(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トレッド部に、タイヤセンター領域からタイヤ幅方向外側に向かって間隔をおいて配置されたタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝(21,22,23)が形成され、前記主溝(21,22)によって区画されてタイヤ赤道上に位置するセンター陸部(31)と、タイヤ幅方向最外側に位置するショルダー陸部(33)と、前記センター陸部(31)と前記ショルダー陸部(33)との間に位置して前記主溝(22,23)によって区画された中間陸部(32)とを含み、前記センター陸部(31)が、タイヤ周方向に延在して前記主溝(21,22,23)よりも溝幅が小さい周方向細溝(41)と、タイヤ幅方向に延在して前記中間陸部(32)側の端部が前記主溝(22)に連通し、他方の端部が前記周方向細溝(41)に連通するセンターラグ溝(51)とを備え、前記中間陸部(32)が、タイヤ幅方向に延在して両端が前記主溝(22,23)に連通する中間ラグ溝(52)を備え、前記ショルダー陸部(33)が、タイヤ幅方向に延在して前記中間陸部(32)側の端部が主溝(23)に連通し、他方の端部が接地端に対して開口するショルダーラグ溝(53)を備え、前記センターラグ溝(51)と前記中間ラグ溝(52)と前記ショルダーラグ溝(53)とが接地端からタイヤ赤道側に向かって連続的に延在する一連の連通ラグ溝(50)を構成することを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。尚、
図1において、符号CLはタイヤ赤道を示し、符号Eは接地端を示す。
【0015】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(
図1では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。
【0016】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にはトレッドゴム層11が配され、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層12が配され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層13が配されている。トレッドゴム層11は、物性の異なる2種類のゴム層(キャップトレッドゴム層およびアンダートレッドゴム層)をタイヤ径方向に積層した構造であってもよい。
【0017】
本発明は、このような一般的な空気入りタイヤに適用されるが、その断面構造は上述の基本構造に限定されるものではない。
【0018】
本発明の空気入りタイヤのトレッドゴム層11を構成するゴム組成物(以下、「トレッド用ゴム組成物」と言う。)において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、末端が変性されているジエン系ゴムを必ず含む。末端が変性されているジエン系ゴムとしては、例えば、末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(以下、「変性S−SBR」という。)を用いることができる。変性S−SBRは、スチレンブタジエンゴムの主鎖末端の両方又は片方をシリカ表面のシラノール基と反応性を有する官能基で変性した溶液重合スチレンブタジエンゴムである。シラノール基と反応する官能基としては、好ましくはヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド基、チオール基、エーテル基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。なかでもヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、ヒドロキシル基、アミノ基がより好ましい。
【0019】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量%中、末端が変性されているジエン系ゴム(例えば変性S−SBR)の含有量が30質量%〜90質量%、好ましくは40質量%〜85質量%である。末端が変性されているジエン系ゴムの含有量が30質量%未満であると、耐摩耗性が悪化するとともに、転がり抵抗を低減することができない。末端が変性されているジエン系ゴムの含有量が90質量%を超えると耐摩耗性が悪化する。
【0020】
末端が変性されているジエン系ゴムが、変性S−SBRである場合、変性S−SBRのスチレン単位含有量が好ましくは35質量%以上、より好ましくは35質量%〜40質量%であるとよい。変性S−SBRのスチレン単位含有量が35質量%未満であると、ゴム組成物の剛性および強度が不足し耐摩耗性およびウェットグリップ性能を十分に改良することができない。なお変性S−SBRのスチレン単位含有量は赤外分光分析(ハンプトン法)により測定するものとする。
【0021】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、上述した末端が変性されているジエン系ゴム(例えば変性S−SBR)以外の他のジエン系ゴムを任意に含有することができる。他のジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、変性されていない溶液重合または乳化重合スチレンブタジエンゴム等のタイヤ用ゴム組成物に通常用いられるゴムを使用することができる。なかでもブタジエンゴム、変性されていない溶液重合スチレンブタジエンゴムが好ましい。これらは、単独または任意のブレンドとして使用することができる。
