(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
解析対象の信号であるターゲット信号(y)のパワースペクトルに占める、対象とする信号源が発生させた信号源信号(x)のパワースペクトルの割合を算出する信号源推定装置であって、
前記ターゲット信号と、検出子(14)により検出された信号である検出子信号(z)とを取得し、前記ターゲット信号および前記検出子信号からそれぞれ周波数スペクトルを算出する周波数変換部(40)と、
前記ターゲット信号の周波数スペクトル(Y)から前記ターゲット信号のパワースペクトルを算出し、前記検出子信号の周波数スペクトル(Z)から前記検出子信号のパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部(50)と、
前記検出子信号の周波数スペクトルと前記ターゲット信号の周波数スペクトルのクロススペクトルを算出するクロススペクトル算出部(60)と、
前記ターゲット信号のパワースペクトル、前記検出子信号のパワースペクトル、前記クロススペクトルを平均化する平均化処理部(70)と、
平均化された前記クロススペクトルの2乗を、平均化された前記ターゲット信号のパワースペクトルと平均化された前記検出子信号のパワースペクトルの積で割った値であるコヒーレンス関数の値を算出し、算出した値を前記ターゲット信号のパワースペクトルに占める前記信号源信号のパワースペクトルの割合を示す値として出力するコヒーレンス関数算出部(80)と、
前記コヒーレンス関数の値に、平均化された前記ターゲット信号のパワースペクトルを乗じた値を、前記ターゲット信号のパワースペクトルに含まれている前記信号源信号に起因する成分のパワースペクトルとして算出する信号源起因パワースペクトル算出部(90)と、を備える信号源推定装置。
解析対象の信号であるターゲット信号(y)のパワースペクトルに含まれている、対象とする信号源が発生させた信号源信号(x)に起因する成分のパワースペクトルを算出する信号源推定装置であって、
前記ターゲット信号と、検出子(14)により検出された信号である検出子信号(z)とを取得し、前記ターゲット信号および前記検出子信号からそれぞれ周波数スペクトルを算出する周波数変換部(40)と、
前記検出子信号の周波数スペクトルから前記検出子信号のパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部(50)と、
前記検出子信号の周波数スペクトルと前記ターゲット信号の周波数スペクトルとのクロススペクトルを算出するクロススペクトル算出部(60)と、
前記検出子信号のパワースペクトル、前記クロススペクトルを平均化する平均化処理部(70)と、
平均化された前記クロススペクトルを、平均化された前記検出子信号のパワースペクトルで割った値を算出する伝達関数推定部(180)と、
前記伝達関数推定部が算出した値を2乗した値に、前記検出子信号のパワースペクトルを乗じた値を、前記ターゲット信号のパワースペクトルに含まれている前記信号源信号に起因する成分のパワースペクトルとして算出する信号源起因パワースペクトル算出部(184)と、を備える信号源推定装置。
前記パワースペクトル算出部は、前記検出子信号のパワースペクトルを算出することに加えて、前記ターゲット信号の周波数スペクトルから前記ターゲット信号のパワースペクトルを算出し、
前記平均化処理部は、前記ターゲット信号のパワースペクトルも平均化し、
前記ターゲット信号に含まれている前記信号源信号に起因する成分のパワースペクトルを、平均化された前記ターゲット信号のパワースペクトルで割った値であるコヒーレンス関数の値を算出し、算出した値を前記ターゲット信号のパワースペクトルに占める前記信号源信号のパワースペクトルの割合を示す値として出力するコヒーレンス関数算出部(190)を備える請求項2に記載の信号源推定装置。
前記ターゲット信号のパワースペクトルに占める前記信号源信号のパワースペクトルの割合を示す値を、前記信号源推定装置の操作者に向けて出力する出力装置(30)を備える請求項3に記載の信号源推定装置。
