(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行車体(1)の操舵装置(4)により操舵される転舵輪(11)と、前記走行車体(1)の後部に昇降自在に連結される作業部(2)と、位置情報を取得する位置情報取得装置(5)と、前記転舵輪(11)の舵角を検出し、検出した舵角と前記位置情報取得装置(5)が取得した位置情報とに基づき前記操舵装置(4)を駆動して前記走行車体(1)の自動走行を制御する制御部(3)を備えた作業車両において、
圃場へ植付けるための苗(N)が多列に配列された複数の苗マット(M)を載置状態で収容するタンク部(15)と、前記作業部(2)である苗植付部の苗載台(20)に前記苗マット(M)を送給することができる資材搬送機構(14)を設け、
前記資材搬送機構(14)に前記タンク部(15)を設け、
前記タンク部(15)に立設された前・後支柱(630,630)間に架設されたレール部(620)を備え、前記タンク部(15)内に配設された前記苗マット(M)に薬剤(Q)を散布することができる散布機(610)を設け、
前記レール部(620)により、前記散布機(610)を前後移動でき、
前記走行車体(1)の前方及び旋回方向にある障害物を検出する障害物センサ(901)を複数設け、前記転舵輪(11)の舵角が旋回走行となる角度以上になると、機体前方の障害物を検出する感度を下げ、旋回方向の障害物を検出する感度を上げ、前記散布機(610)を機体前方に移動させることを特徴とする作業車両。
前記転舵輪(11)の舵角が、直進走行となる角度になると、前記障害物センサ(901)の旋回方向の障害物を検出する感度を下げ、機体前方の障害物を検出する感度を上げることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
前記障害物センサ(901)の検知手段を複数設け、障害物の距離に応じて検知手段を変更すると共に、前記障害物センサ(901)が検知する範囲を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態に係る作業車両を、無人で自動走行しながら田植作業を行うことのできる苗移植機として図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形したり、各実施形態を組み合わせて実施することができる。また、以下では苗移植機の走行車体、あるいは走行車体と作業部とを含む苗移植機の全体を指して機体と呼ぶ場合がある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る作業車両の作業状態の概要を示す説明図、すなわち、苗移植機の自動田植え作業の概要を示す説明図、
図2は、苗移植機のコントローラを中心とした機能ブロック図、
図3は、苗移植機の一部切欠側面図である。
【0017】
図1に示すように、苗移植機10は、所定の圃場100において、予めティーチングされた作業経路Lに沿って無人で自動走行しながら苗Nの植付作業を行うことができる。
【0018】
苗移植機10は、駆動輪である前輪11および後輪12を備える走行車体1の後部に、作業部2である苗植付部を昇降自在に連結して構成される。前輪11は転舵輪として機能し、
図2に示すステアリング機構41に連動連結している。
【0019】
走行車体1は、
図3に示すように、車体フレーム16上に搭載された,共に図示を省略した原動機およびミッションケース等を含む動力伝達装置を備える。動力源としてはディーゼル機関やガソリン機関等の内燃機関でも良いし、電気モータであっても構わない。発生した動力は、走行車体1を前進や後進させるために用いるのみでなく、作業部2の各装置を駆動させるためにも使用される。
【0020】
動力伝達装置を構成するミッションケースから、前輪11および後輪12に伝達される動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース17を介して前輪11に伝達可能であり、残りが左右の後輪ギヤケース18を介して後輪12に伝達可能となっている。左右それぞれの前輪11は、車軸17aを介して左右の前輪ファイナルケース17に連結され、左右それぞれの後輪5は、車軸18aを介して後輪ギヤケース22に連結される。
【0021】
苗移植機10の自動走行は、走行車体1に搭載された制御部であるコントローラ3(
図2参照)が、自動操舵装置4に対して操舵制御を行うことによってなされる。すなわち、上空を周回している航法衛星300から受信した電波によって自身の位置情報を取得し、取得した位置情報と、舵角検出装置42により取得した前輪11の舵角とに基づき、コントローラ3は、苗移植機10を自動走行させることができる。