【0022】
尚、上述の本発明のトレッド用ゴム組成物は、トレッドゴム層11が上記のようにキャップトレッドゴム層およびアンダートレッドゴム層の積層構造を有する場合は少なくともキャップトレッドゴム層に用いるものとする。
【0023】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、充填剤としてシリカが必ず配合される。シリカを配合することでゴム組成物の強度を高めることができる。また、ウェットグリップ性を高めながら、転がり抵抗を低減することができる。シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して50質量部〜90質量部、好ましくは60質量部〜80質量部である。シリカの配合量が50質量部未満であるとウェットグリップ性が低下する。シリカの配合量が90質量部を超えると転がり抵抗が悪化する。
【0024】
本発明で使用するシリカは、CTAB吸着比表面積が好ましくは180m
2 /g〜250m
2 /g、より好ましくは190m
2 /g〜240m
2 /gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積が180m
2 /g未満であるとウェットグリップが低下する。シリカのCTAB吸着比表面積が250m
2 /gを超えると転がり抵抗が悪化する。尚、本発明において、シリカのCTAB吸着比表面積は、ISO 5794に準拠して測定するものとする。
【0025】
本発明のゴム組成物は、シリカ以外の他の無機充填剤を配合することができる。他の無機充填剤としては、例えばカーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、水酸化アルミニウム等を例示することができる。
【0026】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、シランカップリング剤が必ず配合される。シランカップリング剤を配合することにより、シリカの凝集や、ゴム組成物の粘度上昇を抑制し、転がり抵抗およびウェット性能をより優れたものにすることができる。本発明で使用するシランカップリング剤は、メルカプト基を含まず、硫黄を含有するものである。このようなシランカップリング剤としては、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカの質量に対して5質量%〜12質量%、好ましくは6質量%〜10質量%である。シランカップリング剤の配合量が5質量%未満であると、ウェットグリップが低下する。シランカップリング剤の配合量が12質量%を超えると、加工性が悪化する。
【0027】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、可塑剤成分としてアルキルシランが必ず配合される。アルキルシランを配合することにより、シリカの凝集や、ゴム組成物の粘度上昇を抑制し、転がり抵抗およびウェット性能をより優れたものにすることができる。アルキルシランとしては、炭素数7〜20のアルキル基を有するアルキルトリエトキシシランが好ましい。炭素数7〜20のアルキル基として、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が挙げられる。なかでもジエン系ゴムとの相溶性の観点から、炭素数8〜10のアルキル基がより好ましく、オクチル基、ノニル基がさらに好ましい。アルキルシランの配合量は、シリカの質量に対して、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜6質量%であるとよい。アルキルシランの配合量が0.5質量%未満であると、転がり抵抗が悪化する。アルキルシランの配合量が10質量%を超えると、ウェットグリップが低下する。
【0028】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、可塑剤成分として脂肪酸エステルが必ず配合される。脂肪酸エステルを配合することにより、シリカの凝集や、ゴム組成物の粘度上昇を抑制し、転がり抵抗およびウェット性能をより優れたものにすることができる。脂肪酸エステルとしては、各種脂肪酸とC
1 〜C
5 の低級アルコールエステルや、ソルビタンエステル、グリセリンエステル等の多価アルコールエステルを例示することができる。各種脂肪酸としては、カプリル酸、ウンデシレン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラギン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を例示することができる。脂肪酸エステルの配合量は、シリカの質量に対して、好ましくは0.3質量%〜6質量%、より好ましくは0.5質量%〜4質量%であるとよい。脂肪酸エステルの配合量が0.3質量%未満であると、転がり抵抗が悪化する。脂肪酸エステルの配合量が6質量%を超えると、ウェットグリップが低下する。
