特許第6881547号(P6881547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881547
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】無溶剤型接着剤組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20210524BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20210524BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20210524BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210524BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C09J175/04
   C09J175/06
   C09J133/10
   B32B27/30 A
   B32B27/40
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-189076(P2019-189076)
(22)【出願日】2019年10月16日
(65)【公開番号】特開2020-109151(P2020-109151A)
(43)【公開日】2020年7月16日
【審査請求日】2020年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2018-246795(P2018-246795)
(32)【優先日】2018年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】夏海 樹明
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕清
(72)【発明者】
【氏名】前田 諭志
(72)【発明者】
【氏名】金子 千智
【審査官】 河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−155237(JP,A)
【文献】 特開平06−287531(JP,A)
【文献】 特開2013−043936(JP,A)
【文献】 特開平06−234184(JP,A)
【文献】 特開2015−004033(JP,A)
【文献】 特開2008−303274(JP,A)
【文献】 特開2006−213801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)、及び芳香族ポリイソシアネート(C)を含有する無溶剤型接着剤組成物。
【請求項2】
前記樹脂(A)の含有量が前記ポリオール(B)に対して0.1〜10質量%である、請求項1に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(B)がポリエステルポリオールである、請求項1又は2に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(B)の含有量が、全ポリオール成分100質量%中、50質量%以上100質量%以下である、請求項1〜3いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項5】
前記樹脂(A)の酸価が250mgKOH/g以上である、請求項1〜4いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項6】
さらに、前記ポリオール(B)に対してシランカップリング剤を0.1〜10質量%含有する、請求項1〜5いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つ以上のシート状基材の間に積層された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラスチックフィルム、及び金属蒸着フィルムあるいは金属箔を複数積層して、食品、医療品、化粧品等の包装用積層体を製造する際に好適に用いられる、優れた接着機能を有する無溶剤型接着剤組成物に関する。さらに、本発明は、食品、医療品、化粧品等の包装に用いられる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医療品、化粧品等の包装材料として、アルミニウム箔等の金属箔あるいは金属蒸着フィルムとポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン等のプラスチックフィルムを多層ラミネートして複合化したものが用いられている。これらのプラスチックフィルムと金属箔あるいは金属蒸着フィルムとを張り合わせる接着剤としては、芳香族多価カルボン酸無水物を反応させたポリマーポリオール及び有機イソシアネート化合物からなるものが知られている。
【0003】
また、従来、このような金属箔を含むラミネート複合フィルムに使用される溶剤型ラミネート接着剤としては、主剤としてポリオール化合物、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含有する2液型接着剤が好適に用いられており、また金属箔への耐内容物性(耐酸性)を付与する目的で、ポリオール化合物の分子末端への酸基の導入や、添加剤としてリン酸、シランカップリング剤を併用する方法が広く知られている(例えば、特許文献1又は2)。
さらに、特許文献3には、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂を用いることで、耐熱水性及び耐酸性に優れ、接着性の経時劣化を抑制した溶剤型接着剤組成物が開示されている。
【0004】
一方、近年、法規制の強化及び環境保全又は安全性への配慮から、溶剤を含まない接着剤の要望が高まっており、金属箔と各種プラスチックフィルム間の接着に使用されるラミネート接着剤の無溶剤化が検討されている。
【0005】
しかしながら、無溶剤型接着剤は、溶剤型接着剤と比較して硬化反応速度が格段に早くなることから、例えば金属箔への耐酸性を付与する目的で主剤に酸基を導入すると、酸基のウレタン化触媒効果により、硬化がさらに促進され、主剤と硬化剤とを配合した後の粘度上昇が激しく、作業性が悪い問題点が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−94654号公報
【特許文献2】特開平2−84482号公報
【特許文献3】特開2012−184283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、配合した後の粘度上昇を抑えて作業性が優れ、耐酸性内容物適性があり、かつ経時劣化しにくい無溶剤型接着剤組成物、及び該組成物を用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔7〕に関する。
【0009】
〔1〕 (メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)、及び芳香族ポリイソシアネート(C)、を含有する無溶剤型接着剤組成物。
【0010】
〔2〕 前記樹脂(A)の含有量が前記ポリオール(B)に対して0.1〜10質量%である、〔1〕に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【0011】
〔3〕 前記ポリオール(B)がポリエステルポリオールである、〔1〕又は〔2〕に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【0012】
〔4〕 前記ポリオール(B)の含有量が、全ポリオール成分100質量%中、50質量%以上100質量%以下である、〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【0013】
〔5〕 前記樹脂(A)の酸価が250mgKOH/g以上である、〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【0014】