【0022】
苗移植機10の位置情報は、走行車体2に設けられた受信アンテナ51により取得される。なお、
図2に示すように、受信アンテナ51は、GNSS(Global Navigation Satellite System)制御装置あるいはGPS(Global Positioning System)制御装置などの位置情報取得装置5の一部を構成する。
【0023】
ところで、苗移植機10は、自動運転のみならず、オペレータによる遠隔操作で走行させることもできる。例えば、格納庫などから圃場100に至るまでは、自動走行させてもよいし、オペレータが遠隔操作して農道200を走行させてもよい。
【0024】
苗移植機10が備える制御部としてのコントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらには入出力部を備える。これらは互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能であり、記憶部には苗移植機10を制御するためのコンピュータプログラムが格納される。
【0025】
かかるコントローラ3には、
図2に示すように、苗移植機10の走行をはじめとする駆動系を制御する駆動制御装置6や、後述する苗タンク13に設けられた資材搬送機構14を駆動する資材搬送モータ7や、その他の各種アクチュエータ400が接続される。
【0026】
なお、各種アクチュエータ400としては、例えば、エンジンの吸気量を調節するスロットルモータ、油圧式無段変速装置のトラニオンの回動角度を変化させるトラニオン駆動モータ、植付クラッチを作動させる植付クラッチモータなどがある。
【0027】
また、コントローラ3には、例えば、苗移植機10が備える苗Nの残量を検出する苗センサ8や圃場100の植付状況を撮像する監視カメラ9が接続される。監視カメラ9が撮像した画像データを、例えば作業責任者が視認することで、欠株の存在あるいは植付作業状況を判断することができる。また、監視カメラ9は、使用目的に応じて配設位置を適宜設定することができる。さらに、例えば、機体の向きを検出する方位センサ、機体の姿勢を検出する姿勢センサなどをはじめとする様々な情報を取得する各種センサ500が接続される。
【0028】
なお、
図2では省略したが、オペレータが携行する遠隔装置とコントローラ3とは、所定の無線通信規格により無線接続するこことが可能である。遠隔装置は、携帯電話やタブレット端末装置を利用することもできる。
【0029】
また、上述してきたように、苗移植機10は、コントローラ3により制御される自動操舵装置4と、位置情報取得装置である位置情報取得装置5とを備えている。
【0030】
自動操舵装置4は、コントローラ3により駆動を制御されるステアリングモータを含むステアリング機構41を備え、コントローラ3による苗移植機10の自動操舵を可能にしている。コントローラ3は、例えば、図示しない起動スイッチがONになると、後述する位置情報取得装置5が取得した位置情報に基づき、自動操舵装置4を介して走行車体2の自動運転を開始する。
【0031】
位置情報取得装置5は、GNSSやGPSで使用される航法衛星300からの信号を受信する受信アンテナ51を有し、地球上における苗移植機10の位置情報(座標情報)を取得し、取得した位置情報をコントローラ3に伝達する。
【0032】
かかる位置情報取得装置5で取得した機体の位置データから、コントローラ3は、苗移植機10の実速度を導出することもできる。すなわち、一定時間内における機体の移動量から実走行速度を逐次算出することができる。したがって、コントローラ3は、苗Nの植付作業に最適な速度を維持しながら自動走行することができる。また、例えば前輪11や後輪12がスリップなどした場合でも、後輪12の回転量と関係なく、苗移植機10の実車速を取得することができる。
【0033】
こうして、苗移植機10は、コントローラ3により、舵角検出装置42が検出した前輪11の舵角と、取得した位置情報とに基づいてステアリング機構41を制御しながら、予め定められた作業経路Lにそって自動走行しつつ、苗Nの植付作業、さらには後述する施肥作業や薬剤散布作業などを自動的に実行することができる。
【0034】
本実施形態に係る苗移植機10は、上述してきたように、無人で自動走行、苗移植作業を行うことができるロボット化された苗移植機である。そのため、走行車体1には、操縦席などが廃止され、それに代わり、走行車体1の前端部から後端部に亘る機体の上部全体に亘って資材貯留部が設けられている。
