特許第6881858号(P6881858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6881858
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20210524BHJP
   B66B 1/36 20060101ALI20210524BHJP
   B66B 3/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B66B3/00 P
   B66B1/36 B
   B66B3/02 V
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-232107(P2019-232107)
(22)【出願日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211502
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】小泉 卓
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−248624(JP,A)
【文献】 実開昭57−030265(JP,U)
【文献】 特開昭58−078977(JP,A)
【文献】 特開2015−044674(JP,A)
【文献】 特許第6611885(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの出入口付近の前記乗りかごに設置されたかごドアおよび前記乗場に設置された乗場ドアの戸開時に現れる各ドアの側面を撮影する撮影手段と、
前記乗りかごが任意の階の乗場に着床したときに、前記撮影手段により撮影された画像から前記乗りかごに設置されたかごドアの側面であって前記乗りかごの床面よりも上に設けられた第1のマーカと、前記乗場に設置された乗場ドアの側面であって前記乗場の床面よりも上に設けられた第2のマーカと、を検出するマーカ検出手段と、
前記マーカ検出手段により得られた第1のマーカと第2のマーカの位置情報に基づいて、前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との段差を検出する段差検出手段と、
を具備したエレベータシステム。
【請求項2】
前記第1のマーカは、前記乗りかごの床面から所定の高さに設けられており、
前記第2のマーカは、前記乗場の床面から前記所定の高さに設けられており、
前記段差検出手段は、前記乗場ドアの戸開方向における、前記第1のマーカと前記第2のマーカとの位置情報の差分に基づいて、前記段差を検出する、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記第1のマーカは、前記乗りかごの床面から所定の高さに設けられており、
前記第2のマーカは、前記乗場の床面から前記所定の高さに設けられており、
前記段差検出手段は、前記乗場ドア、前記かごドア、または前記かごドアと連動して戸開閉方向に移動するセイフティーシューのいずれかの縁方向における、前記第1のマーカと前記第2のマーカとの位置情報の差分に基づいて、前記段差を検出する、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記第1のマーカと前記第2のマーカとの位置情報の差分と前記段差の段差量とを対応付けたテーブルまたは関連式を有し、
前記段差検出手段は、前記テーブルまたは関連式より、前記第1のマーカと前記第2のマーカとの位置情報の差分の値に対応する前記段差の段差量を算出する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記段差検出手段によって検出された段差の有無を報知する報知手段をさらに具備した、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記報知手段は、
前記段差検出手段によって検出された段差量が予め設定された閾値以上のときに報知することを特徴とする、
請求項5に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記段差検出手段によって検出された段差に基づいて、前記乗りかごを前記乗場に着床させるときの位置を制御する位置制御手段をさらに具備した、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記テーブルまたは関連式は、階床ごとに予め設けられており、
前記段差検出手段は、前記乗りかごが着床した階床に対応するテーブルまたは関連式を参照して、当該階床ごとに段差を検出する、
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
乗りかごの出入口付近を撮影する撮影手段と、
前記乗りかごが任意の階の乗場に着床したときに、前記撮影手段により撮影された画像から前記乗りかごに設置されたかごドアに設けられた第1のマーカと、前記乗場に設置された乗場ドアに設けられた第2のマーカと、を検出するマーカ検出手段と、
前記マーカ検出手段により得られた第1のマーカと第2のマーカの位置情報に基づいて、前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との段差を検出する段差検出手段と、
を具備し、
前記第1のマーカと前記第2のマーカとは対をなして、前記出入口の左右側面に設けられており、
前記マーカ検出手段は、前記撮影手段により撮影された画像から、前記出入口の左側に設けられた第1のマーカと第2のマーカと、前記出入口の右側に設けられた第1のマーカと第2のマーカと、を検出し、
