(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像処理部は、標識物と前記撮像系とを相対移動させながら撮像された複数の位置較正用画像に基づいて、複数の前記画像における被写体の同一位置の各画素の位置合わせに用いる位置較正データを作成するように構成されている、請求項1に記載のX線イメージング装置。
前記位置較正データは、前記移動機構によって前記標識物と前記撮像系とを相対移動させる際に前記移動機構に入力される移動量に関する指令値と、前記指令値に基づいて前記標識物と前記撮像系とを相対移動させた際の前記位置較正用画像中における前記標識物または前記撮像系の移動量とに基づいて作成される、請求項2に記載のX線イメージング装置。
前記位置較正データは、複数の前記位置較正用画像における前記標識物の同一位置の各画素の位置に基づいて、前記指令値と前記標識物または前記撮像系の移動量との関係を示す近似式を取得することにより作成される、請求項3に記載のX線イメージング装置。
前記画像処理部は、複数の前記画像における被写体の同一位置の各画素の各位相値と各画素値とを1対1の関係で対応付けて得られる画素値の強度信号曲線に基づいて、前記位相コントラスト画像を生成するように構成されている、請求項3に記載のX線イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1〜
図11を参照して、本発明の第1実施形態によるX線イメージング装置100の構成、およびX線イメージング装置100が位相コントラスト画像16を生成する方法について説明する。
【0025】
(X線イメージング装置の構成)
まず、
図1を参照して、第1実施形態によるX線イメージング装置100の構成について説明する。
【0026】
図1に示すように、X線イメージング装置100は、タルボ(Talbot)効果を利用して、被写体Tの内部を画像化する装置である。X線イメージング装置100は、たとえば、非破壊検査用途では、物体としての被写体Tの内部の画像化に用いることが可能である。
【0027】
図1は、X線イメージング装置100をY方向から見た図である。
図1に示すように、X線イメージング装置100は、X線源1と、第1格子2と、第2格子3と、第3格子4と、検出器5と、画像処理部6と、制御部7と、移動機構8と、格子移動機構9とを備えている。なお、本明細書において、X線源1から第1格子2に向かう方向をZ2方向、その逆方向の方向をZ1方向とする。また、Z方向と直交する面内の上下方向をX方向とし、上方向をX1方向、下方向をX2方向とする。また、Z方向と直交する面内の左右方向をY方向とし、
図1の紙面の奥に向かう方向をY2方向、
図1の紙面の手前側に向かう方向をY1方向とする。また、第1実施形態において撮像する被写体Tは、X方向の大きさw1が、第2格子3のX方向の幅w2よりも小さい場合の例である。
【0028】
X線源1は、高電圧が印加されることにより、X線を発生させる。X線源1は、発生させたX線をZ2方向に向けて照射するように構成されている。
【0029】
第1格子2は、X線源1と、第2格子3との間に配置されており、X線源1からX線が照射される。第1格子2は、タルボ効果により、第1格子2の自己像を形成するために設けられている。可干渉性を有するX線が、スリットが形成された格子を通過すると、格子から所定の距離(タルボ距離)離れた位置に、格子の像(自己像)が形成される。これをタルボ効果という。
【0030】
第2格子3は、第1格子2と検出器5との間に配置されており、第1格子2を通過したX線が照射される。また、第2格子3は、第1格子2から所定のタルボ距離だけ離れた位置に配置される。第2格子3は、第1格子2の自己像と干渉して、モアレ縞30(
図4参照)を形成する。
【0031】
第3格子4は、X線源1と第1格子2との間に配置されており、X線源1からX線が照射される。
【0032】
検出器5は、X線を検出するとともに、検出されたX線を電気信号に変換し、変換された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。検出器5は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器5は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とにより構成されている。複数の変換素子および画素電極は、所定の周期(画素ピッチ)で、X方向およびY方向にアレイ状に配列されている。また、検出器5は、取得した画像信号を、画像処理部6に出力するように構成されている。
【0033】
画像処理部6は、検出器5から出力された画像信号に基づいて、位相コントラスト画像16を(
図11参照)を生成するように構成されている。画像処理部6は、たとえば、GPU(Graphics Processing Unit)や画像処理用に構成されたFPGA(Field−Programmable Gate Array)などのプロセッサを含む。
【0034】
制御部7は、移動機構8を制御して、被写体TをX方向に移動させるように構成されている。また、制御部7は、格子移動機構9を制御して、第1格子2を移動させるように構成されている。また、制御部7は、格子移動機構9を制御して第1格子2の位置を調整することにより、モアレ縞30(
図4参照)を、検出器5の検出面上に生じさせるように構成されている。制御部7は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。
【0035】
移動機構8は、制御部7の制御の下、被写体TまたはX線源1と検出器5と複数の格子とによって構成される撮像系40をX方向に移動させるように構成されている。
図1に示す例では、移動機構8は、被写体TをX2方向からX1方向に移動させることにより、被写体Tと撮像系40とを相対移動させるように構成されている。移動機構8は、たとえば、ベルトコンベアまたは各種の直動機構によって構成されている。
【0036】
格子移動機構9は、制御部7の制御の下、第1格子2を移動可能に構成されている。また、格子移動機構9は、制御部7の制御の下、第1格子2の位置を調整することにより、モアレ縞30(
図4参照)を生じさせるように構成されている。格子移動機構9が格子を移動させる詳細な構成については後述する。また、格子移動機構9は、第1格子2を保持している。