【0035】
ここで、主に苗移植機10の資材貯留部について、図面に基づき具体的に説明する。
図3は、苗移植機10の一部切欠側面図、
図4は、苗移植機10の斜視図、
図5は、同上の苗移植機10の作業部および資材貯留部の動作説明図である。なお、
図4において、作業部2については、細部は省略し、外郭だけを想像線で示した。
【0036】
図示するように、本実施形態に係る資材貯留部は、例えば下面開放のシェル構造を有するタンク部15と、このタンク部15の内側空間に設けられた資材搬送機構14とを備える苗タンク13により構成される。タンク部15は、車体フレーム16上に、走行車体1の上半部を全て占めるように設けられる。
【0037】
かかるタンク部15は、基台部15aと、この基台部15a上に形成されたドーム部15bとを有し、かかる基台部15aとドーム15bとにより中空状に形成される。基台部15aは、前述したコントローラ3が設けられるとともに、機体前部(機体の前進方向側)に資材投入口131が形成される。
【0038】
他方、ドーム部15bは、側面視において、基台部15aの前部よりやや後方位置から斜めに立ち上がって後方へ水平に延延しており、後端部に、作業部2に対峙するように資材排出口132が形成される。すなわち、タンク部15において、相対的に下部に位置する資材投入口131から、相対的に上部に位置する資材排出口132にかけて、凹状から凸状へなだらかに連続する湾曲した波型に資材搬送機構14が配設される。
【0039】
このように、タンク部15の内部に設けられた資材搬送機構14は、圃場100へ植付けるための苗Nが多列に配列された複数の苗マットMを載置状態で収容するとともに、これらの苗マットMを、作業部2である苗植付部の苗載台20へ、順次、送給することができる。
【0040】
したがって、苗マットMを、機体外部から容易に投入することができるとともに、苗マットMを作業部2へ搬送する資材搬送機構14によって、これまでのように、作業者が走行車体1に乗車して苗マットMを作業部2の苗載台20へセットする作業が不要となり、作業効率が向上する。
【0041】
なお、資材搬送機構14は、苗移植機10の対応条数に応じた複数列分を配設するとよい。例えば、苗移植機10が6条植えであって、作業機2が備える苗載台20に6列の苗マットMを載置することができるのであれば、資材搬送機構14もタンク部15内に6列配設する。
【0042】
また、ドーム部15bの前側部のテーパ部と水平部との境界部分に、円盤状の取付座15cを形成し、かかる取付座15cに位置情報取得装置5の受信アンテナ51を配設している。このように、機体の略中心位置に受信アンテナ51を安定した状態で配設しているため、精度の高い位置情報を安定的に取得することができる。
【0043】
また、資材搬送機構14は、苗マットMの搬送に適した構成を具備する上段搬送機構141と下段搬送機構142とを備える。これらは、所定間隔をあけて上下に配設されており、それぞれは、例えばモータ駆動のローラコンベアやベルトコンベアなどのように、複数の苗マットMを載置した状態で容易に搬送することが可能である。このように、ローラを用いて搬送することで、苗マットMの端部などがまくれたりすることなく、安定した状態で搬送することができる。
【0044】
また、例えば資材搬送機構14がベルトコンベアの場合、資材投入口131から資材排出口132までの間に複数のベルトコンベアを配置して、奥側すなわち資材排出口132側よりも手前側すなわち資材投入口131側の搬送速度を速くすることができる。かかる構成により、搬送される複数の苗マットM間に無用な隙間が生じることを防止することができる。
【0045】
こうして、タンク部15の前側に開口する資材投入口131からマット苗Mを投入すると、上段搬送機構141に載置されたマット苗Mは上段搬送機構141によって、下段搬送機構142に載置されたマット苗Mは下段搬送機構142によって、それぞれ順次奥側へ送られ、タンク部15の後部側に開口する資材排出口132に臨む位置で停止する。
【0046】
なお、苗移植機1による作業開始時または苗補充時(タンク部15および苗載台20に苗マットMが無い場合)には、以下の態様で作業者が苗Nを充填する。すなわち、タンク部15内と作業部(苗植付部)2の苗載台20とに、それぞれ別個にマット苗Mを装填するか、あるいは、作業部2をわずかに上昇させて苗載台20の上端部とタンク部15の資材排出口132とを突き合わせた状態にして、下段搬送機構142に投入した苗マットMを順次送り込む。なお、苗タンク15内の苗マットMの残量が少なくなると、苗移植機1は、自動的に畔際へ移動して停止するように制御されている。
