特許第6881327号(P6881327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881327
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 63/00 20060101AFI20210524BHJP
   B62D 63/00 20060101ALI20210524BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B65G63/00 K
   B62D63/00
   B65G1/00 501C
   B65G1/00 501F
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-6816(P2018-6816)
(22)【出願日】2018年1月19日
(65)【公開番号】特開2019-123609(P2019-123609A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】港 智史
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−53127(JP,A)
【文献】 特表2008−536779(JP,A)
【文献】 実開昭48−045086(JP,U)
【文献】 特開昭53−115478(JP,A)
【文献】 特開昭55−119634(JP,A)
【文献】 米国特許第04718640(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
B65G 63/00−63/06
B62D 63/00−63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を載置可能とする荷台本体および路面に接地されて前記荷台本体を支持する伸縮可能な脚部を備える搬送用荷台と、
前記脚部の短縮化により前記搬送用荷台と連結可能な連結部を備えた自走可能な駆動車両と、を有し、
前記搬送用荷台は、
前記脚部の伸縮と連動する油圧シリンダと、
前記脚部を伸長する方向に付勢するばねと、
作動油の蓄圧を可能とするアキュムレータと、を備え、
前記脚部は、載置された荷の自重による前記荷台本体の下降により短縮され、
前記駆動車両は、前記荷台本体の下降により前記連結部を介して前記搬送用荷台と連結され、
前記油圧シリンダは、前記荷台本体の下降と連動して作動油を増圧し、
前記アキュムレータは、前記荷台本体の下降により増圧された作動油を蓄圧し、
前記脚部は、前記駆動車両と前記搬送用荷台との連結後に、前記アキュムレータから蓄圧された作動油を前記油圧シリンダへ供給することにより、さらに短縮されて前記路面から離隔され、
前記油圧シリンダに供給された作動油を保持することにより前記脚部の前記路面からの離隔が維持され、
前記駆動車両は、前記脚部の前記路面からの離隔後に前記搬送用荷台を搬送することを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記油圧シリンダは、ピストンにより仕切られた第1油室および第2油室を備え、
前記アキュムレータおよび前記油圧シリンダを備える油圧回路装置を備え、
前記油圧回路装置は、
前記荷台本体の下降に伴う前記油圧シリンダによる作動油の増圧時に、前記第1油室と前記アキュムレータを連通とする第1切換弁と、
前記脚部が短縮されて前記路面より離隔するように、前記アキュムレータから蓄圧された作動油が前記油圧シリンダへ供給されるときに、前記第2油室と前記アキュムレータとを連通する第2切換弁と、
前記荷台本体から荷が積み降ろされて前記脚部が伸長されて前記路面に接地するように、前記アキュムレータとタンクとを連通し、前記アキュムレータの残圧を開放する第3切換弁と、
前記アキュムレータの残圧を開放するとき、前記第1油室と前記タンクとを連通する第4切換弁と、
前記アキュムレータの残圧を開放するとき、伸長時に前記第2油室と前記タンクとを連通する第5切換弁と、を有することを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記脚部が前記路面から離隔するように短縮された後、前記アキュムレータから前記油圧シリンダに供給された作動油の圧力が保持されることにより、前記脚部の前記路面からの離隔が維持されることを特徴とする請求項1又は2記載の搬送システム。
【請求項4】
前記路面からの離隔が維持される前記脚部は、前記アキュムレータの残圧開放および前記油圧シリンダに保持された作動油の開放により伸長することを特徴とする請求項3記載の搬送システム。
【請求項5】
前記駆動車両は、前記アキュムレータへの増圧された作動油の蓄圧と、前記脚部の前記路面より離隔する短縮化と、前記路面より離隔する前記脚部の伸長化および短縮化の保持を切り換える切換装置を備え、
前記搬送用荷台は、前記切換装置により操作される被操作部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の搬送システム。
【請求項6】
前記被操作部は、第1プランジャおよび第2プランジャを備え、
前記切換装置は、
前記第1プランジャを進退させる第1ソレノイドと、前記第2プランジャを進退させる第2ソレノイドを備え、
前記第1プランジャが第1ソレノイドの作動により後退すると、前記脚部は、前記路面から離隔するように前記アキュムレータにて蓄圧された作動油によりさらに短縮され、
後退した前記第1プランジャが前進すると、前記路面から離隔された前記脚部を保つように、前記アキュムレータから前記油圧シリンダに供給された作動油の圧力が保持され、
