(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図4を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明について、複数の表現が記載されることがある。複数の表現がされた構成要素及び説明は、記載されていない他の表現がされても良い。さらに、複数の表現がされない構成要素及び説明も、記載されていない他の表現がされても良い。
【0010】
図1は、本実施形態の乗客コンベア10を模式的に示す側面図である。本実施形態における乗客コンベア10は、例えば、エスカレータである。なお、乗客コンベア10は、いわゆる動く歩道(moving walkway)のような、他の乗客コンベアであっても良い。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の乗客コンベア10は、例えば、トラス11と、駆動輪12と、従動輪13と、モータ14と、減速機15と、駆動チェーン16と、複数の踏段17と、踏段チェーン18と、運転制御装置19とを備える。トラス11は、トラスフレームとも称され得る。なお、乗客コンベア10は、この例に限られない。
【0012】
駆動輪12及び従動輪13は、トラス11の内部に設けられる。例えば、駆動輪12は上階側に配置され、従動輪13は下階側に配置される。モータ14は、減速機15及び駆動チェーン16を介して駆動輪12を駆動させる。モータ14及び減速機15は、例えば、上部機械室に設けられる。
【0013】
例えば、駆動輪12と従動輪13との間に、無端状(環状)の踏段チェーン18が架け渡されている。複数の踏段17は、踏段チェーン18に取り付けられることで、駆動輪12と従動輪13との間で無端状に連結されている。
【0014】
モータ14は、駆動輪12を駆動させることで、踏段チェーン18を回転駆動させる。これにより、踏段チェーン18及び複数の踏段17が、駆動輪12と従動輪13との間を周回移動する。乗客コンベア10の利用者である乗客は、踏段17に乗り、乗客コンベア10により上階と下階との間で移動する。
【0015】
複数の踏段17はそれぞれ、フレーム17aと、前輪17bと、後輪17cと、クリート17dと、ライザー17eとを有する。フレーム17aに、前輪17b、後輪17c、クリート17d、及びライザー17eが取り付けられる。クリート17d及びライザー17eは、フレーム17aと一体に設けられても良い。
【0016】
前輪17bは、踏段チェーン18に取り付けられるとともに、トラス11の側部11aに設けられた前輪レールに転動可能に支持される。後輪17cは、トラス11の側部11aに設けられた後輪レールに転動可能に支持される。乗客は、クリート17dに乗ることができる。ライザー17eは、段差を形成する二つの踏段17のクリート17dの間を覆うように延びる。
【0017】
乗客コンベア10が下降方向に稼動する場合、複数の踏段17は、上階側乗降口21において進行方向に隣接する複数の踏段17同士が水平状にトラス11の内部から進出させられる。複数の踏段17は、上部遷移カーブにおいて隣接する二つの踏段17の間の段差を拡大するように階段状に遷移される。
【0018】
複数の踏段17は、中間傾斜部において階段状で下降させられる。複数の踏段17は、下部遷移カーブにおいて隣接する複数の踏段17の間の段差を縮小するように水平状に遷移される。そして、複数の踏段17は、下階側乗降口22において再び水平状となってトラス11の内部に進入させられる。
【0019】
複数の踏段17は、トラス11の内部に進入された後に上方に反転される。複数の踏段17は、帰路側を水平状で上昇させられ、再度反転されて上階側乗降口21においてトラス11の内部から進出させられる。
【0020】
上昇方向に稼動する乗客コンベア10では、複数の踏段17は、上述の動作とは逆の動作をさせられる。上階側乗降口21及び下階側乗降口22において、踏段17は、クリート17dを水平状として、トラス11の内部から進出させられ、又はトラス11の内部へ進入させられる。
【0021】
運転制御装置19は、例えばモータ14を制御する。運転制御装置19は、例えば、モータ14の駆動の開始及び停止と、モータ14の駆動速度及び駆動方向とを制御する。なお、運転制御装置19はこの例に限られない。
