(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記第1方向と平行な感度方向を持ち、当該感度方向と垂直な感度影響方向の磁界成分に応じて感度が変化する磁電変換素子をそれぞれ少なくとも1つ含み、
前記第1磁気センサに含まれる1つの前記磁電変換素子と前記第2磁気センサに含まれる1つの前記磁電変換素子とのペアが少なくとも1つ形成されており、
前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子は、前記感度方向が互いに同一方向であるとともに、前記感度影響方向が互いに同一方向であり、
前記信号生成部は、前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた信号を生成する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電流センサ。
一方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子の前記感度影響方向と他方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子の前記感度影響方向とが逆方向である、
請求項8に記載の電流センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、比較的遠いノイズ源からの外来磁界は、ベクトルの方向と大きさが場所に依らず一様となるため、差動式の電流センサによって測定結果への影響を効果的に低減できる。しかしながら、例えば複数の測定チャンネルを有する電流センサの場合、それぞれ測定対象の電流が流れる複数のバスバが近接して配置される。この場合、1つのバスバに流れる電流を測定対象とすると、他のバスバに流れる電流はノイズ源となる。すなわち、比較的近い場所にあるノイズ源から外来磁界が発生する。ノイズ源が比較的近い場所にある場合、ノイズ源からの外来磁界は場所によってベクトルの方向と大きさ変化するため、ベクトルとしての磁界の差を検出する差動式の電流センサであっても、測定結果への影響を低減し難くなる。このような外来磁界の影響を低減するためには、一対の磁気センサの距離を短くすればよいが、そうすると測定対象の電流による磁界の差も小さくなるため、測定感度が低下してしまう。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外来磁界の影響による測定誤差を低減しつつ良好な測定感度を得ることができる電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電流センサは、電流路と、前記電流路に流れる電流による磁界ベクトルの第1方向の磁界成分が前記第1方向と直交する第2方向の位置に応じて変化する場所において、前記第2方向に並んで配置され、それぞれ前記第1方向と平行な感度方向を持つ第1磁気センサ及び第2磁気センサを含んだセンサ部と、前記第1磁気センサにおいて検出される磁界と前記第2磁気センサにおいて検出される磁界との差に応じた信号を生成する信号生成部と、前記センサ部に比べて前記電流路から前記第1方向へ離間した位置に、前記センサ部を挟んで前記電流路と対向する表面を持つ磁性部材とを有する。
【0010】
上記の構成によれば、前記磁性部材の前記表面の近くでは、前記表面の法線方向における磁界成分が大きくなる。そのため、前記磁性部材の前記表面と前記電流路との間に挟まれた前記センサ部においても、前記磁性部材の前記表面と垂直な方向における磁界成分が大きくなる。また、前記磁性部材の前記表面は、前記センサ部に比べて前記電流路から前記第1方向へ離間した位置にあるため、前記センサ部において前記磁性部材の前記表面と垂直な方向における磁界成分が大きくなれば、前記第1方向の磁界成分も大きくなる。前記センサ部において前記第1方向の磁界成分も大きくなると、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化が強調されて大きくなる。前記センサ部において、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは前記第2方向に並んでおり、また、それぞれの感度方向が前記第1方向と平行である。そのため、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化が前記センサ部において大きくなると、前記第1磁気センサにおいて検出される磁界と前記第2磁気センサにおいて検出される磁界との差が大きくなる。これにより、電流の測定感度が高くなる。また、同じ測定感度を得るために必要な前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの距離が短くなる。従って、前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの距離を短くすることで外来磁界の影響による測定誤差を低減しつつ、良好な測定感度を得ることが可能となる。
【0011】
好適に、前記電流路は、電流が流れる方向と垂直な仮想平面において線対称な楕円状の磁界を形成してよい。前記線対称な楕円状の磁界における楕円の長軸に対応する対称軸は、前記第1方向と平行であってよい。前記電流路と前記磁性部材とが、前記対称軸上に並んで配置されてよい。前記センサ部が、前記電流路と前記磁性部材との間に位置してよい。
【0012】
上記の構成によれば、前記楕円状の磁界において、楕円の長軸と垂直な方向の位置に応じた長軸と平行な磁界成分の変化は、楕円の短軸と垂直な方向の位置に応じた短軸と平行な磁界成分の変化に比べて、相対的に大きい。そのため、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサの感度方向と平行な前記第1方向が前記楕円状の磁界における楕円の長軸に対応する対称軸と平行であることにより、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化が大きくなる。また、前記楕円状の磁界において、楕円の長軸と垂直な方向の位置に応じた長軸と平行な磁界成分の変化は、長軸上において最も大きくなる。そのため、前記電流路と前記磁性部材とが前記対称軸上に並んで配置され、前記電流路と前記磁性部材との間に前記センサ部が位置することにより、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化がより大きくなる。従って、前記第1磁気センサにおいて検出される磁界と前記第2磁気センサにおいて検出される磁界との差が大きくなり、電流の測定感度が高くなる。
【0013】
好適に、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記仮想平面において前記対称軸を挟んで配置されてよい。
【0014】
上記の構成によれば、前記第2方向の位置に応じた磁界ベクトルの変化が最も大きい前記第1対称軸が前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの間に位置するため、前記第1磁気センサにおいて検出される磁界と前記第2磁気センサにおいて検出される磁界との差が大きくなり、電流の測定感度が高くなる。
【0015】
好適に、前記磁性部材の前記表面は、前記対称軸と垂直に交わる平面を含んでよい。
【0016】
上記の構成によれば、前記磁性部材の前記平面の法線方向と前記第1方向とが平行になるため、前記センサ部における前記第1方向の磁界成分がより大きくなり、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化がより強調されて大きくなる。これにより、前記第1磁気センサにおいて検出される磁界と前記第2磁気センサにおいて検出される磁界との差が大きくなり、電流の測定感度が高くなる。また、前記対称軸と垂直に交わる面が平面であるため、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化が連続的になる。これにより、前記センサ部の前記第2方向の位置に応じた電流の測定感度の変化が連続的になるため、前記センサ部の配置位置に要求される精度が緩和される。
【0017】
好適に、前記磁性部材の前記平面は、前記第2方向における当該平面の中心の位置で前記対称軸と垂直に交わってよい。
【0018】
