【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年8月1日に、一般社団法人実践教育訓練研究協会発行の2016実践教育研究発表会埼玉大会予稿集に公開。平成28年8月26日に、一般社団法人実践教育訓練研究協会2016実践教育研究発表会埼玉大会にて発表。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術のように、前後方向に複数のクローラを有する構成では、走行装置を構成する部品数が多くなり、機構が複雑になるという問題点がある。
【0008】
また、カメラ等が搭載される主クローラ部の前方に前クローラが突出し、後方に後クローラが突出しているので、クローラ式走行車の前後方向の寸法が大きくなり、狭所における旋回が難しくなるという問題点もある。
【0009】
また、特許文献2に開示された従来技術のように、車体の前後方向中央部に設けられる支軸を中心として回動する、この字アームを備える構成では、この字アームの車体前方または後方への突出寸法を大きく確保することが難しいという問題点がある。この字アームの突出寸法が小さいと、段差等を乗り越えるための走行性能が低下してしまう。
【0010】
また、この字アームを車体前方または後方へ大きく突き出すためには、アーム部の長さを長くする必要がある。アーム部を長くすると、この字アームの質量が増し、この字アームを回動させるために大きな動力が必要になる。
【0011】
また、左右一対のアーム部が車体幅方向アームで連結された、この字アームは、不使用時であっても車体の前方、後方または上方に突出した状態である。そのため、車体から突出する、この字アームが邪魔になり、クローラ式走行車の狭所への進入や、狭所における旋回が制限される恐れもある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な機構で障害物を乗り越えることができる走行性に優れた探査用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の探査用ロボットは、撮像装置が設けられた本体と、前記本体の左右に設けられた一対の無限軌道と、前記本体の側部に設けられて
障害物を乗り越える際に前記本体に対して回動
して前記本体を支えるアーム部と、を備え、前記アーム部の回転軸であるアーム軸は、前記無限軌道の最前輪または最後輪と同軸に設けられており、且つ前記最前輪及び前記最後輪とは独立して回動自在であ
り、前記アーム部として、前記本体の前方側の左右に設けられた一対の前アーム部と、前記本体の後方側の左右に設けられた一対の後アーム部と、を有し、前記アーム部は、前記アーム軸に対して垂直に接続された板状体から形成され、前記前アーム部の前方に回動した際に下方を向く辺には、先端が尖った複数の凸部が形成されており、前記後アーム部の後方に回動した際に下方を向く辺には、先端が丸い複数の凸部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の探査用ロボットによれば、撮像装置と無限軌道を備えた本体の側部に回動するアーム部を備え、そのアーム部の回転軸であるアーム軸は、無限軌道の最前輪または最後輪と同軸に設けられており、且つ最前輪及び最後輪とは独立して回動自在である。アーム軸が最前輪と同軸に設けられることにより、アーム部は、その先端が本体の前方側を向くように回動された際に、本体の前部から前方に大きく突出することになる。同様に、アーム軸が最後輪と同軸に設けられたアーム部については、後方に回動されることにより、本体の後方に大きく突出することになる。これにより、アーム部を、探査用ロボットが段差等の障害物を乗り越える際に本体を持ち上げるまたは支えるためのリフタとして用いることにより、障害物に対する優れた走行性能が発揮される。また、アーム部が各種センサの支持手段や操作手段等として用いられる場合には、センサやマニピュレータ等を本体から離れた位置に到達させることができる。
【0015】
また、特許文献2に開示された従来技術のようにアーム部の支軸が車体の前後方向中央部に設けられる構成と比較すると、アーム軸が最前輪または最後輪と同軸に設けられることにより、アーム部が本体から前方または後方に突出する寸法を同等に確保する場合、アーム部の長さを短くすることができる。これにより、アーム部やアーム部を回転させるモータ等の小型軽量化を図ることができる。
【0016】