【0022】
図2は、第1の実施形態の調査システム30の構成を示すブロック図である。調査システム30は、例えば乗客コンベア10のリニューアル工事の前に、上述の乗客コンベア10のトラス11の少なくとも一部の形状を調査し、当該トラス11の形状のデータモデルを作成する。調査システム30は、調査装置31と、情報処理装置32とを備える。
図2は、情報処理装置32の構成を機能的に示している。
【0023】
調査装置31は、乗客コンベア10が設けられた建物又は設備に持ち込まれ、トラス11の少なくとも一部の形状を調査する。調査装置31は、制御装置41と、光学装置42と、照明装置43と、清掃装置44と、出力装置45とを有する。
【0024】
図3は、第1の実施形態の調査装置31を模式的に示す側面図である。
図4は、第1の実施形態の調査装置31とトラス11の一部とを模式的に示す正面図である。調査装置31は、調査時に、踏段17とともに周回移動する。
図3は、往路における調査装置31を示す。
図4は、帰路における調査装置31を示す。
【0025】
例えば
図3に示すように、調査装置31は、基台47をさらに有する。制御装置41、光学装置42、照明装置43、清掃装置44、及び出力装置45は、基台47に設けられる。基台47は、フレーム47aと、前輪47bと、後輪47cとを有する。
【0026】
踏段17の進行方向において、基台47のフレーム47aは、踏段17のフレーム17aと略同一の長さを有する。また、基台47の前輪47b及び後輪47cは、踏段17の前輪17b及び後輪17cと略同一の形状を有する。このため、基台47は、踏段17とともに無端状に連結されることができる。
【0027】
フレーム47aに、前輪47b、後輪47c、制御装置41、光学装置42、照明装置43、清掃装置44、及び出力装置45が取り付けられる。前輪47bは、踏段チェーン18に取り付けられることができるとともに、前輪レールに転動可能に支持されることができる。後輪47cは、後輪レールに転動可能に支持されることができる。
【0028】
図1のように調査装置31がトラス11の形状を調査する場合、基台47は、複数の踏段17のうち一つと交換される。なお、
図1は説明のため、往路における調査装置31と、帰路における調査装置31とを示す。
【0029】
基台47は、一つの踏段17の代わりに、踏段チェーン18に取り付けられる。これにより、基台47は、複数の踏段17とともに、駆動輪12と従動輪13との間で無端状に連結される。基台47は、複数の踏段17とともに、駆動輪12と従動輪13との間を周回移動する。言い換えると、基台47と複数の踏段17とは、踏段17の進行方向に無端状に並べられる。
【0030】
図4に示すように、基台47は、一つの踏段17と交換されることで、トラス11の内部に配置される。トラス11は、二つの側部11aと、底部11bとを有する。二つの側部11aは、踏段17の進行方向と略直交する方向(左右方向)に互いに離間しており、踏段17の進行方向に延びている。底部11bは、二つの側部11aの下端の間で延びている。
【0031】
トラス11の二つの側部11aはそれぞれ、前輪レール11cと、後輪レール11dと、複数の梁11eとを有する。前輪レール11cは、踏段17の前輪17bと、基台47の前輪47bとを支持する。後輪レール11dは、踏段17の後輪17cと、基台47の後輪47cとを支持する。梁11eは、種々の方向に延びており、例えば、縦梁及び横張を含む。梁11eは、例えば、前輪レール11c及び後輪レール11dを支持し、トラス11を補強する。踏段17の進行方向において、複数の梁11eが互いに連結され、又は互いに離間して、設けられている。
【0032】
トラス11の底部11bは、オイルパン11fを有する。オイルパン11fは、例えば、踏段17の進行方向において、当該踏段17が移動する範囲の略全域に設けられる。オイルパン11fは、例えば、踏段チェーン18及び他の部品の潤滑油を受けることができる。
【0033】
