特許第6881664号(P6881664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6881664ポリイミド樹脂組成物、接着剤組成物、フィルム状接着材、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板及びポリイミドフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6881664
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂組成物、接着剤組成物、フィルム状接着材、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板及びポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20210524BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20210524BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20210524BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20210524BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20210524BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20210524BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210524BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C08L79/08 Z
   C08G73/10
   C08K5/01
   C08K5/06
   C09J179/08 Z
   C09J7/30
   B32B27/00 M
   H05K1/03 610N
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-173971(P2020-173971)
(22)【出願日】2020年10月15日
【審査請求日】2020年10月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼本 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 太陽
(72)【発明者】
【氏名】山下 眞花
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 崇司
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2020−105493(JP,A)
【文献】 特開2018−168370(JP,A)
【文献】 特開2018−168371(JP,A)
【文献】 特開2018−120832(JP,A)
【文献】 特開2017−210527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08,
C08L1/00−101/14,
C08G73/00−73/26,
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸無水物(a1)及びダイマージアミンを含むジアミン(a2)を含むモノマー群の反応物であるポリイミド(A)、並びに、異なる2種以上の有機溶剤(B)を含むポリイミド樹脂組成物であって、
(B)成分はいずれも窒素原子を含まず、かつ、共沸点が70〜120℃であり、
前記(B)成分は、水100gに対する溶解度1g以上の有機溶剤(B1)、及び水100gに対する溶解度100mg以下の有機溶剤(B2)であり、
前記(B1)成分は、エーテルであり、かつ、前記(B2)成分は、芳香族炭化水素であるポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】
(a2)成分が、更に脂環族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンを含む請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項3】
(B1)成分及び(B2)成分の含有比率が、質量比で、(B1)/(B2)=10/90〜90/10である請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物及び架橋剤を含む接着剤組成物。
【請求項5】
請求項に記載の接着剤組成物の硬化物を含む、フィルム状接着材。
【請求項6】
支持フィルムの少なくとも片面に、請求項のフィルム状接着材を有する接着シート。
【請求項7】
請求項に記載のフィルム状接着材及び銅箔を含む、樹脂付銅箔。
【請求項8】
請求項に記載の樹脂付銅箔及び、銅箔又は絶縁性シートを含む、銅張積層板。
【請求項9】
請求項に記載の銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有する、プリント配線板。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物の乾燥物であるポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂組成物、接着剤組成物、フィルム状接着材、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板及びポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPWB:Flexible Printed Wiring Board)及びプリント回路板(PCB:Printed Circuit Board)並びにそれらを用いた多層配線板は、携帯電話やスマートフォン等のモバイル型通信機器やその基地局装置、サーバー・ルーター等のネットワーク関連電子機器、大型コンピュータ等の製品で汎用されている。
【0003】
また近年、それらの製品においては、大容量の情報を高速で伝送・処理するため、高周波の電気信号が使用されているが、高周波信号は非常に減衰しやすいため、前記多層配線板にも伝送損失をなるべく抑える工夫が求められる。
【0004】
多層配線板における伝送損失を抑える手段としては、例えば、プリント配線板又はプリント回路板を積層する際に、誘電率及び誘電正接が共に小さい特性(以下、低誘電特性ともいう。)を有する接着剤組成物として、ポリイミド樹脂を使用することが考えられる。
【0005】
このようなポリイミド樹脂としては、ピロメリット酸二無水物を含むテトラカルボン酸無水物、ダイマー酸型ジアミン及び特定の芳香族ジアミンを反応させて得られるポリイミドが公知である(特許文献1)。このポリイミドは芳香環を有することから、優れたはんだ耐熱性を示す。
【0006】
