(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正手段は、前記露光量が少なめに設定されることによって顕在化し得る前記かごドアまたは前記乗車ドアの影の前記第2検知エリアでの利用者または物の検知への影響を低下させるための補正を前記第2領域に対して施す請求項2に記載のエレベータの利用者検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0014】
図1は、本実施形態のエレベータの利用者検知システムの一構成例を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかご11を例にして説明するが、複数台の乗りかご11でも同様の構成である。
【0015】
本実施形態のエレベータの利用者検知システムにおいては、乗りかご11のたとえば出入口上部にカメラ12が設置されている。たとえば、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中に、カメラ12のレンズ部分を直下方向または乗場15側もしくは乗りかご11内部側に所定の角度だけ傾けて設置されている。カメラ12は、車載カメラなどの小型の監視用カメラであり、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、1秒間に数コマ(たとえば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。カメラ12は、乗りかご11が各階の乗場15に到着したときに起動され、かごドア13付近を含めて撮影する。
【0016】
乗りかご11内の天井面のたとえば中心部には照明機器16が設置されている。乗りかご11内全体を照らすことができれば、天井面の中心部に限らず、照明機器16の設置場所はどこでも良い。照明機器16の個数やサイズについても任意である。
【0017】
また、各階の乗場15においては、乗りかご11の到着口に乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。つまり、かごドア13を戸開しているときには、乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉しているときには、乗場ドア14も戸閉している。
【0018】
カメラ12によって撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、
図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20は、カメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0019】
画像処理装置20は、各画像の中から人物(ここではエレベータの利用者)を抽出し、その人物の動きを追跡するなどして、乗車検知、乗降完了の検知、戸袋への引き込まれ検知などを実現し、必要に応じて警報発生等の安全措置を担う。なお、
図1の例では、画像処理装置20がエレベータ制御装置30とは独立して設けられているが、エレベータ制御装置30の中に画像処理装置20の機能が搭載されていても良い。
【0020】
画像処理装置20には、記憶部21と利用者検知部22とが備えられている。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存すると共に、利用者検知部22の処理に必要なデータを一時的に保持しておくためのバッファエリアを有する。
【0021】
利用者検知部22は、カメラ12によって撮影された画像を用いて、たとえばかごドア13付近にいる利用者を検知する。利用者検知部22は、機能的に分けると、輝度補正部22aおよび解析処理部22bで構成されている。
【0022】
ここで、利用者検知部22の機能、より詳しくは、輝度補正部22aおよび解析処理部22bの機能についての理解を助けるために、第1に、
図2を参照して、利用者検知部22が画像に基づいて利用者または物の有無を検知するために設定される検知エリアについて説明し、第2に、
図3を参照して、この画像を撮像するカメラ12の露光制御がどのように行われるかについて説明する。なお、ここでいう「物」とは、たとえば、利用者の衣服や荷物、さらには車椅子などの移動体を含む。
【0023】
図2は、ドア(13、14)が全開状態の場合に設定される検知エリア(E1、E2)の一例を示している。
【0024】
乗りかご11側には、かごドア13の開閉をガイドするためのかごシル13aが設けられている。また、乗場15側には、乗場ドア14の開閉をガイドするための乗場シル14aが設けられている。戸閉するドア(13、14)に利用者や物が挟まれることを防止するために、第1に、かごシル13a上または乗場シル14a上における利用者や物の有無を検知するための第1検知エリアE1が当該かごシル13aおよび乗場シル14aを包含する領域に設けられる。