【0047】
このように、資材搬送機構14を複数段(ここでは2段)としたことで、苗マットMをより多く貯留することができ、作業中に苗マットMを補充する頻度がより低減する。
【0048】
なお、本実施形態に係る苗タンク13のタンク部15と資材搬送機構14とは、それぞれ独立して車体フレーム16に対して図示しない支持装置を介して昇降自在に支持されている。すなわち、
図5に示すように、苗タンク13は機体に対して昇降可能に構成されている(矢印A1参照)。
【0049】
したがって、タンク部15のみを上昇させれば、資材搬送機構14のメンテナンスを容易に行うことができ、少なくとも資材搬送機構14を昇降させれば、上段搬送機構141または下段搬送機構142のいずれかを、苗載台20の上端部に対峙するように調整することができる。また、タンク部15をより降下させるように構成すれば、例えば、位置情報取得装置5の受信アンテナ51のメンテナンス性も向上する。
【0050】
なお、苗タンク13と車体フレーム16との間には、サスペンション機構を介設することができる。あるいは、資材搬送機構14を、剛体ではなく屈曲性のある材料で構成することで、走行車体1から苗タンク13へ伝わる振動を軽減し、苗移植機10としての耐久性を高めることができる。
【0051】
ところで、本実施形態に係る苗移植機10の作業部2は、周知の苗植付部の構成をそのまま利用している。すなわち、
図5に示すように、作業部2は、苗載台20の下部側に、苗載台20から苗Nを取り出して圃場100に移植する一対の植付爪22を備える苗植付装置21を備えるとともに、圃場100を均すフロート23やロータ24を備えている。また、作業部2は、リンク機構を備える昇降装置25によって走行車体1の車体フレーム16に対して回動自在(矢印A3参照)に連結される。
【0052】
また、作業部2の苗載台20には、苗センサ8(
図2参照)が設けられている。コントローラ3は、苗センサ8からの検出信号に基づいて、苗載台20を上昇させるとともに、苗タンク13の資材搬送機構14を駆動して、規定量以下になった苗Nを苗載台20へ送って自動的に補充する。また、本実施形態では、苗タンク15内にも苗センサ8を設けており、苗タンク15内の苗マットMの残量を検出し、残量が規定以下になると、コントローラ3が苗移植機1を畔際へ自動的に移動させるように制御する。
【0053】
したがって、より多くの苗Nを積みながら、なおかつ苗Nを自動で補充することができるため、作業距離が長い圃場100であっても十分に対応することができる。
【0054】
資材貯留部である苗タンク13には、苗マットMを苗植付部の苗載台20へ送給する資材搬送機構14の下方に、肥料Fを貯留する肥料貯留部150が設けられている。すなわち、肥料貯留部150は、
図4に示すように、引き出し状の箱体であり、タンク部15に形成された資材投入口131から出し入れ自在に配設されている(矢印A2参照)。
【0055】
図3および
図4では省略したが、肥料貯留部150の底部には、肥料Fをタンク部15の後方へ移送可能な機構が設けられるとともに、タンク部15の後端に形成された資材排出口132の近傍には、コントローラ3により制御可能な肥料散布機が設けられる。
【0056】
かかる構成により、苗移植機10は、十分な量の肥料Fを容易にタンク部15内へ投入して貯留することができるとともに、苗Nの植付作業中に、圃場100への肥料供給、あるいは苗マットMに保持されている苗Nに対して直接的に肥料散布が行える。
【0057】
上述してきたように、本実施形態に係る苗移植機10によれば、従来設けられていた操縦座席などを廃止することにより、走行車体1の全面に亘って苗Nや肥料Fなどの作業資材を貯留することができるため、自動走行させながら苗Nの植付作業を行わせる際に、苗Nなどの作業資材の補充頻度を著しく低減することができる。
【0058】
以下、苗移植機10の他の実施形態にについて、それぞれ図面に基づき説明する。
図6は、第2の実施形態に係る苗移植機10の資材貯留部の動作説明図、
図7Aは、第3の実施形態に係る苗移植機10が備える薬剤散布装置の説明図、
図7Bは、同上の薬剤散布装置の変形例を示す説明図、
図8は、第4の実施形態に係る苗移植機10の側面視による説明図である。また、
図9Aは、第5の実施形態に係る苗移植機10の説明図、
図9Bは、同苗移植機10が備える欠株防止装置の説明図、
図10は、第6の実施形態に係る苗移植機10の側面視による説明図である。
【0059】
(第2の実施形態)