〔6〕 さらに、前記ポリオール(B)に対してシランカップリング剤を0.1〜10質量%含有する、〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【0015】
〔7〕 〔1〕〜〔6〕いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つ以上のシート状基材の間に積層された積層体。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、配合した後の粘度上昇を抑えて作業性が優れ、耐酸性内容物適性があり、かつ経時劣化しにくい無溶剤型接着剤組成物、及び該組成物を用いた積層体を提供することができる。
より詳細には、食酢、ケチャップ、チリソース等の酸性が強い内容物とする場合のラミネート積層体のプラスチックフィルム、或いは金属箔間の接着力が、長期保管後でも変化がなく良好な無溶剤型接着剤組成物及び該組成物を用いた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<無溶剤型接着剤組成物>
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)、及び芳香族ポリイソシアネート(C)、を含有することを特徴とする。
これら(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)、及び芳香族ポリイソシアネート(C)を組み合わせることで、無溶剤型とした場合においても、配合した後の粘度上昇を抑えてポットライフを長くする効果を発揮し、作業性が向上する。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0018】
<(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)>
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステルと無水マレインとを共重合させてなる樹脂(A)は、公知の(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体であれば特に限定されず、従来公知の樹脂から選択することができ、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−i−プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メ
タクリル酸デシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。なかでも無水マレイン酸との共重合性の観点からメタクリル酸メチルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)の合成方法は、ラジカル共重合法が用いられる。例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等から、適宜選ばれる。
【0020】
樹脂(A)を共重合する際、(メタ)アクリル酸エステル、及び無水マレイン酸の量は、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸の合計量に対して、(メタ)アクリル酸エステルの含有量が、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは50〜70質量%である。また、無水マレイン酸の含有量は、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは30〜50質量%である。無水マレイン酸の含有量が5質量%以上であると、長期保管時の接着力が劣化せず好ましい。また、50質量%以下であると、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸の共重合物の合成が容易であるため好ましい。
【0021】
樹脂(A)の酸価は、好ましくは250mgKOH/g以上であり、より好ましくは300mgKOH/g以上であり、特に好ましくは350mgKOH/g以上である。酸価250mgKOH/gであると、長期保管時の接着力の低下がなく好ましい。
【0022】
樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、1,000〜50,000が好ましく、より好ましくは10,000〜12,000である。数平均分子量が1,000以上であると、長期保管時の接着力の劣化がなく、50,000以下であると、接着剤組成物の相溶性が良好であり接着剤組成物の塗工外観が優れるため好ましい。
【0023】
樹脂(A)の含有量は、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)に対して、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%であり、特に好ましくは0.5〜3質量%である。0.1質量%以上であると、接着力の長期保持が可能であり、10質量%以下であると、接着剤組成物の相溶性が良好で、接着剤の塗工外観が優れるため好ましい。
【0024】
<末端に2級水酸基を有するポリオール(B)>
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、ポットライフの観点から、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)を含む。ポリオール(B)は、末端に2級水酸基を有していれば特に制限されず、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシルアルカン、ポリウレタンポリオール、ひまし油又はそれらの混合物が挙げられる。中でも、経時接着性能劣化の観点から、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0025】
末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、少なくとも1つが2級の末端水酸基を有する多価アルコール、好ましくは少なくとも一方が2級の末端水酸基を有するグリコール、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,2,4−トリメチルー1,3−ペンダンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等のグリコール類若しくはそれらの混合物を反応させて得られるポリエステルポリオールあるいはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−Υ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。そうすると、反応速度が速い1級の水酸基が二塩基酸又はそのジアルキルエステルと優先的に反応する一方で、より反応速度の遅い2級の水酸基が残存しやすくなり、その結果、分子中の末端水酸基として、2級の末端水酸基が、1級の末端水酸基よりも優先的に残存する。
【0026】
末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオールは、その分子内部や分子末端にカルボキシル基を有していてもよい。上記カルボキシル基は、ポリエステルポリオールに、多塩基酸若しくはその無水物を反応させることで導入することができる。
ポリエステルポリオールは、数平均分子量が、好ましくは1,000〜100,000であり、より好ましくは1,000〜10,000であり、特に好ましくは1,000〜6,000である。数平均分子量が1,000以上であると、凝集力が十分であり、100,000以下であると、合成上、末端に多塩基酸若しくはその無水物を容易に反応させることができ、増粘やゲル化を抑制することができる。
【0027】
<その他のポリオール成分>
