(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(実施の形態1)
1.構成
図1は、実施の形態1におけるエスカレータの概略側面図である。エスカレータ1は、乗客コンベアの一例である。
【0011】
エスカレータ1は、エスカレータ本体10、モータ20、インバータ30、制御装置40などを有する。
【0012】
エスカレータ本体10は、建築物の2つの階床F1、F2間に架け渡された状態で設置される。エスカレータ本体10は、無端状に連結された複数の踏段11と、左右一対の無端状のハンドレール12と、モータ20の動力を踏段11及びハンドレール12に伝達する動力伝達機構(不図示)と、乗り口5及び降り口6の床面をそれぞれ構成するフロアプレート19等を有する。複数の踏段11及びハンドレール12は、インバータ30から供給される電力により駆動されるモータ20の動力により循環駆動される。本実施の形態のエスカレータ1では、階床F1に乗り口5が設けられ、階床F2に降り口6が設けられているものとして説明するが、本発明では階床F2に乗り口が設けられ、階床F1に降り口6が設けられていてもよい。
【0013】
制御装置40は、インバータ30の動作を制御することで、モータ20の駆動を制御し、もって、踏段11の駆動、つまりエスカレータ1の運転を制御する。
【0014】
エスカレータ1は、さらに、スピーカ51と、照明部材60とを有する。
【0015】
スピーカ51は、ハンドレール12の循環移動を案内する欄干18下方のスカートガード15に、乗り口5の近傍で配置されている。スピーカ51は、踏段11に乗り込む利用者に、乗り込みの際の注意に関するメッセージを音声により報知する。
【0016】
照明部材60は、欄干18に、乗り口5と降り口6との間で、欄干18の長手方向に沿うように延設されている。照明部材60は、下部照明部61と、中間照明部62と、上部照明部63とを有する。各照明部61、62、63は、例えば、棒状に延びる部材で構成され、その長手方向の全体から照明光を照射する。各照明部61、62、63は、少なくとも1個のLEDと、LEDから出射される照明光を各照明部61、62、63の長手方向に沿って拡散させる棒状の光拡散部材と、制御装置40から出力される照明制御信号が示す指令内容に応じてLEDの点灯/消灯/点滅を制御するコントローラとを有する。なお、これは一例であり、各照明部61、62、63は、棒状の基材と、基材上にその長手方向に沿って列状に並べられた複数のLEDと、制御装置40から出力される照明制御信号が示す指令内容に応じてこれらのLEDの点灯/消灯/点滅を制御するコントローラとを有するものなどであってもよい。
【0017】
図2は、実施の形態1におけるエスカレータ1の制御システムの電気的構成を示したブロック図である。
【0018】
制御装置40は、インバータ30からトルク状態信号MO1、MO2を入力し、入力したトルク状態信号MO1、MO2に基づいてインバータ制御信号を生成してインバータ30に出力する。
【0019】
インバータ30は、制御装置40からインバータ制御信号を入力し、入力したインバータ制御信号に基づいて、モータ20に交流電力を供給する。具体的に、インバータ30は、インバータ制御信号に基づいて、モータ20への交流電力の供給及び停止を行うとともに、モータ20に供給する交流電力の周波数を変更する。また、インバータ30は、現在のモータ20のトルク状態を示すトルク状態信号MO1、MO2を制御装置40に出力する。トルク状態信号MO1、MO2信号については後に詳述する。
【0020】
モータ20は、インバータ30から供給される交流電力の周波数に応じた回転数で動作する。これにより、踏段11の駆動速度が、インバータ30から供給される交流電力の周波数に応じて変更される。モータ20は、例えば誘導電動機により構成される。
【0021】
制御装置40は、下部照明部61に下部照明制御信号を出力し、中間照明部62に中間照明制御信号を出力し、上部照明部63に上部照明制御信号を出力する。各照明制御信号は、対応する照明部を、点灯状態、消灯状態、点滅状態のうちのいずれの状態に制御するかを指示する点灯指令、消灯指令、または点滅指令を含む。下部照明部61、中間照明部62、上部照明部63の各コントローラは、制御装置40から出力される下部照明制御信号、中間照明制御信号、上部照明制御信号に含まれる点灯指令、消灯指令、または点滅指令に応じて、下部照明部61(のLED)、中間照明部62(のLED)、上部照明部63(のLED)を、点灯状態、消灯状態、または点滅状態に制御する。