前記段差検出手段は、前記出入口の左側に設けられた第1のマーカと第2のマーカとの位置情報の差分と、前記出入口の右側に設けられた第1のマーカと第2のマーカとの位置情報の差分とに基づいて、前記段差を検出する、
エレベータシステム。
【請求項10】
乗りかごの出入口付近を撮影する撮影手段と、
前記乗りかごが任意の階の乗場に着床したときに、前記撮影手段により撮影された画像から前記乗りかごに設置されたかごドアに設けられた第1のマーカと、前記乗場に設置された乗場ドアに設けられた第2のマーカと、を検出するマーカ検出手段と、
前記マーカ検出手段により得られた第1のマーカと第2のマーカの位置情報に基づいて、前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との段差を検出する段差検出手段と、
を具備し、
前記マーカ検出手段による前記位置情報の差分を時間経過と共に計測し、前記差分が所定の閾値を超えた場合に戸開走行を検出する、戸開走行検出手段を更に具備する、
エレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごは、巻上機に架設されたロープを介して昇降路内を昇降動作する。このとき、エレベータの制御装置は、巻上機の回転に同期して出力されるエンコーダのパルス信号のカウント値から乗りかごの位置を検出しながら、乗りかごを所定の速度で目的階まで移動させている。
【0003】
ここで、乗りかごが目的階に到着したときに、乗りかごの床面を当該階の乗場の床面に正しく着床させるために、着床検出装置と着床検出板(以下、着検板と称す)が用いられる。着床検出装置は、例えば乗りかごの上部にガイドレールに向けて設置される。着検板は、例えばガイドレール上に各階の間隔毎に設置される。乗りかごの床面と乗場の床面のレベルが一致した時に着床検出装置が着検板を検出するように、予め着検板の設置位置が調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−44674号公報
【特許文献2】特開2007−145475号公報
【特許文献3】特許第6611885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、経年劣化や日中温度変化などを要因とするガイドレールや建物の歪みなどにより、着検板の設置位置が当初の調整位置からずれることがある。着検板が調整位置からずれていると、着床検出装置が着検板を検出したときのタイミングで乗りかごを着床させた場合に、乗りかごの床面と乗場の床面との間に段差が生じる。
【0006】
通常、保守員が定期点検などで乗りかごの床面と乗場の床面との間の段差の状態を目視でチェックし、そのときの段差量(位置ずれ量)に応じて着検板の設置位置を調整し直している。しかし、定期点検の度に、保守員が段差の状態を目視でチェックするのは手間がかかり、保守員に負担もかかる。一方、通常の運転中であっても、乗りかごの床面と乗場の床面との間に段差が生じていると、利用者の乗り降りに支障がでるため、段差の状態を簡単に検出することが望まれる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、乗りかごの床面と乗場の床面との間の段差を簡単に検出できるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、実施形態のエレベータシステムは、乗りかごの出入口付近の前記乗りかごに設置されたかごドアおよび前記乗場に設置された乗場ドアの戸開時に現れる各ドアの側面を撮影する撮影手段と、前記乗りかごが任意の階の乗場に着床したときに、前記撮影手段により撮影された画像から前記乗りかごに設置されたかごドアの側面であって前記乗りかごの床面よりも上に設けられた第1のマーカと、前記乗場に設置された乗場ドアの側面であって前記乗場の床面よりも上に設けられた第2のマーカと、を検出するマーカ検出手段と、前記マーカ検出手段により得られた第1のマーカと第2のマーカの位置情報に基づいて、前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との段差を検出する段差検出手段と、を具備したエレベータシステム。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は第1の実施形態に係るエレベータの全体構成を示す図である。
図2図2は同実施形態に係る乗りかご内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
図3図3は同実施形態に係る乗りかごの出入口付近のかご床面と乗場床面の構成を示す図である。
図4図4は同実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図である。
図5図5(a)は同実施形態に係るカメラが撮影した画像の一例を示す図である。図5(b)は図5(a)の状態における乗場と乗りかごの位置関係の図である。
図6図6(a)は同実施形態に係るカメラが撮影した画像の一例を示す図である。図6(b)は図6(a)の状態における乗場と乗りかごの位置関係の図である。
図7図7(a)は同実施形態に係るカメラが撮影した画像の一例を示す図である。図7(b)は図7(a)の状態における乗場と乗りかごの位置関係の図である。
図8図8は同実施形態に係るカメラが撮影した画像のマーカ間の距離ΔXと乗りかごと乗場の段差ΔTとを関連付けしたテーブルの図である。
図9図9は同実施形態に係るエレベータシステムの動作を示すフローチャートである。
図10図10は同実施形態に係るエレベータシステムの段差検出装置によって実行される段差検出処理の手順を示すフローチャートである。
図11】同実施形態の変形例に係るカメラが撮影した画像の一例を示す図である。
図12図12は第2の実施形態に係る乗りかごの出入口付近のかご床面と乗場床面の構成を示す図である。