平均化された前記クロススペクトルに基づいて、平均化された前記クロススペクトルの偏角を示す量である偏角相当量を決定し、前記偏角相当量を前記出力装置に出力する偏角決定部(92)を備える請求項4または5に記載の信号源推定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている相関度は、漠然とした近さを表すという以上の意味をもっておらず、相関度に対応する物理量は存在しない。そのため、解析対象の信号をターゲット信号とし、ある信号源が発生させた信号を信号源信号としたとき、ターゲット信号のパワースペクトルに占める信号源信号のパワースペクトルの割合を定量的に算出することはできない。もちろん、特許文献1に開示されている技術では、ターゲット信号のパワースペクトルに含まれている信号源信号に起因する成分のパワースペクトルを算出することもできない。また、特許文献1に開示されている技術では、ターゲット信号に含まれる信号源信号が発生している方向を推定することも困難である。
【0005】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、第1の目的は、ターゲット信号のパワースペクトルに占める信号源信号のパワースペクトルの割合を定量的に算出することができる信号源推定装置を提供することにある。
【0006】
第2の目的は、ターゲット信号のパワースペクトルに含まれている信号源信号に起因する成分のパワースペクトルを算出することができる信号源推定装置を提供することにある。
【0007】
第3の目的は、ターゲット信号に含まれる信号源信号が発生している方向を推定することができる信号源推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
第1の目的を達成するための1つの開示は、
解析対象の信号であるターゲット信号(y)のパワースペクトルに占める、対象とする信号源が発生させた信号源信号(x)のパワースペクトルの割合を算出する信号源推定装置であって、
ターゲット信号と、検出子(14)により検出された信号である検出子信号(z)とを取得し、ターゲット信号および検出子信号からそれぞれ周波数スペクトルを算出する周波数変換部(40)と、
ターゲット信号の周波数スペクトル(Y)からターゲット信号のパワースペクトルを算出し、検出子信号の周波数スペクトル(Z)から検出子信号のパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部(50)と、
検出子信号の周波数スペクトルとターゲット信号の周波数スペクトルのクロススペクトルを算出するクロススペクトル算出部(60)と、
ターゲット信号のパワースペクトル、検出子信号のパワースペクトル、クロススペクトルを平均化する平均化処理部(70)と、
平均化されたクロススペクトルの2乗を、平均化されたターゲット信号のパワースペクトルと平均化された検出子信号のパワースペクトルの積で割った値であるコヒーレンス関数の値を算出し、算出した値をターゲット信号のパワースペクトルに占める信号源信号のパワースペクトルの割合を示す値として出力するコヒーレンス関数算出部(80)と
、
コヒーレンス関数の値に、平均化されたターゲット信号のパワースペクトルを乗じた値を、ターゲット信号のパワースペクトルに含まれている信号源信号に起因する成分のパワースペクトルとして算出する信号源起因パワースペクトル算出部(90)と、を備える。
【0010】
この信号源推定装置は、ターゲット信号と検出子信号とから、それらの信号のコヒーレンス関数の値を算出する。このコヒーレンス関数の値は、後に詳しく説明するように、ターゲット信号のパワースペクトルに占める信号源信号のパワースペクトルの割合を示す。よって、この信号源推定装置は、ターゲット信号のパワースペクトルに占める信号源信号のパワースペクトルの割合を定量的に算出することができる。
【0011】
第2の目的を達成するための1つの開示は、
解析対象の信号であるターゲット信号(y)のパワースペクトルに含まれている、対象とする信号源が発生させた信号源信号(x)に起因する成分のパワースペクトルを算出する信号源推定装置であって、
ターゲット信号と、検出子(14)により検出された信号である検出子信号(z)とを取得し、ターゲット信号および検出子信号からそれぞれ周波数スペクトルを算出する周波数変換部(40)と、
検出子信号の周波数スペクトルから検出子信号のパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部(50)と、