【0022】
制御装置40は、エスカレータ利用状態が所定の混雑状態にあるときに、スピーカ51に注意喚起の音声を報知させるための音声信号を出力する。
【0023】
図3は、実施の形態1におけるエスカレータ1の制御装置40の電気的構成を示したブロック図である。
【0024】
制御装置40は、制御部41と記憶部42と入出力インタフェース43とを有する。制御装置40は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を利用して構成される。
【0025】
記憶部42は、例えばフラッシュメモリにより構成され、プログラムや種々のデータを格納している。プログラムには、本実施の形態の制御装置40における各種機能を実現するためのプログラムが含まれている。
【0026】
制御部41は、例えばCPU、MPUなどにより構成され、記憶部42からプログラム及びデータを読み出し、読み出したプログラム及びデータに基づく演算処理を行う。これにより、制御装置40における各種の機能が実現される。
【0027】
入出力インタフェース43は、制御装置40に接続される各種装置との間で信号を入出力するためのインタフェースであり、信号形式の変換などを行う。
【0028】
なお、制御装置40は、汎用的なコンピュータを利用して構成されてもよい。また、制御装置40は、電子回路やリレーシーケンス回路などのハードウェアのみにより構成されてもよい。
【0029】
図4は、実施の形態1におけるエスカレータ1のインバータ30の電気的構成を示したブロック図である。
【0030】
インバータ30は、コントローラ31、電力変換部32、出力電流検出器33、及び操作部34を有する。コントローラ31は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)などにより構成され、制御部、記憶部、及び入出力インタフェースを有する。電力変換部32は、トランジスタなどのスイッチング素子を備え、商用電力などの交流電力を入力し、制御部からの指令に応じてスイッチング素子を動作させることにより、交流電力の周波数を変換して出力する。出力電流検出器33は、電力変換部32から出力される交流電力の出力電流値を示す電流値信号をコントローラ31に出力する。操作部34は、インバータ30の動作などに関する種々のパラメータの設定操作を受け付ける。コントローラ31は、出力電流検出器33から出力される電流値信号が示す出力電流値と、モータ20の特性(モータ定格出力等)とに基づいて、運転方向に応じたモータ20の出力トルクの現在値を推定する。出力トルクの現在値は、モータの出力トルクに関する公知の演算式などを利用して、コントローラ31が演算により推定してもよいし、コントローラ31の記憶部などに、出力電流値と出力トルクとの関係を運転方向毎に規定したテーブルを予め記憶させておき、当該テーブルを参照して出力トルクを推定してもよい。モータ20の特性については、例えば予め操作部34を用いて設定し、コントローラ31の記憶部に記憶させておく。
【0031】
図5は、実施の形態1におけるエスカレータ1の乗込率及びエスカレータ利用状態の推定方法を説明した図である。
【0032】
モータ20の出力トルクと乗込率との間には、
図5に示すような関係がある。すなわち、UP運転(上昇運転)においては、乗込率が高いほど出力トルクが大きくなる。これに対し、DOWN運転(下降運転)においては、乗込率が高いほど出力トルクが小さくなる。この関係に基づいて、現在の出力トルクから現在の乗込率を推定することが可能である。本実施の形態では、この関係を利用して、現在の出力トルクから現在の乗込率を推定し、推定した乗込率に応じて踏段11の駆動速度を制御する。なお、乗込率とは、エスカレータ1の踏段11に乗っている全利用者の数を全踏段数で除算した値に100を乗じた値である。
【0033】
