特許第6881918号(P6881918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881918
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】ポリカルボン酸系共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 222/04 20060101AFI20210524BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20210524BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20210524BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20210524BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20210524BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20210524BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C08F222/04
   C08F220/28
   C08F290/06
   C11D3/37
   C02F1/58 J
   C02F5/00 610F
   C02F5/00 620B
   C02F5/10 620
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-173763(P2016-173763)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-39885(P2018-39885A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友紀
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−255740(JP,A)
【文献】 特開平08−217505(JP,A)
【文献】 特開平10−158051(JP,A)
【文献】 特開昭60−212411(JP,A)
【文献】 特開2005−068401(JP,A)
【文献】 特開2002−060433(JP,A)
【文献】 特開平07−299497(JP,A)
【文献】 特開2000−234261(JP,A)
【文献】 特開平08−165157(JP,A)
【文献】 特開平09−142905(JP,A)
【文献】 特開2012−224680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C02F 1/58
C02F 5/00− 5/14
C11D 3/37
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、中和率が30〜80モル%である不飽和ジカルボン酸の部分中和物と、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体とを含有する単量体成分(但し、下記一般式:RSO(式中、Rは、炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数8〜9のアルケニルフェニル基であり、Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は無置換若しくは有機基置換アンモニウム基である。)で表されるスルホン酸化合物を含むものを除く。)を重合する重合工程を含み、
該重合工程は、重合温度70〜100℃で行われ、
該不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体は、下記一般式(3):
YO(RO) (3)
(式中、Yは、炭素数2〜8のアルケニル基を表す。ROは、同一又は異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜25の数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)で表されることを特徴とするポリカルボン酸系共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記単量体成分は、その総量100モル%に対し、前記部分中和物を75〜90モル%含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記不飽和ジカルボン酸は、下記一般式(1);
【化1】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。なお、二つのカルボキシル基により無水物を形成していてもよい。)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記製造方法は、水処理剤又は洗剤組成物用のポリカルボン酸系共重合体を製造する方法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボン酸系共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカルボン酸系共重合体は、カルボキシル基又はその塩を分子内に有する共重合体であり、無機粒子等の分散性能を有するため、例えば、無機粒子分散剤、水処理剤、洗剤ビルダー、洗剤組成物等の各種用途に広く使用されている。そして近年では、更なる物性改善のために種々の検討がなされている。例えば、特許文献1、2には、ポリアルキレングリコール系単量体とマレイン酸系単量体との共重合体を得る方法が開示されており、得られた共重合体は、セメント分散剤として非常に有用なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−128600号公報
