶縁層シートを定型サイズに切り取り、室温で一定期間保管した。このシートの表面にブリードアウトした架橋助剤の量をATR−IRで定量した。具体的には、架橋助剤に特徴的なピーク(1700cm−1)において、フィルムをそのまま測定した時のピーク高さ(A%)とフィルム表面をエタノールで拭き取ってから測定した時のピーク高さ(B%)を測定し、A−Bが4%となるまでの期間を求めた。4週間以上を合格とした。なお、表中の「なし」は架橋助剤が含まれていないために、特徴的なピークが検出されなかったことを示す。
【0032】
[加熱変形残率の評価]
上記架橋した絶縁層シートの加熱変形残率を評価した。具体的には、シートサンプルをTMA(Thermal Mechanical Analysis)装置に入れ、プローブに0.1MPaの荷重をかけた状態で昇温し、室温での厚みと200℃での厚みを測定した。室温での厚みに対する200℃での厚みの比を加熱変形残率(%)とした。40%以上のものを合格とした。以上の結果を表1及び表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
実施例1〜6は、オレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマー(CEBC)をポリプロピレン樹脂又は酸変性ポリプロピレン樹脂と混合し、γ線照射により架橋させたシートである。実施例1〜5は架橋助剤を添加していないが、架橋性の指標である加熱変形残率は40%以上であり良好に架橋していることがわかる。また実施例6には架橋助剤を樹脂成分100質量部に対して1部混合しているが、成形時の架橋助剤蒸気の発生は少なく、架橋助剤のブリードアウト特性も合格値である4週間を超えている。またいずれのシートも15m/min以上の速度で成膜可能であり生産性も良好である。
【0036】
比較例1〜3は、オレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマー(CEBC)を用いずポリプロピレン樹脂又は酸変性ポリプロピレン樹脂に架橋助剤を混合して架橋させたシートである。加熱変形残率は95%と良好な結果であるが、成形時の架橋助剤蒸気の発生が多く、また架橋助剤のブリードアウトも多くなっている。
【0037】
比較例4はポリプロピレン樹脂単体を用いたものである。また、比較例5はポリプロピレン樹脂100質量部に対して架橋助剤を1部混合したものである。これら比較例は、他のものと比べると加熱変形残率が低く、架橋反応が充分に起こっていないと推測される。また比較例6〜9はオレフィン結晶・エチレンブテン・オレフィン結晶ブロックポリマー(CEBC)以外の樹脂とポリプロピレン樹脂とを混合し、γ線照射により架橋させたシートである。加熱変形残率が合格値を超えているため、架橋反応が起こっていることは推測されるが、成膜速度が遅く、作業性が悪いことがわかる。
【0038】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
1 非水電解質電池
2 封入容器
3 リード導体
4a 第二の絶縁層
4b 第一の絶縁層
5 金属層
6 樹脂層
7 樹脂層
8 ラミネートフィルム
9 シール部
10 正極集電体
11 負極集電体
12 セパレータ
13 非水電解質
図1
図2
図3