(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る情報提供システム100の構成図である。第1実施形態の情報提供システム100は、電車やバス等の交通機関の利用者HAに情報を提供するコンピュータシステムであり、音声案内装置12と管理端末14と情報提供装置16とを具備する。交通機関の車輌M内に位置する各利用者HAは移動端末20を携帯する。移動端末20は、携帯電話機やスマートフォン等の可搬型の通信端末である。実際には車輌M内には複数の移動端末20が存在し得るが、以下の説明では便宜的に任意の1個の移動端末20に着目する。
【0015】
音声案内装置12および管理端末14は車輌M内に設置され、情報提供装置16は、移動通信網やインターネット等を含む通信網18に接続される。移動端末20および管理端末14は、通信網18を介して情報提供装置16と通信可能である。音声案内装置12は、交通機関に関する案内用の音声(以下「案内音声」という)を車輌M内の利用者HAに対して放音する。案内音声は、例えば交通機関の乗降(電車の駅やバスの停留所等の停車地点の名称)や乗換,運賃,運行状況(例えば遅延の有無),周辺の観光地等を案内する音声である。
【0016】
第1実施形態の情報提供システム100では、概略的には、
図1に例示される通り、音声案内装置12による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供指示Pが管理端末14から情報提供装置16に送信され、提供指示Pで指定されたコンテンツCを含む配信情報Qが情報提供装置16から移動端末20に送信される。情報提供装置16から移動端末20に配信されるコンテンツCは、案内音声に関連する音声または画像(例えば静止画,動画,文字列)である。例えば、案内音声の発音内容を表現した文字列や当該発音内容の言語を他言語に翻訳した文字列または音声等の各種の情報がコンテンツCとして移動端末20に提供される。なお、第1実施形態では、複数の案内対象に関する案内の提供を想定する。案内対象は、案内の客体を意味し、典型的には案内が提供される場所である。
図1では交通機関の車輌Mを案内対象として例示したが、実際には複数の案内対象の各々について(例えば同種の交通機関の車輌M毎に)音声案内装置12と管理端末14とが設置される。他方、情報提供装置16は複数の案内対象にわたり共用される。
【0017】
<音声案内装置12>
図2は、音声案内装置12の構成図である。
図2に例示される通り、音声案内装置12は、再生処理部32と放音部34とを具備する。再生処理部32は、案内音声を表す音響信号Sを放音部34に供給し、放音部34(例えばスピーカ)は、再生処理部32から供給される音響信号Sに応じた案内音声を車輌M内に放音する。
【0018】
図2に例示される通り、再生処理部32は、制御部322と記憶部324と操作部326とを具備する。記憶部324は、磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体であり、発音内容が相違する案内音声に対応する複数の音響信号Sを記憶する。例えば、車輌Mが停車する複数の地点(例えば電車の駅やバスの停留所等の停車地点)の各々について、当該地点に対する到着や当該地点での乗換、当該地点の周辺の情報を案内する案内音声の音響信号Sが記憶部324に記憶される。操作部326は、交通機関の管理者(典型的には車輌Mの運転者)HBによる操作を受付ける入力機器である。例えば管理者HBは、操作部326を適宜に操作することで、記憶部324に記憶された複数の案内音声のうち任意の1個の案内音声を選択することが可能である。
【0019】
制御部322は、例えばCPU等の処理装置で構成され、音声案内装置12の各要素を統括的に制御する。第1実施形態の制御部322は、記憶部324に記憶された複数の音響信号Sのうち操作部326に対する操作で管理者HBが選択した案内音声の音響信号Sを放音部34に供給する。したがって、管理者HBによる指示毎に放音部34から案内音声が放音される。車輌M内の利用者HAは、放音部34から放音される案内音声を聴取することが可能である。
【0020】
任意の1個の案内音声の音響信号Sには、当該案内音声に関連するコンテンツCを一意に識別するための識別情報Dが含有される。
図3は、識別情報Dを含有する音響信号Sを生成する信号処理装置200の構成図である。
図3の信号処理装置200が順次に生成した複数の音響信号Sが、例えば通信網18や可搬型の記録媒体を介して音声案内装置12に転送されたうえで記憶部324に格納される。
【0021】
<信号処理装置200>