前記第2プランジャが前記第2ソレノイドにより後退すると、前記路面から離隔された前記脚部を伸長するように、前記油圧シリンダの作動油が開放されることを特徴とする請求項5記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷の搭載可能とする荷台と荷台を搬送する駆動車両とを有する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の搬送システムとしては、例えば、図15(a)に示す搬送システム70が存在する。図15(a)に示す搬送システム70では、荷Wの搭載を可能とする荷台車両71と、荷台車両71を搬送する駆動車両72を有する。荷台車両71は、荷台本体73と荷台本体73に備えられた転動輪74と、転動輪74を懸架し、荷台本体73を昇降可能とする懸架装置75を備えている。荷台車両71の方向を転換できるように、各転動輪74は旋回するように構成されている。駆動車両72は、自走可能であって、荷Wを搭載した荷台車両71における荷台本体73の下部と連結可能な連結部76を備えている。
【0003】
懸架装置75は、転動輪74を懸架する装置であり、荷台車両71に荷Wが搭載されたときは、荷台本体73を下降させ、荷Wが降ろされた状態では荷台本体73を上昇させる。従って、搬送システム70では、図15(a)に示すように、荷Wと荷台車両71の搬送に必要な駆動車両72を、空の荷台車両71の下方に待機させ、荷台車両71への荷Wの搭載により、図15(b)に示すように、荷台本体73が下降して駆動車両72と荷台車両71とは連結される。荷台車両71と連結された駆動車両72は自走することにより荷Wを搭載した荷台車両71を搬送する。荷Wのない空の荷台車両71は、図15(c)に示すように、昇降可能な連結部78を備えた別の駆動車両77により搬送される。駆動車両77は、空の荷台車両71を専ら搬送する。
【0004】
なお、搬送システムに関係する別の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された荷物積載時の位置決め装置が知られている。パレット運搬車は、上下方向に昇降可能な平板状の荷台と、この荷台の下部に設けられて操舵及び駆動可能な前輪・後輪とを備えている。また、荷台の上下移動や前輪・後輪の操舵及び駆動制御のための運転席が荷台下部の進行方向前方及び後方に夫々設けられている。パレットは、荷物を戴置するための戴置台がその四隅を4本の脚部により支持されている。ここで、パレット運搬車は、操作者の運転により、荷台を下げた状態で走行してパレットの下方に進入し、一旦停止する。しかる後、荷台を上げてパレットを持上げると共に、走行を再開してパレットを搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−53127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図15(a)〜(c)に示す従来の搬送システムは、荷台車両71であり、転動輪74および転動輪74を旋回可能にするための手段が必要であることから、荷台車両71の重量が嵩むという問題がある。また、荷Wを搭載した荷台車両71を搬送する駆動車両72のほかに、空の荷台車両71を搬送するための別の駆動車両77が必要となる。一方、特許文献1には、車輪を備えないパレットが開示されているが、荷がコンテナ等の重量物の場合では、荷の搭載時の衝撃を緩和することができない。また、パレット運搬車に荷およびパレットを昇降させるための機構が必要であり、荷が重量物である場合には、パレットを昇降させる機構が大掛かりとなり、パレット運搬車に必要なエネルギーが過大となる。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、搬送用荷台に車輪や昇降のための駆動源を必要とせず、荷の重量により得られるエネルギーを有効活用することが可能な搬送システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、荷を載置可能とする荷台本体および路面に接地されて前記荷台本体を支持する伸縮可能な脚部を備える搬送用荷台と、前記脚部の短縮化により前記搬送用荷台と連結可能な連結部を備えた自走可能な駆動車両と、を有し、前記搬送用荷台は、前記脚部の伸縮と連動する油圧シリンダと、前記脚部を伸長する方向に付勢するばねと、作動油の蓄圧を可能とするアキュムレータと、を備え、前記脚部は、載置された荷の自重による前記荷台本体の下降により短縮され、前記駆動車両は、前記荷台本体の下降により前記連結部を介して前記搬送用荷台と連結され、前記油圧シリンダは、前記荷台本体の下降と連動して作動油を増圧し、前記アキュムレータは、前記荷台本体の下降により増圧された作動油を蓄圧し、前記脚部は、前記駆動車両と前記搬送用荷台との連結後に、前記アキュムレータから蓄圧された作動油を前記油圧シリンダへ供給することにより、さらに短縮されて前記路面から離隔され、前記油圧シリンダに供給された作動油を保持することにより前記脚部の前記路面からの離隔が維持され、前記駆動車両は、前記脚部の前記路面からの離隔後に前記搬送用荷台を搬送することを特徴とする。
【0009】
本発明では、荷の自重により得られるエネルギーを利用することにより、搬送用荷台に駆動源を備えることなく脚部の短縮が可能であり、また、脚部の伸長はばねにより可能である。その結果、エネルギー効率に優れた搬送システムを実現することができる。また、搬送用荷台に車輪や車輪を旋回させるための手段を設ける必要がないため、搬送システムの製造コストを低減することができる。
【0010】
また、上記の搬送システムにおいて、前記油圧シリンダは、ピストンにより仕切られた第1油室および第2油室を備え、前記アキュムレータおよび前記油圧シリンダを備える油圧回路装置を備え、前記油圧回路装置は、前記荷台本体の下降に伴う前記油圧シリンダによる作動油の増圧時に、前記第1油室と前記アキュムレータを連通とする第1切換弁と、前記脚部が短縮されて前記路面より離隔するように、前記アキュムレータから蓄圧された作動油が前記油圧シリンダへ供給されるときに、前記第2油室と前記アキュムレータとを連通する第2切換弁と、前記荷台本体から荷が積み降ろされて前記脚部が伸長されて前記路面に接地するように、前記アキュムレータとタンクとを連通し、前記アキュムレータの残圧を開放する第3切換弁と、前記アキュムレータの残圧を開放するとき、前記第1油室と前記タンクとを連通する第4切換弁と、前記アキュムレータの残圧を開放するとき、伸長時に前記第2油室と前記タンクとを連通する第5切換弁と、を有する構成としてもよい。