また、本発明の無溶剤型接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記末端に2級水酸基を有するポリオール(B)以外のその他ポリオール成分を含有してもよい。
上記その他ポリオールとしては、末端に2級水酸基を有しないポリオールであればよく、例えば、末端に1級水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール等を単独で使用、又は2種類以上を併用することができる。
【0028】
末端に1級水酸基を有し、2級水酸基を有しないポリエステルポリオールを構成する多価カルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オルトフタル酸及びそれらのジアルキルエステル若しくは酸無水物等の単一成分あるいは混合成分を挙げることができ、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール等の2級の末端水酸基を有しない多価アルコールの単一成分あるいは混合成分等を挙げることができる。
【0029】
末端に2級水酸基を有するポリオール(B)は、ポットライフ向上の観点から、全ポリオール成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0030】
<芳香族ポリイソシアネート(C)>
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、芳香族ポリイソシアネート(C)を含む。
芳香族ポリイソシアネート(C)としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4'−トルエンジイソシアネート、ジアニシジンジイ
ソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2’−ジフェニル
メタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート又は1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−
ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’ ’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルジメチルメタン−2,2’−5,5’−テトライソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0031】
また、芳香族ポリイソシアネート化合物(C)は、上記の芳香族ポリイソシアネート化合物から誘導される芳香族イソシアネート基含有化合物であってもよい。このような芳香族イソシアネート基含有化合物としては、例えば、前述の公知の芳香族ポリイソシアネート化合物と公知のポリオール成分との反応生成物であるポリウレタンポリイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
公知のポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200〜3,000のポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等のポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオールを用いることができる。
【0033】
中でも、芳香族ポリイソシアネート化合物(C)は、分子内にポリプロピレングリコールから誘導される構造を有するポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。
分子内にポリプロピレングリコールから誘導される構造を有するポリイソシアネート化合物としては、公知の芳香族ポリイソシアネート化合物と、ポリプロピレングリコールとの反応生成物が好適に用いられる。芳香族ポリイソシアネート化合物と、ポリプロピレングリコールとの反応比率は、NCO/OH比が2以上であることが好ましく、ポリプロピレングリコールの数平均分子量は200〜3,000であることが好ましい。また、上記反応の際は、ポリプロピレングリコールの他に、さらに、公知のポリオールを併用してもよい。
【0034】
芳香族ポリイソシアネート(C)の含有量は、接着性能の観点から、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)に対して、50〜150質量%であることが好ましく、より好ましくは100〜140質量%である。
また、芳香族ポリイソシアネート化合物(C)は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
<その他のポリイソシアネート>
また、本発明の無溶剤型接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記芳香族ポリイソシアネート(C)以外のその他ポリイソシアネート成分を含有してもよい。
芳香族ポリイソシアネート(C)以外に含有してもよいポリイソシアネート成分としては、特に限定されず、周知の脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、又はそれらから誘導されたアロファネートタイプ、ヌレートタイプ、ビウレットタイプ、アダクトタイプの誘導体、若しくはその複合体等を用いることができる。
【0036】
<シランカップリング剤>
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、金属箔への密着性を高めるため、さらに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルを有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリキシドキシプロピルトリエキトシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、オルガノシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種又は2種を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、ポリオール(B)の固形分に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%であり、特に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0037】
<無機酸>
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、金属箔への密着性を高めるため、さらに、無機酸を含有することが好ましい。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、硝酸等が挙げられ、好ましくはリン酸である。リン酸には、二リン酸、メタリン酸、ポリリン酸等も含まれる。
無機酸の含有量は、ポリオール(B)の固形分に対して0.01〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.25質量%であり、特に好ましくは0.05〜0.10質量%である。
【0038】
<その他の添加剤>
本発明の接着剤組成物は、ポットライフ性を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒等が例示できる。
【0039】
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)、及び芳香族ポリイソシアネート(C)を含み、その粘度が常温(25℃)〜120℃、好ましくは常温〜80℃で100〜10,000mPa・s、より好ましくは1,000〜5,000mPa・sである。100mPa・s以上であると、接着剤の初期凝集力が優れる。10,000mPa・s以下であると、塗工外観が優れる。
【0040】
<積層体>
