特許第6881405号(P6881405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881405
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】下部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   B62D25/20 N
   B62D25/20 G
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-152430(P2018-152430)
(22)【出願日】2018年8月13日
(65)【公開番号】特開2020-26232(P2020-26232A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2020年7月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】戎本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀典
(72)【発明者】
【氏名】棗 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正芳
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊川 雄希
【審査官】 久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−025355(JP,A)
【文献】 特開2001−163266(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0032990(US,A1)
【文献】 特開平10−119827(JP,A)
【文献】 特開2016−199198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08,
B62D 25/14−29/04,
B60K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアトンネルを有する車体フロアを備える下部車体構造において、
前記車体フロアは、下方から前記フロアトンネルの両側部に向けて延びる段上げ部を有し、
前記下部車体構造は、
前記段上げ部を下方から覆うアンダーカバーと、
前記アンダーカバー後方に配置された燃料タンクと、
前記燃料タンクの後方に配置された発熱体と、を備え、
前記燃料タンクは、下面に、車幅方向において前記段上げ部間の幅よりも小さい幅の凹部を有し、
前記凹部は、下方に向けて開口し、
前記発熱体は、前記燃料タンクの前記凹部の後方に配置され、
車両前後方向に直交する断面視において、前記アンダーカバーと前記車体フロアとで形成される空間は前記凹部と車両前後方向に連通されている、
下部車体構造。
【請求項2】
前記燃料タンク下面から前記凹部の上端までの長さは、前記アンダーカバーから前記フロアトンネルの上端までの長さよりも短い、
請求項1に記載の下部車体構造。
【請求項3】
前記燃料タンクの底面に固定され、前記燃料タンクの前記凹部を下方から覆う、インシュレータを備え、
前記インシュレータと前記燃料タンクとの間にプロペラシャフトが位置し、
前記インシュレータの下方に排気管が位置する、
請求項1又は2に記載の下部車体構造。
【請求項4】
前記インシュレータは、前記燃料タンクの凹部の中で上方に突出する、
請求項3に記載の下部車体構造。
【請求項5】
フロアトンネルを有する車体フロアを備える下部車体構造において、
前記車体フロアは、下方から前記フロアトンネルの両側部に向けて延びる段上げ部を有し、
前記下部車体構造は、
前記段上げ部を下方から覆うアンダーカバーと、
前記アンダーカバー後方に配置された燃料タンクと、
前記燃料タンクの後方に配置された発熱体と、を備え、
前記燃料タンクは、下面に、車幅方向において前記段上げ部間の幅よりも小さい幅の凹部を有し、
前記凹部は、下方に向けて開口し、
前記発熱体は、前記燃料タンクの前記凹部の後方に配置され、
前記アンダーカバーの前部は、フロントサスペンション用のサブフレームと重複して固定されている、
下部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部車体構造に関し、特に、フロアトンネルを有する下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
