(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、ストローを備えた飲料容器では、ストローを使って容器内の内容液を飲みやすい構造になっている。しかし、このようなストローを備えた飲料容器においては、容器内の空気抜きの機能を備えつつ、蓋体を開く操作部のロック、アンロックの操作性の向上や、構造の簡素化、ストローの耐久性のさらなる向上が望まれる。
【0007】
本発明は、ストローを備えた飲料容器用栓体および飲料容器において、操作性向上、構造の簡素化およびストローの耐久性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上部に開口を有する容器本体の開口に取り付けられ、容器本体の内部に対する通気孔を有する栓本体と、栓本体を貫通する状態で栓本体に保持され、少なくとも栓本体から上方に突出する部分において弾性変形可能なストローと、栓本体にヒンジを介して開閉自在に取り付けられる蓋体と、蓋体を開く操作を行う操作部と、操作部による操作をロックおよびアンロックするためのスライド部と、を備える飲料容器用栓体である。この飲料容器用栓体において、蓋体は、蓋体を閉じることで弾性変形したストローの復元力によって開く方向に付勢され、スライド部は、操作部の外側に被せられ、操作部に沿って上下方向にスライド可能に設けられ、操作部は、スライド部とともに
揺動せずに栓本体の径方向に進退動作可能に設けられる。
スライド部を上下方向にスライドさせてアンロック状態にして、スライド部とともに前記操作部を前記径方向の内側に押し込むことでストローの復元力によって蓋体が開くようになる。また、蓋体を閉じた際に蓋体の突出部によってストローの通路が閉塞されるとともに、ストローの突出部とは反対側の側面により通気孔の密閉が行われる。
【0009】
このような構成によれば、操作部の外側にスライド部が被せられ、これらが径方向に進退可能に設けられるため、操作部およびスライド部をセットとした機構が簡素化される。また、操作部およびスライド部が揺動せずに径方向に進退するため、揺動のような操作時の出っ張りは生じない。また、ストローの側面によって通気孔を密閉するため、通気孔を密閉する特別な機構を設ける必要がなくなる。
【0010】
上記飲料容器用栓体において、蓋体を閉じてストローの側面により通気孔の密閉を行う際、ストローの側面は鈍角に折り曲げられることが好ましい。ストローの折り曲げによる通気孔の密閉では、ストローの折り曲げが鈍角となって密閉する領域を広くできとともに、ストローが鋭角にならないため、蓋体の開閉によって折り曲げが繰り返されるストローへの負荷を軽減することができる。
【0011】
上記飲料容器用栓体において、ヒンジと蓋体との間に設けられる摺動抵抗部をさらに備えていてもよい。摺動抵抗部は、蓋体がストローの復元力によって開く際、蓋体が閉位置から90度を越えるまでの第1開度範囲では蓋体の回動に摺動抵抗を与えず、第1開度範囲を超えて全開になるまでの第2開度範囲では蓋体の回動に摺動抵抗を与えるように設けられる。また、ストローの復元力は、蓋体を閉位置から第2開度範囲まで到達させる力に設定され、摺動抵抗は、蓋体の自重によって蓋体が第2開度範囲から第1開度範囲へ移らない大きさに設定されることが好ましい。これにより、ストローの復元力によって蓋体が第2開度範囲まで開くと、蓋体を開いた状態で維持しておくことができる。
【0012】
上記飲料容器用栓体において、栓本体の上面には、ストローの突出位置からヒンジとは反対側に段差部が設けられていてもよい。段差部は、突出位置に近位で、突出位置よりも上に位置する第1段部と、突出位置に遠位で、第1段部よりも上に位置する第2段部と、第1段部と第2段部との間に設けられる傾斜部と、を有し、第1段部における傾斜部と近い位置に通気孔が設けられ、蓋体を閉じた際、弾性変形したストローが傾斜部から少なくとも通気孔にかけて連続して密着するとよい。これにより、ストローを折り曲げる際の負担を軽減しながら、ストローの折り曲げ部分を広い範囲で段差部に密着させて通気孔を適切に密閉することができる。
【0013】
上記飲料容器用栓体において、第1段部における通気孔の周囲領域は、周囲領域以外の領域に対して突出して設けられていることが好ましい。これにより、ストローの折り曲げ部分で通気孔を密閉する際、通気孔の周辺領域をストローに密着させやすくなり、通気孔の密閉性を高めることができる。また、通気孔の周辺領域によってストローの通路を閉塞する際の圧力を集中しやすくなる。