上記の構成によれば、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化が前記対称軸を中心として連続的かつ対称となる。これにより、電流の測定感度が高くなる前記対称軸の近傍において、前記センサ部の配置位置に要求される精度が緩和される。
【0019】
好適に、前記電流路は、前記仮想平面における断面形状が、前記第1方向に平行な長辺と前記第2方向に平行な短辺とを持つ長方形であってよい。
これにより、前記電流路の周囲には、線対称な楕円状の磁界が形成される。
【0020】
好適に、前記磁性部材は、前記仮想平面における断面形状が、前記第1方向に平行な短辺と前記第2方向に平行な長辺とを持つ長方形であってよい。
これにより、前記センサ部における前記第1方向の磁界成分が大きくなる。
【0021】
好適に、前記電流路は、前記仮想平面における断面形状が、前記第1方向に平行な長辺と前記第2方向に平行な短辺とを持つ長方形であってよい。前記磁性部材は、前記仮想平面における断面形状が、前記第1方向に平行な短辺と前記第2方向に平行な長辺とを持つ長方形であってよい。前記磁性部材の前記長辺の長さは、前記第1方向における前記電流路と前記磁性部材との隙間の長さ以上であってよい。
これにより、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化が大きくなるため、電流の測定感度が高くなる。
【0022】
好適に、前記磁性部材の前記長辺の長さは、前記隙間の長さの2.5倍以下であってよい。
これにより、電流の測定感度を高めつつ、前記磁性部材の前記長辺の長さが抑制される。
【0023】
好適に、前記磁性部材の前記表面は、前記対称軸と同じ角度で交わり、互いの交わりによる交線が前記対称軸と垂直であり、前記電流路と対向する側における二面角が劣角となる姿勢で互いに傾斜し、前記仮想平面との交線の長さが等しい2つの平面を有してよい。
【0024】
上記の構成によれば、前記第1方向の磁界成分が更に強くなる。また、前記第2方向の位置に応じた前記第1方向の磁界成分の変化が前記対称軸を中心として連続的かつ対称となる。これにより、電流の測定感度が高くなる前記対称軸の近傍において、前記センサ部の配置位置に要求される精度が緩和される。
【0025】
好適に、前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとが1つの集積回路チップ内に設けられていてよい。
これにより、前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの距離が短くなるため、外来磁界の影響を受け難くなる。
【0026】
好適に、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記第1方向と平行な感度方向を持ち、当該感度方向と垂直な感度影響方向の磁界成分に応じて感度が変化する磁電変換素子をそれぞれ少なくとも1つ含んでよい。前記第1磁気センサに含まれる1つの前記磁電変換素子と前記第2磁気センサに含まれる1つの前記磁電変換素子とのペアが少なくとも1つ形成されてよい。前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子は、前記感度方向が互いに同一方向であるとともに、前記感度影響方向が互いに同一方向であってよい。前記信号生成部は、前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた信号を生成してよい。
【0027】
上記の構成によれば、前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子において、前記感度方向が互いに同一方向とされており、前記感度影響方向も互いに同一方向とされている。これにより、前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子に一様な外来磁界が加わった場合、前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子における感度は、当該外来磁界によって同様な変化を生じる。そのため、前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子のそれぞれにおける磁界の検出結果は、当該外来磁界によって同様な変化を生じる。従って、前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた信号は、当該外来磁界の影響を受け難くなる。
【0028】
好適に、前記ペアをなす2つの前記磁電変換素子が直列接続されたハーフブリッジ回路が形成されてよい。前記信号生成部は、前記ハーフブリッジ回路における2つの前記磁電変換素子の接続中点に生じる信号に基づいて、前記ハーフブリッジ回路における2つの前記磁電変換素子のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた信号を生成してよい。
【0029】
上記の構成によれば、前記ハーフブリッジ回路において直列接続された2つの前記磁電変換素子のそれぞれにおける磁界の検出結果は、一様な外来磁界によって同様な変化を生じる。そのため、前記ハーフブリッジ回路における2つの前記磁電変換素子の接続中点に生じる信号は、当該外来磁界の影響を受け難くなる。従って、当該接続中点に生じる信号に基づいて前記信号生成部により生成される信号は、当該外来磁界の影響を受け難くなる。
【0030】
好適に、2つの前記ハーフブリッジ回路が並列接続されたフルブリッジ回路が形成されてよい。一方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子の前記感度方向と他方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子の前記感度方向とが逆方向であってよい。前記信号生成部は、一方の前記ハーフブリッジ回路の前記接続中点に生じる信号と他方の前記ハーフブリッジ回路の前記接続中点に生じる信号との差に基づいて、各ハーフブリッジ回路における2つの前記磁電変換素子のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた信号を生成してよい。
【0031】
上記の構成によれば、2つの前記ハーフブリッジ回路の接続中点に生じる信号が、それぞれ、一様な外来磁界の影響を受け難くなる。そのため、2つの前記ハーフブリッジ回路の接続中点に生じる信号の差に基づいて前記信号生成部により生成される信号は、当該外来磁界の影響を受け難くなる。
また、上記の構成によれば、一方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子の前記感度方向と他方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子の前記感度方向とが逆方向とされている。これにより、2つの前記ハーフブリッジ回路における2つの接続中点に生じる信号の差は、各ハーフブリッジ回路における2つの前記磁電変換素子のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた信号となる。当該2つの接続中点に生じる信号の差は、前記第1磁気センサが配置される場所における磁界と前記第2磁気センサが配置される場所における磁界との差に対して、感度が高くなる。従って、前記信号生成部において生成される信号は、前記電流路に流れる電流に対する感度が高くなる。
【0032】
好適に、一方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子の前記感度影響方向と他方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子の前記感度影響方向とが逆方向であってよい。
【0033】
上記の構成によれば、一様な外来磁界が前記フルブリッジ回路の各磁電変換素子に加わった場合、前記接続中点に生じる信号に含まれる当該外来磁界の感度影響方向の磁界による成分が、2つの前記ハーフブリッジ回路における2つの接続中点に生じる信号の差をとることによって、相互に打ち消しあう。そのため、前記信号生成部において生成される信号は、当該外来磁界の影響を更に受け難くなる。
【0034】