検出子信号の周波数スペクトルとターゲット信号の周波数スペクトルとのクロススペクトルを算出するクロススペクトル算出部(60)と、
検出子信号のパワースペクトル、クロススペクトルを平均化する平均化処理部(70)と、
平均化されたクロススペクトルを、平均化された検出子信号のパワースペクトルで割った値を算出する伝達関数推定部(180)と、
伝達関数推定部が算出した値を2乗した値に、検出子信号のパワースペクトルを乗じた値を、ターゲット信号のパワースペクトルに含まれている信号源信号に起因する成分のパワースペクトルとして算出する信号源起因パワースペクトル算出部(184)と、を備える。
【0012】
この信号源推定装置は、上記のようにして、ターゲット信号と検出子信号とから、ターゲット信号のパワースペクトルに含まれている信号源信号に起因する成分のパワースペクトルを算出することができる。
【0013】
第3の目的を達成するための1つの開示は、
解析対象の信号であるターゲット信号(y)に含まれる、対象とする信号源信号(x)が発生している方向を推定する信号源推定装置であって、
ターゲット信号と、検出子(14)により検出された信号である検出子信号(z)とを取得し、ターゲット信号および検出子信号からそれぞれ周波数スペクトルを算出する周波数変換部(40)と、
検出子信号の周波数スペクトルとターゲット信号の周波数スペクトルとのクロススペクトルを算出するクロススペクトル算出部(60)と、
クロススペクトルを平均化する平均化処理部(70)と、
平均化されたクロススペクトルに基づいて、平均化されたクロススペクトルの偏角を示す量である偏角相当量を決定する偏角決定部(92)と、
偏角相当量を出力する出力装置(30)と、を備える。
【0014】
この信号源推定装置が算出する偏角相当量は、検出子が信号源信号を検出する位置が、信号源に対して接近あるいは離隔すると、その大きさが変化する。よって、検出子が信号源信号を検出する位置を変化させつつ、偏角相当量の変化を確認することで、ターゲット信号に含まれる信号源信号が発生している方向を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、信号源推定システム10の全体構成図である。信号源推定システム10は、ターゲット信号検出線12、プローブ14、処理装置20、表示装置30を備えている。
【0017】
ターゲット信号検出線12は、ターゲット信号yを検出しようとする箇所に接続されている。ターゲット信号yは解析対象の信号である。解析する内容は、ターゲット信号yに含まれる信号源信号xの割合である。信号源信号xは、ある対象とする信号源が発生させた信号である。
【0018】
信号源信号xがターゲット信号yにおいて不要な信号であれば、信号源信号xはノイズであることになり、信号源はノイズ源である。信号源信号xがノイズである場合、ターゲット信号yにどの程度、ノイズが含まれているかを解析することになる。ターゲット信号yを検出しようとする箇所の一例としては、たとえば、アンテナがある。
【0019】
なお、ターゲット信号yは、このようにターゲット信号検出線12を用いて検出する以外に、電界プローブあるいは磁界プローブを用いて検出したり、アンテナにより検出したりすることができる。
【0020】
プローブ14は、検出子信号であるプローブ信号zを検出するための検出子である。プローブ信号zは、ターゲット信号yのパワースペクトルW
YYに占める、信号源信号xのパワースペクトルの割合を算出するために検出する信号である。プローブ信号zは、プローブ14の伝達関数Hによる影響だけ、信号源信号xとは相違する。
【0021】
プローブ14は操作者が手にもって信号源に接近させる。なお、プローブ信号zすなわち検出子信号もアンテナを用いて検出してもよいし、直接検出してもよい。
図1では、ECU16が備える複数の電子機器18がそれぞれ信号源である。プローブ信号zおよびターゲット信号yを検出する対象とする装置は、ECU16のような小型のものに限られず、車両などであってもよい。
【0022】
処理装置20は、信号源推定装置に相当するものであり、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、処理装置20は、CPU、ROM、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。ROMには、汎用的なコンピュータを処理装置20として機能させるためのプログラムが格納されている。CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、処理装置20は、