制御装置41は、光学装置42、照明装置43、清掃装置44、及び出力装置45を制御する。本実施形態において、乗客コンベア10の運転制御装置19、調査装置31の制御装置41、及び情報処理装置32は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)ROM(Read Only Memory)、及びHDD(Hard Disk Drive)若しくはSSD(Solid State Drive)のような補助記憶装置を有するコンピュータである。なお、運転制御装置19、制御装置41、及び情報処理装置32は、この例に限られない。
【0034】
光学装置42は、例えば、二つのカメラ42aを有する。二つのカメラ42aは、互いに反対方向に向いている。例えば、二つのカメラ42aは、踏段17の進行方向と直交する方向に向いている。
【0035】
二つのカメラ42aの受光部及びレンズは、トラス11の二つの側部11aに向いている。二つのカメラ42aは、二つの側部11aを撮影する。言い換えると、カメラ42aは、側部11aから光(反射光)を受けることで、当該側部11aの形状に係る情報である画像を得る。なお、カメラ42aは、側部11a及び底部11bを撮影可能な方向に向いていても良い。
【0036】
カメラ42aは、例えば、三次元カメラ又はステレオカメラと称されるカメラである。このため、カメラ42aは、当該カメラ42aの光軸方向(奥行き方向)における撮影対象の形状の情報を得ることができる。なお、カメラ42aは、二次元画像を撮影可能なカメラであっても良い。
【0037】
また、カメラ42aは、例えば、ビデオカメラ(カムコーダ)であり、動画を撮影する。また、カメラ42aは、デジタルビデオカメラ(デジタルカムコーダ)であり、撮影した画像(動画)のデジタルデータを出力する。なお、カメラ42aは、静止画を撮影するスチルカメラであっても良い。また、カメラ42aは、フィルムカメラ又はテープに動画を記録するカムコーダであっても良い。
【0038】
光学装置42は、一つのカメラ42aを有しても良い。カメラ42aは、二つの側部11aのうち一方を撮影しても良い。また、カメラ42aは、二つの側部11aを撮影可能な全天球カメラであっても良い。
【0039】
光学装置42は、カメラ42aに限らず、側部11aから光を受けることで側部11aの形状に係る情報を得る他の装置を有しても良い。例えば、光学装置42は、側部11aから反射したレーザ光を受けることで側部11aの形状に係る情報である寸法情報を得るレーザ測距計を有しても良い。このように、光学装置42は、光学的に側部11aの形状に係る情報を得る。なお、光学装置42が用いる光は、可視光に限らず、例えば、赤外線、紫外線、及びX線を含む。
【0040】
照明装置43は、例えば、発光ダイオード(LED)を有する。なお、照明装置43は、蛍光灯のような他の照明装置を有しても良い。照明装置43は、カメラ42aの光軸から離間した位置に配置され、側部11aを照らす。
【0041】
清掃装置44は、二つの吸引装置44aと、清掃ローラ44bとを有する。吸引装置44aは、側部11aにノズルを向け、側部11aからゴミを吸引する。すなわち、吸引装置44aは、側部11aを清掃する。
【0042】
図3に示すように、清掃ローラ44bは、回動可能に基台47のフレーム47aに支持される。
図4に示すように、清掃ローラ44bは、基台47(踏段17)の帰路において、オイルパン11fに近づくように回動する。清掃ローラ44bは、オイルパン11fに接触し、オイルパン11fを清掃する。
【0043】
清掃装置44は、吸引装置44a及び清掃ローラ44bに限らず、他の清掃装置を有しても良い。例えば、清掃装置44は、側部11aに気体を噴射することでゴミを吹き飛ばし、側部11aを清掃しても良い。
【0044】
出力装置45は、光学装置42が得た側部11aの形状に係る情報を、情報処理装置32に出力するための装置である。例えば、出力装置45は、通信インターフェースである。トラス11の調査中、制御装置41は、カメラ42aが撮影した画像のデジタルデータを補助記憶装置に記録する。トラス11の調査後、情報処理装置32は、出力装置45を介して、制御装置41の補助記憶装置に記録された側部11aの画像のデジタルデータを取得する。
【0045】
出力装置45は、リムーバブルメディア(removable media)の記録装置であっても良い。この場合、出力装置45は、カメラ42aが撮影した側部11aの画像のデジタルデータを、リムーバブルメディアに記録する。トラス11の調査後、情報処理装置32は、出力装置45から取り出されたリムーバブルメディアを読み込み、当該リムーバブルメディアに記録された側部11aの画像のデジタルデータを取得する。