好適に、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、2つの直列接続された磁電変換素子により形成されるハーフブリッジ回路をそれぞれ含んでよい。前記ハーフブリッジ回路における前記2つの磁電変換素子は、前記第1方向と平行かつ互いに逆向きの感度方向を持つとともに、当該感度方向と垂直かつ互いに同じ向きの感度影響方向を持ち、前記感度影響方向の磁界成分に応じてそれぞれ感度が変化してよい。前記第1磁気センサの前記ハーフブリッジ回路と、前記第2磁気センサの前記ハーフブリッジ回路とが並列接続されたフルブリッジ回路が形成されていてよい。前記フルブリッジ回路における対角の2つの磁電変換素子が、互いに逆向きの前記感度方向を持つとともに、互いに同じ向きの前記感度影響方向を持ってよい。前記信号生成部が、前記フルブリッジ回路における一方の前記ハーフブリッジ回路の接続中点に生じる信号と他方の前記ハーフブリッジ回路の接続中点に生じる信号との差に基づいて、一方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子において検出される磁界と他方の前記ハーフブリッジ回路に属する前記磁電変換素子において検出される磁界との差に応じた信号を生成してよい。
【0035】
上記の構成によれば、前記フルブリッジ回路における一方の前記ハーフブリッジ回路の接続中点に生じる信号と他方の前記ハーフブリッジ回路の接続中点に生じる信号との差において、前記磁電変換素子の感度変化に伴うそれぞれの前記信号の誤差成分が互いに打ち消し合い、トータルの前記誤差成分が小さくなる。従って、一様な外来磁界の影響により前記磁電変換素子の感度が変化しても、前記信号生成部で生成される信号は、当該外来磁界の影響を受け難くなる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、外来磁界の影響による測定誤差を低減しつつ良好な測定感度を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電流センサの一例を示す図である。
図1に示す電流センサは、測定対象の電流Iが流れる電流路10と、電流Iによる磁界(磁束密度)を検出する第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22を含んだセンサ部20と、第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22における磁界の向きを調節する磁性部材40とを有する。
【0039】
本明細書では、互いに直交する3つの方向を「X」、「Y」及び「Z」とする。
図1に示すように、X方向に含まれる互いに逆向きの方向を「X1」及び「X2」とし、Y方向に含まれる互いに逆向きの方向を「Y1」及び「Y2」とし、Z方向に含まれる互いに逆向きの方向を「Z1」及び「Z2」とする。Z方向は本発明における第1方向に対応し、X方向は本発明における第2方向に対応する。
【0040】
図1の例において、電流路10はY方向に延在する導体であり、X方向の幅がZ方向の幅に比べて狭い板状の形状を持つ。測定対象の電流Iは、電流路10の延在方向(Y方向)に流れる。
【0041】
センサ部20の第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22は、電流Iによる磁界ベクトルのZ方向の磁界成分がX方向の位置に応じて変化する場所に配置されており、
図1の例では、板状の電流路10における幅狭の面からZ方向へ離れた場所に配置される。また、第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22は、X方向に並んで配置される。
【0042】
第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22は、磁界に応じた電気信号を生成する磁電変換素子を含んで構成されており、特定の感度方向の磁界に対して強い感度を示す。磁電変換素子は、例えば、ホール素子や磁気抵抗素子(GMR素子,TMR素子など)である。第1磁気センサ21の感度方向S1と第2磁気センサ22の感度方向S2は、何れもZ方向と平行である。また
図1の例において、第1磁気センサ21の感度方向S1と第2磁気センサ22の感度方向S2は逆向きである。すなわち、第1磁気センサ21の感度方向S1は、
図1の矢印で表すZ方向と同じであり、第2磁気センサ22の感度方向S2は、このZ方向の矢印に対して反対の方向である。本発明の他の例では、感度方向S1と感度方向S2が同一方向でもよい。
【0043】
一例において、第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22は、同一の集積回路チップ内に形成される。
【0044】
磁性部材40は、センサ部20に比べて電流路10からZ方向へ離間した位置に、センサ部20を挟んで電流路10と対向する表面41を持つ。
図1の例において、磁性部材40の表面41は、板状の電流路10における幅狭の面からZ方向へ離れた場所に位置しており、この磁性部材40の表面41と電流路10との間にセンサ部20が配置される。磁性部材40は、例えばパーマロイやフェライト等の軟磁性を示す磁性体であり、高い透磁率を持つ。磁性部材40の表面41では、X方向の磁界成分に比べてZ方向の磁界成分が大きくなる。そのため、磁性部材40の表面41と電流路10との間に配置されるセンサ部20においても、Z方向の磁界成分が強調されて大きくなる。
【0045】
図2は、
図1に示す電流センサの電流通流方向(Y方向)と垂直な断面を示す図である。
電流Iの通流方向(Y方向)と垂直な仮想平面における電流路10の断面形状は、Z方向と平行な対称軸ALに対して線対称な形状であり、
図1の例では、Z方向に平行な長辺とX方向に平行な短辺とを持つ長方形である。電流路10と磁性部材40は、対称軸AL上に並んで配置される。センサ部20は、電流路10と磁性部材40との間に位置する。
【0046】
第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22は、電流Iの通流方向(Y方向)と垂直な同一の仮想平面上に位置しており、この仮想平面において対称軸ALを挟んで配置される。
図2の例において、第1磁気センサ21と第1磁気センサ21は、対称軸ALについて対称に配置される。また
図2の例において、第1磁気センサ21と第2磁気センサ22は、磁性部材40と電流路10との隙間のほぼ中央に配置される。
【0047】
磁性部材40の表面41は、
図1,
図2の例において平面である。対称軸ALは、この平面である表面41のX方向における中心の位置で、表面41と垂直に交わる。
【0048】
電流Iの通流方向(Y方向)と垂直な仮想平面における磁性部材40の断面形状は、対称軸ALに対して線対称な形状であり、
図2の例では、Z方向に平行な短辺とX方向に平行な長辺とを持つ長方形である。
【0049】
センサ部20と磁性部材40は、例えば
図1,
図2に示すように、共通の配線基板5に配置される。電流路10と配線基板5は、図示しない筐体に固定される。
【0050】
図3は、
図1に示す電流センサにおいて測定対象の電流Iにより生じる誘導磁界を説明するための図である。
図3Aは電流路の周囲に生じる誘導磁界MFの例を示し、
図3Bは磁性部材40と電流路10との隙間における誘導磁界の拡大図を示す。
【0051】
電流路10は、電流Iの通流方向(Y方向)と垂直な仮想平面において楕円状の誘導磁界MFを形成する。この楕円状の誘導磁界MFは、
図3において示すように、対称軸ALについて線対称である。対称軸ALは、線対称な楕円状の誘導磁界MFにおける楕円の長軸に対応する。
図3の例において、電流Iは紙面の表から裏に向かって流れるため、誘導磁界MFの方向は紙面の表から見て右回りとなる。
【0052】
図4は、磁性部材40が存在しない場合の誘導磁界の比較例を説明するための図である。
図4Aは電流路10の周囲に生じる誘導磁界MFaの例を示し、
図4Bは
図3Bと同じ場所における誘導磁界MFaの拡大図を示す。
図3と
図4を比較して分かるように、磁性部材40が存在する場合の磁性部材40と電流路10との隙間における誘導磁界MFは、磁性部材40が存在しない場合の誘導磁界MFaに比べて、Z方向の磁界成分が強調されて大きくなる。
【0053】
図3B及び
図4Bにおいて、「P1」は第1磁気センサ21の位置を示し、「P2」は第2磁気センサ22の位置を示す。位置P1における磁界ベクトルB1は、Z1方向の磁界成分B1zとX1方向の磁界成分B1xを持ち、位置P2における磁界ベクトルB2は、Z2方向の磁界成分B2zとX1方向の磁界成分B2xを持つ。磁性部材40が存在する場合におけるZ方向の磁界成分B1z,B2zは、磁性部材40が存在しない場合に比べて大きくなる。