【0025】
また、戸開してからの経過時間が戸閉を開始すべき所定時間を経過しても、乗場15に利用者が残っている場合、ドア(13、14)の戸開時間を延長したり、戸閉を開始した後、乗場に利用者が現れた場合、戸閉を中断して再戸開したりするために、第2に、乗りかご11に乗車する意思がある利用者の有無を検知するための第2検知エリアE2が乗場15側の所定の領域に設けられる。いうまでもないが、カメラ12の撮像範囲は、第1検知エリアE1および第2検知エリアE2を含むように設定される。
【0026】
解析処理部22bは、カメラ12によって撮像された画像中の当該第1検知エリアE1および第2検知エリアに対応する領域に対して解析処理を施し、利用者や物の有無を検知する。なお、解析処理部22bが適用する、第1検知エリアE1において利用者や物の有無を検知するための解析手法と、第2検知エリアE2において利用者や物の有無を検知するための解析手法とは異なり得る。つまり、解析処理部22bは、複数種の解析手法を備え得る。たとえば、解析処理部22bは、画像中の第1検知エリアE1に対応する領域については、利用者や物が存在するか否かを検知し、一方、画像中の第2検知エリアE2に対応する領域については、さらに、その動きを追跡し、乗りかご11に乗車する意思がある利用者か否かまで検知するようにしてもよい。画像の解析手法については、特定の手法に限定されず、既知の様々な手法を適用することができる。解析処理部22bの検知結果は、後述するエレベータ制御装置30へ伝達され、エレベータ制御装置30による制御処理(主に、戸開閉制御処理)に反映される。
【0027】
なお、検知エリア(E1、E2)の横幅(ドア[13、14]の移動方向の幅)は、ドア(13、14)の開量と一致するように変化する。つまり、
図2に示すドア(13、14)が全開状態の場合における検知エリア(E1、E2)の横幅は、出入口(間口)の横幅とほぼ同じ距離であり、ドア(13、14)の戸閉に伴い、その距離はドア(13、14)の開口部分の距離と同期的に小さくなっていく。この点については、乗りかご11が片開きタイプであっても2枚戸両開きタイプであっても同様である。
【0028】
また、
図3は、ドア(13、14)が全開状態の場合にカメラ12によって撮像された画像の一例を示している。
【0029】
前述したように、乗りかご11内の天井面のたとえば中心部には照明機器16が設置されている。また、ドア(13、14)が戸開したことによって露出された状態にあるシル(13a、14b)は、一般的に、この照明機器16からの照明光を反射させ易い。
図3は、シル(13a、14b)からの反射光によって、いわゆる白飛びが画像に発生した様子を示している。
【0030】
このような白飛びが発生している画像からは、シル(13a、14a)を包含する領域に設けられる第1検知エリアE1での利用者や物の検知が行えなくなってしまう可能性があるだけでなく、乗場15側の所定の領域に設けられる第2検知エリアE2での利用者や物の検知が行えなくなってしまう可能性がある。
【0031】
そこで、本実施形態のエレベータの利用者検知システムにおいては、第1に、このような白飛びが発生しないように、カメラ12の露光制御を暗めに行っておく。つまり、露光量を少なめに設定する。
【0032】
続いて、利用者検知部22の機能、より詳しくは、輝度補正部22aおよび解析処理部22bの機能についての理解を助けるために、さらに、
図4および
図5を参照して、ドア(13、14)の戸閉に伴って乗場15に現れるドア(13、14)の影(以下、ドア影と称する)が、乗場15側の所定の領域に設けられる第2検知エリアE2での利用者や物の検知に及ぼす影響について説明する。
【0033】
図4は、乗りかご11内の天井面の中心部に照明機器16が設置されている場合におけるドア影の出来方を説明するための図であり、(a)は、ドア(13、14)が全開状態の場合を示し、(b)は、ドア(13、14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分以上の場合を示し、(c)は、ドア(13,14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分未満の場合を示している。なお、ここでは、乗りかご11が片開きタイプである場合を想定している。
【0034】
ドア(13、14)が全開状態の場合、ドア(13、14)は戸袋に収納されているので、
図4(a)に示すように、ドア影は出来ない。一方、ドア(13、14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分以上の場合、