【0046】
出力装置45は、無線通信装置であっても良い。この場合、出力装置45は、カメラ42aが撮影した側部11aの画像のデジタルデータを、例えば電磁波により、情報処理装置32に無線送信する。出力装置45と情報処理装置32とは、ネットワークを介して通信しても良い。
【0047】
図2に示す情報処理装置32は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、携帯情報端末(PDA)、又は他のコンピュータである。情報処理装置32は、情報取得部51と、モデル作成部52と、モデル出力部53とを備える。これら情報処理装置32の各機能は、例えば、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとで情報処理装置32の各種装置を動作させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0048】
情報取得部51は、出力装置45から、側部11aの画像のデジタルデータを取得する。例えば、情報取得部51は、情報処理装置32の通信インターフェース及び出力装置45を介して、制御装置41の補助記憶装置に記録された側部11aの画像のデジタルデータを取得する。情報取得部51は、出力装置45によりリムーバブルメディアに記録された側部11aの画像のデジタルデータを取得しても良いし、無線通信により出力装置45から側部11aの画像のデジタルデータを受信しても良い。このように、調査装置31と情報処理装置32との間における側部11aの画像のデジタルデータの授受は、調査装置31と情報処理装置32との間の通信によって行われても良いし、ユーザによるリムーバブルメディアの物理的な移動により行われても良い。
【0049】
モデル作成部52は、光学装置42が得たトラス11の側部11aの形状に係る情報に基づき、トラス11の側部11aの形状のデータモデルを作成する。本実施形態では、モデル作成部52は、側部11aの画像のデジタルデータから、側部11aの三次元CADのデータモデルを作成する。側部11aの三次元CADのデータモデルは、トラスの側部の形状のデータモデルの一例である。
【0050】
例えば、モデル作成部52は、側部11aの画像のデジタルデータを解析することで、側部11aの三次元寸法(座標系)を算出する。なお、側部11aの寸法の算出のために、カメラ42aの光軸方向における当該カメラ42aと側部11aとの間の距離、又は側部11aにおいて基準となる物体の寸法が、情報処理装置32のROM又は補助記憶装置に予め記憶されていても良い。モデル作成部52は、これらの情報と、側部11aの画像のデジタルデータとから、側部11aの三次元寸法を算出する。
【0051】
モデル作成部52は、側部11aの三次元寸法に基づき、側部11aの三次元CADのデータモデルを作成する。例えば、モデル作成部52は、算出された側部11aの座標系から、ベクトルデータである三次元CADのデータモデルを作成する。三次元CADのデータモデルは、少なくとも側部11aの三次元寸法の情報を含む。三次元CADのデータモデルは、色や表面粗さのような側部11aの属性の情報をさらに含んでも良い。
【0052】
側部11aの三次元CADのデータモデルは、例えば、前輪レール11c、後輪レール11d、及び複数の梁11eの三次元形状のモデルを含む。このため、側部11aの三次元CADのデータモデルは、複数の梁11eの形状、寸法、数、間隔、及び他の情報を含む。
【0053】
カメラ42aは、側部11a及び底部11bを撮影しても良い。この場合、モデル作成部52は、側部11a及び底部11bの三次元形状に基づき、側部11a及び底部11bの三次元CADのデータモデルを作成しても良い。
【0054】
三次元CADのデータモデルにおける側部11aの三次元寸法は、画像のデジタルデータから算出された側部11aの三次元寸法と異なっても良い。例えば、モデル作成部52は、ゴミや明度によって生じる側部11aの画像のデジタルデータのノイズを補正するように、側部11aの三次元CADのデータモデルを作成しても良い。
