(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(実施の形態1)
1.構成
図1は、実施の形態1におけるエスカレータの概略側面図である。エスカレータ1は、乗客コンベアの一例である。
【0010】
エスカレータ1は、エスカレータ本体10、モータ20、インバータ30、制御装置40などを有する。
【0011】
エスカレータ本体10は、建築物の2つの階床F1、F2間に架け渡された状態で設置される。エスカレータ本体10は、無端状に連結された複数の踏段11と、左右一対の無端状のハンドレール12と、モータ20の動力を踏段11及びハンドレール12に伝達する動力伝達機構と、乗り口5及び降り口6の床面をそれぞれ構成するフロアプレート19等を有する。複数の踏段11及びハンドレール12は、インバータ30から供給される電力により駆動されるモータ20の動力により循環駆動される。制御装置40は、エスカレータ1の運転を制御する。本実施の形態のエスカレータ1では、階床F1に乗り口5が設けられ、階床F2に降り口6が設けられているものとして説明するが、本発明では階床F2に乗り口5が設けられ、階床F1に降り口が設けられていてもよい。
【0012】
図2は、実施の形態1におけるエスカレータ1のエスカレータ本体10の動力伝達機構等の概略構成を示した図である。
【0013】
動力伝達機構のうち踏段11を駆動する機構は、モータ20の駆動軸にメインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bを介して連結された減速機22と、減速機22の出力軸により回転駆動される駆動スプロケット23と、駆動スプロケット23によりメインドライブチェーン24を介して回転駆動される従動スプロケット25とを有する。また、動力伝達機構は、従動スプロケット25に同期して回転駆動されるメインドライブスプロケット26と、メインドライブスプロケット26により踏段ドライブチェーン27を介して回転駆動される被ドライブスプロケット28とを備える。モータ20が駆動されると、その動力が、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21B、減速機22、駆動スプロケット23、メインドライブチェーン24、従動スプロケット25を介して、メインドライブスプロケット26に伝達され、これにより、メインドライブスプロケット26が回転駆動されるとともに、メインドライブスプロケット26とメイン従動スプロケットとの間に掛け渡された踏段ドライブチェーン27に連結された踏段11が循環駆動される。
【0014】
メインブレーキ21Aは、機械式の所謂メカブレーキであり、モータ20の駆動軸により回転駆動される回転部材と、ブレーキシューと、回転部材へのブレーキシューの圧接及び離反を行わせる電磁ソレノイドとを有する。電磁ソレノイドは、非通電時に、ブレーキシューを回転部材に圧接させ、通電時に、ブレーキシューを回転部材から離間させる。この構成によれば、電磁ソレノイドが非通電状態になると、メインブレーキ21Aが締結状態となる。これにより、モータ20の駆動力が減速機22側に伝達されなくなって、踏段11の循環駆動を停止させることができる。一方、電磁ソレノイドが通電状態となると、メインブレーキ21Aが解放状態となる。これにより、モータ20の駆動力を減速機22側に伝達して、踏段11を循環駆動させることができる。
【0015】
補助ブレーキ21Bは、メインブレーキ21Aの故障や異常などに対処するために冗長的に設けられたブレーキである。補助ブレーキ21Bは、メインブレーキ21Aと同様に構成することができる。なお、補助ブレーキ21Bは、メインブレーキ21Aのブレーキシューに替えて回転体の径方向に移動可能なピンを設け、かつ回転体の外周に歯車状の凹凸を設け、電磁ソレノイドが非通電状態になると、ピンが径方向内側に移動して回転体の外周の凹部に嵌合するように構成されてもよい。これによれば、回転体の回転を確実に規制して、駆動軸の回転を確実に停止させることができる。
【0016】
図3は、実施の形態1におけるエスカレータ1の制御システムの電気的構成を示したブロック図である。
【0017】
制御装置40は、運転スイッチ60、メインブレーキ開確認スイッチ210、補助ブレーキ開確認スイッチ220、及び安全装置監視装置310、及び電源電圧監視装置320から、運転ON信号、メインブレーキのON/OFF、補助ブレーキのON/OFF、異常検知信号、及び停電信号を入力する。
【0018】