【0011】
この場合、油圧回路装置により、荷台本体の下降に伴う作動油の増圧と、増圧された作動油のアキュムレータへの蓄圧と、蓄圧された作動油による脚部の路面から離隔と、脚部の路面からの離隔が維持と、ばねの脚部の伸長による脚部の接地が可能となる。
【0012】
また、上記の搬送システムにおいて、前記脚部が前記路面から離隔するように短縮された後、前記アキュムレータから前記油圧シリンダに供給された作動油の圧力が保持されることにより、前記脚部の前記路面からの離隔が維持される構成としてもよい。
【0013】
この場合、アキュムレータから油圧シリンダに供給された作動油の圧力が保持されることにより、脚部の前記路面からの離隔が維持されるから、駆動車両が搬送用荷台を搬送するときに脚部が路面に接地することはない。
【0014】
また、上記の搬送システムにおいて、前記路面からの離隔が維持される前記脚部は、前記アキュムレータの残圧開放および前記油圧シリンダに保持された作動油の開放により伸長する構成としてもよい。
【0015】
この場合、荷を積み降ろした後に、アキュムレータの残圧開放および油圧シリンダに保持された作動油を開放することにより、ばねは荷台本体を上昇させるとともに脚部を伸長して路面に接地させることができ、搬送用荷台と駆動車両の連結を解除することができる。
【0016】
また、上記の搬送システムにおいて、前記駆動車両は、前記アキュムレータへの増圧された作動油の蓄圧と、前記脚部の前記路面より離隔する短縮化と、前記路面より離隔する前記脚部の伸長化および短縮化の保持を切り換える切換装置を備え、前記搬送用荷台は、前記切換装置により操作される被操作部を備えている構成としてもよい。
【0017】
この場合、駆動車両に備えられた切換装置は、被操作部に対して操作することにより、アキュムレータへの増圧された作動油の蓄圧と、脚部の短縮化による路面からの離隔と、脚部の路面からの離隔の維持と、路面より離隔する脚部の伸長化による路面への接地と、を切り換える。このため、搬送用荷台が切り換えのための駆動源を備える必要がない。
【0018】
また、上記の搬送システムにおいて、前記被操作部は、第1プランジャおよび第2プランジャを備え、前記切換装置は、前記第1プランジャを進退させる第1ソレノイドと、前記第2プランジャを進退させる第2ソレノイドを備え、前記第1プランジャが第1ソレノイドの作動により後退すると、前記脚部は、前記路面から離隔するように前記アキュムレータにて蓄圧された作動油によりさらに短縮され、後退した前記第1プランジャが前進すると、前記路面から離隔された前記脚部を保つように、前記アキュムレータから前記油圧シリンダに供給された作動油の圧力が保持され、前記第2プランジャが前記第2ソレノイドにより後退すると、前記路面から離隔された前記脚部を伸長するように、前記油圧シリンダの作動油が開放される構成としてもよい。
【0019】
この場合、第1プランジャを第1ソレノイドにより進退させることにより、路面から離隔するようにアキュムレータにて蓄圧された作動油により脚部をさらに短縮させることができる。また、路面から離隔された脚部を保つように、アキュムレータから油圧シリンダに供給された作動油の圧力を保持することができる。第2プランジャを第2ソレノイドにより進退させることにより、路面から離隔された脚部を伸長するように油圧シリンダの作動油を開放することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、搬送用荷台に車輪や昇降のための駆動源を必要とせず、荷の重量により得られるエネルギーを有効活用することが可能な搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る搬送システムの概要を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る搬送システムの概要を示す平面図である。
図3】搬送システムの被操作部および切換装置の側面図である。
図4】(a)はコンテナ非搭載時の搬送システムの正面図であり、(b)はコンテナ搭載時の搬送システムの正面図である。
図5】搬送用荷台の油圧回路装置を示す図である。
図6】駆動車両の構成を示す説明図である。
図7】搬送システムによるコンテナの搬送を説明する説明図である。
図8】作動油が増圧される状態を示す油圧回路装置の図である。
図9】作動油がアキュムレータに蓄圧される状態を示す油圧回路装置の図である。
図10】アキュムレータに蓄圧された作動油が第2油圧室に供給される状態を示す油圧回路装置の図である。
図11】床面から離隔した脚部が維持された状態を示す油圧回路装置の図である。
図12】第2油室およびアキュムレータが残圧開放された状態を示す油圧回路装置の図である。
図13】変形例に係る搬送システムの被操作部および切換装置の側面図である。
図14】変形例に係る搬送システムの被操作部および切換装置の作用説明図である。
図15】従来の搬送システムによるコンテナの搬送を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る搬送システムついて図面を参照して説明する。本実施形態の搬送システムは、港湾設備としてのコンテナターミナルにおいて船舶とコンテナヤードとの間にてコンテナの荷役を受けてコンテナを搬送する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の搬送システム10は、コンテナCを搬送するための搬送用荷台11と、搬送用荷台11を搬送する複数の駆動車両12を備えている。搬送用荷台11は、荷に相当するISO規格コンテナ(以下、「コンテナ」と表記する)Cを搬送するための荷台である。図1図2に示すように、搬送用荷台11は、荷台本体13と、荷台本体13を支持する伸縮可能な4本の脚部14を備えている。
【0024】