図13図13は第2の実施形態に係るカメラが撮影した画像の一例を示す図である。
図14図14は第3の実施形態に係る、マーカ間差分ΔXの時間経過についてのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明において、略または実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータの全体構成を示す図であり、ここでは建物の中に1:1ローピング形式のエレベータが設置された例が示されている。
【0012】
エレベータの昇降路10内に乗りかご11とカウンタウエイト12が昇降可能に設けられている。メインロープ13は、巻上機14に(図示せぬシーブを介して)巻回されている。メインロープ13の一端に乗りかご11、他端にカウンタウエイト12が連結されている。
【0013】
巻上機14は、エレベータ制御装置15と共に建物の機械室16に設置されている。なお、機械室を無くしたマシンルームレスタイプのエレベータでは、巻上機14とエレベータ制御装置15が昇降路10内に設置される。
【0014】
エレベータ制御装置15は、巻上機14の駆動制御を含め、エレベータ全体の制御を行うものであり、「制御盤」と呼ばれることもある。エレベータ制御装置15からの駆動指示により巻上機14が駆動されると、メインロープ13を介して乗りかご11とカウンタウエイト12がつるべ式に昇降動作する。
【0015】
また、乗りかご11が各階の乗場21に着床したことを検出するために、着床検出装置22と着検板23が昇降路10内に設けられている。図1の例では、着床検出装置22が乗りかご11上に設けられ、着検板23が乗りかご11のガイドレール24に各階の間隔毎に設けられている。各階の乗場21において、着床検出装置22が着検板23を検出すると、着床検出装置22から着床検出信号がエレベータ制御装置15に送られる。
【0016】
エレベータ制御装置15は、この着床検出信号により乗りかご11が正しい位置に着床したものと判断し、乗りかご11の運転を停止してかごドア25を戸開する。各階の乗場21には乗場ドア26が設けられており、かごドア25と共に戸開する。なお、動力源(ドアモータ)はかごドア25側にあり、乗場ドア26はかごドア25に係合して一緒に戸開動作するように構成されている。
【0017】
ここで、例えば気温の変化などによってガイドレール24が歪み、このガイドレール24に取り付けられた着検板23の位置がずれることがある。着検板23の位置がずれていると、各階の乗場21で乗りかご11を正しく着床できないため、乗りかご11の床面と乗場21の床面との間に段差が生じる。「段差」とは、乗りかご11の昇降方向(垂直方向)のずれのことである。なお、乗りかご11の下に着床検出装置22が設けられ、各階毎に昇降路10の壁などに着検板23が設けられた構成であっても、建物の歪みなどによって乗りかご11の床面と乗場21の床面との間に段差が生じることがある。
【0018】
本実施形態では、このような段差を簡易な方法で検出するため、乗りかご11の出入口上部の幕板27に段差検出装置31が設置されている。段差検出装置31は、後述するマーカ33c(乗りかご側),33h(ホール側)(図3参照)を用いて、乗りかご11の床面と乗場21の床面との間の段差(段差の有無、段差量)を検出する。なお、以下の説明において、「段差を検出する」と言った場合に、「段差の有無を検出する」ことと、「段差量(位置ずれ量)を検出する」ことの両方の意味を持つ。この段差検出装置31は、テールコード28を介してエレベータ制御装置15と電気的に接続されている。
【0019】
図2は乗りかご11内の出入口周辺部分の構成を示す図である。乗りかご11の出入口には、かごドア25が開閉自在に設けられている。このかごドア25の一方側の正面壁41に、多数の行先階ボタン42を有する操作盤や表示器43などが設置されている。また、乗りかご11の出入口付近には、かごドア25が全開したことを検出するための全戸開検出装置44が設置されている。
【0020】
ここで、乗りかご11の出入口上部の幕板27の中央部に段差検出装置31が取付手段50を介して着脱自在に取り付けられている。取付手段50は、例えば磁石や粘着剤などである。段差検出装置31には、後述するようにカメラ51(図4参照)が備えられている。カメラ51は、かごドア25が乗場ドア26と共に戸開したときに、乗場21の床面21aと乗りかご11の床面11aを撮影できるように(図3参照)、幕板27の下部から下方向に向けて設置される。
【0021】
図3は乗りかご11の出入口付近のかご床面と乗場床面の構成を示す図であり、かごドア25と乗場ドア26が全開状態で乗りかご11の出入口上部から下方向に見た状態を示している。図3において、上側は乗場21の床面21a、下側は乗りかご11の床面11aを示している。
【0022】
乗場21において、乗りかご11の到着口に三方枠34が設けられている。乗客は乗りかご11が乗場21に着床し、かごドア25および乗場ドア26が戸開したときに、三方枠34内を通過して、乗りかご11に乗車または乗りかご11から降車する。
【0023】
かごドア25の側面には、乗りかご11の床面11aから所定の高さHにマーカ33cが設けられている。
【0024】
乗場ドア26の側面には、乗場21の床面21aから所定の高さHにマーカ33hが設けられている。
【0025】
本実施形態では、乗りかご側のマーカ33cの床面11aからの高さと、乗場側のマーカ33hの床面21aからの高さとは同一の値である。このため、乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aが同一の高さにある場合は、乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hは同一の高さ(H)に位置することとなる。