図3に例示される通り、信号処理装置200は、制御部42と記憶部44とを具備する。信号処理装置200の制御部42は、例えばCPU等の処理装置で構成され、音響信号Sを生成するための複数の要素(成分抑圧部422,変調処理部424,混合処理部426)として機能する。記憶部44は、例えば磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体である。第1実施形態の記憶部44には、任意の1個の案内音声を表す音響信号(以下「原音響信号」という)S0と、当該案内音声に関連するコンテンツCに固有の識別情報Dとが記憶される。原音響信号S0が表す案内音声は、例えば、特定の発声者が実際に発音した音声の収録音や、公知の音声合成技術で生成された音声である。
【0022】
図4は、信号処理装置200の動作の説明図である。
図4に例示される通り、原音響信号S0は、放音部34が再生可能な音響の周波数帯域(以下「再生帯域」という)B0の略全域にわたる音響成分を含有する。第1実施形態では、約20Hzから20kHzまでの可聴帯域のうち高域側の周波数帯域の音響成分を再生できない低性能な放音部34を想定する。具体的には、放音部34の再生帯域B0の上限値Fが8kHzである場合を例示する。
図3の成分抑圧部422は、
図4に例示される通り、記憶部44に記憶された原音響信号S0のうち放音部34による再生帯域B0の上限値Fから低域側の所定幅にわたる周波数帯域(以下「利用帯域」という)BAの音響成分を抑圧することで音響信号SAを生成する。例えば上限値Fと比較して利用帯域BAの帯域幅分だけ低い周波数FCを遮断周波数とする低域通過フィルタが成分抑圧部422として利用される。利用帯域BAの帯域幅は例えば2kHzである。したがって、利用帯域BAは、可聴帯域に内包される6kHz以上かつ8kHz以下の周波数帯域である。
【0023】
図3の変調処理部424は、記憶部44が記憶する識別情報Dを含有する音響信号SBを生成する。音響信号SBは、利用帯域BA内の音響成分で構成される。識別情報Dを含有する音響信号SBの生成には公知の方法が任意に採用され得るが、例えば国際公開第2010/016589号に開示された方法が好適である。具体的には、変調処理部424は、拡散符号を利用した識別情報Dの拡散変調と利用帯域BA内の搬送波を利用した周波数変調とを順次に実行することで、識別情報Dを利用帯域BA内の音響成分として含有する音響信号SBを生成する。第1実施形態の変調処理部424は、音響信号SBを音響信号SAと比較して充分に小さい音量に調整する。具体的には、音響信号SBの音量(音圧レベル)は、音響信号SAの音量に対して−50dB〜−80dB程度の音量に調整される。
【0024】
図3の混合処理部426は、成分抑圧部422による処理後の音響信号SAと変調処理部424による処理後の音響信号SBとを合成(典型的には加算)することで音響信号Sを生成する。すなわち、任意の1個の案内音声の音響信号Sは、当該案内音声の音響成分(音響信号SA)と、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dの音響成分(利用帯域BAの音響信号SB)とを含有する。以上に例示した処理が案内音声毎に順次に実行されることで、相異なる案内音声に対応する複数の音響信号Sが生成されて音声案内装置12の記憶部324に転送される。以上の説明から理解される通り、第1実施形態において音声案内装置12の放音部34から放音される音響信号Sには、可聴帯域内の利用帯域BAの音響成分(音響信号SB)として識別情報Dが含有される。前述の通り、案内音声の音響信号SAと比較して音響信号SBは充分に音量が小さいから、車輌M内の利用者HAは、案内音声を明確に知覚する一方、利用帯域BA内の識別情報Dの音響成分は殆ど知覚できない。
【0025】
図1に例示される通り、管理端末14は、信号線(ケーブル)13を介して案内音声システムの再生処理部32に接続される。再生処理部32の制御部322は、操作部326に対する管理者HBからの操作(案内音声の選択)を契機として、記憶部324に記憶された音響信号Sを前述の通り放音部34に供給して案内音声を放音させるとともに、当該音響信号Sを信号線13から管理端末14に送信する。すなわち、放音部34および管理端末14の双方に対して音響信号Sが並列に供給される。したがって、放音部34による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを含有する音響信号Sが有線で管理端末14に送信される。
【0026】
なお、放音部34および管理端末14に対する音響信号Sの供給の契機は操作部326に対する管理者HBからの操作に限定されない。例えば、事前に設定された時刻(例えば車輌Mが特定の地点に到着する予定時刻)の到来を契機として音響信号Sを放音部34および管理端末14に供給する構成や、車輌Mに設置された検出器(センサ)が特定の地点に対する車輌Mの到達を検知したことを契機として音響信号Sを放音部34および管理端末14に供給する構成も採用され得る。
【0027】
<管理端末14>
図5は、管理端末14の構成図である。管理端末14は、例えば管理者HBが使用する携帯電話機やスマートフォン等の可搬型または据置型の通信端末であり、