FR(フロントエンジン・リヤドライブ)式及び4WD(四輪駆動)式の自動車などの車両において、駆動源から駆動輪への動力伝達経路には、車両前後方向に延びるプロペラシャフトが設けられることがある。プロペラシャフトは、通例、車体フロアの車幅方向中心部に設けられたフロアトンネル内に配設される。また、例えば、所謂縦置き式のパワートレインが搭載された車両では、フロアトンネル内に変速機の少なくとも一部が配設されることもある。
【0003】
また、このタイプの車両において、車両の空力性能を向上するために、車体フロアの下面に、アンダーカバーが設けられることがある。アンダーカバーにより、車両走行時に車体フロアの下面を通過する気流を整流することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、フロアトンネルを除くフロア下面を覆うアンダーカバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−12425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、後輪を駆動する車両は、車両後部に熱を発生する部材を有する車両である。このような車両において、例えば、燃料タンクの後方に配置された発熱体を、走行風を利用して冷却することが考えられる。
【0007】
車体フロアの下面に取り付けられたアンダーカバーを有する車両において、燃料タンク後方に配置された発熱体に対して走行風による冷却を実現するには、アンダーカバーの構造やその周辺の構成に新たな考察が必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、燃料タンク後方に配置された発熱体に対する冷却効果の向上を図ることができる下部車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る下部車体構造は次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明は
フロアトンネルを有する車体フロアを備える下部車体構造において、
前記車体フロアは、下方から前記フロアトンネルの両側部に向けて延びる段上げ部を有し、
前記下部車体構造は、
前記段上げ部を下方から覆うアンダーカバーと、
前記アンダーカバー後方に配置された燃料タンクと、
前記燃料タンクの後方に配置された発熱体と、を備え、
前記燃料タンクは、下面に、車幅方向において前記段上げ部間の幅よりも小さい幅の凹部を有し、
前記凹部は、下方に向けて開口し、
前記発熱体は、前記燃料タンクの前記凹部の後方に配置され
車両前後方向に直交する断面視において、前記アンダーカバーと前記車体フロアとで形成される空間は前記凹部と車両前後方向に連通されている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記燃料タンク下面から前記凹部の上端までの長さは、前記アンダーカバーから前記フロアトンネルの上端までの長さよりも短い。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、
前記燃料タンクの底面に固定され、前記燃料タンクの前記凹部を下方から覆う、インシュレータを備え、
前記インシュレータと前記燃料タンクとの間にプロペラシャフトが位置し、
前記インシュレータの下方に排気管が位置する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、
前記インシュレータは、前記燃料タンクの凹部の中で上方に突出する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、
フロアトンネルを有する車体フロアを備える下部車体構造において、
前記車体フロアは、下方から前記フロアトンネルの両側部に向けて延びる段上げ部を有し、
前記下部車体構造は、
前記段上げ部を下方から覆うアンダーカバーと、
前記アンダーカバー後方に配置された燃料タンクと、
前記燃料タンクの後方に配置された発熱体と、を備え、
前記燃料タンクは、下面に、車幅方向において前記段上げ部間の幅よりも小さい幅の凹部を有し、
前記凹部は、下方に向けて開口し、
前記発熱体は、前記燃料タンクの前記凹部の後方に配置され、