【0037】
(各格子の構造)
次に、
図2を参照して、第1格子2、第2格子3、および、第3格子4の構造について説明する。
【0038】
図2に示すように、第1格子2は、複数のスリット2aおよびX線位相変化部2bを有している。各スリット2aおよびX線位相変化部2bは、Y方向に所定の周期(ピッチ)d1で配列されている。各スリット2aおよびX線位相変化部2bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各スリット2aおよびX線位相変化部2bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。第1格子2は、いわゆる位相格子である。
【0039】
第2格子3は、複数のX線透過部3aおよびX線吸収部3bを有する。各X線透過部3aおよびX線吸収部3bは、Y方向に所定の周期(ピッチ)d2で配列されている。各X線透過部3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各X線透過部3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。第2格子3は、いわゆる、吸収格子である。第1格子2、第2格子3はそれぞれ異なる役割を持つ格子であるが、スリット2aおよびX線透過部3aはそれぞれX線を透過させる。また、X線吸収部3bはX線を遮蔽する。また、X線位相変化部2bはスリット2aとの屈折率の違いによってX線の位相を変化させる。
【0040】
第3格子4は、Y方向に所定の周期(ピッチ)d3で配列される複数のスリット4aおよびX線吸収部4bを有している。各スリット4aおよびX線吸収部4bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各スリット4aおよびX線吸収部4bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。また、第3格子4は、各スリット4aを通過したX線を、各スリット4aの位置に対応する線光源とするように構成されている。
【0041】
(格子移動機構)
図3に示すように、格子移動機構9は、X方向、Y方向、Z方向、Z方向の軸線周りの回転方向Rz、X方向の軸線周りの回転方向Rx、および、Y方向の軸線周りの回転方向Ryに第1格子2を移動可能に構成されている。具体的には、格子移動機構9は、X方向直動機構90と、Y方向直動機構91と、Z方向直動機構92と、直動機構接続部93と、ステージ支持部駆動部94と、ステージ支持部95と、ステージ駆動部96と、ステージ97とを含む。X方向直動機構90は、X方向に移動可能に構成されている。X方向直動機構90は、たとえば、モータなどを含む。Y方向直動機構91は、Y方向に移動可能に構成されている。Y方向直動機構91は、たとえば、モータなどを含む。Z方向直動機構92は、Z方向に移動可能に構成されている。Z方向直動機構92は、たとえば、モータなどを含む。
【0042】
格子移動機構9は、X方向直動機構90の動作により、第1格子2をX方向に移動させるように構成されている。また、格子移動機構9は、Y方向直動機構91の動作により、第1格子2をY方向に移動させるように構成されている。また、格子移動機構9は、Z方向直動機構92の動作により、第1格子2をZ方向に移動させるように構成されている。
【0043】
ステージ支持部95は、ステージ97を下方(Y1方向)から支持している。ステージ駆動部96は、ステージ97をX方向に往復移動させるように構成されている。ステージ97は、底部がステージ支持部95に向けて凸曲面状に形成されており、X方向に往復移動されることにより、Z方向の軸線周り(Rz方向)に回動するように構成されている。また、ステージ支持部駆動部94は、ステージ支持部95をZ方向に往復移動させるように構成されている。また、ステージ支持部95は底部が直動機構接続部93に向けて凸曲面状に形成されており、Z方向に往復移動されることにより、X方向の軸線周り(Rx方向)に回動するように構成されている。また、直動機構接続部93は、Y方向の軸線周り(Ry方向)に回動可能にX方向直動機構90に設けられている。したがって、格子移動機構9は、格子をY方向の中心軸線周りに回動させることができる。
【0044】
(位相コントラスト画像の生成)
次に、
図4〜
図11を参照して、第1実施形態によるX線イメージング装置100が位相コントラスト画像16(
図11参照)を生成する構成について説明する。
【0045】
第1実施形態では、X線イメージング装置100は、被写体TをX方向に移動させながら撮像するように構成されている。また、第1実施形態では、X線イメージング装置100は、予めモアレ縞30を発生させた状態で撮像するように構成されている。
図4に示す例は、移動機構8によって第1撮像位置〜第6撮像位置に被写体TをX方向に直線移動させながら撮像した複数の被写体画像10の模式図である。具体的には、
図4に示す例は、矩形状の被写体Tが撮像範囲の一方側(右側)から他方側(左側)へ移動する間の6か所の各位置で撮像を行った例である。なお、第1撮像位置では、X方向における被写体Tの一部が検出器5の検出面上に配置されないため、撮像された被写体画像10において、被写体Tの一部が写っていない例である。また、
図4に示す例は、複数の被写体画像10における被写体Tを写した各画素のうち、画素Qの位置の変化を示した例である。また、複数の被写体画像10は、請求の範囲の「被写体を移動させながら撮像した複数の画像」の一例である。
【0046】
図4に示すように、第1実施形態では、制御部7は、モアレ縞30を生じさせた状態で被写体Tを移動させながら撮像するように構成されている。制御部7は、各撮像位置に被写体Tを配置するための移動量に関する指令値を移動機構8に入力することにより、被写体Tを所定の移動量dtだけ移動させる。移動量に関する指令値は、たとえば、移動機構8が駆動源としてステッピングモータを含む場合、移動機構8に入力されるパルス数である。なお、
図4の第2撮像位置における被写体画像10には、被写体Tの移動量dtを把握しやすくするため、第1撮像位置における被写体Tの位置を破線で図示している。移動機構8によって被写体Tを移動させながら撮像することにより、モアレ縞30と被写体Tとを相対移動させることが可能となり、画像処理部6は、位相コントラスト画像16を生成することができる。なお、第1実施形態では、移動機構8によって、被写体Tを少なくともモアレ縞30の1周期d4分以上移動させる。