【0026】
なお、乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hとは、それぞれ床面11aと床面21aとに平行となるように線状のマーカとしている。線状のマーカの場合、同一の高さ(H)にあるかどうかを確認しやすいため好適である。ただし、各マーカ33c,33hは線状のマーカである必要は無く、例えば、点、図形、破線状の物でもよい。
【0027】
所定の高さHについては大きな値とし、乗りかご11の床面21aおよび乗場21の床面11aから十分な高さがあると好適である。一例として、乗場ドア26およびかごドア25の高さの50%から90%間に各マーカ33c,33hを設けると好適である。各マーカ33c,33hはこれらを撮影するカメラ51に近接して設けることで、鮮明に撮影することが可能である。ただし、所定の高さHについては特に限定されないものとする。
【0028】
マーカ33c,33hは、シール部材であっても良いし、予め刻印されていても良い。マーカ33c,33hは、周囲の照明環境などの影響を受けずにカメラ51で明瞭に撮影可能な素材で形成されていることが好ましい。
【0029】
また、図3では乗りかご11から乗場21に向かって左側の乗場ドア26およびかごドア25の側面に各マーカ33c,33hを設けているが、右側面に設けていてもよい。
【0030】
本実施形態につき、以下の説明では、図3のように左側に設けれた線状のマーカを用いて説明する。
【0031】
乗りかご11の出入口には、かごドア25と連動して戸開閉方向に移動するセイフティーシュー45が設置されている。この乗りかご11の出入口の床面11aに所定の幅を有する帯状のかごシル46がかごドア25の開閉方向に沿って配設されている。
【0032】
図4は本実施形態に係るエレベータシステムの機能構成を示すブロック図である。
【0033】
本実施形態に係るエレベータシステムは、段差検出装置31とエレベータ制御装置15とを備える。段差検出装置31とエレベータ制御装置15は、図1に示したテールコード28を介して接続されているが、例えば無線通信により接続される形態であっても良い。
【0034】
段差検出装置31は、エレベータ制御装置15とは独立して設けられ、1つの筐体内にカメラ51、画像処理部52、制御部53、報知部54、通信部55、電源部56を備える。
【0035】
カメラ51は、乗りかご11の出入口上部の幕板27の下部から下方向に向けて設置され、乗りかご11の出入口付近の乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hとを撮影する。
【0036】
画像処理部52は、カメラ51によって撮影された画像を解析処理する。この画像処理部52には、本システムの段差検出に関わる機能構成として、マーカ検出部521が備えられている。マーカ検出部521は、乗りかご11が任意の階の乗場21に着床したときに、カメラ51の撮影画像から、乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hとを検出する。
【0037】
制御部53は、段差検出装置31の動作を制御する。この制御部53には、段差検出に必要な情報などを記憶するための図示せぬメモリを備えるとともに、本システムの段差検出に関わる機能構成として、段差検出部531と報知制御部532とを備える。
【0038】
段差検出部531は、全戸開検出装置44によってかごドア25の全開状態が検出されたときに段差検出処理を実行し、マーカ検出部521によって検出された各マーカ33c,33hの位置情報に基づいて、乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとの段差を検出する。報知制御部532は、段差検出部531によって段差が検出されたときに、報知部54を起動して報知する。報知部54は、報知制御部532の制御の下で、例えば警告音の発生や音声アナウンスなどにより段差の状態(段差の有無や段差量)を報知する。
【0039】
通信部55は、段差検出装置31とエレベータ制御装置15との間のデータ通信処理を行う。電源部56は、例えば所定容量を有するバッテリからなり、段差検出装置31の動作に必要な電力を制御部53に供給する。
【0040】
エレベータ制御装置15は、エレベータ全体の制御を行うものである。このエレベータ制御装置15には、本システムの段差検出に関わる機能構成として、通信部61と制御部62とが備えられている。
【0041】
通信部61は、エレベータ制御装置15と段差検出装置31との間のデータ通信処理を行う。制御部62は、段差検出装置31によって検出された段差量に基づいて、乗りかご11を乗場21に着床させるときの位置を制御する。
【0042】
なお、図4の例では、段差検出装置31における画像処理部52と制御部53とが独立した構成にあるが、制御部53が画像処理部52の機能(マーカ検出部521)を備えていても良い。段差検出装置31は1つの筐体としてユニット化されており、各物件の乗りかご11に取り付けられるようになっている。
【0043】
図5(a)、図6(a)、図7(a)はカメラ51が撮影した画像の一例を示す図である。図5(a)は、乗場21の床面21aと乗りかご11の床面11aの高さ(レベル)が一致している状態を幕板27に設置されたカメラ51で撮影した画像の一例である。図5(b)は図5(a)の状態、即ち、乗場21の床面21aと乗りかご11の床面11aの高さが一致している状態における位置関係の図である。
【0044】
図6(a)は、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して低い状態をカメラ51で撮影した画像の一例である。図6(b)は図6(a)の状態、即ち、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して低い状態における位置関係の図である。