また、アーム軸が最前輪と同軸に設けられることにより、不使用時には、アーム部を、その先端が本体の後方側を向くように回動させて本体の側部に沿って配置することができる。同様に、アーム軸が最後輪と同軸に設けられたアーム部については、不使用時には、その先端が前方に向けられ、本体の側部に沿った収納位置に配置されることになる。これにより、アーム部が邪魔にならず、狭所への進入や狭所における旋回が可能となり、探査用ロボットの走行性能が高められる。
【0017】
また、本発明の探査用ロボットによれば、アーム部として、本体の前方側の左右に設けられた一対の前アーム部と、本体の後方側の左右に設けられた一対の後アーム部と、を有し、アーム部は、障害物を乗り越える際に回動して本体を支えても良い。これにより、探査用ロボットは段差等を乗り越えることが可能となり、災害発生時等に倒壊した家屋の内部や瓦礫が散乱した場所を走行することができる優れた走行性能が発揮される。
【0018】
また、本発明の探査用ロボットによれば、アーム部は、アーム軸に対して垂直に接続された板状体から形成されても良い。これにより、加工が容易で、且つ、本体を支えるための十分な強度を有するアーム部が得られる。
【0019】
また、前アーム部の前方に回動した際に下方を向く辺及び後アーム部の後方に回動した際に下方を向く辺の少なくとも一方には、複数の凸部が形成されていても良い。これにより、アーム部に形成された凸部が段差等に引っ掛かり、アーム部と段差等との滑りを抑制することができる。よって、アーム部によって好適に本体を支えることができる。
【0020】
また、本発明の探査用ロボットによれば、前アーム部を駆動する前アーム駆動用モータは、出力軸が前方を向くように配置され、後アーム部を駆動する後アーム駆動用モータは、出力軸が後方を向くように配置され、出力軸は、それぞれ歯車を介してアーム軸に連結されていても良い。これにより、比較的重たい前アーム駆動用モータ及び後アーム駆動用モータを本体の前後方向の中央付近に配置することが可能となり、探査用ロボットのバランスが良くなり、走行性能が向上する。
【0021】
また、本発明の探査用ロボットによれば、本体に設けられた制御装置と無線通信可能に構成されて本体から離れて撮像装置、無限軌道及びアーム部を制御する遠隔操作装置と、本体に設けられてアーム部の回転位置を検出する検出手段と、を備え、遠隔操作装置は、撮像装置で撮影された画像を表示する画像表示部と、検出手段で検出されたアーム部の位置情報を表示するアーム位置表示部と、を有しても良い。このような構成により、操作者は、遠隔操作装置を用いて、探査用ロボットを直接視認することができない場所から、探査用ロボットの周囲の状況やアーム部の状態を正確に把握して、探査用ロボットを的確に操作することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る探査用ロボットを図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る探査用ロボット10の透視図である。探査用ロボット10は、遠隔操作可能に構成された走行式のロボットであり、災害発生時における要救助者の発見や建物の床下検査等に用いられるものである。
【0024】
図1に示すように、探査用ロボット10は、略箱状の車体部12を有する。車体部12の側方には、前輪21、後輪22及び転輪23が設けられている。前輪21、後輪22及び転輪23には、無限軌道20が取り付けられている。これにより、探査用ロボット10は、不整地等を走行可能になる。
【0025】
車体部12の上部には、撮像装置14が設けられている。撮像装置14は、カメラと、カメラをパン方向及びチルト方向に回動させるパン・チルト装置と、を有する。パン・チルト装置は、カメラの向きを変える手段として、例えば、サーボモータ等を備えている。
【0026】
車体部12の前面には、距離センサ15が取り付けられている。距離センサ15は、例えば、光電センサや超音波センサ等であり、段差等の障害物の有無や探査用ロボット10と障害物等との距離を測定することができる。
【0027】
探査用ロボット10は、車体部12、撮像装置14及び無限軌道20を備えた本体11の側部に設けられた回動自在なアーム部30を有する。詳しくは、前輪21及び後輪22の外側には、略板状の形態を成して車体部12に固定された車輪ガード36が設けられており、車輪ガード36の外側にアーム部30が設けられている。アーム部30は、前輪21の側方に取り付けられた一対の前アーム部31と、後輪22の側方に取り付けられた一対の後アーム部32と、を有する。
【0028】
図2は、探査用ロボット10の概略構造を示す平面図であり、車体部12の内部構造を示している。