図2に示す処理を実行する。
図2に示す処理が実行されることは、プログラムに対応する方法が実行されることを意味する。なお、処理装置20は、コンピュータにより実現する以外に、専用ハードウエア論理回路により実現されてもよい。ハードウエア論理回路は、たとえば、ASIC、FPGAである。また、処理装置20は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより実現されてもよい。
【0023】
処理装置20が実行する処理の詳細は後述するが、処理装置20は、ターゲット信号yに占める信号源信号xのパワースペクトルの割合を示す値、および、ターゲット信号yに含まれている信号源信号xに起因する成分のパワースペクトルW
VVを算出する。
【0024】
表示装置30は、出力装置の一例であり、処理装置20が算出した、ターゲット信号yに占める信号源信号xのパワースペクトルの割合を示す値を操作者に向けて表示する。この値はγ
ZY2である。γ
ZY2がターゲット信号yに占める信号源信号xのパワースペクトルの割合を示す値となる理由は後述する。表示装置30は、ターゲット信号yに含まれている信号源信号xに起因するパワースペクトルW
VVも、操作者に向けて表示する。
【0025】
表示装置30は、二次元グラフが可能な装置であってもよいし、それよりも単純な装置でもよい。たとえば、LEDなどの表示灯の点灯数により、γ
ZY2、W
VVを表示してもよい。また、表示装置30は指針によりγ
ZY2、W
VVを表示するメータ表示装置でもよい。また、2種類の表示装置30を備え、γ
ZY2とW
VVを異なる表示装置30に表示してもよい。
【0026】
[処理装置20の説明]
図2をもとに、処理装置20が実行する機能を説明する。処理装置20は、周波数変換部40、パワースペクトル算出部50、クロススペクトル算出部60、平均化処理部70、コヒーレンス関数算出部80、乗算部90、偏角決定部92を備える。
【0027】
周波数変換部40は、2つのフレーム切り出し部41、42と、2つの離散フーリエ変換部(以下、DFT部)43、44とを備える。一方のフレーム切り出し部41には、図示しないAD変換回路によりデジタル値に変換されたターゲット信号yが入力される。フレーム切り出し部41は、逐次入力されるターゲット信号yから、DFT部43での一度の処理に用いる時間分の信号を切り出し、窓関数を乗じる。そして、切り出した信号をDFT部43に入力する。
【0028】
他方のフレーム切り出し部42には、図示しないAD変換回路によりデジタル値に変換されたプローブ信号zが入力される。フレーム切り出し部42は、逐次入力されるプローブ信号zから、DFT部44での一度の処理に用いる時間分の信号を切り出す。そして、切り出した信号をDFT部44に入力する。
【0029】
DFT部43は、入力されたターゲット信号yを離散フーリエ変換する。フーリエ変換後の信号は、ターゲット信号yが周波数スペクトルに変換された信号である。変換後の信号をターゲット信号スペクトルYとする。
【0030】
DFT部44は、入力されたプローブ信号zを離散フーリエ変換する。フーリエ変換後の信号は、プローブ信号zが周波数スペクトルに変換された信号である。変換後の信号をプローブ信号スペクトルZとする。
【0031】
パワースペクトル算出部50は、ターゲット信号スペクトルYが入力される第1パワースペクトル算出部51とプローブ信号スペクトルZが入力される第2パワースペクトル算出部52とを備える。第1パワースペクトル算出部51は、ターゲット信号スペクトルYのパワースペクトル、すなわち、|Y|
2を算出する。第2パワースペクトル算出部52は、プローブ信号スペクトルZのパワースペクトル、すなわち、|Z|
2を算出する。
【0032】
クロススペクトル算出部60は、プローブ信号スペクトルZとターゲット信号スペクトルYのクロススペクトルを算出する。本実施形態では、具体的には、プローブ信号スペクトルZの共役複素数Z
*とターゲット信号スペクトルYとの積を算出する。
【0033】
