(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転体は、前記ピストンが前記ピストンの上死点に位置する前記圧縮室に連通する前記第1連通路と前記蓄圧室とに連通する導圧通路を有する請求項1乃至5のいずれか1項記載のピストン式圧縮機。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に従来のピストン式圧縮機が開示されている。これらの圧縮機は、ハウジングと、駆動軸と、固定斜板と、複数のピストンと、吐出弁と、制御弁とを備えている。
【0003】
ハウジングは、複数のシリンダボアと、シリンダボアに連通する第1連通路とが形成されたシリンダブロックを有している。また、ハウジングには、吐出室と、斜板室と、制御圧室と、軸孔とが形成されている。斜板室が吸入室を兼ねていたり、ハウジングに形成された吸入室と連通する軸内通路が駆動軸に形成されたりする場合もある。
【0004】
駆動軸は、軸孔内で回転可能に支承されている。固定斜板は、駆動軸の回転によって斜板室内で回転可能であり、駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である。ピストンは、シリンダボア内に圧縮室を形成し、固定斜板に連結される。圧縮室と吐出室との間には、圧縮室内の冷媒を吐出室に吐出させるリード弁式の吐出弁が設けられている。
【0005】
また、これらの圧縮機では、軸孔内で駆動軸と一体又は別体の回転体が設けられている。回転体は、駆動軸と一体回転し、制御弁で制御された制御圧力と吸入圧力との差圧により、駆動軸の駆動軸心方向に移動可能である。回転体には、駆動軸の回転に伴い、間欠的に第1連通路と連通する第2連通路が形成されている。第2連通路は、回転体の駆動軸心方向の位置によって第1連通路との駆動軸心周りの連通角度が変化するように形成されている。
【0006】
これらの回転体は、回転体の駆動軸心方向の位置により、第1連通路と第2連通路とが連通する。このため、斜板室又は吸入室内の冷媒が第2連通路及び第1連通路を経て圧縮室に吸入される。この際、第2連通路と第1連通路との駆動軸心周りの連通角度が変化するため、圧縮室内に吸入される冷媒の流量が変化し、圧縮室から吐出室へ吐出する冷媒の流量が変化する。こうして、これらの圧縮機では、斜板の傾斜角度を変更させて容量を変更する圧縮機と比べ、構造の簡素化を実現しようとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の圧縮機では、回転体の外周面に圧縮行程中の圧縮室と連通する第1連通路から圧縮荷重が作用する。このため、回転体が軸孔内で駆動軸心方向と直交する方向に押圧され、回転体が駆動軸心方向に移動し難い。このため、制御弁による制御圧力の変更に対し、回転体の応答性が悪く、圧縮室から吐出室へ吐出する冷媒の流量を迅速に縮小し難い。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、圧縮室から吐出室へ吐出する冷媒の流量を迅速に縮小可能なピストン式圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のピストン式圧縮機は、複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックを有し、吐出室と、斜板室と、制御圧室と、軸孔とが形成されたハウジングと、
前記軸孔内に回転可能に支承された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能であり、前記駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である固定斜板と、
前記シリンダボア内に圧縮室を形成し、前記固定斜板に連結されるピストンと、
前記圧縮室内に吸入された冷媒を前記吐出室に吐出させる吐出弁と、
前記制御圧室の制御圧力を制御可能な制御弁と、
前記シリンダブロックに設けられ、前記シリンダボアに連通する第1連通路と、
前記駆動軸に設けられるとともに、前記駆動軸と一体回転し、前記制御圧力に基づいて前記駆動軸の駆動軸心方向に移動可能であり、前記駆動軸の回転に伴い、間欠的に前記第1連通路と連通する第2連通路が形成された回転体とを備え、