【0014】
上記飲料容器用栓体において、ストローには非対称形状のフランジ部分が設けられ、栓本体にはフランジ部分が嵌め込まれる凹部が設けられていることが好ましい。これにより、フランジ部分を凹部に嵌め込むことで、ストローを栓本体に適切な方向で取り付けることができる。
【0015】
上記飲料容器用栓体において、操作部は径方向の外側に付勢されており、蓋体が閉じている状態で操作部を径方向の内側に押し込むことで蓋体が僅かに開いた浮き上がり位置で一旦止まり、蓋体が浮き上がり位置で一旦止まっている状態で操作部の押し込みを解除することで蓋体が全開するように設けられていてもよい。これにより、蓋体を開く際、閉じた状態から浮き上がり位置まで開いて一旦止まり、これによって容器本体の内圧を下げることができる。
【0016】
上記飲料容器用栓体において、蓋体は係合部を有し、操作部は、上下方向に延在する第1部分と、第1部分の中央部から径方向の内側に延在する第2部分と、第1部分の上側に設けられ径方向の内側に向けて延出する上段爪部と、上段爪部と第2部分との間に設けられ径方向の外側に向けて延出する下段爪部と、を有していてもよい。この飲料容器用栓体において、蓋体が閉じ、操作部が径方向の外側に付勢されている状態では、係合部と下段爪部とが係合し、蓋体が閉じている状態で操作部を径方向の内側に押し込むと、係合部と下段爪部との係合が外れた後に係合部と上段爪部とが係合して蓋体が浮き上がり位置で一旦止まり、蓋体が浮き上がり位置で一旦止まっている状態で操作部の押し込みを解除すると、係合部と上段爪部との係合が外れて蓋体が全開する。これにより、上段爪部と下段爪部との位置関係を利用して蓋体の係合部との係合の位置を段階的に行い、操作部の押し込みと解除との動作によって、蓋体の浮き上がり位置での一旦停止の動作と、全開の動作とを行うことができる。
【0017】
上記飲料容器用栓体において、操作部の径方向への進退動作は、下段爪部の上面および第2部分の下面によってガイドされることが好ましい。これにより、操作部の径方向への進退動作を安定させることができるとともに、下段爪部および第2部分をガイドとして兼用でき、機構の簡素化を図ることができる。
【0018】
上記飲料容器用栓体において、第2部分は径方向に延在する長孔を有し、長孔に挿入されたピンによって操作部が栓本体に対して径方向に進退可能に支持されることが好ましい。これにより、操作部の動作安定性が高まる。
【0019】
本発明の一態様は、上部に開口を有する容器本体と、容器本体の開口に取り付けられる上記の飲料容器用栓体と、を備えた飲料容器である。このような飲料容器によれば、ストローを備えた飲料容器であっても蓋体の動作機構および容器本体の内圧低減の機構の簡素化と、ストローへの負担軽減とを図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ストローを備えた飲料容器用栓体および飲料容器において、操作性向上、構造の簡素化およびストローの耐久性向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0023】
(飲料容器の構成)
図1は、本実施形態に係る飲料容器の構成を例示する斜視図である。
図2(a)および(b)は、本実施形態に係る飲料容器用栓体を例示する斜視図である。
図2(a)には蓋体30が僅かに開いた状態が示され、
図2(b)には蓋体30が全開している状態が示される。
【0024】
本実施形態に係る飲料容器100は、上部に開口2aを有する筒型の容器本体2と、容器本体2の開口2aに取り付けられる飲料容器用栓体1とを備える。容器本体2は、例えばステンレスによる二重構造(例えば、真空断熱構造)であって底が閉じ、上部に開口2aが設けられた筒型に構成される。飲料は、容器本体2から飲料容器用栓体1を外した状態で、開口2aから容器本体2内に収容される。容器本体2が真空断熱構造であれば、収容した飲料の保冷や保温の性能を高めることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、容器本体2における筒の中心軸に沿った方向を上下方向、容器本体2の開口2aの側を上側(または上)、容器本体2の底側(開口2aとは反対側)を下側(または下)、容器本体2における筒の径方向で中心軸から遠い側を外側、近い側を内側、として説明する。また、後述する栓本体10の径方向は容器本体2における筒の径方向と同じである。
【0026】
(飲料容器用栓体の構成)