図5に例示される通り、制御部51と記憶部52と通信部53と操作部54と受信部55とを具備する。通信部53は、通信網18を介して情報提供装置16と通信する。操作部54は、管理者HBによる操作を受付ける入力機器である。
【0028】
記憶部52は、磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体であり、制御部51が実行するプログラムや制御部51が使用する各種のデータを記憶する。第1実施形態の記憶部52は、当該管理端末14を利用した案内の案内対象を一意に識別するための識別情報(以下「案内識別情報」という)Gを記憶する。受信部55は、音声案内装置12の再生処理部32から信号線13を介して有線で供給される音響信号Sを受信する。
【0029】
制御部51は、例えばCPU等の処理装置で構成され、記憶部52に記憶されたプログラムを実行することで情報抽出部512および提供指示部514として機能する。情報抽出部512は、受信部55が受信した音響信号Sから識別情報Dを抽出する。具体的には、情報抽出部512は、音響信号Sのうち識別情報Dを含有する利用帯域BAの音響成分を例えば高域通過フィルタで抽出し、識別情報Dの拡散変調に使用された拡散符号を係数とする整合フィルタを通過させることで識別情報Dを抽出する。
【0030】
提供指示部514は、情報抽出部512が抽出した識別情報Dで指定されるコンテンツCの提供指示Pを生成する。具体的には、提供指示部514は、情報抽出部512が音響信号Sから抽出した識別情報Dと記憶部52に記憶された案内識別情報Gとを含む提供指示Pを生成して通信部53から情報提供装置16に送信する。情報抽出部512による識別情報Dの抽出と提供指示部514による提供指示Pの生成とは、音声案内装置12の再生処理部32から音響信号Sを受信するたびに実行される。前述の通り、再生処理部32は放音部34および管理端末14に並列に音響信号Sを供給する。したがって、放音部34による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dの抽出と、当該識別情報Dで指定されるコンテンツCの提供指示Pの生成とが実行される。
【0031】
<移動端末20>
図6は、任意の1個の移動端末20の構成図である。
図6に例示される通り、移動端末20は、制御部61と記憶部62と通信部63と操作部64と再生部65と撮像部66とを具備する。記憶部62は、磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体であり、制御部61が実行するプログラムや制御部61が使用する各種のデータを記憶する。例えば移動端末20を一意に識別するための識別情報(以下「端末識別情報」という)Tが記憶部62に記憶される。操作部64は、利用者HAによる操作を受付ける入力機器である。
【0032】
通信部63は、通信網18を介して情報提供装置16と通信する。例えば通信部63は、案内音声に関連するコンテンツCを含む配信情報Qを情報提供装置16から受信する。再生部65は、情報提供装置16から提供されるコンテンツCを再生する。具体的には、コンテンツCの画像を表示する表示装置(例えば液晶表示パネル)やコンテンツCの音響を放音する放音装置(例えばスピーカやヘッドホン)が再生部65として利用される。
【0033】
制御部61は、例えばCPU等の処理装置で構成され、記憶部62に記憶されたプログラムを実行することで再生制御部612および情報取得部614として機能する。再生制御部612は、情報提供装置16から受信した配信情報Qに含まれるコンテンツCを再生部65に再生させる。他方、情報取得部614は、案内音声が放音される場所(すなわち車輌M内)で提供される案内識別情報Gを取得する。
【0034】
第1実施形態では、案内対象である車輌M内に情報画像Xが設置される。例えば、車輌M内に貼付された広告等の印刷物に情報画像Xが印刷される。情報画像Xは、案内対象に固有の案内識別情報Gを表象する光学的に読取可能な平面図像(例えばQRコード(登録商標))である。
図6の撮像部66は、例えば画像を撮像可能な撮像素子を含んで構成され、操作部64に対する利用者HAからの指示を契機として情報画像Xを撮像する。情報取得部614は、撮像部66が撮像した情報画像Xの復調で案内識別情報Gを特定し、当該案内識別情報Gと当該移動端末20の端末識別情報Tとを包含する登録要求Rを通信部63から情報提供装置16に送信する。登録要求Rは、案内識別情報Gで指定される案内対象の案内音声に関連するコンテンツCの提供対象として当該移動端末20を登録(いわばチェックイン)することを要求する信号である。任意の1個の案内対象の案内識別情報Gは、当該案内対象の案内音声が放音される場所で限定的に提供されるから、特定の案内対象の案内識別情報Gを含む登録要求Rを送信した移動端末20は、当該案内対象の案内音声が放音される場所(例えば車輌M内)に位置すると推定される。