前記回転体の前記駆動軸心方向の位置により、前記回転体の1回転当たりで前記第1連通路と前記第2連通路とが連通する前記駆動軸心周りの連通角度が変化し、前記圧縮室から吐出される冷媒の流量が変化するピストン式圧縮機であって、
前記回転体を前記制御圧室側に付勢する付勢部材をさらに備え、
前記回転体と前記駆動軸との間には、内部の圧力が前記制御圧力よりも高ければ、前記回転体を前記制御圧室側に付勢する蓄圧室が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の圧縮機では、付勢部材は、冷媒の流量が減少する方向に回転体を駆動軸心方向に付勢する。また、駆動軸と回転体との間に設けられた蓄圧室は、内部の蓄積圧力が制御圧力より高ければ、冷媒の流量が減少する方向に回転体を駆動軸心方向に付勢する。
【0012】
このため、この圧縮機では、回転体が軸孔内で駆動軸心方向と直交する方向に押圧されていても、回転体は、上記付勢部材及び蓄圧室と制御圧室との圧力差分の付勢力に基づくアシストにより、冷媒の流量が減少する方向に迅速に駆動軸心方向に移動できる。こうして、制御弁による制御圧力の変更に対し、流量が減少する方向への回転体の応答性が向上し、圧縮室から吐出室へ吐出する冷媒の流量を迅速に縮小できる。
【0013】
したがって、本発明の圧縮機では、圧縮室から吐出室へ吐出する冷媒の流量を迅速に縮小可能である。
【0014】
駆動軸は、小径部と、小径部と一体をなし、小径部より大径の大径部とを有し得る。回転体は、小径部を挿通させる内フランジと、内フランジの径方向外側から駆動軸心方向に延び、大径部の一部を収容する筒部とを有し得る。蓄圧室は、内フランジと筒部と小径部と大径部とから形成され得る。そして、回転体が小径部側に最も移動した際に、筒部の内フランジとは反対側の端部が大径部の径方向外側に位置していることが好ましい。この場合、蓄圧室を圧縮機内に形成し易く、圧縮機の小型化を実現できる。
【0015】
制御圧室と蓄圧室とは絞り通路を介して連通していることが好ましい。この場合、制御圧室と蓄圧室との間にシール部材を設ける必要がなく、部品点数の削減を実現することができる。
【0016】
制御圧室と蓄圧室とが絞り通路を介して連通している場合、小径部と内フランジとによって絞り通路が形成され得る。この場合、絞り通路を圧縮機内に形成し易く、圧縮機の小型化を実現できる。
【0017】
蓄圧室内には、小径部に挿通される座金と、座金を制御圧室側に付勢する第2付勢部材とが設けられ得る。そして、絞り通路は、内フランジと小径部とで形成された第1通路と、座金と小径部とで形成され、第1通路より小径の第2通路とを有し得る。この場合、座金の選択によって第2通路の流路面積を小さくし、蓄圧室内の蓄積圧力が長期間に亘って回転体に作用するようにすることができる。
【0018】
回転体は、ピストンがピストンの上死点に位置する圧縮室に連通する第1連通路と蓄圧室とに連通する導圧通路を有し得る。この場合、圧縮室内に残留する高圧の冷媒を蓄圧室内に供給できるため、残留する高圧の冷媒の有効活用を行なうことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の圧縮機では、圧縮室から吐出室へ吐出する冷媒の流量を迅速に縮小可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(実施例1)
実施例1のピストン式圧縮機は、
図1及び
図2に示すように、ハウジング1と、駆動軸3と、固定斜板5と、6個のピストン7(
図3及び
図4参照)と、吐出弁11と、制御弁13と、回転体15とを備えている。
【0023】
ハウジング1は、フロントハウジング17、シリンダブロック19及びリヤハウジング21を有している。以下、フロントハウジング17側を圧縮機の前方とし、リヤハウジング21側を圧縮機の後方とするとともに、
図1及び
図2のように圧縮機の上下を規定する。
【0024】
フロントハウジング17とシリンダブロック19とは互いに締結され、両者間に斜板室23を形成している。リヤハウジング21には、中央に吸入室21aが形成され、吸入室21aの外周側に環状の吐出室21bが形成されている。斜板室23は図示しない通路によって吸入室21aに連通している。リヤハウジング21には、吸入室21aを外部に開く吸入口21cと、吐出室21bを外部に開く吐出口21dとが形成されている。
【0025】