前記アンダーカバーの前部は、フロントサスペンション用のサブフレームと重複して固定されている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、アンダーカバーは段上げ部分のみをカバーするため大型化せず、その両側の車体フロア下面と協働して車両の空力性能を高めることができる。また、アンダーカバーと段上げ部及びフロアトンネルとの間の空間を通過した気流が、その後方のより狭幅の燃料タンク凹部にて流速が高められて発熱体に当たるので、発熱体の冷却効果を向上することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、燃料タンクにおける気流の流路の長さが幅方向に加えて、高さ方向も短くなるので、気流の流路の容積をより小さくすることができる。これにより、気流の流速を高めることができ、発熱体の冷却効果を向上することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、燃料タンクの凹部を下方から覆うインシュレータを備えるので、燃料タンクとインシュレータとの間の空間にアンダーカバーと車体フロアとの間を流れる気流を導入することができる。これにより、燃料タンクとインシュレータとの間に位置するプロペラシャフトを冷却することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、インシュレータが燃料タンクの凹部の下方から上方に突出するので、燃料タンクの凹部とインシュレータとの間の容積が小さくなり、気流の流速を一層高めることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、フロントサスペンション用のサブフレームの上方のエンジンルーム内の空気をアンダーカバーの上面に沿って後方により多く取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る車両を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る下部車体構造を示す斜視図である。
図3】下部車体構造を車両後方側から見た図2のIII−III線断面図である。
図4】下部車体構造を車両後方側から見た図2のIV−IV線断面図である。
図5】カバーが固定された下部車体構造を示す底面図である。
図6】第1アンダーパネルを車体下方側から見た模式的な平面図である。
図7】第2アンダーパネルを車体下方側から見た模式的な平面図である。
図8】インシュレータを車体下方側から見た模式的な平面図である。
図9】第1アンダーパネルとフロントサスペンション用のサブフレームとの接合部の周辺の断面図である。
図10】下部車体構造を車両前方側から見た図5のX−X線断面図である。
図11】下部車体構造を車両前方側から見た図5のXI−XI線断面図である。
図12】下部車体構造を車両前方側から見た図5のXII−XII線断面図である。
図13】下部車体構造を車両前方側から見た図5のXIII−XIII線断面図である。
図14】下部車体構造を車両側方から見た図5のXIV−XIV線断面図である。
図15】下部車体構造を車両側方から見た図5のXV−XV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る下部車体構造について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、「下」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の前進走行時の進行方向を「前」とした場合における車体の各方向を指すものとする。また、添付図面では、車幅方向に符号「X」、車両前後方向に符号「Y」、車両上下方向に符号「Z」を付している。
【0022】
[全体構成]
図1の斜視図、図2の斜視図、及び図3の低面図に示すように、本実施形態に係る下部車体構造を備えた自動車1は、車室内空間の床面を構成する車体フロア2、車体フロア2の車幅方向Xの両側部に沿って車両前後方向Yに延びる一対のサイドシル4、及び、車体フロア2の前方に配設されたダッシュパネル10を備えている。各サイドシル4は、車幅方向Xの外側に開放した断面ハット状の形状を有する。
【0023】
自動車1は、左右のサイドシル4の各前端部から立ち上がって車両上下方向Zに延びる一対のヒンジピラー5を更に備え、該一対のヒンジピラー5間に、上記のダッシュパネル10が架設されている。このダッシュパネル10によって、車室内空間とエンジンルームERとが車両前後方向Yに仕切られている。
【0024】
車体フロア2は、底面部3と、底面部3から上方に膨出するように形成されたフロアトンネル50とを備えている。フロアトンネル50は、車体フロア2の車幅方向X中央部おいて車両前後方向Yに延びるように設けられている。車両前後方向Yから見たフロアトンネル50の断面形状は、下方に開放したU字状である。