図6に示すように、苗タンク13の前部において、苗タンク13と車体フレーム16との間に油圧シリンダなどの昇降装置151を介設し、苗タンク13の後部に設けた支軸152を中心に揺動自在にして、苗タンク13を内部に設けられた資材搬送機構14ごと前上がり状態に変位させることができる。かかる構成とすることで、作業部2の苗載台20に対して苗マットMを円滑に供給することが可能となる。
【0060】
また、このときに苗タンク13のタンク部15内に設けられる資材搬送機構14がベルトコンベアの場合、資材搬送機構14が前上がり状態に傾斜したときに、載置されている苗マットMの端部がめくれるのを防止するために、例えば、ベルトを反転させて巻き上げるような制御を行うこともできる。
【0061】
なお、苗タンク13を前上がり状態に昇降可能にした構成に加え、苗タンク13のタンク部15のみを、支軸152を中心に略反転するまで回動可能な構成にすることもできる。この場合、例えば支軸152を二重筒構造にして、タンク部15に連結した一方の軸をモータなどで回転可能に構成することができる。
【0062】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る苗移植機10は、
図7Aに示すように、苗タンク13上に薬剤散布機600を配設することができる。
【0063】
薬剤散布機600は、薬剤Qを収納するとともに、収納した薬剤Qを圧送する送給装置(不図示)を備えた散布機本体610と、散布機本体610の底部に垂設された複数(ここでは6つ)のノズル616とを備える。すなわち、薬剤散布機600は、苗タンク13の幅と略同幅で、タンク部15内に配設された6列の資材搬送機構14と同様に、6条分の苗マットMに薬剤Qを散布することができる。
【0064】
また、薬剤散布機600は、苗タンク13のタンク部15に立設された前・後支柱630,630間に架設されたレール部620を備え、このレール部620により、散布機本体610の周面に設けられた転動輪615を挟持しつつ転動させて、散布機本体610を前後移動させるようにしている(矢印A6参照)。
【0065】
とことで、前・後の支柱630をタンク部15の内部を貫通して設ける場合、資材搬送機構14により形成される苗搬送経路を邪魔しないように適宜構成するとよい。例えば、タンク部15には、複数の資材搬送機構14を配列するための搬送機構設置面が形成されるが、隣接する搬送機構設置面間に法面状に形成された区画面に支柱630を立設するとよい。また、前・後の支柱630をパイプ状に形成し、これを利用して、前述の資材排出口132の近傍に設けた図示しない肥料散布機に肥料Fを供給することもできる。また、前・後の支柱630の中途に貫通孔を設け、かかる貫通孔に、肥料Fを送給する肥料パイプを挿通する構成とすることもできる。
【0066】
なお、転動輪615は、コントローラ3により駆動されるモータ(不図示)によって回転可能な構成としている。
【0067】
かかる構成により、薬剤Qを苗マットMに散布する薬剤散布作業を行う場合は、散布機本体610は苗タンク13の前側に設定された作業位置P1にとどまって薬剤散布を行う。タンク部15には、作業位置P1に対応する個所に開口部15dが形成されており、かかる開口部15dから薬剤Qが苗マットMに散布される。
【0068】
ノズル616から散布される薬剤Qは、開口部15dからタンク部15内に直接噴出されるため、風などで横方向へ飛ばされたりすることがなく、確実に苗Nへ散布することができる。
【0069】
他方、薬剤を散布機本体610に充填する場合、機体前方位置に設定された薬剤投入位置P2まで散布機本体610を移動させる。このように、薬剤補充の際には、散布機本体610が機体前側へ移動するため、薬剤補給作業が容易となる。
【0070】
なお、薬剤を散布して散布機本体610内の薬剤が少なくなるにつれてコントローラ3は散布機本体610を機体後方から機体前方へと移動させる。このように散布機本体610の位置を制御することで、苗移植機10としての重量バランスを保つことができ、苗移植機10としての走行性能を良好に保つことができる。
【0071】
また、コントローラ3は、機体の旋回中には、散布機本体610を機体前方に移動させる。すなわち、作業部2が上昇及び旋回すると、散布機本体610は前方へ移動する。これは、苗タンク13が上昇して前後バランスが乱れるためである。このように、散布機本体610が機体前方に移動することで、前輪11に重さが加わり、駆動力が高まって旋回性を向上させることができる。
【0072】