【0047】
ここで、従来の縞走査法では、格子を格子方向の少なくとも垂直方向の成分について格子1周期分を分割した所定距離ずつ格子を並進移動させて撮像する。したがって、各画像における各画素のモアレ縞30の位相値は、格子を移動させる距離によって決まるため、各画像における画素の画素値を取得することにより、位相コントラスト画像16を生成することができる。
【0048】
しかしながら、被写体Tをモアレ縞30に対して移動させながら撮像する場合、各画像における画素の位相値を直接取得することはできない。そこで、第1実施形態では、画像処理部6は、モアレ縞30の位相情報12(
図5参照)を取得するように構成されている。具体的には、X線イメージング装置100は、格子移動機構9によって第1格子2を並進移動させることにより
図5に示すような各ステップのモアレ縞画像11を取得する。モアレ縞画像11は、第1格子2を並進移動させることによって検出器5の検出面上に発生させたモアレ縞30を撮像したものであり、モアレ縞30の画素値の明暗による縞模様を写した画像である。画像処理部6は、各モアレ縞画像11に基づいて、モアレ縞30の位相情報12を取得するように構成されている。具体的には、
図5の第1〜第4ステップのモアレ縞画像11をI
k(x、y)とおき、以下の式(1)のようにS(x、y)を定義する。
【数1】
ここで、kは、各ステップの番号である。また、Mは、格子を並進移動させる回数である。また、xおよびyは、検出器5の検出面上におけるX線の照射軸に直交する面内の画素位置(座標)である。
【0049】
上記式(1)を用いると、モアレ縞30の位相情報12は、以下の式(2)によって表される。
【数2】
ここで、φ(x、y)は、モアレ縞30の位相情報12である。また、第1実施形態では、I
k(x、y)をkの関数として、サインカーブ(正弦波)によってフィッティングを行い、そのサインカーブの位相情報をモアレ縞30の位相情報12としてもよい。
【0050】
モアレ縞30の位相情報12は、モアレ縞30の位相値の変化が1周期d4毎に繰り返された縞模様の画像である。具体的には、モアレ縞30の位相情報12は、モアレ縞30の位相値の−πからπまでの変化を縞模様で図示した画像である。モアレ縞30の位相情報12は、範囲が2πであれば、−πからπの範囲でも0から2πの範囲でもよい。
【0051】
第1実施形態では、画像処理部6は、被写体Tと撮像系40とを相対移動させながら撮像した複数の被写体画像10と、複数の被写体画像10に生じたモアレ縞30の位相情報12とに基づいて、複数の被写体画像10における被写体Tの各画素における画素値と、各画素におけるモアレ縞30の位相値とを対応付けるように構成されている。また、画像処理部6は、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の画素の位置情報と、位相値と対応付けた各画素の画素値とに基づいて複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の画素の位置合わせを行うことにより、位相コントラスト画像16を生成するように構成されている。
【0052】
第1実施形態では、画像処理部6は、位置較正データを作成し、作成した位置較正データを用いて複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の画素の位置合わせを行うように構成されている。
【0053】
具体的には、画像処理部6は、標識物Mと撮像系40とを相対移動させながら撮像された複数の位置較正用画像13(
図6参照)に基づいて、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の画素の位置合わせに用いる位置較正データを作成するように構成されている。標識物Mは、X線を吸収するものであればどのようなものであってもよい。第1実施形態では、標識物Mは、たとえば、ワイヤなどを含む。
【0054】
(位置較正データの作成)
図6は、移動機構8によって標識物MをX方向に移動させながら撮像した位置較正用画像13の模式図である。
図6に示す位置較正用画像13は、標識物Mを第1撮像位置〜第6撮像位置に移動させながら撮像された画像の例である。また、
図6に示す例では、標識物Mを写した各画素のうち、画素Rに着目して標識物Mの移動量dmを取得している。
【0055】
位置較正データは、移動機構8によって標識物Mと撮像系40とを相対移動させる際に移動機構8に入力される移動量に関する指令値と、指令値に基づいて標識物Mと撮像系40とを相対移動させた際の位置較正用画像13中における標識物Mの実際の移動量dmとに基づいて作成される。具体的には、位置較正データは、複数の位置較正用画像13における標識物Mの同一位置の各画素の位置に基づいて、指令値と標識物Mの移動量dmとの関係を示す近似式を取得することにより作成される。
【0056】
図7は、縦軸が各位置較正用画像13における標識物Mの位置であり、横軸が標識物Mを移動させた際の指令値であるグラフ31である。制御部7は、グラフ31に示す各プロットmpを線形フィッティングすることにより近似式を取得する。
【0057】
第1実施形態では、制御部7は、位置較正データとして、以下に示す式(3)を取得する。
【数3】
ここで、xは、被写体Tの同一位置の画素の各画像における位置である。また、x
startは、被写体Tの同一位置の画素のうち、第1撮像位置における画素の位置である。また、p1は、近似式の傾きである。また、npは、被写体Tを移動させる際に移動機構8に入力される指令値(パルス数)である。
【0058】
第1実施形態では、画像処理部6は、位置較正データを用いて被写体Tの同一位置の画素の各被写体画像10における位置を取得し、各被写体画像10における画素の位置合わせを行う。
図8は、位置合わせを行った各被写体画像14の模式図である。なお、被写体画像14は、請求の範囲の「被写体を移動させながら撮像した複数の画像」の一例である。
【0059】
