特許第6881508号(P6881508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6881508未加硫の帯状ゴム部材の製造装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881508
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】未加硫の帯状ゴム部材の製造装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/44 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   B29D30/44
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-112134(P2019-112134)
(22)【出願日】2019年6月17日
(65)【公開番号】特開2020-203426(P2020-203426A)
(43)【公開日】2020年12月24日
【審査請求日】2020年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正智
(72)【発明者】
【氏名】國森 照明
(72)【発明者】
【氏名】善養寺 千裕
(72)【発明者】
【氏名】大石 潤平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 陽久
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−11245(JP,A)
【文献】 特開昭62−236728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材が平置き状態で載置される載置部と、平置き状態の前記帯状ゴム部材の前端および後端を前記帯状ゴム部材の幅方向に渡って検知する位置センサと、この位置センサによる検知データが入力される制御部と、前記前端部を保持する前端部保持機構と、前記後端部を保持する後端部保持機構とを備えて、前記帯状ゴム部材が目標長さに伸長される未加硫の帯状ゴム部材の製造装置であって、
前記前端部保持機構と前記後端部保持機構の少なくとも一方が、前記帯状ゴム部材の幅方向に並列された複数の保持部と、それぞれの前記保持部を個別に前記帯状ゴム部材の前後方向に移動させる移動部とを有し、前記検知データと前記目標長さとに基づいて、前記制御部によりそれぞれの前記移動部の前後方向の移動量が制御されて、それぞれの前記保持部によって保持されている前記帯状ゴム部材の被保持部分周辺の前後方向の伸長程度が調整される構成にしたことを特徴とする未加硫の帯状ゴム部材の製造装置。
【請求項2】
前記位置センサが、それぞれの前記保持部毎に個別に設置されている請求項1に記載の未加硫の帯状ゴム部材の製造装置。
【請求項3】
それぞれの前記保持部が、前記帯状ゴム部材の上面を吸着する吸着パッドである請求項1または2に記載の未加硫の帯状ゴム部材の製造装置。
【請求項4】
前記載置部の載置面が、平置き状態で載置された前記帯状ゴム部材が前後方向にずれることなく付着し、かつ、前後方向に非伸縮の状態になっている請求項1〜3のいずれかに記載の未加硫の帯状ゴム部材の製造装置。
【請求項5】
前記位置センサにより前記帯状ゴム部材の前端および後端を前記帯状ゴム部材の幅方向に渡って検知する前に、平置き状態で載置された前記帯状ゴム部材の上面を転動する押圧ローラを有する請求項4に記載の未加硫の帯状ゴム部材の製造装置。
【請求項6】
前記載置部が前記帯状ゴム部材を搬送する搬送コンベヤである請求項1〜5のいずれかに記載の未加硫の帯状ゴム部材の製造装置。
【請求項7】
所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材を、目標長さに伸長させる未加硫の帯状ゴム部材の製造方法において、
載置部に平置き状態で載置した前記帯状ゴム部材の前端および後端を位置センサにより前記帯状ゴム部材の幅方向に渡って検知して、前記位置センサによる検知データを制御部に入力し、
