(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881674
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】分析情報収集用プログラム及び分析情報収集システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20210524BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
G06F3/12 344
G06F3/12 322
G01N30/86 G
G01N30/86 D
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-508737(P2020-508737)
(86)(22)【出願日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2018013415
(87)【国際公開番号】WO2019186941
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 和人
(72)【発明者】
【氏名】長谷 有悟
【審査官】
佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−041073(JP,A)
【文献】
特開2005−309736(JP,A)
【文献】
特開2005−141402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09− 3/12
B41J 29/00−29/70
H04N 1/00
G01N 30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置で収集された分析データを処理するコンピュータ端末と各種の分析情報が蓄積されるデータベースサーバとが通信回線を介して接続されてなる分析情報収集システムにおいて、前記コンピュータ端末に搭載されるプリンタドライバ型のプログラムであって、
該コンピュータ端末を、
a)分析データに基づいて作成された分析結果レポートの出力指示に応じて該レポートのPDFファイルを作成するPDFファイル作成機能部と、
b)作成された前記PDFファイルからテキスト情報を抽出するテキスト情報抽出機能部と、
c)抽出された前記テキスト情報中に分析生データファイルが記憶されている記憶部の格納位置情報が含まれる場合には該情報に基づいて格納位置を特定する一方、該テキスト情報中に該情報が含まれない場合には予め指定されている情報に基づいて格納位置を特定したうえで、前記記憶部における該格納位置から分析生データファイルを取得する分析生データファイル取得機能部と、
d)取得した前記分析生データファイル、前記PDFファイル、及び、前記テキスト情報の少なくとも一部、を前記通信回線を通して前記データベースサーバに送信してデータベース上に登録させるデータベース登録処理機能部と、
して動作させることを特徴とする分析情報収集用プログラム。
【請求項2】
分析装置で収集された分析データを処理する処理端末と各種の分析情報が蓄積されるデータベースサーバとが通信回線を介して接続されてなる分析情報収集システムにおいて、
前記処理端末は、
a)分析装置により収集された分析生データをファイル化した分析生データファイルを記憶しておく記憶部と、
b)前記分析生データ又は該分析生データに対して所定の処理を実施することで求まる分析結果に基づいて所定様式の分析結果レポートを作成する分析結果レポート作成処理部と、
c)作成された前記分析結果レポートの出力指示に応じて該レポートのPDFファイルを作成するPDFファイル作成部と、
d)作成された前記PDFファイルからテキスト情報を抽出するテキスト情報抽出部と、
e)抽出されたテキスト情報中に前記分析生データファイルが記憶されている前記記憶部における格納位置情報が含まれる場合には該情報に基づいて格納位置を特定する一方、該テキスト情報中に該格納位置情報が含まれない場合には予め指定されている情報に基づいて格納位置を特定したうえで、前記記憶部における該格納位置から分析生データファイルを取得する分析生データファイル取得部と、
f)取得した前記分析生データファイル、前記PDFファイル、及び、前記テキスト情報の少なくとも一部、を前記通信回線を通して前記データベースサーバに送信してデータベース上に登録させるデータベース登録処理部と、
を備えることを特徴とする分析情報収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器分析に用いられる各種分析装置(例えば、クロマトグラフ装置、分光光度計、質量分析装置等)により得られた各種データを含む情報を収集する分析情報収集システム、及び該システムで用いられる分析情報収集用のコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分析装置の制御や分析の結果として得られた分析データの処理は、一般のコンピュータ上で動作する分析制御ソフトウェアを用いて行うのが一般的である。また、多数の分析装置を保有して日常的に分析を行う会社や研究機関では、多くの場合、多数の分析装置においてそれぞれ収集されたデータがサーバコンピュータのデータベースにより一元的に管理されるようになっている。こうした分析装置で得られた情報を収集し管理するシステム(以下、単にシステムという)として、例えば非特許文献1に記載のコンピュータプログラム(ソフトウェア)を用いたシステムが知られている。