【0054】
磁性部材40と空間との境界である表面41の近傍では、表面41と垂直なZ方向における磁界(磁束密度)[T]が連続であるとともに、表面41と平行なX方向における磁場の強さ[A/m]が連続である。また、透磁率の大きい磁性部材40では透磁率の低い空間に比べて相対的に磁界が大きくなる。そのため、表面41に近い空間では、表面41と垂直なZ方向における磁界成分が表面41と平行なX方向における磁界成分に比べて大きくなる。これにより、
図3B及び
図4Bにおいて示すように、磁性部材40と電流路10との隙間におけるZ方向の磁界成分B1z,B2zが、磁性部材40が存在しない場合に比べて強調されて大きくなる。すなわち、位置P1におけるZ方向の磁界成分B1zは上向きに大きくなり、位置P2におけるZ方向の磁界成分B2zは下向きに大きくなる。これは、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化が大きくなることに相当する。
【0055】
図5は、本実施形態に係る電流センサにおけるセンサ部20及び信号生成部30の構成の一例を示す図である。
図5の例において、第1磁気センサ21は磁電変換素子201及び202を含み、第2磁気センサ22は磁電変換素子203及び204を含む。
【0056】
本実施形態では、一例として、磁電変換素子201〜204がGMR素子などの磁気抵抗素子であるものとし、感度方向の磁界が大きくなると抵抗値が小さくなり、感度方向の磁界が小さくなると抵抗値が大きくなるものとする。
図5の例において、磁電変換素子201〜204の記号中の白い矢印は感度方向を示す。この例において、磁電変換素子201及び203の感度方向はZ1方向であり、磁電変換素子202及び204の感度方向はZ2方向である。
【0057】
磁電変換素子201及び202は、電源電圧VDDとグランドGNDとの間において直列に接続される。磁電変換素子201の一端は電源電圧VDDに接続され、磁電変換素子202の一端はグランドGNDに接続される。磁電変換素子201は、位置P1におけるZ1方向の磁界成分B1zが大きくなると抵抗値が減少し、磁界成分B1zが小さくなると抵抗値が増大する。磁電変換素子202は、磁界成分B1zが大きくなると抵抗値が増大し、磁界成分B1zが小さくなると抵抗値が減少する。そのため、磁電変換素子201と磁電変換素子202との接続点に生じる電圧V1は、位置P1におけるZ1方向の磁界成分B1zが大きくなると上昇し、磁界成分B1zが小さくなると低下する。
【0058】
磁電変換素子203及び204は、電源電圧VDDとグランドGNDとの間において直列に接続される。磁電変換素子203の一端は電源電圧VDDに接続され、磁電変換素子204の一端はグランドGNDに接続される。磁電変換素子203は、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなると抵抗値が増大し、磁界成分B2zが小さくなると抵抗値が減少する。磁電変換素子204は、磁界成分B2zが大きくなると抵抗値が減少し、磁界成分B2zが小さくなると抵抗値が増大する。そのため、磁電変換素子203と磁電変換素子204との接続点に生じる電圧V2は、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなると低下し、磁界成分B2zが小さくなると上昇する。
【0059】
電流路10においてY1方向(
図2における紙面の表から裏へ向かう方向)に流れる電流Iが大きくなると、位置P1におけるZ1方向きの磁界成分B1zが大きくなるとともに、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなり、第1磁気センサ21の電圧V1が上昇するとともに、第2磁気センサ22の電圧V2が低下する。これにより、電圧差(V1−V2)が大きくなる。逆に、このY1方向の電流Iが小さくなると、電圧差(V1−V2)が小さくなる。
【0060】
本実施形態に係る電流センサは、第1磁気センサ21において検出される磁界と第2磁気センサ22において検出される磁界との差に応じた信号DATを生成する信号生成部30を有する。
図5の例において、信号生成部30は、第1磁気センサ21の出力電圧V1と第2磁気センサ22の出力電圧V2との差(V1−V2)を増幅するアンプ回路31と、アンプ回路31の出力信号に基づいて、電流Iによる誘導磁界MFに比例した信号DATを生成する処理部32を有する。処理部32は、例えば、アンプ回路31の出力信号を所定データ長のデジタル信号に変換するAD変換器と、このデジタル信号に所定の信号処理を施して信号DATを生成するコンピュータ等の信号処理回路を含んで構成される。信号DATは、電流Iの測定結果を示す。
【0061】
図6は、本発明の実施形態に係る電流センサにおいて測定対象の電流により生じる誘導磁界MFのシミュレーション結果を示す図である。
図6における矢印は、電流Iの通流方向(Y方向)と垂直な仮想平面における磁界の向きを示す。
図6において示すように、磁性部材40の表面41の近傍における磁界の方向は、表面41の法線方向であるZ方向とほぼ平行になる。そのため、表面41と電流路10との隙間の空間では、Z方向の磁界成分が強調される。
【0062】
図7は、
図6と同じ条件で磁性部材40が存在しない場合における誘導磁界MFaのシミュレーション結果を示す図である。
図6と
図7を比較して分かるように、磁性部材40と電流路10との隙間における磁界は、磁性部材40が存在しない場合に比べて、Z方向の磁界成分が強調されて大きくなる。
【0063】
図8は、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化のシミュレーション結果を示す図である。
図8Aは磁性部材40が存在しない場合のシミュレーション結果を示し、
図8Bは磁性部材40が存在する場合のシミュレーション結果を示す。このシミュレーション結果のグラフにおける縦軸は、第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22が配置されるZ方向の位置(磁性部材40と電流路10との隙間の中央)におけるZ方向の磁界成分[T]を示し、横軸は対称軸ALを基準とするX方向の位置を示す。
【0064】
図8Aと
図8Bを比較して分かるように、X方向の位置の変化に対するZ方向の磁界成分の変化率(以下、「磁束密度勾配」と記す場合がある。)は、磁性部材40を設けることによって大きくなる。また、磁性部材40を設けることによって磁束密度勾配が一定とみなせる領域が拡大し、配置位置に要求される精度が緩和される。磁性部材40が存在しない場合の磁束密度勾配の最大値は「−3.7mT/mm」、磁性部材40を設けた場合の磁束密度勾配の最大値は「−6.0mT/mm」である。磁束密度勾配は、何れも対称軸AL付近において最大となる。
【0065】
図9は、磁性部材40と電流路10との隙間を一定(D=4mm)に保って磁性部材40の長さLを変化させた場合における磁束密度勾配のシミュレーション結果を示す図である。縦軸の磁束密度勾配[mT/mm]は、対称軸AL上における磁性部材40と電流路10との隙間の中央における値である。
【0066】
図9のシミュレーション結果から分かるように、磁性部材40のX方向における長さL(Y方向に垂直な断面の長方形における長辺の長さ)が、磁性部材40と電流路10との隙間の長さD以上になると、磁束密度勾配が最大値(−6.0mT/mm)に近い値となる。また、磁性部材40の長さLが隙間の長さDに対して2.5倍(L=10mm)より大きくなると、磁束密度勾配は減少傾向を示す。従って、大きな磁束密度勾配を得るためには、隙間の長さDに対する磁性部材40の長さLの比率「L/D」が1以上であることが好ましい。また、磁性部材40の長さLを抑える観点から、この比率「L/D」は2.5以下であることが好ましい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る電流センサによれば、磁性部材40の表面41の近くでは、表面41の法線方向における磁界成分が大きくなる。そのため、磁性部材40の表面41と電流路10との間に挟まれたセンサ部20においても、磁性部材40の表面41と垂直な方向における磁界成分が大きくなる。また、磁性部材40の表面41は、センサ部20に比べて電流路10からZ方向へ離間した位置にあるため、センサ部20において磁性部材40の表面41と垂直な方向における磁界成分が大きくなれば、Z方向の磁界成分も大きくなる。センサ部20においてZ方向の磁界成分も大きくなると、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化が強調されて大きくなる。センサ部20において、第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22はX方向に並んでおり、また、それぞれの感度方向S1,S2がZ方向と平行である。そのため、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化がセンサ部20において大きくなると、第1磁気センサ21において検出される磁界と第2磁気センサ22において検出される磁界との差が大きくなる。これにより、電流Iの測定感度が高くなる。また、同じ測定感度を得るために必要な第1磁気センサ21と第2磁気センサ22との距離が短くなる。従って、第1磁気センサ21と第2磁気センサ22との距離を短くすることで外来磁界の影響による測定誤差を低減しつつ、良好な測定感度を得ることができる。