図4(b)に示すように、照明機器16とドア(13,14)の戸当たり側の一端部(図中の点M)とを結ぶ直線によって定義される領域R1にドア影が出来る。同様に、ドア(13、14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分未満の場合、
図4(c)に示すように、照明機器16とドア(13、14)の戸当たり側の一端部(図中の点N)とを結ぶ直線によって定義される領域R2にドア影が出来る。
【0035】
なお、
図4では、照明機器16が乗りかご11内の天井面の中心部に設置されている場合を想定したが、照明機器16が異なる位置に設置された場合においても、
図4(a)〜(c)に示した場合と同様、ドア(13、14)が全開状態の場合にはドア影は出来ず、一方、ドア(13、14)の戸閉時には、照明機器16とドア(13、14)の戸当たり側の一端部とを結ぶ直線によって定義される領域にドア影が出来ることになる。
【0036】
また、
図4では、照明機器16が1つである場合を想定したが、照明機器16が乗りかご11内に複数設置される場合においても、ドア(13、14)が全開状態の場合には
図4(a)に示した場合と同様にドア影は出来ない。一方、ドア(13、14)の戸閉時には、各照明機器16とドア(13、14)の戸当たり側の一端部とを結ぶ直線によってそれぞれ定義される複数の領域にドア影が出来ることになる。
【0037】
図5は、
図2を参照して説明した第2検知エリアE2と、
図4を参照して説明したドア影との関係性を説明するための図である。つまり、ここでも、乗りかご11が片開きタイプである場合を想定しており、
図4と同様に、(a)は、ドア(13、14)が全開状態の場合を示し、(b)は、ドア(13、14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分以上の場合を示し、(c)は、ドア(13、14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分未満の場合を示している。
【0038】
ドア(13、14)が全開状態の場合、
図4(a)において説明したように、ドア影は出来ないので、
図5(a)に示すように、第2検知エリアE2内にドア影が映り込むことはない。
【0039】
ドア(13、14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分以上の場合、
図4(b)において説明したように、領域R1にドア影は出来るものの、第2検知エリアE2もドア(13、14)の開量に合わせて小さく変化しているので、
図5(b)に示すように、第2検知エリアE2内にドア影が映り込むことはない。
【0040】
一方、ドア(13、14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分未満の場合、
図4(c)において説明したように、領域R2にドア影が出来るため、ドア影の一部が第2検知エリアE2に現れる。なお、照明機器16の設置状況によっては、ドア(13、14)の開量がドア(13、14)の横幅の半分以上の場合においても、ドア影の一部が第2検知エリアE2に現れる可能性がある。
【0041】
カメラ12によって撮像された画像中において、ドア影の一部が第2検知エリアE2に顕著に現れると、それが利用者や物と誤検知される可能性がある。なるべく影が目立たないように画像を撮像するためには、カメラ12の露光制御は、明るめに行うことが好ましい。つまり、露光量を多めに設定することが好ましい。
【0042】
しかしながら、そうすると、
図3を参照して説明したように、シル(13a、14b)からの反射光による白飛びが画像に発生しかねず、第1検知エリアE1だけでなく、第2検知エリアE2においても、利用者や物の検知が行えなくなってしまう可能性がある。そのため、前述したように、本実施形態のエレベータの利用者検知システムにおいては、画像の撮像時における露光量を少なめに設定する。一方で、露光量が少ないと、画像中の影は顕在化する可能性がある。
【0043】
そこで、本実施形態のエレベータの利用者検知システムにおいては、第2に、カメラ12によって撮像された画像中の第2検知エリアE2に対応する領域について、利用者や物の有無を検知するための解析処理の前処理として、映り込んでいる可能性のあるドア影の一部を目立たないようにすることを目的とした補正処理を実行する。
【0044】
具体的には、輝度補正部22aが、カメラ12によって撮像された画像中の第2検知エリアE2に対応する領域の画素を対象として、
図6に示すように、輝度の低い画素ほどその輝度が上がるように、つまり、黒みが濃くかかった部分ほど白みが加わるように、補正処理を実行する。
図6中、P1〜P8は、それぞれ補正前の画素を示し、かつ、その輝度が、P1<P2<…<P8であることを示している。一方、P1’〜P8’は、それぞれP1〜P8の補正後の画素を示している。