【特許文献2】特開昭57−118058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり特許文献1、2には、ポリアルキレングリコール系単量体とマレイン酸系単量体との共重合体を得る方法が開示されている。本発明者は、このような共重合体について検討を進めるうち、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体を高比率で用いて得た共重合体は、カルシウムイオン捕捉能や、カルシウム塩(例えば炭酸カルシウム等)析出抑制能、防蝕能等に優れることを見いだした。だが、不飽和ジカルボン酸系単量体を高比率で用いようとしても、不飽和ジカルボン酸系単量体は、不飽和モノカルボン酸系単量体に比べて重合反応性に乏しく、従来の共重合方法では未反応単量体が多く残存するため、製法上の課題があることを見いだした。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、未反応単量体の残存が充分に抑制され、所望の物性を充分に発現できるポリカルボン酸系共重合体を容易かつ簡便に与える製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に照らし鋭意検討を進めるうち、中和率が30〜80モル%である不飽和ジカルボン酸の部分中和物と、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体とを含有する単量体成分を、所定温度で重合する重合工程を含む製造方法を採用すれば、不飽和ジカルボン酸系単量体に由来する構成単位を高比率で含むポリカルボン酸系共重合体であっても、簡便かつ容易に得られることを見いだした。従来は、製造効率や安全性等の観点から、重合後に中和工程を行うことが一般的であったが、本発明者はこのような従来の技術常識に反して、例えば中和率が予め上記範囲に設定された不飽和ジカルボン酸の部分中和物を重合に供したり、重合中に中和率を上記範囲に調整したりすることで、たとえ不飽和ジカルボン酸を高比率で使用した場合であってもその重合反応率が高まり、かつ所定温度で重合することで、未反応単量体の残存量が充分に低減された共重合体を容易かつ簡便に得ることに成功した。得られた共重合体は、カルシウムイオン捕捉能及び炭酸カルシウム析出抑制能に優れるうえ、耐ゲル性及び防蝕能も良好で、カーボンブラック等の粒子に対しても経時的に安定した分散性能を発揮でき、高外観を呈する。それゆえ、水処理剤や洗剤等の水系用途に特に有用である。このようにして本発明者は上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、ポリカルボン酸系共重合体を製造する方法であって、該製造方法は、中和率が30〜80モル%である不飽和ジカルボン酸の部分中和物と、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体とを含有する単量体成分を重合する重合工程を含み、該重合工程は、重合温度70〜100℃で行われるポリカルボン酸系共重合体の製造方法である。
【0008】
上記単量体成分は、その総量100モル%に対し、上記部分中和物を75〜90モル%含むことが好ましい。
【0009】
上記不飽和ジカルボン酸は、下記一般式(1);
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。なお、二つのカルボキシル基により無水物を形成していてもよい。)で表されることが好ましい。
【0012】
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体は、下記一般式(2):
Y(CO)O(RO) (2)
(式中、Yは、炭素数2〜8のアルケニル基を表す。mは、0又は1である。ROは、同一又は異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜25の数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)で表されることが好ましい。
【0013】
上記製造方法は、水処理剤又は洗剤組成物用のポリカルボン酸系共重合体を製造する方法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法は、上述した構成よりなり、未反応単量体の残存量が充分に低減され、所望の物性を充分に発現できるポリカルボン酸系共重合体を容易かつ簡便に与えることができる。得られる共重合体は、カルシウムイオン捕捉能及び炭酸カルシウム析出抑制能に優れるうえ、耐ゲル性及び防蝕能も良好で、カーボンブラック等の粒子に対しても経時的に安定した分散性能を発揮できるため、特に水処理剤や洗剤等の水系用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳述する。以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
【0016】
〔ポリカルボン酸系共重合体の製造方法〕
本発明のポリカルボン酸系共重合体(単に「共重合体」とも称す)の製造方法は、中和率が30〜80モル%である不飽和ジカルボン酸の部分中和物と、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体(単量体(b)とも称す)とを含有する単量体成分を重合する重合工程を含む。必要に応じてその他の工程等を1又は2以上含んでもよい。また、単量体成分は、必要に応じて、その他の単量体(c)を含んでいてもよい。各単量体等はそれぞれ1種又は2種以上使用することができる。
【0017】
本明細書中、「中和率が30〜80モル%である不飽和ジカルボン酸の部分中和物」と単量体(b)とを含む単量体成分を重合するとは、(i)中和率が30〜80モル%である不飽和ジカルボン酸の部分中和物を重合工程に供することの他、(ii)重合中に中和率を30〜80モル%に調整することを意味する。(i)の場合、既に不飽和ジカルボン酸が上記中和率に中和されている製品がある場合は、この製品を重合工程に供してもよい。(ii)の重合中に中和率を調整する場合は、重合原料(単量体成分)として、不飽和ジカルボン酸又は中和率が上記範囲未満の不飽和ジカルボン酸の部分中和物と、単量体(b)と、不飽和ジカルボン酸の中和率を30〜80モル%に設定できる量の中和物質とを少なくとも使用して、重合すればよい。
【0018】
不飽和ジカルボン酸の部分中和物の中和率が上記範囲にあることで、重合反応が容易になり、かつ得られる共重合体中の未反応単量体の残存量が充分に低減される。上記中和率は、好ましくは35モル%以上、より好ましくは40モル%以上であり、また、好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
【0019】
本明細書中、不飽和ジカルボン酸の部分中和物の中和率とは、重合工程で使用される全ての不飽和ジカルボン酸が有するカルボキシル基の総量100モル%に対して、塩を形成しているカルボキシル基の割合(モル%)を意味する。例えば、マレイン酸1モル中にはカルボキシル基が2個存在するため、マレイン酸を3モル(カルボキシル基の総量は6個)使用した場合に部分中和物の中和率が50モル%であるとは、全マレイン酸中で塩を形成しているカルボキシル基が3個存在していることを表す。
【0020】
上記不飽和ジカルボン酸は、1分子中に、重合性二重結合(C=C)を少なくとも1個有し、かつカルボキシル基を2個含む化合物であれば特に限定されないが、中でも、上記一般式(1)で表される化合物が好適である。具体的には、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2−メチレングルタル酸等の他、これらの無水物が好適である。
【0021】
