特許第6881486号(P6881486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881486
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20210524BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20210524BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B65G1/04 551A
   B65G1/00 511E
   B66C15/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-33907(P2019-33907)
(22)【出願日】2019年2月27日
(65)【公開番号】特開2020-138820(P2020-138820A)
(43)【公開日】2020年9月3日
【審査請求日】2020年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−077455(JP,A)
【文献】 特開2004−345756(JP,A)
【文献】 特開2010−126278(JP,A)
【文献】 特開2003−165687(JP,A)
【文献】 特開2017−202885(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157319(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B65G 1/00
H01L 21/677
B66C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送する搬送車であって、
前記搬送物の下方に落下防止部材を進出させることによって前記搬送物の落下を防止する落下防止機構を備え、
前記落下防止機構は、
基端部が水平方向に沿う第1回動軸回りに回動自在に支持され、先端部に前記落下防止部材が設けられた第1回動部材と、
基端部が鉛直方向に沿う第2回動軸回りに回動自在に支持され、先端部に前記第1回動部材が取り付けられた第2回動部材と、を有する搬送車。
【請求項2】
前記落下防止機構は、前記第2回動部材に設けられたストッパを有し、
前記第1回動部材は、第1状態と当該第1状態よりも前記第1回動部材の前記先端部が持ち上がる第2状態との間で回動し、
前記落下防止部材は、前記第2状態において前記搬送物の下方に進出し、
前記ストッパは、前記第2状態の前記第1回動部材に力が加わった場合に、当該第1回動部材の回転を規制する、請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記第1回動部材は、前記第1回動軸の軸方向に沿った水平軸を有し、
前記第2回動部材の前記先端部は、鉛直軸と、前記鉛直軸に対して当該鉛直軸の軸方向に沿って摺動可能に取り付けられたスライド部材と、を有し、
前記スライド部材は、前記水平軸に対して当該水平軸の軸方向に沿って摺動可能に取り付けられている、請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項4】
前記スライド部材は、鉛直方向を長手方向とする長孔を有する摺動プレート及び球面滑り軸受を介して、前記水平軸に取り付けられている、請求項3に記載の搬送車。
【請求項5】
前記第1回動部材は、第1状態と当該第1状態よりも前記第1回動部材の前記先端部が持ち上がる第2状態との間で回動し、
前記第2回動部材は、前記第1回動部材が前記第1状態から前記第2状態まで回転された場合、前記第2回動部材の前記先端部が死点を過ぎた位置まで一方向に回転された状態にある、請求項1〜4の何れか一項に記載の搬送車。
【請求項6】
前記第1回動部材は、第1状態と当該第1状態よりも前記第1回動部材の前記先端部が持ち上がる第2状態との間で回動し、
前記落下防止機構は、前記第1回動部材を前記第1状態から前記第2状態へ回転させる方向のモーメントを生じさせる弾性部材を有する、請求項1〜5の何れか一項に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送車に関する技術として、クリーンルーム等の天井付近又は床面よりも高い位置を走行して、半導体ウェハ、レチクル、又は液晶基板等を収容した容器(搬送物)を搬送する天井搬送車が知られている。