【0068】
本実施形態に係る電流センサによれば、電流路10により形成される楕円状の誘導磁界MFにおいて、楕円の長軸と垂直な方向(X方向)の位置に応じた長軸と平行な磁界成分(Z方向の磁界成分)の変化は、楕円の短軸と垂直な方向(Z方向)の位置に応じた短軸と平行な磁界成分(X方向の磁界成分)の変化に比べて、相対的に大きい。そのため、第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22の感度方向S1,S2が楕円状の誘導磁界MFにおける楕円の長軸に対応する対称軸ALと平行であることにより、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化を大きくすることができる。
更に、楕円状の誘導磁界MFにおいて、楕円の長軸と垂直な方向(X方向)の位置に応じた長軸と平行な磁界成分(Z方向の磁界成分)の変化は、長軸上において最も大きくなる。そのため、電流路10と磁性部材40とが楕円の長軸に沿った対称軸AL上に並んで配置され、その電流路10と磁性部材40との間にセンサ部20が位置することにより、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化をより大きくすることができる。
従って、第1磁気センサ21において検出される磁界と第2磁気センサ22において検出される磁界との差を大きくできるため、電流の測定感度を高めることができる。
【0069】
本実施形態に係る電流センサによれば、X方向の位置に応じた磁界ベクトルの変化が最も大きくなる場所である対称軸ALが第1磁気センサ21と第2磁気センサ22との間に位置する。これにより、第1磁気センサ21において検出される磁界と第2磁気センサ22において検出される磁界との差をより大きくできるため、電流の測定感度を高めることができる。
【0070】
本実施形態に係る電流センサによれば、磁性部材41の表面41が平面であり、その法線方向とZ方向とが平行になる。そのため、センサ部20におけるZ方向の磁界成分がより大きくなり、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化がより強調されて大きくなる。これにより、第1磁気センサ21において検出される磁界と第2磁気センサ22において検出される磁界との差を大きくできるため、電流の測定感度を高めることができる。また、対称軸ALと垂直に交わる表面41が平面であるため、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化が連続的になる。これにより、センサ部20のX方向の位置に応じた電流の測定感度の変化が連続的になるため、センサ部20の配置位置に要求される精度を緩和することが可能となり、製造が容易になる。
【0071】
本実施形態に係る電流センサによれば、磁性部材40の表面(平面)41は、X方向における表面(平面)41の中心の位置で対称軸ALと垂直に交わる。そのため、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化が、対称軸ALを中心として連続的かつ対称となる。これにより、電流の測定感度が高くなる対称軸ALの近傍において、センサ部20の配置位置に要求される精度を緩和できる。
【0072】
本実施形態に係る電流センサによれば、電流Iの通流方向(Y方向)と垂直な仮想平面における電流路10の断面形状が、Z方向に平行な長辺とX方向に平行な短辺とを持つ長方形であり、当該仮想平面における磁性部材40の断面形状が、Z方向に平行な短辺とX方向に平行な長辺とを持つ長方形であり、磁性部材40のX方向の長さLは、Z方向における電流路10と磁性部材40との隙間の長さD以上である。これにより、
図9のシミュレーション結果において示すように、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分が大きくできるため、電流の測定感度を高めることができる。
【0073】
本実施形態に係る電流センサによれば、磁性部材40のX方向の長さLは、Z方向における電流路10と磁性部材40との隙間の長さDの2.5倍以下である。これにより、
図9のシミュレーション結果において示すように、電流の測定感度を高めつつ、磁性部材40のX方向の長さを抑制できる。
【0074】
本実施形態に係る電流センサによれば、第1磁気センサ21と第2磁気センサ22が1つの集積回路チップ内に設けられる。これにより、第1磁気センサ21と第2磁気センサ22の距離が短くなるため、外来磁界の影響を受け難くすることができる。
【0075】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る電流センサは、上述した第1の実施形態に係る電流センサにおけるセンサ部20の構成を変更したものであり、他の構成は概ね第1の実施形態に係る電流センサと同一である。
【0076】
図10は、第2の実施形態に係る電流センサにおけるセンサ部20A及び信号生成部30の構成の一例を示す図である。
図10の例において、センサ部20Aは、第1磁気センサ21Aと第2磁気センサ22Aを有する。第1磁気センサ21A及び第2磁気センサ22Aは、それぞれ第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同じ場所(
図3のP1,P2)に配置されており、これらの場所における電流Iの磁界は第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同じである。
【0077】
図10の例において、第1磁気センサ21Aは磁電変換素子211及び212を含み、第2磁気センサ22Aは磁電変換素子213及び214を含む。磁電変換素子211〜214は、Z方向と平行な感度方向をそれぞれ持つとともに、感度方向に対して垂直な方向の磁界成分に応じてそれぞれ感度が変化する。本明細書では、磁電変換素子の感度に変化を生じさせる磁界の方向を「感度影響方向」と呼ぶ。例えばGMR素子やTMR素子などの磁気抵抗素子の場合、ハードバイアス層によるバイアス磁界の方向が感度影響方向となる。感度影響方向の磁界成分が変化すると、見かけ上バイアス磁界が変化したことと等価になるため、感度方向の磁界を抵抗値へ変換する度合いである感度が変化する。また、磁気収束板を用いたホール素子においても、感度方向に比べて相対的に小さい出力信号を生じる感度影響方向が感度方向に対して垂直な方向に存在する場合がある。
【0078】
図10の例において、磁電変換素子211〜214の記号中の白い矢印は感度方向を示し、黒い矢印は感度影響方向を示す。この例において、磁電変換素子211及び213の感度方向はZ1方向であり、感度影響方向はX1方向である。また、磁電変換素子212及び214の感度方向はZ2方向であり、感度影響方向はX2方向である。
【0079】
本実施形態では、第1磁気センサ21Aに属する磁電変換素子211と第2磁気センサ22Aに属する磁電変換素子213とが1つのペアを形成し、第1磁気センサ21Aに属する磁電変換素子212と第2磁気センサ22Aに属する磁電変換素子214とが別の1つのペアを形成する。ペアをなす2つの磁電変換素子(211及び213のペア、212及び214のペア)は、互いの感度影響方向が同一であり、互いの感度方向も同一である。
【0080】
図5に示すセンサ部20では、同じ磁気センサに属する(ほぼ同じ場所に位置する)2つ磁電変換素子が電源電圧VDDとグランドGNDとの間に直列接続される。これに対し、