運転スイッチ60は、乗り口5付近のエスカレータ本体10のスカートガードに設けられている。運転スイッチ60は、運転管理者などが有するキーにより操作されるキースイッチにより構成される。運転スイッチ60は、運転管理者により挿入されたキーが所定の方向に回転されたときに、運転ON信号を出力し、挿入されたキーが反対方向に回転されたときに、運転ON信号の出力を停止する。
【0019】
メインブレーキ開確認スイッチ210は、メインブレーキ21Aに設けられ、例えばメインブレーキ21Aのブレーキシューが解放位置に戻ったときに閉じてONとなり、それ以外のときは開いてOFFとなるスイッチである。
【0020】
補助ブレーキ開確認スイッチ220は、補助ブレーキ21Bに設けられ、例えば補助ブレーキのブレーキシューが解放位置に戻ったときに閉じてONとなり、それ以外のときは開いてOFFとなるスイッチである。
【0021】
安全装置監視装置310は、動力伝達機構を構成する上述したチェーンやスプロケットなどの各種の部材の異常を検出する安全装置を監視し、安全装置から異常が発生したことを示す信号が出力されたときに、異常検知信号を出力する。
【0022】
電源電圧監視装置320は、インバータ30などに入力される交流電力(例えば商用電力)の電圧を監視し、停電などにより交流電力の電圧が例えば0Vとなったときに停電信号を出力する。
【0023】
制御装置40は、上記の入力した各種信号に基づいて、適宜なタイミングで、インバータ駆動信号、スイッチ切替信号、メインブレーキ解放信号、及び補助ブレーキ解放信号を生成して出力する。
【0024】
制御装置40は、運転スイッチ60から運転ON信号を入力したときに、インバータ30を駆動させるインバータ駆動信号を生成してインバータ30に出力する。
【0025】
また、制御装置40は、エスカレータ1の運転を開始させる際に、補助ブレーキ解放信号を補助ブレーキスイッチ150に出力するとともに、その所定時間後に、メインブレーキ解放信号をメインブレーキスイッチ140に出力する。また、制御装置40は、エスカレータ1の運転を開始させる際に、スイッチ切替信号を電源切替スイッチ130に出力する。
【0026】
インバータ30は、制御装置40から出力されるインバータ駆動信号に基づいて、モータ20に交流電力を供給する。具体的に、インバータ30は、インバータ駆動信号に基づいて、モータ20への交流電力の供給及び停止を行うとともに、モータ20に供給する交流電力の周波数を変更する。
【0027】
モータ20は、インバータ30から供給される交流電力の周波数に応じた回転数で動作する。これにより、踏段11の駆動速度が、インバータ30から供給される交流電力の周波数に応じて変更される。モータ20は、例えば誘導電動機により構成される。
【0028】
電源切替スイッチ130、メインブレーキスイッチ140、及び補助ブレーキスイッチ150、コンデンサスイッチ170の動作については、後で詳述する。
【0029】
図4は、実施の形態1におけるエスカレータ1の制御装置40の電気的構成を示したブロック図である。
【0030】
制御装置40は、制御部41と記憶部42と入出力インタフェース43とを有する。制御装置40は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を利用して構成される。
【0031】
記憶部42は、例えばフラッシュメモリにより構成され、プログラムや種々のデータを格納している。プログラムには、本実施の形態の制御装置40における各種機能を実現するためのプログラムが含まれている。
【0032】
制御部41は、例えばCPU、MPUなどにより構成され、記憶部42からプログラム及びデータを読み出し、読み出したプログラム及びデータに基づく演算処理を行う。これにより、制御装置40における各種の機能が実現される。
【0033】
入出力インタフェース43は、制御装置40に接続される各種装置との間で信号を入出力するためのインタフェースであり、信号形式の変換などを行う。
【0034】
なお、制御装置40は、汎用的なコンピュータを利用して構成されてもよい。また、制御装置40は、電子回路やリレーシーケンス回路などのハードウェアのみにより構成されてもよい。
【0035】
図5は、実施の形態1におけるエスカレータの直流電源装置の構成を示したブロック図である。
【0036】
エスカレータ1は、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドにブレーキ解放用の直流電力を供給するための直流電源装置100を有する。直流電源装置100は、直流定格電源装置110と、直流過励磁電源装置120と、電源切替スイッチ130と、メインブレーキスイッチ140と、補助ブレーキスイッチ150と、コンデンサ160と、コンデンサスイッチ170とを有する。