飲料容器用栓体1は、容器本体2の開口2aに取り付けられる栓本体10と、栓本体10を貫通するストロー20と、栓本体10に開閉自在に取り付けられる蓋体30と、蓋体30を開く操作を行う操作部40と、ロックおよびアンロックを行うスライド部50とを備える。
【0027】
栓本体10は、容器本体2の開口2aの周囲位置に取り付けられる環状体11と、環状体11の上側に設けられる上面部12とを有する。栓本体10は、例えば樹脂によって形成される。環状体11は、例えば容器本体2の上部に設けられた螺子部によって容器本体2の開口2aの周囲位置に螺合されている。なお、環状体11の容器本体2への取り付け方法は螺合以外に嵌合でもよいし、別部材を介して容器本体2に取り付けられていてもよい(中間部材を介在させた取り付けでもよい。)。
【0028】
上面部12は、環状体11の上側を覆うように設けられる。上面部12にはストロー20を容器本体2の内部まで貫通させるストロー孔20hが設けられる。また、上面部12には、容器本体2の内部と外部との連通させる通気孔10hが設けられる。通気孔10hの直径は約0.5mm(ミリメートル)から1.5mm程度、好ましくは約1.0mmである。
【0029】
ストロー20は、栓本体10の上面部12に設けられたストロー孔20hを貫通する状態で栓本体10に保持される。ストロー20の少なくとも栓本体10から上方に突出する部分(飲み口部分21)は弾性変形可能な材料で設けられる。弾性変形可能な材料としては、例えばシリコーン樹脂である。栓本体10を貫通するストロー20は容器本体2の底付近まで設けられる。
【0030】
栓本体10の例えば上面部12には蓋体30の回動動作の軸となるヒンジ30aが設けられている。蓋体30は、ストロー20の飲み口部分21が弾性変形した際の復元力によって開く方向へ付勢される。すなわち、本実施形態では、蓋体30に別途のバネを設ける必要なく、ストロー20の復元力によって蓋体30に開く力を与える。
【0031】
操作部40は栓本体10の径方向に進退動作可能に設けられる。すなわち、操作部40は揺動型ではなく、押し込みボタン型である。蓋体30が閉じている状態で操作部40を径方向の内側に押し込むことで蓋体30を開き始めることができる。操作部40は、操作部40と栓本体10との間に組み込まれたバネ45(
図3参照)によって径方向の外側へ付勢されている。したがって、操作部40を押し込んだ指を離す(解除する)と、バネ45の付勢力によって操作部40は外側に戻される。
【0032】
スライド部50は、操作部40による操作をロックおよびアンロックするためのロック機構である。スライド部50は、操作部40の外側に被せられ、操作部40に沿って上下方向にスライド可能に設けられる。スライド部50の外形は操作部40の外形とほぼ同じで上下方向に僅かに短くなっている。同等の外形にすることで、スライド部50と操作部40との見た目の一体感を得ることができる。
【0033】
例えば、スライド部50を下にスライドさせるとロック状態となり、操作部40の押し込み動作を禁止することができる。一方、スライド部50を例えば上にスライドさせるとアンロック状態となり、操作部40の押し込み動作を許すことができる。なお、スライド部50の上下位置とロックおよびアンロックの関係は上記と逆でもよい。本実施形態では、スライド部50を下にするとロック状態、上にするとアンロック状態として説明する。
【0034】
(スライド部および操作部の動作)
図3(a)および(b)は、スライド部および操作部の動作を例示する断面図である。
図3(a)にはロック状態が示され、
図3(b)にはアンロック状態が示される。
図4(a)および(b)は、スライド部および操作部の構成を例示する斜視図である。
図4(a)には分解斜視図が示され、
図4(b)にはスライド部50および操作部40の斜視図が示される。
【0035】
操作部40は、上下方向に延在する第1部分41と、第1部分の中央部から径方向の内側に延在する第2部分42と、蓋体30の係合部と係合する爪部43とを有する。第2部分42には径方向に延在する長孔42hが設けられており、長孔42hに挿入されるピン10pによって操作部40が栓本体10に対して径方向に進退可能に支持される。
【0036】
操作部40の第2部分42と栓本体10との間にはバネ45が組み込まれる。このバネ45によって操作部40を径方向の外側へ付勢する。操作部40の外側へ向かう位置は、長孔42hの端部にピン10pが当接することで規制される。操作部40の中央付近の動きは長孔42hおよびピン10pによって長孔42hの延在方向にガイドされるため、操作部40の径方向への進退動作が安定する。