平均化処理部70は、第1平均化処理部71、第2平均化処理部72、第3平均化処理部73を備える。第1平均化処理部71は、ターゲット信号スペクトルYのパワースペクトルを平均化する。ターゲット信号スペクトルYのパワースペクトルの平均値をW
YYとする。第2平均化処理部72は、プローブ信号スペクトルZのパワースペクトルを平均化する。プローブ信号スペクトルZのパワースペクトルの平均値をW
ZZとする。第3平均化処理部73はクロススペクトルを平均化する。クロススペクトルの平均値をW
ZYとする。なお、以降、記号Wで示す値は、平均であることを表記していなくても平均化処理された後の値を意味するものとし、「平均」は省略する。
【0034】
これら平均化処理部70においてスペクトルを平均化する時間は任意に設定可能である。スペクトルを平均化する時間は、たとえば、数十ミリ秒程度とすることができる。また、スペクトルを平均化する時間は、数秒程度としてもよい。3つの平均化処理部71、72、73の平均化時間は互いに同一とすることができる。平均化処理の手法は、n項移動平均、指数移動平均など、種々の平均化手法を採用することができる。
【0035】
コヒーレンス関数算出部80は、(1)式に示すコヒーレンス関数の値γ
ZY2を算出する。コヒーレンス関数算出部80は算出したコヒーレンス関数の値γ
ZY2を表示装置30に表示させる。コヒーレンス関数の値γ
ZY2は、後述するように、ターゲット信号yに占める信号源信号xのパワースペクトルの割合を示す。
【0036】
【数1】
乗算部90は、コヒーレンス関数の値γ
ZY2に、ターゲット信号スペクトルYのパワースペクトルW
YYを乗じる。乗じた値は、次に詳しく説明するように、ターゲット信号yに含まれている信号源信号xに起因する成分のパワースペクトルW
VVになる。乗算部90は、信号源起因パワースペクトル算出部に相当する。また、乗算部90は、パワースペクトルW
VVを表示装置30に表示させる。なお、算出するパワースペクトルW
VVは、推定値であることから、
図2では、W
VVの上に、推定値を意味する記号を付している。
【0037】
偏角決定部92は、クロススペクトルW
ZYの偏角を決定する。クロススペクトルは複素数であるので、その複素数の実部の大きさと虚部の大きさから偏角を決定する。偏角は、プローブ信号スペクトルZとターゲット信号スペクトルYの位相差∠W
ZYを意味する。
【0038】
偏角決定部92は、位相差∠W
ZYを表示装置30に表示する。また、表示装置30には、処理装置20が算出した値のうち、任意の1種類以上の値を表示することができる。すなわち、表示装置30には、位相差∠W
ZY、パワースペクトルW
VV、コヒーレンス関数の値γ
ZY2、ターゲット信号スペクトルYのパワースペクトルW
YY、プローブ信号スペクトルZのパワースペクトルW
ZZ、クロススペクトルW
ZYのうちのいずれか1つ以上を表示する。
【0039】
[数学的説明]
次に、コヒーレンス関数の値γ
ZY2がターゲット信号yに占める信号源信号xのパワースペクトルの割合を示すこと、および、W
VVがターゲット信号yに含まれている信号源信号xに起因する成分のパワースペクトルになることを理論的に説明する。
【0040】
図3に、一例とする測定系をモデル化した図を示す。
図3に示す測定系では、3つの信号源A、B、Cからの信号x
A、x
B、x
Cが、それぞれ、伝達ゲインG
A、G
B、G
Cで伝達された後、合成されてターゲット信号yとなっている。
【0041】
各信号x
A、x
B、x
Cは相互に無相関であるとする。このとき、ある1つの信号源に着目したとき、他の信号源はノイズnとして1つにまとめることができる。したがって、
図3に例示する測定系を含め、どのような複雑な測定系でも、測定系は
図4に一般化することができる。
【0042】
図4より、ターゲット信号yの周波数スペクトルであるターゲット信号スペクトルYは(2)式で表すことができる。また、プローブ信号zの周波数スペクトルであるプローブ信号スペクトルZは(3)式で表すことができる。なお、Gは信号源信号xがターゲット信号yの観測点まで伝達されるときの伝達関数、Hはプローブの伝達関数である。Xは信号源信号xの周波数スペクトル、Nはノイズの周波数スペクトルである。
【0043】
Y=GX+N (2)
Z=HX (3)
【0044】
(2)式、(3)式より、W
ZZは(4)式の変形ができ、W