図8に示す例は、第1撮像位置〜第6撮像位置における各被写体画像10を、第2撮像位置における被写体Tが静止するように位置合わせを行った被写体画像14である。なお、第1撮像位置に被写体Tを配置して撮像した画像には、X方向における被写体Tの全体が写っていないため、位置合わせ後の被写体画像14には空白の領域Eが生じている。位置合わせ後の各被写体画像14において、画素Qに着目した場合、画素Qに対してモアレ縞30が移動していることがわかる。
【0060】
第1実施形態では、画像処理部6は、位置合わせ後の各被写体画像14の各画素におけるモアレ縞30の位相値を取得するために、モアレ縞30の位相情報12についても、位置較正データを用いて位置合わせを行う。モアレ縞30の位相情報12についても、被写体Tが静止するような画像に変換した際の処理と同じ変換処理を行うことにより、各撮像位置における位相情報12の位置を合わせる。
【0061】
図9に示す例は、
図5に示すモアレ縞30の位相情報12を、位置較正データを用いて位置合わせを行った後の位相情報15である。
図9に示す例では、位置合わせ後の各被写体画像14の画素Qの位置に対応する位置を点Uで図示している。すなわち、各撮像位置における画素の位置と位置合わせ後の位相情報15におけるモアレ縞30の位相値の位置とは1対1の関係で対応付いている。したがって、画像処理部6は、位置合わせ後の各被写体画像14における画素について、位相値と画素値との関係を示す強度信号曲線32(
図10参照)を取得することができる。
【0062】
図10に示す強度信号曲線32は、横軸が位相値であり、縦軸が画素値である。画像処理部6は、位置合わせ後の各被写体画像14と、位相情報15とを用いて、複数の被写体画像14における被写体Tの同一位置の画素の各位相値と各画素値とを1対1の関係で対応付けた画素値の強度信号曲線32を取得する。
図10に示す例は、複数の被写体画像14の各画素Qにおける画素値と、複数の位相情報15における被写体画像14の画素Qに対応する各点Uの位相値とに基づくプロットpbを取得し、正弦波によってフィッティングすることにより得られた強度信号曲線32の例である。なお、
図8に示した空白の領域Eについてはモアレ縞30の位相情報12もないので、
図10においてサンプリングはしない。画像処理部6は、取得した強度信号曲線32に基づいて、位相コントラスト画像16を生成するように構成されている。
【0063】
図11は、位相コントラスト画像16の模式図である。第1実施形態では、画像処理部6は、強度信号曲線32に基づいて、吸収像16aと、位相微分像16bと、暗視野像16cとを生成する。吸収像16aと、位相微分像16bと、暗視野像16cとを生成する手法は、公知の手法で行うことができるので、説明は省略する。
【0064】
次に、
図12を参照して、第1実施形態によるX線イメージング装置100による位相コントラスト画像16を生成する処理の流れについて説明する。
【0065】
ステップS1において、画像処理部6は、制御部7の制御の下、移動機構8によって標識物Mを第1撮像位置〜第6撮像位置に移動させながら、複数の位置較正用画像13を取得する。次に、ステップS2において、制御部7は、標識物Mの移動量dmと指令値とに基づいて近似式を取得する。制御部7は、取得した近似式の傾きに基づいて、位置較正データを取得する。その後、処理は、ステップS3へ進む。
【0066】
次に、ステップS3において、画像処理部6は、モアレ縞30の位相情報12を取得する。その後、ステップS4において、画像処理部6は、制御部7の制御の下、移動機構8によって被写体Tと撮像系40とを相対移動させながら、複数の被写体画像10を取得する。なお、第1実施形態では、移動機構8は、被写体Tを第1撮像位置〜第6撮像位置に移動させる。その後、処理はステップS5へ進む。
【0067】
次に、ステップS5において、画像処理部6は、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の画素の位置合わせを行い、複数の被写体画像14を取得する。その後、処理はステップS6へ進む。
【0068】
ステップS6において、画像処理部6は、位相情報12の位置合わせを行い、複数の位相情報15を取得する。その後、ステップS7において、画像処理部6は、複数の被写体画像14における被写体Tの画素と、モアレ縞30の位相値とを対応付ける。次に、ステップS8において、画像処理部6は、強度信号曲線32に基づいて、位相コントラスト画像16を生成し、処理を終了する。
【0069】
なお、ステップS1およびステップS2における位置較正データの取得処理と、ステップS3におけるモアレ縞30の位相情報12の取得処理とは、どちらの処理を先に行ってもよい。位置較正データの取得処理は、複数の被写体画像10における画素の位置合わせを行う前であれば、どのタイミングで行ってもよい。また、モアレ縞30の位相情報12を取得する処理は、位相情報12の位置合わせを行う処理の前であれば、いつ行ってもよい。
【0070】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0071】
第1実施形態では、上記のように、X線イメージング装置100は、X線源1と、X線源1から照射されたX線を検出する検出器5と、X線源1と検出器5との間に配置され、X線源1からX線が照射される第1格子2と、第1格子2からのX線が照射される第2格子3とを含む複数の格子と、被写体Tを複数の格子の格子が延びる方向(X方向)に沿って移動させる移動機構8と、検出器5によって検出された信号に基づいて位相コントラスト画像16を生成する画像処理部6と、を備え、画像処理部6は、被写体Tと撮像系40とを相対移動させながら撮像した複数の被写体画像10と、複数の被写体画像10に生じたモアレ縞30の位相情報12と、に基づいて、複数の被写体画像10における被写体Tの各画素における画素値と、各画素におけるモアレ縞30の位相値とを対応付けるとともに、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の画素の位置情報と、位相値と対応付けた各画素の画素値と、に基づいて複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の画素の位置合わせを行うことにより、位相コントラスト画像16を生成するように構成されている。
【0072】