【0037】
直流定格電源装置110は、交流電圧を入力して、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドの定格電圧V1と同じDC電圧を発生する。交流電圧は例えばAC200Vであり、電磁ソレノイドの定格電圧V1は例えばDC90Vである。
【0038】
直流過励磁電源装置120は、交流電圧を入力して、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドの定格電圧V1よりも高い過励磁電圧V2を発生する。交流電圧は例えばAC200Vであり、過励磁電圧V2は、定格電圧V1に対して例えば約2倍のDC200Vである。約2倍という電圧は、後述する程度の短時間の通電では、電磁ソレノイドが加熱する虞がない電圧である。過励磁電圧V2は、約2倍でなくても2倍〜2.5倍の範囲であればよい。過励磁電圧が例えば1.5倍程度であると、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの解放が約2倍のときよりも遅くなる。
【0039】
電源切替スイッチ130は、直流定格電源装置110のDC出力と直流過励磁電源装置120のDC出力とのうちの一方をメインブレーキ21A及び補助ブレーキ21B側に選択的に接続するスイッチである。電源切替スイッチ130は、スイッチ切替信号が制御装置40から出力されているときに、直流過励磁電源装置120のDC出力がブレーキ21側に出力されるように、直流過励磁電源装置120とメインブレーキ21A及び補助ブレーキ21B側とを接続する。以下では、このときの電源切替スイッチ130の状態を適宜、電源切替スイッチ130が「ON」という。電源切替スイッチ130は、スイッチ切替信号が制御装置40から出力されていないときに、直流定格電源装置110のDC出力がメインブレーキ21A及び補助ブレーキ21B側に出力されるように、直流定格電源装置110とメインブレーキ21A及び補助ブレーキ21B側とを接続する。以下では、このときの電源切替スイッチ130の状態を適宜、電源切替スイッチ130が「OFF」という。
【0040】
メインブレーキスイッチ140は、電源切替スイッチ130の出力端子とメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドとを電気的に断接するスイッチである。メインブレーキスイッチ140は、メインブレーキ解放信号が制御装置40から出力されているときに閉じて、電源切替スイッチ130の出力端子とメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドとを電気的に接続する。これにより、メインブレーキ21Aが解放状態となる。このときのメインブレーキスイッチ140の状態を適宜、メインブレーキスイッチ140が「ON」という。これに対し、メインブレーキスイッチ140は、メインブレーキ解放信号が制御装置40から出力されていないときは開いて、電源切替スイッチ130の出力端子とメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドとを電気的に遮断する。これにより、メインブレーキ21Aが締結状態となる。このときのメインブレーキスイッチ140の状態を適宜、メインブレーキスイッチ140が「OFF」という。
【0041】
補助ブレーキスイッチ150は、電源切替スイッチ130の出力端子と補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドとを電気的に断接するスイッチである。補助ブレーキスイッチ150は、補助ブレーキ解放信号が制御装置40から出力されているときに閉じて、電源切替スイッチ130の出力端子と補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドとを電気的に接続する。これにより、補助ブレーキ21Bが解放状態となる。このときの補助ブレーキスイッチ150の状態を適宜、補助ブレーキスイッチ150が「ON」という。これに対し、補助ブレーキスイッチ150は、補助ブレーキ解放信号が制御装置40から出力されていないときは開いて、電源切替スイッチ130の出力端子と補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドとを電気的に遮断する。これにより、補助ブレーキ21Bが締結状態となる。ここのときの補助ブレーキスイッチ150の状態を適宜、補助ブレーキスイッチ150が「OFF」という。