【0025】
フロアトンネル50の上面部には、シフトレバー(図示せず)を通すための開口部50aが設けられている。フロアトンネル50の上面部における車幅方向Xの両側部には、車両前後方向Yに延びる補強部材8がそれぞれ例えば溶接によって接合されており、これにより、フロアトンネル50の剛性が高められている。
【0026】
車体フロア2の底面部3(段上げ部48)の下面には、車両前後方向Yに延びる左右一対のフロアフレーム12が、例えば溶接によって接合されている。各フロアフレーム12は、車幅方向Xにおいて、フロアトンネル50とサイドシル4との間に配置されている。フロアフレーム12は、車幅方向Xに延びるトルクボックス(図示省略)を介して、サイドシル4の前端部に連結されている。
【0027】
また、車体フロア2の上面には、車幅方向Xに延びるフロアクロスメンバとして、左右一対の第1クロスメンバ14、及び、左右一対の第2クロスメンバ16が接合されている。各第1クロスメンバ14及び各第2クロスメンバ16は、フロアトンネル50とサイドシル4との間に架設されている。
【0028】
左右の第1クロスメンバ14は、車両前後方向Yにおいて、互いに略同じ位置に配置されている。左右の第2クロスメンバ16は、車両前後方向Yにおいて、第1クロスメンバ14よりも後方において、互いに略同じ位置に配置されている。
【0029】
第1クロスメンバ14は、車幅方向に延びるクロスメンバ本体64と、シートスライド機構における一対のシートレール99、100を支持するための第1及び第2シートブラケット65、66を備えている。クロスメンバ本体64、並びに、第1及び第2シートブラケット65,66は、例えば、鋼材からなるプレス加工部品である。
【0030】
クロスメンバ本体64は、下方に開放した断面ハット状の部材であり、車体フロア2との間に、車幅方向Xに連続する閉断面を形成している。クロスメンバ本体64の車幅方向X内側端部は、フロアトンネル50よりも車幅方向X外側に配置されている。クロスメンバ本体64の車幅方向X内側端部には第1シートブラケット65が接合されており、該第1シートブラケット65を介して、クロスメンバ本体64とフロアトンネル50とが連結されている。
【0031】
クロスメンバ本体64の車幅方向X外側端部は、サイドシル4に接合されている。第2シートブラケット66は、クロスメンバ本体64の車幅方向X外側端部と、サイドシル4に接合されている。
【0032】
さらに、車体フロア2の上面には、左右一対の斜めメンバ18が例えば溶接によって接合されている。斜めメンバ18は、第1クロスメンバ14よりも前方において、車幅方向Xの内側に向かって後方に傾斜した方向に延びるように配置されている。斜めメンバ18は、フロアフレーム12とサイドシル4とを連結させるように設けられている。斜めメンバ18は、下方に開放した断面ハット状の部材であり、車体フロア2との間において、斜めメンバ18の長さ方向に連続する閉断面を形成している。
【0033】
本実施形態における自動車1は、例えば、縦置き式のパワートレインを備えたFR式の自動車である。自動車1のパワートレインは、ダッシュパネル10の前方のエンジンルームERに搭載された駆動源としてのエンジン(図示せず)と、該エンジンの後方に連結された変速機24(図10参照)とを備えている。
【0034】
変速機24は、例えば、縦置き式の自動変速機であり、車両前後方向Yに延びる出力軸(図示せず)を有する。ただし、変速機24は、手動変速機であってもよい。変速機24の出力軸の後端部は、自在継手(図示せず)を介して車両前後方向Yに延びるプロペラシャフト30に連結されている(図5参照)。プロペラシャフト30の後端部はデファレンシャルギア32に連結されている。これにより、エンジンの動力は、変速機24、プロペラシャフト30及びデファレンシャルギア32等を介して後輪WRに伝達可能とされている。デファレンシャルギア32は、エンジン動力の伝達の摩擦力により発熱する発熱体である。
【0035】
プロペラシャフト30は、フロアトンネル50内に配置されている。プロペラシャフト30は、フロアトンネル50の下面に支持されている。フロアトンネル50内には、変速機24の少なくとも後端側の一部も配置されている。
【0036】
マウントメンバ70は、第1クロスメンバ14の上面部64aとオーバラップする車両前後方向Y位置において車体フロア2に固定されている。これにより、変速機24の後部は、マウントメンバ70を介して車体に支持されている。なお、変速機24の前部は、エンジン及びエンジンマウント(図示せず)を介して車体、例えば、フロントサスペンション用のサブフレーム34に支持されている。