荷台本体13の上面15は、コンテナCを載置可能とする搭載面である。荷台本体13の下面16には、駆動車両12と連結のための嵌合凹部17が4箇所に形成されている。嵌合凹部17は、下面16から上面15へ向かうにつれて内径が小さくなる被嵌合面18により形成されている。嵌合凹部17から上方へ形成された空間19を備えている。被嵌合面18は下面16に対して45°の傾斜面である。荷台本体13の前端付近および後端の下面16には被操作部20が備えられている。被操作部20は、後述する駆動車両12が備える切換装置55により操作される。図3に示すように、被操作部20は、下方へ向けて突出する第1プランジャ21および第2プランジャ22を備えている。第1プランジャ21および第2プランジャ22は下方から押し上げられると上方へ変位する。
【0025】
図2に示すように、脚部14は、搬送用荷台11の四隅に固定されている。図4(a)、図4(b)に示すように、脚部14は荷台本体13を支持するとともに伸縮可能である。脚部14は、油圧シリンダ23および圧縮ばね24を備えている。油圧シリンダ23は、シリンダ本体部25、ピストン26と、ピストン26に連結されたロッド部27を備えている。シリンダ本体部25は、荷台本体13の下面16に下方へ向けて固定されており、ロッド部27はシリンダ本体部25に対して鉛直方向に進退する。ロッド部27の鉛直方向の進退により、脚部14が伸縮する。
【0026】
油圧シリンダ23は、ピストン26により仕切られた第1油室28および第2油室29を備えている。つまり、油圧シリンダ23は復動型の油圧シリンダであり、第1油室28および第2油室29は、図5に示す油圧回路装置30の配管と接続されている。油圧シリンダ23は、脚部14の伸縮と連動する。
【0027】
脚部14にはばねとしての圧縮ばね24が設けられており、圧縮ばね24は脚部14を伸長する方向に付勢する付勢力をピストン26およびロッド部27に付与する。短縮された脚部14が伸長するときに、圧縮ばね24による付勢力はロッド部27を下降させる。圧縮ばね24のばね定数は、荷台本体13にコンテナCが搭載されない空荷のときに脚部14が伸長され、コンテナCが搭載されたときには、脚部14が短縮するように設定されている。図1図3では、圧縮ばね24は、第1油室28にてシリンダ本体部25とピストン26との間に配置されているが、図4では、油圧シリンダ23と圧縮ばね24を模式的に図示している。
【0028】
次に、図5に示す油圧回路装置30について説明する。油圧回路装置30は、コンテナCの自重を利用して油圧エネルギーを発生させ、発生させた油圧エネルギーにより脚部14を短縮する機能を備えている。図5に示すように、油圧回路装置30は、油圧シリンダ23、アキュムレータ31、第1切換弁32、第2切換弁33、第3切換弁34、第4切換弁35、第5切換弁36、パイロット弁37およびドレインとしてのタンク38を備える。
【0029】
油圧回路装置30は、第1油室28とアキュムレータ31又はタンク38とを接続する油路K1を備えている。油路K1には第1切換弁32が備えられている。第1切換弁32は、単動ロッドA1を有する3ポート3位置制御弁である。第1切換弁32は、常態では全ポートが閉じられる閉状態の中間位置32Aと、第1油室28とアキュムレータ31とを連通する第1位置32Bと、第1油室28とタンク38とを連通する第2位置32Cと、を取り得る。
【0030】
油路K1における第1油室28と第1切換弁32との間には、常態にて閉位置を取り得るパイロット弁37が接続されている。第1切換弁32は、油路K1における第1油室28と第1切換弁32との間の油圧が所定圧以上となってパイロット弁37が開位置となると、第1切換弁32はパイロット圧を受けて第1位置32Bを取り得る。第1位置32Bの状態では、第1油室28からアキュムレータ31へ作動油が流れることが許容される。また、第1切換弁32は、単動ロッドA1が押し込まれたときに第2位置32Cを取り得る。第2位置32Cの状態では、第1油室28からタンク38へ作動油が流れることが許容される。単動ロッドA1は、後述する駆動車両12の切換装置55が被操作部20の第1プランジャ21を操作することにより押し込まれ、駆動車両12による第1プランジャ21の操作が解除されると原位置に復帰する。
【0031】
油圧回路装置30は、第2油室29とアキュムレータ31又はタンク38とを接続する油路K2を備えている。油路K2には第2切換弁33が備えられている。第2切換弁33は、単動ロッドA2を有する3ポート3位置制御弁である。第2切換弁33は、常態では全ポートが閉じられる閉状態の中間位置33Aと、第2油室29とタンク38とを連通する第1位置33Bと、第2油室29とアキュムレータ31とを連通する第2位置33Cと、を取り得る。
【0032】
第2切換弁33は、第1切換弁32と同様に、油路K1における第1油室28と第1切換弁32との間の油圧が所定圧以上となってパイロット弁37が開位置となると、第2切換弁33はパイロット圧を受けて第1位置33Bを取り得る。第1位置33Bの状態では、タンク38から第2油室29へ作動油が流れることが許容される。また、第2切換弁33は、単動ロッドA2が押し込まれたときに第2位置33Cを取り得る。第2位置33Cの状態では、アキュムレータ31から第2油室29へ作動油が流れることが許容される。単動ロッドA2は、後述する駆動車両12の切換装置55が被操作部20の第2プランジャ22を操作することにより押し込まれ、駆動車両12による第2プランジャ22の操作が解除されると原位置に復帰する。
【0033】
油圧回路装置30は、第1油室28とタンク38とを接続する油路K3を備えている。油路K3は油路K1における第1油室28と第1切換弁32との間に接続されている。油路K3には、第3切換弁34が備えられている。第3切換弁34は復動ロッドF1、T1を有するデテント付2ポート2位置制御弁である。第3切換弁34は、復動ロッドT1の押し込みにより全ポートが閉じられる閉状態の閉位置34Aと、復動ロッドF1の押し込みにより第1油室28とタンク38とを連通して開状態の開位置34Bと、を取り得る。
【0034】