前記前端部を保持する前端部保持機構と前記後端部を保持する後端部保持機構の少なくとも一方を、前記帯状ゴム部材の幅方向に並列された複数の保持部と、それぞれの前記保持部を個別に前記帯状ゴム部材の前後方向に移動させる移動部を有する構成にして、前記前端部保持機構により前記前端部を保持し、前記後端部保持機構により前記後端部を保持して、前記検知データと前記目標長さとに基づいて、前記制御部によりそれぞれの前記移動部の前後方向の移動量を制御して、それぞれの前記保持部によって保持されている前記帯状ゴム部材の被保持部分周辺の前後方向の伸長程度を調整することを特徴とする未加硫の帯状ゴム部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫の帯状ゴム部材の製造装置および方法に関し、さらに詳しくは、収縮する未加硫の帯状ゴム部材を、精度よく目標長さにすることができる未加硫の帯状ゴム部材の製造装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する際には、未加硫の帯状ゴム部材の長手方向端部どうしを成形ドラムの外周面上で接合して環状に成形する工程がある。この帯状ゴム部材の長手方向端部どうしを精度よく接合するための装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で提案されている装置では、未加硫の帯状ゴム部材の前端部の最も大きく収縮する収縮部が、引き伸ばし装置によって引き伸ばされた後に成形ドラムの外周面に貼付けられる(段落0022〜0024等参照)。次いで、帯状ゴム部材の後端部の後端縁の角度を、前端部の前端縁の角度に合わせるように変位させて、後端部と前端部が接合される(段落0028等参照)。
【0004】
この提案では、帯状ゴム部材の前端部で最も収縮する収縮部が、その前端部の最も薄い部分であることが前提となっている(段落0020等)。しかしながら、最も収縮する収縮部が最も薄い部分であるとは限らない。そのため、収縮する未加硫の帯状ゴム部材の長さを精度よく把握する必要がある。また、成形ドラム上に貼り付けられている前端部の前端縁の角度は一律とは限らず、幅方向で変化していることもある。そのため、帯状ゴム部材の後端部の後端縁の角度を、前端部の前端縁の角度に合わせるだけでは、帯状ゴム部材の幅方向全体に渡って前端部と後端部をすき間なく接合できる長さを有する帯状ゴム部材を得ることはできない。そのため、前端部と後端部を過不足なく接合できる目標長さの未加硫の帯状ゴム部材を精度よく製造するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−136826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、収縮する未加硫の帯状ゴム部材を、精度よく目標長さにすることができる未加硫の帯状ゴム部材の製造装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の未加硫の帯状ゴム部材の製造装置は、所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材が平置き状態で載置される載置部と、平置き状態の前記帯状ゴム部材の前端および後端を前記帯状ゴム部材の幅方向に渡って検知する位置センサと、この位置センサによる検知データが入力される制御部と、前記前端部を保持する前端部保持機構と、前記後端部を保持する後端部保持機構とを備えて、前記帯状ゴム部材が目標長さに伸長される未加硫の帯状ゴム部材の製造装置であって、前記前端部保持機構と前記後端部保持機構の少なくとも一方が、前記帯状ゴム部材の幅方向に並列された複数の保持部と、それぞれの前記保持部を個別に前記帯状ゴム部材の前後方向に移動させる移動部とを有し、前記検知データと前記目標長さとに基づいて、前記制御部によりそれぞれの前記移動部の前後方向の移動量が制御されて、それぞれの前記保持部によって保持されている前記帯状ゴム部材の被保持部分周辺の前後方向の伸長程度が調整される構成にしたことを特徴とする。
【0008】