【0029】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、可塑剤成分としてアルカリ金属元素を含む脂肪酸金属塩aが必ず配合される。この脂肪酸金属塩aを配合することにより、シリカの凝集や、ゴム組成物の粘度上昇を抑制し、転がり抵抗およびウェット性能をより優れたものにすることができる。脂肪酸金属塩aとしては、上記各種脂肪酸と、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩が挙げられる。脂肪酸金属塩aは、単独または複数を組み合わせて配合することができる。脂肪酸金属塩aの配合量は、シリカの質量に対して、好ましくは0.3質量%〜6質量%、より好ましくは0.5質量%〜4質量%であるとよい。脂肪酸金属塩aの配合量が0.3質量%未満であると、転がり抵抗が悪化する。脂肪酸金属塩aの配合量が6質量%を超えると、ウェットグリップが低下する。
【0030】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、可塑剤成分として上記脂肪酸金属塩aと異なる脂肪酸金属塩bを更に配合することもできる。この脂肪酸金属塩bを配合することにより、シリカの凝集や、ゴム組成物の粘度上昇を抑制し、転がり抵抗およびウェット性能をより優れたものにする効果を高めることができる。脂肪酸金属塩bとしては、上記各種脂肪酸とカルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の塩が挙げられる。脂肪酸金属塩bは、単独または複数を組み合わせて配合することができる。脂肪酸金属塩bの配合量は、シリカの質量に対して、好ましくは0.3質量%〜6質量%、より好ましくは0.5質量%〜4質量%であるとよい。脂肪酸金属塩bの配合量が0.3質量%未満であると、転がり抵抗が悪化する。脂肪酸金属塩bの配合量が6質量%を超えると、ウェットグリップが低下する。
【0031】
本発明のトレッド用ゴム組成物には、上記以外の他の配合剤を添加することができる。他の配合剤としては、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など、一般的に空気入りタイヤ用ゴム組成物に使用される各種配合剤を例示することができる。これら配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。また混練機としは、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
【0032】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、上述の配合や物性により、優れたウェットグリップ性能と低転がり抵抗を両立しながら、経時での加工性を向上することができる。そのため、このトレッド用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤは、優れたウェットグリップ性と低転がり抵抗を発揮することができる。また、トレッド用ゴム組成物の加工性が優れることで、排水性向上等の目的で複雑な溝形状を有したトレッド部1であっても容易に形成することが可能になる。
【0033】
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1が上述のトレッド用ゴム組成物で構成されていれば、上述の優れた性能を発揮することができるが、好ましくは
図2に例示するトレッドパターンを有しているとよい。
【0034】
図2の例では、トレッド部1に、タイヤセンター領域からタイヤ幅方向外側に向かって間隔をおいて配置されたタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝21,22,23が形成されている。そして、主溝21,22によってセンター陸部31が区画され、主溝23のタイヤ幅方向外側にショルダー陸部33が区画され、主溝22,23によって中間陸部32が区画されている。センター陸部31はタイヤ赤道CL上に位置し、ショルダー陸部33はタイヤ幅方向最外側に位置し、中間陸部32はセンター陸部31とショルダー陸部33との間に位置している。
【0035】
センター陸部31には、タイヤ周方向に延在して主溝21,22,23のいずれよりも溝幅が小さい周方向細溝41が形成される。また、センター陸部31には、タイヤ幅方向に延在するセンターラグ溝51が形成される。センターラグ溝51は、中間陸部32側の端部が主溝22に連通し、他方の端部が周方向細溝41に連通している。中間陸部32には、タイヤ幅方向に延在する中間ラグ溝52が形成される。中間ラグ溝52は、両端が主溝22,23にそれぞれ連通している。ショルダー陸部33には、タイヤ幅方向に延在するショルダーラグ溝53が形成される。ショルダーラグ溝53は、中間陸部32側の端部が主溝23に連通し、他方の端部が接地端Eに対して開口している。尚、センターラグ溝51と中間ラグ溝52には面取りが施されており、それぞれ面取り部51a,52aが形成されている。
【0036】
これらセンターラグ溝51と中間ラグ溝52と前記ショルダーラグ溝53とは、接地端Eからタイヤ赤道CL側に向かって連続的に延在する一連の連通ラグ溝50を構成している。尚、本発明では、
図3に示すように、1本の主溝(
図3では主溝23を例示)に対して連通する一対のラグ溝(