図2に示すように、前アーム部31の回転軸となる前アーム軸33は、左右方向に延在しており、前輪21と同軸に設けられている。前アーム軸33の左右の端部近傍には、前アーム部31が取り付けられている。前アーム部31は、略板状に形成されており、その主面が前アーム軸33に対して略垂直になるよう取り付けられている。
【0029】
後アーム部32の回転軸となる後アーム軸34は、左右方向に延在しており、後輪22と同軸に設けられている。後アーム軸34の左右の端部近傍には、後アーム部32が取り付けられている。後アーム部32は、略板状に形成されており、その主面が後アーム軸34に対して略垂直になるよう取り付けられている。
【0030】
上記のように、アーム部30は、板状体から形成されるので、アーム部30の加工は容易である。また、アーム部30は、その主面が前アーム軸33及び後アーム軸34に対して略垂直に接続されるので、本体11を支えるための荷重は、アーム部30の主面に対して略平行に作用する。よって、アーム部30は、板状体から形成されて軽量でありながら、本体11を支えるための十分な強度を発揮する。
【0031】
車体部12の前後方向の略中央には、前アーム部31を回動させるための前アーム駆動用モータ47と、後アーム部32を回動させるための後アーム駆動用モータ50と、が設けられている。前アーム駆動用モータ47の出力軸48は、前アーム軸33に対して略垂直に設けられており、その先端が前方を向いている。後アーム駆動用モータ50の出力軸51は、後アーム軸34と略垂直に設けられており、その先端が後方を向いている。
【0032】
上記のように、出力軸48の先端を前方に、出力軸51の先端を後方に向けることにより、比較的重たい前アーム駆動用モータ47及び後アーム駆動用モータ50を車体部12の前後方向の中央付近に配置することが可能となる。これにより、探査用ロボットのバランスが良くなり、走行性能が向上する。
【0033】
探査用ロボット10は前輪駆動であり、車体部12の内部には、右側の前輪21aを駆動する走行用モータ41と、左側の前輪21bを駆動する走行用モータ44と、が設けられている。前輪21が回転することにより、無限軌道20が回転し、後輪22及び転輪23は前輪21の回転に追従する。また、右側の前輪21a及び左側の前輪21bがそれぞれ独立した走行用モータ41及び走行用モータ44によって駆動されることにより、探査用ロボット10は、前進、後進に加え、旋回動作を行うことができる。
【0034】
走行用モータ41の出力軸42は、前輪21aの車軸25aと略平行に設けられており、その先端が右方向を向いている。また、走行用モータ44の出力軸45は、前輪21bの車軸25bと略平行に設けられており、その先端が左方向を向いている。右側の前輪21aを駆動する出力軸42の先端を右方向に、左側の前輪21bを駆動する出力軸45の先端を左方向に向けることにより、走行用モータ41及び走行用モータ44を車体部12の左右方向の中央付近に配置することができる。
【0035】
なお、
図2では図示を省略するが、車体部12の内部には、例えば、探査用ロボット10の制御等を行う制御装置18(
図8参照)や電源回路、撮像装置14(
図1参照)の制御部、車体部12の傾きを検出する角度センサ16(
図8参照)、アーム部30の角度を検出するアーム位置センサ17(
図8参照)、温度センサ等が設けられている。角度センサ16は、例えば、ジャイロセンサ等である。アーム位置センサ17としては、例えば、前アーム軸33及び後アーム軸34の回転角を検出するロータリエンコーダ等を採用し得る。
【0036】
図3は、前輪21b付近の概略構造を示す部分断面平面図であり、
図2のA部付近を示している。
図3に示すように、前アーム軸33には、歯車35が固定されている。前アーム駆動用モータ47の出力軸48には、歯車35に噛み合う歯車49が固定されている。歯車35と歯車49は、例えば、ウォームギヤ等であり、歯車49が回転することにより、歯車35が回転する。また、出力軸48の先端近傍は、車体部12に設けられた軸受55によって回転自在に支えられている。なお、出力軸48は、図示しない軸継手を用いて回転軸を連結することにより延長されていても良い。
【0037】
前輪21、車軸25及び歯車24は、左右略同等に構成されている。車軸25は、例えば、滑り軸受や転がり軸受等の軸受53を介して車体部12に対して回転自在に支承されている。車軸25には、前輪21が取り付けられている。前輪21は、例えば、スプロケット等であり、図示しないボルトや摩擦式締結具等によって車軸25に固定されている。前輪21の固定にボルト等の締結具が用いられることにより、前輪21の取り付けや取り外し、位置決め等が容易になる。