【0037】
[車体フロア]
図3の断面図を参照しながら、マウントメンバ70及び第1クロスメンバ14が配置された車両前後方向Y位置における車体フロア2及びその周辺部の構成について説明する。
【0038】
図3に示すように、車体フロア2は、フロアトンネル50を構成するトンネルパネル40、及び、底面部3を構成する左右一対の底面パネル42で構成されている。トンネルパネル40は、左右のサイドシル4間の車幅方向Xの中央部に配置されている。各底面パネル42は、トンネルパネル40とサイドシル4との間を繋ぐように設けられている。
【0039】
トンネルパネル40及び底面パネル42は、例えば、鋼材からなるプレス加工部品である。トンネルパネル40は、底面パネル42よりも高い剛性および強度を有することが好ましく、これにより、フロアトンネル50の剛性及び強度の向上が図られる。
【0040】
車体フロア2は、底面部3の底部である底板部54からフロアトンネル50の下縁部を繋ぐ一対の段上げ部48を備えている。段上げ部48は、下方からフロアトンネル50の両側部に向けて延び、車体フロア2の少なくとも第1及び第2クロスメンバ14、16の配設部分におけるフロアトンネル50の車幅方向両側にフロアトンネル50と接続される。
【0041】
段上げ部48は、上段部51、中段部52、及び、下段部53で構成されている。本実施形態において、段上げ部48を3段構成とすることで、剛性を増すことができる。なお、段上げ部48は、3段よりも少ない構成でも、又は多い構成でもよい。また、段上げ部48は段状に構成されていなくても、例えば、傾斜構造であってもよい。
【0042】
各上段部51は、第1クロスメンバ14よりも前方部から第2クロスメンバ16よりも後方部にかけて、フロアトンネル50の下縁部に沿って車両前後方向Yに延びるように設けられている(図2参照)。
【0043】
このように、車体フロア2における底面部3とフロアトンネル50の下縁部との間に上段部51が設けられることで、フロアトンネル50の下縁部と底面部3との境界部において、補強部材を別途設けることなく剛性の向上を図ることができる。
【0044】
図3に示すように、上段部51は、フロアトンネル50の下端部から車幅方向X外側に延びる横板部51aと、該横板部51aの外側端部から下方に向かって車幅方向X外側に傾斜した方向に延びる第1傾斜部51bとを備えている。なお、第1傾斜部51bは、垂直下方に向かって延びていてもよい。
【0045】
このように、底面部3とフロアトンネル50の下縁部との境界部では、車体フロア2と一体の上段部51が設けられることによって、剛性が高められている。これにより、上段部51が設けられた車両前後方向Y領域において、車体フロア2とは別体の補強部材を設けることなく、フロアトンネル50の下縁部に沿った補強が果たされる。
【0046】
本実施形態において、上段部51の横板部51a及び第1傾斜部51bは、トンネルパネル40の一部で構成されている。トンネルパネル40は、第1傾斜部51bの下端部から車幅方向X外側に延びる延長部51cを更に備えている。延長部51cは、例えば溶接によって底面パネル42に接合されている。
【0047】
ただし、上段部51は、底面パネル42の一部で構成されてもよいし、トンネルパネル40及び底面パネル42とは別のフロア構成部材で構成されてもよい。
【0048】
図4に示すように、中段部52は、車幅方向Xに延びる横板部52aと、該横板部52aの外側端部から下方に向かって車幅方向X外側に傾斜した方向に延びる第2傾斜部52bとを備えている。中段部52の横板部52aは、トンネルパネル40の延長部51cの上面に接合されている。これにより、中段部52の横板部52aの車幅方向X内側端部は、延長部51cを介して上段部51の第1傾斜部の下端部に連結されている。
【0049】
図3に示すように、下段部53は、中段部52の第2傾斜部52bの下端部から車幅方向X外側に延びる横板部53aと、該横板部53aの外側端部から車幅方向X外側に向かって上方に傾斜した方向に延びる第3傾斜部53bとを備えている。
【0050】
下段部53の第3傾斜部53bの下端部は、底板部54の車幅方向X内側端部に連結されている。被接合部55は、底板部54の外側端部から上方に延びるように設けられている。被接合部55は、サイドシル4の車室内側の側面に、例えば溶接によって接合されている。
【0051】