【0035】
<情報提供装置16>
図7は、情報提供装置16の構成図である。情報提供装置16は、例えば通信網18に接続されたサーバ装置(典型的にはウェブサーバ)であり、
図7に例示される通り、制御部72と記憶部74と通信部76とを具備する。通信部76は、通信網18を介して移動端末20および管理端末14の各々と通信する。第1実施形態の通信部76は、管理端末14が送信した提供指示Pと移動端末20が送信した登録要求Rとを通信網18を介して受信する。記憶部74は、例えば磁気記録媒体や半導体記録媒体等の公知の記録媒体であり、複数のコンテンツCと登録情報Eとを記憶する。
図7に例示される通り、複数のコンテンツC(C11,C12,……)の各々には、当該コンテンツCに固有の識別情報D(D11,D12,……)と、当該コンテンツCに対応する案内音声が放音される案内対象(車輌M)に固有の案内識別情報G(G1,G2,……)とが付加される。
【0036】
登録情報Eは、各案内対象の案内音声に関連するコンテンツCの提供対象となる移動端末20を指定する。具体的には、登録情報Eは、
図7に例示される通り、案内対象に固有の案内識別情報G(G1,G2,……)と、当該案内対象の案内音声に関連するコンテンツCの提供対象となる1個以上の移動端末20の端末識別情報T(T11,T12,……)とを対応させたデータテーブルである。
【0037】
制御部72は、例えばCPU等の処理装置で構成され、記憶部74に記憶されたプログラムを実行することで登録処理部722および情報配信部724として機能する。登録処理部722は、移動端末20から送信された登録要求Rに応じて登録情報Eを更新する。具体的には、登録処理部722は、登録情報Eに含まれる複数の案内識別情報Gのうち登録要求Rで指定される案内識別情報Gについて、当該登録要求Rで指定される端末識別情報Tを対応させる。すなわち、登録要求R内の案内識別情報Gが指定する案内対象のコンテンツCの配信対象として、当該登録要求Rで指定された端末識別情報Tの移動端末20が登録される。
【0038】
情報配信部724は、配信情報Qを生成して通信部76から移動端末20に送信する。具体的には、情報配信部724は、管理端末14から受信した提供指示Pで指定された識別情報DのコンテンツCを、当該提供指示Pで指定された案内識別情報Gについて登録情報Eに登録された各移動端末20(すなわち当該案内対象について登録されたコンテンツCの配信対象)に送信する。前述の通り、特定の案内対象の案内識別情報Gを含む登録要求Rを送信した移動端末20は、当該案内対象の案内音声が放音される場所に位置すると推定される。したがって、案内対象の案内音声が放音される場所に位置する移動端末20には、当該案内対象の案内音声に対応するコンテンツCが提供される。
【0039】
<全体動作>
図8は、情報提供システム100の全体的な動作の説明図である。車輌Mに乗車した利用者HAは、自身の移動端末20の操作部64を適宜に操作することで、当該車輌M内に設置された情報画像Xの撮像を指示する。利用者HAからの指示に応じて撮像部66が情報画像Xを撮像すると(SA1)、移動端末20の情報取得部614は、当該情報画像Xから特定される案内識別情報Gと当該移動端末20の端末識別情報Tとを含む登録要求Rを通信部63から情報提供装置16に送信する(SA2)。
【0040】
移動端末20が送信した登録要求Rを通信部76が受信すると、情報提供装置16の登録処理部722は、登録情報Eのうち登録要求Rで指定された案内識別情報Gについて、当該登録要求Rで指定された端末識別情報Tを登録する(SA3)。すなわち、案内対象である車輌M内で放音される案内音声に関連するコンテンツCの配信対象として当該車輌M内の移動端末20が追加される。
【0041】
他方、音声案内装置12の再生処理部32は、操作部326に対する操作で管理者HBが選択した案内音声の音響信号Sを、放音部34に供給する(SA4)とともに信号線13を介して管理端末14に送信する(SA5)。音響信号Sの供給により放音部34からは案内音声が放音され、車輌M内に位置する利用者HAは当該案内音声を聴取する。他方、管理端末14の情報抽出部512は、再生処理部32から供給される音響信号Sを解析することで、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを抽出する(SA6)。提供指示部514は、情報抽出部512が抽出した識別情報Dと記憶部52が保持する案内識別情報Gとを含む提供指示Pを通信部53から情報提供装置16に送信する(SA7)。
【0042】
管理端末14から送信された提供指示Pを通信部76が受信すると、情報提供装置16の情報配信部724は、記憶部74に記憶された複数のコンテンツCのうち提供指示Pで指定された識別情報Dに対応するコンテンツCを特定し(SA8)、提供指示Pで指定された案内識別情報Gに対応する1個以上の端末識別情報T(すなわち、案内対象のコンテンツCの配信対象として登録された移動端末20)を登録情報Eから特定する(SA9)。そして、情報配信部724は、ステップSA8で特定したコンテンツCを含む配信情報Qを、ステップSA9で特定した各端末識別情報Tの移動端末20を宛先として通信部76から送信する(SA10)。