【0042】
コンデンサ160は、補助ブレーキスイッチ150の出力端子と、アースとの間にコンデンサスイッチ170を介して接続されている。コンデンサ160は、例えば電解コンデンサである。なお、コンデンサ160は、公知のその他の種類のコンデンサ160で構成されてもよい。コンデンサ160は、停電発生時に、メインブレーキ21Aの締結から所定時間遅れて補助ブレーキ21Bを締結させるために設けられている。コンデンサ160の容量は、交流電力の停電発生から例えば2秒(所定時間)の間、補助ブレーキ21Bを解放状態に維持できるだけの直流電力を、補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドに供給可能な容量(所定容量)に設定されている。ここで、コンデンサ160の容量は経年劣化により低下する。そのため、コンデンサ160の初期容量は、経年劣化による容量低下を考慮して、所定期間経過後において上記所定容量が確保されるように、上記所定容量よりも大きい容量に設定されている。
【0043】
コンデンサスイッチ170は、コンデンサ160のアース側端子とアースとの間を電気的に断接するスイッチである。コンデンサスイッチ170は、コンデンサ切り離し信号が制御装置40から出力されているときは閉じて、コンデンサ160のアース側端子とアースとの間を電気的に接続し、コンデンサ切り離し信号が制御装置40から出力されているときは開いて、コンデンサ160のアース側端子とアースとの間を電気的に遮断する。
【0044】
2.動作
図6は、実施の形態1におけるエスカレータの制御装置40による運転制御を説明したフローチャートである。
図7、
図8は、実施の形態1におけるエスカレータの制御装置40による運転制御を説明したタイムチャートである。以下、
図6とともに、
図5、
図7、
図8を参照して詳しく説明する。
【0045】
制御装置40は、運転スイッチ60がONになったか否かを判断する(S11)。具体的に、制御装置40は、運転スイッチ60から運転ON信号が出力されているときは、運転スイッチ60がONであり、運転スイッチ60から運転ON信号が出力されていないときは、運転スイッチ60がONでないと判断する。
【0046】
運転スイッチ60がONになっていない場合(S11でNO)、制御装置40は、ステップS11の処理を再度実行する。
【0047】
運転スイッチ60がONになった場合(S11でYES)、制御装置40は、運転スイッチ60がONとなった時刻Tdを記憶部42に記憶させる(S12)。
【0048】
制御装置40は、補助ブレーキ解放信号を補助ブレーキスイッチ150に出力するとともに、スイッチ切替信号を電源切替スイッチ130に出力する(S13)。
【0049】
制御装置40は、補助ブレーキ開確認スイッチ220がONとなったか否かを判断する(S14)。
【0050】
補助ブレーキ開確認スイッチ220がONとなっていない場合(S14でNO)、制御装置40は、ステップS14の判断を再度実行する。
【0051】
補助ブレーキ開確認スイッチ220がONとなった場合(S14でYES)、制御装置40は、電源切替スイッチ130へのスイッチ切替信号の出力を停止する(S15)。
【0052】
制御装置40は、運転スイッチON時刻Tdから所定時間T1が経過したか否かを判断する(S16)。所定時間T1は任意の時間であるが、エスカレータ1の運転速度をできるだけ早くしたい場合には、後述するように過励磁電圧V2を印加してから補助ブレーキ21Bの制動力がゼロとなるまでの時間よりも若干長い程度の時間とすればよい。
【0053】
運転スイッチON時刻Tdから所定時間T1が経過していない場合(S16でNO)、制御装置40は、ステップS14の判断を再度実行する。
【0054】
運転スイッチON時刻Tdから所定時間T1が経過した場合(S16でYES)、制御装置40は、メインブレーキ解放信号をメインブレーキスイッチ140に出力するとともに、スイッチ切替信号を電源切替スイッチ130に出力する(S17)。
【0055】
制御装置40は、メインブレーキ開確認スイッチ210がONとなったか否かを判断する(S18)。
【0056】
メインブレーキ開確認スイッチ210がONとなっていない場合(S18でNO)、制御装置40は、ステップS18の判断を再度実行する。
【0057】