図3では中間ラグ溝52とショルダーラグ溝53)について、一方側のラグ溝(中間ラグ溝52)の溝中心線と主溝23の溝中心線との交点P1と他方側のラグ溝(ショルダーラグ溝53)の溝中心線と主溝23の溝中心線との交点P2とのタイヤ周方向の距離dが連通ラグ溝50(ショルダーラグ溝53)のピッチ長Lに対して、0≦d/L≦0.20の関係を満たしていれば、これらラグ溝(中間ラグ溝52とショルダーラグ溝53)が連続的に延在していると見做すものとする。
図3では主溝23と中間ラグ溝52およびショルダーラグ溝53に基づいて説明したが、主溝22とセンターラグ溝51および中間ラグ溝52の場合も同様である。
【0037】
このようにトレッド部1を構成することで、特に連通ラグ溝50によってタイヤセンター領域から接地端Eへの効率的な排水が可能になり、トレッド用ゴム組成物の優れたウェットグリップ性との共働によって、空気入りタイヤのウェット性能を効果的に高めることができる。また、このトレッド部1は、複雑な溝形状を有しているが、上記のようにトレッド用ゴム組成物が加工性に優れるので容易に形成することができる。
【0038】
本発明では、
図2に示すように、タイヤ周方向に隣り合う連通ラグ溝50の間に連通ラグ溝50に沿って延在する連通サイプ60を設けることもできる。連通サイプ60は、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝51の間に位置して、センターラグ溝51に沿って延在するセンターサイプ61と、タイヤ周方向に隣り合う中間ラグ溝52の間に位置して、中間ラグ溝52に沿って延在する中間サイプ62と、タイヤ周方向に隣り合うショルダーラグ溝53の間に位置して、ショルダーラグ溝53に沿って延在するショルダーサイプ63とで構成される。図示の例では、センターサイプ61は、中間陸部32側の端部が主溝22に連通し、他方の端部が周方向細溝41に連通せずにセンター陸部31内で終端し、中間サイプ62は、両端が主溝22,23にそれぞれ連通し、ショルダーサイプ63は、中間陸部32側の端部が主溝23に連通し、他方の端部が接地端Eに対して開口している。このような連通サイプ60を設けることで、タイヤセンター領域から接地端Eへの排水性をより向上することができる。
【0039】
車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤの場合、車両に装着する際に車両に対して内側にするように指定された側を「車両内側」とし、車両に装着する際に車両に対して外側にするように指定された側を「車両外側」とすると、タイヤセンター領域から車両内側に向かって少なくとも3本の主溝21,22,23を形成して、ショルダー陸部33を車両内側におけるタイヤ幅方向最外側に配置し、連通ラグ溝50が車両内側に配置されるようにするとよい。連通ラグ溝50は上記のように排水性に優れるが、タイヤセンター領域から接地端Eまで連通していることでパターンノイズ等の騒音を伝達し易い傾向があるので、連通ラグ溝50を上記のように車両内側に配置することで、パターンノイズ等の騒音が連通ラグ溝50を通じて車両外側に放射されることを防ぎ、騒音性能を高めることができる。
【0040】
本発明では、上記以外の溝や陸部の構造は特に限定されない。例えば、
図2の態様では、主溝21,22,23の他に主溝24が設けられている。主溝24は、主溝21に対して主溝22,23の逆側(主溝22,23が車両内側に形成された場合は、その逆側の車両外側)に配置されている。そして、主溝21,24によって陸部34が区画され、主溝24のタイヤ幅方向外側に陸部35が区画されている。また、陸部34には、タイヤ周方向に延在して主溝21,22,23,24のいずれよりも溝幅が小さい周方向細溝42と、一端が周方向細溝42に連通して他端が陸部34内で終端するサイプ64と、一端が主溝24に連通して他端が陸部34内で終端するラグ溝54が設けられている。陸部35には、一端が主溝24に連通して他端が接地端Eに対して開口するラグ溝55と、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝35の間においてタイヤ幅方向に延在して一端が陸部35内で終端して他端が接地端Eに対して開口するサイプ65が設けられている。
【0041】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
表1に示す配合からなる16種類のゴム組成物(標準例1、比較例1〜8、実施例1〜7)を、それぞれ加硫促進剤および硫黄を除く配合成分を秤量し、1.7Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度145℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後、このマスターバッチを1.7Lの密閉式バンバリーミキサーに供し、加硫促進剤及び硫黄を加え3分間混合してゴム組成物を調製した。尚、SBR1およびSBR2はオイル分を含むため、オイル分を除いたゴム成分の含有量を下段の括弧内に記載した。次に、得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間の条件でプレス加硫して加硫ゴム試験片を作製した
(尚、脂肪酸金属塩bを含まない実施例1,3〜7は参考例である)。
【0043】
得られたゴム組成物について、下記に示す方法により、加工性、ウェットグリップ性、転がり抵抗の評価を行った。
【0044】
加工性