これにより、各画像における被写体Tの同一位置の画素の画素値と、各画像における被写体Tの同一位置の画素に対応する各位相値とを対応付けて位相コントラスト画像16を生成することができる。したがって、モアレ縞30の1周期d4分の領域を領域分割して各領域に含まれる画素値の平均値を用いて位相コントラスト画像16を生成する場合と比較して、同一位置を写した各画素の画素値を用いて位相コントラスト画像16を生成することができる。その結果、位相コントラスト画像16の生成に用いる画素値に誤差が生じることに起因して位相コントラスト画像16の画質が劣化することを抑制することができる。
【0073】
また、たとえば、補正用画像として、被写体Tを配置せずに撮像する場合でも、被写体Tと撮像系40とを相対移動させることが可能であるため、被写体Tと撮像系40との相対移動前または相対移動後には、被写体Tを撮像領域以外の位置に配置することができる。そのため、格子を移動させる従来の縞走査法のように、補正用画像を撮像するために、ユーザが被写体Tを撮像領域から取り除く必要がないので、従来の縞走査法と比較して、位相コントラスト画像16の撮像と補正用画像の撮像との時間間隔を短縮することができる。その結果、各撮影間における撮像条件が変化することを抑制することが可能となるので、補正後の位相コントラスト画像16の画質が劣化することを抑制することができる。また、たとえば、被写体Tの移動方向(X方向)における大きさw1が、被写体Tの移動方向(X方向)における格子の大きさw2よりも大きい被写体Tを撮像したい場合、従来の縞走査法では、第2格子3の大きさを大きくする必要がある。縞走査法に用いる第2格子3は、峡ピッチかつ高アスペクト比である必要があるため、単一の格子で、かつ面積の大きい第2格子3を製造することが難しい。そこで、たとえば、格子を貼り合せることにより大面積化することができるが、貼り合せの境界面においてアーチファクトが生じる。これに対して、本実施形態では、上記のように構成することにより、被写体Tを移動させながら撮像することが可能となるので、大面積化した格子を用いることなく、被写体Tの全体を撮像することができる。その結果、たとえば、格子を貼り合せることによって大面積化した格子を用いる場合に生じるアーチファクトが生じることを抑制することができる。
【0074】
また、第1実施形態では、上記のように、画像処理部6は、標識物Mと撮像系40とを相対移動させながら撮像された複数の位置較正用画像13に基づいて、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の各画素の位置合わせに用いる位置較正データを作成するように構成されている。これにより、位置較正データを用いることによって、被写体Tの同一位置の画素の各被写体画像10における位置を取得することが可能となるので、被写体Tの移動量dtを算出することができる。その結果、たとえば、被写体Tの移動量dtと標識物Mの移動量dmとが同一でない場合でも、被写体Tの移動量dtを取得することが可能となるので、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の各画素の位置合わせを行うことができる。
【0075】
また、第1実施形態では、上記のように、位置較正データは、移動機構8によって標識物Mと撮像系40とを相対移動させる際に移動機構8に入力される移動量に関する指令値と、指令値に基づいて標識物Mと撮像系40とを相対移動させた際の位置較正用画像13中における標識物Mの移動量dmとに基づいて作成される。これにより、移動機構8に入力される移動量に関する指令値と、標識物Mの移動量dmとの間に誤差が生じていた場合でも、位置較正データによって正確な移動量を取得することができる。その結果、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の各画素の位置合わせを正確に行うことが可能となるので、得られる位相コントラスト画像16の画質が劣化することをより抑制することができる。
【0076】
また、第1実施形態では、上記のように、位置較正データは、複数の位置較正用画像13における標識物Mの同一位置の各画素の位置に基づいて、指令値と標識物Mの移動量dmとの関係を示す近似式を取得することにより作成される。これにより、複数の位置較正用画像13における標識物Mの同一位置の各画素の位置に基づいて近似式を取得することによって、複数の位置較正用画像13を撮像した位置とは異なる位置への移動量に関する指令値と標識物Mの移動量dmとの関係を、近似式を用いて算出することができる。その結果、たとえば、被写体Tを撮像する際に、標識物Mを移動させた位置と異なる位置に被写体Tを移動させた場合でも、被写体Tの移動量dtを取得することができる。
【0077】
また、第1実施形態では、上記のように、画像処理部6は、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の各画素の各位相値と各画素値とを1対1の関係で対応付けて得られる画素値の強度信号曲線32に基づいて、位相コントラスト画像16を生成するように構成されている。これにより、複数の被写体画像10における被写体Tの同一位置の各画素の位相値と各画素値とが1対1で対応しているので、位相値と画素値の平均値とを用いる場合と比較して、強度信号曲線32の誤差を低減することができる。その結果、得られる位相コントラスト画像16に誤差が生じることをより一層低減することができる。
【0078】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の格子は、X線源1と第1格子2との間に配置された第3格子4をさらに含んでいる。これにより、第3格子4によってX線源1から照射されるX線の可干渉性を高めることができる。その結果、X線源1の焦点径に依存することなく第1格子2の自己像を形成させることが可能となるので、X線源1の選択の自由度を向上させることができる。
【0079】
[第2実施形態]
次に、
図1および
図13を参照して、第2実施形態によるX線イメージング装置200(
図1参照)について説明する。被写体Tを第1撮像位置〜第6撮像位置に移動させながら撮像する第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、移動機構8は、被写体Tを撮像する際に、被写体Tを連続的に移動させるように構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