図10に示すセンサ部20Aでは、上述したペアをなす2つの磁電変換素子、すなわち、異なる磁気センサに属する(対称軸ALに対して対称な場所に位置する)2つ磁電変換素子が、電源電圧VDDとグランドGNDとの間に直列接続される。
【0081】
具体的には、磁電変換素子211及び213が電源電圧VDDとグランドGNDとの間において直列接続される。磁電変換素子211の一端が電源電圧VDDに接続され、磁電変換素子213の一端がグランドGNDに接続される。磁電変換素子211及び213の接続中点には、電圧V3が生じる。直列接続された磁電変換素子211及び213は、ハーフブリッジ回路HB1を形成する。
【0082】
また、磁電変換素子212及び214が電源電圧VDDとグランドGNDとの間において直列接続される。磁電変換素子212の一端が電源電圧VDDに接続され、磁電変換素子214の一端がグランドGNDに接続される。磁電変換素子212及び214の接続中点には、電圧V4が生じる。直列接続された磁電変換素子212及び214は、ハーフブリッジ回路HB2を形成する。
【0083】
この2つのハーフブリッジ回路HB1及びHB2は並列接続されており、1つのフルブリッジ回路を形成している。各磁電変換素子211〜214の感度方向は、輪郭線の矢印で示している。各磁電変換素子211〜214の感度影響方向は、黒色で塗りつぶした矢印で示している。ハーフブリッジ回路HB1に属する磁電変換素子211及び213の感度方向(Z1)と、ハーフブリッジ回路HB2に属する磁電変換素子212及び214の感度方向(Z2)とが逆方向である。また、ハーフブリッジ回路HB1に属する磁電変換素子211及び213の感度影響方向(X1)と、ハーフブリッジ回路HB2に属する磁電変換素子212及び214の感度影響方向(X2)とが逆方向である。
【0084】
磁電変換素子211は、位置P1におけるZ1方向の磁界成分B1zが大きくなると抵抗値が減少し、磁界成分B1zが小さくなると抵抗値が増大する。磁電変換素子213は、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなると抵抗値が増大し、磁界成分B2zが小さくなると抵抗値が減少する。そのため、ハーフブリッジ回路HB1を形成する磁電変換素子211及び213の接続中点に生じる電圧V3は、磁界成分B1z及び磁界成分B2が大きくなると上昇し、磁界成分B1z及び磁界成分B2が小さくなると低下する。
【0085】
磁電変換素子212は、位置P1におけるZ1方向の磁界成分B1zが大きくなると抵抗値が増大し、磁界成分B1zが小さくなると抵抗値が減少する。磁電変換素子214は、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなると抵抗値が減少し、磁界成分B2zが小さくなると抵抗値が増大する。そのため、ハーフブリッジ回路HB2を形成する磁電変換素子212及び214の接続中点に生じる電圧V4は、磁界成分B1z及び磁界成分B2が大きくなると低下し、磁界成分B1z及び磁界成分B2が小さくなると上昇する。
【0086】
電流路10のY1方向の電流Iが大きくなると、位置P1におけるZ1方向きの磁界成分B1zが大きくなるとともに、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなり、電圧V3が上昇するとともに電圧V4が低下する。これにより、電圧差(V3−V4)が大きくなる。逆に、Y1方向の電流Iが小さくなると、電圧差(V3−V4)が小さくなる。
【0087】
本実施形態において、信号生成部30は、第1磁気センサ21Aに含まれる磁電変換素子(211、212)において検出される磁界と、第2磁気センサ22Aに含まれる磁電変換素子(213、214)において検出される磁界との差に応じた信号DATを生成する。すなわち、信号生成部30は、ハーフブリッジ回路HB1の接続中点に生じる電圧V3と、ハーフブリッジ回路HB2の接続中点に生じる電圧V4との差(V3−V4)に基づいて信号DATを生成する。
【0088】
アンプ回路31は、電圧V3と電圧V4との差(V3−V4)を増幅する。処理部32は、アンプ回路31の出力信号に基づいて、電流Iによる誘導磁界MFに比例した信号DATを生成する。信号DATは、電流Iの測定結果を示す。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係る電流センサでは、第1磁気センサ21Aに含まれる磁電変換素子211と第2磁気センサ22Aに含まれる磁電変換素子213とのペアによるハーフブリッジ回路HB1が形成されており、このペアをなす磁電変換素子211及び213の感度方向が互いに同一方向であるとともに、感度影響方向が互いに同一方向である。ペアをなす磁電変換素子211及び213に一様な外来磁界が加わった場合、感度影響方向が互いに同一方向(X1)であるため、磁電変換素子211及び213それぞれの感度の変化が同程度となる。従って、ハーフブリッジ回路HB1の接続中点に生じる電圧V3は、磁電変換素子211及び213のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた電圧となり、感度影響方向の外来磁界による影響を受け難くなる。
また、第1磁気センサ21Aに含まれる磁電変換素子212と第2磁気センサ22Aに含まれる磁電変換素子214とのペアによるハーフブリッジ回路HB2が形成されており、このペアをなす磁電変換素子212及び214の感度方向が互いに同一方向であるとともに、感度影響方向が互いに同一方向である。ペアをなす磁電変換素子212及び214に一様な外来磁界が加わった場合、感度影響方向が互いに同一方向(X2)であるため、磁電変換素子211及び213それぞれの感度の変化が同程度となる。従って、ハーフブリッジ回路HB2の接続中点に生じる電圧V4は、磁電変換素子212及び214のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた電圧となり、感度影響方向の外来磁界による影響を受け難くなる。
従って、電圧V3と電圧V4との差(V3−V4)に基づいて生成される信号DATは、感度影響方向の外来磁界による影響を受け難くなるため、外来磁界による電流測定精度の誤差を抑えることができる。
【0090】
また、本実施形態に係る電流センサでは、ハーフブリッジ回路HB1及びHB2が並列に接続されたフルブリッジ回路が形成されており、ハーフブリッジ回路HB1に属する磁電変換素子211及び213の感度方向(Z1)とハーフブリッジ回路HB2に属する磁電変換素子212及び214の感度方向(Z2)とが逆方向となっている。これにより、電圧V3と電圧V4との差(V3−V4)は、ハーフブリッジ回路HB1の磁電変換素子211及び213のそれぞれにおいて検出される磁界の差、並びに、ハーフブリッジ回路HB2の磁電変換素子212及び214のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた電圧となる。また、位置P1のZ方向の磁界と位置P1のZ方向の磁界との差が電流Iに応じて変化した場合、電圧V3の変化の方向と電圧V4の変化の方向とが逆になる。そのため、電圧V3と電圧V4との差(V3−V4)は、電圧V3や電圧V4に比べて、位置P1のZ方向の磁界と位置P2のZ方向の磁界の差に対する感度が高くなる。従って、電圧V3と電圧V4との差(V3−V4)に基づいて、電流Iを高い感度で測定できる。
【0091】
更に、本実施形態に係る電流センサでは、フルブリッジ回路を形成する一方のハーフブリッジ回路HB1に属する磁電変換素子211及び213の感度影響方向(X1)と、他方のハーフブリッジ回路HB2に属する磁電変換素子212及び214の感度影響方向(X2)とが逆方向となっている。これにより、電圧V3に含まれる感度影響方向の磁界による成分と、電圧V4に含まれる感度影響方向の磁界による成分とが、電圧V3と電圧V4との差(V3−V4)において相互に打ち消しあう。従って、外来磁界による電流測定精度の誤差を更に効果的に抑えることができる。
【0092】
次に、本実施形態の電流センサにおけるセンサ部の変形例を説明する。
【0093】
図11は、変形例に係るセンサ部20Bの構成を示す図である。
図11に示すセンサ部20Bは、
図10に示すセンサ部20Aにおける第1磁気センサ21Aを第1磁気センサ21Bに置き換え、第2磁気センサ22Aを第2磁気センサ22Bに置き換えたものである。第1磁気センサ21B及び第2磁気センサ22Bは、それぞれ第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同じ場所(