例えば特許文献1には、FOUPの落下を防止する水平旋回式の落下防止装置(落下防止機構)を備えた天井搬送車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−88332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような搬送車では、例えば重量物等の搬送物を搬送する場合、落下防止機構の強度が不足してしまい、搬送物の落下を確実に防止できないおそれがある。また、上述したような搬送車では、単純な構成が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、単純な構成で搬送物の落下を確実に防止することができる搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る搬送車は、搬送物を搬送する搬送車であって、搬送物の落下を防止する落下防止機構を備え、落下防止機構は、基端部が水平方向に沿う第1回動軸回りに回動自在に支持された第1回動部材と、第1回動部材の先端部に設けられ、搬送物の下方に進出可能な落下防止部材と、基端部が鉛直方向に沿う第2回動軸回りに回動自在に支持され、先端部に第1回動部材が取り付けられた第2回動部材と、を有する。
【0007】
この搬送車では、第1回動部材及び第2回動部材によるトラス構造で落下防止部材を支持することができ、落下防止機構の強度を効率的に高めることができる。よって、例えば重量物等の搬送物を搬送する場合でも、単純な構成で搬送物の落下を確実に防止することが可能となる。
【0008】
本発明に係る搬送車は、落下防止機構は、第2回動部材に設けられたストッパを有し、第1回動部材は、第1状態と当該第1状態よりも第1回動部材の先端部が持ち上がる第2状態との間で回動し、落下防止部材は、第2状態において搬送物の下方に進出し、ストッパは、第2状態の第1回動部材に力が加わった場合に、当該第1回動部材の回転を規制してもよい。この構成では、落下防止部材が搬送物の下方に進出している状態において、第1回動部材に力が加わっても、落下防止機構の歪みを抑えることができる。搬送物の落下をより確実に防止することが可能となる。
【0009】
本発明に係る搬送車では、第1回動部材は、第1回動軸の軸方向に沿った水平軸を有し、第2回動部材の先端部は、鉛直軸と、鉛直軸に対して当該鉛直軸の軸方向に沿って摺動可能に取り付けられたスライド部材と、を有し、スライド部材は、水平軸に対して当該水平軸の軸方向に沿って摺動可能に取り付けられていてもよい。この構成では、第2回動部材を回動することで、スライド部材を水平軸及び鉛直軸に沿って摺動させ、それに伴って第1回動部材を回動させて、落下防止部材をスムーズに進退させることができる。
【0010】
本発明に係る搬送車では、スライド部材は、鉛直方向を長手方向とする長孔を有する摺動プレート及び球面滑り軸受を介して、水平軸に取り付けられていてもよい。この構成では、水平軸の角度及び位置のばらつきを吸収することができる。
【0011】
本発明に係る搬送車では、第1回動部材は、第1状態と当該第1状態よりも第1回動部材の先端部が持ち上がる第2状態との間で回動し、第2回動部材は、第1回動部材が第1状態から第2状態まで回転された場合、第2回動部材の先端部が死点を過ぎた位置まで一方向に回転された状態にあってもよい。これにより、第2状態では、意図しない外力が加わっても、第2回動部材は当該一方向と反対の他方向に回転し難くなり、第1回動部材が意図せずに回転してしまうのを抑制することができる。
【0012】
本発明に係る搬送車では、第1回動部材は、第1状態と当該第1状態よりも第1回動部材の先端部が持ち上がる第2状態との間で回動し、落下防止機構は、第1回動部材を第1状態から第2状態へ回転させる方向のモーメントを生じさせる弾性部材を有していてもよい。この構成では、第1回動部材を第1状態から第2状態へ回転させる際の駆動力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、単純な構成で搬送物の落下を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る天井搬送車における落下防止機構が開時の正面図である。
図2図2は、図1の天井搬送車における落下防止機構が閉時の正面図である。
図3図3は、図1の落下防止機構を示す斜視図である。
図4図4は、図1の落下防止機構を示す斜視図である。
図5図5は、図1の落下防止機構を示す斜視図である。
図6図6は、図1の落下防止機構を示す平断面図である。
図7図7は、図4のスライド部材を示す斜視図である。
図8図8は、図3のねじりばねを示す斜視図である。
図9図9は、図1の天井搬送車における落下防止機構の第2回動部材を閉方向に回転したときの斜視図である。
図10図10は、図1の天井搬送車における落下防止機構の第2回動部材を閉方向に回転したときの平断面図である。