閉位置34Aの状態では、全ポートが閉じられて第1油室28とタンク38との間を作動油が流れることはできない。復動ロッドT1は、脚部14の伸長により下降されていた荷台本体13が上昇されたときに図示されない部材により押し込まれる。開位置34Bの状態では、第1油室28とタンク38との間を作動油が流れることが許容される。後述する駆動車両12の切換装置55が被操作部20の第2プランジャ22を操作することにより、復動ロッドF1が押し込まれると第3切換弁34を開位置34Bとする。
【0035】
油圧回路装置30は、第2油室29とタンク38とを接続する油路K4を備えている。油路K4は油路K2における第2油室29と第2切換弁33との間に接続されている。油路K4には、第4切換弁35が備えられている。第4切換弁35は復動ロッドF2、T2を有するデテント付2ポート2位置制御弁である。第4切換弁35は、復動ロッドT2の押し込みにより全ポートが閉じられる閉状態の閉位置35Aと、復動ロッドF2の押し込みにより第2油室29とタンク38とを連通して開状態の開位置35Bと、を取り得る。
【0036】
閉位置35Aの状態では、全ポートが閉じられて第2油室29とタンク38との間を作動油が流れることはできない。復動ロッドT2は、脚部14の伸長により下降されていた荷台本体13が上昇されたときに図示されない部材により押し込まれる。開位置35Bの状態では、第2油室29とタンク38との間を作動油が流れることが許容される。復動ロッドF2は、後述する駆動車両12の切換装置55が被操作部20の第2プランジャ22を操作することにより押し込まれると第4切換弁35を開位置35Bとする。
【0037】
油圧回路装置30は、アキュムレータ31とタンク38とを接続する油路K5を備えている。油路K5は油路K2における第2切換弁33とアキュムレータ31との間に接続されている。油路K5には、第5切換弁36が備えられている。第5切換弁36は復動ロッドF3、T3を有するデテント付2ポート2位置制御弁である。第5切換弁36は、復動ロッドT3の押し込みにより全ポートが閉じられる閉状態の閉位置36Aと、復動ロッドF3の押し込みによりアキュムレータ31とタンク38とを連通して開状態の開位置36Bと、を取り得る。
【0038】
閉位置36Aの状態では、全ポートが閉じられてアキュムレータ31とタンク38との間を作動油が流れることはできない。復動ロッドT3は、脚部14の伸長により下降されていた荷台本体13が上昇されたときに図示されない部材により押し込まれる。開位置36Bの状態では、アキュムレータ31とタンク38との間を作動油が流れることが許容される。復動ロッドF3は、後述する駆動車両12の切換装置55が被操作部20の第2プランジャ22を操作することにより押し込まれると第5切換弁36を開位置36Bとする。
【0039】
本実施形態の油圧回路装置30では、油路K1における第1油室28側に絞り39が設けられ、油路K2における第2油室29側に絞り40が設けられている。さらに、油路K5における油路K2側に絞り41が設けられている。なお、絞り39〜41は作動油の流量を制御する。油圧回路装置30は、荷台本体13の前部側の左右一対の脚部14および荷台本体13の後部の脚部14にそれぞれ配設されている。前部の油圧回路装置30は前部側の左右一対の脚部14を短縮し、後部の油圧回路装置30は後部側の左右一対の脚部14を短縮する。
【0040】
次に、駆動車両12について説明する。駆動車両12は、搬送用荷台11と連結可能であって、搬送用荷台11を搬送する自走可能な車両である。本実施形態では、複数の駆動車両12が備えられているが駆動車両12の構成は同一である。駆動車両12の車体46には左右一対の前輪47および後輪48が備えられている。前輪47および後輪48は独立懸架された車輪である。前輪47および後輪48の各車輪には駆動源である走行用の電動モータ(図示せず)および操舵用の電動モータがそれぞれ備えられている。従って、車体46には、走行用の電動モータおよび操舵用の電動モータを駆動するためのバッテリ(図示せず)を備えているほか、発電用のエンジン(図示せず)を搭載している。
【0041】
図6に示すように、車体46には管制塔(図示せず)に接地された運行管理システム45と通信可能な通信装置49を備えている。運行管理システム45は、荷の情報に基づいて駆動車両12の運行管理のほか、コンテナCを管理する上位のシステムである。車体46には車体46の各部を制御するコントローラ50が備えられている。また、車体46の前部には、車体46の前方の障害物を検出する障害物センサ(図示せず)を備えている。
【0042】
車体46の上部には、搬送用荷台11の嵌合凹部17と嵌合する嵌合凸部51が形成されている。嵌合凸部51は、連結部に相当し、嵌合凹部17に挿入可能な円錐台状に形成されている。嵌合凸部51の外周面52は、嵌合凸部51の軸心に対して45°に傾斜する傾斜面である。外周面52は、嵌合凸部51が嵌合凹部17に挿入されたときに、嵌合凸部51の外周面52は嵌合面として嵌合凹部17における被嵌合面18と嵌合する。
【0043】
嵌合凸部51の上部には半球状のガイド部53が設けられている。ガイド部53は嵌合凹部17に嵌合凸部51が挿入され易くするように被嵌合面18によりガイドされる部位である。脚部14の短縮化により、嵌合凸部51および嵌合凹部17が互いに嵌合すると、駆動車両12は搬送用荷台11の荷重を受け、また、搬送用荷台11は駆動車両12の推進力の伝達を受ける。
【0044】
車体46の前部付近の上面には切換装置55が備えられている。切換装置55は、搬送用荷台11に備えられた被操作部20を操作する。被操作部20の第1プランジャ21は、上方へ変位されることにより、第1切換弁32の単動ロッドA1および第2切換弁33の単動ロッドA2を押し込む。第2プランジャ22は、上方へ変位されることにより第3切換弁34の復動ロッドF1、第4切換弁35の復動ロッドF2および第5切換弁36の復動ロッドF3を押し込む。復動ロッドT1、T2、T3は、脚部14の伸長により下降されていた荷台本体13の上昇により図示されない部材によって押し込まれる。
【0045】