本発明の積層体は、上述の無溶剤型接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層されたものである。詳細には、本発明の無溶剤接着剤組成物を第1のシート状基材に塗布して接着剤層を形成し、前記接着剤層に第2のシート状基材を重ね合わせ、両シート状基材の間に位置する前記接着剤層を硬化したものである。
シート状基材は、特に限定されず、例えば、従来公知のプラスチックフィルム、紙、金属箔等が挙げられ、2つのシート状基材は、同種のものでも異種のものでも良い。
プラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができるが、熱可塑性樹脂のフィルムが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチック等が挙げられる。
また、シート状基材は、基材上に、印刷インキをグラビア又はフレキソ印刷して印刷インキ層を設けたものを用いてもよく、印刷インキとしては、制限なく用いることができ、溶剤型、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキ等を使用することができる。
【0041】
積層体の厚さは、通常10μm以上である。本発明の無溶剤型接着剤組成物を用いて、積層体を作製するには、通常用いられている方法、例えば、ラミネーターによって接着剤を一方のシート状基材の片面に塗布し、他方のシート状基材と貼り合わせ、常温若しくは加温下に硬化させれば良い。シート状基材表面に施される接着剤量は1〜4g/m程度であることが好ましく、本発明の積層体は、包装用に好適に用いられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の部、%は、特に指定がない場合は質量部、質量%を意味する。
【0043】
<数平均分子量(Mn)の測定方法>
数平均分子量(Mn)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem−21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0044】
<酸価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
酸価は次の(式1)により求めた。(単位:mgKOH/g)。
(式1)酸価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0045】
<水酸基価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
水酸基価は次の(式2)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
(式2)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0046】
<NCO含有率(質量%)の測定方法>
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b−a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0047】
<樹脂(A)の合成>
(合成例1)(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にメタクリル酸メチル80部、アクリル酸ブチル50部、無水マレイン酸100部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量10,000、酸価460の(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)を得た。
【0048】
(合成例2)(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−2)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にメタクリル酸メチル90部、アクリル酸ブチル50部、無水マレイン酸80部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量5,000、酸価340の(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−2)を得た。
【0049】
(合成例3)(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−3)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にメタクリル酸メチル90部、アクリル酸ブチル70部、無水マレイン酸40部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量3,500、酸価170の(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−3)を得た。
【0050】
<末端に2級水酸基を有するポリオール(B)の合成>
(合成例4)ポリエステルポリオール(B−1)
テレフタル酸110部、アジピン酸250部、ジエチレングリコール(以下、DEGという)200部、ネオペンチルグリコール75部、プロピレングリコール200部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃〜240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価120mgKOH/g、数平均分子量約5,800の、末端に2級水酸基を有するポリエステルジオール樹脂であるポリエステルポリオール(B−1)を得た。
【0051】
(合成例5)ポリエステルポリオール(B−2)
テレフタル酸100部、アジピン酸200部、ジエチレングリコール(以下、DEGという)250部、ネオペンチルグリコール50部、プロピレングリコール300部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃〜240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価150mgKOH/g、数平均分子量約4,200の、末端に2級水酸基を有するポリエステルジオール樹脂であるポリエステルポリオール(B−2)を得た。
【0052】
(合成例6)ポリエーテルポリオール(B−3)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを300部、数平均分子量約2000のポリプロピレングリコールを200部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオールを300部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’−MDIという)を150部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、末端に2級水酸基を有するポリエーテルポリウレタン樹脂であるポリエーテルポリオール(B−3)を得た。
【0053】
<その他樹脂の合成>
(スチレン−無水マレイン酸共重合物)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にスチレン150部、無水マレイン酸150部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量2,800、酸価400のスチレン−無水マレイン酸共重合物を得た。
【0054】
<その他ポリオールの製造>
(末端に1級水酸基を有するポリエステルポリオール)
エチレングリコール60部、ネオペンチルグリコール400部、イソフタル酸120部、アジピン酸300部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、水酸基価が57mgKOH/g、数平均分子量約2,000の、末端に1級水酸基を有し、2級水酸基を有さないポリエステルポリオールを得た。
【0055】