上記部分中和物を与える中和物質は特に限定されないが、例えば、金属化合物、アンモニア、有機アミン等が好ましい。これにより、金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩が得られる。金属化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を含む化合物;ベリリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の周期表第2族元素を含む化合物;等が好ましく、具体的には、これら金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩、アルミン酸塩、有機アミン塩等が挙げられる。有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミン;等が挙げられる。中でも、アルカリ金属水酸化物が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
なお、中和物質は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0022】
中和方法は特に限定されないが、例えば、金属水酸化物により中和する場合は、水に金属水酸化物を分散した後、不飽和ジカルボン酸を添加することにより行うことが好ましい。この際、水溶液中に金属水酸化物が完全に溶解して透明になるまで撹拌することが好適である。また、重合工程前に中和工程を行う場合、中和工程は、温度を30℃以上に維持して行うことが好適である。
【0023】
上記重合工程に使用される単量体成分は、その総量100モル%に対し、不飽和ジカルボン酸の部分中和物(ここでいう「不飽和ジカルボン酸の部分中和物」とは、中和率が30〜80モル%である不飽和ジカルボン酸の部分中和物を重合原料として使用する場合は、当該部分中和物を意味し、重合中に中和率を調整する場合は、中和率調整前の不飽和ジカルボン酸又はその部分中和物を意味する。)を75〜90モル%含むことが好適である。これにより、得られる共重合体において、優れた耐ゲル性を維持しながら、カルシウムイオン捕捉能及び炭酸カルシウム析出抑制能を顕著に向上することができ、しかも粒子分散性に優れるものとなる。なお、本発明の製造方法は、このように不飽和ジカルボン酸系単量体(不飽和ジカルボン酸及び/又はその塩)を高比率で使用しても重合反応を容易に行うことができ、しかも未反応単量体の残存量を充分に低減することができるため、工業的に有利である。上記含有量の下限は、より好ましくは76モル%以上、更に好ましくは77モル%以上、一層好ましくは78モル%以上、特に好ましくは79モル%以上、最も好ましくは80モル%以上であり、また上限としてより好ましくは88モル%以下、更に好ましくは86モル%以下、特に好ましくは84モル%以下である。
【0024】
上記不飽和ジカルボン酸の部分中和物の含有割合はまた、単量体成分の総量100質量%に対し、23〜77質量%であることが好ましい。より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、また、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0025】
上記単量体成分中、単量体(b)の含有割合は、上述した部分中和物の含有量に応じて適宜設定することが好ましい。具体的には、単量体成分の総量100モル%に対し、10〜25モル%であることが好適である。下限としてより好ましくは12モル%以上、更に好ましくは14モル%以上、特に好ましくは16モル%以上であり、また上限としてより好ましくは24モル%以下、更に好ましくは23モル%以下、特に好ましくは21モル%以下、最も好ましくは20モル%以下である。
【0026】
上記単量体(b)の含有割合はまた、単量体成分の総量100質量%に対し、23〜77質量%であることが好ましい。より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0027】
上記不飽和ジカルボン酸の部分中和物及び単量体(b)の合計量は、単量体成分の総量100モル%に対し75.1モル%以上であることが好ましい。より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
【0028】
上記重合工程において、重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合法、バルク重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、或いは注型重合法、薄膜重合法、噴霧重合法等の通常の手法で行うことができる。中でも、溶液重合法が好ましい。また、重合工程は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0029】
上記重合工程は、1種又は2種以上の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化水素;過硫酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸(塩);ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;等が好適である。中でも、過硫酸(塩)、すなわち過硫酸及び/又は過硫酸塩を用いることがより好ましい。塩としては特に限定されず、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0030】
上記重合開始剤の使用量は特に限定されないが、例えば、単量体成分の総量1モルに対し、0.1〜40gとすることが好ましい。より好ましくは0.2〜30g、更に好ましくは0.3〜20gである。
【0031】
上記重合工程はまた、1種又は2種以上の連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。
連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、メルカプトエタノール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、n−ドデシルメルカプタン等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の第2級アルコール;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む);亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩);亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩);等が挙げられる。中でも、次亜リン酸(塩)、すなわち次亜リン酸及び/又は次亜リン酸塩を用いることがより好ましい。塩としては特に限定されず、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0032】
上記連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、例えば、単量体成分の総量1モルに対し、0.1〜20gとすることが好ましい。より好ましくは0.2〜15gであり、更に好ましくは0.3〜10gである。