【0045】
図7(a)は、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して高い状態をカメラ51で撮影した画像の一例である。図7(b)は図7(a)の状態、即ち、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して高い状態における位置関係の図である。
【0046】
カメラ51は乗りかご11内の幕板27に設置されている(図2参照)。図5(a)の点線は乗りかご側のマーカ33cの延長線および、乗場側のマーカ33hの延長線である。図5(a)に示すように、乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとが同一の高さ、即ち段差がない場合は、各マーカ33c,33hの延長線は重なり合う。
【0047】
図6(a)に示すように、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して低い状態のときにカメラ51で撮影された画像では、乗場側のマーカ33hはかご側のマーカ33cよりも、かごドア25および乗場ドア26の戸開方向において外側に位置する。図6(b)に示すように、カメラ51は乗りかご11に固定されていることから、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して低い状態のときは、相対的に乗場側のマーカ33hが図5の状態よりもカメラ51に近接することとなる。このため、撮影された画像において、乗場側のマーカ33hは乗りかご側のマーカ33cよりも戸開方向において外側に位置する。
【0048】
図7に示すように、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して高い状態のときにカメラ51で撮影された画像では、乗場側のマーカ33hはかご側のマーカ33cよりも、かごドア25および乗場ドア26の戸開方向において内側に位置する。図7(b)に示すように、カメラ51は乗りかご11に固定されていることから、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して高い状態のときは、相対的に乗場側のマーカ33hが図5の状態よりもカメラ51から遠ざかることとなる。このため、撮影された画像において、乗場側のマーカ33hは乗りかご側のマーカ33cよりも戸開方向において内側に位置する。
【0049】
図6(a)および図7(a)において、画像上の乗りかご側のマーカ33cと乗り場側のマーカ33hとの戸開方向における差分をΔXとする。また、図6(b)および図7(b)の状態における、実際の乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとの差分をΔTとする。ΔXは画像上の戸開方向における位置情報であり、ΔTは実寸法における乗りかご11と乗場21との段差の位置情報である。
【0050】
ΔXの位置情報は、一例として、乗りかご側のマーカ33cを基準点として、乗場側のマーカ33hが基準点から戸開方向に内側または外側に何mmの位置にある、という情報、座標データである。ΔTの位置情報は、一例として、乗場21の床面21aを基準点として、乗りかご11の床面11aが基準点から乗りかご11の昇降方向に何mm離れた位置にあるという情報、座標データである。
【0051】
本実施形態においては、予め差分の情報ΔXとΔTとの対応付けを行い、テーブルとして制御部53に記憶しておく。図8はテーブルの図である。ただし、テーブル内の数値は例示であり、この値に限定はされないものとする。
【0052】
図5(a)(b)のように段差がない場合、乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとの差分ΔTは0mmとなり、乗りかご側のマーカ33cと乗り場側のマーカ33hとの戸開方向における差分ΔXは0mmとなる。
【0053】
ΔTは乗場21の床面21aを基準とし高さ方向に沿って座標値が大きくなるとする。ΔXは画像上のかご側のマーカ33cの位置を基準とし、戸開方向に沿って座標値が大きくなるとする。
【0054】
図6(a)(b)のように、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して低い状態である場合、ΔTの値はマイナスの値となる。このとき、対応するΔXの値はプラスの値となる。例えば図8のテーブルは、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aより30mm低い場合(ΔT=−30mm)に、画像上のマーカ33cとマーカ33hとの差分ΔXは2mmであった、という結果である。同様にΔTを−15mmとした場合のΔXは1mmであった、という結果である。
【0055】
図7(a)(b)のように、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して高い状態である場合、ΔTの値はプラスの値となる。このとき、対応するΔXの値はマイナスの値となる。例えば図8のテーブルは、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aより30mm高い場合(ΔT=30mm)に、画像上のマーカ33cとマーカ33hとの差分ΔXは−2mmであった、という結果である。同様にΔTを15mmとした場合のΔXは−1mmであった、という結果である。
【0056】
本実施形態では、予め、段差を設定して各マーカ33c,33hの値を測定しテーブルを作成、制御部53に記憶している。即ち、予めΔTの値ごとのΔXの値を測定し、テーブルを作成、記憶させている。