シリンダブロック19とリヤハウジング21とは、両者間に弁ユニット25を有して互いに締結されている。シリンダブロック19には、前後に貫通する6個のシリンダボア19a〜19f(
図3及び
図4参照)が形成されている。シリンダブロック19は、
図1及び
図2に示すように、弁ユニット25を貫通してリヤハウジング21内まで延びている。フロントハウジング17及びシリンダブロック19には駆動軸3の駆動軸心O方向に延びる軸孔27が形成されている。軸孔27は、フロントハウジング17内に位置する小孔27aと、シリンダブロック19内で小孔27aから切り替わり、小孔27aより大径の大孔27bとからなる。大孔27bは、リヤハウジング21内で吸入室21aと連通している。シリンダブロック19は斜板室23と大孔27bとの間に支持壁19gを有している。
【0026】
シリンダブロック19には、シリンダボア19a〜19fから駆動軸心Oに向かって形成され、大孔27bと連通する第1連通路29a〜29fが形成されている。第1連通路29a〜29fは、弁ユニット25に最も近い位置から、駆動軸心Oに近づくにつれて前方に傾斜している。
【0027】
駆動軸3は軸孔27内で回転可能に支承されている。駆動軸3は、前方に位置してフロントハウジング17に支持されているとともに固定斜板5が圧入された大径部3aと、大径部3aと一体をなして大孔27b内に位置し、大径部3aより小径の小径部3bと、小径部3bと一体をなして後端まで延び、大径部3aと同径の大径部3cとからなる。つまり、小径部3bが大径部3aと大径部3cとの間に位置している。
【0028】
この駆動軸3は、大径部3aを形成する第1軸と、小径部3b及び大径部3cを形成する第2軸とを用意し、第1軸に圧入孔を形成し、圧入孔に小径部3bの一部を圧入することによって製造されている。駆動軸3は、固定斜板5が圧入されている部分を除いて外周面に図示しない摺動層を有しており、大径部3aがフロントハウジング17及びシリンダブロック19に直接支持されている。フロントハウジング17と駆動軸3との間には軸封装置31が設けられている。軸封装置31はハウジング1の内部と外部とを封止している。
【0029】
軸孔27の大孔27b内には回転体15が設けられている。回転体15は、
図5及び
図6に示すように、駆動軸3の小径部3bを挿通させる内フランジ15aと、内フランジ15aの径方向外側から駆動軸心O方向に延び、大径部3cの一部を収容する筒部15fとを有している。筒部15fは、内フランジ15aによって駆動軸心O方向の前端側が区画され、駆動軸3の大径部3cを収容し、大径部3cの外周面を駆動軸心O方向に摺動させる収容室15bを形成している。内フランジ15aの後面と、筒部15fの内周面と、小径部3bの外周面と、大径部3cの前面とによって蓄圧室33が形成されている。蓄圧室33内には、内フランジ15aの後面と、大径部3cの前面とを座面とする第1バネ43が設けられている。第1バネ43が本発明の付勢部材に相当する。
【0030】
また、小径部3bと内フランジ15aとによって絞り通路35が形成されている。絞り通路35の開口面積は、後述する制御通路13cが制御圧室37に開口する開口面積よりも十分に小さい。回転体15の外周面にも図示しない摺動層が形成されている。
【0031】
支持壁19gの後面と、大孔27bの内周面と、回転体15の前面と、大径部3aの後方の外周面と、小径部3bの外周面とによって制御圧室37が形成されている。制御圧室37内には、駆動軸3の大径部3aと小径部3bとがなす段部3dが位置する。この段部3dは、回転体15が駆動軸心O方向の前方に移動する際に位置を規制する。
【0032】
駆動軸3の大径部3cには、駆動軸心O方向に延びる外スプライン3eと、外スプライン3eより後方に位置する円筒面3fとが形成されている。回転体15の収容室15bを形成する内周面には、駆動軸心O方向に延び、外スプライン3eと噛合する内スプライン15cが形成されている。回転体15は、外スプラインeと内スプライン15cとにより、大孔27b内で駆動軸3とともに回転可能であり、駆動軸心O方向に移動可能となっている。回転体15が駆動軸心O方向に移動しても、円筒面3fは収容室15bの内周面を摺接し、蓄圧室33内の蓄積圧力Paは円筒面3d側からは漏れ難くなっている。
【0033】
回転体15の外周面には、
図3及び