【0033】
本発明では特に、得られる共重合体の着色や臭気をより抑制できる観点から、過硫酸(塩)単体、又は、過硫酸(塩)と次亜リン酸(塩)とを併用することが好ましい。すなわち上記重合工程は、過硫酸(塩)の存在下、又は、過硫酸(塩)及び次亜リン酸(塩)の存在下で行われることが好適である。
【0034】
上記重合工程では、溶媒を1種又は2種以上使用することが好ましく、溶媒として、水;有機溶剤;水と有機溶剤との混合溶媒;が挙げられる。
有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;等が挙げられる。中でも、水を含むこと、すなわち、水、又は、水と有機溶剤との混合溶媒が好適である。より好ましくは、溶媒の総量100質量%に対して水を50質量%以上含むことであり、更に好ましくは80質量%以上含むこと、特に好ましくは90質量%以上含むことである。最も好ましい溶媒は水である。
【0035】
上記溶媒の使用量は、例えば、単量体成分の総量100質量部に対し、40〜200質量部とすることが好ましい。この範囲に設定することにより、単量体成分の溶解性を保つことができるうえ、得られる共重合体溶液中の固形分濃度(共重合体濃度)がより適切なものとなり、保管等のコストを低く抑えることが可能になる。より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは100質量部以上であり、また、より好ましくは180質量部以下、更に好ましくは150質量部以下である。
【0036】
上記重合工程は、重合温度70〜100℃で行われる。これにより、未反応単量体の残存量がより低減され、また特に、重合工程に上述した不飽和ジカルボン酸の部分中和物を供することとの相乗効果により、未反応単量体の残存量の低減がより一層実現される。重合温度の上限は、95℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以下であり、また、重合温度の下限は、75℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上である。
【0037】
本明細書中、「重合温度」とは、重合反応を行っている際に行う重合温度の制御範囲であって、本願発明の場合は70〜100℃の間に制御されることを意味し、重合時間の大半が70〜100℃に制御されていれば問題ないが、ごく短い時間にこの範囲を外れてもよい。具体的には、例えば、重合反応の開始から重合反応が完結するまでの重合時間の60%以上の時間において、70〜100℃の範囲内の温度で重合反応を行うことが好適である。より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、より更に好ましくは90%以上、一層好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは100%の時間において、当該温度で重合反応を行うことである。
【0038】
また重合温度は、重合反応において常にほぼ一定に保持しなくてもよい。例えば、室温から重合を開始して適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度(重合温度)まで昇温した後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0039】
重合時間は特に制限されないが、例えば、30〜420分とすることが好ましい。より好ましくは45〜390分、更に好ましくは60〜360分、特に好ましくは90〜300分である。
本明細書中、重合時間とは、特に断らない限り、開始剤及び単量体成分を添加している時間を表す。
【0040】
上記重合工程において、反応系内の圧力は特に限定されず、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下で行うか、又は、反応系内を密閉して加圧下で行うことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気は、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気であってもよく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換してもよい。
【0041】
以下に、不飽和ジカルボン酸の部分中和物以外の単量体成分について更に説明する。
−単量体(b)−
不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体(b)は、1分子中に、重合性二重結合(C=C)と、(ポリ)アルキレングリコール鎖とをそれぞれ少なくとも1個有する化合物である。この(ポリ)アルキレングリコール鎖の平均鎖長は特に限定されないが、未反応単量体の残存量をより低減し、また得られる共重合体のカルシウムイオン捕捉能や炭酸カルシウム析出抑制能、粒子分散性(例えばカーボンブラック分散性)等をより高める観点では、25モル以下であることが好ましい。より好ましくは20モル以下、更に好ましくは15モル以下、特に好ましくは13モル以下、最も好ましくは10モル以下である。また、(ポリ)アルキレングリコール鎖の平均鎖長は1モル以上であることが好ましく、親水性向上の観点から、より好ましくは2モル以上、更に好ましくは3モル以上である。
本明細書中、(ポリ)アルキレングリコール鎖の平均鎖長とは、単量体(b)1モル中において付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値、すなわちオキシアルキレン基の平均付加モル数を意味する。
【0042】
上記単量体(b)として好ましくは、下記一般式(2):
Y(CO)O(RO) (2)
(式中、Yは、炭素数2〜8のアルケニル基を表す。mは、0又は1である。ROは、同一又は異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜25の数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)で表される化合物である。
【0043】
上記一般式(2)において、Yは、炭素数2〜8のアルケニル基を表すが、炭素数は3〜8であることが好ましく、より好ましくは3〜5、更に好ましくは4〜5である。Yとしては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、4−ペンテニル基、3−ペンテニル基等が好適である。中でも、アリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテニル基が好ましく、より好ましくはメタリル基又は3−メチル−3−ブテニル基であり、更に好ましくは3−メチル−3−ブテニル基である。
【0044】
Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。中でも、炭素数2〜8のオキシアルキレン基が好ましく、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシメチルエチレン基、オキシオクチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。より好ましくは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、更に好ましくはオキシエチレン基である。
なお、(RO)で表される(ポリ)アルキレングリコール鎖は、2種以上のオキシアルキレン基により形成されるものであってもよい。2種以上のオキシアルキレン基により形成される場合、これらはランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で存在していてもよい。
【0045】
上記一般式(2)では、全オキシアルキレン基100モル%中に占めるオキシエチレン基の割合が、50モル%以上であることが好適である。これにより、共重合体の水溶性が高まり、より均一な溶液として使用できる。より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%、すなわちオキシエチレン基のみによって(ポリ)アルキレングリコール鎖が形成されることである。
なお、2種以上のオキシアルキレン基を有する場合の組み合わせとしては、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)、(オキシエチレン基、オキシブチレン基)、(オキシエチレン基、オキシスチレン基)が好適である。中でも、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)がより好ましい。
【0046】
nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数、すなわち(ポリ)アルキレングリコール鎖の平均鎖長を表し、1〜25の数である。好ましい範囲は、(ポリ)アルキレングリコール鎖の平均鎖長について上述したとおりである。
【0047】
は、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。
炭化水素基を表す場合、親水性を向上させて粒子分散性をより高める観点から、炭素数は1〜20であることが好ましい。より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4である。炭化水素基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)、フェニル基、アルキル置換フェニル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール等が好適である。中でも、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)が好ましい。
として特に好ましくは、水素原子である。
【0048】
mは0又は1である。m=0である場合、上記一般式(2)で表される化合物はエーテル結合を有するため、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と称することもでき、m=1である場合、上記一般式(2)で表される化合物はエステル結合を有するため、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体と称することもできる。
【0049】
上記単量体(b)のうち、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体は、例えば、不飽和アルコールにアルキレングリコール(アルキレンオキサイド)を付加反応して得ることができる。不飽和アルコールは、重合性二重結合(C=C)と水酸基とを有する化合物であれば特に限定されないが、中でも、重合性二重結合と水酸基とをそれぞれ1個有する化合物、すなわち不飽和モノアルコールが好ましい。
【0050】
上記不飽和アルコールの中でも、メタリルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オールがより好ましい。
【0051】
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体として具体的には、例えば、ビニルアルコールアルキレンオキサイド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキサイド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキサイド付加物、イソプレニルアルコール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキサイド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキサイド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキサイド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキサイド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキサイド付加物等が好適である。
【0052】
より具体的には、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、プロポキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1−ジメチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル等が好適である。
【0053】
上記単量体(b)のうち、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体は、不飽和基と(ポリ)アルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された構造を有する化合物であればよく、例えば、不飽和カルボン酸と(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物(不飽和カルボン酸(ポリ)アルキレングリコールエステル系化合物とも称す)が好適である。不飽和カルボン酸の中でも不飽和モノカルボン酸が好ましく、従って、不飽和カルボン酸(ポリ)アルキレングリコールエステル系化合物は、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであることが好ましい。より好ましくは(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0054】