得られたゴム組成物のムーニー粘度をJIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。尚、ムーニー粘度の測定は、混合直後と、湿熱オーブン(温度30℃、湿度80%)で168時間処理した後に行った。これら混合直後のムーニー粘度と湿熱処理後のムーニー粘度の差を算出し、経時の加工性の指標とした。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1の「加工性」の欄に示した。この指数値が小さいほど経時での粘度の変化が小さく、経時での加工性が優れることを意味する。
【0045】
ウェットグリップ性
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度0℃における損失正接tanδを測定した。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1の「ウェットグリップ性」の欄に示した。この指数値が大きいほど0℃におけるtanδが大きく、タイヤにしたときウェットグリップ性に優れることを意味する。
【0046】
転がり抵抗
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃における損失正接tanδを測定した。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1の「転がり抵抗」の欄に示した。この指数値が小さいほど発熱が小さく、転がり抵抗が小さく、燃費性能に優れることを意味する。
【0047】
【表1】
【0048】
表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・SBR1:末端にグリシジルアミン基を有する溶液重合スチレンブタジエンゴム、旭化成社製 TUFDENE F3420(スチレン含有量:36%、ゴム成分100質量部に対しオイル分25.0質量部を含む油展品)
・SBR2:末端が未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 NIPOL1739(スチレン含有量:39%、ゴム成分100質量部に対しオイル分37.5質量部を含む油展品)
・BR:ブタジエンゴム、タイシンセティック社製 UBEPOL BR150
・CB:カーボンブラック、THAI TOKAI CARBON社製 N‐134
・シリカ1:エボニック社製 ULTRASIL 7000GR(CTAB吸着比表面積:158m
2 /g)
・シリカ2:エボニック社製 ULTRASIL 9000GR(CTAB吸着比表面積:200m
2 /g)
・酸化亜鉛:正同化学工業社製 酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製 ビーズステアリン酸
・老化防止剤1:Solutia社製 SANTOFLEX 6PPD
・老化防止剤2:NOCIL LIMITED社製 PILNOX TDQ
・シランカップリング剤1:Evonik Degussa社製 Si363(メルカプト基を有する硫黄含有シランカップリング剤)
・シランカップリング剤2:Evonik Degussa社製 Si69(メルカプト基を有しない硫黄含有シランカップリング剤)
・アルキルシラン:信越シリコーン社製 KBE‐3083
・脂肪酸金属塩a:ステアリン酸カリウム、日油社製 ノンサールSK‐1
・脂肪酸金属塩b:ステアリン酸亜鉛、日油社製 ジンクステアレートG
・脂肪酸エステル:ステアリン酸グリセリル、日油社製 モノグリD
・アロマオイル:H&Rケミカル社製 VIVATEC 500
・硫黄:鶴見化学工業社製 金華印油入微粉硫黄(硫黄含有量:95.24質量%)
・加硫促進剤1:大内新興化学工業社製 ノクセラーCZ‐G
・加硫促進剤2:住友化学社製 ソクシノールD‐G
【0049】
表1から明らかなように、実施例1〜7のゴム組成物は、標準例1に対して加工性、ウェットグリップ性、転がり抵抗をバランスよく改善した。
【0050】
一方、比較例1のゴム組成物は、末端が変性されたジエン系ゴムを含まないため、ウェットグリップ性、転がり抵抗が悪化した。比較例2のゴム組成物は、脂肪酸エステルを含まないため、ウェットグリップ性および転がり抵抗が悪化した。比較例3のゴム組成物は、アルキルシランを含まないため、ウェットグリップ性および転がり抵抗が悪化した。比較例4のゴム組成物は、2種の脂肪酸金属塩(脂肪酸金属塩aおよび脂肪酸金属塩b)を含むものの脂肪酸エステルを含まないため、ウェットグリップ性および転がり抵抗が悪化した。比較例5のゴム組成物は、シリカの配合量が少な過ぎるため、ウェットグリップ性が悪化した。比較例6のゴム組成物は、シリカの配合量が多過ぎるため、転がり抵抗が悪化した。比較例7のゴム組成物は、シランカップリング剤の配合量がシリカに対して少な過ぎるためウェットグリップ性と転がり抵抗が悪化した。比較例8のゴム組成物は、シランカップリング剤の配合量がシリカに対して多過ぎるため加工性が悪化した。
【0051】
更に、実施例1〜7のゴム組成物をトレッド部に用いて、
図1または
図4のトレッドパターンを有する空気入りタイヤを作製し、ウェット性能の評価(ウェット路面における走行性能のテストドライバーによる官能評価)を行ったところ、いずれの場合も、
図1のトレッドパターンを有する空気入りタイヤの方が優れたウェット性能を示した。尚、
図4のトレッドパターンは、
図1のトレッドパターンに対して、各ラグ溝(センターラグ溝、中間ラグ溝、ショルダーラグ溝)のタイヤ赤道側の端部が主溝または周方向細溝に連通せずに陸部内で終端した構造(即ち、連通ラグ溝が形成されない構造)を有する。