【0057】
制御部53は、前記テーブルをサーチすることで、現在の段差量を求める。なお、前記対応関係を関連式として数式化しておき、その都度、その数式を用いて計算により現在の段差量を求めても良い。
【0058】
本実施形態における本システムの動作について詳しく説明する。図9は本実施形態に係るエレベータシステムの動作処理を示すフローチャートである。
【0059】
乗りかご11が任意の階の乗場21に着床したとする。段差検出装置31に備えられた制御部53は、全戸開検出装置44によって乗りかご11が全戸開したことを示す信号を入力すると(ステップS11のYES)、画像処理部52を起動して、以下のような段差検出処理を実行する。なお、乗りかご11が全戸開したときのタイミングで段差検出処理を実行するのは、乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hをカメラ51で確実に撮影するためである。
【0060】
すなわち、画像処理部52は、乗りかご11が全戸開したときにカメラ51で撮影された画像を解析処理し、マーカ検出部521を通じて当該撮影画像から上の各マーカ33c,33hを検出する(ステップS12)。画像処理部52は、この各マーカ33c,33hの位置情報を検出結果として制御部53に出力する(ステップS12)。制御部53の段差検出部531は、入力されたマーカ情報に基づいて、乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとの段差を検出する(ステップS13)。
【0061】
図10はステップS13の段差検出処理の詳細を示すフローチャートである。段差検出部531は、前記マーカ情報に含まれる各マーカ33c,33hの位置情報である座標からマーカ間の差分ΔXを算出する(ステップS31)。段差検出部531は、図8のテーブルを参照し、マーカ33c,33h間の差分ΔXに対応した、乗りかご11と乗場21との差分ΔTの値を参照する(ステップS32)。あるいは、その対応関係を示す数式を用いて、前記距離差分値に対応した段差量を算出する(ステップS33)。
【0062】
図9に戻って、乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとの間に所定量以上の段差が検出された場合(ステップS14のYES)、段差検出部531は、エレベータ制御装置15に前記ステップS33で算出された段差量をエレベータ制御装置15に送って、制御部62により乗りかご11の着床位置を制御させる(ステップS15)。これにより、エレベータ制御装置15では、制御部62を通じて巻上機14を駆動し、乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとの段差を解消する方向に乗りかご11を前記段差量分だけ移動させて、乗りかご11の着床位置を微調整する。
【0063】
このとき、エレベータ制御装置15に備えられた報知制御部532は、段差量が予め設定された報知範囲内であるか否かを確認する(ステップS16)。前記「報知範囲」は、例えば乗りかご11の床面11aに対して上下方向に±30mm以上に設定されている。つまり、段差量に対する閾値を±30mmとした場合に、前記ステップS33で算出された段差量が±30mm以上のときに、報知するように設定されている。これは、一日の温度変化などで、乗りかご11の運転や利用者の乗り降りに影響のない程度の段差が生じることがある。段差量の報知範囲を設定しておくことで、頻繁に報知することを防ぐことができる。
【0064】
段差量が報知範囲内であれば(ステップS16のYES)、報知制御部532は、そのときに算出された段差量について報知部54を通じて音声により報知する(ステップS17)。なお、段差の有無だけを警告音等で報知することでも良い。
【0065】
このように第1の実施形態によれば、かごドア25および乗場ドア26のそれぞれに乗りかご側のマーカ33c,乗場側のマーカ33hを付しておくだけで、カメラ51で撮影された画像上のマーカ間の差分ΔXの位置情報に基づいて乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aの段差を簡単に検出することができる。したがって、段差が生じている場合に適切な対応を取ってエレベータの安全を確保できる。
【0066】
また、段差が生じている場合に、そのときの段差量を具体的に報知することで、例えば定期点検などで、保守員が各階の乗場21で段差の状態を目視で確認しなくとも、乗りかご11の上で段差量の報知を聞きながら、着検板23の設置位置の直す作業を効率的に進めることができる。
【0067】
さらに、通常の運転中において、段差が検出された場合に、そのときの段差を解消する方向に乗りかご11の着床位置を自動調整することで、利用者の段差に足を引っかけるなどの事故を未然に防ぐことができる。
(変形例1)
第1の実施形態では図5(a)、図6(a)、図7(a)において、かごドア25および乗場ドア26の戸開方向について、乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hとの位置の差分ΔXを算出した。第1の実施形態の変形例では、差分ΔXについて、乗りかご11に設けられたセイフティーシュー45の画像上における縁方向に基づいて算出する。
【0068】
図11は本実施形態の変形例に係るカメラ51が撮影した画像の一例を示す図であり、図6(a)と同様の状況である。図6では差分ΔXについて、かごドア25および乗場ドア26の戸開方向に基づいて算出している。この場合、戸開方向は撮影された画像の横方向となる。これに対して、本実施形態の変形例では、図11のようにセイフティーシュー45の縁方向に沿って差分ΔXを算出している。この場合、撮影された画像に対して縁方向は斜めの方向となる。