ところで、FPWB等の製造においては、剥離ポリエチレンテレフタレート(剥離PET)や剥離紙等の支持体に、接着剤組成物を塗工して加熱下で乾燥させる工程を経るが、このような支持体は耐熱性に乏しいため、その乾燥は通常、150℃以下の温度で行われる。このことを前提として、特許文献1のポリイミドはその製造の際に、高い沸点を有するN,N−ジメチルアセトアミドが有機溶剤に使用されており、そのような溶剤を含む樹脂組成物を前記温度で乾燥させると、有機溶剤が残存しやすく、ポリイミド樹脂層の低誘電特性及びはんだ耐熱性に悪影響を及ぼすものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−188298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、加熱下での乾燥において、有機溶剤が揮発しやすく、かつ、低誘電率及び低誘電正接、並びに優れたはんだ耐熱性を有するポリイミド樹脂層を与えるポリイミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために、ポリイミド樹脂組成物中の組成に着目して鋭意検討したところ、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明においては、以下のものが提供される。
【0010】
1.芳香族テトラカルボン酸無水物(a1)及びダイマージアミンを含むジアミン(a2)を含むモノマー群の反応物であるポリイミド(A)、並びに、異なる2種以上の有機溶剤(B)を含むポリイミド樹脂組成物であって、
(B)成分はいずれも窒素原子を含まず、かつ、共沸点が70〜120℃であるポリイミド樹脂組成物。
【0011】
2.(a2)成分が、更に脂環族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンを含む前項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【0012】
3.(B)成分が、水100gに対する溶解度1g以上の有機溶剤(B1)、及び水100gに対する溶解度100mg以下の有機溶剤(B2)である、前項1又は2に記載のポリイミド樹脂組成物。
【0013】
4.(B1)成分が、ケトン及び/又はエーテルである前項3に記載のポリイミド樹脂組成物。
【0014】
5.(B2)成分が、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種である前項3に記載のポリイミド樹脂組成物。
【0015】
6.(B1)成分及び(B2)成分の含有比率が、質量比で、(B1)/(B2)=10/90〜90/10である前項3〜5のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
【0016】
7.前項1〜6のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物及び架橋剤を含む接着剤組成物。
【0017】
8.前項7に記載の接着剤組成物の硬化物を含む、フィルム状接着材。
【0018】
9.支持フィルムの少なくとも片面に、前項8のフィルム状接着材を有する接着シート。
【0019】
10.前項8に記載のフィルム状接着材及び銅箔を含む、樹脂付銅箔。
【0020】
11.前項10に記載の樹脂付銅箔及び、銅箔又は絶縁性シートを含む、銅張積層板。
【0021】
12.前項11に記載の銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有する、プリント配線板。
【0022】
13.前項1〜6のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物の乾燥物であるポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0023】
本発明のポリイミド樹脂組成物によれば、加熱下での乾燥において、有機溶剤が揮発しやすく、かつ、低誘電率及び低誘電正接、並びに優れたはんだ耐熱性を有するポリイミド樹脂層を与える。また、当該ポリイミド樹脂層は、高い透明性も有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、芳香族テトラカルボン酸無水物(a1)(以下、(a1)成分という。)及びダイマージアミンを含むジアミン(a2)(以下、(a2)成分という。)を含むモノマー群の反応物であるポリイミド(A)(以下、(A)成分という。)を含む。
【0025】
(a1)成分としては、特に限定されず、例えば、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4‐ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,3’,4,4’−テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用しても良い。
【0026】
中でも、(a1)成分としては、ポリイミド樹脂層の可撓性、はんだ耐熱性の点から、下記の一般式(1)で示されるものが好ましい。
【化1】
(式(1)中、Xは単結合、−SO−、−CO−、−O−、−O−C−C(CH−C−O−、−C(CH−、−O−C−SO−C−O−、−C(CHF2−、−C(CF−、−COO−(CH−OCO−、又は−COO−HC−HC(−O−C(=O)−CH)−CH−OCO−を表し、pは1〜20の整数を表す。)
【0027】
一般式(1)で示されるものとしては、例えば、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,3’,4,4’−テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用しても良い。中でも、(A)成分が有機溶剤に対して良く溶解する点から、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物が好ましい。
【0028】
(A)成分を構成するモノマー群100モル%中における(a1)成分の使用量は、特に限定されず、通常は、10〜90モル%、好ましくは、25〜75モル%である。
【0029】
また、(A)成分を構成するモノマー群100モル%中における一般式(1)で示されるテトラカルボン酸無水物の使用量は、特に限定されず、通常は、10〜90モル%、好ましくは、25〜75モル%である。
【0030】
(a1)成分100モル%中における一般式(1)で示されるテトラカルボン酸無水物の使用量は、特に限定されず、通常は、10〜100モル%、好ましくは、50〜100モル%である。
【0031】
(a2)成分は、ダイマージアミンを含むジアミンである。
【0032】
ダイマージアミンとは、ダイマー酸の全てのカルボキシル基を1級アミノ基又は1級アミノメチル基に置換したものである(例えば、特開平9−12712号公報を参照)。ここで、ダイマー酸とは、オレイン酸、リノール酸やリノレン酸等の不飽和脂肪酸を二量化して得られる炭素数36の二塩基酸を主に含むものであり、その精製度合いによって、炭素数18のモノマー酸、炭素数54のトリマー酸、炭素数20〜90の重合脂肪酸を含む。なお、前記ダイマー酸には二重結合が含まれるが、例えば、水素化反応により不飽和度を低下させても良い。
【0033】
前記のダイマージアミンとしては、特に限定されず、例えば、下記の一般式(2)で示されるものが挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
また、ダイマージアミンの市販品としては、「バーサミン551」、「バーサミン552」(以上、コグニクスジャパン(株)製)、「PRIAMINE1073」、「PRIAMINE1074」、「PRIAMINE1075」(以上、クローダジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0036】
さらに、ダイマージアミンは、そのまま使用しても良く、蒸留等の精製処理を施したものを使用しても良い。
【0037】
(A)成分を構成するモノマー群100モル%中におけるダイマージアミンの使用量は、特に限定されず、通常は、5モル%以上、好ましくは、25〜75モル%である。
【0038】