【0003】
図3は上記従来のシステムの概略構成図である。
図3において、液体クロマトグラフ(LC)等の分析装置1に接続されたアクイジションコントローラPC2、クライアントPC4、データベースサーバPC5はいずれも、LAN等のネットワーク回線3に接続されている。アクイジションコントローラPC2には、接続されている分析装置1の動作を制御したり該分析装置1で得られたデータを処理したりする専用のソフトウェアがインストールされている。データベースサーバPC5は大容量の記憶装置を備えており、該記憶装置をデータベースとして利用するためのソフトウェアがインストールされている。クライアントPC4には、分析装置1で収集されたデータ等をネットワーク回線3を通してアクイジションコントローラPC2から収集するとともに、収集したデータをデータベースに登録可能な形式に整えたあとにネットワーク回線3を通してデータベースサーバPC5に送りデータベースに登録するための専用のソフトウェアがインストールされている。
【0004】
非特許文献1に開示されている「LabSolutions CS」はこのためのソフトウェアである。このソフトウェアをクライアントPC4で実行することにより具現化されるクライアントPCデータ処理部400は、機能ブロックとして、PDFファイル生成監視部401、PDFファイル取得部402、テキスト情報等抽出部403、分析生データファイル格納位置情報取得部404、分析生データファイル取得部405、データベース登録処理部406、などを含む。
【0005】
このシステムにおいて分析により得られた各種データをデータベースに登録する際の具体的な処理手順を説明する。
分析装置1はアクイジションコントローラPC2の制御の下で試料に対する分析を実行し、クロマトグラムデータを取得する。アクイジションコントローラPC2にインストールされているソフトウェアにより具現化されるデータ処理部において、上記収集された生データ(クロマトグラムデータ)を含む分析生データファイルが生成され、該ファイルはアクイジションコントローラPC2において予め指定された共有フォルダに格納される。また、該データ処理部は収集されたクロマトグラムデータに対して所定のデータ処理を実行し定量計算を行う。このデータ処理部は例えば特許文献1に記載されているような分析結果レポート作成機能を有しており、サンプル情報や定量計算結果などを収集して予め設定された様式に則って分析結果レポートを作成する。
図4は作成される分析結果レポートの一例である。このときにレポート出力先プリンタをPDF出力用のプリンタドライバに設定しておくと、作成された分析結果レポートは紙への出力ではなく、PDFファイルとしてアクイジションコントローラPC2において予め指定された共有フォルダに出力される。
【0006】
クライアントPCデータ処理部400においてPDFファイル生成監視部401は、ネットワーク上の指定された共有フォルダにPDFファイルが存在するか否かを定期的又は非定期的にチェックする。そして、所定の共有フォルダにPDFファイルが出力されたことをPDFファイル生成監視部401が検出すると、PDFファイル取得部402はネットワーク回線3を通して、アクイジションコントローラPC2の所定の共有フォルダから分析結果レポートのPDFファイルを取得する。テキスト情報等抽出部403は、取得したPDFファイルを解析し、データベースサーバPC5から取得したマッピング情報を参照して、サンプル名などの文字情報、定量値などの数値情報を含むテキスト情報を抽出する。マッピング情報は、PDF形式で出力される分析結果レポートにおいて、どの位置に何の情報が記載されているのかを示す情報であり、使用される分析結果レポートの様式によって異なる。
【0007】
抽出されたテキスト情報に分析生データファイルの格納位置を示すファイルパスが含まれる場合には、分析生データファイル格納位置情報取得部404はそのファイルパスを取得し、分析生データファイル取得部405はネットワーク回線3を通してそのファイルパスで示される共有フォルダにアクセスし分析生データファイルを読み出してくる。データベース登録処理部406は、取得した分析結果レポートのPDFファイルや分析生データファイル、及びPDFファイルから抽出したテキスト情報などをネットワーク回線3を通してデータベースサーバPC5に送出し、データベースサーバPC5上に構築されているデータベースに登録する。
【0008】
上記のようにして、アクイジションコントローラPC2において分析結果レポートのPDFファイルが共有フォルダに出力された直後に、該PDFファイルや分析生データファイルなどがデータベースサーバPC5上のデータベースに登録される。
なお、場合によっては(例えばアクイジションコントローラPC2にインストールされている処理用ソフトウェアによっては)、分析結果レポート中に分析生データファイルの格納位置を示すファイルパスの情報が含まれないことがある。その場合には、別途、ユーザが分析生データファイルの格納位置を示す情報をクライアントPC4に設定しておき、分析生データファイル取得部405はその設定されている情報で示される共有フォルダにアクセスして分析生データファイルを取得する。