【0069】
なお、図11ではセイフティーシュー45の縁方向に基づいて、差分ΔXを算出しているが、かごドア25や乗場ドア26の縁方向に基づいて差分ΔXを算出してもよい。この場合においても、上述のようなテーブルを設けて、段差の検知を行うことができる。
(変形例2)
第1の実施形態の変形例として、階床ごとに段差を検出して、着床を調整してもよい。N階の階床を有する建物に設けられたエレベータの場合、N階分の着検板23を昇降路10内に設ける必要がある。ここで、m階の段差検知において、乗りかご側のマーカ33cとm階(1≦m≦N)の乗場側のマーカ33hとの差分ΔXが常に所定の値を有している場合、図8のテーブルから常に対応するΔTの値分の段差が生じていることとなる。この場合、着検板23がズレており、段差が常に生じていることとなる。
【0070】
変形例2では、段差が常に生じている階床(m階)については、制御部53にてΔT分を補正して、着床させることができる。
【0071】
また、N階の階床を有する場合、N個のテーブルを制御部53に記憶させ、テーブルごとに値を補正してよい。
【0072】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。
【0073】
図12は、本実施形態に係る乗りかごの出入口付近のかご床面と乗場床面の構成を示す図である。第1の実施形態では、図3のように、乗りかご11から乗場21に向かって左側の乗場ドア26およびかごドア25の側面に各マーカ33c,33hを設けているが、本実施形態では左右両側に、乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hを設けている。
【0074】
乗りかご11から乗場21に向かって左側の乗場ドア26およびかごドア25の側面に施されたマーカをそれぞれ33cl,33hlとし、乗りかご11から乗場21に向かって右側の乗場ドア26およびかごドア25の側面に施されたマーカをそれぞれ33cr,33hrとする。乗りかご側のマーカ33cl,33crはそれぞれ、乗りかご11の床面11aから所定の高さHに設けられている。同様に、乗場側のマーカ33hl,33hrはそれぞれ、乗場21の床面21aから所定の高さHに設けられている。
【0075】
乗りかご側のマーカ33cl,33chの床面11aからの高さと、乗場側のマーカ33hl,33hrの床面21aからの高さとは同一の値である。このため、乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aが同一の高さにある場合は、乗りかご側のマーカ33cl,33crと乗場側のマーカ33hl,33hrは同一の高さ(H)に位置することとなる。
【0076】
本実施形態に係るエレベータシステムの機能構成を示すブロック図は図4と同様である。
【0077】
図13は、本実施形態におけるエレベータシステムのカメラ51が撮影した画像の一例を示す図である。図13は、図6と同様に、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して低い状態をカメラ51で撮影した画像の一例である。図6と同様に点線は各マーカ33cl,33cr,33hl,33hrの延長線である。乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとが同一の高さ、即ち段差がない場合は、左側の各マーカ33cl,33hlの延長線は重なり合い、右側の各マーカ33cr,33hrの延長線は重なり合うことになる。
【0078】
図13に示すように、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して低い状態のときにカメラ51で撮影された画像では、乗場側のマーカ33hl,33hrはかご側のマーカ33cl,33crよりも、かごドア25および乗場ドア26の戸開方向において外側に位置する。逆に、乗りかご11の床面11aが乗場21の床面21aに対して高い状態のときにカメラ51で撮影された画像では、乗場側のマーカ33hl,33hrはかご側のマーカ33cl,33crよりも、かごドア25および乗場ドア26の戸開方向において内側に位置する。
【0079】
図13において、画像上の左側の乗りかご側のマーカ33clと乗り場側のマーカ33hlとの位置情報における差分をΔXlとし、右側の乗りかご側のマーカ33crと乗り場側のマーカ33hrとの位置情報における差分をΔXrとする。位置情報については、図5のように戸開方向としてもよく、また、図11のようにセイフティーシュー45、かごドア25、乗場ドア26の縁方向としてもよい。戸開方向とした場合、ΔXl,ΔXrは画像の横方向の差分となる。縁方向とした場合、ΔXl,ΔXrは画像の斜め方向の差分となる。本実施形態のΔXl,ΔXrは第1の実施形態のΔXと同様の性質の値である。
【0080】
本実施形態においても、実際の乗りかご11の床面11aと乗場21の床面21aとの差分をΔTとする。
【0081】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、図8のようなテーブルを持っている。予め差分の情報ΔX(ΔXl,ΔXr)とΔTとの対応付けを行い、テーブルとして制御部53に記憶しておく。予めΔTの値ごとのΔX(ΔXl,ΔXr)の値を測定し、テーブルを作成、記憶させている。テーブルはΔXl,ΔXrにつき共通のテーブルとしてもよく、また、各々別々のテーブルとして持っていてもよい。
【0082】
制御部53は、ΔXl,ΔXrそれぞれにつき、テーブルをサーチすることで、現在の段差量を求める。なお、前記対応関係を数式化しておき、その都度、その数式を用いて計算により現在の段差量を求めても良い。
【0083】