また、(a2)成分100モル%中におけるダイマージアミンの使用量は、特に限定されず、通常は、10モル%以上、好ましくは、30〜100モル%である。
【0039】
また、(a2)成分としては、ダイマージアミン以外のジアミン(a2−1)(以下、(a2−1)成分という。)を含んでも良い。(a2−1)成分としては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノエーテル、ジアミノポリシロキサンを含んでも良い。なお、これらのアミンについてはダイマージアミンを除く。
【0040】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等が挙げられる。
【0041】
脂環族ジアミンとしては、例えば、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、テトラメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0042】
芳香族ジアミンとしては、例えば、
2,2’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジn−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル等のジアミノビフェニル;
2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスアミノフェノキシフェニルプロパン;
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル;
p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン;
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド等のジアミノジフェニルスルフィド;
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン;
3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン;
3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン等のジアミノジフェニルメタン;
2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン等のジアミノフェニルプロパン;
2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のジアミノフェニルヘキサフルオロプロパン;
1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン等のジアミノフェニルフェニルエタン;
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等のビスアミノフェノキシベンゼン;
1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン等のビスアミノベンゾイルベンゼン;
1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン等のビスアミノジメチルベンジルベンゼン;
1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン等のビスアミノジトリフルオロメチルベンジルベンゼン;
2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1−(3−アミノフェノキシ)]ビフェニル等のアミノフェノキシビフェニル;
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン等のアミノフェノキシフェニルケトン;
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド等のアミノフェノキシフェニルスルフィド;
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のアミノフェノキシフェニルスルホン;
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等のアミノフェノキシフェニルエーテル;
2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のアミノフェノキシフェニルプロパン;
1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン等のビス(アミノフェノキシベンゾイル)ベンゼン;
1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等のビス(アミノフェノキシ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン;
4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等のビス[(アミノアリールオキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル;
4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン等のビス(アミノ−α,α−ジメチルベンジルフェノキシ)ベンゾフェノン:
4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン等のビス[アミノ−α,α−ジメチルベンジルフェノキシ]ジフェニルスルホン;
4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン等のビス[アミノフェノキシフェノキシ]ジフェニルスルホン;
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン等のジアミノジアリールオキシベンゾフェノン;
3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン等のジアミノアリールオキシベンゾフェノン;
1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン等が挙げられる。
【0043】
ジアミノエーテルとしては、例えば、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エ−テル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0044】
ジアミノポリシロキサンとしては、例えば、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(5−アミノペンチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(2−アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(4−アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0045】
これらの(a2−1)成分は、単独でも2種以上を併用しても良い。中でも、ポリイミド樹脂層が優れたはんだ耐熱性を示す点から、脂環族ジアミン、芳香族ジアミンが好ましく、芳香族ジアミンがより好ましい。
【0046】
(A)成分を構成するモノマー群100モル%中における(a2−1)成分の使用量は、特に限定されず、通常は、90モル%以下、好ましくは、50モル%以下である。
【0047】