【0009】
上記システムにおける分析情報収集の特徴は、データ収集のための主たる機能がクライアントPC4に集約されており、アクイジションコントローラPC2ではPDFファイル形式の分析結果レポートと任意のファイル形式(例えばテキスト形式、CDF形式、エクセル形式、スプレッドシート形式など)の分析生データファイルとをネットワーク上の共有フォルダに出力しさえすればよいことにある。アクイジションコントローラPC2がこうした機能を有するソフトウェアを搭載していさえすれば、分析装置1の種類に拘わらず、或いは分析装置1のメーカーに拘わらず、分析データや分析結果を含む情報を収集してデータベースに登録することが可能である。
【0010】
ところが、上記従来のシステムでは次のような問題がある。
(1)上記システムでは、クライアントPC4がアクイジションコントローラPC2において分析生データファイルの出力先であるフォルダから分析生データファイルを読み出す必要がある。そのため、分析生データファイルの出力先であるフォルダをネットワーク回線3側からアクセス可能である共有フォルダとして設定しなければならない。しかしながら、そうした設定を行うとセキュリティホールとなる可能性が生じ、ネットワーク回線3に接続された全く別のPC等からの悪意のあるアクセスや攻撃を受けるおそれが高くなる。
【0011】
(2)マイクロソフト(登録商標)社が提供している一般的なWindows(登録商標)のOSにおける操作では、分析を行う毎に生成される分析生データファイルのそれぞれについて、出力先を共有フォルダに設定する操作を行わなければならず、操作が面倒で手間が掛かる。
(3)上記システムでは、アクイジションコントローラPC2において情報収集の材料となる分析結果レポートのPDFファイルも共通フォルダに一旦出力される。このPDFファイルの出力先のフォルダもセキュリティホールとなる可能性があり、フォルダに出力されると直ぐにPDFファイルが改竄されたり削除されたりするおそれがある。
【0012】
(4)クライアントPC4にネットワーク回線3上の特定のフォルダを常時監視するためのサービスプログラム(PDFファイル生成監視部401に対応するプログラム)を常駐させる必要があり、クライアントPC4の負荷が大きくなる。
(5)アクイジションコントローラPC2とは別にクライアントPC4を設ける必要があり、それだけシステムのコストが大きくなる。そのため、アクイジションコントローラPC2の負荷の増大をできるだけ抑えながら、クライアントPC4を省いてシステムを簡素化したいという要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2017/098793号パンフレット
【特許文献2】特開2010−55512号公報(段落[0006])
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「LabSolutions CS 分析ネットワークを自由にアクセス」、株式会社島津製作所、[online]、[平成30年3月28日検索]、インターネット<URL: http://www.an.shimadzu.co.jp/data-net/labsolutions/cs/index.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、システムのコストを抑えながら高いセキュリティ性を実現することができる分析情報収集システム及び分析情報収集用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析情報収集用プログラムは、分析装置で収集された分析データを処理するコンピュータ端末と各種の分析情報が蓄積されるデータベースサーバとが通信回線を介して接続されてなる分析情報収集システムにおいて、前記コンピュータ端末に搭載されるプリンタドライバ型のプログラムであって、
該コンピュータ端末を、
a)分析データに基づいて作成された分析結果レポートの出力指示に応じて該レポートのPDFファイルを作成するPDFファイル作成機能部と、
b)作成された前記PDFファイルからテキスト情報を抽出するテキスト情報抽出機能部と、
c)抽出された
前記テキスト情報中に分析生データファイルが記憶されている
記憶部の格納位置情報が含まれる場合には該情報に基づいて格納位置を特定する一方、該テキスト情報中に該情報が含まれない場合には予め指定されている情報に基づいて格納位置を特定したうえで、前記記憶部における該格納位置から分析生データファイルを取得する分析生データファイル取得機能部と、
d)取得した前記分析生データファイル、前記PDFファイル、及び、前記テキスト情報の少なくとも一部、を前記通信回線を通して前記データベースサーバに送信してデータベース上に登録させるデータベース登録処理機能部と、
して動作させることを特徴としている。
【0017】
また上記課題を解決するために成された本発明に係る分析情報収集システムは、分析装置で収集された分析データを処理する処理端末と各種の分析情報が蓄積されるデータベースサーバとが通信回線を介して接続されてなる分析情報収集システムにおいて、