<芳香族ポリイソシアネート(C)の製造>
(芳香族ポリイソシアネート(C−1))
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール120部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール30部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート350部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、イソシアネート基含有率が12.4%、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含有率が20.9%の、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンポリイソシアネート樹脂組成物である芳香族ポリイソシアネート(C−1)を得た。
【0056】
(芳香族ポリイソシアネート(C−2))
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール100部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール45部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート400部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、イソシアネート基含有率が12.4%、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含有率が22.5%の、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンポリイソシアネート樹脂組成物である芳香族ポリイソシアネート(C−2)を得た。
【0057】
<無溶剤型接着剤組成物の製造>
[実施例1]
(無溶剤型接着剤組成物(D−1))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で得た(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)1.0部、合成例4で得たポリステルポリオール(B−1)98.0部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら120℃まで昇温し、1時間保持した。70℃まで冷却後、シランカップリング剤(3−グリキシドキシプロピルトリエキトシシラン)1.0部を混合した。
次いで、芳香族ポリイソシアネート(C−1)120.0部を混合して、無溶剤型接着剤組成物(D−1)を得た。
【0058】
[実施例2〜15、比較例1〜2、4]
(無溶剤型接着剤組成物(D−2〜17、19))
表1記載の材料及び配合量を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、無溶剤型接着剤組成物(D−2〜17、19)を得た。
【0059】
[比較例3]
(無溶剤型接着剤組成物(D−18)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例4で得たポリステルポリオール(B−1)98.0部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら150℃まで昇温し、トリメリット酸1.0部を仕込み、1時間保持した。70℃まで冷却後、シランカップリング剤(3−グリキシドキシプロピルトリエキトシシラン)1.0部を混合した。
次いで、芳香族ポリイソシアネート(C−1)120.0部を混合して、無溶剤型接着剤組成物(D−18)を得た。
【0060】
<無溶剤接着剤組成物の評価>
得られた無溶剤型接着剤組成物について、以下の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
(積層体の作製)
無溶剤テストコーターを用いて、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡エステルフィルムE5102、以下、PETフィルム)に、得られた無溶剤型接着剤組成物を、温度80℃、塗工速度200m/分、固形分塗布量2.0g/mにて塗布し、ラミネーターを用いて常温環境下で、厚み9μmアルミニウム箔(以下、AL箔)と張り合わせた。次いで、得られた積層体のAl箔面上に、先程と同様にして、無溶剤型接着剤組成物を塗布し、塗布面を、ラミネーターを用いて常温環境下で、厚み100μmの表面コロナ放電処理をした直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロTUX−FCD、以下、LLDPE)と貼り合せた後、40℃で2日間保温し、PETフィルム/接着剤層/AL箔/接着剤層/LLDPEフィルムの構成である積層体を得た。
【0062】
(ラミネート強度)
積層体を用いて、9cm×12cmサイズの包装用袋を作製した。前記包装用袋にHEINZ社製ケチャップ30mlを充填し、40℃60%RHの環境下にそれぞれ1週間、2週間、4週間保管した。上記保管後の包装用袋を、幅15mm長さ300mmに切り取り試験片とした。JIS K 6854に基づき、インストロン型引張試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、300mm/分の剥離速度で引張り、PET/AL箔間、及び、AL箔/LLDPE間のT型剥離強度(N/15mm)をそれぞれ測定した。測定は5回行い、その平均値を用いた。
【0063】
(ヒートシール強度)
ラミネート強度と同様にして、幅15mm長さ300mmの試験片を作製し、2枚の試験片のLLDPE同士を重ね合わせ、190℃、2kg、1秒の条件でヒートシールを行い、試験片とした。ラミネート強度と同様にして、LLDPE/LLDPE間のT型剥離強度(N/15mm)を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いた。
【0064】
(ポットライフ)
無溶剤型接着剤組成物を、配合直後、及び配合後40℃30分間保管後の粘度をそれぞれ、東亜工業株式会社製のコーンプレート粘度計CV−1を用いて、測定温度40℃の条件で測定した。保管前後の粘度変化から下記基準で評価を行った。
S: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍未満である(非常に良好)
A: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍以上3倍未満である(良好)
B: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の3倍以上4倍未満である(使用可能)
C: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の4倍以上5倍未満である(使用不可)
D: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の5倍以上である(不良)
【0065】
【表1】
【0066】
表1中の略称を以下に示す。
PPG−400:ポリプロピレングリコール(数平均分子量約400)
MPO:2−メチル−1,3−プロパンジオール
【0067】
表1の結果から、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)、及び芳香族ポリイソシアネート(C)、を含有する本願発明の無溶剤型接着剤組成物は、配合した後の粘度上昇が抑制されポットライフに優れ、さらに、耐酸性内容物適性(ラミネート強度、ヒートシール強度)を有し経時劣化しにくい包装材料を形成可能であることが示された。
シランカップリング剤を含む実施例1〜9、11〜15は、アルミニウム箔への密着性に優れるため、経時後も優れたラミネート強度を示した。中でも、シランカップリング剤と、無機酸としてリン酸とを含む実施例14、15は、特に高いラミネート強度を示した。