より具体的に、インバータ30のコントローラ31は、検出した出力電流値に基づいてモータ20の出力トルクを推定し、推定した出力トルクが属するトルク範囲を特定し、特定したトルク範囲を示す信号を出力する。トルク範囲は、UP運転では、出力トルクがLv0以上でLv1未満の第1範囲と、Lv1以上でLv2未満の第2範囲と、Lv2以上でLv3未満の第3範囲と、Lv3以上の第4範囲とに分類される。なお、Lv0、Lv1、Lv2、Lv3は、Lv0<Lv1<Lv2<Lv3の大小関係を有する。これに対し、DOWN運転では、トルク範囲は、出力トルクがLv0以下でLv4よりも大きい第5範囲と、Lv4以下でLv5よりも大きい第6範囲と、Lv5以下でLv6よりも大きい第7範囲と、Lv6以下の第8範囲とに分類される。なお、Lv0、Lv4、Lv5、Lv6は、Lv0>Lv4>Lv5>Lv6の大小関係を有する。
【0034】
ここで、上記のLv0〜Lv6は、エスカレータ1の利用状況を判断可能なように設定されている。具体的に、上記のLv0は、乗込率0(%)のときつまり利用者が乗っていないとき(踏段11のみを駆動するとき)に出力される出力トルク値に設定され、Lv1、Lv4は、乗込率r1(%)に相当する人数の利用者を輸送する際に出力される出力トルク値に設定され、Lv2、Lv5は、乗込率r2(%)に相当する人数の利用者を輸送する際に出力される出力トルク値に設定され、Lv3、Lv6は、乗込率r3(%)に相当する人数の利用者を輸送する際に出力される出力トルク値に設定される。
【0035】
以下では、r1(%)=10%、r2(%)=46.5%、r3(%)=80%とした例を説明する。乗込率が0(%)以上で10%(r1(%))未満である状態は、エスカレータの利用者が相対的に少ない状態であり、このエスカレータ利用状態を「閑散状態」という。乗込率が10%(r1(%))以上で46.5%(r2(%))未満である状態は、エスカレータの利用者数が中程度の状態であり、このエスカレータ利用状態を「普通状態」という。乗込率が46.5%(r2(%))以上で80%(r3(%))未満である状態は、エスカレータの利用者が相対的に多く、混雑している状態であり、このエスカレータ利用状態を「混雑状態」という。乗込率が80%(r3(%))以上である状態は、エスカレータの利用者が相対的にさらに多く、非常に混雑している状態であり、このエスカレータ利用状態を「過負荷状態」という。
【0036】
ここで、利用者が少ない時間帯では、乗込率が10%以下となることが多い。これに基づいて、「閑散状態」の閾値であるr1(%)を上記のように10%としている。これにより、閑散状態を適切に認識できる。なお、乗込率が10%のときの乗客数は、例えば一般的なビルの隣接する階床間に設けられるエスカレータの場合には2〜3人程度である。
【0037】
コントローラ31は、エスカレータ1の運転中、現在の出力トルク値が属するトルク範囲を示すトルク状態信号MO1、MO2を生成し、制御装置40に出力する。コントローラ31は、出力トルクが第1範囲及び第5範囲にあるとき、トルク状態信号MO1をLOW、トルク状態信号MO2をLOWとし、出力トルクが第2範囲及び第6範囲にあるとき、トルク状態信号MO1をLOW、トルク状態信号MO2をHIGHとし、出力トルクが第3範囲及び第7範囲にあるとき、トルク状態信号MO1をHIGH、トルク状態信号MO2をLOWとし、出力トルクが第4範囲及び第8範囲にあるとき、トルク状態信号MO1をHIGH、トルク状態信号MO2をHIGHとする。
【0038】
なお、コントローラ31は、出力トルク値が第1範囲から第2範囲に遷移し、または第2範囲から第3範囲に遷移し、または第3範囲から第4範囲に遷移し、または第5範囲から第6範囲に遷移し、または第6範囲から第7範囲に遷移し、または第7範囲から第8範囲に遷移した場合、その状態が所定時間(例えば1、2秒程度)継続したことを条件として、遷移後の範囲に対応するトルク状態信号MO1、MO2を出力する。これに対し、コントローラ31は、出力トルク値が第2範囲から第1範囲に遷移し、または第3範囲から第2範囲に遷移し、または第4範囲から第3範囲に遷移し、または第5範囲から第4範囲に遷移し、または第6範囲から第5範囲に遷移し、または第7範囲から第6範囲に遷移し、または第8範囲から第7範囲に遷移した場合には、即座に遷移後の範囲に対応するトルク状態信号MO1、MO2を出力する。
【0039】