【0043】
情報提供装置16から送信された配信情報Qを通信部63が受信すると、移動端末20の再生制御部612は、配信情報Qに含まれるコンテンツCを再生部65に再生させる(SA11)。以上の説明から理解される通り、案内対象である車輌M内では、案内対象に関する案内音声が車輌M内の放音部34から順次に放音される一方、案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCが移動端末20の再生部65にて順次に再生される。すなわち、案内音声に関連するコンテンツCが当該案内音声の放音に連動して順次に移動端末20で再生される。したがって、車輌M内の利用者HAは、案内音声を順次に聴取するとともに、当該案内音声に関連するコンテンツCを順次に視聴することが可能である。
【0044】
なお、情報提供装置16の登録処理部722は、端末識別情報Tを登録情報Eに追加してから所定の時間(利用者HAが車輌M内に位置すると見込まれる時間)が経過したことを条件に、当該端末識別情報Tを登録情報Eから削除する。すなわち、当該端末識別情報Tの移動端末20は配信情報Qの送信対象から除外される。したがって、車輌Mから降車した利用者HAの移動端末20に配信情報Qは送信されない。なお、端末識別情報Tを登録情報Eから削除するための条件は以上の例示(所定時間の経過)に限定されない。例えば、操作部64に対する利用者HAからの操作に応じて移動端末20から情報提供装置16に送信される削除要求を契機として当該移動端末20の端末識別情報Tを登録情報Eから削除することも可能である。
【0045】
以上に説明した通り、第1実施形態では、案内音声に関連するコンテンツの提供指示Pが放音部34による案内音声の放音毎に生成され、登録情報Eで配信対象として登録された移動端末20に対して当該提供指示Pに係るコンテンツCの配信情報Qが送信される。したがって、案内対象の各案内音声に関連するコンテンツCを当該案内音声の放音に連動して移動端末20にて再生させることが可能である。
【0046】
また、第1実施形態では、案内音声が放音される場所(車輌M内)で取得可能な案内識別情報Gを含む登録要求Rを情報提供装置16が移動端末20から受信した場合に、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供対象として当該移動端末20が登録される。したがって、案内音声に関連するコンテンツCの提供対象を、当該案内音声が放音される場所に位置する移動端末20に制限することが可能である。第1実施形態では特に、案内音声が放音される場所に設置された情報画像Xの撮像により移動端末20が取得した案内識別情報Gを含む登録要求Rが移動端末20から送信されるから、移動端末20に案内識別情報Gを取得させるための構成や手順が簡素化されるという利点がある。
【0047】
また、第1実施形態では、音響信号Sの供給により放音部34から案内音声が放音される一方、当該音響信号Sに音響成分として含有される識別情報Dが管理端末14にて抽出されたうえで提供指示Pが生成される。すなわち、放音部34による案内音声の放音と管理端末14による識別情報Dの抽出とに音響信号Sが共用される。したがって、放音部34による案内音声の放音と提供指示部514による提供指示Pの送信(ひいては移動端末20に対するコンテンツCの提供)とを容易に連動させることが可能である。
【0048】
なお、識別情報Dの音響成分が含有される利用帯域BA内の音量は他帯域の音響成分(音響信号SA)と比較して充分に低い音量に抑制される。したがって、放音部34から放音される音響を聴取した利用者HAに識別情報Dの音響成分が知覚され難くなるように識別情報Dの音響成分の音量を充分に抑制した場合でも、音響信号Sから高精度に識別情報Dを抽出できるという利点がある。
【0049】
ところで、音響信号Sに含有された識別情報Dを管理端末14にて抽出するための構成としては、例えば、放音部34から放音された音響を管理端末14にて収音した音響信号から識別情報Dを抽出する構成(以下「対比例」という)も想定され得る。しかし、対比例では、放音部34から管理端末14までの経路上で音響に雑音が重畳されるから、結果的に管理端末14にて識別情報Dを高精度に抽出することが困難となり得る。第1実施形態では、識別情報Dを含有する音響信号Sが有線で音声案内装置12から管理端末14に送信されるから、音響信号Sに対する雑音の影響が低減される。したがって、第1実施形態によれば、対比例と比較して、音響信号Sから高精度に識別情報Dを抽出できるという利点がある。ただし、以上の説明は本発明の範囲から対比例を除外する趣旨ではなく、対比例は本発明の範囲に包含され得る。