図3に示すように、切換装置55は、車体46上部に設けられた基台部56と、基台部56に設置された第1ソレノイド57と、第2ソレノイド58と、を備えている。第1ソレノイド57は、電磁コイル57Aと電磁コイル57Aの励磁により上昇するロッド57Bを備えている。荷台本体13の下方に駆動車両12が位置し、かつ、荷台本体13が下降した状態において、ロッド57Bが電磁コイル57Aの励磁により上昇すると、第1プランジャ21を押し込む。第2ソレノイド58は、電磁コイル58Aと電磁コイル58Aの励磁により上昇するロッド58Bを備えている。荷台本体13の下方に駆動車両12が位置し、かつ、荷台本体13が下降した状態において、ロッド58Bが電磁コイル58Aの励磁により上昇すると、第2プランジャ22を押し込む。
【0046】
次に、本実施形態に係る搬送システム10によるコンテナCの荷役について説明する。コンテナCの積み込み位置に待機する空荷の搬送用荷台11にコンテナCを搭載し、駆動車両12が搬送先にコンテナCを搭載した搬送用荷台11に搬送する場合について説明する。
【0047】
図7(a)に示すように、コンテナCの積み込み位置に待機する搬送用荷台11は空荷であり、脚部14は伸長された状態で接地されて荷台本体13を支持する。この状態では、油圧回路装置30における第1切換弁32、第2切換弁33はそれぞれ対応する中間位置32A、33Aである。また、第3切換弁34、第4切換弁35および第5切換弁36は、それぞれ対応する閉位置34A、35A、36Aである。また、油圧シリンダ23の第1油室28および第2油室29には作動油が存在する。
【0048】
運行管理システム45は、積み込み位置に待機する搬送用荷台11に搭載されるコンテナCの重量および搬送用荷台11の重量を予め認識しており、コンテナCが搭載された搬送用荷台11の搬送に必要な駆動車両12の台数を算出する。算出された駆動車両12の台数に基づいて複数の駆動車両12から搬送に必要な駆動車両12が選択される。選択された駆動車両12は、運行管理システム45からの指令に基づいて積み込み位置に待機する搬送用荷台11の荷台本体13の下方に移動して待機する。ここでは、物品が収容されているコンテナCであるため、運行管理システム45は、搬送に必要な駆動車両12は4台と算出し、4台の駆動車両12が荷台本体13の下方に待機する。図7(a)に示すように、各駆動車両12は、嵌合凸部51の上方に嵌合凹部17が位置するように停車する。
【0049】
ガントリークレーン等によりコンテナCが搬送用荷台11に搭載されると、コンテナCの自重により荷台本体13が下降する。荷台本体13の下降により脚部14は短縮する。荷台本体13の下降による脚部14の短縮は、図8に示すように、油圧シリンダ23のピストン26を第1油室28の容積を減少させる方向(第2油室29の容積を増大させる方向)に変位する。このため、油路K1における第1油室28と第1切換弁32との間では油圧が上昇する。油路K1における第1油室28と第1切換弁32との間の油圧が所定の圧力以上になると、パイロット弁37が開位置となり、第1切換弁32および第2切換弁33はパイロット圧を受ける。なお、絞り39、40は作動油の流量を制御し、急激な作動油の移動による油圧回路装置30における負荷を軽減する。
【0050】
図9に示すように、パイロット圧を受けた第1切換弁32は中間位置32Aから第1位置32Bに切り換わり、また、第2切換弁33は中間位置33Aから第1位置33Bに切り換わる。第1切換弁32が第1位置32Bに切り換わることにより、第1油室28とアキュムレータ31は連通される。コンテナCの自重によって油路K1の作動油は増圧されて高圧となるが、アキュムレータ31に蓄圧される。つまり、コンテナCの重量によるエネルギー(位置エネルギー)は、油圧回路装置30により油圧エネルギーに変換される。一方、第2切換弁33が第1位置33Bに切り換わることにより、第2油室29とタンク38は連通される。第2油室29の容積はピストン26の変位により増大するので、負圧によってタンク38から第2油室29へ作動油が汲み上げられる。
【0051】
荷台本体13がさらに下降すると、図7(b)に示すように、駆動車両12の嵌合凸部51に嵌合凹部17が嵌合して搬送用荷台11と駆動車両12とは連結される。駆動車両12の嵌合凸部51に嵌合凹部17が嵌合するとき、駆動車両12の微小な位置ずれが存在しても、微小な位置ずれはガイド部53が嵌合凹部17の被嵌合面18に案内され、搬送用荷台11に対して駆動車両12は位置決めされる。
【0052】
コンテナCを搭載した荷台本体13の荷重を駆動車両12が受けるまで荷台本体13が下降すると、被操作部20が切換装置55に接近して対向する。そして、切換装置55の第1ソレノイド57の電磁コイル57Aが励磁され、ロッド57Bは上方へ突出して第1プランジャ21を押し込む。第1プランジャ21がロッド57Bによって押し込まれて後退することにより、第1切換弁32の単動ロッドA1が押し込まれ、第1切換弁32は第1位置32Bから第2位置32Cに切り換わる。また、第2切換弁33の単動ロッドA2が押し込まれて後退し、第2切換弁33は第1位置33Bから第2位置33Cに切り換わる。
【0053】
図10に示すように、第1切換弁32が第2位置32Cに切り換わることにより、第1油室28とタンク38が連通し、第2切換弁33が第2位置33Cに切り換わることにより、第2油室29とアキュムレータ31が連通する。このため、アキュムレータ31の高圧の作動油が第2油室29へ供給され、供給された高圧の作動油はピストン26を第2油室29の容積が増大する方向に移動させる。第2油室29の容積の増大に伴って第1油室28の容積は減少するため、第1油室28の作動油は、第1切換弁32を通じてタンク38へ移動する。その結果、図7(c)に示すように、搬送用荷台11と駆動車両12との連結後において、脚部14はさらに短縮されて路面Fから離隔する。脚部14が路面Fから離隔したか否かは、駆動車両12の障害物センサによって検知される。脚部14が路面Fから離隔しているとき、障害物センサは脚部14を障害物として検出せず、脚部14が路面Fから離隔していないときは、脚部14を障害物として検出する。
【0054】