【0037】
スライド部50は、操作部40の第1部分41の外側に被せられる。スライド部50には一対の突出片50aが設けられ、この一対の突出片50aが操作部40の第1部分41を抱え込むように嵌め込まれる。第1部分41の突出片50aが嵌め込まれる位置には上下方向に凹部41aが設けられ、凹部41aの上下方向の長さの範囲内で突出片50aが移動可能となっている。これにより、スライド部50が操作部40の第1部分41の外側で上下方向にスライド可能となる。なお、スライド部50の上下動作において所定の位置で抵抗感を与えることでスライド部50の上の位置(アンロック位置)や下の位置(ロック位置)を固定できるようにしてもよい。
【0038】
操作部40およびスライド部50を栓本体10に組み付けた状態で、栓本体10におけるスライド部50の突出片50aと向かい合う位置に凸部10aが設けられる。凸部10aは、スライド部50が下の位置(ロック位置)にあるときだけ突出片50aと対向し、スライド部50が上の位置(アンロック位置)にあるときには突出片50aと対向しないようになっている。したがって、スライド部50を下の位置にした状態でスライド部50とともに操作部40を押し込もうとすると、突出片50aが凸部10aに当たり、押し込み動作を阻止することができる(ロック状態)。一方、スライド部50を上の位置にした状態でスライド部50とともに操作部40を押し込むと、突出片50aが凸部10aと当たらず、押し込み動作が可能となる(アンロック状態)。
【0039】
このように、本実施形態では、スライド部50が操作部40の外側に被せられ、操作部40およびスライド部50が一緒に径方向に進退動作可能になっていることで、揺動のような操作時の出っ張りが発生しない。また、ロック・アンロック、蓋体30の開き動作の操作ボタンが外観上一体的に構成されるため、構成の簡素化および見た目のシンプルさを得ることができる。
【0040】
(ストローの状態)
図5(a)および(b)は、ストローの状態を説明する断面図である。
図5(a)には蓋体30が開いている状態が示され、
図5(b)には蓋体30が閉まっている状態が示される。
ストロー20は、栓本体10から上方に突出する飲み口部分21と、栓本体10の上面部12に設けられるストロー孔20hから容器本体2に挿入される挿入部分22と、飲み口部分21と挿入部分22との間に設けられるフランジ部分23とを有する。
【0041】
図5(a)に示すように、蓋体30が開いている状態ではストロー20の飲み口部分21は立ち上がっている。飲み口部分21は、上下方向に対してヒンジ30aとは反対側に先端が向くように予め角度が設けられている。これにより、利用者がストロー20の飲み口部分21を口で咥えやすくなる。
【0042】
フランジ部分23は、ストロー20を栓本体10の下側からストロー孔20hに通した際に抜けないようにするための止め部分となる。フランジ部分23の外形は上下方向にみて非対称である。栓本体10のフランジ部分23と対応する位置にはフランジ部分23の外形に合わせた凹部15が設けられる。
【0043】
フランジ部分23が凹部15に嵌め込まれることでストロー20の位置が固定される。この際、フランジ部分23が非対称形状になっているため、ストロー20の飲み口部分21の向きを適切な方向で(ヒンジ30aとは反対側に向くように)取り付けることができる。
【0044】
飲料容器100を洗浄する場合など、栓本体10からストロー20を外すことができる。本実施形態では、ストロー20の復元力を利用して蓋体30を開くことから、ストロー20の飲み口部分21の向きは重要である。外したストロー20を再び装着する際、フランジ部分23が凹部15に対して決まった位置で嵌め込まれることから、ストロー20の飲み口部分21の向きを間違えることがなく、常に適切な方向で装着することが可能となる。
【0045】
栓本体10の上面部12には、ストロー20の突出位置12aからヒンジ30aとは反対側に段差部120が設けられる。段差部120は、ストロー20の突出位置12aに近位で、突出位置12aよりも上に位置する第1段部121と、突出位置12aに遠位で、第1段部121よりも上に位置する第2段部122と、第1段部121と第2段部122との間に設けられる傾斜部123とを有する。
【0046】