制御装置40は、インバータ30から出力されたトルク状態信号MO1がLOWで、トルク状態信号MO2がLOWであるとき、現在のエスカレータ利用状態が「閑散状態」にあると判断し、インバータ30から出力されたトルク状態信号MO1がLOWで、トルク状態信号MO2がHIGHであるとき、現在のエスカレータ利用状態が「普通状態」にあると判断し、インバータ30から出力されたトルク状態信号MO1がHIGHで、トルク状態信号MO2がLOWであるとき、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」にあると判断し、インバータ30から出力されたトルク状態信号MO1がHIGHで、トルク状態信号MO2がHIGHであるとき、現在のエスカレータ利用状態が「過負荷状態」にあると判断する。
【0040】
制御装置40は、上述のように判断した現在のエスカレータ利用状態に基づいて、照明部材60の下部照明部61、中間照明部62、及び上部照明部63の点灯/消灯/点滅を制御したり、利用者に注意喚起のメッセージを報知するための音声をスピーカ51から出力させたりする。以下において詳しく説明する。
【0041】
2.動作
制御装置40は、インバータ30から出力されたトルク状態信号MO1、MO2に基づいて、現在のエスカレータ利用状態を推定し、推定したエスカレータ利用状態に基づいて、照明部材60の下部照明部61、中間照明部62、及び上部照明部63の点灯/消灯/点滅を制御したり、スピーカ51に、利用者への注意喚起のメッセージを報知するための音声を出力させたりする。
【0042】
制御装置40の記憶部42は、注意喚起のための音声に関する音声データを格納している。制御装置40の制御部41は、記憶部42に格納されている音声データに基づいて音声信号を生成してスピーカ51に出力し、スピーカ51から注意喚起のための音声を出力させる。注意喚起のための音声は、例えば「1段空けてお乗りください」というメッセージを有する。
【0043】
図6は、実施の形態1におけるエスカレータの制御装置40による照明部材60の点灯制御を説明したフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定繰り返し時間毎に繰り返し実行される。所定繰り返し時間は、例えば、踏段11の1周時間の整数倍の時間である。整数の値は任意であるが、頻繁に照明部材60の点灯/消灯/点滅状態が切り替わらないようにするために例えば10倍などに設定してもよいし、混雑の程度が頻繁に変わるような場合には、これに追従できるように例えば2倍や3倍などに設定してもよい。例えば、鉄道の駅の通勤時間帯などでは、数分間隔で電車が到着する都度、エスカレータの混雑の程度が変化するが、このような場合、上述の例えば2倍や3倍に設定することが考えられる。また、時間帯によって整数倍の値を変更してもよい。例えば、通勤時間帯では上述の2倍や3倍に設定し、それ以外の時間帯では10倍に設定してもよい。
【0044】
制御装置40は、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」または「過負荷状態」であるか否かを判断する(S11)。「混雑状態」及び「過負荷状態」は、所定の混雑状態の一例である。
【0045】
現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」と「過負荷状態」とのいずれでもない場合(S11でNO)、つまり、現在のエスカレータ利用状態が「閑散状態」または「普通状態」である場合、制御装置40は、下部照明部61、中間照明部62、及び上部照明部63の全てを点灯状態に制御する(S12)。具体的に、制御装置40は、下部照明部61、中間照明部62、及び上部照明部63に、それぞれ点灯指令を含む下部照明制御信号、中間照明制御信号、及び上部照明制御信号を出力する。なお、本フローチャートでの前周期においてステップS11でNOと判断され、照明部材60の下部照明部61、中間照明部62、及び上部照明部63が既に点灯状態にある場合は、そのまま点灯状態を継続させる。
【0046】
