【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の部、%は、特に指定がない場合は質量部、質量%を意味する。
【0043】
<数平均分子量(Mn)の測定方法>
数平均分子量(Mn)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem−21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0044】
<酸価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
酸価は次の(式1)により求めた。(単位:mgKOH/g)。
(式1)酸価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0045】
<水酸基価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
水酸基価は次の(式2)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
(式2)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0046】
<NCO含有率(質量%)の測定方法>
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b−a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0047】
<樹脂(A)の合成>
(合成例1)(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にメタクリル酸メチル80部、アクリル酸ブチル50部、無水マレイン酸100部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量10,000、酸価460の(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)を得た。
【0048】
(合成例2)(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−2)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にメタクリル酸メチル90部、アクリル酸ブチル50部、無水マレイン酸80部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量5,000、酸価340の(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−2)を得た。
【0049】
(合成例3)(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−3)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にメタクリル酸メチル90部、アクリル酸ブチル70部、無水マレイン酸40部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量3,500、酸価170の(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−3)を得た。
【0050】
<末端に2級水酸基を有するポリオール(B)の合成>
(合成例4)ポリエステルポリオール(B−1)
テレフタル酸110部、アジピン酸250部、ジエチレングリコール(以下、DEGという)200部、ネオペンチルグリコール75部、プロピレングリコール200部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃〜240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価120mgKOH/g、数平均分子量約5,800の、末端に2級水酸基を有するポリエステルジオール樹脂であるポリエステルポリオール(B−1)を得た。
【0051】
(合成例5)ポリエステルポリオール(B−2)
テレフタル酸100部、アジピン酸200部、ジエチレングリコール(以下、DEGという)250部、ネオペンチルグリコール50部、プロピレングリコール300部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃〜240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価150mgKOH/g、数平均分子量約4,200の、末端に2級水酸基を有するポリエステルジオール樹脂であるポリエステルポリオール(B−2)を得た。
【0052】
(合成例6)ポリエーテルポリオール(B−3)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを300部、数平均分子量約2000のポリプロピレングリコールを200部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオールを300部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’−MDIという)を150部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、末端に2級水酸基を有するポリエーテルポリウレタン樹脂であるポリエーテルポリオール(B−3)を得た。
【0053】
<その他樹脂の合成>
(スチレン−無水マレイン酸共重合物)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にスチレン150部、無水マレイン酸150部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量2,800、酸価400のスチレン−無水マレイン酸共重合物を得た。
【0054】
<その他ポリオールの製造>
(末端に1級水酸基を有するポリエステルポリオール)
エチレングリコール60部、ネオペンチルグリコール400部、イソフタル酸120部、アジピン酸300部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、水酸基価が57mgKOH/g、数平均分子量約2,000の、末端に1級水酸基を有し、2級水酸基を有さないポリエステルポリオールを得た。
【0055】
<芳香族ポリイソシアネート(C)の製造>
(芳香族ポリイソシアネート(C−1))
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール120部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール30部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート350部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、イソシアネート基含有率が12.4%、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含有率が20.9%の、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンポリイソシアネート樹脂組成物である芳香族ポリイソシアネート(C−1)を得た。