図11図11は、図9の天井搬送車における落下防止機構の第2回動部材を閉方向に回転したときの斜視図である。
図12図12は、図9の天井搬送車における落下防止機構の第2回動部材を閉方向に回転したときの平断面図である。
図13図13は、図2の落下防止機構を示す斜視図である。
図14図14は、図2の落下防止機構を示す斜視図である。
図15図15は、図2の落下防止機構を示す平断面図である。
図16図16(a)は、図2の落下防止機構のストッパをモデル化して示す図である。図16(b)は、図2の落下防止機構のストッパをモデル化して示す図である。
図17図17(a)は、球面滑り軸受けの作用を説明する概略図である。図17(b)は、摺動プレートの作用を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示される天井搬送車(搬送車)1は、クリーンルームの天井等、床面より高い位置に設けられる走行レール2に沿って走行する。天井搬送車1は、例えば保管設備と所定のロードポートとの間で、搬送物としてのカセット90を搬送する。カセット90には、例えば、複数枚のレチクル等が収容される。カセット90は、小型重量物であるトレイカセット又はマガジンカセットを構成する。カセット90は、天井搬送車1に保持されるフランジ95を有している。
【0017】
以下の説明では、説明の便宜のため、図1における左右方向(X方向)を天井搬送車1の前後方向(走行方向)とする。図1における上下方向を天井搬送車1の鉛直方向(Z方向)とする。図1における奥行方向を天井搬送車1の幅方向(Y方向)とする。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する。
【0018】
図1に示されるように、天井搬送車1は、走行駆動部3と、水平駆動部5と、回転駆動部6と、昇降駆動部7と、昇降装置10と、保持装置11と、落下防止機構50と、コントローラ80と、を備えている。天井搬送車1には、水平駆動部5、回転駆動部6、昇降駆動部7、昇降装置10及び保持装置11を前後方向から覆うように一対の前後フレーム8,8が設けられている。一対の前後フレーム8,8は、昇降装置10が上昇端まで上昇した状態において保持装置11の下方に、カセット90が収容される空間としての容器収容部4を形成している。
【0019】
走行駆動部3は、天井搬送車1を走行レール2に沿って移動させる。走行駆動部3は、走行レール2内に配置されている。走行駆動部3は、走行レール2を走行するローラ(図示しない)を駆動させる。走行駆動部3の下部には、軸3Aを介して水平駆動部5が接続されている。水平駆動部5は、回転駆動部6、昇降駆動部7及び昇降装置10を水平面内で走行レール2の延在方向に直交するY軸方向に移動させる。回転駆動部6は、水平面内で昇降駆動部7及び昇降装置10を回転させる。昇降駆動部7は、四本のベルト9の巻き上げ及び繰り出しにより昇降装置10を昇降させる。なお、走行駆動部3は天井搬送車1に推進力を発生させるリニアモータ等で構成してもよい。また、昇降駆動部7におけるベルト9は、ワイヤ及びロープ等、適宜の吊持部材を用いてもよい。
【0020】
昇降装置10は、昇降駆動部7によって昇降可能に設けられており、天井搬送車1における昇降台として機能している。保持装置11は、カセット90を保持する。保持装置11は、L字状である一対のアーム12,12と、各アーム12,12に固定されたハンド13,13と、一対のアーム12,12を開閉させる開閉機構15と、を備えている。
【0021】
一対のアーム12,12は、開閉機構15に接続されている。開閉機構15は、一対のアーム12,12を、互いに近接する方向及び互いに離間する方向に移動させる。開閉機構15の動作により、一対のアーム12,12は、前後方向に進退する。これにより、アーム12,12に固定された一対のハンド13,13が開閉する。本実施形態では、一対のハンド13,13が開状態のときに、ハンド13の保持面がフランジ95の下面の高さより下方となるように、保持装置11(昇降装置10)の高さ位置が調整される。そして、この状態で一対のハンド13,13が閉状態となることで、ハンド13,13の保持面がフランジ95の下面の下方へ進出し、この状態で昇降装置10を上昇させることにより、一対のハンド13,13によってフランジ95が保持され、カセット90の支持が行われる。
【0022】
落下防止機構50は、一対の前後フレーム8,8のそれぞれに設けられている。落下防止機構50は、容器収容部4にて保持装置11によって保持されたカセット90の落下を、落下防止部材52をカセット90の下方に進出させることによって防止する。以下、落下防止機構50について詳説する。
【0023】