【0050】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0051】
図9は、第2実施形態における音声案内装置12および管理端末14の構成図である。
図9に例示される通り、第2実施形態では音声案内装置12と管理端末14とは接続されない。音声案内装置12の再生処理部32は、操作部326に対する操作で管理者HBが選択した案内音声の音響信号Sを放音部34に供給する。
【0052】
第2実施形態の管理端末14は、第1実施形態の構成から受信部55および情報抽出部512を省略した構成である。また、第2実施形態の記憶部52は、音声案内装置12の記憶部324に音響信号Sが記憶された複数の案内音声(すなわち音声案内装置12が放音可能な複数の案内音声)の各々について、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを記憶する。
【0053】
管理者HBは、音声案内装置12の操作部326に対する操作で所望の案内音声を選択するとともに、管理端末14の操作部54に対する操作で当該案内音声(あるいは当該案内音声に関連するコンテンツC)を選択する。提供指示部514は、操作部54に対する操作で管理者HBが選択した案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを記憶部52から取得し、当該識別情報Dと案内対象の案内識別情報Gとを含む提供指示Pを通信部53から情報提供装置16に送信する。第2実施形態における他の構成や動作は第1実施形態と同様である。
【0054】
以上の説明から理解される通り、第2実施形態では、放音部34が案内音声を放音する動作と、当該案内音声のコンテンツCの提供指示Pを生成および送信する動作とが、相互に連動して実行される。すなわち、放音部34による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供指示Pが順次に生成される。したがって、第1実施形態と同様に、案内対象の各案内音声に関連するコンテンツCを当該案内音声の放音に連動して移動端末20にて再生させることが可能である。また、第2実施形態では、音声案内装置12と管理端末14との間の通信(音響信号Sの授受)が不要であるから、例えば音声案内装置12と管理端末14とを相互に接続できない場合(例えば各々のハードウェアの制約から両者を接続できない場合)に有効である。
【0055】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態における管理端末14の構成図である。
図10に例示される通り、第3実施形態の管理端末14は、第1実施形態の受信部55を省略するとともに第1実施形態の情報抽出部512を放音指示部516に置換した構成である。また、第3実施形態の管理端末14の記憶部52は、第2実施形態と同様に、音声案内装置12が放音可能な複数の案内音声の各々についてコンテンツCの識別情報Dを記憶する。
【0056】
管理者HBは、管理端末14の操作部54に対する操作で所望の案内音声(あるいは当該案内音声に関連するコンテンツC)を選択する。提供指示部514は、第2実施形態と同様に、操作部54に対する操作で管理者HBが選択した案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを記憶部52から取得し、当該識別情報Dと案内対象の案内識別情報Gとを含む提供指示Pを通信部53から情報提供装置16に送信する。
【0057】
他方、放音指示部516は、操作部54に対する操作で管理者HBが選択した案内音声を音声案内装置12に通知する。管理端末14と音声案内装置12との間の通信の有線/無線は不問である。音声案内装置12の制御部322は、管理端末14から指示された案内音声の音響信号Sを記憶部324から放音部34に供給することで案内音声を放音させる。第3実施形態における他の構成や動作は第1実施形態と同様である。
【0058】
以上の説明から理解される通り、第3実施形態では、管理者HBが選択した案内音声のコンテンツCの提供指示Pを管理端末14が送信する動作と、放音部34が当該案内音声を放音する動作とが、相互に連動して実行される。すなわち、放音部34による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供指示Pが順次に生成される。したがって、第1実施形態と同様に、案内対象の各案内音声に関連するコンテンツCを当該案内音声の放音に連動して移動端末20にて再生させることが可能である。なお、第3実施形態は、可搬型の音声案内装置12および管理端末14(あるいは音声案内装置12と管理端末14とが一体に構成された装置)をバスガイドやツアーガイド等の管理者HBが携行して車輌M内の各利用者HAを案内する場合に特に好適である。