【0055】
モデル作成部52は、側部11aの二次元CADのデータモデルを作成しても良い。二次元CADのデータモデルも、トラスの側部の形状のデータモデルの一例である。また、モデル作成部52が作成する側部11aの形状のデータモデルは、CAD(computer−aided design)のソフトウェアで利用可能なデータモデルに限られない。
【0056】
モデル出力部53は、モデル作成部52が作成した側部11aの三次元CADのデータモデルを、CADのソフトウェアが読取及び編集可能なデータファイルとして出力する。ユーザ(オペレータ)は、情報処理装置32又は他の情報処理装置にインストールされたCADのソフトウェアにより、当該データファイルを用いて新設の乗客コンベア10を設計することができる。
【0057】
以下に、本実施形態の調査システム30による、トラス11の側部11aの形状の調査方法の一例が説明される。なお、調査システム30によるトラス11の側部11aの形状の調査方法は、以下の例に限られない。
【0058】
まず、
図1の運転制御装置19がモータ14を停止させることで、乗客コンベア10の運転が停止される。次に、作業者により、複数の踏段17のうち一つが、調査装置31の基台47と交換される。これにより、基台47は、複数の踏段17とともに無端状に連結される。
【0059】
次に、運転制御装置19がモータ14を駆動させることで、複数の踏段17及び調査装置31の基台47が周回移動する。運転制御装置19は、踏段17及び基台47を下降方向及び上昇方向のいずれに駆動させても良い。
【0060】
例えば、最初に基台47が周回移動する間、清掃装置44がトラス11の側部11aを清掃する。これにより、側部11a及びオイルパン11fのゴミが除去される。なお、基台47は、清掃装置44が側部11aを清掃している間、複数回に亘って周回移動しても良い。
【0061】
次に、基台47が再度周回移動する間、光学装置42の二つのカメラ42aが、トラス11の二つ(左右一対)の側部11aを撮影する。カメラ42aが側部11aを撮影している間、照明装置43は、側部11aを照らす。これにより、カメラ42aは、踏段17に覆われて暗いトラス11の内部を撮影することができる。
【0062】
光学装置42、照明装置43、及び清掃装置44は、周回毎に作業者の操作により起動及び停止されても良い。また、制御装置41が、光学装置42、照明装置43、及び清掃装置44を自動的に起動及び停止させても良い。
【0063】
また、踏段17(基台47)の進行方向において、吸引装置44aがカメラ42aの前方に位置するように、踏段17及び基台47が周回移動しても良い。この場合、一周目において、清掃装置44による側部11aの清掃と、カメラ42aによる側部11aの撮影とが、同時に行われても良い。この場合、吸引装置44aがカメラ42aの撮影よりも先に側部11aを清掃するため、カメラ42aは清掃された側部11aを撮影することができる。
【0064】
カメラ42aが側部11aを一周分撮影すると、運転制御装置19がモータ14を停止させることで、乗客コンベア10の運転が停止される。一周分には、踏段17及び基台47の往路及び帰路が含まれる。なお、基台47は、カメラ42aが側部11aを撮影している間、複数回に亘って周回移動しても良い。
【0065】
カメラ42aが側部11aを撮影している間、運転制御装置19がモータ14を一時停止させたり、踏段17及び基台47の移動方向又は移動速度を変化させたりしても良い。これにより、カメラ42aは側部11aの一部を、静止した状態で、低速移動しながら、又は繰り返し、撮影することができる。従って、カメラ42aは、より正確に側部11aを撮影することができる。例えば、正確な撮影が必要な個所において、基台47が停止させられ、カメラ42aが当該箇所をピンポイントで撮影することができる。
【0066】
次に、作業者により、調査装置31の基台47が、踏段17と交換される。以降、乗客コンベア10は、通常通り運転することができる。調査装置31は、例えば、情報処理装置32が設けられた場所まで持ち帰られる。
【0067】