落下防止機構50は、図3図6に示されるように、第1回動部材51、落下防止部材52、第2回動部材53、蓋落下防止部材20、及び、駆動機構30を有する。なお、以下では、一対の前後フレーム8,8のうち一方の前後フレーム8に設けられた落下防止機構50のみを説明し、他方の前後フレーム8に設けられた落下防止機構50については、同様な構成のために説明を省略する。
【0024】
第1回動部材51は、長尺状の部材である。第1回動部材51の基端部は、前後フレーム8に固定された第1回動軸54に回動自在に取り付けられ、第1回動軸54回りに回動自在に支持されている。回動自在とは、回転方向における双方向に回転自在であることを意味する。第1回動軸54は、Y方向(水平方向)に沿って延びる軸体である。第1回動軸54は、Y方向における前後フレーム8の一端部から他端部まで延在している。第1回動軸54は、前後フレーム8のカセット90側(以下、単に「内側」ともいう)の面にブラケット55を介して固定されている。
【0025】
第1回動部材51は、Y方向における前後フレーム8の一端部と他端部とのそれぞれに配置されている。第1回動部材51は、水平軸56を有する。水平軸56は、Y方向に沿って延びる軸体である。水平軸56は、一方の第1回動部材51の先端部と他方の第1回動部材51の先端部との間に、これらを連結するように設けられている。
【0026】
このような第1回動部材51は、開状態(第1状態)と開状態(第2状態)との間で回動する。開状態の第1回動部材51は、Z方向に沿って真っすぐ延びる姿勢で第1回動軸54に支持される(図1参照)。閉状態の第1回動部材51は、開状態よりも第1回動部材51の先端部が持ち上がる状態であって、Z方向及びX方向に対して傾斜して延びる姿勢で第1回動軸54に支持される(図2参照)。
【0027】
落下防止部材52は、第1回動部材51の先端部の内側の面に設けられている。落下防止部材52は、屈曲された板状を呈する。落下防止部材52の基端側は、一対の第1回動部材51の先端部に架け渡されるように固定されている。図示する例では、落下防止部材52は、Y方向から見て、基端側において第1回動部材51に沿って延びた後、カセット90側と反対側(以下、単に「外側」ともいう)へ屈曲し、内側へ90°屈曲し、他端が外側へ更に折り返されている。落下防止部材52には、抜き孔52aが形成され、必要十分な剛性を確保しつつ軽量化が図れている。
【0028】
落下防止部材52は、第1回動部材51を開状態へ回転させた状態において、その先端側がカセット90の下方から退出する(図1参照)。落下防止部材52は、第1回動部材51を閉状態へ回転させた状態において、その先端側がカセット90の下方に進出する(図2参照)。つまり、落下防止部材52は、カセット90の下方へ進出(オーバーハング)可能に構成されている。
【0029】
第2回動部材53は、長尺状で且つZ方向を厚さ方向とする板状の部材である。第2回動部材53の基端部は、Z方向に沿う後述の第2回動軸33aに一体的に接続されており、第2回動軸33a回りに回動自在に支持されている。第2回動部材53の基端部は、前後フレーム8の内部に収容されている。
【0030】
第2回動部材53の少なくとも先端部は、前後フレーム8のスリット8aを介して露出している(前後フレーム8の内から外へ突き出ている)。第2回動部材53の先端部には、第1回動部材51が取り付けられている。第2回動部材53の先端部は、鉛直軸57、スライド部材58及びストッパ59を有する。
【0031】
鉛直軸57は、Z方向に沿って延びる軸体である。鉛直軸57は、第2回動部材53の先端に立設されている。スライド部材58は、鉛直軸57に対してZ方向に摺動可能に取り付けられている。また、スライド部材58は、第1回動部材51の水平軸56に対してY方向に沿って摺動可能に取り付けられている。ここでのスライド部材58は、Z方向を長手方向とする長孔LHを有する摺動プレート58A及び球面滑り軸受58Bを介して、水平軸56に取り付けられている。
【0032】
第2回動部材53が回転方向の一方向(閉方向)又は他方向(開方向)に回転した場合、スライド部材58が水平軸56に沿ってY方向に移動し、スライド部材58のX方向の位置が変化する。これに応じて、第1回動部材51の先端側が持ち上がる又は降下するように当該第1回動部材51が回転すると共に、スライド部材58が鉛直軸57に沿ってZ方向に移動する。これにより、第1回動部材51が閉状態と開状態との間で(落下防止機構50が閉時と開時との間で)切り替わることとなる(詳しくは、後述)。
【0033】