ZYは(5)式の変形ができる。(5)式の変形には、ノイズnと信号源信号xとが無相関であることを使った。
【数4】
【0045】
【数5】
これら(4)式と(5)式を(1)式に代入すると、(6)式が得られる。
【数6】
【0046】
(6)式においてW
XXは、信号源信号xのパワースペクトルの平均値である。(6)式から、コヒーレンス関数の値γ
ZY2は、ターゲット信号yに占める信号源信号xのパワースペクトルの割合を示すことが証明された。
【0047】
コヒーレンス関数の値γ
ZY2は、プローブ信号zを用いて算出しており、プローブ信号zと信号源信号xの間には、伝達関数Hの影響分の相違がある。しかし、上記式を用いた証明により、コヒーレンス関数の値γ
ZY2には、伝達関数Hは影響しないことが示された。
【0048】
さらに、V=GXであるので、(7)式が成立する。なお、Vは、信号vの周波数スペクトルであり、信号vは信号源信号xが伝達関数Gによりターゲット信号yの観測点まで伝達された信号である。
【0050】
(7)式を変形すると(8)式が得られる。
【0052】
(8)式において、左辺のW
VVは、ターゲット信号yのパワースペクトルに含まれている信号源信号xに起因する成分のパワースペクトルである。よって、コヒーレンス関数の値γ
ZY2に、ターゲット信号スペクトルYのパワースペクトルW
YYを乗じることで、ターゲット信号yのパワースペクトルに含まれている信号源信号xに起因する成分のパワースペクトルが算出できることが証明された。
【0053】
[シミュレーション結果]
次に、シミュレーション結果を示す。シミュレーションした測定系を
図5に示す。
図5に示す測定系は、2つの信号源A、Bがある。信号源Aが出力する信号をx1、その信号x1のパワースペクトルをW(x1)とする。また、信号源Bが出力する信号をx2、信号x2のパワースペクトルをW(x2)とする。伝達関数G1は、信号x1が処理装置20に入力されるまで伝達される際の伝達関数であり、伝達関数G1で伝達された後の信号をy1、その信号y1のパワースペクトルをW(y1)とする。伝達関数G2は、信号x2が処理装置20に入力されるまで伝達される際の伝達関数であり、伝達関数G2で伝達された後の信号をy2、その信号y2のパワースペクトルをW(y2)とする。信号y1と信号y2とが合成された信号がターゲット信号(y1+y2)である。このターゲット信号(y1+y2)が処理装置20に入力される。ターゲット信号(y1+y2)のパワースペクトルをW(y1+y2)とする。Hはプローブ14の伝達関数である。
【0054】
シミュレーションソフトはMATLAB(登録商標)を用いた。シミュレーション条件は以下の通りである。
・サンプリングレート 250MHz
・信号の長さ 0.01s
・信号x1、x2 周期0.2μsのインパルス列。二つの信号の周期は0.004%ずれている。
【0055】
図6は、パワースペクトルW(x1)、W(x2)を示している。
図7は伝達関数G1とパワースペクトルW(y1)を示している。
図8は伝達関数G2とパワースペクトルW(y2)を示している。
図9は、パワースペクトルW(y1+y2)を示している。
図10は、伝達関数Hと、プローブ14により信号源Aが出力する信号x1を観測した場合のパワースペクトルW(z1)と、プローブ14により信号源Bが出力する信号x2を観測したときのパワースペクトルW(z2)を示す図である。
【0056】
図6に示すように、W(x1)とW(x2)には差がほとんどない。その結果、
図10に示すW(z1)とW(z2)にも差がほとんどない。したがって、
図9に示すW(y1+y2)と、W(z1)あるいはW(z2)とを比較しても、ターゲット信号に含まれるある周波数成分の信号源を推定することは不可能である。
【0057】
図11は、W(z1)とW(y1+y2)とのコヒーレンス関数の値C(z1,y1+y2)を示す図である。
図12は、W(z2)とW(y1+y2)とのコヒーレンス関数の値C(z2,y1+y2)を示す図である。
図11と
図7、および、
図12と
図8を見比べると、コヒーレンス関数の値は、処理装置20に入力されるターゲット信号(y1+y2)に占める信号源信号xの割合を示していることが分かる。
【0058】
図13は、
図11に示したコヒーレンス関数の値C(z1,y1+y2)にパワースペクトルW(y1+y2)を乗じた値と、パワースペクトルW(y1)を比較して示している。