(X線イメージング装置の構成)
まず、
図1を参照して、第2実施形態によるX線イメージング装置200の構成について説明する。
【0081】
第2実施形態では、移動機構8は、被写体Tを撮像する際に、被写体Tを連続的に移動させるように構成されている。また、画像処理部6は、取得した連続的な被写体画像10に基づいて、位相コントラスト画像16を生成するように構成されている。すなわち、第2実施形態では、被写体画像10は、所定のフレームレート(時間間隔)で被写体画像10を連続的に撮像した動画像として取得される。
【0082】
第2実施形態では、被写体画像10を動画像として取得するため、制御部7は、位置較正データとして、以下に示す式(4)を取得する。
【数4】
ここで、x
iは、i番目のフレームの被写体Tの同一位置の画素の位置である。また、x
startは、被写体Tの同一位置の画素のうち、最初のフレームにおける画素の位置である。また、vpは、移動機構8が被写体Tを移動させる際の速度(pulse/s)である。また、fpsは、動画を撮像する際のフレームレート(frame/s)である。また、iは、動画像におけるフレーム番号である。
【0083】
第2実施形態では、動画像として取得された被写体画像10を位置較正データ用いて位置合わせを行うとともに、位相情報12についても位置較正データを用いて位置合わせを行う。画像処理部6は、第1実施形態と同様に、位置合わせ後の各被写体画像14の画素と、位置合わせ後の位相情報15とに基づいて、被写体画像14の各画素の画素値と、モアレ縞30の位相値とを対応付けて、
図13に示す強度信号曲線33を取得する。強度信号曲線33は、第1実施形態における強度信号曲線32と同様に、横軸が位相値であり、縦軸が画素値である。第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、画像処理部6は、強度信号曲線33に基づいて、位相コントラスト画像16を生成する。
【0084】
次に、
図14を参照して、第2実施形態によるX線イメージング装置200による位相コントラスト画像16を生成する処理の流れについて説明する。なお、第1実施形態と同様のステップの説明については省略する。
【0085】
ステップS1〜ステップS3において、制御部7は、位置較正データおよびモアレ縞30の位相情報12を取得する。その後、処理は、ステップS9に進む。
【0086】
ステップS9において、制御部7は、移動機構8によって被写体Tを連続的に移動させながら、複数の被写体画像10を取得する。
【0087】
その後、処理は、ステップS5〜ステップS8と進み、画像処理部6は、位相コントラスト画像16を生成し、処理を終了する。
【0088】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0089】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0090】
第2実施形態では、上記のように、移動機構8は、被写体Tを撮像する際に、被写体Tを連続的に移動させるように構成されており、画像処理部6は、取得した連続的な被写体画像10に基づいて、位相コントラスト画像16を生成するように構成されている。これにより、連続的な位相コントラスト画像16を生成する際に、たとえば、被写体Tの移動と撮像とを繰り返すことにより連続的な位相コントラスト画像16を生成する従来の縞走査法とは異なり、被写体Tを連続的に移動させながら撮像することにより、連続的な位相コントラスト画像16を生成することができる。その結果、従来の縞走査法と比較して、撮像時間を短縮することができる。
【0091】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
[第3実施形態]
次に、
図15〜
図19を参照して、第3実施形態によるX線イメージング装置300(
図15参照)について説明する。被写体Tを、第1格子2を通過したX線が照射される領域を通過させることにより撮像された被写体画像10に基づいて位相コントラスト画像16を生成する第1および第2実施形態とは異なり、第3実施形態では、検出器5は、第1格子2を通過して到達したX線を検出する第1検出領域R1(
図15参照)と、第1格子2を通過せずに到達したX線を検出する第2検出領域R2(
図15参照)とを含み、移動機構8は、被写体Tが第1検出領域R1および第2検出領域R2をそれぞれ通過するように被写体Tと撮像系40とを相対移動させるように構成されている。なお、上記第1および第2実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0093】
(X線イメージング装置の構成)
まず、
図15を参照して、第3実施形態によるX線イメージング装置300の構成について説明する。
【0094】
第3実施形態では、検出器5は、第1格子2を通過して到達したX線を検出する第1検出領域R1と、第1格子2を通過せずに到達したX線を検出する第2検出領域R2とを含み、移動機構8は、被写体Tが第1検出領域R1および第2検出領域R2を通過するように被写体Tと撮像系40とを相対移動させるように構成されている。また、第3実施形態では、X線イメージング装置300は、コリメータ17を含む。コリメータ17は、第3格子4と第1格子2との間に配置されている。コリメータ17は、X線を遮蔽する遮蔽部材により構成されており、開閉自在に構成されたコリメータ孔17aおよび17bが形成されている。コリメータ孔17aは、X線源1から照射されたX線の内、第1格子2を通過して検出器5に照射されるX線の照射範囲を調整することが可能である。コリメータ孔17bは、第1格子2を通過せずに検出器5に照射されるX線の範囲を調整することが可能である。また、第1検出領域R1のX方向の大きさは、少なくともモアレ縞30(
図4参照)の1周期d4分が写る大きさに調整する。第2検出領域R2は、格子が介在しない吸収像21(
図18参照)を撮像する領域であるため、第2検出領域R2のX方向の大きさは、モアレ縞30の1周期d4分の大きさよりも小さくてもよい。
【0095】