また、(a2)成分100モル%中における(a2−1)成分の使用量は、特に限定されず、通常は、90モル%以下、好ましくは、70モル%以下である。
【0048】
本発明の(A)成分は、各種公知の製造方法によって得ることができる。その製造方法としては、例えば、(a1)成分及び(a2)成分を含むモノマー群を、温度が好ましくは30〜120℃程度、より好ましくは40〜100℃程度、時間が好ましくは0.1〜2時間程度、より好ましくは0.1〜0.5時間程度、重付加反応させて、重付加物を得る工程、得られた重付加物を好ましくは80〜250℃程度、より好ましくは80〜170℃程度の温度において、好ましくは0.5〜50時間程度、より好ましくは1〜20時間程度、イミド化反応、即ち脱水閉環反応させる工程を含む方法等が挙げられる。なお、(a1)成分及び(a2)成分の混合の方法、順番等は特に限定されない。
【0049】
なお、イミド化反応させる工程では、各種公知の反応触媒、脱水剤、及び後述する有機溶剤(B)が使用されても良く、これらは、単独でも2種以上を併用しても良い。
【0050】
反応触媒は、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン等が挙げられる。また、脱水剤は、無水酢酸等の脂肪族カルボン酸無水物や無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0051】
(A)成分の製造の際に、後述の有機溶剤(B)を使用する場合、その使用量は、反応濃度が5〜60質量%、好ましくは、20〜50質量%となるように調節される。
【0052】
(A)成分のイミド閉環率は特に限定されないが、軟化点及び柔軟性が共に高い(A)成分が得られる点から、90〜100%が好ましく、95〜100%程度がより好ましい。
(A)成分のイミド閉環率が前記範囲であることにより、(A)成分は、ハードセグメント及びソフトセグメントの構造が形成されやすくなり、軟化点及び柔軟性が共に高くなるためと推定される。ここで「イミド閉環率」とは、(A)成分のポリイミド樹脂における環状イミド結合の含有量を意味し、例えばNMRやIR分析等の各種分光手段により決定できる。
【0053】
(A)成分の物性は特に限定されない。(A)成分の重量平均分子量は、20,000〜100,000が好ましい。(A)成分の数平均分子量は、5,000〜50,000が好ましい。重量平均分子量及び数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値として求められる。
【0054】
本発明の(A)成分の軟化点は、銅張積層板等の積層体の製造時におけるプレス硬化で加工しやすくする点から、50〜250℃程度が好ましく、80〜200℃程度がより好ましい。なお、軟化点は、市販の測定器(製品名「ARES−2KSTD−FCO−STD」、Rheometric Scientfic社製)等を用いて測定した貯蔵弾性率のプロファイルにおいて、貯蔵弾性率が低下し始める温度を指す。
【0055】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、異なる2種以上の有機溶剤(B)(以下、(B)成分という。)を含むものである。
【0056】
(B)成分は、いずれも窒素原子を含まないものである。すなわち、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジアザビシクロウンデセン等を使用しない。このような窒素原子を含む有機溶剤を使用すると、沸点が高いため、ポリイミド樹脂組成物を加熱下で乾燥させた際に、当該組成物中に含まれる有機溶剤が揮発しきれず、当該ポリイミド樹脂層を有する積層体(例えば、銅張積層板等)を硬化した後でもその有機溶剤が残存し、低誘電特性やはんだ耐熱性に悪影響を及ぼすため、好ましくない。
【0057】
(B)成分の物性としては、共沸点が70〜120℃である。ここでの共沸点は、全ての(B)成分を混合した液を用いて、常圧下で測定した値である。
【0058】
(B)成分の共沸点が70℃未満であると、(A)成分を溶解しにくくなり、120℃を超えると、ポリイミド樹脂組成物を加熱下で乾燥させても(B)成分が残存し、ポリイミド樹脂層の低誘電特性やはんだ耐熱性が悪化しやすくなる。また、(B)成分の共沸点は同様の観点から、70〜110℃が好ましい。
【0059】
(B)成分としては、窒素原子を含まず、前記の共沸点を示すものであれば、特に限定されないが、中でも、(A)成分の製造において、(B)成分を使用した場合、生成するポリアミック酸及びポリイミド樹脂をよく溶解し、かつ、反応で副生する水を除去できる点から、水100gに対する溶解度1g以上の有機溶剤(B1)(以下、(B1)成分という。)、及び水100gに対する溶解度100mg以下の有機溶剤(B2)(以下、(B2)成分という。)を組み合わせることが好ましい。また、(B1)成分としては、水100gに対する溶解度が2g以上のものがより好ましく、(B2)成分としては、水100gに対する溶解度が50mg以下のものがより好ましい。
【0060】
(B1)成分としては、例えば、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用しても良い。中でも(A)成分の製造において、生成するポリアミック酸をよく溶解する点から、ケトン、エーテルが好ましく、エチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノンがより好ましい。
【0061】
(B2)成分としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用しても良い。中でも(A)成分の製造において、生成するポリイミド樹脂をよく溶解し、かつ、副生する水を除去できる点から、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、トルエン、メチルシクロヘキサンがより好ましい。
【0062】
(B1)成分及び(B2)成分の含有比率としては、(A)成分の製造において、生成するポリアミック酸及びポリイミド樹脂をよく溶解し、かつ副生する水を除去できる点から、質量比で、(B1)/(B2)=10/90〜90/10が好ましく、15/85〜85/15がより好ましく、20/80〜80/20がさらに好ましい。
【0063】
本発明のポリイミド樹脂組成物における(B)成分の含有量は、特に限定されないが、ポリイミド樹脂組成物100質量部に対し、50〜1000質量部(不揮発分換算)となるようにすることが好ましく、100〜400質量部(不揮発分換算)となるようにすることがより好ましい。
【0064】
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、本発明のポリイミド樹脂組成物及び架橋剤を含むものである。
【0065】
本発明の接着剤組成物におけるポリイミド樹脂組成物の含有量は、特に限定されないが、接着剤組成物を100質量%として、10〜99.5質量%程度が好ましい。
【0066】
本発明の接着剤組成物における(A)成分の含有量は、特に限定されないが、接着剤組成物の不揮発分を100質量%として、2〜98質量%程度が好ましい。
【0067】
架橋剤は、ポリイミドの架橋剤として機能するものであれば、各種公知のものを特に限定なく使用できる。架橋剤は、単独でも2種以上を併用しても良い。架橋剤は、エポキシド、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド及びシアネートエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0068】