脚部14のさらなる短縮により脚部14が路面Fから離隔すると、次に、第1ソレノイド57の電磁コイル57Aを消磁してロッド57Bを下降させる。このため、図11に示すように、第1プランジャ21の上方への押し込みが解消されて前進し、第1切換弁32は第2位置32Cから中間位置32Aに切り換わり、第2切換弁33は第2位置33Cから中間位置33Aに切り換わる。第1切換弁32が中間位置32Aに切り換わり、第2切換弁33が中間位置33Aに切り換わることにより、第2油室29の高圧の作動油および第1油室28の作動油は保持され、ピストン26の移動は規制される。従って、脚部14は路面Fからの離隔後に離隔した状態を維持する。つまり、アキュムレータ31から第2油室29に供給された作動油の圧力が保持されることにより、脚部14の路面Fからの離隔が維持される。
【0055】
脚部14の路面Fからの離隔が維持されると、コンテナCを搭載した搬送用荷台11を支持する4台の駆動車両12は、搬送先へ向けて移動する。駆動車両12は、運行管理システム45の指令に基づいて所定の走行経路を走行する。駆動車両12はコンテナCを搭載した搬送用荷台11を搬送先に搬送すると停車する。搬送先は搬送した搬送用荷台11のコンテナCを積み降ろす位置であるとともに、空のコンテナCが積み込まれる位置である。
【0056】
駆動車両12および搬送用荷台11が搬送先に到着して停車すると、切換装置55の第2ソレノイド58の電磁コイル58Aが励磁され、ロッド58Bは上方へ突出して第2プランジャ22を押し込む。第2プランジャ22がロッド58Bによって押し込まれることにより、第3切換弁34の復動ロッドF1が押し込まれ、図12に示すように、第3切換弁34は閉位置34Aから開位置34Bに切り換わる。また、第4切換弁35の復動ロッドF2が押し込まれ、第4切換弁35は閉位置35Aから開位置35Bに切り換わる。また、第5切換弁36の復動ロッドF3が押し込まれ、第5切換弁36は閉位置36Aから開位置36Bに切り換わる。
【0057】
第3切換弁34が開位置34Bに切り換わることにより、第1油室28とタンク38が連通し、第4切換弁35が開位置35Bに切り換わることにより、第2油室29とタンク38が連通する。第5切換弁36が開位置36Bに切り換わることにより、アキュムレータ31とタンク38が連通する。このため、保持されていた第2油室29の高圧の作動油は圧力開放されて第3切換弁34を通じてタンク38に回収される。また、第1油室28とタンク38は連通される。また、アキュムレータ31にて保持されていた高圧の作動油は第5切換弁36を通じてタンク38に回収される。この状態では、ピストン26は自由に移動できるため、圧縮ばね24の付勢力により第1油室28の容積を増大させる方向へ移動する。このため、図7(d)に示すように、脚部14は伸長して路面Fに接地する。
【0058】
次に、搬送用荷台11に搭載されているコンテナCが積み降ろされる。コンテナCが積み降ろされると、ピストン26は圧縮ばね24の付勢力により第1油室28の体積をさらに増大させる方向に移動する。このため、図7(e)に示すように、脚部14は伸長され、荷台本体13は脚部14の伸長により上昇する。荷台本体13が上昇することにより、嵌合凹部17が嵌合凸部51から離れて嵌合が解消され、搬送用荷台11と駆動車両12との連結が解除される。また、被操作部20は切換装置55から離れ、第2プランジャ22はロッド58Bから離れるが、ピストン26は自由に移動できる状態を維持する。第2ソレノイド58の電磁コイル58Aは、第2プランジャ22がロッド58Bから離れた後に消磁され、ロッド58Bは下方へ変位する。脚部14の伸長による荷台本体13の上昇が停止すると、第3切換弁34、第4切換弁35、第5切換弁36は閉じられる。
【0059】
空荷となった搬送用荷台11の荷台本体13の下方に残された駆動車両12の一部は、別の搬送用荷台11の発送のために移動する。搬送先にて空荷となった搬送用荷台11には、空のコンテナCが搭載される。従って、残りの駆動車両12は、荷台本体13の下方にて待機する。空のコンテナCが搭載されると荷台本体13は下降し、搬送用荷台と駆動車両とは連結される。空のコンテナCの搭載の場合、油圧回路装置30は、荷が収容されたコンテナCの搭載の場合と同様に作動される
【0060】
本実施形態に係る搬送システム10によれば以下の作用効果を奏する。
(1)コンテナCの自重により得られるエネルギーを利用することにより、搬送用荷台11に駆動源を備えることなく脚部14の短縮が可能であり、また、脚部14の伸長は圧縮ばね24により可能である。その結果、エネルギー効率に優れた搬送システム10を実現することができる。また、搬送用荷台11に車輪や車輪を旋回させるための手段を設ける必要がないため、搬送システム10の製造コストを低減することができる。
【0061】
(2)油圧回路装置30により、荷台本体13の下降に伴う作動油の増圧と、増圧された作動油のアキュムレータ31への蓄圧と、蓄圧された作動油による脚部14の路面Fから離隔と、脚部14の路面Fからの離隔の維持と、圧縮ばね24の脚部14の伸長による脚部14の接地が可能となる。
【0062】
(3)アキュムレータ31から油圧シリンダ23の第2油室29に供給された作動油の圧力が保持されることにより、脚部14の路面Fからの離隔が維持されるから、駆動車両12がコンテナCを搭載した搬送用荷台11を搬送するときに脚部14が路面Fに接地することはない。
【0063】
(4)コンテナCを積み降ろした後に、アキュムレータ31の残圧開放および油圧シリンダ23の第2油室29に保持された作動油を開放することにより、圧縮ばね24は荷台本体13を上昇させるとともに脚部14を伸長して路面Fに接地させることができ、搬送用荷台11と駆動車両12との連結を解除することができる。
【0064】
(5)駆動車両12に備えられた切換装置55は、搬送用荷台11の被操作部20を操作することにより、アキュムレータ31への増圧された作動油の蓄圧と、脚部14の短縮化による脚部14の路面Fからの離隔と、脚部14の路面Fからの離隔の維持と、路面Fより離隔する脚部14の伸長化による路面Fへの接地と、を切り換える。このため、搬送用荷台11がこれらの切り換えのための駆動源を備える必要がない。