これに対し、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」または「過負荷状態」である場合(S11でYES)、制御装置40は、照明部材60の下部照明部61及び上部照明部63については点灯状態に制御する一方、中間照明部62については点滅状態に制御する(S13)。具体的に、制御装置40は、下部照明部61及び上部照明部63に、それぞれ点灯指令を含む下部照明制御信号及び上部照明制御信号を出力する。また、制御装置40は、中間照明部62に、点滅指令を含む中間照明制御信号を出力する。なお、点滅状態における点滅の周期は任意である。点滅の周期が短いほど、乗り込もうとする利用者に点滅を認識させやすいが、既にエスカレータ1に乗っている利用者に違和感を持たせやすい。一例として、1秒点灯と1秒消灯とを繰り返してもよい。
【0047】
制御装置40は、スピーカ51に注意喚起に関する音声信号を出力して、スピーカ51から注意喚起の音声を出力させる(S14)。制御装置40は、上記所定繰り返し時間の間、注意喚起の音声を繰り返し出力させる。
【0048】
3.本実施の形態のエスカレータの作用及び効果
本実施の形態のエスカレータ1の作用及び効果を説明する。エスカレータ1では、運転中、照明部材60の下部照明部61、中間照明部62、及び上部照明部63の点灯/消灯/点滅が制御される。
【0049】
具体的には、現在のエスカレータ利用状態が「閑散状態」または「普通状態」である場合、照明部材60の下部照明部61、中間照明部62、及び上部照明部63の全てが点灯状態に制御される。そのため、乗り口5で踏段11に乗り込む利用者の足元が下部照明部61により適切に照明されるとともに、降り口6で踏段11から降りる利用者の足元が上部照明部63により適切に照明される。したがって、利用者が踏段11に乗り込む際や踏段11から降りる際の安全が適切に確保される。また、中間照明部62により、乗り口5や降り口6だけでなく、エスカレータ1の長手方向中間部分についても照明することができる。これにより、エスカレータ1全体として明るい雰囲気を生成できる。
【0050】
これに対し、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」または「過負荷状態」である場合には、照明部材60の下部照明部61及び上部照明部63は点灯状態で維持されるが、中間照明部62は点滅状態に遷移される。これは、以下の理由による。
【0051】
すなわち、特許文献1のように乗降口付近の照明を点滅させると、乗降口付近の照明が断続的に暗くなり、利用者が乗り降りを行いにくくなる虞がある。これを解消するため、本実施の形態では、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」または「過負荷状態」である場合にも、下部照明部61及び上部照明部63については点灯状態で維持させる。この構成により、「閑散状態」または「普通状態」のときと同様に、乗り口5で踏段11に乗り込む利用者の足元が下部照明部61により適切に照明されるとともに、降り口6で踏段11から降りる利用者の足元が上部照明部63により適切に照明される。そのため、利用者が踏段11に乗り込む際や踏段11から降りる際の安全を適切に確保することができる。
【0052】
これに対し、中間照明部62については、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」または「過負荷状態」である場合には、利用者への注意喚起のために、点滅状態に遷移させる。通常時に点灯状態にある照明が点滅状態になっている場合、利用者はエスカレータ1が非通常の状況にあることを予想できる。したがって、利用者がスピーカ51から出力される注意喚起の音声を聴き取れないほどに、エスカレータ1から離れあるいは多数の利用者による暗騒音が発生しているような状況において、中間照明部62を点滅させることで利用者に注意喚起を行うことができる。なお、中間照明部62による照明光は、乗り口5や降り口6付近を照明する照明光としてあまり寄与しない。そのため、中間照明部62を点滅状態に制御しても乗り口5や降り口6での利用者の乗り降りに対する影響はあまりない。
【0053】
図7は、実施の形態1におけるエスカレータ1による効果の一例を説明した図である。