【0038】
車軸25の車体部12側には、歯車24が取り付けられている。左側の走行用モータ44の出力軸45には、左側の歯車24bに噛み合う歯車46が固定されている。歯車24bと歯車46は、例えば、平歯車等であり、歯車46が回転することにより、歯車24bが回転する。
【0039】
なお、
図2に示す右側の走行用モータ41についても、走行用モータ44と略同様に形成されている。具体的には、出力軸42に固定された歯車43は、平歯車であり、右側の歯車24aに噛み合っている。
【0040】
図3を参照して、車軸25及び歯車24は略筒状に形成されており、車軸25及び歯車24の内径部に前アーム軸33が挿通されている。即ち、前アーム軸33は、車軸25及び歯車24と同軸に設けられている。車軸25及び歯車24と前アーム軸33との間には、例えば、滑り軸受やニードル軸受等の軸受が設けられており、車軸25及び歯車24と前アーム軸33は、それぞれ独立して回動自在である。
【0041】
走行用モータ44の出力軸45の先端部近傍は、車体部12に設けられた軸受54によって回転自在に支えられている。なお、出力軸45は、図示しない軸継手を用いて回転軸を連結することにより延長されていても良い。これにより、走行用モータ44の左側に、前アーム駆動用モータ47の出力軸48を配置するためのスペースを確保することができる。
【0042】
なお、
図2に示すように、後輪22の車軸26は、前輪21の車軸25と略同様に、中空状に形成されており、車軸26の内径部に後アーム軸34が挿通されている。そして、車軸26と後アーム軸34の間には、軸受が設けられており、車軸26と後アーム軸34は、それぞれ独立して回動自在に構成されている。
【0043】
後アーム駆動用モータ50は、前アーム駆動用モータ47と略同様に形成されている。具体的には、出力軸51に固定される歯車52は、ウォームギヤ等であり、後アーム軸34に固定された歯車に噛み合っている。
【0044】
上記のように前アーム軸33が車軸25と同軸に設けられ、後アーム軸34が車軸26と同時に設けられることにより、防塵や防爆のための軸シール箇所を減らして車体部12のシール性能を高めることができる。これにより、過酷な環境下における使用に耐え得る信頼性の高い探査用ロボット10を構成することができる。
【0045】
図4は、前輪21b付近の側面図であり、
図1に示す前アーム部31及び車輪ガード36が取り外された状態を示している。
図4に示すように、前輪21には、複数の孔27が形成されている。これにより、前輪21を軽くして、探査用ロボット10の軽量化を図ると共に走行用モータ41(
図2参照)及び走行用モータ44(
図2参照)の負荷を減らすことができる。なお、後輪22(
図2参照)についても同様に、軽量化のための孔が形成されても良い。
【0046】
図5(A)は、アーム部30が収納されている状態の探査用ロボット10の側面図である。
図5(B)は、アーム部30が展開されている状態の探査用ロボット10の側面図である。
図5(A)に示すように、前アーム部31は、不使用時には、先端が後方を向くように、探査用ロボット10の本体11の側部、即ち無限軌道20の側部、に沿って収納される。
【0047】
ここで、前アーム部31は、先端の回転半径が車軸25と車軸26の軸間距離よりも短くなるよう形成されている。具体的には、前アーム部31は、車軸26に接することなく360度回転自在に形成されている。これにより、前アーム部31は、収納位置においても、その先端が車軸26の前方に位置し、車軸26に接触することなく、所定の収納位置に収納される。
【0048】
また、後アーム部32についても同様に、不使用時には、先端が前方を向くように、無限軌道20の側部に沿った収納位置に配置される。なお、後アーム部32は、前アーム部31よりも外側に配置されているので、先端の回転半径が車軸25と車軸26の軸間距離よりも長く形成されても良い。
【0049】
上記のように前アーム部31及び後アーム部32が本体11の側部に沿って収納されることにより、前アーム部31及び後アーム部32は、探査用ロボット10の走行の妨げにならない。これにより、探査用ロボット10は、狭所への進入や狭所における旋回が可能となり、走行性能が高められる。
【0050】
前述のとおり、前アーム部31は、360度回動自在に構成されており、例えば、