本発明の未加硫の帯状ゴム部材の製造方法は、所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材を、目標長さに伸長させる未加硫の帯状ゴム部材の製造方法において、載置部に平置き状態で載置した前記帯状ゴム部材の前端および後端を位置センサにより前記帯状ゴム部材の幅方向に渡って検知して、前記位置センサによる検知データを制御部に入力し、前記前端部を保持する前端部保持機構と前記後端部を保持する後端部保持機構の少なくとも一方を、前記帯状ゴム部材の幅方向に並列された複数の保持部と、それぞれの前記保持部を個別に前記帯状ゴム部材の前後方向に移動させる移動部を有する構成にして、前記前端部保持機構により前記前端部を保持し、前記後端部保持機構により前記後端部を保持して、前記検知データと前記目標長さとに基づいて、前記制御部によりそれぞれの前記移動部の前後方向の移動量を制御して、それぞれの前記保持部によって保持されている前記帯状ゴム部材の被保持部分周辺の前後方向の伸長程度を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材を載置部に平置き状態にして、その前端および後端を位置センサにより帯状ゴム部材の幅方向に渡って検知することで、帯状ゴム部材の幅方向での長さの分布データ(即ち、幅方向での収縮長さの分布データ)を取得できる。そして、帯状ゴム部材の前端部と後端部の少なくとも一方が、前記帯状ゴム部材の幅方向に並列された複数の保持部により保持されて、位置センサによる検知データと目標長さとに基づいて、それぞれの保持部を個別に前後方向に移動させるそれぞれの移動部の前後方向の移動量を前記制御部により制御することで、収縮する帯状ゴム部材を、精度よく目標長さに伸長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の未加硫の帯状ゴム部材の製造装置を側面視で例示する説明図である。
図2図1の製造装置を平面視で例示する説明図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4】後端部保持機構を側面視で例示する説明図である。
図5】帯状ゴム部材の前端および後端を検知する工程を側面視で例示する説明図である。
図6】検知された帯状ゴム部材の形状を模式的に平面視で例示する説明図である。
図7】帯状ゴム部材の前端部、後端部をそれぞれ、前端部保持機構、後端部保持機構により保持する工程を側面視で例示する説明図である。
図8図7の後端部保持部の周辺を拡大した説明図である。
図9図8の帯状ゴム部材の後端部の周辺を平面視で例示する説明図である。
図10図9の帯状ゴム部材の後端部を引き伸ばしている工程を平面視で例示する説明図である。
図11】伸長された帯状ゴム部材を模式的に平面視で例示する説明図である。
図12】搬送コンベヤの後端部上方に配置される押圧ローラの変形例を正面視で例示する説明図である。
図13】後端部保持機構の変形例を正面視で示す説明図である。
図14】伸長された帯状ゴム部材を成形ドラムの外周面に巻き付けた状態を側面視で例示する説明図である。
図15図14の帯状ゴム部材の後端部の保持を解除して、前端部に圧着する工程を側面視で例示する説明図である。
図16図15の前端部と後端部とをさらに圧着させる工程を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の帯状ゴム部の製造装置および方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1図4に例示する本発明の未加硫の帯状ゴム部材の製造装置1(以下、製造装置1という)は、上流側搬送コンベヤ14の下流側に配置されている。上流側搬送コンベヤ14の前端部にはカッター14aが配置されている。上流側搬送コンベヤ14によって製造装置1に向かって搬送された未加硫の帯状ゴム部材Rは、カッター14aによって所定長さに切断される。
【0013】
帯状ゴム部材Rとしては、未加硫ゴムで形成されているタイヤのトレッドゴムやサイドゴム等のタイヤ構成部材を例示できる。切断された帯状ゴム部材Rは経時的に収縮するので、そのままでは切断された所定長さよりも短くなる。この収縮長さは帯状ゴム部材Rの幅方向Wで一律とは限らず、例えば厚み等によって異なる。製造装置1は、所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材Rを伸長させて目標長さGにする。
【0014】