また、薬剤散布作業を行っていないときは、コントローラ3は、機体の前後の傾きに合わせて、散布機本体610を移動させて適宜バランスを取ることもできる。
【0073】
次に、薬剤散布装置600の変形例について説明する。
図7Bに示すように、変形例に係る薬剤散布機600は、
図7Aに示す構成と基本的には同様であるが、散布機本体610から伸延し、圧送される薬剤を案内するホース部640と、ホース部640の先端に設けられたノズル部650とを備えている。
【0074】
ホース部640は、例えば蛇腹などで伸縮自在に構成されており、ここでは、ノズル部650を作業部2の苗載台20に保持される苗マットMに向けている。
【0075】
かかる構成により、薬剤を散布機本体610に充填する場合、都合のよい場所まで散布機本体610を移動させればよく、薬剤補給作業が容易となる。
【0076】
また、例えばレール部620を、作業部2の苗載台20に沿うように湾曲状に延長し、散布機本体610を作業部2まで移動可能に構成することも考えられる。かかる構成とすることで、散布機本体610への薬剤補充作業などを低い位置で行うことができ、作業性が向上する。
【0077】
また、この変形例においても、散布機本体610内の薬剤が少なくなるにつれて、コントローラ3は散布機本体610を機体後方から機体前方へと移動させ、苗移植機10としての重量バランスを保ち、苗移植機10としての走行性能を良好に維持する。
【0078】
ところで、作業部2の苗載台20に向くように設けたノズル部650は、苗載台20の上部における湾曲度合の大きな部位に臨設することが好ましい。このように、湾曲度合の大きな部位に位置した苗マットMは、苗マットM自体も湾曲して苗Nの葉と苗Nの葉との間が大きく拡開するため、薬剤を根部分に至るまでしっかりと散布することができる。
【0079】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る苗移植機10は、
図8に示すように、機体前方に伸縮自在の作業フレーム700を備えている(矢印A8参照)。作業フレーム700は、メインフレーム710と、このメインフレーム710の先端部に傾動自在(矢印A7参照)に取り付けられたサブフレーム720とを備え、図示するように、機体側から引き出し、サブフレーム720を手前側に傾動させると、搭乗用のステップが形成される(
図8中の二点鎖線参照)。
【0080】
したがって、無人運転で作業を行う苗移植機10ではあるが、作業フレーム700を利用することにより、作業者が必要に応じて走行車体1に搭乗し、所定の作業を行うこともできる。
【0081】
他方、作業フレーム700の不使用時は、
図8の実線で示すように、走行車体1側に収納され、サブフレーム720を起立方向に傾動させて(矢印A7参照)その姿勢を保持すれば、バンパーとして機能するとともに、タンク部15の前部に形成された資材投入口131を閉塞することで、苗Nや肥料Fなどを保護し、これらの落下を防止することができる。また、サブフレーム720の形状などを工夫することで、苗移植機10の意匠性も向上させることができる。
【0082】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る苗移植機10は、
図9Aに示すように、作業部2における苗載台20の下部に、欠株防止装置800を備えている。
図9Aおよび
図9Bに示すように、欠株防止装置800は、苗載台20の左右側面に連結したステー850,850間に架設したレール部材840と、このレール部材840上を機体左右方向へ摺動自在に配設した予備苗収容箱体820と、この予備苗収容箱体820の前端側に排泄した植付補助装置830とを備える。予備苗収容箱体820には予備の苗Nが収容され、植付補助装置830は、作業部2の苗植付装置21が備える植付爪22と同様の爪体を備える。
【0083】
本実施形態に係る苗移植機10では、機体の左右方向に延在するレール部材840の中央下部にカメラ810を設けている。苗Nの植付作業中は、かかるカメラ810によって圃場100の植付状況が撮像される。そして、撮像された画像データがコントローラ3(
図2参照)へ送信され、コントローラ3は欠株の有無を判断する。そして、欠株が有ると判断すると、その位置を識別し、植付補助装置830を駆動させて欠株箇所に補助の苗Nを植え付ける。
【0084】
このように、本実施形態に係る苗移植機10では、欠株の有無まで苗移植機10自体が判定し、判定結果に基づいて補助の苗Nを欠株箇所に植えることで、欠株状態を解消することを自動的に行うことができる。
【0085】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る苗移植機10は、