エポキシドは、フェノールノボラック型エポキシド、クレゾールノボラック型エポキシド、ビスフェノールA型エポキシド、ビスフェノールF型エポキシド、ビスフェノールS型エポキシド、水添ビスフェノールA型エポキシド、水添ビスフェノールF型エポキシド、スチルベン型エポキシド、トリアジン骨格含有エポキシド、フルオレン骨格含有エポキシド、線状脂肪族エポキシド、脂環式エポキシド、グリシジルアミン型エポキシド、トリフェノールメタン型エポキシド、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシド、ビフェニル型エポキシド、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシド、ナフタレン骨格含有エポキシド、アリールアルキレン型エポキシド、テトラグリシジルキシリレンジアミン、前記エポキシドのダイマー酸変性物であるダイマー酸変性エポキシド、ダイマー酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。また、エポキシドの市販品としては、三菱ケミカル(株)製の「jER828」や「jER834」、「jER807」、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製の「ST−3000」、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製の「YD−172−X75」、三菱ガス化学(株)製の「TETRAD−X」等が挙げられる。これらの中でも、はんだ耐熱性及び低誘電特性のバランスの観点より、ビスフェノールA型エポキシド、ビスフェノールF型エポキシド、水添ビスフェノールA型エポキシド及び脂環式エポキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0069】
特に一般式(3)のテトラグリシジルジアミン
【化3】
(式中、Zはフェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)
は、前記ポリイミドとの相溶性が良好である。また、これを用いると接着剤層の低損失弾性率化が容易となり、そのはんだ耐熱性及び低誘電特性も良好となる。
【0070】
架橋剤としてエポキシドを用いる場合、各種公知のエポキシド用硬化剤、活性エステル系硬化剤を併用できる。これらの硬化剤は、単独でも2種以上を併用しても良い。
【0071】
エポキシド用硬化剤としては、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、或いは4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、3−ドデセニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物等の酸無水物系硬化剤;
ジシアンジアミド(DICY)、芳香族ジアミン(商品名「Lonzacure M−DEA」、「Lonzacure M−DETDA」等。いずれもロンザジャパン(株)製)、脂肪族アミン等のアミン系硬化剤;
フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、フェノール性水酸基含有ホスファゼン(大塚化学(株)製の商品名「SPH−100」等)等のフェノール系硬化剤;
マレイン酸変性ロジンやその水素化物等のロジン系硬化剤;
環状ホスファゼン系化合物等が挙げられる。
【0072】
活性エステル系硬化剤としては、例えば、特開2019−183071に記載のジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、ナフタレン構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物等が挙げられる。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、
ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもので、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000」、「HPC−8000H」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L」、「EXB−8000L−65TM」、「EXB−8150−65T」(以上、DIC(株)製);
ナフタレン構造を含むもので、「EXB9416−70BK」(DIC(株)製);
フェノールノボラックのアセチル化物で、「DC808」(三菱ケミカル(株)製);
フェノールノボラックのベンゾイル化物で、「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0073】
活性エステル系硬化剤は、各種公知の方法により製造したものも使用でき、その例としては、特許第5152445号公報に記載される多官能フェノール化合物と芳香族カルボン酸類とを反応させたもの等が挙げられる。
【0074】
前記硬化剤の中でも活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、特に活性エステル系硬化剤が好ましい。硬化剤の使用量は特に限定されないが、前記接着剤組成物の不揮発分を100質量%として、0.1〜40質量%程度が好ましく、1〜10質量%程度がより好ましい。
【0075】
また、架橋剤として、エポキシド及びエポキシド用硬化剤を併用する場合、反応触媒をさらに併用できる。反応触媒は、単独でも2種以上を併用しても良い。反応触媒は、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾ−ル類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。また、当該反応触媒の使用量は特に限定されないが、前記接着剤組成物の不揮発分を100質量%として、0.01〜5質量%程度が好ましい。
【0076】
ベンゾオキサジンは、6,6−(1−メチルエチリデン)ビス(3,4−ジヒドロ−3−フェニル−2H−1,3−ベンゾオキサジン)、6,6−(1−メチルエチリデン)ビス(3,4−ジヒドロ−3−メチル−2H−1,3−ベンゾオキサジン)等が挙げられる。なお、オキサジン環の窒素にはフェニル基、メチル基、シクロヘキシル基等が結合していてもよい。また、ベンゾオキサジンの市販品としては、四国化成工業(株)社製の「ベンゾオキサジンF−a型」や「ベンゾオキサジンP−d型」、エア・ウォーター社製の「RLV−100」等が挙げられる。
【0077】
ビスマレイミドは、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド等が挙げられる。また、ビスマレイミドの市販品としては、JFEケミカル(株)社製の「BAF−BMI」、大和化成工業(株)製の「BMI−1000H」等が挙げられる。
【0078】
シアネートエステルは、2−アリルフェノールシアネートエステル、4−メトキシフェノールシアネートエステル、2,2−ビス(4−シアナトフェノール)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビスフェノールAシアネートエステル、ジアリルビスフェノールAシアネートエステル、4−フェニルフェノールシアネートエステル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、4−クミルフェノールシアネートエステル、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、4,4’−ビスフェノールシアネートエステル、及び2,2‐ビス(4‐シアナトフェニル)プロパン等が挙げられる。また、シアネートエステルの市販品としては、「PRIMASET BTP−6020S(ロンザジャパン(株)製)」等が挙げられる。