ストッパ59は、第2回動部材53に設けられている。ストッパ59は、閉状態の第1回動部材51に力が加わった場合に当該第1回動部材51の回転を規制する。例えばストッパ59は、閉状態の第1回動部材51に開状態側へ回転させようとする力が加わった場合、当該第1回動部材51の開状態側への回転を規制する。ストッパ59は、板状部材59A及び当接部59Bを有する。板状部材59Aは、第2回動部材53に立設されている。板状部材59Aの一端側は、鉛直軸57の上端部を支持する。当接部59Bは、板状部材59Aの他端側の端部に設けられている。当接部59Bは、第1回動部材51が閉状態の場合に、前後フレーム8の内側の面に対して当接可能である。このようなストッパ59は、第1回動部材51が開状態の場合には、板状部材59AがY方向に沿った状態となる一方、第1回動部材が閉状態の場合には、板状部材59AがX方向に沿った状態となり、前後フレーム8の内側の面に対して当接部59BがX方向に対向する。
【0034】
第2回動部材53は、第1係止部34aと第2係止部34bとを有している。第2回動部材53が閉方向に回転し、第2回動部材53の基端部の周囲に設けられたストッパ39Aに第1係止部34aが係止した場合、第2回動部材53のそれ以上の閉方向への回転が規制される(図14参照)。第2回動部材53が開方向に回転し、ストッパ39Aに第2係止部34bが係止した場合、第2回動部材53のそれ以上の開方向への回転が規制される(図4参照)。
【0035】
第2回動部材53は、第1回動部材51が閉状態の場合、第2回動部材53の先端部がX方向における死点を過ぎた位置に達するまで閉方向に回転された状態にある(図15参照)。つまり、第2回動部材53の先端部に設けられた鉛直軸57のX方向位置は、第2回動部材53を閉方向に回転すると、カセット90側へ移動して死点(最もカセット90に接近する点)に達し、カセット90側と反対側へ戻った後に停止する。「死点」は、上死点又は思案点とも称される。
【0036】
蓋落下防止部材20は、容器収容部4に保持されたカセット90から外れた蓋の落下を防止する部材である。蓋落下防止部材20は、屈曲された板状を呈する。蓋落下防止部材20は、第2回動部材53の回転に伴って進出位置と退避位置との間で可動する。蓋落下防止部材20は、下方支持部23及び正面支持部21を有する。正面支持部21は、進出位置においてカセット90の蓋の少なくとも一部に対向するように配置され、退避位置においてカセット90の蓋の正面から退避される。
【0037】
駆動機構30は、前後フレーム8に収容されている。駆動機構30は、駆動部31と、第2回動軸33aと、第1リンク部35と、第2リンク部36と、第3リンク部38と、を有する。駆動機構30は、前後フレーム8を構成するフレームFに固定されている。駆動機構30は、駆動部31による回転運動を、落下防止機構50の開閉動作に変換する。
【0038】
駆動部31は、例えばステッピングモータである。駆動部31は、コントローラ80によって制御される。駆動部31は、第2回動軸33aを双方向に回転駆動し、第2回動部材53を回動させる。第2回動軸33aは、Z方向(鉛直方向)に沿って延びる軸体である。第1リンク部35は、Y軸方向に沿って延在する板状部材である。第1リンク部35の一端は、第2回動部材53の先端部に接続されている。第1リンク部35の他端は、第2リンク部36の先端部に接続されている。
【0039】
第2リンク部36の基端部は、Z軸方向に沿う回動軸36aに一体的に接続されており、回動軸36a回りに回動自在に支持されている。第2リンク部36は、第2回動部材53に第1リンク部35を介して連結されており、第2回動部材53の回転に伴って回転する。
【0040】
第3リンク部38の一端は、第2リンク部36における回動軸36aと偏心した位置に設けられた軸37に接続されている。第3リンク部38の他端は、蓋落下防止部材20の下方支持部23に設けられた取付部27に接続されている。下方支持部23において正面支持部21が設けられる端部とは反対側の基端部23aは、Z軸方向に延在する軸回りに回動可能にフレームFに取り付けられている。これにより、下方支持部23は、基端部23aを回動軸として回動可能になる。下方支持部23は、第2リンク部36に第3リンク部38を介して連結されており、第2リンク部36の回転に伴って回転する。これにより、第2回動部材53の回転に伴って第2リンク部36が回転すると、蓋落下防止部材20が退避位置と進出位置との間で動作する。
【0041】
コントローラ80(図1参照)は、天井搬送車1における各部を制御する。コントローラ80は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を有している。コントローラ80では、CPU、RAM及びROM等のハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとが協働することによって、各種制御を実行する。
【0042】