図5(B)に示すように、先端が前方を向くよう回動して、本体11から前方に突出した状態になる。前アーム部31が回動することにより、前アーム部31を、探査用ロボット10が段差等の障害物を乗り越える際に本体11を持ち上げるためのリフタとして用いることができ、障害物に対する優れた走行性能が発揮される。
【0051】
前述のとおり、前アーム部31は、前輪21(
図2参照)と同軸に設けられている。そのため、前アーム部31のアーム軸33が前輪21と同軸に設けられずに前輪21の後方に設けられる場合と比較すると、前アーム部31は、本体11の前方の大きく突出することになる。換言すれば、前アーム部31の本体11から前方に突出する寸法を同等に確保する場合、前アーム部31の長さを短くすることができる。これにより、前アーム部31や前アーム駆動用モータ47(
図2参照)の小型軽量化を図ることができる。
【0052】
また、前アーム部31は、各種センサの支持手段や操作手段等として用いられても良い。例えば、前アーム部31の先端にセンサやマニピュレータ等が設けられることにより、センサやマニピュレータ等を本体11から離れた位置に到達させることができる。
【0053】
後アーム部32についても同様に、360度回動自在に構成されており、例えば、
図5(B)に示すように、先端が後方を向くよう回動して、本体11から後方に突出した状態になる。これにより、後アーム部32を、探査用ロボット10が段差等の障害物を乗り越える際に本体11を支えるためのリフタや、各種センサの支持手段、操作手段等として用いることがでる。
【0054】
また、後アーム部32についても、後輪22(
図2参照)と同軸に設けられていることにより、後方への到達距離を長く確保することができ、後アーム部32や後アーム駆動用モータ50(
図2参照)の小型軽量化を図ることができる。
【0055】
図6(A)は、前アーム部31付近を拡大して示す側面図である。
図6(B)は、後アーム部32付近を拡大して示す拡大図である。
図6(A)に示すように、前アーム部31の前方に回動した際に下方を向く辺には、複数の凸部37が形成されても良い。
【0056】
例えば、凸部37は、略山形状に形成されており、その先端が尖っている。また、凸部37の前方側の辺37aは、前アーム部31の延在方向に対して斜めに形成されており、凸部37の後方側の辺37bは、前アーム部31の延在方向に対して略垂直に形成されている。これにより、前アーム部31がリフタとして使用される場合の走行性能が高められる。
また、前アーム部31には、複数の孔39が形成されていても良い。これにより、前アーム部31の軽量化を図ることができる。
【0057】
図6(B)に示すように、後アーム部32の後方に回動した際に下方を向く辺及び後アーム部32の先端近傍には、複数の凸部38が形成されても良い。凸部38の先端は、やや丸く形成されている。これにより、後アーム部32がリフタとして使用される場合の走行性能が高められる。
また、後アーム部32には、軽量化のための複数の孔40が形成されていても良い。
【0058】
なお、前アーム部31及び後アーム部32の形状は、上記の例に限定されず、例えば、展開された際に下方を向く辺に凹部が形成された形状や、略鉤状の形状等でも良い。また、例えば、前アーム部31及び後アーム部32は、先端にセンサや操作手段等が取り付けられるものでも良く、それらセンサ等に適合する種々の形状を採用可能である。
【0059】
図7は、探査用ロボット10を遠隔操作するための遠隔操作装置60の正面図である。なお、以下の説明では、適宜
図1及び
図2を参照するものとする。
図7に示すように、遠隔操作装置60には、画像表示部61と、アーム位置表示部62と、走行操作部63と、アーム操作部64と、を有する。
【0060】
画像表示部61は、例えば、液晶ディスプレイ等であり、第1表示部61aと第2表示部61bとを有する。第1表示部61aには、撮像装置14によって撮影された画像が表示される。また、第2表示部61bには、距離センサ15によって検出された障害物等までの距離情報、バッテリの残量や走行可能時間、角度センサ16(
図8参照)で検出された車体部12の傾き情報、温度センサで検出された温度情報、その他の各種センサによる検出結果等が表示される。
【0061】
アーム位置表示部62には、検出手段となるアーム位置センサ17(
図8参照)によって検出された前アーム部31及び後アーム部32の位置情報が表示される。アーム位置表示部62は、例えば、前アーム部31及び後アーム部32にそれぞれ対応して略円形状に配置された複数のLED等によって形成されている。アーム位置表示部62は、LEDの点灯位置により前アーム部31及び後アーム部32の位置を視覚的に示すことができる。
