(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
内側介在部材は、射出成形によって形成されることが多い。射出成形品の寸法は、内側介在部材の厚みが薄くなるとバラツキ易い。そのため、従来は、内側介在部材の厚みを一定以上(例えば2.5mm以上)としたり、特許文献1,2に記載のように、内側介在部材にリブを設けるなどして、内側介在部材の寸法精度を上げることが行なわれている。しかし、このような構成では、巻回部と内側コア部の距離が大きくなってしまう。そのため、内側コア部から巻回部への放熱性には制約があり、巻回部の断面積を一定とした場合に、巻回部の内部に配置される内側コア部の磁路断面積を一定以上大きくすることができない。本願発明者らは、これらの点に鑑みて、以下に示す実施形態に係るリアクトルを完成させた。
【0011】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内部に配置される内側コア部を有する磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間の絶縁を確保する内側介在部材と、を備えるリアクトルであって、
前記内側介在部材は、その内周面側が凹むことで厚みが薄くなった薄肉部と、前記薄肉部よりも厚みが厚くなった厚肉部と、を備え、
前記内側コア部は、前記内側介在部材に対向する外周面に、前記薄肉部の内周面形状に沿った形状を有するコア側凸部を備え、
前記薄肉部の厚さが0.2mm以上1.0mm以下、前記厚肉部の厚さが1.1mm以上2.5mm以下で、
前記内側コア部と前記内側介在部材とが実質的に密着し、
前記内側介在部材と前記巻回部との間の少なくとも一部にクリアランスがある。
【0012】
金型内に樹脂を注入する射出成形で内側介在部材を作製する場合、金型の隙間が広い箇所に注入された樹脂が厚肉部、金型の隙間が狭い箇所に注入された樹脂が薄肉部となる。金型の隙間が広い部分は、金型の隙間全体に樹脂を素早く行き渡らせる機能を果たす。そのため、従来よりも厚みが薄い薄肉部を備えていても、所定厚さ以上の厚肉部を備える内側介在部材は、設計寸法通りに作製し易い。内側コア部の外周に内側介在部材を実質的に密着させるには、内側コア部に樹脂をモールドするか、または内側介在部材に内側コア部を圧入することになる。いずれの場合であっても、内側介在部材が設計寸法通りに作製できることで、内側コア部の外周に内側介在部材を実質的に密着した状態にできる。ここで、内側コア部に樹脂をモールドする場合も、内側介在部材に内側コア部を圧入する場合も、内側コア部と内側介在部材の界面の一部に離隔箇所が形成されることがある。そこで、上記界面の一部に離隔箇所があっても、界面全体に占める離隔箇所の総面積が小さければ(例えば、40%以下、あるいは20%以下であれば)、内側コア部と内側介在部材とが実質的に密着していると見做す。
【0013】
上記内側介在部材の寸法のバラツキが小さいと、内側介在部材と巻回部との間のクリアランスが小さくなるように内側介在部材を設計しても、巻回部に内側介在部材を挿入できないといった不具合を抑制できる。
【0014】
上記クリアランスを小さくできることで、内側コア部から巻回部までの距離を小さくでき、内側コア部から巻回部への放熱性を向上させることができる。しかも、内側コア部と内側介在部材とが実質的に密着しているため、両者の間の熱伝導性が良好で、内側コア部から巻回部への放熱性を向上させることができる。特に、実施形態のリアクトルでは、薄肉部の凹み(以下、介在側凹部と呼ぶ場合がある)に、内側コア部のコア側凸部が配置されているため、コア側凸部から巻回部までの放熱距離が短く、その結果、リアクトルの放熱性を向上させることができる。
【0015】
また、上記クリアランスを小さくできることで、巻回部を大きくすること無く、巻回部内の内側コア部の磁路断面積を大きくすることができる。特に、実施形態のリアクトルでは、内側介在部材の介在側凹部に、内側コア部のコア側凸部が配置されることで、内側コア部の磁路断面積が大きくなっている。そのため、巻回部の大きさを変えることなく、介在側凹部を有さない従来の内側介在部材を用いたリアクトルよりも内側コア部の磁路断面積を大きくできる。
【0016】
さらに、実施形態の構成には、内側コア部の外周に密着する内側介在部材によって内側コア部の磁歪振動を抑制し易いという利点がある。