製造装置1は、所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材Rが平置き状態で載置される載置部2と、位置センサ13と、位置センサ13による検知データが入力される制御部12と、前端部保持機構4と、後端部保持機構7とを備えている。さらに、この実施形態では搬送コンベヤ2の後端部の上方に押圧ローラ13aが設けられている。
【0015】
この実施形態では載置部2として、平置き状態で帯状ゴム部材Rを搬送する搬送コンベヤ2が用いられている。搬送コンベヤ2は、前後のプーリの間に張設されたコンベヤベルト2aを有していて、コンベヤベルト2aはサーボモータ等の駆動源によって回転駆動される。載置部2は、帯状ゴム部材Rを平置き状態で載置できればよく、金属板や樹脂板等を用いることもできる。
【0016】
図面中の矢印Lの方向は、搬送コンベヤ2、搬送コンベヤ2に載置された帯状ゴム部材Rの前後方向を示している。また、矢印Wの方向は、搬送コンベヤ2、搬送コンベヤ2に載置された帯状ゴム部材Rの幅方向を示している。図2中の一点鎖線CLは、前後方向Lに延在するフレーム3の幅方向Wの中心位置を示している。
【0017】
搬送コンベヤ2、前端部保持機構4、後端部保持機構7および押圧ローラ13aの動きは制御部12により制御される。制御部12によって搬送コンベヤ2による速度等も把握されるので、搬送コンベヤ2によって搬送される帯状ゴム部材Rの前後方向Lの移動量も把握される。
【0018】
この実施形態では、一点鎖線CLを挟んで対称位置に搬送コンベア2が1台ずつ配置されている。それぞれのコンベヤベルト2aの上方に配置される前端部保持機構4および後端部保持機構7が、フレーム3に対して移動可能に取付けられている。また、それぞれのコンベヤベルト2aの後端部の上方に配置される位置センサ13、押圧ローラ13aがフレーム3に取り付けられている。
【0019】
一点鎖線CLを挟んで対称位置に配置されているそれぞれの機器(搬送コンベヤ2、前端部保持機構4、後端部保持機構7、位置センサ13、押圧ローラ13aなど)は同様の構成、動きをするので、以下では、一点鎖線CLを挟んで一方側に配置された機器について説明する。尚、搬送コンベヤ2、前端部保持機構4、後端部保持機構7、位置センサ13、押圧ローラ13aなどの機器は、この実施形態のように一点鎖線CLを挟んで2列に並列して設置される構成に限定されず、1列に設置される構成にすることもできる。
【0020】
前端部保持機構4は、前端部保持部5を有していて、この実施形態ではさらに前端部押圧部6を有している。前端部保持部5は帯状ゴム部材Rの前端部Raを保持できる構成であればよく、例えば吸着パッドが採用される。前端部保持部5はシリンダ等によって上下移動されて、コンベヤベルト2aの載置面に対して近接および離反移動する。複数の前端部保持部5が幅方向Wに並列されている。
【0021】
前端部押圧部6としては、幅方向Wに延在する1本の棒状体が採用されている。前端部押圧部6は、幅方向Wに分割して複数並列された構成にすることもできる。前端部押圧部6はシリンダ等によって上下移動されて、コンベヤベルト2aの載置面に近接離反移動する。前端部保持機構4(前端部保持部5および前端部押圧部6)は、フレーム3に設置された前後進シリンダ3aによって前後方向Lに移動する。
【0022】
後端部保持機構7は、幅方向Wに並列された複数の後端部保持部8と、それぞれの後端部保持部8を個別に前後方向Lに移動させる移動部9aとを有している。この実施形態では後端部保持部8として吸着パッド8aに加えて針状体8bが採用されている。吸着パッド8aが取り付けられているブロックベース9bの下面から吸着パッド8aは下方に1mm〜2mm程度突出している。吸着パッド8aは幅方向Wおよび前後方向Lに首振り可能になっている。
【0023】
針状体8bは、ブロックベース9bから後方斜め方向に突設されている。針状体8bは任意で設けることができる。移動部9aとしては電動シリンダが採用されているが流体シリンダを用いることもできる。移動部9aがブロックベース9bを前後方向Lに移動させることで、後端部保持部8が前後方向Lに移動する。
【0024】