このように、底板部54は、車両上下方向Zにおいて、サイドシル4の底部4aと略同じ高さに配置されている。底板部54は自動車1のアンダーカバーの機能を有しており、サイドシル4の底部4aと同じ高さであるので、両側部において地上高を維持することができる。
【0052】
ただし、図2のIII−III線における車体フロア2の断面形状は、図3に示す上記構成に限られるものではなく、適宜変更可能である。例えば、中段部52は、複数段で形成されてもよいし、省略されてもよい。また、本実施形態では、底板部54が被接合部55と略同じ高さ位置に配置されていたが、被接合部55よりも高い位置に配置されてもよい。
【0053】
また、フロアフレーム12は、段上げ部48に沿って接続されている。前後方向に延びるフロアフレーム12が段上げ部48に接続されているので、前後方向に延びるフロアフレーム12が車体フロア2の下方に突出するのを抑制することができる。これにより、車体フロア2の剛性と最低地上高を確保することができる。
【0054】
第1シートブラケット65は、車幅方向Xの内側端部において、フロアトンネル50の外側の側面に例えば溶接によって接合され、車幅方向Xの外側端部において、クロスメンバ本体64の上面部64aに例えば溶接によって接合されている。これにより、クロスメンバ本体64の上面部64aは、第1シートブラケット65を介してフロアトンネル50に連結されている。
【0055】
第2シートブラケット66の車幅方向X内側端部は、クロスメンバ本体64の上面部64aに例えば溶接によって接合されている。第2シートブラケット66の車幅方向X外側端部は、サイドシル4の上面部4bに例えば溶接によって接合されている。
【0056】
変速機24を支持するマウントメンバ70は、例えばアルミニウム合金からなる鋳造部品である。マウントメンバ70は、フロアトンネル50と対向してフロアトンネル50両側の段上げ部48を連結する連結部材である。マウントメンバ70は、車幅方向Xに延びるベース部71を備えている。ベース部71は、車両上下方向Zから見て、蝶型の全体形状を有する。ベース部71は、車両前後方向Yから見て、車両下方側に膨出するように湾曲した形状を有する。
【0057】
ベース部71の車幅方向Xの両端部は、車体フロア2に固定される被固定部72となっている。各被固定部72には、被固定部72を車両上下方向Zに貫通する複数のボルト穴が設けられている。被固定部72は、ボルト穴に挿通されるボルト94を用いて車体フロア2の上段部51と、該上段部51の上側に重ねて配置されたクロスメンバ本体64及び第1シートブラケット65に固定される。したがって、マウントメンバ70は、上段部51間を連結している。
【0058】
図4を参照する。第2クロスメンバ16は、車幅方向に延びるクロスメンバ本体84と、シートスライド機構における一対のシートレール99、100を支持するための第1及び第2シートブラケット85、86を備えている。クロスメンバ本体84、並びに、第1及び第2シートブラケット85,86は、例えば、鋼材からなるプレス加工部品である。
【0059】
第2クロスメンバ16の、クロスメンバ本体84、第1及び第2シートブラケット85、86は、第1クロスメンバ14のクロスメンバ本体64、第1及び第2シートブラケット65、66に相当する部品であり同様の機能を有するので詳細な説明を省略する。
【0060】
第3クロスメンバ90は、車両上下方向Zから見て、車幅方向Xに延びる平板状の全体形状を有する。第3クロスメンバ90の車幅方向Xの両端部は、車体フロア2に固定される被固定部92となっている。各被固定部92には、被固定部92を車両上下方向Zに貫通する複数のボルト穴が設けられている。被固定部92は、ボルト穴に挿通されるボルト93を用いて車体フロア2の上段部51と、該上段部51の上側に重ねて配置されたクロスメンバ本体84に固定される。
【0061】
[アンダーカバー]
次に、図5の低面図、図6図7図8の斜視図を参照しながら、車体フロア2に取り付けられた第1及び第2アンダーカバー102、104と、第1インシュレータ106について説明する。第1及び第2アンダーカバー102、104は、段上げ部48の車幅方向外側の車体フロア2の底板部54と連続するようにマウントメンバ70の下側を覆う。
【0062】
第1アンダーカバー102は、略L型の全体形状を有する。第1アンダーカバー102の外周縁に沿って、固定用の貫通穴102a、102b、102dが設けられている。また、第1アンダーカバー102は、前後方向に延びる溝102e、102fが形成されている。溝102e、102fは下方に開放されており、前後方向に延びている。前後方向に延びる溝102e、102fにより、第1アンダーカバー102の下側を通過する気流が整流されるので、空力性能を更に向上できる。