図6に示すような、輝度の低い画素ほどその輝度が上がるようにする補正は、たとえばガンマ補正によって実現することができる。
【0045】
輝度補正部22aが実行する補正処理によって、仮に、カメラ12によって撮像された画像中の第2検知エリアE2に対応する領域にドア影の一部が映り込んでおり、かつ、露光制御が暗めに行われていることによって、当該ドア影の一部が顕著に現れてしまっていたとしても、当該ドア影を目立たないようにすることができる。つまり、解析処理部22bが実行する利用者や物の検知に及ぼすドア影の影響を低下させることができる。
【0046】
図7は、輝度補正部22aによる補正処理の効果の一例を示す図である。
【0047】
たとえば、
図5を参照して説明したように、
図5(c)の状態でカメラ12によって撮像された画像中の第2検知エリアE2に対応する領域には、ドア影の一部が映り込む。
図7(a)のR2aは、画像中の第2検知エリアE2に対応する領域に映り込んだドア影の一部であって、輝度補正部22aによる補正前の状態を示している。画像は、露光量をあえて少なめにして撮像されているので、ドア影の一部R2aは、当該画像中で顕在化している可能性がある。
【0048】
輝度補正部22aは、第2検知エリアE2に対応する領域の画素を対象として、輝度の低い画素ほどその輝度が上がるように、つまり、黒みが濃くかかった部分ほど白みが加わるように、補正処理を実行する。その結果、画像中で顕在化している状態、つまり、黒みが濃くかかった状態で画像中に現れていたドア影の一部は、当該画像中において目立たないように補正される。
図7(b)のR2a’ は、画像中の第2検知エリアE2に対応する領域に映り込んだドア影の一部であって、補正前よりも白みが加わった輝度補正部22aによる補正後の状態を示している。
【0049】
そして、解析処理部22bは、カメラ12によって撮像された画像中の第1検知エリアに対応する領域と、輝度補正部22aによって補正処理が施された第2検知エリアE2に対応する領域とに対して解析処理を施し、利用者や物の有無を検知する。
【0050】
もし、第1検知エリアに好適な露光制御が行われているカメラと、第2検知エリアに好適な露光制御が行われているカメラとの2台のカメラを使用することとした場合、コストアップは避けられない。また、1台のカメラで、第1検知エリアに好適な露光量で画像を撮像し、かつ、第2検知エリアに好適な露光量で画像を撮像するために、露光量の設定を交互に切り替えながら、たとえば単位時間当たり2倍の数量の画像を撮像するようにした場合も、コストアップを招くことになる。
【0051】
これに対して、本実施形態のエレベータの利用者検知システムにおいては、1台のカメラで、第1検知エリアに好適な露光量で画像を撮像するのみであり、この露光量の設定によってドア影の影響を受け得る第2検知エリアについては、補正処理によって、当該ドア影の影響を低下させることで、利用者や物の誤検知を防止するので、コストアップを招くことがない。つまり、本実施形態のエレベータの利用者検知システムは、異なる撮像条件(露光量)を要求する複数の検知エリア(E1、E2)を含む画像から利用者や物を低コストかつ高精度で検知することを可能とする。
【0052】
なお、
図1に示すエレベータ制御装置30は、乗場呼びやかご呼びなどの各種信号を送受信する。「乗場呼び」とは、各階の乗場15に設置された図示せぬ乗場呼び釦の操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。「かご呼び」とは、乗りかご11のかご室内に設けられた図示せぬ行先呼び釦の操作により登録される呼びの信号のことであり、行き先階の情報を含む。
【0053】
また、エレベータ制御装置30は、乗りかご11が乗場15に到着したときのドア(13、14)の戸開閉を制御する。より詳しくは、エレベータ制御装置30は、乗りかご11が乗場15に到着したときにドア(13、14)を戸開し、また、所定時間経過後に戸閉する。ただし、ドア(13、14)の戸閉動作中、利用者検知部22によって利用者が検知された場合には、エレベータ制御装置30は、戸閉動作を中断して、ドア(13、14)を戸開する。
【0054】
輝度補正部22aは、このエレベータ制御装置30から階床情報を受け取り、この階床情報に基づき、カメラ12によって撮像された画像中の第2検知エリアE2に対応する領域の輝度を補正するようにしてもよい。つまり、階床ごとに適用する補正値を変更するようにしてもよい。この場合、階床間での乗場15の明度差を吸収することができる。
【0055】
図8は、本実施形態のエレベータの利用者検知システムにおける戸開時の処理の流れを示すフローチャートである。
【0056】