この実施形態では、幅方向Wに並列されたすべての後端部保持部8が、前後方向Lに移動できる構成になっているが、一部の後端部保持部8だけを、前後方向Lに移動できる構成にすることもできる。例えば、幅方向Wに隣り合う2個または3個の後端部保持部8だけを、前後方向Lに移動できる構成にしてもよい。並列する後端部保持部8の数は3個以上にすることが好ましく、例えば3個以上8個以下にする。この実施形態では、それぞれの後端部保持部8の幅方向Wの大きさが同じになっているが、幅方向Wの大きさが異なる後端部保持部8を混在させることもできる。
【0025】
この実施形態では後端部保持機構7はさらに、後端部保持部8の後方に配置されて幅方向Wに延在する1本の押圧バー10と、後端部保持部8の前方に配置された1本の押圧ローラ11を有している。ブロックベース9bに設置された押圧バー10は、独自に上下移動することができる。押圧バー10は幅方向Wに適宜の長さで延在させることができ、この実施形態では、並列されている6個の後端部保持部8の幅方向W一方端側から中途の位置まで延在している。押圧ローラ11は、幅方向Wに分割して複数並列された構成にすることもできる。
【0026】
後端部保持部8、移動部9a、ブロックベース9bおよび押圧バー10は、それぞれのシリンダ等によって一体的に上下移動され、コンベヤベルト2aの載置面に対して近接および離反移動する。押圧ローラ11も、シリンダ等によって上下移動され、コンベヤベルト2aの載置面に対して近接および離反移動する。後端部保持機構7(後端部保持部8、移動部9a、ブロックベース9b、押圧バー10および押圧ローラ11)は、サーボモータ等によってフレーム3に沿って前後方向Lに移動する。
【0027】
上述したように、幅方向Wに並列された複数の後端部保持部8と、それぞれの後端部保持部8を個別に前後方向に移動させる移動部9aは、後端部保持機構7のみに備わっているが、これらの後端部保持部8および移動部9aの機能は、前端部保持機構4と後端部保持機構7の少なくとも一方に備わっていればよい。したがって、前端部保持機構4のみ、或いは、前端部保持機構4および後端部保持機構7に、後端部保持部8および移動部9aと同機能を備えた構成にすることもできる。
【0028】
位置センサ13は、搬送コンベヤ2に平置き状態に載置されている帯状ゴム部材Rの前端および後端を幅方向Wの全長に渡って検知する。即ち、帯状ゴム部材Rの幅方向Wでの長さの分布データが検知される。位置センサ13による検知データは制御部12に逐次、入力される。位置センサ13としては、非接触型センサ(光センサ、レーザセンサ、超音波センサ等)を用いるとよい。
【0029】
この実施形態では、位置センサ13が、それぞれの後端部保持部8毎に個別に設置されている。即ち、1個の位置センサ13と1個の後端部保持部8とが1組になっている。位置センサ13は例えば、幅方向Wに移動可能にして帯状ゴム部材Rの前端および後端を幅方向Wの全長に渡って検知できれば単数にすることもできる。この実施形態のように、位置センサ13を、それぞれの後端部保持部8毎に個別の位置センサ13を設けると、位置センサ13を幅方向Wに移動させる必要がないので、装置の簡素化や位置センサ13の検知精度を確保するには有利になる。
【0030】
制御部12には、帯状ゴム部材Rの目標長さGのデータも入力されている。制御部112は、位置センサ13による検知データと目標長さGとに基づいて、それぞれの移動部9aの前後方向Lの移動量を制御する。これに伴い、それぞれの後端部保持部8によって保持されている帯状ゴム部材Rの被保持部分周辺の前後方向Lの伸長程度が調整される。
【0031】
次に、製造装置1を用いて目標長さGの帯状ゴム部材Rを製造する手順の一例を説明する。
【0032】
図5に例示するように、所定長さに切断された帯状ゴム部材Rが載置されたコンベヤベルト2aを回転駆動することにより、帯状ゴム部材Rが前方へ搬送される。帯状ゴム部材Rは、搬送コンベヤ2の後端部で押圧ローラ13aによって押圧される。したがって、帯状ゴム部材Rは搬送コンベヤ2に載置された直後に、コンベヤベルト2aの載置面に圧着されつつ、コンベヤベルト2aに平置き状態で載置される。
【0033】
それぞれの位置センサ13が、下方を通過する帯状ゴム部材Rの前端および後端を検知する。これにより、帯状ゴム部材Rの前端および後端が幅方向Wに渡って検知され、その検知データは逐次、制御部12に入力される。この検知データは、帯状ゴム部材Rが平置き状態に載置された搬送コンベヤ2を稼働させずに、位置センサ13を前後方向Lに移動させて取得することもできる。即ち、この検知データは、帯状ゴム部材Rとコンベヤベルト2aを相対的に前後方向に移動させて取得すればよい。