【0063】
第2アンダーカバー104は、車幅方向X中央部が下方に膨出する形状を有している。第2アンダーカバーの右側縁部には、固定用の貫通穴104aが設けられている。また、第2アンダーカバーの前側縁部には、固定用の貫通穴104bが設けられている。また、第2アンダーカバーの左側縁部には、固定用の貫通穴104dが設けられている。
【0064】
第1インシュレータ106は、第1インシュレータ106の外周縁に沿って、固定用の貫通穴106a、106b、106cが設けられている。また、第1インシュレータ106は下方に開放したU字状のトンネル106dが形成されている。トンネル106dは、前後方向に延びる。トンネル106d内には、排気管36が収容されている。
【0065】
図9の断面図に示すように、サブフレーム34の後端部に貫通穴34aが設けられている。第1アンダーカバー102の貫通穴102aとサブフレーム34の貫通穴34aとが、例えば、ボルト96等の固定用具で固定されている。また同様に、第2アンダーカバー104の貫通穴104bとサブフレーム34の貫通穴34aとが、例えば、ボルト96等の固定用具で固定されている。
【0066】
このように、第1及び第2アンダーカバー102、104の上面にサブフレーム34の下面が載置されて固定されている。第1及び第2アンダーカバー102、104の前部は、フロントサスペンション用のサブフレーム34と重複して固定されているので、フロントグリルFG(図1参照)を通ってエンジンルームERに取り込まれた外気を第1及び第2アンダーカバー102、104上により多く導入することができる。
【0067】
図10の断面図に示すように、第1及び第2アンダーカバー102、104は、コの字形のブラケット107を介して、底面パネル42に固定されている。第1アンダーカバー102の貫通穴102dと第2アンダーカバーの貫通穴104dにボルトが挿通されてブラケット107の下端部107aに固定される。また、第1インシュレータ106も、ブラケット107を介して、底面パネル42に固定されている。第1インシュレータ106の貫通穴106bにボルトが挿通されてブラケット107の下端部に固定される。ブラケット107の上端部107bは、トンネルパネル40から延びる横板部51aに固定されている。
【0068】
図11の断面図に示すように、第1アンダーカバー102と第1インシュレータ106は、Z形状のブラケット105を介して第3クロスメンバ90及び底面パネル42に固定されている。第1アンダーカバー102の貫通穴102d及び第1インシュレータ106の貫通穴106cにボルト98が挿通されて、第1アンダーカバー102と第1インシュレータ106がブラケット105の下端部105aに固定される。ブラケット105の上端部105bは、第3クロスメンバ90及び底面パネル42の上段部51に例えば、ボルト等の固定具により固定される。
【0069】
図12の断面図に示すように、第1アンダーカバー102は、溝102e内に設けられた貫通穴102gにボルト95が挿通されてマウントメンバ70に固定されている。第1アンダーカバー102がマウントメンバ70に固定されているので、第1アンダーカバー102の位置を低くすることなく、第1アンダーカバー102の取り付け剛性を確保できる。これにより、第1アンダーカバー102の振動を低減することができる。
【0070】
また、気流が通る第1アンダーカバー102の溝102eにおいて第1アンダーカバー102とマウントメンバ70とが固定されているので、気流の整流による第1アンダーカバー102の振動を抑制することができる。
【0071】
第1アンダーカバー102の左側縁部は、例えば、貫通穴102dにボルトを挿通することで前後方向に延びるフロアフレーム12に固定されている。また、第2アンダーカバーの右側縁部も、例えば、貫通穴104aにボルトを挿通することで前後方向に延びるフロアフレーム12に固定されている。フロアフレーム12は下段部53に固定されているので、第1及び第2アンダーカバー102、104は、下段部53間を覆う。マウントメンバ70が上段部51間を連結しているので、マウントメンバ70の下方への突出を第1及び第2アンダーカバー102、104内に収容することができる。
【0072】
[燃料タンク]