図16は、第3実施形態におけるX線イメージング装置300が撮像する被写体TをZ方向から見た模式図である。第3実施形態において撮像する被写体Tは、X方向の大きさw1が、第2格子3のX方向の幅w2よりも大きい場合の例である。また、被写体Tは、第1内部構造T1、第2内部構造T2および第3内部構造T3を含んでいる。第1内部構造T1は、第2内部構造T2および第3内部構造T3と比較して、X線の吸収量が多い内部構造である。また、第2内部構造T2および第3内部構造T3のX線の吸収量は、吸収像においては描写されない程度の大きさである。また、第2内部構造T2および第3内部構造T3は、第1内部構造T1と比較して、X線を散乱させやすい内部構造である。また、第1内部構造T1のX線の散乱量は、暗視野像において描写されない程度の大きさである。
【0096】
第3実施形態では、被写体TのX方向の大きさw1が第2格子3の幅w2よりも大きいので、1枚の画像において被写体TのX方向の全体を画像化することができない。そこで、第3実施形態では、画像処理部6は、第1検出領域R1において取得された複数の第1画像18に基づいて、位相コントラスト画像16を生成するとともに、第2検出領域R2において取得された複数の第2画像20に基づいて、吸収像21を生成するように構成されている。
【0097】
図17は、画像処理部6が取得する第1画像18および生成する位相コントラスト画像16の模式図である。
【0098】
図17に示すように、第3実施形態では、画像処理部6は、被写体TをX方向に移動させながら撮像された複数の第1画像18を取得する。第1画像18は、上記第1実施形態において画像処理部6が生成した暗視野像16cと同様の手法で取得された暗視野像である。画像処理部6は、複数の第1画像18に基づいて、暗視野像19を生成する。第3実施形態では、第2内部構造T2および第3内部構造T3は、第1内部構造T1と比較して、X線を散乱させやすい内部構造であるため、暗視野像19において、第2内部構造T2および第3内部構造T3を確認することができる。
【0099】
図18は、画像処理部6が取得する第2画像20および生成する吸収像21の模式図である。第3実施形態では、画像処理部6は、被写体TをX方向に移動させながら撮像された複数の第2画像20を取得する。画像処理部6は、取得した複数の第2画像20に基づいて、吸収像21を生成する。第3実施形態では、第1内部構造T1は、第2内部構造T2および第3内部構造T3と比較して、X線の吸収量が多い内部構造であるため、吸収像21において、第1内部構造T1を確認することができる。
【0100】
また、第3実施形態では、画像処理部6は、暗視野像19と、吸収像21とを合成した合成画像22を生成するように構成されている。
【0101】
図19は、第3実施形態における画像処理部6が生成する暗視野像19、吸収像21および暗視野像19と吸収像21とを合成した合成画像22の模式図である。
【0102】
図19に示すように、合成画像22においては、暗視野像19において確認することができる第2内部構造T2および第3内部構造T3と、吸収像21において確認することができる第1内部構造T1とを、同時に(単一画像で)確認することができる。
【0103】
次に、
図20を参照して、第3実施形態によるX線イメージング装置300において合成画像22を生成する処理の流れについて説明する。
【0104】
ステップS10において、制御部7は、位置較正データおよびモアレ縞30の位相情報12を取得する。ステップS10における位置較正データおよびモアレ縞30の位相情報12の取得処理は、第1実施形態におけるステップS1〜ステップS3の処理と同様であるため、詳しい説明を省略する。その後、処理は、ステップS11へ進む。
【0105】
ステップS11において、画像処理部6は、被写体Tを移動させながら撮像された複数の第1画像18および複数の第2画像20を取得する。その後、ステップS12において、画像処理部6は、複数の第1画像18に基づいて、暗視野像19を生成する。その後、処理は、ステップS13へ進む。
【0106】
ステップS13において、画像処理部6は、複数の第2画像20に基づいて、吸収像21を生成する。その後、ステップS14において、画像処理部6は、暗視野像19と吸収像21とを合成した合成画像22を生成し、処理を終了する。
【0107】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0108】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0109】
第3実施形態では、上記のように、検出器5は、第1格子2を通過して到達したX線を検出する第1検出領域R1と、第1格子2を通過せずに到達したX線を検出する第2検出領域R2とを含み、移動機構8は、被写体Tが第1検出領域R1および第2検出領域R2をそれぞれ通過するように被写体Tと撮像系40とを相対移動させるように構成されており、画像処理部6は、第1検出領域R1において取得された複数の第1画像18に基づいて、暗視野像19を生成するとともに、第2検出領域R2において取得された複数の第2画像20に基づいて、吸収像21を生成するように構成されている。これにより、複数の格子を退避させて撮像したり、格子を備えていない別のイメージング装置を用いて撮像したりすることなく、格子を介在させない吸収像21と格子を用いた暗視野像19とを生成することができる。第2検出領域R2に到達するX線は、格子を通過せずに検出器5に到達するので、格子によるX線の減衰、特に低エネルギー側によるX線の減衰を抑制することができる。その結果、第1検出領域R1に到達するX線によって生成された吸収像16aと比較して、第2検出領域R2に到達するX線によって生成された吸収像21のコントラストを向上させることができる。
【0110】
また、第3実施形態では、上記のように、画像処理部6は、暗視野像19と、吸収像21とを合成した合成画像22を生成するように構成されている。これにより、第2検出領域R2において検出されたX線によって生成された高コントラストの吸収像21と、暗視野像19とを合成した合成画像22を取得することができる。その結果、吸収像21のコントラストを向上させることが可能となるので、合成画像22の画質を向上させることができる。