【0034】
制御部12は、位置センサ13による検知データと搬送コンベヤ2による搬送速度とに基づいて、帯状ゴム部材Rの幅方向Wでの長さの分布データを算出する。これにより、図6に例示する帯状ゴム部材Rの形状が把握される。図6中の一点鎖線は、所定長さに切断された時点での帯状ゴム部材Rの形状を示している。即ち、位置センサ13による検知データによって、帯状ゴム部材Rの幅方向Wでの収縮長さの分布データを取得できる。図6では、前端部Raおよび後端部Rbは前後方向Lに収縮していて、その収縮長さは幅方向Wで一律になっていない。尚、帯状ゴム部材Rは幅方向Wにも収縮するが、前後方向Lに比して収縮量が著しく小さく無視できる程度である。
【0035】
帯状ゴム部材Rの幅方向Wの特定位置で収縮がほとんど生じないことが判明している場合は、この幅方向Wの特定位置での帯状ゴム部材Rの長さを基準することもできる。そして、この特定位置での基準長さに対して、位置センサ13による検知データに基づいて、幅方向Wのその他の位置での帯状ゴム部材Rの長さを算出して、帯状ゴム部材Rの幅方向Wでの長さの分布データ(収縮長さの分布データ)を算出することもできる。
【0036】
ここで例えば、並列されたそれぞれの後端部保持部8を個別に、対応する移動部9a、位置センサ13とともに幅方向Wに移動可能な構成にすることもできる。そして、1組の後端部保持部8、移動部9a、位置センサ13を、上述した幅方向Wの特定位置に移動、配置する。その他の組(後端部保持部8、移動部9a、位置センサ13)は例えば、幅方向Wに隣り合うどうしが予め設定された間隔になるように幅方向Wに移動させて配置する。
【0037】
ところで、所定長さに切断された帯状ゴム部材Rは、拘束されていない状態では経時的に収縮する。この実施形態では、図5に例示するように、位置センサ13により帯状ゴム部材Rの前端および後端を幅方向Wに渡って検知する前に、平置き状態の帯状ゴム部材Rの上面を押圧ローラ13aが転動して、帯状ゴム部材Rがコンベヤベルト2aに圧着されている。そのため、位置センサ13による検知中における帯状ゴム部材Rの収縮が抑制される。これに伴い、帯状ゴム部材Rの幅方向Wでの長さの分布データをより精度よく取得できる。
【0038】
コンベヤベルト2aの載置面が、平置き状態で載置された帯状ゴム部材Rが前後方向Lにずれることなく付着し、かつ、前後方向Lに非伸縮の状態になっていると、位置センサ13による検知中での帯状ゴム部材Rの収縮を抑制するには益々有利になる。例えば、コンベヤベルト2aはプーリ間に張設されているので載置面は非伸縮の状態になっている。そこで、その載置面として、置き状態で載置された帯状ゴム部材Rが前後方向Lにずれることなく付着する仕様(帯状ゴム部材Rに対する付着性に優れた材質や表面処理など)を採用するとよい。
【0039】
次いで、図7に例示するように、前端部保持部5を下方移動させて前端部Raの上面に当接させて空気を吸引することで吸着させる。また、後端部保持部8を下方移動させて吸着パッド8aを後端部Rbの上面に当接させて空気を吸引することで吸着させる。
【0040】
この吸着パッド8aの下方移動に伴って、針状体8bが帯状ゴム部材Rの厚さ方向中途の位置まで突き刺さる。この工程では、前端部押圧部6は前端部Raに接触しない上方位置にあり、押圧ローラ11は後端部Rbに接触しない上方位置にある。尚、コンベヤベルト2aに帯状ゴム部材Rが載置されていない状態で、吸着パッド8aをコンベヤベルト2aの位置まで下方移動させても針状体8bはコンベヤベルト2aに接触しない設定になっている。
【0041】
帯状ゴム部材Rの厚みは幅方向Wで一定ではなく、変化している場合が多い。即ち、帯状ゴム部材Rは、単純な断面四角形ではなく特有の横断面形状(プロファイル)を有していることが多いので、それぞれの吸着パッド8aが吸着する位置での帯状ゴム部材Rの厚み(重さ)は同一ではない。そこで、それぞれの吸着パッド8aによる吸着力は同一に設定することに限らず、それぞれの吸着パッド8aが吸着する位置での帯状ゴム部材Rの厚みに応じて、異なる設定にすることもできる。例えば、帯状ゴム部材Rの厚みがより大きい位置で吸着する吸着パッド8aは、吸引力をより強くする。前端部保持部5の吸着パッドについても同様に、幅方向Wの位置によって吸引力が異なる設定にすることもできる。