【0017】
<2>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記内側介在部材が、前記内側コア部の外部にモールドされた樹脂によって構成されている形態を挙げることができる。
【0018】
内側コア部を金型内に配置し、内側コア部の外部に樹脂をモールドして内側介在部材を形成する場合、内側コア部の外周面と金型の内周面との隙間が広い箇所に注入された樹脂が厚肉部、金型の隙間が狭い箇所に注入された樹脂が薄肉部となる。内側コア部を樹脂モールドして内側介在部材を形成することで、内側コア部と内側介在部材とを確実に密着させることができる。また、内側コア部と内側介在部材とを一体に扱うことができるため、リアクトルの生産性を向上させることができる。
【0019】
<3>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記薄肉部の厚さと前記厚肉部の厚さとの差が0.2mm以上である形態を挙げることができる。
【0020】
薄肉部と厚肉部との差を0.2mm以上とすることで、薄肉部に対応する金型の狭小箇所への樹脂の充填性をより十分に確保しつつ、内側介在部材の寸法のバラツキを小さくすることができる。
【0021】
<4>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記薄肉部の厚さが0.2mm以上0.7mm以下、前記厚肉部の厚さが1.1mm以上2.0mm以下である形態を挙げることができる。
【0022】
薄肉部の厚さを上記範囲とすることで、巻回部と内側コア部のコア側凸部との間の距離を十分に短くでき、リアクトルの放熱性をより向上させることができる。また、厚肉部の厚さを上記範囲とすることで、内側介在部材の寸法のバラツキをより一層、小さくすることができる。
【0023】
<5>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記厚肉部と前記薄肉部は、前記内側介在部材の周方向に分散して複数存在する形態を挙げることができる。
【0024】
上記構成を備える内側介在部材を作製する金型では、樹脂を注入する際に金型の隙間全体に樹脂が行き渡り易く、寸法のバラツキが小さい内側介在部材を作製し易い。つまり、上記構成を備える内側介在部材は、その寸法のバラツキが小さい内側介在部材であって、リアクトルの放熱性と磁気特性を向上させることができる。特に、金型における樹脂を注入する隙間の周方向に隙間が狭い部分と隙間が広い部分が交互に並んだ状態となっていれば、より一層、金型の隙間全体に樹脂が行き渡り易くなる。このような金型であれば、厚肉部と薄肉部とが内側介在部材の周方向に交互に並んだ内側介在部材を、寸法精度良く作製することができる。
【0025】
<6>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
少なくとも一部の前記厚肉部は、前記巻回部の軸方向における前記内側介在部材の端面に達している形態を挙げることができる。
【0026】
射出成形で内側介在部材を作製する場合、金型における内側介在部材の端面となる位置から樹脂を注入することが多い。この場合、内側介在部材の端面が樹脂の入口となるため、厚肉部に対応する大きな隙間がその樹脂の入口にあると、内側介在部材の成形性が向上する。ここで、内側介在部材の端面に達する厚肉部を備える内側介在部材を作製する場合、樹脂の入口に、厚肉部に対応する隙間が広くなった部分が形成される。そのため、上記構成の内側介在部材は、成形性に優れ、薄肉部の厚みが薄くても精度良く作製することができる。
【0027】
<7>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記内側介在部材の外周面は、前記巻回部の内周面形状に沿った形状である形態を挙げることができる。
【0028】
内側介在部材の外周面が巻回部の内周面形状に沿った形状であれば、内側介在部材と巻回部の間に隙間がほぼ無くなり、内側介在部材の外周面と、巻回部の内周面とのクリアランスを小さくし易い。その結果、リアクトルの放熱性と磁気特性を向上させ易い。
【0029】
<8>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記薄肉部から前記厚肉部に向かって徐々に前記内側介在部材の厚みが増す形態を挙げることができる。