図4に示すように、凹部15dが凹設されている。凹部15dは回転体15の後端に開放され、軸孔27の大孔27bによって吸入室21aと連通するようになっている。また、凹部15dは、回転体15の前方では駆動軸心O周りの幅が狭く、後方ではその幅が長くなっている。凹部15dが第2連通路に相当する。
【0034】
また、回転体15には、
図5及び
図6に示すように、導圧通路15eが形成されている。導圧通路15eの外端は回転体15の外周面に開放され、導圧通路15eの内端は蓄圧室33に開放されている。導圧通路15eは、
図3及び
図4に示すように、回転体15の駆動軸心O方向の位置にかかわらず、駆動軸3の回転に伴い、第1連通路29a〜29fのいずれかと連通するようになっている。
【0035】
図5及び
図6に示すように、駆動軸3の大径部3cの後方にはサークリップ41が嵌合されている。サークリップ41は、回転体15が駆動軸心O方向の後方に移動する際に位置を規制する。
【0036】
図1及び
図2に示すように、固定斜板5は駆動軸3の大径部3aに圧入されて固定されている。フロントハウジング17と固定斜板5との間にはスラスト軸受45が設けられている。固定斜板5は駆動軸心O方向と直交する面に対してなす傾斜角度が一定である。
【0037】
シリンダボア19a〜19f内にピストン7が設けられている。ピストン7は、シリンダボア19a〜19f内に圧縮室47を形成する。ピストン7の前部には凹部7aが形成され、凹部7aの前後面と固定斜板5との間には前後で対をなすそれぞれ半球状のシュー49が設けられている。ピストン7は、シュー49によって固定斜板5に連結されている。
【0038】
弁ユニット25は、リテーナ25a、吐出リード弁25b及び弁板25cがこの順で積層されたものである。リテーナ25aがリヤハウジング21側に位置する。弁板25cには、吐出リード弁25bが開けば、吐出室21bと圧縮室47とを連通させる吐出ポート25fが形成されている。弁ユニット25及び吐出ポート25fが吐出弁11を構成している。
【0039】
リヤハウジング21には制御弁13が設けられている。制御弁13と吸入室21aとは低圧通路13aによって接続され、制御弁13と吐出室21bとは高圧通路13bによって接続され、制御弁13と制御圧室37とは制御通路13cによって接続されている。低圧通路13a及び高圧通路13bは、リヤハウジング21に形成されており、制御通路13cはリヤハウジング21及びシリンダブロック19に形成されている。制御弁13は、吸入室21a内の吸入圧力Psを感知することで、弁開度が調整され、吐出室21b内の吐出圧力Pdによって制御圧室37内の制御圧力Pcに制御可能である。また、制御圧室37は図示しない抽気通路により制御圧室37内の制御圧力を低減可能である。制御弁13は、最高で吐出圧力Pdとなる制御圧力Pcの冷媒を制御通路13cに供給する。
【0040】
この圧縮機は車両の空調装置に用いられる。駆動軸3がエンジンやモータによって駆動されれば、固定斜板5が斜板室23内で駆動軸3によって回転する。このため、ピストン7がそれぞれピストン7の下死点からピストン7の上死点まで移動するとともに、上死点から下死点まで移動する。なお、以下では、ピストン7の上死点及びピストン7の下死点をそれぞれ上死点及び下死点と記載する。
【0041】
そして、
図1及び
図5に示すように、制御弁13が制御通路13cによって高圧の制御圧力Pcを制御圧室37に供給しておれば、回転体15は、第1バネ43の付勢力に抗し、サークリップ41と当接する後端に位置する。この状態では、
図3に示すように、例えば、ピストン7が上死点から下死点まで移動すると、圧縮室47は容積が拡大している。圧縮室47に連通する第1連通路29b、29cは回転体15の凹部15dに連通しているため、それらの圧縮室47には、軸孔27の大孔27bを介して吸入室21aから吸入圧力Psの冷媒が吸入される。
【0042】
この間、回転体15から見れば、第1連通路29a〜29fは駆動軸3及び回転体15の回転に応じて移動する。このため、回転体15の1回転当たりで第1連通路29a〜29fと凹部15dとは、駆動軸3及び回転体15の回転に伴い、間欠的に駆動軸心O周りで連通角度θ1で連通している。
【0043】