【0042】
このようにして、前端部Raを前端部保持部5により保持し、後端部Rbを後端部保持部8により保持した状態にする。帯状ゴム部材Rは、少なくとも後端部Rbおよびその周辺をコンベヤベルト2aの上方に離間させた状態にする。この時、後端部Rbは図9に例示するように、幅方向Wに並列された複数の後端部保持部8により保持されていて、それぞれの後端部保持部8は、それぞれの後端部保持部8に対応する移動部9aによって、個別に前後方向Lに移動できる状態になっている。
【0043】
次いで、図10に例示するように、位置センサ13による検知データと目標長さGとに基づいて、制御部12によりそれぞれの移動部9aの前後方向Lの移動量が制御される。例えば、それぞれの位置センサ13が配置された幅方向Wの位置での帯状ゴム部材Rの長さと目標長さGとの差異が算出されて、それぞれの差異に基づいて、制御部12によりそれぞれの移動部9aの前後方向Lの移動量が制御される。即ち、算出されたそれぞれの差異の分だけ、それぞれの移動部9aによってそれぞれの後端部保持部8を移動させる。
【0044】
これに伴い、それぞれの後端部保持部8によって保持されている後端部Rbの被保持部分周辺の前後方向Lの伸長具合が調整される。例えば、帯状ゴム部材Rの前後方向Lの収縮がより大きい幅方向位置にある後端部保持部8では、前後方向Lの移動量がより大きくされる。この実施形態では、図中の上側3個の移動部9aが上側に位置する程、移動量がより大きくなっていて、図中の下側3個の移動部9aの移動量はゼロになっている。
【0045】
このような移動量の制御の結果、図11に例示するように、帯状ゴム部材Rの長さは目標長さGに伸長される。図11中の破線は伸長させる前の帯状ゴム部材Rの後端を示している。この実施形態では、後端部Rb側のみが伸長されていて前端部Raは実質的に伸長されていないが、幅方向Wの全長に渡って、帯状ゴム部材Rの長さが概ね目標長さGになっている。
【0046】
後端部保持部8として、後端部Rbの上面を吸着して保持する吸着パッド8aを採用すると、後端部Rbに不要な変形を与えずに保持するには有利になる。この実施形態のように、針状体8bを採用することで、後端部Rbを確実に保持するには有利になるので、後端部Rbを前後方向Lに必要量、伸長させ易くなる。
【0047】
それぞれの移動部9aの前後方向Lの移動速度は異ならせることもできるが、同じ速度に設定することが好ましい。それぞれの移動速度を同じ速度に設定することで、それぞれ後端部保持部8の前後方向Lの移動量が異なる場合でも、伸長させる未加硫ゴム(後端部Rb)に対して、無理な外力を作用させずに損傷する等の不具合の発生を防止するには有利になる。
【0048】
上記のように、帯状ゴム部材Rの前端部Raと後端部Rbの少なくとも一方を、幅方向Wに並列された複数の保持部8により保持して、位置センサ13による検知データと目標長さGとに基づいて、それぞれの保持部8を個別に前後方向に移動させることで、収縮する帯状ゴム部材Rを、精度よく幅方向W全体に渡って目標長Gさに伸長させることができる。経時的な収縮が大きい帯状ゴム部材Rであっても、目標長Gさにすることが可能になる。
【0049】
図12に例示するように、帯状ゴム部材Rは特有の横断面形状(プロファイル)を有していることが多い。このような帯状ゴム部材Rに対しては、図12(A)に例示するように、複数の押圧ローラ13aを幅方向Wに並列して、それぞれを独立して上下移動させる構成にするとよい。或いは、図12(B)に例示するように、1本の押圧ローラ13aを幅方向Wの途中で外径を異ならせた構成にするとよい。即ち、帯状ゴム部材Rの横断面形状(プロファイル)に応じて、押圧ローラ13aの外径を適切に設定する。
【0050】
図12に例示した押圧ローラ13aによれば、帯状ゴム部材Rの変形を抑えつつ、強固にコンベヤベルト2aに圧着させ易くなる。これに伴い、帯状ゴム部材Rの経時的な収縮を抑制するには益々有利になる。尚、押圧ローラ13aを省略して、上述した実施形態の後端部保持機構7の押圧ローラ11を、押圧ローラ13aとして使用することもできる。
【0051】