なお、撮像装置14によって撮影された画像と、前アーム部31及び後アーム部32の位置情報を含む上記した各種情報が一つのディスプレイに表示される構成でも良い。
【0062】
走行操作部63は、探査用ロボット10の右側の前輪21aを操作する右前輪操作部63aと、左側の前輪21bを操作する左前輪操作部63bと、を有する。走行操作部63は、例えば、アナログスイッチ等であり、前輪21a及び前輪21bの回転方向や回転速度等を調節することができる。
【0063】
また、アーム操作部64は、前アーム部31を操作する前アーム操作部64aと、後アーム部32を操作する後アーム操作部64bとを有する。アーム操作部64は、例えば、複数のプッシュ式のスイッチ等によって形成されており、前アーム操作部64aは、前アーム部31を所定方向に回転させるスイッチ、逆回転させるスイッチ、前アーム部31を所定の位置に戻すスイッチによって形成されている。後アーム操作部64bは、前アーム操作部64aと同様に、後アーム部32を所定方向に回転させるスイッチ、逆回転させるスイッチ、所定の位置に戻すスイッチによって形成されている。
【0064】
遠隔操作装置60には、複数のトグルスイッチ65が設けられている。トグルスイッチ65を操作することにより、例えば、電源のON、OFF、走行時のモードの切り替え、探査用ロボット10の通信の同期等が行われる。また、図示を省略するが、遠隔操作装置60には、撮像装置14を操作するための操作部等が設けられている。
【0065】
上記の構成により、探査用ロボット10の操作者は、遠隔操作装置60を用いて、探査用ロボット10を直接視認することができない場所から、探査用ロボット10の周囲の状況やアーム部30の状態を正確に把握して、探査用ロボット10を的確に操作することができる。
【0066】
図8は、遠隔操作装置60と、探査用ロボット10のシステム構成を示す制御ブロック図である。
図8に示すように、遠隔操作装置60は、制御装置67を有する。制御装置67は、探査用ロボット10と無線通信を行うための通信部68を有する。制御装置67は、入力された信号に基づき、各種演算等を行い、遠隔操作装置60の制御や探査用ロボット10に操作情報の送信等を行う。
【0067】
探査用ロボット10は、制御装置18を有する。制御装置18は、遠隔操作装置60と無線通信を行うための通信部19を有し、遠隔操作装置60から送信された操作情報等に基づき、各種演算を行い、探査用ロボット10の制御等を行う。また、制御装置18は、探査用ロボット10内に設けられた各種センサの検出結果等を遠隔操作装置60に送信する。
【0068】
例えば、遠隔操作装置60の走行操作部63及びアーム操作部64が操作されることにより、操作信号が制御装置67に入力される。制御装置67は、所定の演算を実行し、通信部68を介して探査用ロボット10に操作信号を送信する。探査用ロボット10の制御装置18は、通信部19によって操作信号を受信し、所定の演算を実行し、走行用モータ41、走行用モータ44、前アーム駆動用モータ47及び後アーム駆動用モータ50等の制御を行う。これにより、無限軌道20(
図1参照)及びアーム部30(
図1参照)の動作が行われる。
【0069】
また、撮像装置14によって撮影された映像や距離センサ15、角度センサ16及びアーム位置センサ17によって検出された情報は、制御装置18に入力され、通信部19を介して遠隔操作装置60に送信される。遠隔操作装置60の制御装置67は、通信部68によって通信部19からの信号を受信すると、所定の演算を実行して、画像表示部61及びアーム位置表示部62に検出結果等の各種情報を表示する。
【0070】
次に、
図9ないし
図12を参照して、探査用ロボット10が段部を乗り越える際の動作について詳細に説明する。なお、
図9ないし
図12に示す矢印は、アーム部30の回転方向を示している。
【0071】
図9(A)は、探査用ロボット10の通常の走行状態を示す側面図である。
図9(A)に示すように、探査用ロボット10は、障害物等がない通常の走行地において、アーム部30が収納された状態で走行する。
【0072】
図9(B)は、前アーム部31を第1の段部Xに引っ掛けた状態を示す側面図である。
図9(B)に示すように、第1の段部Xに近づいた探査用ロボット10は、先端が上方を通過するように前アーム部31を前方に回動させて、前アーム部31を第1の段部Xに接触させる。これにより、前アーム部31の凸部37の辺37b近傍が第1の段部Xの角部に引っ掛けられる。