乗りかご11が任意の階の乗場15に到着すると(S11:Yes)、エレベータ制御装置30は、ドア(13、14)を戸開して乗りかご11に乗車する利用者を待つ(S12)。
【0057】
このとき、乗りかご11のたとえば出入口上部に設置されたカメラ12によって乗場側の所定範囲とかご内の所定範囲が所定のフレームレート(例えば30コマ/秒)で撮影される。また、カメラ12の露光制御は、第1検知エリアE1に好適な露光量で画像が撮像されるように行われている。画像処理装置20は、カメラ12で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存しながら(S13)、
図9を参照して後述する利用者検知処理をリアルタイムで実行する(S14)。
【0058】
利用者検知処理により、ドア(13、14)の戸開時に検知エリア(E1、E2)内で利用者や物の存在が検知されると(S15:Yes)、画像処理装置20からエレベータ制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。エレベータ制御装置30は、この利用者検知信号を受信することにより、ドア(13、14)の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する(S16)。
【0059】
より詳しくは、ドア(13、14)が全戸開状態になると、エレベータ制御装置30は戸開時間のカウント動作を開始し、所定期間(たとえば1分)分をカウントした時点で戸閉を行う。この間に利用者が検知され、利用者検知信号が送られてくると、エレベータ制御装置30はカウント動作を停止してカウント値をクリアする。これにより、上記所定期間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。
【0060】
なお、この間に新たな利用者が検知されると、再度カウント値がクリアされ、上記所定期間、ドア(13、14)の戸開状態が維持されることになる。ただし、上記所定期間に何度も利用者が来てしまうと、ドア(13、14)をいつまでも戸閉できない状況が続いてしまうので、許容期間(たとえば3分)を設けておき、この許容期間を経過した場合にドア(13、14)を強制的に戸閉することが好ましい。
【0061】
上記所定期間分のカウント動作が終了すると、エレベータ制御装置30はドア(13、14)を戸閉し、乗りかご11を目的階に向けて出発させる(S17)。
【0062】
図9は、実施形態のエレベータの利用者検知システムにおいて実行される利用者検知処理(
図8:S14)の流れを示すフローチャートである。
【0063】
まず、利用者検知処理の前処理として、輝度補正部22aが、カメラ12によって撮像された画像中の第2検知エリアE2に対応する領域を対象として、ドア影の影響を低下させるための輝度の補正処理を実行する(S21)。具体的には、輝度の低い画素ほどその輝度が上がるように、つまり、黒みが濃くかかった部分ほど白みが加わるように、補正処理を実行する。
【0064】
この輝度補正部22aによる輝度の補正処理が、カメラ12によって撮像された画像中の第2検知エリアE2に対応する領域に対して施された後、利用者検知処理の本処理として、解析処理部22bが、カメラ12によって撮像された画像中の第1検知エリアE1に対応する領域を対象とする利用者や物の検知処理(S22)と、第2検知エリアE2に対応する領域を対象とする利用者や物の検知処理(S23)とを実行する。第1検知エリアE1での検知処理(S22)と、第2検知エリアE2での検知処理(S23)とは、並行して実行してもよいし、実行順序が逆であってもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態のエレベータの利用者検知システムにおいては、異なる撮像条件を要求する複数の検知エリアを含む画像から利用者や物を低コストかつ高精度で検知することができる。
【0066】
ところで、以上では、カメラ12の露光制御を、第1検知エリアE1に好適な露光量で撮像されるように暗めに行っておき、補正処理によって、第2検知エリアE2におけるドア影の影響を低下させる例を説明した。これとは逆に、カメラ12の露光制御を、第2検知エリアE2におけるドア影の影響を低下させるように明るめに行っておき、補正処理によって、第1検知エリアE1に対応する領域において発生する可能性のある白飛びを除去するようにすることも可能である。白飛びを除去する補正処理は、高輝度領域の輝度を補正するための処理であって、たとえば、輝度の高い画素ほどその輝度が下がるように、つまり、
図6とは逆に、白みが濃くかかった部分ほど黒みが加わるように補正する処理である。輝度の高い画素ほどその輝度が下がるようにする補正も、たとえばガンマ補正によって実現することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。