図10に示すように、資材貯留部である苗タンク15と、作業部2の苗載台20とを、苗Nすなわち苗マットMが搬送されるレール体143を共有させて一体構成している。そして、苗タンク15と苗載台20とを一体的に昇降させる昇降装置900を備えている。
【0086】
昇降装置900は、1つのレール体143を共有する作業部2と走行車体1との間を、連結フレーム910で連結し、この連結フレーム910と、車体フレーム16に設けた複数の油圧シリンダ920とを連結して構成される。
【0087】
こうして、昇降装置900により、必要に応じて、たとえば、苗植え作業を行っている際に、旋回する場合などを含め、機体のメンテナンスが必要な場合に苗タンク15と苗載台20とを一体的に昇降させることができる(矢印A9参照)。
【0088】
苗移植機10は、上述してきた実施形態のみに限定されるのではなく、例えば、タンク部15内に複数列設けられる資材搬送機構14について、載置している苗マットMを、機体幅方向にスライドさせるなど、受け渡し可能に構成することができる。かかる構成により、苗載台20やタンク部15内において、苗マットMの足りなくなった列へ、多い列から補充することが可能となる。
【0089】
障害物センサ901について説明する。(
図4参照)障害物センサ901は、資材投入口131の両側部とタンク部15の前側と後側にそれぞれ設け、機体の周囲にある障害物を認識することができる。
【0090】
この障害物センサ901は、複数の検知手段を備えている。例えば、カメラ、超音波、赤外線レーザ、ミリ波レーダ等を用いている。複数の検知手段を備えていることで、検知手段を使い分けると共に、複合して検知精度を上げることができる。
【0091】
また、障害物と走行車体1の距離に応じて検知手段を使い分けることができる。例えば、遠距離ではミリ波レーダ、中距離ではカメラ、近距離では赤外線レーザを使用することで、より検知精度が向上し、障害物との接触を回避することができる。
【0092】
さらに、障害物の検知の範囲を段階的に設定することでより精度が向上する。例えば、感度1段階目では、検出範囲を「広」検出精度を「低」にする。感度2段階目では、検出範囲を「中」検出精度を「中」にする。感度3段階目では、検出範囲「狭」検出精度を「高」することで、目的に応じて障害物検知の範囲と精度を使い分ける。よって、適切な障害物の検知が可能となる。また、障害物による警報や警告する精度も向上させることが可能である。
【0093】
また、走行中に操舵装置4の作動頻度が少ないと昇降装置25により苗植付部2を所定位置まで上昇させて、苗の植付深さを浅くする。反対に、操舵装置4の作動頻度が多いとと昇降装置25により苗植付部2を所定位置まで下降させて、苗の植付深さを深くすることで、走行車体1の走行安定性が向上し、障害物センサ901の検知精度が向上することで、障害物との距離をより精度良く認識することができる。
【0094】
また、走行車体1をエンジン(図示省略)から供給される駆動力で走行する場合、すなわちエンジンで発生した回転をミッションケース(図示省略)に出力する油圧式の無段変速装置(図示省略)とが設けられる。この無段変速装置はいわゆるHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。
【0095】
このHSTは、経時変化によりHSTの摺動抵抗が大きくなった場合、圃場内で停止しようとするとHST作動(機体前後進)及び停止(機体停止)させるトラニオンの中立近傍(機体停止)でHSTの圧抜き制御(トラニオンを後進側へ3bit→前進側へ3bitと繰り返す制御を行ってHSTの内圧を抜く操作)を行っても内部圧が抜けずに停止しない場合がある。この問題は、トラニオンを動かすリンク部のガタによるものであり機械的なガタが発生してためである。解決手段として、機体が前進し停止した際に、HSTの前進圧が残っている場合、トラニオンを初回の後進側への振り幅を例えば3bit→5bit等に広げることで、リンク部のガタを考慮して確実にHSTの内部圧を抜くことができる。
【0096】
よって部品の変更によるコストを発生させずにプログラムのみで対応が可能である。
【0097】
また、整地装置(図示省略)が圃場面との接地を検出している圃場走行中の場合のみ上記の圧抜き制御を行う構成とする方が良い。路上走行では走行輪11,12に掛かる負荷が小さいため、後進側に振りすぎると車体が実際に後進してしまう。路上走行では圧抜き制御で後進側に大きく振ってしまうのを防ぎつつ圃場内では後進側に大きく振って確実に圧を抜いて停車する。