メインブレーキ開確認スイッチ210がONとなった場合(S18でYES)、制御装置40は、電源切替スイッチ130へのスイッチ切替信号の出力を停止する(S19)。
【0058】
制御装置40は、インバータ駆動信号の出力を開始する(S20)。これにより、インバータ30が起動し、モータ20に交流電力が供給され始める。インバータ30は、モータ20により起動される踏段11の速度が定格速度に達するまで、踏段11が一定の加速度で加速するように、モータ20に供給する交流電力の周波数を徐々に上昇させる。一定の加速度は、JEASで定められている例えば0.1m/s
2である。
【0059】
ここで、補助ブレーキ開確認信号及びメインブレーキ開確認信号を受信してからインバータ30を駆動する。そのため、モータ20のトルクは、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの制動力がゼロとなってから立ち上がることとなる。そのため、モータ20のトルクがメインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの制動力と干渉しない。したがって、モータ20の回転がスムーズに立ち上がるとともに、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの回転部材とブレーキシューとが接触している状態で相対回転することが防止される。そのため、これらの部材の摩耗が防止される。
【0060】
制御装置40は、運転スイッチ60がOFFになったか否かを判断する(S21)。具体的に、制御装置40は、運転スイッチ60から運転ON信号が出力されていないときは、運転スイッチ60がOFFであり、運転スイッチ60から運転ON信号が出力されているときは、運転スイッチ60がOFFでないと判断する。
【0061】
運転スイッチ60がOFFになった場合(S21でYES)、制御装置40は、エスカレータ1の運転を停止させる運転停止処理を実行する(S25)。例えば、制御装置40は、エスカレータ1が緩やかに停止するように(踏段11が緩やかに停止するように)、インバータ30へのインバータ駆動信号の出力を停止させたり、補助ブレーキスイッチ150へのブレーキ解放信号の出力、及びメインブレーキスイッチ140へのブレーキ解放信号の出力を順次停止させたりする。これにより、エスカレータ1が緩やかに停止するように、インバータ30からモータ20への交流電力の供給が停止されるとともに、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bが締結状態となり、踏段11の駆動が停止されることとなる。
【0062】
運転スイッチ60がOFFでない場合(S21でNO)、制御装置40は、電源電圧監視装置320から停電信号を受信したか否かを判断する(S22)。
【0063】
停電信号を受信した場合(S22でYES)、制御装置40は、ステップS25の処理を同様に実行する。
【0064】
停電信号を受信していない場合(S22でNO)、制御装置40は、安全装置監視装置310から異常検知信号を受信したか否かを判断する(S23)。
【0065】
異常検知信号を受信していない場合(S23でYES)、制御装置40は、ステップS21に戻ってその処理を実行する。
【0066】
異常検知信号を受信した場合(S23でNO)、制御装置40は、コンデンサ切り離し信号を即座に出力し(S24)、ステップS25の処理を実行する。
【0067】
3.作用
本実施の形態の作用及び効果を説明する。まず、
図5、
図7を参照して、エスカレータ1の管理者により運転スイッチ60がON操作された場合について説明する。
【0068】
時刻Tdに、運転スイッチ60がON操作されたものとすると、これと同時に電源切替スイッチ130がON(直流過励磁電源装置120側に接続された状態)となるとともに、補助ブレーキスイッチ150がONとなる。これにより、直流過励磁電源装置120のDC出力が補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドに電気的に接続され、過励磁電圧V2が補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドに印加される。
【0069】