前記処理端末は、
a)分析装置により収集された分析生データをファイル化した分析生データファイルを記憶しておく記憶部と、
b)前記分析生データ又は該分析生データに対して所定の処理を実施することで求まる分析結果に基づいて所定様式の分析結果レポートを作成する分析結果レポート作成処理部と、
c)作成された前記分析結果レポートの出力指示に応じて該レポートのPDFファイルを作成するPDFファイル作成部と、
d)作成された前記PDFファイルからテキスト情報を抽出するテキスト情報抽出部と、
e)抽出されたテキスト情報中に前記分析生データファイルが記憶されている前記記憶部における格納位置情報が含まれる場合には該情報に基づいて格納位置を特定する一方、該テキスト情報中に該格納位置情報が含まれない場合には予め指定されている情報に基づいて格納位置を特定したうえで、前記記憶部における該格納位置から分析生データファイルを取得する分析生データファイル取得部と、
f)取得した前記分析生データファイル、前記PDFファイル、及び、前記テキスト情報の少なくとも一部、を前記通信回線を通して前記データベースサーバに送信してデータベース上に登録させるデータベース登録処理部と、
を備えることを特徴としている。
【0018】
ここでいう「プリンタドライバ型のプログラム」とは、元の原稿を作成したアプリケーションプログラムにおいて印刷指示を行う際に、プリンタの出力先として例えばアドビ(Adobe:登録商標)社の「Adobe PDF」などのPDF作成用プリンタドライバを選択すると、印刷コマンドからPDFファイルを作成して出力するプログラムのように、印刷コマンドに対応して原稿についての所定の処理を行って出力するプログラムのことである(特許文献2等参照)。
【0019】
即ち、本発明に係る分析情報収集システムは、本発明に係る分析情報収集用プログラムつまりはプリンタドライバ型のプログラムによって、その機能の一部が実現される構成とすることができる。
【0020】
本発明において、コンピュータ端末又は処理端末は1台でも複数台でもよい。また、そのコンピュータ端末又は処理端末には分析装置が接続されるが、1台の端末に対し1台のみの分析装置が接続されていてもよいし、複数台の分析装置が接続されていてもよい。この分析装置の種類は限定されないが、典型的には、LCやGC等のクロマトグラフ装置、質量分析装置、分光光度計などとすることができる。また、上記コンピュータ端末又は処理端末は分析装置で収集されたデータを処理する機能を有するが、それ以外に、分析装置の動作を制御する機能を有していてもよい。
【0021】
本発明に係る分析情報収集システムでは、
処理端末が分析装置に直接(つまりネットワーク回線を介さずに専用のケーブル線等を介して)接続され、該分析装置で収集されたデータを処理する処理端末から通信回線を介して直接的にデータベースサーバ上のデータベースに分析情報が登録される。ただし、一般に、分析装置に直接接続される処理端末であるパーソナルコンピュータやタブレット型コンピュータにおいてデータ処理や分析装置の制御を行うためのソフトウェアは、その分析装置に対応した専用のソフトウェアである。そのため、例えば様々なメーカーの分析装置が混在していると、それら分析装置に対応した専用のソフトウェアにそれぞれ上記のような分析情報収集用のプログラムを組み込むことは困難である。これに対し本発明では、コンピュータ上で作成された分析結果レポートを印刷するために使用されるプリンタ制御用のソフトウェアであるプリンタドライバに分析情報収集用の機能を持たせている。
【0022】
本発明に係る分析情報収集システムでは、分析装置で分析が実施されることで分析生データが生成されると、該分析装置に接続されている処理端末において、該分析装置により収集された分析生データをファイル化した分析生データファイルが作成されて記憶部に格納される。また、分析結果レポート作成処理部は、その分析生データ又は該分析生データに対して所定の処理を実施することで得られた定量結果などの分析結果に基づいて、所定の様式の分析結果レポートを作成する。このとき、その様式によっては、分析結果レポート中に分析生データファイルが記憶されている記憶部上の格納位置を示す情報を含ませることができる。
【0023】
作成された分析結果レポートの出力(データベース登録)が指示されている場合、作成された分析結果レポートは印刷出力のためにプリンタドライバに引き渡されるが、該プリンタドライバにおいて、まずPDFファイル作成部はその分析結果レポートのPDFファイルを作成する。続いて、テキスト情報抽出部は作成されたPDFファイルから文字、数値などのテキスト情報を抽出する。なお、分析結果レポート上のどの位置にどんな情報が存在するかはレポートの様式によって異なる。そこで、テキスト情報を抽出する際には、予め提供される、レポート上の位置と情報の種類とを対応付けたマッピング情報を利用するとよい。
【0024】