図7に示すように、中間照明部62は、エスカレータ1の乗り口5と降り口6との間の中間高さ位置にある。したがって、ある利用者Pがエスカレータ1から比較的離れた位置におり、かつ利用者Pの前方に多くの利用者がいる状況でも、利用者Pは中間照明部62を視認できる。そのため、利用者Pは、乗り口5に向かって移動している際に、中間照明部62が点滅中であることを認識できる。したがって、利用者Pは、エスカレータ1の利用に関して注意する必要があることを早期に認識できる。またその結果、同じ建物内の別のエスカレータや、エレベータや、階段などを利用した方がよいことなどを早期に判断できる。これにより、乗り口5付近の混雑の軽減が期待できる。特許文献1では、乗り口付近が混雑しているときには、乗り口付近の照明(LED)を点滅させても、乗り口付近の利用者に阻まれて、乗り口に近づいていく利用者が乗り口の照明(LED)を視認すること自体困難である。その結果、特許文献1では乗り口付近の混雑軽減の効果は得られない。
【0054】
本実施の形態ではさらに、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」または「過負荷状態」である場合、スピーカ51から注意喚起のための音声が出力される。注意喚起のための音声は、「1段空けてお乗りください」などのメッセージを有する。注意喚起のための音声が出力されている際、上述したように中間照明部62が点滅状態にある。そのため、乗り口5に向かって移動中の利用者が注意喚起の音声を注意深く聴くことが期待される。またその結果、利用者が注意喚起の音声にしたがって1段ずつ空けて踏段11に乗り込むことが期待される。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、エスカレータ1では、照明部材60による注意喚起機能と照明機能とを両立できる。また、乗り口5の混雑緩和などの効果も得られる。
【0056】
(実施の形態2)
実施の形態1では、乗客コンベアが所定の混雑状態にないときに、第2照明部が点灯状態に制御される。しかし、乗客コンベアが所定の混雑状態にないときに、第2照明部を、消灯状態に制御してもよい。
【0057】
図8は、実施の形態2におけるエスカレータ1の制御装置40による照明部材60の点灯制御を説明したフローチャートである。
図8のフローチャートでは、実施の形態1の
図6のフローチャートのステップS12に代えて、ステップS12Aが設けられている。
【0058】
本実施の形態では、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」と「過負荷状態」とのいずれでもない場合(S11でNO)、制御装置40は、照明部材60の下部照明部61及び上部照明部63については点灯状態に制御する一方、中間照明部62については消灯状態に制御する(S12A)。具体的には、制御装置40は、下部照明部61及び上部照明部63に、それぞれ点灯指令を含む下部照明制御信号及び上部照明制御信号を出力する。また、制御装置40は、中間照明部62に、消灯指令を含む中間照明制御信号を出力する。それ以外は、実施の形態1と同じである。
【0059】
本実施の形態によれば、現在のエスカレータ利用状態が「混雑状態」と「過負荷状態」とのいずれでもない場合、つまり「閑散状態」または「普通状態」にある場合、中間照明部62が消灯状態に制御されるので、中間照明部62の電力消費がない。したがって、実施の形態1と比較して消費電力が削減されるという省エネの効果が得られる。
【0060】
(実施の形態についてのまとめ)
(1)実施の形態1、2のエスカレータ1(乗客コンベアの一例)は、
無端状に連結され、循環駆動される踏段11と、
踏段11に連動して循環駆動される無端状のハンドレール12と、
ハンドレール12を移動可能に支持する欄干18と、
欄干18に、乗り口5と降り口6との間で、欄干18の長手方向に沿うように延設された照明部材60と、
制御装置40と、を備え、
照明部材60は、
乗り口5付近を照明する下部照明部61(第1照明部の一例)と、
降り口6付近を照明する上部照明部63(第2照明部の一例)と、
乗り口5と降り口6との中間部分を照明する中間照明部62(第3照明部の一例)と、を有し、
制御装置40は、
中間照明部62については、当該エスカレータ1が利用者の多い所定の混雑状態(例えば「混雑状態」及び「過負荷状態」)にあるときに、点滅状態に制御し、
下部照明部61及び上部照明部63については、当該エスカレータ1が所定の混雑状態にあるか否かにかかわらず、点灯状態に制御する。
【0061】