図14は、
図12に示したコヒーレンス関数の値C(z2,y1+y2)にパワースペクトルW(y1+y2)を乗じた値と、パワースペクトルW(y2)を比較して示している。
【0059】
図13、
図14から、コヒーレンス関数の値にパワースペクトルW(y1+y2)を乗じることで、処理装置20に入力される信号(すなわちターゲット信号)のパワースペクトルに含まれる、信号x1、x2に起因する信号成分のパワースペクトルを、定量的に正しく推定できていることが分かる。具体的には、処理装置20に入力される信号は、50MHz以下の周波数に関しては信号源Aが信号源であり、70MHz以上については信号源Bが信号源であることが分かる。
【0060】
このように、ターゲット信号のパワースペクトルから、信号源信号のパワースペクトルを抽出できるので、強い信号にマスキングされて観測できない信号源信号を抽出することもできる。
【0061】
[信号源方向の推定例]
図15は、信号源を推定する場合の信号源推定システム10の使用例を示す図である。
図15に示す例では、信号源推定システム10は、アンテナATに受信される電波の信号源を推定するために用いられている。
【0062】
図15では、信号源A、B、Cが、互いにワイヤーハーネスを介して接続されている。信号源A、B、Cは、それぞれ、電子部品を搭載した装置である。ターゲット信号yは、アンテナATにより受信される信号である。
【0063】
ここでは、アンテナATに受信される信号の信号源が信号源Aであるとする。プローブ14を信号源Aの近くに置くとコヒーレンス関数の値は1に近づく。加えて、他の信号源にプローブ14を近づけたときのコヒーレンス関数の値が低ければ、コヒーレンス関数の値により、アンテナATに受信された電波の信号源が信号源Aであると特定できる。
【0064】
ただし、信号源Bの近くにも信号源Aからの信号が伝達されていることがある。この場合には、信号源Bの近くにプローブ14を置いた場合にもコヒーレンス関数の値が1に近くなる。そのため、信号源A、信号源Bのどちらが、アンテナATに受信された信号の信号源であるかをコヒーレンス関数の値だけからは判断できないときもある。
【0065】
しかし、このような場合であっても、信号源Aと信号源Bを結ぶワイヤーハーネスに沿ってプローブ14を移動させつつ、表示装置30に位相差∠W
ZYを表示させることで、信号源を推定することができる。
【0066】
図16に表示装置30に位相差∠W
ZYを表示する場合の表示例を示す。
図16の表示例では、各点は、大きさが振幅2乗コヒーレンスの値であり、偏角がクロススペクトルW
ZYの偏角の正負を逆にしたものである複素数を複素平面上に表示している。また、各点は周波数に対応している。
【0067】
矢印は、プローブ14を信号源に近づく方向に移動した場合の点の動きを表している。プローブ14が信号源に近づくと、それぞれの点が反時計周りに回転する、すなわち、位相が進む。つまり、位相が進む場合、プローブ14が信号源に近づいていることが分かる。プローブ14を移動させると位相が遅れていく場合は、プローブ14は信号源から遠ざかっていることが分かる。このように、プローブ14を移動させつつ偏角の変化を確認することで、信号源の方向を推定することができる。
【0068】
なお、クロススペクトルW
ZYの偏角に代えて、クロススペクトルW
ZYと同じ偏角をもつ量(以下、これを偏角相当量とする)を表示装置30に表示してもよい。偏角相当量には、クロススペクトルW
ZY自体、(9)式に示す複素コヒーレンス関数などがある。また、偏角相当量の表示態様も、
図16のように二次元的に表示する例に限られない。プローブ14の移動に伴う偏角の変化が分かれば、どのような表示態様であってもよい。
【0070】
[第1実施形態のまとめ]
以上、説明した第1実施形態の信号源推定システム10によれば、ターゲット信号yとプローブ信号zを取得し、それらの信号から、コヒーレンス関数の値γ
ZY2を算出する。プローブ信号zに伝達関数Hの影響があるにも関わらず、コヒーレンス関数の値γ
ZY2は、上述した数学的説明およびシミュレーション結果が示すように、ターゲット信号yのパワースペクトルに占める信号源信号xのパワースペクトルの割合を表している。
【0071】
よって、プローブ14の位置を変化させる等により、プローブ信号zの検出位置を変化させつつ、コヒーレンス関数の値γ