分析生データファイル取得部は、抽出されたテキスト情報中に分析生データファイルの格納位置情報が含まれていれば、その情報を利用して分析生データファイルを取得する。一方、分析結果レポート中に分析生データファイルの格納位置情報が含まれない場合には、上記テキスト情報中にも該位置情報は含まれない。その場合には例えばユーザにより予め指定されている(又はデフォルトで定まっている)分析生データファイルの格納先の情報に基づいて分析生データファイルを取得する。データベース登録処理部は、取得した分析生データファイル、分析結果レポートのPDFファイル、及び抽出されたテキスト情報の少なくとも一部、を通信回線を通してデータベースサーバに送信し、そのサーバに構築されているデータベースに登録する。
【0025】
このようにして本発明に係る分析情報収集システムでは、処理端末に搭載されたプリンタドライバの機能によって、分析結果レポートのPDFファイル作成のあと速やかに、該処理端末から通信回線を通して直接的にデータベースサーバ上のデータベースに、分析結果レポートのPDFファイルや分析により取得された分析生データファイルなどを自動的に登録することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、分析装置に接続されているコンピュータ端末において作成される分析結果レポートのPDFファイルや分析生データファイルをネットワーク上の共有フォルダに出力する必要がないため、ネットワーク回線に接続された別のPC等からそうしたファイルに対してアクセスすることが困難である。それにより、セキュリティホールが生じにくく、悪意のあるデータの改竄や削除などを防止し、信頼性の高い分析情報収集システムを構築することができる。
【0027】
また、コンピュータ端末にインストールされている、分析装置から収集されたデータ処理するためのデータ処理用ソフトウェアとは別のソフトウェアであるプリンタドライバによって上述したデータベース登録機能を実現できるので、データ処理用ソフトウェア自体を改変できない場合であっても上記機能の追加が可能である。また、上述した従来のシステムのようにデータベース登録処理のためのPCを別途用意する必要がないので、システムのコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施例である分析情報収集システムの概略全体構成図。
【
図2】本実施例の分析情報収集システムにおいてアクイジションコントローラPCで具現化されるデータ処理部の機能ブロックを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施例である分析情報収集システムについて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0030】
図1は本実施例の分析情報収集システムの概略全体構成図である。このシステムでは、LAN等のネットワーク回線3に、LC等の分析装置1に接続されたアクイジションコントローラPC2Aと、データベースサーバPC5とが接続されており、
図3におけるクライアントPC4に相当するPCは存在しない。アクイジションコントローラPC2Aには、Windowsなどの標準的なOSがインストールされており、そのOS上で動作する、分析装置1の動作を制御したり該分析装置1で得られたデータを処理したりする専用のソフトウェアがアプリケーションプログラムの一つとしてインストールされている。これは
図3に示した従来のシステムにおけるアクイジションコントローラPC2と同じである。
【0031】
本実施例のシステムでは、さらに特徴的なプリンタドライバがアクイジションコントローラPC2Aにインストールされている。一般的なプリンタドライバの主たる機能は、指定されたファイルに格納されているデータに基づく文書や図表などを、指定されたプリンタに出力して印刷したり指定されたフォルダに出力したりすることであるが、このシステムにおけるプリンタドライバはさらに特徴的な機能を有している。なお、説明の便宜上、アクイジションコントローラPC2Aで使用されているOSはWindowsであるものとする。
【0032】
図2は、アクイジションコントローラPC2Aにインストールされているデータ処理用ソフトウェア及びプリンタドライバを該PCで実行することにより具現化されるデータ処理部20の主要な機能ブロックを示す図である。このデータ処理部20は、データ収集部21、解析処理部22、分析結果レポート作成処理部23、データ記憶部24、プリンタドライバ部25などの機能ブロックを備える。また、プリンタドライバ部25は、情報設定用UI(ユーザインターフェイス)実行部250、印刷スプール処理部251、ポストスクリプトプリンタドライバ部252、テキスト情報抽出処理部253、分析生データ取得処理部254、データベース登録処理部255、などの機能ブロックを備える。
【0033】
次に、本実施例のシステムにおいて分析情報をデータベースに登録する際の処理の流れについて説明する。なお、情報設定用UI実行部250には、分析情報の登録先であるデータベースサーバPC5のIPアドレスなどの通信に関する情報などが予め登録される。
【0034】
データ処理部20においてデータ収集部21は、分析装置1で試料に対する分析が実行されることで順次得られるデータを取得する。分析装置1がLCである場合、このデータは時間経過に伴い得られるクロマトグラムデータである。データ収集部21は収集したデータを含む分析生データファイルを作成し、これをデータ記憶部24の中の分析生データ格納フォルダ240に出力する。この分析生データ格納フォルダ240は予めユーザが指定しておくこともできるし、ユーザが指定しない場合にはデフォルトで定められているものとすればよい。なお、分析生データファイル中に、分析条件などのデータも含めるようにしてもよい。