上記(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルコール類に炭素数2〜18のアルキレンオキシド基を付加したアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール類、特にエチレンオキシドが主体であるアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル化物が好適である。
ここで、アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1〜30の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の炭素数3〜30の脂環族アルコール類;(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数3〜30の不飽和アルコール類等が挙げられる。
【0055】
上記エステル化物として具体的には、以下の(アルコキシ)ポリエチレングリコール(ポリ)(炭素数2〜4のアルキレングリコール)(メタ)アクリル酸エステル類等が好適である。
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート。
【0056】
上記単量体(b)の中でも、安定性や、得られる共重合体の性能を高める観点から、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体が好ましい。すなわち上記一般式(2)中、mは0であることが好ましい。したがって、上記単量体(b)として特に好ましくは、下記一般式(3)で表されるものである(式中の記号は、一般式(2)における記号と同じである。)。
YO(RO) (3)
【0057】
−単量体(c)−
上記単量体成分は、不飽和ジカルボン酸、その部分中和物及び単量体(b)以外のその他の単量体(c)を含んでもよい。単量体(c)は、不飽和ジカルボン酸、その部分中和物及び/又は単量体(b)と共重合可能な単量体であればよく、例えば、下記化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0058】
マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類及びこれらの塩;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;
【0059】
ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;等。
【0060】
<他の工程>
上記製造方法はまた、必要に応じてその他の工程等を1又は2以上含んでもよい。例えば、熟成工程、重合後の中和工程(後中和工程とも称す)、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。
【0061】
例えば、重合後の中和工程は、上記重合工程後に、温度を10〜130℃に維持して中和工程を行うことが好適である。より好ましくは20〜110℃である。重合後の中和工程では、上述した中和物質を用いて中和してもよい。場合によって、重合後の中和工程を行うことで、後述の最終中和率を達成することもできる。
【0062】
〔ポリカルボン酸系共重合体〕
上述した本発明の製造方法により得られるポリカルボン酸系共重合体は、不飽和ジカルボン酸及び/又はその部分中和物(「不飽和ジカルボン酸系単量体(a)」又は「単量体(a)」と称する)に由来する構成単位(A)と、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体(b)に由来する構成単位(B)とを含む。必要に応じて、更に他の単量体(c)に由来する構成単位(C)を含んでもよく、構成単位はそれぞれ1種又は2種以上であってもよい。
ここで、単量体に由来する構成単位とは、当該単量体が有する炭素炭素二重結合(C=C)が単結合(C−C)となった構造を意味する。
【0063】
上記構成単位(A)の含有割合は、上記共重合体が含む全構成単位100モル%に対し75〜90モル%であることが好ましい。下限としてより好ましくは76モル%以上、更に好ましくは77モル%以上、特に好ましくは78モル%以上、一層好ましくは79モル%以上、最も好ましくは80モル%以上であり、また上限としてより好ましくは88モル%以下、更に好ましくは86モル%以下、特に好ましくは84モル%以下である。
【0064】
上記構成単位(A)の含有割合はまた、上記共重合体が含む全構成単位100質量%に対し23〜77質量%であることが好ましい。より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、また、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。ここでいう構成単位(A)の質量割合は、酸型換算量を意味する。
【0065】
上記構成単位(B)の含有割合は、構成単位(A)の含有割合に応じて適宜設定することが好ましい。具体的には、上記共重合体が含む全構成単位100モル%に対し10〜25モル%であることが好適である。下限としてより好ましくは12モル%以上、更に好ましくは14モル%以上、特に好ましくは16モル%以上であり、また上限としてより好ましくは24モル%以下、更に好ましくは23モル%以下、特に好ましくは21モル%以下、最も好ましくは20モル%以下である。
【0066】
上記構成単位(B)の含有割合はまた、上記共重合体が含む全構成単位100質量%に対し23〜77質量%であることが好ましい。より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0067】
上記共重合体において、構成単位(A)及び(B)の合計の比率は、全構成単位100モル%に対し75.1モル%以上であることが好ましい。より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%、すなわち構成単位(A)と構成単位(B)との二元系共重合体であることが特に好適である。
【0068】
上記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が500以上、3万以下であることが好ましい。これにより、耐ゲル性、カルシウムイオン捕捉能、粒子分散性及び炭酸カルシウム析出抑制能をより一層バランス良く発現することが可能になる。効果をより一層発揮させる観点から、Mwの下限としてより好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上であり、また、上限としてより好ましくは2万以下、更に好ましくは15000以下、特に好ましくは1万以下である。
【0069】
上記共重合体の分散度(Mw/Mn)は、1〜10であることが好ましい。これにより、本発明の作用効果がより充分に発揮される。効果をより一層発揮させる観点から、分散度の下限としてより好ましくは1.1以上であり、また上限としてより好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