図3のP1,P2)に配置されており、これらの場所における電流Iの磁界は第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同じである。
【0094】
図11の変形例において、第1磁気センサ21Bは磁電変換素子211及び212Bを含み、第2磁気センサ22Bは磁電変換素子213及び214Bを含む。磁電変換素子211及び213は、
図10に示すセンサ部20Aにおける同一符号の構成要素と同じであり、ハーフブリッジ回路HB1を形成する。磁電変換素子212B及び214Bは、
図10に示すセンサ部20Aにおける磁電変換素子212及び214の感度影響方向をそれぞれ逆方向(X1)に反転させたものである。磁電変換素子212B及び214Bは、電源電圧VDDとグランドGNDとの間において直列接続されており、ハーフブリッジ回路HB2を形成する。信号生成部30は、ハーフブリッジ回路HB1の接続中点の電圧V3とハーフブリッジ回路HB2の接続中点の電圧V4との差(V3−V4)に応じた信号DATを生成する。
【0095】
図11に示す変形例のセンサ部20Bにおいても、ハーフブリッジ回路HB2の接続中点の電圧V4は、磁電変換素子212B及び214Bのそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた電圧となり、感度影響方向の外来磁界による影響を受け難い。従って、電圧V3とV4の差(V3−V4)に基づいて、感度影響方向の外来磁界による誤差が抑制された電流測定結果を得ることができる。
【0096】
図12は、他の変形例に係るセンサ部20Cの構成を示す図である。
図12に示すセンサ部20Cは、
図10に示すセンサ部20Aにおける第1磁気センサ21Aを第1磁気センサ21Cに置き換え、第2磁気センサ22Aを第2磁気センサ22Cに置き換えたものである。第1磁気センサ21C及び第2磁気センサ22Cは、それぞれ第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同じ場所(
図3のP1,P2)に配置されており、これらの場所における電流Iの磁界は第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同じである。
【0097】
図12の変形例において、第1磁気センサ21Cは磁電変換素子211を含み、第2磁気センサ22Cは磁電変換素子213を含む。磁電変換素子211及び213は、
図10に示すセンサ部20Aにおける同一符号の構成要素と同じであり、ハーフブリッジ回路HB1を形成する。
図12に示すセンサ部20Cでは、
図10に示すセンサ部20Aにおけるハーフブリッジ回路HB2が省略されている。
【0098】
信号生成部30は、ハーフブリッジ回路HB1の接続中点の電圧V3に応じた信号DATを生成する。信号生成部30は、電圧V3を増幅するアンプ回路31Cと、アンプ回路31Cの出力信号に基づいて、電流Iによる誘導磁界MFに比例した信号DATを生成する処理部32とを有する。
【0099】
図12に示す変形例のセンサ部20Cにおいても、ハーフブリッジ回路HB1の接続中点の電圧V3は、磁電変換素子211及び213のそれぞれにおいて検出される磁界の差に応じた電圧となり、感度影響方向の外来磁界による影響を受け難くい。従って、電圧V3とV4の差(V3−V4)に基づいて、感度影響方向の外来磁界による誤差が抑制された電流測定結果を得ることができる。
【0100】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態に係る電流センサは、上述した第1の実施形態に係る電流センサにおけるセンサ部20の構成を変更したものであり、他の構成は概ね第1の実施形態に係る電流センサと同一である。
【0101】
図13は、第3の実施形態に係る電流センサにおけるセンサ部20D及び信号生成部30の構成の一例を示す図である。
図13の例において、センサ部20Dは、第1磁気センサ21Dと第2磁気センサ22Dを有する。第1磁気センサ21D及び第2磁気センサ22Dは、それぞれ第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同じ場所(
図3のP1,P2)に配置されており、これらの場所における電流Iの磁界は第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同じである。
【0102】
図13の例において、第1磁気センサ21Dは磁電変換素子221及び222を含む。磁電変換素子221及び222は、電源電圧VDDとグランドGNDとの間において直列に接続されており、1つのハーフブリッジ回路を形成する。磁電変換素子221の一端は電源電圧VDDに接続され、磁電変換素子222の一端はグランドGNDに接続される。
【0103】
また
図13の例において、第2磁気センサ22Dは磁電変換素子223及び224を含む。磁電変換素子223及び224は、電源電圧VDDとグランドGNDとの間において直列に接続されており、1つのハーフブリッジ回路を形成する。磁電変換素子223の一端は電源電圧VDDに接続され、磁電変換素子224の一端はグランドGNDに接続される。
【0104】
図10〜
図12と同様に、
図13における磁電変換素子221〜224の記号中の白い矢印は感度方向を示し、黒い矢印は感度影響方向を示す。第1磁気センサ21Dにおける磁電変換素子221及び222は、Z方向と平行かつ互いに逆向きの感度方向を持つ。磁電変換素子221の感度方向はZ1方向であり、磁電変換素子222の感度方向はZ2方向である。また、磁電変換素子221及び222は互いに同じ向きの感度影響方向を持つ。すなわち、磁電変換素子221及び222の感度影響方向は共にX1方向である。
【0105】
他方、第2磁気センサ22Dにおける磁電変換素子223及び224も、Z方向と平行かつ互いに逆向きの感度方向を持つ。磁電変換素子223の感度方向はZ1方向であり、磁電変換素子224の感度方向はZ2方向である。また、磁電変換素子223及び224は互いに同じ向きの感度影響方向を持つ。すなわち、磁電変換素子223及び224の感度影響方向は共にX2方向である。
【0106】
第1磁気センサ21Dのハーフブリッジ回路(221,222)と第2磁気センサ22Dのハーフブリッジ回路(223,224)とが並列接続されており、1つのフルブリッジ回路を形成している。このフルブリッジ回路において、対角の磁電変換素子221及び224は、互いに逆向きの感度方向を持つとともに、互いに逆向きの感度影響方向を持つ。また、対角の磁電変換素子222及び223も同様であり、互いに逆向きの感度方向を持つとともに、互いに逆向きの感度影響方向を持つ。
【0107】
磁電変換素子221は、位置P1におけるZ1方向の磁界成分B1zが大きくなると抵抗値が減少し、磁界成分B1zが小さくなると抵抗値が増大する。磁電変換素子222は、磁界成分B1zが大きくなると抵抗値が増大し、磁界成分B1zが小さくなると抵抗値が減少する。そのため、磁電変換素子221と磁電変換素子222との接続点に生じる電圧V5は、位置P1におけるZ1方向の磁界成分B1zが大きくなると上昇し、磁界成分B1zが小さくなると低下する。
【0108】
磁電変換素子223は、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなると抵抗値が増大し、磁界成分B2zが小さくなると抵抗値が減少する。磁電変換素子224は、磁界成分B2zが大きくなると抵抗値が減少し、磁界成分B2zが小さくなると抵抗値が増大する。そのため、磁電変換素子203と磁電変換素子204との接続点に生じる電圧V6は、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなると低下し、磁界成分B2zが小さくなると上昇する。
【0109】
電流路10のY1方向の電流Iが大きくなると、位置P1におけるZ1方向きの磁界成分B1zが大きくなるとともに、位置P2におけるZ2方向の磁界成分B2zが大きくなり、電圧V5が上昇するとともに電圧V6が低下する。これにより、電圧差(V5−V6)が大きくなる。逆に、Y1方向の電流Iが小さくなると、電圧差(V5−V6)が小さくなる。
【0110】