【0059】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態における音声案内装置12および管理端末14の構成図である。
図11に例示される通り、第4実施形態の音声案内装置12は、第1実施形態の音声案内装置12の再生処理部32を収音部36に置換した構成である。収音部36(マイクロホン)は、管理者HBが発音した案内音声の収音により音響信号Sを生成および増幅して放音部34に供給する。したがって、管理者HBが発音した案内音声が放音部34から放音される。
【0060】
他方、第4実施形態の管理端末14は、
図11に例示される通り、第1実施形態の受信部55を収音部56(マイクロホン)に置換するとともに情報抽出部512を音声解析部518に置換した構成である。収音部56は、管理者HBが発音した案内音声を収音して音声信号Vを生成する。以上の説明から理解される通り、管理者HBが発音した案内音声は、音声案内装置12の収音部36および管理端末14の収音部56の双方により並列に収音される。
【0061】
図11の音声解析部518は、音声信号Vの解析で案内音声の発音内容を解析する。発音内容の解析には公知の音声認識技術が任意に採用される。また、第4実施形態の記憶部52は、管理者HBが発音する予定の案内音声毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの識別情報Dを記憶する。提供指示部514は、音声解析部518が解析した発音内容の案内音声に対応する識別情報Dを記憶部52から検索し、当該識別情報Dと案内対象の案内識別情報Gとを含む提供指示Pを通信部53から情報提供装置16に送信する。第4実施形態における他の構成や動作は第1実施形態と同様である。
【0062】
以上の説明から理解される通り、第4実施形態においては、管理者HBが発音した案内音声を放音部34が放音する動作と、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供指示Pを管理端末14が送信する動作とが、相互に連動して実行される。すなわち、放音部34による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供指示Pの生成が順次に実行される。したがって、第1実施形態と同様に、案内対象の各案内音声に関連するコンテンツCを当該案内音声の放音に連動して移動端末20にて再生させることが可能である。
【0063】
なお、
図11では、音声信号Vの解析で特定される発音内容に応じて提供指示部514が識別情報Dを選択したが、管理者HBが発音した案内音声を音声案内装置12の放音部34から放音する一方、第3実施形態と同様に、管理者HBが操作部54に対する操作で選択した案内音声に対応する識別情報Dを提供指示部514が選択することも可能である。
【0064】
<第5実施形態>
第5実施形態の情報提供システム100は、
図11に例示した第4実施形態と同様の構成である。すなわち、第5実施形態の音声案内装置12は、第4実施形態と同様に、管理者HBが発音した案内音声の収音で音響信号Sを生成する収音部36と、音響信号Sに応じた案内音声を放音する放音部34とを具備する。
【0065】
第5実施形態の管理端末14は、第4実施形態と同様に収音部56と音声解析部518とを具備する。音声解析部518は、収音部56が生成した音声信号Vに対する音声認識で発音内容を解析し、当該発音内容を示す文字列をコンテンツCとして生成する。提供指示部514は、音声解析部518が生成したコンテンツCと案内対象の案内識別情報Gとを含む提供指示Pを通信部53から情報提供装置16に送信する。
【0066】
情報提供装置16の情報配信部724は、管理端末14から受信した提供指示Pで指定された案内識別情報Gについて登録情報Eに登録された各移動端末20(すなわち当該案内対象について登録されたコンテンツCの配信対象)に対して提供指示P内のコンテンツCを送信する。すなわち、管理者HBが発音した案内音声の発音内容を表現した文字列のコンテンツCが車輌M内の各移動端末20に提供される。なお、案内音声の発音内容の文字列を編集(例えば管理者HBによる修正)または翻訳した文字列をコンテンツCとして各移動端末20に提供することも可能である。
【0067】
以上の説明から理解される通り、第5実施形態では、管理者HBが発音した案内音声を放音部34が放音する動作と、当該案内音声の発音内容を示すコンテンツCの提供指示Pを管理端末14が送信する動作とが、相互に連動して実行される。すなわち、放音部34による案内音声の放音毎に、当該案内音声に関連するコンテンツCの提供指示Pが順次に生成される。したがって、第1実施形態と同様に、案内対象の各案内音声に関連するコンテンツCを当該案内音声の放音に連動して移動端末20にて再生させることが可能である。第5実施形態では、情報提供装置16の記憶部74に複数のコンテンツCを事前に記憶する必要がないという利点もある。ただし、管理端末14から順次に送信されるコンテンツCと記憶部74に事前に記憶されたコンテンツCとを併用することも可能である。