【0030】
内側介在部材の厚みが薄肉部から厚肉部に向かって徐々に増す形態とすることで、内側介在部材の成形性を向上させることができる。厚みが薄肉部から厚肉部に向かって徐々に増す構成には、例えば薄肉部から厚肉部に向かって曲面で構成されていたり、傾斜面で構成されていたりすることが挙げられる。上記構成によって内側介在部材の成形性が向上するのは、内側介在部材を射出成形する際、金型における厚肉部となる部分に注入された樹脂が、薄肉部となる部分に向って流れ込み易くなるからである。
【0031】
<9>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記内側介在部材と前記巻回部との間に形成される前記クリアランスが、0mm超0.3mm以下である形態を挙げることができる。
【0032】
上記クリアランスが0mm超0.3mm以下であれば、リアクトルの放熱性と磁気特性をより向上させることができる。
【0033】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本願発明のリアクトルの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本願発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0034】
<実施形態1>
≪全体構成≫
図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3と絶縁介在部材4とを組み合わせた組合体10を備える。このリアクトル1の特徴の一つとして、絶縁介在部材4の一部(後述する
図2,3の内側介在部材41)の形状が従来と異なることを挙げることができる。まずリアクトル1の各構成を
図1,2に基づいて簡単に説明した後、内側介在部材41の形状や、内側介在部材41と、その内外に配置される磁性コア3および巻回部2A,2Bとの関係について
図3〜5を参照して詳しく説明する。
【0035】
≪コイル≫
本実施形態におけるコイル2は、並列された一対の巻回部2A,2Bと、両巻回部2A,2Bを連結する連結部2Rと、を備える。コイル2の両端部2a,2bは、巻回部2A,2Bから引き出されて、図示しない端子部材に接続される。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置が接続される。本例のコイル2に備わる各巻回部2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で概略角筒状に形成され、各軸方向が平行になるように並列されている。各巻回部2A,2Bで巻数や巻線の断面積が異なっても良い。また、本例の連結部2Rは、各巻回部2A,2Bの巻線の端部同士を溶接や圧着などにより接合することで形成されている。このコイル2は、接合部の無い一本の巻線を螺旋状に巻回して形成しても良い。
【0036】
巻回部2A,2Bを含むコイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線によって構成することができる。本実施形態では、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにすることで、各巻回部2A,2Bを形成している。
【0037】
≪磁性コア≫
本例の磁性コア3は、
図2に示すように、内側コア部31,31と、外側コア部32,32と、に分けることができる。内側コア部31は、コイル2の巻回部2A,2Bの内部に配置される部分であって、本例では後述する内側介在部材41の内部にあり、
図2では見えない位置にある。本例の内側コア部31は、二分割されたものを組み合わせることで構成されている。ここで、内側コア部31とは、磁性コア3のうち、コイル2の巻回部2A,2Bの軸方向に沿った部分を意味する。例えば、巻回部2A,2Bの内部から端面の外側に突出している部分も、内側コア部31の一部である。この内側コア部31の全体的な概略形状は、巻回部2A(2B)の内部形状に対応した形状であって、本例の場合、略直方体状である。
【0038】
本例の内側コア部31の外周面には、凹凸形状が形成されている。この内側コア部31の外周面の凹凸形状は、後述する内側介在部材41の内周面形状に対応している。当該凹凸形状の詳しい構成については、
図3〜