本明細書中、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載の方法で求められる。
【0070】
上記共重合体はまた、中和率(最終中和率)が10モル%以上、100モル%未満であることが好ましい。これにより、共重合体の経時的安定性がより向上するため、取扱い性等に更に優れるものとなる。なお、上記共重合体はこのような中和率範囲でも白濁が生じず、透明性を発揮することができる。最終中和率の下限としてより好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、上限としてより好ましくは99モル%以下、更に好ましくは95モル%以下である。
本明細書中、共重合体の中和率は、共重合体が有するカルボキシル基の総量100モル%に対して塩を形成しているカルボキシル基の割合(モル%)を意味する。
【0071】
上記共重合体は、本発明の製造方法により得られるため、未反応単量体の残存量が少ないことに特徴を有する。具体的には、共重合体の総量100質量%に対し、未反応単量体の含有割合が5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。
本明細書中、未反応単量体の含有割合は、後述する実施例に記載の方法で求められる。
【0072】
特に本発明では、未反応の単量体(a)の残存量が少ないことに特徴を有する。具体的には、共重合体の総量100質量%に対し、未反応の単量体(a)の含有割合が2質量%以下であることが好ましい。これにより、共重合体を中和した際に単量体(a)が析出することが充分に抑制され、共重合体が溶液としてより安定に存在することが可能になる。より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0073】
〔用途〕
本発明の製造方法により得られるポリカルボン酸系共重合体は、未反応単量体の残存が充分に抑制され、所望の物性を充分に発現できるものである。特に、上述したように耐ゲル性及びカルシウムイオン捕捉能に優れる他、カーボンブラック等の粒子に対しても経時的に安定した分散性能を発揮することができる。それゆえ、特に水処理剤や洗剤等の水系用途に用いることが好適である。したがって、本発明の製造方法は、水処理剤又は洗剤組成物用のポリカルボン酸系共重合体を製造する方法であることが好ましいといえ、当該共重合体を含む水処理剤又は洗剤組成物や、当該共重合体を用いて水処理剤又は洗剤組成物を製造する方法は、本発明の好ましい形態である。洗剤組成物中では、上記共重合体は、洗剤ビルダー分散剤等として好適に作用し得る。その他、例えば、有機粒子分散剤、印刷インク、繊維処理剤、凝固剤、凝集剤、接着剤、土壌調整(改質)剤、難燃剤、スキンケア剤、ヘアケア剤、シャンプー・ヘアースプレー・石鹸・化粧品用添加剤、アニオン交換樹脂、繊維・写真用フィルムの染料媒染剤や助剤、製紙における顔料展着剤、紙力増強剤、乳化剤、防腐剤、織物・紙の柔軟剤、潤滑油の添加剤、水処理剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤等として用いることもできる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」とは「質量%」を意味し、「部」とは「質量部」を意味する。なお、分子量及び未反応単量体の含有割合は、以下の測定方法に従って測定した。
【0075】
1、分子量(Mw、Mn)の測定
装置:東ソー社製 HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ、GF−710−HQ、GF−1G 7B
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=7/3(体積比)
流速:0.5mL/分
温度:40℃
検量線:ポリアクリル酸標準サンプル(創和科学株式会社製)を用いて作成
検出器:RI
【0076】
2、単量体(a)の残存量測定
各重合体組成物中の単量体(a)(マレイン酸)の残存量は、以下の測定装置及び条件にて測定した。
測定装置:Waters Corporation製 e−2695
検出器:UV検出器 (200nm)
カラム:昭和電工社製 SHODEX RSpak DE−413L
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min。
【0077】
3、単量体(b)の残存量測定
各重合体組成物中の単量体(b)(イソプレノールへのエチレンオキシド付加物)の残存量は、以下の測定装置及び条件にて測定した。
測定装置:東ソー社製 8020シリーズ
カラム:資生堂社製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI
【0078】
4、固形分の測定
170℃に加熱したオーブンで中和度調製後の重合体(重合体組成物を48%NaOHで90%中和に調製したもの1.0gに水2.0gを加えたもの)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0079】
5、耐ゲル性評価
各重合体の耐ゲル性は、以下の耐ゲル性試験により評価した。
(1)500mLのトールビーカーに、純水とほう酸−ほう酸ナトリウムpH緩衝液と共重合体水溶液と塩化カルシウム溶液とを順に加え、共重合体を固形分濃度で100mg/L含み、カルシウム濃度が1000mgCaCO/L、pH8.5の試験液を各々調製する。
(2)(1)のトールビーカーをポリ塩化ビニリデンフィルムでシールして90℃の恒温槽に1時間静置する。
(3)沈殿の発生有無により耐ゲル性を評価する。沈殿が生じた場合、耐ゲル性は著しく低いといえる。
(4)沈殿が生じなかった場合については、撹拌してから、試験液を光路長5cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所製 UV―1800)を用いて、UV波長380nmでの吸光度(a)を測定する。ブランクとして、上記の試験液から塩化カルシウム溶液を除いた試験液を用意し、同様の操作を行って吸光度(b)を測定し、下記の式よりゲル化度を求める。
ゲル化度=(a)−(b)
ゲル化度の数値が小さいほど耐ゲル性が高いこととなる。
【0080】
6、カルシウムイオン捕捉能評価
各重合体のカルシウム捕捉能は、以下の方法により評価した。
(1)容量100ccのビーカーに、0.001mol/Lの塩化カルシウム水溶液50gを採取し、共重合体を固形分換算で10mg添加する。
(2)次に、(1)の水溶液のpHを希水酸化ナトリウムで9〜11に調整する。
(3)その後、(2)に撹拌下、カルシウムイオン電極安定剤として、4mol/Lの塩化カリウム水溶液1mlを添加する。
(4)イオンアナライザー(EA920型、オリオン社製)及びカルシウムイオン電極(93−20型、オリオン社製)を用いて、遊離のカルシウムイオンを測定し、共重合体1g当たり、炭酸カルシウム換算で何mgのカルシウムイオンがキレートされたか(キレート能の1種であるカルシウムイオン捕捉能)を計算で求める。なお、カルシウムイオン捕捉能の単位は「mgCaCO/g」である。
【0081】