本実施形態において、信号生成部30は、第1磁気センサ21Dに含まれる磁電変換素子(221、222)において検出される位置P1の磁界と、第2磁気センサ22Dに含まれる磁電変換素子(223、224)において検出される位置P2の磁界との差に応じた信号DATを生成する。すなわち、信号生成部30は、第1磁気センサ21Dのハーフブリッジ回路の接続中点に生じる電圧V5と、第2磁気センサ22Dのハーフブリッジ回路の接続中点に生じる電圧V6との差(V5−V6)に基づいて信号DATを生成する。信号DATは、電流路10に流れる電流Iの大きさを示す信号となる。
【0111】
ここで、第1磁気センサ21Dの磁電変換素子221及び222に対して、X方向に一様な外来磁界が加わった場合を考える。この場合、磁電変換素子221及び222の感度方向が逆であるとともに感度影響方向が同じであるため、磁電変換素子221の感度変化に伴う抵抗変化の方向と、磁電変換素子221の感度変化に伴う抵抗変化の方向とが互いに逆になる。すなわち、磁電変換素子221の抵抗が大きくなると磁電変換素子222の抵抗が小さくなり、磁電変換素子221の抵抗が小さくなると磁電変換素子222の抵抗が大きくなる。これにより、磁電変換素子221及び222のハーフブリッジ回路では、磁電変換素子221の抵抗変化と磁電変換素子222の抵抗変化とが打ち消し合う。その結果、磁電変換素子221及び222の全体の直列抵抗は、X方向の外来磁界に応じて変化し難くなる。仮に、磁電変換素子221及び222の直列抵抗がX方向の外来磁界によらずほぼ一定であるとすると、電圧V5は、この一定の直列抵抗と磁電変換素子222の抵抗との抵抗比(分圧比)にほぼ比例する。従って、電圧V5は、Z1方向の磁界成分B1zに応じた磁電変換素子222の抵抗変化の成分(以下、「測定成分」と記す。)と、X方向の外来磁界による感度変化に応じた磁電変換素子222の抵抗変化の成分(以下、「感度誤差成分」と記す。)とを含む。第2磁気センサ22Dのハーフブリッジ回路の接続中点に生じる電圧V6もこれと同様であり、Z2方向の磁界成分B2zに応じた磁電変換素子224の抵抗変化の成分(測定成分)と、X方向の外来磁界による感度変化に応じた磁電変換素子224の抵抗変化の成分(感度誤差成分)とを含む。
【0112】
磁電変換素子222と磁電変換素子224は、感度影響方向が互いに逆である(X1、X2)。そのため、X方向に一様な外来磁界が加わった場合、磁電変換素子222及び224の一方は感度が高くなり、他方は感度が低くなる。また、磁電変換素子222と磁電変換素子224は、感度方向が互いに同じあり(Z2)、感度方向において印加される磁界の向きが互いに逆である(B1z、B2z)。そのため、感度方向において印加される磁界の絶対値が変化した場合、磁電変換素子222及び224の一方は抵抗が大きくなり、他方は抵抗が小さくなる。
【0113】
以上のことから、磁電変換素子222及び224の一方において抵抗が大きくなり、かつ、感度が高くなると、磁電変換素子222及び224の他方において抵抗が小さくなり、かつ、感度が低くなる。この場合、磁電変換素子222及び224は、何れも、感度一定の状態に比べて抵抗が大きくなる(感度誤差成分により抵抗が増大する)。従って、電圧V5と電圧V6との差(V5−V6)においては、それぞれの感度誤差成分が打ち消し合い、トータルの感度誤差成分が微小になる。
また、磁電変換素子222及び224の一方において抵抗が小さくなり、かつ、感度が高くなると、磁電変換素子222及び224の他方において抵抗が大きくなり、かつ、感度が低くなる。この場合、磁電変換素子222及び224は、何れも、感度一定の状態に比べて抵抗が小さくなる(感度誤差成分により抵抗が減少する)。従って、電圧V5と電圧V6との差(V5−V6)においては、それぞれの感度誤差成分が打ち消し合い、トータルの感度誤差成分が微小になる。
【0114】
以上説明したように、本実施形態に係る電流センサでは、第1磁気センサ21Dのハーフブリッジ回路における2つの磁電変換素子(221、222)において、感度方向が互いに逆であるとともに、感度影響方向が互いに同じであり、第2磁気センサ22Dのハーフブリッジ回路における2つの磁電変換素子(223、224)も同様に、感度方向が互いに逆であるとともに、感度影響方向が互いに同じである。また、第1磁気センサ21Dのハーフブリッジ回路(221,222)と第2磁気センサ22Dのハーフブリッジ回路(223,224)とを並列接続したフルブリッジ回路において、対角の2つの磁電変換素子(221及び224、222及び223)は、互いに逆向きの感度方向を持つとともに、互いに逆向きの感度影響方向を持つ。これにより、第1磁気センサ21Dのハーフブリッジ回路の接続中点に生じる電圧V5と、第2磁気センサ22Dのハーフブリッジ回路の接続中点に生じる電圧V6との差(V5−V6)において、電圧V5及びV6のそれぞれに含まれる感度誤差成分が互いに打ち消し合い、トータルの感度誤差成分が微小になる。従って、外来磁界による電流測定精度の誤差を効果的に抑えることができる。
【0115】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記の形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的範囲又はその均等の範囲において種々のバリエーションを含んでいる。
【0116】
図14は、本発明に係る電流センサの一変形例を示す図である。
図14に示す電流センサは、
図1,
図2に示す電流センサにおける磁性部材40を磁性部材40Dに置き換えたものである。電流Iの通流方向(Y方向)と垂直な仮想平面における磁性部材40Dの断面形状は、X方向に長い長方形を対称軸ALにおいて対称に折り曲げた形状を持つ。磁性部材40Dは、センサ部20を介して電流路10と対向する表面として、互いに傾斜した2つの平面41a及び41bを有する。平面41a及び41bは、対称軸ALと同じ角度で交わっており、互いの交わりによる交線が対称軸ALと垂直であり、電流Iの通流方向(Y方向)と垂直な仮想平面との交線の長さが互いに等しい。また、平面41a及び41bは、電流路10が位置する側における二面角が劣角となる姿勢で互いに傾斜している。すなわち、電流路10と対向する側において平面41aと平面41bとのなす角度は、180°より小さい。
【0117】
このような形状を持つ磁性部材40Dを設けた場合でも、第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22におけるZ方向の磁界成分を強調して大きくすることができる。また、X方向の位置に応じたZ方向の磁界成分の変化が対称軸ALを中心として連続的かつ対称となるため、電流の測定感度が高くなる対称軸ALの近傍において、センサ部20の配置位置に要求される精度を緩和できる。
【0118】
図15は、本発明に係る電流センサの他の一変形例を示す図である。
図15に示す電流センサでは、
図1,
図2に示す電流センサにおけるセンサ部20をセンサ部20Eに置き換えたものである。センサ部20Eは、ホール素子を含んで構成された第1磁気センサ21E及び第2磁気センサ22Eを有する。第1磁気センサ21E及び第2磁気センサ22Eは、既に説明した第1磁気センサ21及び第2磁気センサ22と同様に、Z方向と平行な感度方向(S1,S2)を持つ。第1磁気センサ21E及び第2磁気センサ22Eを含むチップ部品であるセンサ部20Eは、配線基板5Eに配置される。ホール素子の感度方向(S1,S2)は、配線基板5Eの部品実装面に対して垂直であるため、配線基板5EはZ方向に対して部品実装面が垂直となる姿勢で配置される。磁性部材40は、センサ部20が配置される配線基板5Eの部品実装面に対して反対側の面に配置される。
【0119】
上述した実施形態では、電流路10の断面形状が長方形である例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態において、電流路の断面形状は、電流路における電流の通流方向と垂直な仮想平面において線対称な磁界を形成する他の任意の形状(楕円,線対称な多角形など)でもよい。
【0120】
上述した実施形態では、センサ部において磁電変換素子によるブリッジ回路(ハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路)が用いられているが、本発明はこの例に限定されない。本発明の他の実施形態では、第1磁気センサ及び第2磁気センサそれぞれ含まれる1以上の磁電変換素子の検出結果を例えばデジタル値として個別に取得し、取得したデジタル値に減算や加算等の演算処理を施すことにより、第1磁気センサ及び第2磁気センサが配置される2つ場所における磁界の差に応じた信号を生成してもよい。