過励磁電圧V2の印加により補助ブレーキ21Bが解放すると、補助ブレーキ開確認スイッチ220がONとなる。そうすると、電源切替スイッチ130が、OFF(直流定格電源装置110側に接続された状態)に切り替わる。これにより、補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドへの過励磁電圧V2の印加は終了するが、直流定格電源装置110から定格電圧V1が補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドに印加される。そのため、補助ブレーキ21Bは解放状態で維持される。
【0070】
運転スイッチON時刻Tdから所定時間T1が経過すると、電源切替スイッチ130がON(直流過励磁電源装置120側に接続された状態)となるとともに、メインブレーキスイッチ140がONとなる。これにより、直流過励磁電源装置120のDC出力がメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドに電気的に接続され、過励磁電圧V2がメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドに印加される。なお、このとき、直流過励磁電源装置120のDC出力が補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドにも電気的に接続されているため、補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドにも過励磁電圧V2が印加される。
【0071】
過励磁電圧V2の印加によりメインブレーキ21Aが解放すると、メインブレーキ開確認スイッチ210がONとなる。そうすると、電源切替スイッチ130が、OFF(直流定格電源装置110側に接続された状態)に切り替わる。これにより、メインブレーキ21Aの電磁ソレノイドへの過励磁電圧V2の印加は終了するが、直流定格電源装置110から定格電圧V1がメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドに印加される。そのため、メインブレーキ21Aは解放状態で維持される。補助ブレーキ21Bについても同様である。
【0072】
メインブレーキ開確認スイッチ210がONとなったとき、さらに、インバータ駆動信号の出力が開始する。これにより、インバータ30が起動し、モータ20に交流電力が供給され始め、踏段11の速度が定格速度に達するまで、モータのトルクが増大していく。
【0073】
次に、
図5、
図8を参照して、停電が発生した場合について説明する。なお、制御装置40の動作用の電源は、停電後もバックアップ電源装置などにより確保されているものとする。また、停電が発生する前には、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドには、直流定格電源装置110から定格電圧V1の直流電力が供給されている。
【0074】
時刻Teに、停電が発生したものとする。停電が発生すると、直流定格電源装置110からの定格電圧V1の出力がなくなり、メインブレーキ21Aの電磁ソレノイドへの定格電圧V1の印加が即座になくなる。そのため、メインブレーキ21Aがほぼ即座に締結状態となる。これに対し、補助ブレーキ21Bの入力側には、コンデンサ160が接続されている。そのため、停電が発生しても、コンデンサ160に蓄電されている電力が、その容量に応じた時間だけ、補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドに供給される。そのため、補助ブレーキ21Bは、メインブレーキ21Aが締結状態となるよりも後で締結を開始する。したがって、補助ブレーキ21Bが締結動作を開始するときには、モータ20の回転はほぼ止まっている。そのため、補助ブレーキ21Bに、回転体とブレーキシューなどとの当接によるストレスが加わるのが抑制される。
【0075】
ここで、時刻Teに、停電でなく、安全装置から異常検知信号が出力されたものとする。この場合、コンデンサスイッチ170が開かれる。そのため、安全装置作動時には、コンデンサ160に蓄電されている電力が補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドに供給されない。つまり、
図8に破線で示すように、補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドへの定格電圧V1の印加が即座になくなる。そのため、補助ブレーキ21Bが、破線で示すように、ほぼ即座に締結状態となる。したがって、異常発生時には、迅速に踏段11の駆動を停止させることができる。
【0076】