この構成によれば、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるときは、中間照明部62が点滅状態となる。そのため、これからエスカレータ1を利用しようとする利用者や、既に踏段11に乗っている利用者に注意喚起を行うことができる。また、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるか否かにかかわらず、乗り口5付近が下部照明部61により照明され、かつ降り口6付近が上部照明部63により照明される。そのため、利用者が踏段11に乗り込む際や踏段11から降りる際の安全が適切に確保される。したがって、エスカレータ1において、照明部材60による注意喚起機能と照明機能とを両立できる。
【0062】
(2)実施の形態1のエスカレータ1において、
制御装置40は、当該エスカレータ1が所定の混雑状態にないときに、中間照明部62を、点灯状態に制御する。
【0063】
この構成によれば、エスカレータ1が所定の混雑状態にないときに、乗り口5や降り口6だけでなく、エスカレータ1の長手方向中間部分についても明るくすることができる。これにより、エスカレータ1全体として明るい雰囲気を生成できる。
【0064】
(3)実施の形態2のエスカレータ1において、
制御装置40は、当該エスカレータ1が所定の混雑状態にないときに、中間照明部62を、消灯状態に制御する。
【0065】
この構成によれば、当該エスカレータ1が所定の混雑状態にないときに、中間照明部62の電力消費がない。したがって、実施の形態1と比較して消費電力が削減されるという省エネの効果が得られる。
【0066】
(4)実施の形態1、2のエスカレータ1は、
音声を出力するスピーカ51をさらに備え、
制御装置40は、当該エスカレータ1が所定の混雑状態にあるときは、スピーカ51に、利用者への注意喚起のメッセージを報知するための音声を出力させる。
【0067】
この構成によれば、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるときに、注意喚起の音声が出力されることで、注意喚起機能を一層向上させることができる。
【0068】
(5)実施の形態1、2のエスカレータ1において、
踏段11を循環駆動するモータ20と、
モータ20に駆動用の電力を供給するインバータと、をさらに備え、
インバータ30は、
モータ20への出力電流値に基づいてモータ20の出力トルクを推定し、
推定された出力トルクが属するトルク範囲を示すトルク状態信号を出力し、
制御装置40は、インバータ30から出力されるトルク状態信号が示すトルク範囲に基づいて、当該エスカレータ1が所定の混雑状態にあるか否かを判断する。
【0069】
この構成によれば、インバータ30から出力される信号が示すトルク範囲に基づいて、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるか否かを適切に判断できる。
【0070】
(その他の実施の形態)
(A)
前記実施の形態のエスカレータ1は、本発明の乗客コンベアの一例である。本発明において、乗客コンベアは、一の階床において水平あるいは斜めに配置されたいわゆる動く歩道等の乗客コンベアであってもよい。
【0071】
(B)
前記実施の形態では、乗客コンベアが利用者の多い所定の混雑状態にあるか否かを、モータに駆動用の電力を供給するインバータの出力電流値に基づいて推定しているが、本発明ではこれに限られない。例えば、エスカレータの乗り口5付近を撮像装置で撮像し、撮像画像を画像処理することにより時間当たりの利用者数を検出し、検出した利用者数に基づいて所定の混雑状態にあるか否かを判断してもよい。また、乗り口5付近に踏段の移動方向に垂直なビームを出力するビームセンサを設け、ビームが遮断された回数に基づいて時間当たりの利用者数を検出し、検出した利用者数に基づいて所定の混雑状態にあるか否かを判断してもよい。
【0072】
(C)
前記実施の形態では、所定の混雑状態が、「混雑状態」及び「過負荷状態」である場合を例示した。しかし、本発明はこれに限られない。例えば、所定の混雑状態が、「過負荷状態」だけであってもよい。この場合、エスカレータの利用者が非常に多い場合に限って、中間照明部を点滅状態にして、警告的に注意喚起を行うことができる。