次に、情報処理装置32の情報取得部51が、調査装置31の出力装置45から、カメラ42aが撮影した側部11aの画像のデジタルデータを取得する。例えば、情報処理装置32は、ケーブルを介して通信インターフェースである出力装置45に接続され、出力装置45から側部11aの画像のデジタルデータを取得する。
【0068】
出力装置45が無線通信装置である場合、出力装置45は、カメラ42aが側部11aを撮影している間に、無線通信により側部11aの画像のデジタルデータを情報処理装置32に送信しても良い。これにより、情報取得部51は、リアルタイムで側部11aの画像のデジタルデータを取得することができる。
【0069】
次に、モデル作成部52が、側部11aの画像のデジタルデータから、側部11aの三次元CADのデータモデルを作成する。この際、ユーザ(オペレータ)が、側部11aの三次元CADのデータモデルの作成に用いられる情報を、情報処理装置32の入力装置を用いてモデル作成部52に入力しても良い。また、当該情報は、情報処理装置32の補助記憶装置に予め記憶され、モデル作成部52に読み出されても良い。
【0070】
次に、モデル出力部53が、モデル作成部52が作成した側部11aの三次元CADのデータモデルをデータファイルとして出力する。この後、ユーザ(オペレータ)は、側部11aの三次元CADのデータモデルに属性を追加したり、側部11aの三次元CADのデータモデルを用いて新設の乗客コンベア10を設計したりすることができる。
【0071】
例えば、オペレータは、側部11aの三次元CADのデータモデルに含まれる前輪レール11c及び後輪レール11dに基づき、新設の踏段17を設計することができる。さらに、オペレータは、側部11aの三次元CADのデータモデルに含まれる複数の梁11eから、トラス11の耐荷重を算出したり、乗客コンベア10の種々の部品のレイアウトを設計したりすることができる。
【0072】
以上説明された第1の実施形態に係る乗客コンベア10の調査システム30において、光学装置42は、乗客コンベア10のトラス11の側部11aから光を受けることで当該トラス11の側部11aの形状に係る情報を得る。情報処理装置32は、光学装置42が得たトラス11の側部11aの形状に係る情報に基づき、トラス11の側部11aの形状のデータモデルを作成する。光学装置42は、踏段17とともに周回移動する基台47に取り付けられる。このため、本実施形態の調査システム30によれば、例えば複数の踏段17を解体することなく、トラス11の側部11aの形状のデータモデルを容易に作成することが可能となる。従って、トラス11の側部11aの形状を調査するための時間を短縮することが可能となるとともに、トラス11の側部11aの形状を設計図又はデータモデル上に復元する時間を短縮することが可能となる。
【0073】
例えば、乗客コンベア10の停止が許可される時間が限られている場合がある。この場合、トラス11を調査するために複数の踏段17を解体すると、許可された時間を超過してしまうことがある。しかし、本実施形態では、トラス11を調査するために複数の踏段17を解体する必要が無い。従って、本実施形態の調査システム30は、限られた時間で、トラス11の側部11aの形状のデータモデルを容易に作成することができる。
【0074】
光学装置42は、トラス11の側部11aを撮影するカメラ42aを有する。これにより、光学装置42は、トラス11の側の形状に係る情報を容易に得ることができる。さらに、例えば、ユーザ(オペレータ)は、カメラ42aが撮影したトラス11の側部11aの画像を確認することで、ゴミや異物のようなノイズによる光学装置42の調査ミスを修正することができる。
【0075】
照明装置43は、基台47に設けられ、トラス11の側部11aを照らす。これにより、カメラ42aがより正確にトラス11の側部11aを撮影することができる。従って、調査システムが、より正確にトラス11の側部11aの形状を調査することができる。
【0076】
清掃装置44は、基台47に設けられ、トラス11の側部11aを清掃する。例えば、清掃装置44がトラス11の側部11aを清掃した後に、光学装置42がトラス11の側部11aの形状に係る情報を得る。これにより、ゴミや異物のようなノイズによる光学装置42の調査ミスを抑制することができる。さらに、調査時にトラス11を清掃することで、乗客コンベア10のリニューアル工事におけるトラス11の清掃時間を短縮することが可能となる。