以上説明したように、本実施の形態によれば、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bに電力を供給する電源装置を共有化しつつ、安全装置作動時には、補助ブレーキ21Bを異なるタイミングで動作させることができる。また、共有化される分、電源装置が占めるスペースを削減することができる。
【0077】
(実施の形態についてのまとめ)
実施の形態1のエスカレータ1(乗客コンベアの一例)は、
無端状に連結された踏段11と、
踏段11を循環駆動するモータ20と、
モータ20の駆動軸の回転を機械的に停止させるメインブレーキ21Aと、
モータ20の駆動軸の回転を機械的に停止させる補助ブレーキ21Bと、
メインブレーキ21Aを解放させるための直流電力をメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドに供給するとともに、補助ブレーキ21Bを解放させるための直流電力を補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドに供給する直流電源装置100と、
当該エスカレータ1を構成する機構の異常を検知する安全装置の作動を監視する安全装置監視装置310と、
制御装置40と、を備え、
メインブレーキ21Aの電磁ソレノイドと補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドとは同じ定格電圧V1を有し、
直流電源装置100は、
定格電圧V1の直流電力を出力する直流定格電源装置110(第1直流電源装置)と、
定格電圧V1よりも高い過励磁電圧V2(所定電圧の一例)の直流電力を出力する直流過励磁電源装置120(第2直流電源装置)と、
直流定格電源装置110の出力と、直流過励磁電源装置120の出力とのいずれか一方を出力させる電源切替スイッチ130と、を備え、
電源切替スイッチ130の出力端子とメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドの入力端子とを電気的に開閉可能に接続するメインブレーキスイッチ140と、
電源切替スイッチ130の出力端子と補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドの入力端子とを電気的に開閉可能に接続する補助ブレーキスイッチ150と、
補助ブレーキスイッチ150の出力端子とアースとの間に接続されたコンデンサ160と、
コンデンサ160のアース側端子とアースとを電気的に開閉可能に接続するコンデンサスイッチ170と、を備え、
制御装置40は、
踏段11を駆動する駆動条件が成立した場合、
駆動条件が成立してから補助ブレーキ21Bが開状態となるまでの間、補助ブレーキスイッチ150及びコンデンサスイッチ170を閉じて、直流電源装置100から補助ブレーキ21Bの電磁ソレノイドに過励磁電圧V2の直流電力を出力させるとともに、
補助ブレーキ21Bが開状態となった後の所定のときからメインブレーキ21Aが開状態となるまでの間、メインブレーキスイッチ140を閉じて、直流電源装置100からメインブレーキ21Aの電磁ソレノイドに過励磁電圧V2の直流電力を出力させ、
踏段11を駆動中において、
安全装置監視装置310で安全装置が作動したことが検知されていないときは、メインブレーキスイッチ140、補助ブレーキスイッチ150、及びコンデンサスイッチ170を閉じた状態を維持し、
安全装置監視装置310で安全装置が作動したことが検知されたときは、メインブレーキスイッチ140、補助ブレーキスイッチ150、及びコンデンサスイッチ170を開く。
【0078】
実施の形態1のエスカレータ1によれば、メインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bに電力を供給する電源装置を共有化しつつ、補助ブレーキ21Bを異なるタイミングで動作させることができる。
【0079】
実施の形態1のエスカレータ1において、
過励磁電圧V2は、定格電圧V1に対して2倍〜2.5倍の範囲の電圧である。
【0080】
この構成によれば、電磁ソレノイドが加熱することを抑制しつつ、上述したメインブレーキ21A及び補助ブレーキ21Bの摩耗の抑制、及び踏段11の動き始めの早期化などの効果が得られる。
【0081】
(その他の実施の形態)
(A)
前記実施の形態のエスカレータ1は、本発明の乗客コンベアの一例である。本発明において、乗客コンベアは、一の階床において水平あるいは斜めに配置されたいわゆる動く歩道等の乗客コンベアであってもよい。