7、カーボンブラック分散性評価
各重合体のカーボンブラック分散性は、以下の方法により評価した。
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、NaOH2.4gに純水を加えて600gにし、バッファー(1)を調整した。このバッファー(1)60gに塩化カルシウム二水和物0.163gを加え、更に純水を加えて1000gにし、バッファー(2)を調製した。
試験管(マルエム社製、リム付き試験管、目安入り30mL:直径18mm×高さ180mm)に、カーボンブラック0.03gを入れた後、バッファー(2)を27g、試験サンプル(重合体組成物)の0.1重量%水溶液(固形分換算)3gを加え、密封した。試験管を振り、クレーを均一に分散させた。その後、試験管を静置し、9時間及び126時間経過後の様子を、後ろに模様のある紙を置いて目視にて確認し、以下の基準でそれぞれ評価した。
<評価基準>
◎:分散液の色が黒色であった。
○:分散液の色が濃いグレーであり、後ろの模様が透けて見えなかった。
△:分散液の色が薄いグレーであり、後ろの模様が透けて見えた。
×:分散液の色が透明であった。
なお、分散液の色が濃く、かつ後ろの模様が透けて見えないほど、カーボンブラック分散性に優れると判断することができる。
【0082】
8、炭酸カルシウム析出抑制能評価
密栓のできる容量250mlのガラス瓶にpH8.5のホウ酸バッファーを含む脱塩水69gを入れ、塩化カルシウム2水塩0.3675%水溶液20g及び試験サンプル(重合体組成物)の0.01重量%水溶液(固形分換算)1g混合した。更に炭酸水素ナトリウム0.42%水溶液10gを加えて混合し、得られた炭酸カルシウム500ppmの過飽和水溶液のガラス瓶を密栓し、60℃で5時間加熱静置した。次いで冷却したのち沈殿物を0.1μmメンブランフィルターで濾過し、濾液をJIS K0101(1998年)
に従って分析し下式に従ってスケール抑制率を求めた。
抑制率(%)=100×(C−B)/(A−B)
A:加温処理前のCa濃度(=500ppm:炭酸カルシウム換算)
B:試験サンプルの代わりに水を使用した試験の濾液中のCa濃度
C:試験サンプル添加後の濾液中のCa濃度
【0083】
9、配合安定性評価
各重合体組成物につき、最終中和前の50%中和物と、最終生成物である90%中和物とについて、外観を観察し、以下の基準で評価した。
○:組成物(重合体溶液)が白濁せず、透明であった
×:組成物が白濁、分離又は析出していた
【0084】
実施例1
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水163.8部、イソプレノールにエチレンオキシドを平均10モル付加して得た化合物(以下「IPN−10」と称す)111.7部、無水マレイン酸83.2部を仕込み、撹拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液(以下「48%NaOH」と称す)70.7部で中和し、90℃に昇温した。反応容器を90℃に保った状態で30%過硫酸ナトリウム水溶液70.7部を200分かけて滴下した。滴下終了後、30分引き続いて90℃に温度を維持した後、重合反応を終了した(中和度:50モル%)。その後、重合温度以下にて48%NaOH56.5部で中和して、重合体組成物(1)を得た(最終中和度:90モル%)。
得られた重合体組成物(1)について、上述した評価・測定方法にて物性を評価した。結果を表2に示す。
【0085】
比較例1
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水124.0部、IPN−10を62.2部、及び無水マレイン酸46.3部を仕込み、65℃に昇温した。反応容器を65℃に保った状態で35%過酸化水素水溶液(「35%H」と称す)8.4部を添加した。次いで、5%L−アスコルビン酸水溶液(以下「5%L-As」と称す)59.0部を反応容器内に60分かけて滴下した。滴下終了後、30分引き続いて65℃に温度を維持した後、重合反応を終了した(中和度:0モル%)。その後、重合温度以下にて48%NaOH70.8部で中和して、比較重合体組成物(1)を得た(最終中和度:90モル%)。
得られた比較重合体組成物(1)について、上述した評価・測定方法にて物性を評価した。結果を表2に示す。
【0086】
比較例2
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水163.8部、IPN−10を111.7部、無水マレイン酸83.2部を仕込み、撹拌しながら48%NaOH70.7部で中和し、沸点(105℃)に昇温した。反応容器を沸点に保った状態で30%過硫酸ナトリウム水溶液78.7部を200分かけて滴下した。滴下終了後、30分引き続いて沸点を維持した後、重合反応を終了した(中和度:50モル%)。その後、重合温度以下にて48%NaOH56.5部で中和して、比較重合体組成物(2)を得た(最終中和度:90モル%)。
得られた比較重合体組成物(2)について、上述した評価・測定方法にて物性を評価した。結果を表2に示す。
【0087】
比較例3
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水163.8部、IPN−10を111.7部、無水マレイン酸83.2部を仕込み、撹拌しながら48%NaOH70.7部で中和し、65℃に昇温した(中和度:50モル%)。初期仕込液中の固体が溶解しなかったため、重合できなかった。
【0088】
実施例1及び比較例1、2で得た各組成物において、不飽和ジカルボン酸系単量体(a)に相当するMA(マレイン酸)、及び、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体(b)に相当するIPN−10の残存量を、前述した方法を用いて求めた。この値と、実施例1及び比較例1、2に記載の仕込量とから、IPN−10及びMAの反応率を計算した。結果を表1に示す。
なお、実施例1及び比較例1、2において重合反応終了後に行った中和工程を「後中和」と称す。従って、表1中の未反応単量体の残存量は、各重合反応終了直後の共重合体中の残存量である。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表2中、PEG鎖平均鎖長とは、各例で使用したIPN−10中、ポリエチレングリコール鎖の平均鎖長を意味する。
MA構成単位比率とは、各例で得た重合体が有する全構成単位100モル%に対する、マレイン酸に由来する構成単位の含有割合を意味する。
【0092】
上記実施例及び比較例より、中和率が30〜80モル%である不飽和ジカルボン酸の部分中和物と、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体とを含有する単量体成分を、重合温度70〜100℃で重合する重合工程を含む製造方法を採用することによって初めて、未反応単量体の残存が充分に抑制され、所望の物性を充分に発現できるポリカルボン酸系共重合体を容易かつ簡便に与えることが可能になることが分かった。