第1段部121の下側には空間が設けられる。この空間が設けられることで、栓本体10を樹脂で成形する場合、第1段部121に成形時のヒケが発生することを抑制できる。第2段部122と傾斜部123との下側の空間には、操作部40の第2部分42が入り込み、バネ45が組み込まれる。
【0047】
図5(b)に示すように、蓋体30を閉じると、蓋体30に設けられた突出部31によってストロー20が押し倒され、蓋体30と栓本体10の上面部12との間でストロー20が弾性変形して折り曲げられた状態で収納される。この際、ストロー20の突出部31とは反対側の側面20aは、段差部120の傾斜部123から少なくとも通気孔10hにかけて連続して密着するようになる。これにより、ストロー20の折り曲げ部分を広い範囲で段差部120に密着させて通気孔10hを適切に密閉することができる。また、蓋体30を閉じた際の通気孔10hの密閉をストロー20の側面20aで行うため、通気孔10hを密閉するために別途の機構を設ける必要はなく、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0048】
また、突出部31は蓋体30を閉じた際に通気孔10hと対向する位置に設けられる。このため、蓋体30を閉じると、突出部31と第1段部121との間にストロー20が挟み込まれ、ストロー20の通路が閉塞される。
【0049】
通気孔10hは、第1段部121における傾斜部123と近い位置に設けられる。これにより、傾斜部123と第1段部121とで構成される段差部120の凹型となる部分の中央付近に通気孔10hを配置でき、ストロー20の側面20aを凸型にして密着させることができる。
【0050】
また、第1段部121における通気孔10hの周辺領域は、周辺領域以外の領域に対して僅かに突出していることが好ましい。これにより、ストロー20の折り曲げ部分で通気孔10hを密閉する際、通気孔10hの周辺領域をストロー20に密着させやすくなり、通気孔10hの密閉性を高めることができる。また、ストロー20の通路を閉塞する際の圧力を集中しやすくなる。
【0051】
(ストローの状態)
図6は、蓋体を閉じた際のストローの状態を説明する断面図である。
本実施形態では、蓋体30を閉じた際に蓋体30の突出部31によってストロー20の通路が閉塞されるとともに、ストロー20の突出部31とは反対側の側面20aによって通気孔10hの密閉が行われる。この際、ストロー20の突出部31とは反対側の側面20aは、鈍角に折り曲げられる。
【0052】
ここで、ストロー20の側面20aが鈍角とは、湾曲するストロー20において、突出部31が接触する位置とは反対側の側面20aの位置をB点(
図5参照)、B点に対してストロー20の側面20aにおける一方側の支持点(または変曲点)をA点(
図5参照)、B点に対してストロー20の側面20aにおける他方側の支持点(または変曲点)をC点(
図5参照)とした場合、∠ABC(
図5参照)の劣角が鈍角になっていることを言う。ストロー20が湾曲した際、側面20aのB点を中心として通気孔10hを塞ぐことになる。
【0053】
このように、折り曲げられたストロー20の側面20aが鈍角になっていることで、ストロー20の側面20aが段差部120に沿って広い範囲で密着しやすくなり、通気孔10hの密閉性を高めることができる。また、ストロー20を折り曲げた際に鋭角にならないため、ストロー20の折れ曲がりのクセを付きにくくすることができるとともに、蓋体30の開閉によって折り曲げが繰り返されるストロー20への負荷を軽減でき、ストロー20の耐久性を高めることが可能となる。
【0054】
(操作部および蓋体の係合)
本実施形態に係る飲料容器用栓体1において、蓋体30はヒンジ30aとは反対側に設けられる係合部32を有する。係合部32は環状体11の縁部分に設けられる棒状の部材である。係合部32と係合する相手方となる爪部43は操作部40に設けられる。爪部43は、上段爪部431と下段爪部432とを有する。
【0055】
上段爪部431は、第1部分41の上側に設けられ径方向の内側に向けて延出する。下段爪部432は、上段爪部431と第2部分42との間に設けられ径方向の外側に向けて延出する。つまり、上段爪部431と下段爪部432とは、互いに段違いで向かい合うように設けられる。蓋体30の係合部32は、蓋体30の回動の角度に応じて上段爪部431および下段爪部432のいずれかと係合することになる。
【0056】
このような上段爪部431と下段爪部432との位置関係を利用して、蓋体30の係合部32との係合の位置を段階的に行い、操作部40の押し込み動作と、解除(戻し)の動作とによって、蓋体30の開動作の一旦停止と、全開の動作とを行うことができる。なお、蓋体30の動作の詳細については後述する。