図8に示されるように、落下防止機構50は、ねじりばねNBを有する。ねじりばねNBは、第1回動部材51に対して開状態から閉状態へ回転させる方向のモーメントを生じさせる弾性部材である。ねじりばねNBは、第1回動軸54と第1回動部材51とに取り付けられている。
【0043】
次に、落下防止機構50の動作について説明する。以下の説明では、落下防止機構50の開時から閉時への動作(つまり、第1回動部材51が開状態から閉状態へ移行する際の落下防止機構50の動作)を例示する。
【0044】
図1及び図3図6に示されるように、第1回動部材51が開状態の場合には、第1回動部材51はZ方向に沿って延在すると共に第2回動部材53はY方向に沿って延在しており、落下防止機構50は畳まれた状態にある。このとき、落下防止部材52は、カセット90の下方から退出した状態となる。第1回動部材51の第1係止部34aは、ストッパ39Aに係止される。ストッパ59は、前後フレーム8と第1回動部材51との間でY方向に沿って延在する。スライド部材58は、水平軸56の一端側で鉛直軸57の下方側に位置する。蓋落下防止部材20は退避位置に位置する。
【0045】
図9及び図10に示されるように、駆動部31の駆動によって第2回動部材53が閉方向に回転すると、その回転に伴いスライド部材58が水平軸56に沿って他端側へ向かってY方向に摺動し、スライド部材58がX方向の内側(カセット90側)に移動する。これに応じて、第1回動部材51の先端側が持ち上がるように当該第1回動部材51が回転すると共に、スライド部材58が鉛直軸57に沿って上方に摺動する。落下防止部材52は、内側に迫り出す。ストッパ59は、前後フレーム8と第1回動部材51との間でY方向に対して傾斜して延在する。蓋落下防止部材20は退避位置から進入位置へ向かって可変する。
【0046】
図11及び図12に示されるように、引き続き、駆動部31の駆動によって第2回動部材53が閉方向に回転すると、その回転に伴いスライド部材58が水平軸56に沿って他端側へ向かってY方向に更に摺動し、スライド部材58がX方向の内側に更に移動する。これに応じて、第1回動部材51の先端側が更に持ち上がるように当該第1回動部材51が回転すると共に、スライド部材58が鉛直軸57に沿って上方に更に摺動する。落下防止部材52は、更に内側に迫り出す。ストッパ59は、前後フレーム8と第1回動部材51との間でX方向に対して傾斜して延在する。蓋落下防止部材20は退避位置から進入位置へ向かって更に可変する。
【0047】
そして、図2及び図13図15に示されるように、駆動部31の駆動によって第2回動部材53が閉方向に回転し、第1回動部材51が閉状態に達すると、第1回動部材51が閉状態となる。第1回動部材51が閉状態の場合には、第1回動部材51はZ方向及びX方向に傾斜して延在すると共に第2回動部材53はX方向に沿って延在し、落下防止機構50は展開された状態にある。
【0048】
このとき、落下防止部材52は、内側へと大きく迫り出し、カセット90の下方に十分に進出する。第1回動部材51の第2係止部34bは、ストッパ39Aに係止される。ストッパ59は、前後フレーム8と第1回動部材51との間でX方向に延在し、前後フレーム8の内側の面に対して当接部59BがX方向に対向する。スライド部材58は、水平軸56の中央部で鉛直軸57の上方側に位置する。鉛直軸57が死点を過ぎた位置に位置するまで、第2回動部材53が閉方向に回転される。蓋落下防止部材20は進出位置に位置する。なお、第1回動部材51が閉状態から開状態となるまでの動作では、上述した動作と逆に進展する。
【0049】
以上、天井搬送車1では、第1回動部材51及び第2回動部材53によるトラス構造で落下防止部材52を支持することができ、落下防止機構50の強度を効率的に高めることができる。よって、例えば重量物のカセット90を搬送する場合でも、単純な構成でカセット90の落下を確実に防止することが可能となる。落下防止部材52がカセット90の下方に大きく迫り出すことができ、落下防止部材52のオーバーハング量が不足する可能性を低減することができる。例えば小型ひいては小型重量物のカセット90を搬送する場合でも、カセット90の落下を確実に防止することが可能となる。
【0050】
天井搬送車1は、第2回動部材53に設けられたストッパ59を備える。ストッパ59によれば、閉状態(落下防止部材52がカセット90の下方に進出している状態)の第1回動部材51に力が加わった場合に、当該第1回動部材51の回転を規制する。例えば図16にモデル化して示すように、閉状態の第1回動部材51を開状態側へ回転させようとする力が加わった場合に、ストッパ59の当接部59Bが前後フレーム8に当接し、当該第1回動部材51の開状態側への回転が規制される。これにより、閉状態の第1回動部材51に力が加わっても、落下防止機構50の歪みを抑えることができる。カセット90の落下をより確実に防止することが可能となる。