図13に例示するように、特有の横断面形状(プロファイル)を有している帯状ゴム部材Rに対しては、ブロックベース9bに対して、シムなどの高さ調整部8cを介在させて吸着パッド8aを取り付けた構造にするとよい。即ち、帯状ゴム部材Rの横断面形状(プロファイル)に応じて、高さ調整部8cを介在させることで、並列されているそれぞれの吸着パッド8aの上下位置を適切に設定する。これにより、それぞれの吸着パッド8aによって後端部Rbの変形を抑えつつ、強固に吸着保持するには有利になる。針状体8bによる保持力も高めることができる。
【0052】
目標長さGにした帯状ゴム部材Rは、図14に例示するように成形ドラム15の外周面15a上に直ちに巻き付けられて、環状ゴム部材RCを製造するために使用される。そこで、コンベヤベルト2aを回転駆動させて帯状ゴム部材Rを成形ドラム15に向かって搬送する。この時、前後進シリンダ3aによって前端部保持機構4を、搬送される帯状ゴム部材Rに同期させて同速度で前進移動させる。また、後端部保持機構7を、搬送される帯状ゴム部材Rに同期させて同速度でフレーム3に沿って前進移動させる。次いで、成形ドラム15の回転を停止した状態で、前端部保持部5を下方移動させ、保持を解除した前端部Raを成形ドラム15の外周面15a上に配置する。ここで、前端部押圧部6を下方移動して、前端部Raを外周面15aにしっかりと付着させる。前端部Raを、成形ドラム15の外周面15a上に配置する位置は、ドラム周方向で言えば、成形ドラム15の頂部にするよい。これにより、前端部Raをより安定して外周面15aに位置決めして付着させ易くなる。
【0053】
次いで、成形ドラム15を回転させるとともに、この回転に同期させてコンベヤベルト2aを回転駆動させて帯状ゴム部材Rを成形ドラム15に向かって搬送し、かつ、後端部保持機構7を、搬送される帯状ゴム部材Rに同期させてフレーム3に沿って前進移動させる。外周面15a上での周速度と、搬送コンベヤ2による搬送速度と、後端部保持機構7の移動速度とは同じ速度にするとよい。
【0054】
次いで、後端部保持部8を下方移動させて、保持している後端部Rbを、外周面15a上に巻き付けられている前端部Raに当接させる。その後、図15に例示するように、吸着パッド8aによる吸引を停止して後端部Rbに対する保持を解除する。
【0055】
この工程の直後に、押圧バー10を下方移動させて、後端部Rbの上面を押圧することで、後端部Rbと前端部Raとを圧着して環状ゴム部材RCを成形する。このように、後端部Rbの上面側に配置されて幅方向Wに延在する押圧バー10を、後端部Rbの上面に向かって移動させて後端部Rbを押圧すると、後端部Rbと前端部Raとを強固に接合できる。後端部保持部8による保持が解除されると、帯状ゴム部材Rには収縮しようとするが、押圧バー10によって後端部Rbを押圧することで、後端部Rbと前端部Raとの接合部分の口開きを防止でき、帯状ゴム部材Rの収縮を抑えるにも有利になる。
【0056】
次いで、図16に例示するように、押圧ローラ11を下方移動させて環状ゴム部材RCの外周面に当接させ、成形ドラム15を回転させる。これにより、後端部Rbと前端部Raとの接合部分を押圧ローラ11によってさらに圧着して、口開きを確実に防止する。
【0057】
尚、図10に例示した後端部Rbを伸長させる工程を行うタイミングは、先の実施形態で例示した場合に限らず、所望のタイミングで行うことができる。例えば、帯状ゴム部材Rの大部分を成形ドラム15の外周面15a上に巻き付けた状態(後端部Rbおよびその周辺部分を除いて巻き付けた状態)で行うこともできる。
【符号の説明】
【0058】
1 製造装置
2 搬送コンベヤ(載置部)
2a コンベヤベルト
3 フレーム
3a 前後進シリンダ
4 前端部保持機構
5 前端部保持部
6 前端部押圧部
7 後端部保持機構
8 後端部保持部
8a 吸着パッド
8b 針状体
8c 高さ調整部
9a 移動部
9b ブロックベース
10 押圧バー
11 押圧ローラ
12 制御部
13 位置センサ
13a 押圧ローラ
14 上流側搬送コンベヤ
14a カッター
15 成形ドラム
15a 外周面
R 帯状ゴム部材
Ra 前端部
Rb 後端部
RC 環状ゴム部材
G 目標長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16