【0057】
また、操作部40の径方向への進退動作は、下段爪部432の上面および第2部分42の下面によってガイドされる。すなわち、第2部分42は段差部120の下の空間で径方向に進退動作するが、この際、下段爪部432の上面と、第2部分42の下面とが段差部120の下の空間内で径方向に摺動することになる。これにより、操作部40の径方向への進退動作を安定させることができるとともに、下段爪部432および第2部分42を進退動作のガイドとして兼用でき、機構の簡素化を図ることができる。
【0058】
(蓋体の開き動作)
次に、飲料容器用栓体1における蓋体30の開き動作について説明する。
図7から
図10は、蓋体の開き動作を例示する断面図である。
図7に示すように、蓋体30が閉じている状態(全閉状態)では、ストロー20の飲み口部分21が弾性変形して折り曲げられた状態で蓋体30と栓本体10との間に挟み込まれる。これにより、蓋体30の突出部31によってストロー20の通路が閉塞されるとともに、ストロー20の突出部31とは反対側の側面20aによって通気孔10hの密閉が行われる。したがって、蓋体30が閉じている状態では、容器本体2に収容した飲料が外に漏れることはない。
【0059】
蓋体30が全閉で、操作部40がバネ45の付勢力により径方向の外側へ付勢されている状態では、下段爪部432が蓋体30の係合部32と係合し、蓋体30の全閉状態を維持する。この状態でスライド部50を下に移動させるとロック状態となって、操作部40を押し込むことができなくなる。これにより、不用意に操作部40が押されて蓋体30が開いてしまうことを防止することができる。
【0060】
スライド部50を上に移動させるとアンロック状態となって、操作部40を押し込むことができるようになる。
図8に示すように、アンロック状態でスライド部50とともに操作部40を径方向の内側へ押し込むと、バネ45の付勢力に打ち勝って操作部40が内側へ移動する。これにより、下段爪部432と係合部32との係合が外れ、弾性変形しているストロー20の復元力によって蓋体30が開き始める。
【0061】
ここで、蓋体30が僅かに開いた位置で、操作部40の上段爪部431と係合部32とが係合することになる。すなわち、操作部40が内側に押し込まれることで下段爪部432と係合部32との係合は外れるものの、操作部40とともに内側に移動した上段爪部431と係合部32とが係合する状態となり、蓋体30の開き動作が一旦止まる。蓋体30の開き動作が一旦止まった位置を蓋体30の浮き上がり位置ということにする。
【0062】
図8には、蓋体30が浮き上がり位置で一旦止まっている状態が示される。蓋体30が浮き上がり位置になると、ストロー20の側面20aによって塞がれていた通気孔10hが開放されるとともに、蓋体30の突出部31で閉塞されていたストロー20の通路も開くことになる。これにより、容器本体2の内圧が外圧に対して高くなっていた場合、通気孔10hから空気抜きが行われ、容器本体2の内圧を下げることができる。また、ストロー20の通路の内圧が外圧に対して高くなっていた場合でも、ストロー20の通路が開くことで空気抜きが行われる。
【0063】
通気孔10hやストロー20からの空気抜きが行われる際、蓋体30は浮き上がり位置で止まっていることから、通気孔10hやストロー20から飲料が噴出して利用者にかかってしまうことを防止することができる。
【0064】
ここで、ストロー20の復元力を利用して蓋体30を開く構成では、なるべく復元力の強いストロー20を使用したい。しかし、復元力が強くなるほど蓋体30を開く力は強くなるが、ストロー20の跳ね返りも強くなる。もし、蓋体30が浮き上がり位置で一旦止まるような機構が設けられていないと、蓋体30が一気に開くとともにストロー20も勢いよく跳ね上がり、飲料の飛び散りや、内圧が高い場合にはストロー20からの空気抜きが急激に発生し、飲料の噴出を招きかねない。
【0065】
本実施形態のように、蓋体30が浮き上がり位置で一旦止まる構成にすると、復元力の強いストロー20を用いても飲料の飛び散りや噴出を効果的に防止することができる。
【0066】
また、先に説明したように、本実施形態では、ストロー20の折り曲げの角度が鈍角になっているため、飲み口部分21の上向き角度が低くなりやすい。そこで、蓋体30が浮き上がり位置で一旦止まった状態で、飲み口部分21の少なくとも開口が蓋体30の内側に隠れるようにしておくとよい。