【0077】
本実施形態の基台47は、複数の踏段17のうち一つと交換されるが、踏段17のようなクリート及びライザーを有さない。このため、カメラ42aの撮影範囲が狭まることが抑制され、カメラ42aがより正確にトラス11の側部11aを撮影することができる。さらに、基台47のコストが増大することが抑制される。
【0078】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図5を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0079】
図5は、第2の実施形態に係る調査装置31を模式的に示す側面図である。
図5に示すように、第2の実施形態の基台47は、クリート47d及びライザー47eをさらに有する。クリート47d及びライザー47eは、フレーム47aに取り付けられる。なお、クリート47d及びライザー47eは、フレーム47aと一体に設けられても良い。基台47のクリート47d及びライザー47eは、踏段17のクリート17d及びライザー17eと略同一の形状を有する。
【0080】
図5の例において、制御装置41、光学装置42、照明装置43、清掃装置44、及び出力装置45は、例えば、クリート47dを介してフレーム47aに取り付けられる。なお、制御装置41、光学装置42、照明装置43、清掃装置44、及び出力装置45は、フレーム47aに直接的に取り付けられても良い。
【0081】
基台47が複数の踏段17とともに無端状に連結されると、乗客は、踏段17のクリート17dと同じように、基台47のクリート47dに乗ることができる。ライザー47eは、段差を形成する基台47のクリート47dと踏段17のクリート17dとの間を覆うように延びる。
【0082】
以上説明された第2の実施形態の乗客コンベア10の調査システム30において、基台47は、クリート47d及びライザー47eを有する。これにより、トラス11の側部11aの調査における安全性が向上する。さらに、トラス11の側部11aの調査時にも、乗客が乗客コンベア10を利用することができる。また、基台47を複数の踏段17のうち一つと交換することなく、基台47を複数の踏段17のうちの一つとして乗客コンベア10に恒久的に含めることが可能となる。
【0083】
以上の複数の実施形態において、調査装置31の基台47が、複数の踏段17のうち一つと交換される。しかし、複数の踏段17のうち少なくとも一つに制御装置41、光学装置42、照明装置43、清掃装置44、及び出力装置45が取り付けられても良い。この場合、当該踏段17が基台として利用される。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲の内容を付記する。
[1]
乗客コンベアの複数の踏段とともに無端状に連結され、当該複数の踏段とともに周回移動する基台と、
前記基台に設けられ、前記乗客コンベアのトラスの側部から光を受けることで当該トラスの側部の形状に係る情報を得る光学装置と、
前記光学装置が得た前記トラスの側部の形状に係る情報に基づき、前記トラスの側部の形状のデータモデルを作成する情報処理装置と、
を具備する乗客コンベアの調査システム。
[2]
前記光学装置は、前記トラスの側部を撮影するカメラを有する、[1]の乗客コンベアの調査システム。
[3]
前記基台に設けられ、前記トラスの側部を照らす照明装置、をさらに具備する[2]の乗客コンベアの調査システム。
[4]
前記基台に設けられ、前記トラスの側部を清掃する清掃装置、をさらに具備する[1]乃至[3]のいずれか一つの乗客コンベアの調査システム。
[5]
前記基台は、クリート及びライザーを有する、[1]乃至[4]のいずれか一つの乗客コンベアの調査システム。
【解決手段】一つの実施形態に係る乗客コンベアの調査システムは、基台と、光学装置と、情報処理装置と、を備える。前記基台は、乗客コンベアの複数の踏段とともに無端状に連結され、当該複数の踏段とともに周回移動する。前記光学装置は、前記基台に設けられ、前記乗客コンベアのトラスの側部から光を受けることで当該トラスの側部の形状に係る情報を得る。前記情報処理装置は、前記光学装置が得た前記トラスの側部の形状に係る情報に基づき、前記トラスの側部の形状のデータモデルを作成する。