【0056】
(芳香族ポリイソシアネート(C−2))
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール100部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール45部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート400部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃〜90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、イソシアネート基含有率が12.4%、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含有率が22.5%の、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンポリイソシアネート樹脂組成物である芳香族ポリイソシアネート(C−2)を得た。
【0057】
<無溶剤型接着剤組成物の製造>
[実施例1]
(無溶剤型接着剤組成物(D−1))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で得た(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)1.0部、合成例4で得たポリステルポリオール(B−1)98.0部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら120℃まで昇温し、1時間保持した。70℃まで冷却後、シランカップリング剤(3−グリキシドキシプロピルトリエキトシシラン)1.0部を混合した。
次いで、芳香族ポリイソシアネート(C−1)120.0部を混合して、無溶剤型接着剤組成物(D−1)を得た。
【0058】
[実施例2〜15、比較例1〜2、4]
(無溶剤型接着剤組成物(D−2〜17、19))
表1記載の材料及び配合量を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、無溶剤型接着剤組成物(D−2〜17、19)を得た。
【0059】
[比較例3]
(無溶剤型接着剤組成物(D−18)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例4で得たポリステルポリオール(B−1)98.0部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら150℃まで昇温し、トリメリット酸1.0部を仕込み、1時間保持した。70℃まで冷却後、シランカップリング剤(3−グリキシドキシプロピルトリエキトシシラン)1.0部を混合した。
次いで、芳香族ポリイソシアネート(C−1)120.0部を混合して、無溶剤型接着剤組成物(D−18)を得た。
【0060】
<無溶剤接着剤組成物の評価>
得られた無溶剤型接着剤組成物について、以下の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
(積層体の作製)
無溶剤テストコーターを用いて、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡エステルフィルムE5102、以下、PETフィルム)に、得られた無溶剤型接着剤組成物を、温度80℃、塗工速度200m/分、固形分塗布量2.0g/m
2にて塗布し、ラミネーターを用いて常温環境下で、厚み9μmアルミニウム箔(以下、AL箔)と張り合わせた。次いで、得られた積層体のAl箔面上に、先程と同様にして、無溶剤型接着剤組成物を塗布し、塗布面を、ラミネーターを用いて常温環境下で、厚み100μmの表面コロナ放電処理をした直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロTUX−FCD、以下、LLDPE)と貼り合せた後、40℃で2日間保温し、PETフィルム/接着剤層/AL箔/接着剤層/LLDPEフィルムの構成である積層体を得た。
【0062】
(ラミネート強度)
積層体を用いて、9cm×12cmサイズの包装用袋を作製した。前記包装用袋にHEINZ社製ケチャップ30mlを充填し、40℃60%RHの環境下にそれぞれ1週間、2週間、4週間保管した。上記保管後の包装用袋を、幅15mm長さ300mmに切り取り試験片とした。JIS K 6854に基づき、インストロン型引張試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、300mm/分の剥離速度で引張り、PET/AL箔間、及び、AL箔/LLDPE間のT型剥離強度(N/15mm)をそれぞれ測定した。測定は5回行い、その平均値を用いた。
【0063】
(ヒートシール強度)
ラミネート強度と同様にして、幅15mm長さ300mmの試験片を作製し、2枚の試験片のLLDPE同士を重ね合わせ、190℃、2kg、1秒の条件でヒートシールを行い、試験片とした。ラミネート強度と同様にして、LLDPE/LLDPE間のT型剥離強度(N/15mm)を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いた。
【0064】
(ポットライフ)
無溶剤型接着剤組成物を、配合直後、及び配合後40℃30分間保管後の粘度をそれぞれ、東亜工業株式会社製のコーンプレート粘度計CV−1を用いて、測定温度40℃の条件で測定した。保管前後の粘度変化から下記基準で評価を行った。
S: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍未満である(非常に良好)
A: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍以上3倍未満である(良好)
B: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の3倍以上4倍未満である(使用可能)
C: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の4倍以上5倍未満である(使用不可)
D: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の5倍以上である(不良)
【0065】
【表1】
【0066】
表1中の略称を以下に示す。
PPG−400:ポリプロピレングリコール(数平均分子量約400)
MPO:2−メチル−1,3−プロパンジオール
【0067】
表1の結果から、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、末端に2級水酸基を有するポリオール(B)、及び芳香族ポリイソシアネート(C)、を含有する本願発明の無溶剤型接着剤組成物は、配合した後の粘度上昇が抑制されポットライフに優れ、さらに、耐酸性内容物適性(ラミネート強度、ヒートシール強度)を有し経時劣化しにくい包装材料を形成可能であることが示された。
シランカップリング剤を含む実施例1〜9、11〜15は、アルミニウム箔への密着性に優れるため、経時後も優れたラミネート強度を示した。中でも、シランカップリング剤と、無機酸としてリン酸とを含む実施例14、15は、特に高いラミネート強度を示した。