【0051】
天井搬送車1では、第1回動部材51は水平軸56を有する。第2回動部材53の先端部は、鉛直軸57と、水平軸56及び鉛直軸57に対して摺動可能なスライド部材58とを有する。この構成では、第2回動部材53を回動することでスライド部材58を水平軸56及び鉛直軸57に沿って摺動させ、それに伴って第1回動部材51を回動させて、落下防止部材52をスムーズに進退させることができる。第1回動部材51が開状態のときには落下防止機構50をコンパクトに構成することができる。
【0052】
天井搬送車1では、スライド部材58は、摺動プレート58A及び球面滑り軸受58Bを介して水平軸56に取り付けられている。この構成では、図17(a)に示されるように、球面滑り軸受58Bによれば、水平軸56の鉛直軸57に対する角度(傾き)のばらつきを吸収することができる。図17(b)に示されるように、摺動プレート58Aによれば、水平軸56のZ方向における位置のばらつきを吸収することができる。
【0053】
天井搬送車1では、第2回動部材53は、落下防止部材52がカセット90の下方に進出している場合(第1回動部材51を閉状態へ回転させた場合)、第2回動部材53の先端部が第X方向における死点を過ぎた位置まで閉方向に回転された状態にある。これにより、落下防止部材52がカセット90の下方に進出している閉状態では、意図しない外力が加わっても、第2回動部材53は開方向に回転し難くなる。閉状態の第1回動部材51が開状態側に意図せずに回転ことを抑制することが可能となる。
【0054】
天井搬送車1は、第1回動部材51を開状態から閉状態へ回転させる方向のモーメントを生じさせるねじりばねNBを有する。この構成では、第1回動部材51を閉状態へ回転させる力が当該第1回動部材51に作用することになる。よって、第1回動部材51を閉状態から開状態へ回転させる際の駆動力を低減させることができる。なお、ねじりばねNBに代えてもしくは加えて、第1回動部材51を開状態から閉状態へ回転させる方向のモーメントを第1回動部材51に生じさせ得る種々の弾性部材を有していてもよい。また、第1回動部材51を開状態から閉状態へ回転させる際の抵抗(摩擦力)が充分小さい、あるいは第1回動部材51を閉状態から開状態へ回転させる際の駆動力が充分大きい場合には、ねじりばねNB等の弾性部材による駆動力の補助はなくてもよい。
【0055】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
上記実施形態では、駆動部31の駆動力によって第1回動部材51及び第2回動部材53の回動を実現したが、これに代えて、作業者等による手動で第1回動部材51及び第2回動部材53の回動を実現してもよい。上記実施形態において、固定は、ねじ等の締結具により実現されていてもよいし、その他の種々の公知手法により実現されていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、第1回動部材51を軸体としての第1回動軸54によって回動自在に支持し、第2回動部材53を軸体としての第2回動軸33aによって回動自在に支持したが、支持する構造によっては、第1回動軸及び第2回動軸の少なくとも何れかが仮想軸である場合もある。
【0058】
上記実施形態では、水平軸56、鉛直軸57及びスライド部材58を利用して第2回動部材53の先端部を第1回動部材51に取り付けたが、当該取り付けの構成としては、種々の周知構成を採用してもよい。上記実施形態では、摺動プレート58A及び球面滑り軸受58Bを介してスライド部材58を水平軸56に取り付けたが、場合によっては、摺動プレート58A及び球面滑り軸受58Bの少なくとも何れかを設けなくてもよい。
【0059】
上記実施形態では、前後フレーム8の内部にコントローラ80が設けられている例を挙げて説明したが、コントローラ80に代えてもしくは加えて、ネットワーク等を介して天井搬送車1を制御する制御装置(制御部)が天井搬送車1とは別の箇所に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…天井搬送車(搬送車)、33a…第2回動軸、50…落下防止機構、51…第1回動部材、52…落下防止部材、53…第2回動部材、54…第1回動軸、56…水平軸、57…鉛直軸、58…スライド部材、58A…摺動プレート、58B…球面滑り軸受、59…ストッパ、90…カセット(搬送物)、LH…長孔、NB…ねじりばね(弾性部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
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