【0035】
解析処理部22は上述したように収集されたデータに対して所定の波形処理や演算処理などを実行することで、例えば定量分析を行う。具体的には、収集されたクロマトグラムデータに基づいて作成されるクロマトグラムについて所定の波形処理を実行してピークを検出し、検出したピーク毎にそのピークの保持時間及び面積値(又は高さ値)を求める。そして、保持時間情報に基づいてそのピークに対応する化合物を特定又は確認したうえで、予め作成しておいた検量線に照らしてピーク面積値(又は高さ値)から定量値(濃度値)を算出する。こうして試料に含まれる化合物毎の定量値を求めることができる。
【0036】
分析結果レポート作成処理部23はユーザからの指示に基づいて、所定様式の分析結果レポートを作成する。特許文献1等に開示されているように、分析結果レポートにはサンプル名などのサンプル情報、クロマトグラムなどの分析結果であるグラフ、解析結果であるピーク面積値、定量値などを含むようにすることができる。一般的には、レポートの様式のテンプレートを多数用意しておき、そのテンプレートの中からユーザが任意の一つを選択し、その選択されたテンプレートの各項目を埋めるようにサンプル情報や図表などを配置することで、例えば
図4に示すような分析結果レポートを完成させることができる。
【0037】
こうして分析結果レポートが作成されたあと、ユーザは作成された分析結果レポートについてデータベース登録を実行する指示を行う。この指示は例えば、印刷指示としてプリント先にデータベースを選択することで行うようにすることができる。
【0038】
プリンタドライバ部25において印刷スプール処理部251は上記指示を受けると、指定された分析結果レポートを構成するデータをプリンタのデバイスコンテキストへ描画するために、Windowsにおける標準であるGDI(グラフィックスデバイスインターフェイス)API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を呼び出し、このGDIがプリンタのデバイスコンテキストへ描画する。そのあと、印刷スプール処理部251はプリンタ言語に基づいて印刷用のRAWデータを生成する。そして、ポストスクリプトプリンタドライバ部252は生成されたRAWデータに基づいてPDFファイルを生成する。ここまでの処理は、
図3に示した従来のシステムにおけるアクイジションコントローラPC2にインストールされているプリンタドライバも備える機能である。
【0039】
PDFファイルが生成されると直ぐにテキスト情報抽出処理部253はPDFファイルを解析し、レポート上の位置と情報の種類との対応関係を示すマッピング情報を参照して、サンプル情報、定量値などのテキスト情報を抽出する。マッピング情報は必要に応じてデータベースサーバPC5から取得してもよいし、情報設定用UI実行部250に予め登録しておいてもよい。そして、分析生データ取得処理部254は、抽出したテキスト情報の中からマッピング情報を参照して分析生データファイルのファイルパスを抽出し、そのファイルパスで示される記憶部24の分析生データ格納フォルダ240から分析生データファイルを取得する。
図4の例では、「C:\Users\Analysis\Data006.lcd」が分析生データファイルのファイルパスである。
【0040】
データベース登録処理部255は取得した分析生データファイルのほか、分析結果レポートのPDFファイル、及び該ファイルから抽出したテキスト情報をネットワーク回線3を通してデータベースサーバ5へ送信し、該サーバ5上に構築されているデータベースにそれら情報を登録する。この際には、情報設定用UI実行部250に登録されている通信に関する情報が利用される。
【0041】
以上のようにして本実施例のシステムでは、分析結果レポートのデータベースへの出力指示がなされると、その指示に応じてその分析に関連した様々な情報がデータベースサーバ5上のデータベースに自動的に登録される。このデータベース登録処理は、分析装置1に直接接続されているアクイジションコントローラPC2Aにインストールされているプリンタドライバによって個々に、つまりはアクイジションコントローラPC2A毎に実行される。したがって、分析装置1に接続されたPCにこのプリンタドライバをインストールしておけば、データ処理用のアプリケーションプログラムに依存することなく分析生データファイル等をデータベースに登録することができる。
【0042】
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1…分析装置
2A…アクイジションコントローラPC
20…データ処理部
21…データ収集部
22…解析処理部
23…分析結果レポート作成処理部
24…データ記憶部
240…分析生データ格納フォルダ
25…プリンタドライバ部
250…情報設定用UI実行部
251…印刷スプール処理部
252…ポストスクリプトプリンタドライバ部
253…テキスト情報抽出処理部
254…分析生データ取得処理部
255…データベース登録処理部
3…ネットワーク回線
5…データベースサーバPC