【0068】
<第6実施形態>
図12は、第6実施形態における移動端末20の構成図である。
図12から理解される通り、第6実施形態の移動端末20は、第1実施形態の撮像部66を無線受信部67に置換した構成である。
【0069】
第6実施形態では車輌M内に無線送信部300が設置される。無線送信部300は、案内対象(車輌M)の案内識別情報Gを近距離無線通信により周期的に周囲に送信する通信機器である。車輌M内に位置する移動端末20の無線受信部67は、無線送信部300から送信された案内識別情報Gを受信する。無線送信部300と無線受信部67との間で実行される近距離無線通信の具体的な通信方式は任意であるが、電波や赤外線等の電磁波を伝送媒体とした無線通信や、空気振動たる音響を伝送媒体とした音響通信が好適に採用され得る。
【0070】
第6実施形態における移動端末20の情報取得部614は、無線受信部67が受信した案内識別情報Gを取得し、当該案内識別情報Gと移動端末20の端末識別情報Tとを含む登録要求Rを通信部63から情報提供装置16に送信する。第6実施形態における他の構成や動作は第1実施形態から第5実施形態の何れかと同様である。第6実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、
図12に例示した無線送信部300を管理端末14に搭載することも可能である。
【0071】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0072】
(1)前述の各形態では、情報提供装置16から移動端末20に送信される配信情報QがコンテンツCを包含する構成を例示したが、配信情報Qの内容は以上の例示に限定されない。例えば、移動端末20の記憶部62に複数のコンテンツCを事前に記憶した構成では、提供指示Pで指定されたコンテンツCの識別情報Dを含む(コンテンツC自体は含まない)配信情報Qを情報提供装置16から移動端末20に送信することも可能である。移動端末20の再生制御部612は、配信情報Qに含まれる識別情報Dに対応するコンテンツCを記憶部62から取得して再生部65に再生させる。以上の説明から理解される通り、前述の各形態における配信情報Qは、案内音声に関連するコンテンツCを移動端末20にて再生するための情報として包括的に表現され、配信情報QにコンテンツC自体が包含されるか否かは不問である。
【0073】
(2)端末識別情報Tを登録情報Eから削除(いわばチェックアウト)するための条件は任意である。例えば、第6実施形態の例示のように、無線送信部300との通信(案内識別情報Gの受信)を契機として移動端末20が情報提供装置16に登録要求Rを送信する構成では、無線送信部300からの無線信号が移動端末20に到達しなくなった場合(例えば受信強度が閾値未満まで低下した場合)に、当該移動端末20の端末識別情報Tを登録情報Eから削除することを要求する削除要求を移動端末20から情報提供装置16に送信することも可能である。
【0074】
なお、無線送信部300との間の通信状態を推定する機能を移動端末20に搭載した構成が想定される。通信状況の典型例は、例えば受信強度に応じて推定される無線送信部300からの距離であり、例えば近接(immediate),範囲内(near),範囲外(far),不明(unknown)の何れかの状態が判別される。以上の構成では、通信可能な状態(近接,範囲内,範囲外)が通信不能な不明(unknown)状態に遷移してから所定時間が経過した場合に、移動端末20が情報提供装置16に削除要求を送信することも可能である。
【0075】
(3)前述の各形態では、電車やバス等の交通機関の音声案内を例示したが、情報提供システム100が利用される案内対象は以上の例示に限定されない。例えば、車輌M以外に船舶または航空機等を包含する移動体(移動端末20を収容して移動する設備)の音声案内にも前述の各形態と同様の情報提供システム100が利用される。美術館や博物館等の展示施設、宿泊施設、または商業施設等の各種の施設の音声案内に情報提供システム100を利用することも可能である。各種の施設にて火災や地震等の災害が発生した場合の情報提供(例えば避難の案内や状況の通知)にも情報提供システム100を利用することが可能である。
【0076】
(4)前述の各形態では、音声案内装置12と管理端末14と情報提供装置16とを別体とした構成を例示したが、複数の装置の一体/別体や、各機能と各装置との関係は任意である。例えば、管理端末14および情報提供装置16の一方における一部の機能を他方に搭載した構成や、情報提供装置16および管理端末14の機能を単体の装置に搭載した構成も採用され得る。また、音声案内装置12の機能を管理端末14に搭載する(管理端末14を音声案内装置12として兼用する)ことも可能である。