【0111】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0112】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0113】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、格子移動機構9が、第1格子2を移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。移動させる格子はいずれの格子であってもよい。
【0114】
また、上記第1〜第3実施形態では、X線イメージング装置100(200、300)が第3格子4を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。X線源1から照射されるX線の可干渉性が第1格子2の自己像を形成することができるほど十分に高い場合は、第3格子4を設けなくてもよい。
【0115】
また、上記第1実施形態では、第1撮像位置〜第6撮像位置の6か所に被写体T(標識物M)を移動させながら撮像する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。強度信号曲線32を取得することができれば、被写体T(標識物M)を配置する位置は、6か所より少なくてもよいし、多くてもよい。
【0116】
また、上記第1実施形態では、標識物Mの移動量dmの同一の移動量dtによって被写体Tを移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。被写体Tの移動量dtと、標識物Mの移動量dmとは、同一でなくてもよい。
【0117】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1格子2と第2格子3との間において被写体T(標識物M)を移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第3格子4と第1格子2との間において、被写体T(標識物M)を移動させるように構成されていてもよい。
【0118】
また、上記第1〜第3実施形態では、指令値と移動量とに基づく近似式を取得することにより位置較正データを作成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。各被写体画像10における画素の位置を取得することができれば、位置較正データはどのようにして生成されてもよい。
【0119】
また、上記第3実施形態では、画像処理部6が、複数の第1画像18として、暗視野像を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。画像処理部6は、複数の第1画像18として、位相微分像16bを生成するように構成されていてもよい。また、画像処理部6は、吸収像21と、位相微分像16bとを合成した合成画像22を生成するように構成されていてもよい。
【0120】
また、上記第3実施形態では、画像処理部6が暗視野像19と吸収像21とを合成した合成画像22を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部6は、暗視野像19と吸収像21とを、外部の表示装置などに出力することにより、暗視野像19と吸収像21とを並べて表示するように構成されていてもよい。
【0121】
また、上記第1〜第3実施形態では、位置較正データおよびモアレ縞30の位相情報12の取得と、被写体Tを撮像とを続けて行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。位置較正データおよびモアレ縞30の位相情報12を取得する処理をあらかじめ行い、記憶部などに記憶しておいてもよい。位置較正データおよびモアレ縞30の位相情報12を記憶部に記憶しておく較正の場合、画像処理部6は、位相コントラスト画像16を生成する際に、位置較正データおよびモアレ縞30の位相情報12を記憶部から取得するように構成すればよい。
【0122】
また、上記第1〜第3実施形態では、移動機構8が被写体T(標識物M)をX2方向からX1方向へ移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、移動機構8は、X1方向からX2方向へ被写体T(標識物M)を移動させるように構成されていてもよい。被写体T(標識物M)をモアレ縞30の周期方向に移動させることができれば、移動機構8は被写体T(標識物M)をどの様に移動させてもよい。
【0123】
また、上記第1および第2実施形態では、X線イメージング装置100(200)が、被写体TのX方向の大きさw1が、第2格子3の幅w2よりも小さい被写体Tを撮像する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、上記第3実施形態のように、被写体TのX方向の大きさw1が第2格子3の幅w2よりも大きい被写体Tを撮像するように構成されていてもよい。また、第3実施形態において、第1および第2実施形態のように、X線イメージング装置300は、被写体TのX方向の大きさw1が、第2格子3の幅w2よりも小さい被写体Tを撮像するように構成されていてもよい。被写体Tを移動させながら撮像することにより、被写体Tの全体が写る画像を作成することができるので、被写体TのX方向の大きさに制約はない。
【0124】
また、上記第1〜第3実施形態では、撮像系40を固定し、移動機構8が被写体Tを移動させて撮像する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、移動機構8は、被写体Tを固定して、撮像系40を移動させることにより、被写体Tと撮像系40とを相対移動させるように構成されていてもよい。また、標識物Mを固定し、撮像系40を移動させることによって、位置較正用データを取得するように構成されていてもよい。被写体T(標識物M)と撮像系40との相対位置が変化すればよいので、移動機構8は、被写体T(標識物M)と撮像系40とのうち、どちらを移動させてもよい。なお、第1および第2実施形態において、移動機構8が撮像系40を移動させる場合、移動機構8を、格子とともに格子移動機構9を移動させるように構成すればよい。また、第3実施形態において、移動機構8が撮像系40を移動させる場合は、移動機構8を、撮像系40とともにコリメータ17を移動させるように構成すればよい。