また、ΔXlとΔXrとが異なる値を測定した場合、それぞれの値に対応するΔTの値を導き出すことができる。ΔXlとΔXrそれぞれに対応するΔTの値を平均して段差量を求めてもよい。また、ΔXlとΔXrとが異なる値を測定することで、それぞれのΔTの値を比較することで、乗りかご11が左右方向につき傾いていることを検知することもできる。
【0084】
本実施形態における本システムの動作に係るフローチャートは図9図10と同様である。
【0085】
以上より、本実施形態のエレベータシステムは第1の実施形態と同様の効果を有し、さらに左右両側につき、各マーカ33cl,33cr,33hl,33hrを設けて段差を検知するため、第1の実施形態におけるエレベータシステムよりも、より精度よく段差量を検知することができる
(第3の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態における乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hとの位置関係の差分ΔXを用いて、かごドア25および乗場ドア26の戸開時における乗りかご11の走行(以下、「戸開走行」と称する)の検知を行う機能を有する。
【0086】
かごドア25および乗場ドア26が戸開し、乗客が昇降している間は、乗りかご11は着床状態を維持する必要がある。このとき、図1の巻上機14に取り付けられたブレーキ装置(図示せず)が巻上機14の駆動を制動する。しかし、ブレーキ装置の故障等により、戸開走行が発生すると、乗客を危険にさらす可能性がある。
【0087】
本実施形態では、かごドア25および乗場ドア26が戸開を完了してから戸閉を開始するまでの間、段差検出装置31のカメラ51で乗りかご11の出入口付近を撮影し続け、乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hとの位置関係の差分ΔXの時間変化を測定し続ける。
【0088】
図14は乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hとの位置関係の差分ΔXの時間変化の図である。図14(a)は正常時のマーカ33cとマーカ33hの差分ΔXの時間変化であり、図14(b)は戸開走行時のマーカ33cとマーカ33hとの差分ΔXの時間変化である。図中のThは戸開走行か否かを判定する閾値である。
【0089】
図14(a)が示す正常時において、乗客の乗降により乗りかご11が、一時的に高さ方向に揺れることがある。乗りかご11の一時的な揺れにより、マーカ33cとマーカ33hとの差分ΔXが変動する。この一時的な揺れは閾値Thの範囲内となるように、予め閾値Thを設定しておく。正常時の場合、乗客の乗降により一時的にΔXが変動しても、時間の経過と共に、乗りかご11の揺れが収まるため、ΔXが0に収束する。
【0090】
図14(b)が示す戸開走行時において、かごが上昇する方向に戸開走行をすると、マーカ33cとマーカ33hとの差分ΔXは時間経過と共にマイナス方向に増加、即ち、差分ΔXの絶対値が増加する。ΔXの値が−Thを超え、さらに増加し続けた場合、本実施形態のエレベータシステムは戸開走行が発生したと判定し、図示せぬ戸開走行保護装置により、乗りかご11を停止させる。
【0091】
差分ΔXの値が±Thの間にある時は、戸開走行が発生せず正常時と判定し、±Thの範囲を超えた場合は、戸開走行と判定する。
【0092】
本実施形態のエレベータシステムの構成を示すブロック図は図4と同様である。制御部53にて、差分ΔXの時間経過について、計測する。制御部53内に、別途、戸開走行検出部を設けて、戸開走行を判定する構成としてもよい。
【0093】
以上の実施形態において、乗りかご側のマーカ33c、乗場側のマーカ33hにつき左側に1つずつ設けたが、複数の乗りかご側のマーカ33c、複数の乗場側のマーカ33hを設けてもよい。この場合、乗りかご側のマーカ33cと乗場側のマーカ33hとは対をなして設けられる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
10…昇降路、11…乗りかご、12…カウンタウエイト、13…メインロープ、14…巻上機、15…エレベータ制御装置、16…機械室、21…乗場、22…着床検出装置、23…着検板、24…ガイドレール、25…かごドア、26…乗場ドア、27…幕板、28…テールコード、31…段差検出装置、32…乗場シル、33c…乗りかご側のマーカ、33h…乗場側のマーカ、34…三方枠、41…正面壁、42…行先階ボタン、43…表示器、44…全戸開検出装置、45…セイフティーシュー、46…シル、50…取付手段、51…カメラ、52…画像処理部、521…マーカ検出部、53…制御部、531…段差検出部、532…報知制御部、54…報知部、55…通信部、56…電源部、61…通信部、62…制御部
【要約】
【課題】
乗りかごの床面と乗場の床面との間の段差を簡単に検出する。
【解決手段】
エレベータシステムは、乗りかごの出入口付近の前記乗りかごに設置されたかごドアおよび前記乗場に設置された乗場ドアの戸開時に現れる各ドアの側面を撮影する撮影手段と、前記乗りかごが任意の階の乗場に着床したときに、前記撮影手段により撮影された画像から前記乗りかごに設置されたかごドアの側面であって前記乗りかごの床面よりも上に設けられた第1のマーカと、前記乗場に設置された乗場ドアの側面であって前記乗場の床面よりも上に設けられた第2のマーカと、を検出するマーカ検出手段と、前記マーカ検出手段により得られた第1のマーカと第2のマーカの位置情報に基づいて、前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との段差を検出する段差検出手段と、を具備する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14