そして、ピストン7が下死点から上死点まで移動すると、圧縮室47は容積が縮小する。このため、圧縮室47内の圧力が吐出室21bより高くなれば、吐出リード弁25bが開いて吐出室21bと圧縮室47とが連通し、圧縮室47から吐出圧力Pdの冷媒が吐出室21bに吐出される。このため、この状態では、圧縮機は、駆動軸3の1回転当たりに圧縮室47から吐出室21bに吐出する冷媒の流量が最大となっている。なお、吸入室21aには吸入口21cから蒸発器を経た冷媒が供給される。また、吐出室21b内の冷媒は吐出口21dを経て凝縮器に吐出される。
【0044】
この状態から、
図2及び
図6に示すように、制御弁13が制御通路13cによって高圧の制御圧力Pcを制御圧室37に供給せず、制御圧室37内の制御圧力Pcが徐々に低くなれば、回転体15は、第1バネ43の付勢力に屈し、段部3dに当接する前端に位置する。こうして、回転体15が小径部3b側に最も移動した際、筒部15fの内フランジ15aとは反対側の端部が大径部3cの径方向外側に位置している。
【0045】
この状態では、
図4に示すように、圧縮室47は、ピストン7が上死点から下死点まで移動して容積が拡大している間だけでなく、ピストン7が下死点から一定位置まで移動して容積が縮小を始めても、第1連通路29b〜29eは回転体15の凹部15dに連通している。このため、圧縮室47は、一旦は軸孔27の大孔27を介して吸入室21aから吸入圧力Psの冷媒を吸入するものの、容積の縮小に伴ってその冷媒を圧縮室47の上流側に還流する。
【0046】
この間、回転体15の1回転当たりで第1連通路29a〜29fと凹部15dとは、駆動軸3及び回転体15の回転に伴い、回転体15の駆動軸心O方向の位置により、間欠的に駆動軸心O周りで連通角度θ2で連通している。なお、連通角度θ2は、連通角度θ1よりも連通角度が大きくなっている。
【0047】
そして、ピストン7が一定位置から上死点まで移動すると、圧縮室47は容積が縮小する。このため、圧縮室47内の圧力が吐出室21bより高くなれば、圧縮室47から吐出圧力Pdの冷媒が吐出室21bに吐出される。この際、圧縮室47内には少量の冷媒しか吸入していないため、圧縮室47からは少量の冷媒しか吐出室21bに吐出されないこととなる。このため、この状態では、圧縮機は圧縮室47から吐出室21bへ吐出する冷媒の流量が最小となっている。
【0048】
これらの間、この圧縮機においても、回転体15の外周面には圧縮行程中の圧縮室47と連通する第1連通路29a〜29fから圧縮荷重が作用し、回転体15が軸孔27内で駆動軸心O方向と直交する方向に押圧される。
【0049】
しかしながら、この圧縮機では、
図5及び
図6に示すように、第1バネ43は、回転体15を駆動軸心Oに沿った左方向、つまり冷媒の流量が減少する方向に付勢している。
【0050】
また、ピストン7が上死点に位置する圧縮室47は容積が最小となっている。
図3及び
図5に示すように、例えば、この圧縮室47に連通する第1連通路29aは導圧通路15eに連通し、圧縮室47内に残留する高圧の冷媒が蓄圧室33内に供給される。
図4及び
図6に示すように、回転体15が駆動軸心Oに沿って左方向に移動したとしても、この圧縮室47に連通する第1連通路29aは導圧通路15eに連通し、圧縮室47内に残留する高圧の冷媒が蓄圧室33内に供給される。これらのため、蓄圧室33は、内部の蓄積圧力Paが制御圧室37の制御圧力Pcより高くされている。
【0051】
このため、制御弁13が制御圧室37内の制御圧力Pcを低くすると、Pa−Pcの圧力差分の冷媒が蓄圧室33から絞り通路35を経て制御圧室37に徐々に流れる。したがって、回転体15は、駆動軸心Oに沿った左方向、つまり冷媒の流量が減少する方向に付勢される。
【0052】
このため、この圧縮機では、回転体15が軸孔27内で駆動軸心O方向と直交する方向に押圧されていても、回転体15は、上記の付勢力に基づくアシストにより、駆動軸心Oに沿った左方向、つまり冷媒の流量が減少する方向に迅速に移動できる。こうして、制御弁13による制御圧力Pcの変更に対し、流量が減少する方向への回転体15の応答性が向上し、圧縮室47から吐出室21bへ吐出する冷媒の流量を迅速に縮小できる。
【0053】
さらに、この圧縮機では、固定斜板5の傾斜角度を変更させて容量を変更していないことから、構造の簡素化等を実現できる。
【0054】
したがって、この圧縮機では、構造の簡素化等を実現しつつ、圧縮室47から吐出室21bへ吐出する冷媒の流量を迅速に縮小可能である。
【0055】