図6を参照し、後ほど説明する。
【0039】
外側コア部32は、巻回部2A,2Bの外部に配置される部分であって、一対の内側コア部31,31の端部を繋ぐ形状を備える。本例の各外側コア部32は、直方体状に形成されている。この外側コア部32の下面は、コイル2の巻回部2A,2Bの下面とほぼ面一になっている(
図1参照)。もちろん、両下面は面一となっていなくても構わない。
【0040】
両コア部31,32は、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体で構成することができる。軟磁性粉末は、鉄などの鉄族金属やその合金(Fe−Si合金、Fe−Si−Al合金、Fe−Ni合金など)などで構成される磁性粒子の集合体である。磁性粒子の表面には、リン酸塩などで構成される絶縁被覆が形成されていても良い。また、樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ナイロン6、ナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂などを利用できる。
【0041】
複合材料における軟磁性粉末の含有量は、複合材料を100%とするとき、50体積%以上80体積%以下が挙げられる。磁性体粉末が50体積%以上であることで、磁性成分の割合が十分に高いため、飽和磁束密度を高め易い。磁性体粉末が80体積%以下であると、磁性体粉末と樹脂との混合物の流動性が高く、成形性に優れた複合材料とすることができる。磁性体粉末の含有量の下限は、60体積%以上とすることが挙げられる。また、磁性体粉末の含有量の上限は、75体積%以下、更に70体積%以下とすることが挙げられる。
【0042】
本例とは異なり、両コア部31,32は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形してなる圧粉成形体で構成することもできる。軟磁性粉末には、複合材料の成形体に使用できる軟磁性粉末と同じものを利用することができる。内側コア部31と外側コア部32の一方を複合材料の成形体、他方を圧粉成形体とすることもできる。
【0043】
≪絶縁介在部材≫
絶縁介在部材4は、コイル2と磁性コア3との間の絶縁を確保する部材であって、巻回部2A,2Bの内周面と内側コア部31の外周面との間に介在される内側介在部材41,41と、巻回部2A,2Bの端面と外側コア部32との間に介在される端面介在部材42とで構成される。本例では、絶縁介在部材4は、内側コア部31と一体化した一対のモールドコア部材5A,5Bの形態で用いられている。本例のモールドコア部材5A,5Bは、同一形状としても良いし、巻回部2A,2Bの端部2a,2bが配置される側にあるモールドコア部材5Aと、連結部2Rが配置される側にあるモールドコア部材5Bと、で異なる形状としても良い。
【0044】
モールドコア部材5A,5Bは、一対の内側コア部31と、各内側コア部31の外周を覆う一対の内側介在部材41,41と、枠状の端面介在部材42と、が一体となった概略π字状の部材である。内側コア部31を金型内に配置し、金型内に樹脂を注入することで内側介在部材41と端面介在部材42を形成するモールドコア部材5A,5Bの作製においては、金型の内周面から内側コア部31を離隔させ、金型内での内側コア部31の位置を決める位置決め部材が用いられる。そのため、モールドコア部材5A,5Bでは、位置決め部材が内側介在部材41に埋設された状態、即ち位置決め部材が内側介在部材41の一部を構成した状態になる。この点に鑑み、位置決め部材は、絶縁性樹脂で構成することが好ましい。より好ましくは、内側介在部材41の熱膨張係数を揃えるために、位置決め部材を含む内側介在部材41全体を同じ種類の絶縁性樹脂で構成する。
【0045】
端面介在部材42のコイル2側の面には、巻回部2A,2Bの軸方向端部を収納する二つのターン収納部42s(特にモールドコア部材5Bを参照)が形成されている。ターン収納部42sは、巻回部2A,2Bの軸方向端面の形状に沿った凹みであって、当該端面全体を端面介在部材42に面接触させるために形成されている。また、端面介在部材42のコイル2側の面には、巻回部2A,2Bの間に配置され、巻回部2A,2Bを離隔させる仕切り部42dが設けられている。
【0046】
ここで、本例のモールドコア部材5A,5Bでは、内側介在部材41,41と端面介在部材42とが一体に成形されており、モールドコア部材5Aの二点鎖線で示す部分は、内側介在部材41,41である。