【0065】
(6)第1プランジャ21を第1ソレノイド57により進退させることにより、路面Fから離隔するようにアキュムレータ31にて蓄圧された作動油により脚部14をさらに短縮させることができる。また、路面Fから離隔された脚部14を保つように、アキュムレータ31から油圧シリンダ23の第2油室29に供給された作動油の圧力を保持することができる。第2プランジャ22を第2ソレノイド58により進退させることにより、路面Fから離隔された脚部14を伸長するように第2油室29の作動油を開放することができる。
【0066】
(変形例)
次に、変形例に係る搬送システムについて説明する。
図13に示すように、本変形例の駆動車両12が備える切換装置60は、基台部61と、サーボモータ62と、ボールねじ63と、リニアガイド64と、スライダ65と、を備えている。サーボモータ62は基台部61の後部に収容されている。サーボモータ62と連結されたボールねじ63は、軸心が前後方向となるように基台部61内にて水平に支持されている。リニアガイド64にはボールねじ63が螺入されている。リニアガイド64の上部には断面円弧状のスライダ65が設けられている。ボールねじ63の回転によりリニアガイド64およびスライダ65が前後に移動する。
【0067】
切換装置60と被操作部20が接近して対向した状態では、スライダ65は第1プランジャ21を押し込む位置P1と、第1プランジャ21と第2プランジャ22の間となる位置P2と、第2プランジャ22を押し込む位置P3と、の3位置にて停止可能である。
【0068】
本実施形態では、荷台本体13の下降により作動油が増圧され、増圧された作動油がアキュムレータ31に蓄圧された後に、図14(a)に示すように、位置Aに位置するスライダ65が第1プランジャ21を押し込み後退させることで、第1位置32Bから第2位置32Cに切り換わる。また、第2切換弁33の単動ロッドA2が押し込まれて後退され、第2切換弁33は第1位置33Bから第2位置33Cに切り換わる。その結果、脚部14はさらに短縮されて路面Fから離隔する(図10を参照)。
【0069】
次に、図14(b)に示すように、位置Aに位置するスライダ65は位置P2に移動する。このため、第1プランジャ21の上方への押し込みが解消され、第1切換弁32は第2位置32Cから中間位置32Aに切り換わり、第2切換弁33は第2位置33Cから中間位置33Aに切り換わる(図11を参照)。従って、脚部14は路面Fから離隔した状態を維持する。つまり、アキュムレータ31から第2油室29に供給された作動油の圧力が保持されることにより、脚部14の路面Fからの離隔が維持される。
【0070】
脚部14の路面Fからの離隔が維持されると、コンテナCを搭載した搬送用荷台11を支持する4台の駆動車両12は、搬送先へ向けて移動する。駆動車両12は、運行管理システム45の指令に基づいて所定の走行経路を走行する。駆動車両12はコンテナCを搭載した搬送用荷台11を搬送先に搬送すると停車する。
【0071】
駆動車両12および搬送用荷台11が搬送先に到着して停車すると、図14(c)に示すように、スライダ65が位置P3へ移動する。このため、第3切換弁34の復動ロッドF1が押し込まれ、第3切換弁34は閉位置34Aから開位置34Bに切り換わる。また、第4切換弁35の復動ロッドF2が押し込まれ、第4切換弁35は閉位置35Aから開位置35Bに切り換わる。また、第5切換弁36の復動ロッドF3が押し込まれ、第5切換弁36は閉位置36Aから開位置36Bに切り換わる(図12を参照)。このため、脚部14は伸長して路面Fに接地する。
【0072】
次に、搬送用荷台11に搭載されているコンテナCが積み降ろされると、脚部14は伸長され、荷台本体13は脚部14の伸長により上昇する。被操作部20は切換装置60から離れ、脚部14の伸長による荷台本体13の上昇が停止すると、第3切換弁34、第4切換弁35、第5切換弁36は閉じられる。
【0073】
本変形例によれば、実施形態の作用効果と同等の作用効果を奏するほか、切換装置をソレノイド以外の手段によって実現することが可能である。
【0074】
本考案は、上記の実施形態に限定されるものではなく考案の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0075】
○ 上記の実施形態では、物品が収容されているコンテナを4台の駆動車両により搬送することが可能な構成の搬送用荷台とし、2台の駆動車両により空荷のコンテナを搬送するようにしたが、この限りではない。例えば、物品が収容されているコンテナを5台以上の駆動車両により搬送し、空荷のコンテナを載せた搬送用荷台を1台の駆動車両により搬送してもよい。
○ 上記の実施形態では、搬送用荷台が油圧回路装置の駆動を目的とする動力源を備えないとしたが、油圧回路装置の駆動のため以外の動力源を備えてもよく、例えば、照明用のバッテリやセンサ類の作動用の電源を設けることは妨げない。
○ 上記の実施形態では、搬送システムとしてコンテナの搬送を例示したが、搬送システムの荷はコンテナに限定されない。荷はコンテナ以外であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
10、70 搬送システム
11 搬送用荷台
12 駆動車両
13 荷台本体
14 脚部
20 被操作部
21 第1プランジャ
22 第2プランジャ
23 油圧シリンダ
24 圧縮ばね
25 シリンダ本体部
26 ピストン
27 ロッド部
28 第1油室
29 第2油室
30 油圧回路装置
31 アキュムレータ
32 第1切換弁
33 第2切換弁
34 第3切換弁
35 第4切換弁
36 第5切換弁
38 タンク
45 運行管理システム
55、60 切換装置
57 第1ソレノイド
58 第2ソレノイド
K1、K2、K3、K4、K5 油路
A1、A2 単動ロッド
T1、T2、T3、F1、F2、F3 復動ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15