【0079】
本発明の接着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に限定されない。当該架橋剤の含有量は、前記接着剤組成物中の本発明の(A)成分100質量部(不揮発分換算)に対して、1〜900質量部程度が好ましい。
【0080】
本発明の接着剤組成物における架橋剤の含有量は、接着剤組成物の不揮発分を100質量%として、1〜80質量%程度が好ましい。
【0081】
本発明の接着剤組成物には、難燃剤を含んでも良い。難燃剤は、単独でも2種以上を併用しても良い。難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、前記の無機フィラー等が挙げられる。
【0082】
リン系難燃剤は、ポリリン酸やリン酸エステル、フェノール性水酸基を有さないホスファゼン誘導体等が挙げられる。該ホスファゼン誘導体のうち、環状ホスファゼン誘導体は、難燃性、耐熱性、耐ブリードアウト性等の点で好ましい。環状ホスファゼン誘導体の市販品としては、大塚化学(株)製のSPB−100、伏見製薬所(株)製のラビトルFP−300B等が挙げられる。
【0083】
本発明の接着剤組成物における難燃剤の含有量は、特に限定されない。当該難燃剤の含有量は、前記接着剤組成物中の本発明の(A)成分100質量部(不揮発分換算)に対して、1〜150質量部が好ましい。
【0084】
本発明の接着剤組成物には、一般式:W−Si(R(OR3−a(式中、Wは酸無水物基と反応する官能基を含む基を、Rは水素又は炭素数1〜8の炭化水素基を、Rは炭素数1〜8の炭化水素基を、aは0、1又は2を示す。)で表される反応性アルコキシシリル化合物を含んでも良い。反応性アルコキシシリル化合物により、本発明の接着剤組成物からなる接着剤層の低誘電特性を維持しつつ、その溶融粘度を調節されうる。その結果、該接着剤層と支持体との界面密着力(所謂アンカー効果)を高めながら、当該支持体の端から生ずる該硬化層の滲みだしが抑制されうる。
【0085】
前記一般式のWに含まれる反応性官能基は、アミノ基、エポキシ基及びチオール基等が挙げられる。
【0086】
Wがアミノ基を含む化合物は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。Wがエポキシ基を含む化合物としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。Wがチオール基を含む化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランや、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、反応性及びフローコントロールの効果が良好であることから、Wがアミノ基を含む化合物が好ましい。
【0087】
本発明の接着剤組成物における反応性アルコキシシリル化合物の含有量は、特に限定されない。当該反応性アルコキシシリル化合物の含有量は、前記接着剤組成物中の本発明の(A)成分100質量部(不揮発分換算)に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0088】
本発明の接着剤組成物は、本発明のポリイミド樹脂組成物、架橋剤、難燃剤、反応性アルコキシシリル化合物、前記有機溶剤のいずれでもないものを添加剤として含んでも良い。
【0089】
添加剤は、開環エステル化反応触媒、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、シリカフィラー及びフッ素フィラー等が挙げられる。
【0090】
前記添加剤の含有量は、特に限定されないが、接着剤組成物の不揮発分100質量部として、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が挙げられる。
【0091】
前記添加剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の(A)成分100質量部(不揮発分換算)に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が挙げられる。
【0092】
本発明の接着剤組成物は、前記架橋剤、並びに、必要に応じて前記難燃剤、反応性アルコキシシリル化合物及び添加剤を、本発明のポリイミド樹脂組成物に溶解させることにより得られる。なお、前記接着剤組成物の調製においては、前述の(B)成分を更に配合しても良い。
【0093】
[フィルム状接着材]
本発明のフィルム状接着材は、本発明の接着剤組成物の硬化物を含むものである。フィルム状接着材の製造方法としては、前記接着剤組成物を適当な支持体に塗工する工程、加熱して有機溶剤を揮発させることによって硬化させる工程、当該支持体を剥離する工程等を含む方法等が挙げられる。また、接着材の厚みは特に限定されないが、3〜40μm程度が好ましい。支持体としては、剥離紙、剥離フィルム、後述の支持フィルム等が挙げられる。また、前記フィルム状接着材を製造する際には、前記接着剤組成物と前記接着剤以外の各種公知の接着剤組成物とを併用しても良い。
【0094】
[接着シート]
本発明の接着シートは、支持フィルムの少なくとも片面に、本発明のフィルム状接着材を含むものである。
【0095】
前記接着シートは、例えば、支持フィルムの上に本発明の接着剤組成物を塗工して加熱により硬化する、又は、支持フィルムの上に本発明のフィルム状接着材を貼り合わせることにより得られる。
【0096】
前記支持フィルムは、ポリイミド、ポリエステル、ポリイミド−シリカハイブリッド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、エチレンテレフタレート、フェノール、フタル酸、ヒドロキシナフトエ酸等とパラヒドロキシ安息香酸とから得られる芳香族系ポリエステル樹脂(所謂液晶ポリマー;(株)クラレ製、「ベクスター」等)、シクロオレフィンポリマー、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等)等が挙げられる。ポリイミドは、本発明の前記ポリイミドフィルムを含む。
【0097】
本発明の接着剤組成物を前記支持フィルムに塗工する際、その塗工方法も特に限定されず、例えば、コンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて行うこと等が挙げられる。塗工層の厚みも特に限定されないが、乾燥後の厚みは1〜100μm程度が好ましく、3〜50μm程度がより好ましい。また、当該接着シートの接着剤層は各種保護フィルムで保護してもよい。
【0098】
[樹脂付銅箔]
本発明の樹脂付銅箔は、本発明のフィルム状接着材及び銅箔を含むものである。具体的には、銅箔に本発明の接着剤組成物を塗工して加熱硬化したもの、又は、銅箔に本発明のフィルム状接着材を貼り合わせたものである。銅箔としては、例えば、圧延銅箔や電解銅箔が挙げられ、各種の表面処理(粗化、防錆化等)が施されたものも使用できる。防錆化処理は、Ni,Zn,Sn等を含むメッキ液を用いたメッキ処理、クロメート処理等の、所謂鏡面化処理が挙げられる。
【0099】
銅箔の厚みも特に限定されず、1〜100μm程度が好ましく、2〜38μm程度がより好ましい。また、塗工手段としては前記した方法が挙げられる。
【0100】
また、樹脂付銅箔の接着剤層又はフィルム状接着材は未硬化であってもよく、また加熱下に部分硬化ないし完全硬化させたものであっても良い。部分硬化の接着剤層又はフィルム状接着材は、いわゆるBステージと呼ばれる状態にある。また、接着剤層又はフィルム状接着材の厚みも特に限定されず、0.5〜30μm程度が好ましい。また、当該樹脂付銅箔の接着面に更に銅箔を貼り合わせ、両面樹脂付銅箔にすることもできる。