【0073】
図9(C)は、前方が持ち上げられた状態を示す側面図である。
図9(C)に示すように、更に前アーム部31を回動させることにより、本体11の前部が持ち上げられる。このように、探査用ロボット10が第1の段部Xを乗り越える際に、凸部37が第1の段部Xの角部等に引っ掛かって、前アーム部31と第1の段部Xとの滑りが抑制される。これにより、前アーム部31は、好適に本体11を支えることができ、探査用ロボット10は第1の段部Xを乗り越え易くなる。
【0074】
次に、後アーム部32を、その先端が上方を通過するように後方に回転させて、後アーム部32の先端が地面に近づくように、後ろアーム部32が展開される。これにより、探査用ロボット10が後方に倒れないように、後アーム部32で支えることができる。
【0075】
そして、無限軌道20を駆動して走行することにより、探査用ロボット10は、その前部が持ち上げられた状態のまま前方に移動する。この時、前アーム部31の凸部37は、辺37aが斜めに形成されているため、第1の段部Xの角部に引っ掛かり難い。そのため、前アーム部31によって探査用ロボット10の前進が妨げられることがない。
【0076】
図10(A)は、探査用ロボット10の無限軌道20の前部が第1の段部Xに達した状態を示す側面図である。
図9(C)に示す状態から、探査用ロボット10が前方に移動することにより、
図10(A)に示すように、無限軌道20の前部が第1の段部Xの角部近傍に乗る。そうすると、探査用ロボット10は、無限軌道20の前部と後アーム部32によって支えられ、前アーム部31による支えが不要になる。
そこで、次の段差である第2の段部Yの乗り越えに備え、前アーム部31は、その先端が上方に持ち上げられる。
【0077】
図10(B)は、後アーム部32によって後部が持ち上げられた状態を示す側面図である。
図10(B)に示すように、後アーム部32の先端が地面を押す方向に、後アーム部32を回転させることにより、本体11の後部が持ち上げられる。この時、後アーム部32の先端に形成された凸部38が地面に当接し、後アーム部32と地面との滑りが抑制される。これにより、後アーム部32は、好適に探査用ロボット10を支えることができ、探査用ロボット10は、第1の段部Xを乗り越え易くなる。そして、探査用ロボット10は、無限軌道20が駆動されることにより、第1の段部Xの角部を登るように走行する。
【0078】
図11(A)は、探査用ロボット10の前アーム部31が第2の段部Yに当てられた状態を示す側面図である。
図11(A)に示すように、前アーム部31は、凸部37が第2の段部Yの角部近傍に当接するように、前方に展開される。これにより、探査用ロボット10は、前アーム部31によって好適に支持される。そして、探査用ロボット10は、無限軌道20が駆動されて、第1の段部Xの角部を登り上がる。
【0079】
図11(B)は、無限軌道20の前部が第2の段部Yに達した状態を示す側面図である。
図11(B)に示すように、探査用ロボット10が前進することにより、無限軌道20の前部が第2の段部Yの角部に達する。そして、探査用ロボット10は、更に前進して、第1の段部Xの角部を乗り越える。
【0080】
図12(A)は、探査用ロボット10の後部が持ち上げられた状態を示す側面図である。
図12(A)に示すように、第1の段部Xを乗り越えた後、後アーム部32を下方に回動させることによって、後アーム部32で第1の段部が押されて、本体11の後部が持ち上げられる。探査用ロボット10は、後アーム部32によって後部が持ち上げられて、安定的に支持された状態で、無限軌道20が駆動されて、第2の段部Yの角部を乗り越えるように走行する。
【0081】
図12(B)は、第2の段部Yを乗り越えた後の状態を示す側面図である。
図12(B)に示すように、探査用ロボット10は第2の段部Yの角部を乗り越え、第2の段部Yの上に乗ることができる。そして、探査用ロボット10は、第1の段部X及び第2の段部Yを乗り越えた後、
図5(A)に示す如くアーム部30が収納されて、通常の走行状態に戻る。
【0082】
上述のように、アーム部30によって探査用ロボット10を安定的に支えることにより、探査用ロボット10は、段差等を乗り越えることが可能となる。そのため、災害発生時等に倒壊した家屋の内部や瓦礫が散乱した場所等を走行することができる探査用ロボット10の優れた走行性能が発揮される。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。