【0067】
つまり、蓋体30の浮き上がり位置では、(1)ストロー20による通気孔10hの密閉が解除されること、(2)突出部31によるストロー20の通路の閉塞が解除されること、(3)飲み口部分21の少なくとも開口(ストロー20の通路の先端)が蓋体30の内側に隠れること、を満たす角度(位置)になるとよい。これにより、浮き上がり位置で空気抜きが行われ、ストロー20から飲料が噴出したとしても、蓋体30の内側(裏側)で跳ね返り、外部(使用者側)へ飛び出すことを防止できる。
【0068】
次に、
図9に示すように、スライド部50とともに押し込まれていた操作部40の押し込みを解除する(指を離す)。これにより、バネ45による付勢力で操作部40が外側へ移動する(押し戻される)。操作部40が外側へ移動することで上段爪部431と係合部32との係合が外れ、蓋体30はストロー20の復元力によって再度開き始める。
【0069】
そして、
図10に示すように、蓋体30はストロー20の復元力によって勢いよく開き、全開位置まで達する。蓋体30が開く動作において、蓋体30の所定の開度で摺動抵抗を変化させるようにするとよい。本実施形態では、ヒンジ30aと蓋体30との間に摺動抵抗部60が設けられる。摺動抵抗部60は、蓋体30の裏側に設けられる突出片61と、ヒンジ30aに設けられる凸部62とを有する。
【0070】
摺動抵抗部60は、蓋体30がストロー20の復元力によって開く際、蓋体30が閉位置から90度を越えるまでの第1開度範囲(
図10のP1参照)では蓋体30の回動に摺動抵抗を与えず、第1開度範囲P1を超えて全開になるまでの第2開度範囲(
図10のP1からP2参照)では蓋体30の回動に摺動抵抗を与えるように設けられる。
【0071】
すなわち、蓋体30が閉位置から第1開度範囲P1に至るまでは突出片61と凸部62とが接触せず、第1開度範囲P1を越えた位置から突出片61と凸部62との接触が発生して摺動抵抗が増加する。突出片61と凸部62との接触は、第2開度範囲P2の全域で行われてもよいし、第2開度範囲P2の一部で行われてもよい。
【0072】
摺動抵抗部60で発生する摺動抵抗の大きさは、蓋体30の自重によって蓋体30が第2開度範囲P2から第1開度範囲P1へ移らない大きさに設定されることが好ましい。これにより、第2開度範囲P2まで開いた蓋体30は、自重で閉じることがないため、飲料を飲む際に飲料容器100を傾けても蓋体30が自然に閉じてしまうことを防止することができる。
【0073】
また、ストロー20の復元力は、摺動抵抗部60での摺動抵抗増加が機能しても、蓋体30を閉位置から第2開度範囲P2まで一気に到達させる力に設定されることが好ましい。これにより、ストロー20の復元力によって蓋体30を開く際、第1開度範囲P1を越えて一気に第2開度範囲P2まで開かせることができる。
【0074】
蓋体30を閉じる場合には、蓋体30を手で閉じていく。蓋体30が第2開度範囲P2から第1開度範囲P1に入ると摺動抵抗部60による摺動抵抗がなく簡単に閉じることができる。また、蓋体30がストロー20に当たってからさらに閉じる際には、ストロー20の弾性変形によってストロー20が自然に折り曲げられ、通気孔10hの密閉と、ストロー20の閉塞が行われる。そして、係合部32が下段爪部432に係合するまで閉じることで、蓋体30の全閉状態が維持される。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、ストロー20を備えた飲料容器用栓体1および飲料容器100において、操作性向上、構造の簡素化およびストロー20の耐久性向上を図ることが可能になる。
【0076】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【解決手段】本発明の一態様は、容器本体の開口に取り付けられ、通気孔を有する栓本体と、栓本体を貫通して設けられる弾性変形可能なストローと、栓本体にヒンジを介して開閉自在に取り付けられる蓋体と、蓋体を開く操作を行う操作部と、操作部による操作をロックおよびアンロックするためのスライド部と、を備え、蓋体はストローの弾性変形からの復元力によって開く方向に付勢され、スライド部は操作部の外側に被せられ、操作部に沿って上下方向にスライド可能に設けられ、操作部はスライド部とともに
栓本体の径方向に進退動作可能に設けられ、蓋体を閉じた際に蓋体の突出部によってストローの通路が閉塞されるとともに、ストローの突出部とは反対側の側面により通気孔の密閉が行われる。