【0101】
[銅張積層板]
本発明の銅張積層板は、本発明の樹脂付銅箔及び銅箔又は絶縁性シートを含むものである。銅張積層板は、CCL(Copper Clad Laminate)とも呼ばれる。銅張積層板は、具体的には、各種公知の銅箔若しくは絶縁性シートの少なくとも片面又は両面に、前記樹脂付銅箔を、加熱下に圧着させたものである。片面に貼り合わせる場合には、他方の面に前記樹脂付銅箔とは異なるものを圧着させても良い。また、当該銅張積層板における樹脂付銅箔、銅箔及び絶縁性シートの枚数は特に限定されない。
【0102】
1つの実施形態において、絶縁性シートは、プリプレグ又は前記の支持フィルムが好ましい。プリプレグは、ガラス布等の補強材に樹脂を含浸させBステージまで硬化させたシート状材料のことをいう(JIS C 5603)。該樹脂は、本発明の(A)成分、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、液晶ポリマー、アラミド樹脂等の絶縁性樹脂が使用される。絶縁性シートの厚みは特に限定されず、20〜500μm程度が好ましい。加熱・圧着条件は特に限定されず、好ましくは150〜280℃程度(より好ましくは170℃〜240℃程度)、及び好ましくは0.5〜20MPa程度(より好ましくは1〜8MPa程度)である。
【0103】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有するものである。銅張積層板の銅箔面に回路パターンを形成するパターニングの手段は、サブトラクティブ法、セミアディティブ法が挙げられる。セミアディティブ法としては、銅張積層板の銅箔面に、レジストフィルムでパターニングした後、電解銅メッキを行い、レジストを除去し、アルカリ液でエッチングする方法が挙げられる。また、当該プリント配線板における回路パターン層の厚みは特に限定されない。また、当該プリント配線板をコアとし、その上に同一のプリント配線板や他の公知のプリント配線板又はプリント回路板を積層することによって、多層基板を得ることもできる。積層の際には前記接着剤組成物と前記接着剤組成物以外の他の公知の接着剤組成物とを併用できる。また、多層基板における積層数は特に限定されない。また、積層の都度、ビアホールを挿設し、内部をメッキ処理しても良い。前記回路パターンのライン/スペース比は特に限定されないが、1μm/1μm〜100μm/100μm程度が好ましい。また、前記回路パターンの高さも特に限定されないが、1〜50μm程度が好ましい。
【0104】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のポリイミド樹脂組成物の乾燥物である。
【0105】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、前記ポリイミド樹脂組成物を前述の支持体上に塗工した後に加熱下で乾燥させて、ポリイミド樹脂層を形成した後、当該ポリイミド樹脂層から支持体を剥離すること等が挙げられる。
【0106】
ポリイミド樹脂組成物を支持体上に塗工する方法としては、特に限定されず、前述の塗工手段が挙げられる。また、熱処理条件も特に限定されず、例えば、温度100〜180℃程度、0.5〜3時間程度で加熱させる方法等が挙げられる。
【0107】
熱処理後のポリイミド樹脂層の厚みは、特に限定されないが、乾燥後の厚みは1〜50μm程度が好ましい。
【0108】
本発明のポリイミドフィルムに用いられるポリイミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、各種の添加剤を含んでも良い。当該添加剤は、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、無機フィラー、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。
【0109】
無機フィラーとしては、例えば、シリカフィラー、リン系フィラー、フッ素系フィラー、無機イオン交換体フィラー等が挙げられる。なお、シリカフィラーは、その表面がシランカップリング剤等の処理剤で変性されたものを使用しても良い。また、無機フィラーの市販品としては、デンカ(株)製の「FB−3SDC」、「SFP−20M」、(株)アドマテックス製の「SC−2500−SPJ」、クラリアントケミカルズ(株)製の「Exolit OP935」、(株)喜多村製の「KTL−500F」、東亞合成(株)製のIXE等が挙げられる。
【0110】
無機顏料としては、カドミウムレッド、カドミウムレモンイエロー、カドミウムイエローオレンジ、二酸化チタン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黒色錯体無機顏料等が挙げられる。
【0111】
有機顏料としては、アニリンブラック、ペリレンブラック、アントラキノンブラック、 ベンジジン系黄色顏料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。
【0112】
本発明のポリイミド樹脂組成物における添加剤の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部(不揮発分換算)に対して、1〜150質量部が好ましい。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、特にこれらに限定されるものではない。また特段の断りがない限り、「%」はいずれも質量基準である。
【0114】
(有機溶剤の共沸点)
実施例1〜10及び比較例1、3で使用の有機溶剤を混合した溶液を撹拌しながら沸騰させて、発生した蒸気の温度を温度計の値で確認した。
【0115】
実施例1
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物(商品名「BisDA−1000」、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製。以下、BisDAと略す。)を535.6g、エチレングリコールジメチルエーテルを716.92g及びトルエンを1672.81g仕込み、60℃まで加熱した。次いで、ダイマージアミン(商品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製。以下、PRIAMINE1075と表記)540.0gを徐々に添加した後、140℃まで加熱し、10時間かけてイミド化反応を実施することにより、ポリイミド樹脂(A−1)の溶液(不揮発分30%)を得た。(A−1)の軟化点を表1に示す(以下同様)。
【0116】
実施例2〜10、比較例1
表1に示す組成及び使用量に変更して、実施例1と同様の方法で行い、不揮発分30%のポリイミド樹脂をそれぞれ得た。
【0117】
比較例2、3
溶剤の種類を表1に示すものに変更して、実施例と同様の方法で行ったが、生成したポリアミック酸が溶解せず、ポリイミド樹脂を得られなかった。
【0118】
<ポリイミドフィルム(1)の作製>
実施例1〜10及び比較例1のポリイミド樹脂組成物を、剥離紙((株)サンエー化研製)に塗工し、150℃×5分、170℃×5分の条件でそれぞれ乾燥させて、ポリイミド樹脂層を形成した積層フィルムを得た後、当該フィルムから剥離紙を剥がすことによって、膜厚25μmのポリイミドフィルム(1)を得た。
【0119】
<比誘電率及び誘電正接の測定>
ネットワークアナライザ(Agilent Technologies社製「ENA E5071C」)と測定周波数10.124GHzのスプリットポスト誘電体共振器(QWED社製)を用いて、何も挿入していない共振器単体の共振周波数とそのピークのQ値を測定した。