【0047】
上記構成を備える絶縁介在部材4は、例えば、PPS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったPA樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂で構成することができる。その他、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂などで絶縁介在部材4を形成することができる。上記樹脂にセラミックスフィラーを含有させて、絶縁介在部材4の放熱性を向上させても良い。セラミックスフィラーとしては、例えば、アルミナやシリカなどの非磁性粉末を利用することができる。
【0048】
≪その他の構成≫
本例のリアクトル1は、ケースレスの構成であるが、ケースの内部に組合体10を配置した構成とすることもできる。
【0049】
≪内側介在部材と、内側コア部および巻回部との関係≫
図3は、
図1における巻回部2A,2Bの軸方向に直交するIII−III断面図である。この
図3では、連結部2Rの図示を省略している。また、
図3では、各部材の形状やクリアランスを誇張して示している。
【0050】
図3の丸囲み拡大図に示すように、内側介在部材41は、その内周面410に複数の介在側凹部411が形成されている。内側介在部材41は、介在側凹部411により内周面410が凹むことで厚みが薄くなった薄肉部41aと、薄肉部41aよりも厚みが厚くなった厚肉部41bとを備える。
【0051】
介在側凹部411の延伸方向(
図3の紙面奥行き方向であって、巻回部2A,2Bの軸方向に同じ)に直交する断面における介在側凹部411の内周面形状は特に限定されない。例えば、
図3に示すように、介在側凹部411の内周面形状は、半円弧状とすることもできるし、
図4に示すように概略矩形状とすることもできる。その他、介在側凹部411の内周面形状は、V溝形状や蟻溝形状としても良い。
【0052】
薄肉部41aの厚さt1は0.2mm以上1.0mm以下、厚肉部41bの厚さt2は1.1mm以上2.5mm以下とする。ここで、薄肉部41aの厚さt1とは、
図3,4に示すように、介在側凹部411の最も深い位置に対応する部分の厚さ、即ち薄肉部41aにおける最小厚さのことである。薄肉部41aの厚さt1は、従来の均一な厚さの内側介在部材の厚さ(例えば、2.5mm)よりも明らかに薄い。また、厚肉部41bの厚さt2とは、介在側凹部411が存在しない部分における最大厚さのことである。
【0053】
上記構成を備える内側介在部材41を内側コア部31の外周に射出成形で作製する場合、射出成形の金型と内側コア部31との隙間(以下、金型の隙間)が広い箇所に注入された樹脂が厚肉部41b、金型の隙間が狭い箇所に注入された樹脂が薄肉部41aとなる。金型の隙間が広い部分は、金型の隙間全体に樹脂を素早く行き渡らせる機能を果たす。そのため、従来よりも厚みが薄い薄肉部41aを備えていても、所定厚さ以上の厚肉部41bを備える内側介在部材41は、設計寸法通りに作製し易く、内側コア部31の外周全体に内側介在部材41を実質的に密着した状態にできる。内側介在部材41の寸法のバラツキが小さいと、内側介在部材41と巻回部2A,2Bとの間の外側クリアランスc2が小さくなるように内側介在部材41を設計することができる。外側クリアランスc2が小さくなるようにしても、内側介在部材41の寸法精度が高いため、巻回部2A,2Bに内側介在部材41を挿入できないといった不具合が生じ難い。
【0054】
内側介在部材41の成形性を考慮し、複数の介在側凹部411は、内側介在部材41の内周面410の周方向に分散して存在することが好ましい。この構成は言い換えれば、厚肉部41bと薄肉部41aとが、内側介在部材41の周方向に分散して複数存在する構成である。この内側介在部材41を作製する金型では、金型における樹脂を注入する隙間の周方向に隙間が狭い部分と隙間が広い部分が交互に並んだ状態になっている。このような金型であれば、樹脂を注入する際に金型の隙間全体に樹脂が行き渡り易く、寸法のバラツキが小さい内側介在部材41を作製し易い。特に、本例のように、薄肉部41aと厚肉部41bが内側介在部材41の軸方向に沿った構成であれば、成形時の金型内への樹脂の充填が一層容易である。
【0055】