図13の断面図に示すように、燃料タンク108は支持メンバ110を介してサイドシル4の底部4aに支持されている。燃料タンク108は、樹脂製である。燃料タンク108は、第1及び第2アンダーカバー102、104の後方に配置されている。燃料タンク108の後方には、デファレンシャルギア32が配置されている。燃料タンク108の車幅方向X中央部には、下方に向けて開口し前後方向に延びる凹部108aが形成されている。凹部108aは、第1窪み部108aaと第2窪み部108abとを有する。第1窪み部108aaは、プロペラシャフト30の上部を覆う。燃料タンク108の下面からの第2窪み部108abの深さは、第1窪み部108aaよりも浅い。
【0073】
凹部108aの車幅方向の幅Waは、段上げ部48間の幅Wb(図12参照)よりも小さい。これにより、第1及び第2アンダーカバー102、104と段上げ部48及びフロアトンネル50との間の空間を通過した気流が、その後方のより狭幅の燃料タンク108の凹部108aにて流速が高められてデファレンシャルギア32に当たるので、デファレンシャルギア32の冷却効果を向上することができる。
【0074】
燃料タンク108の下面から凹部108aの上端までの長さHa(図13)は、第1及び第2アンダーカバー102、104からフロアトンネル50の上端までの長さHb(図12)よりも短い。これにより、第1及び第2アンダーカバー102、104とフロアトンネル50との間の風の通る容積が、燃料タンク108の下面から凹部108aの上端までの容積に移行すると、幅方向に加えて、高さ方向も長さが短くなるので、風の通る容積をより小さくすることができ、気流の流速を高めることができる。
【0075】
凹部108aと排気管36の間には、第2インシュレータ112が配置されている。第2インシュレータ112は、燃料タンク108の底面に固定され、燃料タンク108の凹部108aを下方から覆う。第2インシュレータ112と燃料タンク108との間にプロペラシャフト30が位置し、第2インシュレータ112の下方に排気管36が位置する。これにより、第1及び第2アンダーカバー102、104の上部を通過した気流は、第2インシュレータ112にて上下方向にも狭くなって第2インシュレータ112と燃料タンク108との間に流入するように構成されているので、気流の流速を一層高めることができる。
【0076】
第2インシュレータ112は、燃料タンク108の凹部108aの中で上方に突出する。第2インシュレータ112が燃料タンク108の凹部108aの下方から第2窪み部108abに向けて上方に突出するので、燃料タンク108の凹部108aと第2インシュレータ112との間の容積が小さくなり、後方に流れる気流の流速を一層高めることができる。
【0077】
図14及び図15の断面図を参照して、エンジンルームERから後方向に流れる気流について説明する。図14に示すように、底面パネル42の底板部54は、ダッシュパネル10との接合部から前後方向に略同じ高さで延びている。これに対して、段上げされた底面パネル42は、ダッシュパネル10との接合部から後方に向けて略下方に延びている。第1アンダーカバー102及び第1インシュレータ106の前後方向における高さは略同じ高さである。したがって、エンジンルームERから燃料タンク108に向かう流路は、縦方向の容積を狭められながら後方に延びている。これにより、底面パネル42と第1アンダーカバー102との間に流入した気流は、後方に流れるにしたがって、流速を増すことができる。この結果、流速を増した状態で気流が燃料タンク108の凹部108aへ流入するので、燃料タンク108及び燃料タンク後方に配置されたデファレンシャルギア32の冷却効果を向上させることができる。
【0078】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0079】
例えば、上述の実施形態では、燃料タンク108の後方に配置された発熱体としてデファレンシャルギア32の例を説明したが、これに限らない。その他の冷却を要する部材を燃料タンク108の後方に配置する場合にも、本発明を適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明によれば、車両後部に熱を発生する部材を有する車両において、発熱部材をより効果的に冷却することが可能となるから、この種の発熱部材を備えた自動車の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0081】
2 車体フロア
30 プロペラシャフト
32 デファレンシャルギア
34 サブフレーム
36 排気管
48 段上げ部
50 フロアトンネル
102 第1アンダーカバー
104 第2アンダーカバー
108 燃料タンク
108a 凹部
112 第2インシュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15