ZY2を算出すれば、ターゲット信号yのパワースペクトルに含まれる個々の信号源からの信号のパワースペクトルの割合を知ることができる。
【0072】
また、本実施形態では、コヒーレンス関数の値γ
ZY2に、ターゲット信号スペクトルYのパワースペクトルW
YYを乗じた値も算出する。この値は、上述した数学的説明およびシミュレーション結果が示すように、ターゲット信号yのパワースペクトルに含まれている信号源信号xに起因する成分のパワースペクトルである。よって、本実施形態によれば、ターゲット信号yのパワースペクトルに含まれている信号源信号xに起因する成分のパワースペクトルも知ることができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、プローブ信号スペクトルZとターゲット信号スペクトルYの位相差∠W
ZYを表示装置30に表示する。これにより、
図16を用いて説明したように、プローブ14を移動させつつ位相差∠W
ZYの変化すなわち偏角の変化を確認することで、信号源の方向を推定することができる。
【0074】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0075】
図17に第2実施形態の処理装置120を示す。処理装置120は、処理装置20に代えて用いることができるものである。
【0076】
処理装置120は、処理装置20が備えていたコヒーレンス関数算出部80、乗算部90を備えていない。代わりに、処理装置120は、伝達関数推定部180、2乗部182、乗算部184、コヒーレンス関数算出部190を備える。処理装置120の他の構成は、処理装置20と同じである。
【0077】
伝達関数推定部180は、プローブ信号zからターゲット信号yへの伝達系に、クロススペクトル法による伝達関数推定を適用する。すなわち、平均化されたクロススペクトルW
ZYを、プ
ローブ信号スペクトルZのパワースペクトルW
ZZで割る。伝達関数推定部180は、W
ZYをW
ZZで割った値を2乗部182に出力する。
【0078】
2乗部182は、伝達関数推定部180から取得した値を2乗する。乗算部184は、2乗部182が出力した値と、プローブ信号スペクトルZのパワースペクトルW
ZZの積を算出し、算出した値を表示装置30に表示する。算出した値は、次に説明するように、ターゲット信号yのパワースペクトルに含まれている信号源信号xに起因する成分のパワースペクトルW
VVである。したがって、乗算部184は信号源起因パワースペクトル算出部に相当する。
【0079】
次に、乗算部184が算出した値がパワースペクトルW
VVであることを説明する。下記(10)式は、プローブ信号スペクトルZとターゲット信号スペクトルYに対してクロススペクトル法を適用した場合の式変形であり、クロススペクトル法に、さらに、前述した(2)式、(3)式を適用している。
【0081】
(10)式を2乗し、かつW
ZZを乗じると、(11)式に示す式変形ができる。(11)式において、1行目は(10)式の両辺を2乗して、かつW
ZZを乗じた式であり、2行目は、W
ZZによる約分をし、かつ、分母分子にW
YYを乗じた式である。
【0083】
(11)式より、乗算部184が算出した値はパワースペクトルW
VVを意味していることが示された。
【0084】
コヒーレンス関数算出部190は、乗算部184が算出した値を、第1平均化処理部71にて平均化されたターゲット信号スペクトルYのパワースペクトルW
YYで割る。上述したように、乗算部184が算出した値はパワースペクトルW
VVを意味している。これをパワースペクトルW
YYで割った値は、前述した(7)式より、コヒーレンス関数の値γ
ZY2になる。コヒーレンス関数算出部190は、算出した値を表示装置30に表示する。
【0085】
この第2実施形態でも、計算手順は異なるものの、第1実施形態と同じ各種の値が算出できる。よって、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0086】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0087】
<変形例1>
実施形態では、出力装置の一例として、表示装置30を示した。しかし、出力装置は、スピーカでもよい。