また、内側介在部材41の成形性を考慮し、少なくとも一部の厚肉部41bが、巻回部2A,2Bの軸方向における内側介在部材41の端面に達していることが好ましい。全部の厚肉部41bが、
図2に示す内側介在部材41の端面に達していることが好ましい。射出成形で内側介在部材41を作製する場合、金型における内側介在部材41の端面となる位置から樹脂を注入することが多い。この場合、樹脂の入口となる位置の金型の隙間が大きいと、内側介在部材41の成形性が向上する。つまり、内側介在部材41の端面に達する厚肉部41bを備える内側介在部材41は、成形性に優れ、薄肉部41aの厚みが薄くても精度良く作製することができる。
【0056】
一方、上記内側介在部材41の内部に配置される内側コア部31は、その外周面(コア外周面319)に形成されるコア側凸部311を備える(
図5を合わせて参照)。本例では内側コア部31に内側介在部材41をモールドするため、内側介在部材41の内周面410に形成される介在側凹部411は、コア側凸部311に対応する形状に形成される。既に述べたように、介在側凹部411が形成される内側介在部材41の薄肉部41aは、従来の厚さが均一な内側介在部材よりも薄い。そのため、介在側凹部411に配置されるコア側凸部311を備える内側コア部31の磁路断面積は、コア側凸部311の分だけ、確実に従来の内側コア部よりも大きくなる。
【0057】
内側介在部材41の外周面419は、巻回部2A,2Bの内周面形状に沿った形状とすることが好ましい。そうすることで、内側介在部材41の外周面419と、巻回部2A,2Bのコイル内周面210との外側クリアランスc2を小さくし易い。具体的には、外側クリアランスc2を0mm超0.3mm以下とし易い。外側クリアランスc2を小さくできることで、内側コア部31から巻回部2A,2Bまでの距離を小さくでき、内側コア部31から巻回部2A,2Bへの放熱性を向上させることができ、かつ内側コア部31の磁路断面積を大きくできる。巻回部2A,2Bの内部への内側介在部材41の挿入のし易さ、内側コア部31から巻回部2A,2Bへの放熱性の向上効果、および内側コア部31の磁路断面積の増加効果を考慮して、外側クリアランスc2は、0.2mm以下、更には0.1mm以下とすることが好ましい。
【0058】
[より好ましい構成]
厚肉部41bに対応する金型の隙間が広い部分が、内側介在部材41の成形性を良好にすることを考慮して、薄肉部41aの厚さt1と厚肉部41bの厚さt2との差(厚さt2−厚さt1)を0.2mm以上とすることが好ましい。薄肉部41aと厚肉部41bを具体的な数値で規定するなら、薄肉部41aの厚さt1が0.2mm以上0.7mm以下、厚肉部41bの厚さt2が1.1mm以上2.0mm以下とすることが好ましく、薄肉部41aの厚さt1が0.2mm以上0.5mm以下、厚肉部41bの厚さt2が1.1mm以上2.0mm以下とすることがより好ましい。
【0059】
薄肉部41aから厚肉部41bに向って徐々に内側介在部材41の厚みが増す形態とすることで、内側介在部材41の成形性を向上させることができる。内側介在部材41を射出成形する際、金型における厚肉部41bとなる部分に注入された樹脂が、薄肉部41aとなる部分に流れ込み易くなるからである。上記形態の具体例として、例えば、
図3,4に示すように、薄肉部41aの幅方向縁部(厚肉部41bがある方向の縁部)を、内側介在部材41の外方側に凹となる丸みを帯びた形状とすることが挙げられる。さらに、厚肉部41bの幅方向縁部(薄肉部41aがある方向の縁部)を、内側介在部材41の外方側に凸となる丸みを帯びた形状とすることも好ましい。上記幅方向縁部は円弧状とすることができ、その場合、円弧の曲率半径は0.05mm以上20mm以下、更には0.1mm以上10mm以下とすることができる。円弧の曲率半径が大きいと、
図3に示すように薄肉部41aの幅方向縁部と厚肉部41bの幅方向縁部とが繋がったようになり、内側介在部材41の内周面410が波形形状となる。円弧の曲率半径が小さいと、
図4に示すように、内側介在部材41の内周面410は、角が丸い矩形溝状の介在側凹部411が並んだ形状となる。その他、角が丸いV字溝状の介在側凹部411が並んだ形状としても構わない。
【0060】
内側コア部31の外周に内側介在部材41をモールドする構成では、内側コア部31は、
図5に示すように、コア外周面319に形成される複数のコア側凸部311を備える形態とすることが好ましい。