また、この圧縮機では、駆動軸3の小径部3b周りに蓄圧室33を形成し、小径部3bと内フランジ15aとによって絞り通路35を形成しているため、蓄圧室33及び絞り通路35を圧縮機内に形成し易く、圧縮機の小型化及び低廉化を実現できる。また、この圧縮機では、蓄圧室33の蓄積圧力Paと制御圧室37の制御圧力Pcとの差分により回転体15を冷媒の流量が減少する方向、即ち回転体15を制御圧室37側に付勢していることから、第1バネ43を小型化することも可能となっており、この意味においても小型化及び低廉化を実現できる。
【0056】
さらに、この圧縮機では、回転体15の導圧通路15eが圧縮室47内に残留する高圧の冷媒を蓄圧室33内に供給するため、残留する高圧の冷媒の有効活用を行なうことができる。また、蓄圧室33内の蓄積圧力Paの冷媒が絞り通路35を経て制御圧室37に流れるため、制御圧室37を安定的に制御圧力Pcに維持し易い。
【0057】
(実施例2)
実施例2の圧縮機は、
図7及び
図8に示すように、回転体15に実施例1のような導圧通路15eを形成していない。他方、蓄圧室33内に座金51及び第2バネ53を設けている。
【0058】
座金51は駆動軸3の小径部3bに挿通されている。座金51の内径は内フランジ15aの内径よりも小さい。第2バネ53は、蓄圧室33が拡大する方向に座金51を付勢している。第2バネ53が第2付勢部材に相当する。内フランジ15aと小径部3bとにより第1通路55aが形成され、座金51と小径部3bとにより第2通路55bが形成されている。また、
図7に示すように、座金51が内フランジ15aから離間すれば、内フランジ15aと座金51とにより第3通路55cが形成される。これら第1〜3通路55a〜55cが絞り通路55である。他の構成は実施例1と同様である。
【0059】
この圧縮機では、制御弁13が制御通路13cによって高圧の制御圧力Pcを制御圧室37に供給しておれば、回転体15は、サークリップ41と当接する後端に位置する。この状態では、圧縮機は、駆動軸3の1回転当たりに圧縮室47から吐出室21bに吐出する冷媒の流量が最大となっている。
【0060】
この際、制御圧室37内の高圧の冷媒が第1、2通路55a、55bを経て蓄圧室33に供給される。また、座金51が第2バネ53の付勢力に抗して内フランジ15aから離間すれば、制御圧室37内の高圧の冷媒が第3通路55cを経て蓄圧室33に供給される。このため、蓄圧室33は、内部の蓄積圧力Paが制御圧室37の制御圧力Pcと同じ圧力に素早く維持されるようになる。
【0061】
この状態から、
図8に示すように、制御弁13が制御通路13cによって高圧の制御圧力Pcを制御圧室37に供給せず、制御圧室37内の制御圧力Pcが徐々に低くなれば、Pa−Pcの圧力差分の冷媒が蓄圧室33から第1、2通路55a、55bを経て制御圧室37に徐々に流れる。こうして、回転体15は、前端に位置する。この状態では、圧縮機は、圧縮室47から吐出室21bへ吐出する冷媒の流量が最小となる。
【0062】
この場合、実施例1の圧縮機と比べ、座金51及び第2バネ53の部品が増加するが、座金51の選択によって第2通路55bの流路面積を小さくし、蓄圧室33内の蓄積圧力Paが長期間に亘って回転体15に作用するようにすることができる。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0063】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0064】
例えば、上記実施例1、2の圧縮機では、吸入室21aを斜板室23とは別に設けたが、斜板室が吸入室を兼ねていてもよい。
【0065】
駆動軸3と回転体15との間にOリングを設け、制御圧室37と蓄圧室33とを連通させないようにすることもできる。
【0066】
ピストン7が上死点から下死点に移動する間だけ、圧縮室47に第2連通路から吸入冷媒が供給されるように構成してもよい。
【0067】
回転体15の向きを前後逆にしてもよい。この場合、リヤハウジング21に制御圧室が形成されることになる。
【0068】
蓄圧室は、実施例1、2の圧縮機のように、回転体と駆動軸との間に形成されているものには限られない。例えば、回転体が実施例1、2とは前後逆方向に配置され、リヤハウジングに制御圧室が形成されている場合、回転体の後側に蓄圧室を一体に形成し、蓄圧室と制御圧室との間に絞り通路を設けてもよい。
【0069】
本発明をワッブル式圧縮機に適用してもよい。