次に、ポリイミドフィルム(1)を4cm×5cmに裁断して試験片を作製した後、総厚さが100μm以上となるように複数枚の試験片を重ね合わせて共振器内に挿入した後、試験片が挿入されたときの共振周波数とQ値を測定した。
比誘電率(Dk)は、共振器単体と試験片を挿入したときの共振周波数の差から算出し、誘電正接(Df)は、共振器単体と試験片を挿入したときのQ値の差と共振周波数の差から算出した。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
表1の略語は以下の通りである。
<芳香族テトラカルボン酸無水物>
・BisDA:4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、商品名:「BisDA−1000」、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製
・6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ダイキン(株)製
・BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、商品名:「BTDA」、ダイセル化学工業(株)製
<ジアミン>
・DDA:ダイマージアミン、商品名:「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製
・ODA:4,4’−ジアミノフェニルエーテル、和歌山精化工業(株)製
・1,3−BAC:1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、三菱ガス化学(株)製
<有機溶媒>
(B1)成分
・DMG:エチレングリコールジメチルエーテル、水100gに対する溶解度:混和
・CH:シクロヘキサノン、水100gに対する溶解度:2.5g
・DAMc:N,N−ジメチルアセトアミド、水100gに対する溶解度:混和
・MEK:メチルエチルケトン、水100gに対する溶解度:29g
(B2)成分
・Tol:トルエン、水100gに対する溶解度:45mg
・Xyl:キシレン、水100gに対する溶解度:17mg
・MCH:メチルシクロヘキサン、水100gに対する溶解度:1.4mg
・Hex:ヘキサン、水100gに対する溶解度:1.3mg
【0122】
<ポリイミドフィルム(2)の作製>
表2に示すポリイミド樹脂組成物を、剥離紙((株)サンエー化研製)に塗工し、120℃×5分の条件で乾燥させて、ポリイミド樹脂層を形成した積層フィルムを得た後、当該フィルムから剥離紙を剥がすことによって、膜厚25μmのポリイミドフィルム(2)をそれぞれ得た。得られたポリイミドフィルム(2)の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を前段落と同様の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0123】
<ポリイミドフィルム(3)の作製>
表2に示すポリイミド樹脂組成物を、ガラス板に塗工し、150℃×1時間の条件で乾燥した後、ガラス板を剥がすことによって、膜厚25μmのポリイミドフィルム(3)をそれぞれ得た。得られたポリイミドフィルム(3)の全光線透過率とイエローインデックスを以下に記載の方法で測定した。
【0124】
<全光線透過率の測定>
JIS K 7375:2008に準拠して、カラーヘーズメーターを用いて測定した。結果を表2に示す。
【0125】
<イエローインデックス(YI)の測定>
JIS K 7373に準拠して、色の変化を色差計(商品名:「ZE 6000」、日本電色工業(株)製)を用いた透過法にて測定した。結果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
<接着剤組成物の作製>
評価例1
実施例1のポリイミド樹脂組成物30.0g(不揮発分9.0g)及び実施例4のポリイミド樹脂組成物70.0g(不揮発分21.0g)、架橋剤として、多官能エポキシ樹脂(商品名:「TETRAD−X」、三菱ガス化学(株)製)1.0g(不揮発分1.0g)、硬化剤として、活性エステル樹脂(商品名:「EPICLON HPC−8000−65T」、DIC(株)製)9.2g(不揮発分2.3g)及びイミダゾール系エポキシ樹脂(商品名:「キュアゾール 2E4MZ−A」、四国化成工業(株)製)0.011g(不揮発分0.011g)、無機フィラーとして、シリカ(商品名:「SC−2500−SPJ」、(株)アドマテックス製)33.3g(不揮発分33.3g)、並びに有機溶剤としてメチルエチルケトン65.4gを混合し、よく撹拌することによって、不揮発分33%の接着剤組成物を得た。
【0128】
評価例2〜4、比較評価例1
実施例2、5、8及び比較例1のポリイミド樹脂組成物100.0g(不揮発分30.0g)をそれぞれ用いて、評価例1と同様の方法で行い、不揮発分33%の接着剤組成物をそれぞれ得た。
【0129】
<接着シートの作製>
得られた接着剤組成物を、剥離紙((株)サンエー化研製)に、乾燥後の厚みが25μmとなるようギャップコーターにて塗工した後、150℃で5分間乾燥させて接着シート(剥離紙/接着剤層)を得た。
【0130】
<比誘電率及び誘電正接の測定>
前記の接着シート(剥離紙/接着剤層)から剥離紙を剥がし、接着剤層をプレス用支持体の上に置き、さらに接着剤層の側に同じプレス用支持体を介して、圧力5MPa、180℃で90分間加熱プレスにより硬化させることにより、熱硬化した後の接着シート(支持体/接着剤層/支持体)を作製した。その接着シートからプレス用の支持体を取り除き、接着剤層について、前段落と同様の方法で比誘電率(Dk)と誘電正接(Df)を算出した。結果を表3に示す。
【0131】
<銅張積層板の作製>
前記の接着シート(剥離紙/接着剤層)から剥離紙を剥がし、市販の電解銅箔(製品名「F2−WS」、古河電気工業(株)製)(膜厚18μm)の鏡面側に重ね、もう一方の面を市販のポリイミドフィルム(商品名「カプトン100EN」、東レ・デユポン(株)製;膜厚25μm;熱膨張係数;15ppm/℃)に重ねた、ポリイミドフィルム−接着剤層−電解銅箔の積層体を作製した。次いで、プレス用支持体の上に置き、上方向より同素材から得られる支持体を介して圧力5MPa、温度180℃で90分間加熱プレスにて硬化させることにより、銅張積層板を作製した。
【0132】
<接着性試験>
前記の銅張積層板について、JIS C 6481(フレキシブルプリント配線板用銅張積層板の試験方法)に準じて、引き剥がし強さ(N/mm)を測定した。結果を表3に示す。
【0133】
<はんだ耐熱性試験>
前記の銅張積層板を温度23℃、湿度50%の恒温室に24時間放置した後、銅箔側を下にして、288℃のはんだ浴に浮かべ、発泡の有無を確認し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
(評価基準)
○:外観に変化なし
×:発泡、膨れがある
【0134】
【表3】
【要約】      (修正有)
【課題】加熱下での乾燥において、有機溶剤が揮発しやすく、かつ、低誘電率及び低誘電正接、並びに優れたはんだ耐熱性を有するポリイミド樹脂層を与えるポリイミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香族テトラカルボン酸無水物(a1)及びダイマージアミンを含むジアミン(a2)を含むモノマー群の反応物であるポリイミド(A)、並びに、異なる2種以上の有機溶剤(B)を含むポリイミド樹脂組成物であって、(B)成分はいずれも窒素原子を含まず、かつ、共沸点が70〜120℃であるポリイミド樹脂組成物。
【選択図】なし