図5のコア側凸部311は、内側コア部31の軸方向に沿った突条に形成されており、各コア側凸部311は、コア外周面319の周方向に所定の間隔を空けて配置されている。このような内側コア部31であれば、内側コア部31の端面側から樹脂をモールドする際、コア外周面319全体に樹脂が行き渡り易い。コア側凸部311の間に形成される溝部が、内側コア部31の軸方向への樹脂の移動を円滑にし、溝部の位置からコア側凸部311の外周にも樹脂が行き渡るからである。この内側コア部31を用いた場合、内側介在部材41の介在側凹部411は、内側介在部材41の軸方向(巻回部2A,2Bの軸方向に同じ)における一端側の端面から他端側の端面に及ぶ形状となる。
【0061】
図6に示すような内側コア部31に対応する内周面を備える内側介在部材とすることもできる。
図6の内側コア部31は、内側コア部31の軸方向の一端側のコア側凸部311と、他端側のコア側凸部311とが、内側コア部31の周方向にズレた構成を備える。この内側コア部31の両端面側から樹脂を注入する場合、
図5の構成と同様の理由で、内側コア部31のコア外周面319全体に樹脂が行き渡り易い。その他、コア側凸部311をさらに内側コア部31の軸方向に延長し、一端側の周方向に隣接するコア側凸部311の間の溝と、他端側の周方向に隣接するコア側凸部311の間の溝とが噛み合うようにしていても構わない。
【0062】
≪リアクトルの製造方法≫
実施形態1のリアクトル1は、コイル2、モールドコア部材5A,5B、および外側コア部32,32を別個に作製し、組み合わせることで作製することができる。具体的には、コイル2の巻回部2A,2Bの内部に、モールドコア部材5A,5Bの内側介在部材41,41を挿入すると共に、モールドコア部材5A,5Bの端面介在部材42の外側に外側コア部32,32を配置する。外側コア部32は、接着剤などで端面介在部材42に接合することができる。
【0063】
<変形例1−1>
磁性コア3と絶縁介在部材4の分割状態は、実施形態1の例示に限定されるわけではない。例えば、約半分の長さの一対の内側コア部31と、一つの外側コア部32と、を絶縁介在部材4の材料でモールドした概略π字状の一対のモールドコア部材を用いても構わない。また、巻回部2A(2B)の全長にわたる一つの内側コア部31と、一つの外側コア部32と、を絶縁介在部材4の材料でモールドした概略L字状の一対のモールドコア部材を用いても構わない。その他、巻回部2A(2B)の全長にわたる内側コア部31を内側介在部材41でモールドした部材を二つ用意し、それに二つの外側コア部32を組み合わせて、磁性コア3と絶縁介在部材4とを構成することもできる。
【0064】
<変形例1−2>
実施形態1のモールドコア部材とは異なり、内側介在部材41を射出成形で形成した後、その内側介在部材41に内側コア部31を圧入した圧入コア部材を用いることもできる。内側介在部材41に内側コア部31を圧入する構成であれば、内側コア部31と内側介在部材41との間のクリアランスをほぼ0mmとすることができる、即ち内側コア部31と内側介在部材41とが実質的に密着した状態とすることができる。このように、内側介在部材41に後から内側コア部31を圧入できるのは、内側介在部材41が薄肉部41aと厚肉部41bとで構成されているため、内側介在部材41を寸法精度良く作製することができるからである。
【0065】
<実施形態2>
実施形態1では、コイル2が一対の巻回部2A,2Bを備える形態を説明した。これに対して、一つの巻回部を有するコイルを備えるリアクトルにおいても、実施形態1と同様の構成を採用することができる。
【0066】
一つの巻回部を有するコイルを利用する場合、磁性コアは、上面視したときの形状が概略E字状の二つのモールドコア部材を組み合わせて構成すると良い。この場合、モールドコア部材のE字の真ん中の突出部が、巻回部の内部に挿入されて内側コア部が形成される。また、モールドコア部材のE字の真ん中の突出部以外の部分で、外側コア部が形成される。言うまでもないが、磁性コアや絶縁介在部材の分割状態は、E字型に限定されるわけではない。
【0067】
<用途>
実施形態のリアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった電動車両に搭載される双方向DC−DCコンバータなどの電力変換装置に利用することができる。