特許第6881978号(P6881978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881978
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】高機能溶液を用いたフォトレジスト剥離
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20210524BHJP
   C11D 3/18 20060101ALI20210524BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20210524BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20210524BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20210524BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20210524BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   G03F7/42
   C11D3/18
   C11D3/20
   C11D17/08
   G03F7/26 513
   H01L21/30 572B
   H01L21/304 647A
   H01L21/304 647B
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-547237(P2016-547237)
(86)(22)【出願日】2014年10月13日
(65)【公表番号】特表2017-504076(P2017-504076A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2014071915
(87)【国際公開番号】WO2015052347
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年10月13日
【審判番号】不服2019-14241(P2019-14241/J1)
【審判請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】102013016870.8
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510076155
【氏名又は名称】インテリジェント フルーイド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シューマン,ディルク
【合議体】
【審判長】 樋口 信宏
【審判官】 神尾 寧
【審判官】 関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−521281(JP,A)
【文献】 特開2005−48000(JP,A)
【文献】 特開2006−199939(JP,A)
【文献】 特開2011−82511(JP,A)
【文献】 特開平8−231991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/42,C11D 3/18,C11D 3/20,C11D 17/08,G03F 7/26,H01L 21/30,H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の非混和性の液体を含むフォトレジスト被膜を剥離するための多相系であって、
前記液体の一方は、水であり、前記2種類の液体の他方は、水に対する溶解度が4g/L未満の水不溶性物質であり、
前記水不溶性物質は、アルカン、シクロアルカン、芳香族、長鎖アルカン酸エステル、ジカルボン酸エステル、若しくはトリカルボン酸エステル、テルペン、またはそれらの混合物からなる群から選ばれ、
前記多相系は、少なくとも1種の界面活性剤、及、下記式IIIで表されるアセト酢酸をさらに含み、
CH−CO−CH−CO−O−R(式III)
(ここで、RはC〜Cアルキルである。)
前記多相系は、0より大きく200NTU以下の濁度値を有し、
前記水不溶性物質は、前記多相系の総重量に対して1.5〜30重量%の範囲の量で存在し、
前記少なくとも1種の界面活性剤は、前記多相系の総重量に対して2〜20重量%の範囲の量で存在している、ことを特徴とする、
フォトレジスト被膜を剥離するための多相系(ただし、前記多相系が、クエン酸一水和物、シュウ酸二水和物、及び、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを含む場合を除く)
【請求項2】
前記界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、または両性界面活性剤である、ことを特徴とする、
請求項1に記載の多相系。
【請求項3】
フォトレジストを表面から剥離するための、請求項1または2に記載の多相系の使用。
【請求項4】
前記表面は、非金属表面および/または、前記非金属表面上にある金属表面である、
請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記非金属表面はシリコンウェハまたはガラスウェハであり、前記非金属表面上にある金属表面は銅またはアルミニウムである、
請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記フォトレジストは、架橋されたフォトレジストである、
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
金属層が前記フォトレジスト上に形成されている、
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記フォトレジスト上の前記金属層が、前記多相系を用いて剥離される、
請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記金属層は、前記金属表面上に残存する、
請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
請求項1または2に係る多相系が使用される、
表面からフォトレジスト被膜を除去する方法。
【請求項11】
前記表面は非金属表面である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非金属表面はシリコンウェハである、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フォトレジストは、架橋されたフォトレジストである、
請求項10乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
金属層が前記フォトレジスト上に形成されている、
請求項10乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記フォトレジスト上の前記金属層が、前記多相系を用いて剥離される、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属層は、前記金属表面上に残存する、
請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記多相系を、処理される表面に、30秒から5時間の間作用させる、
請求項10乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記多相系は除去される、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相系に基づく新規な清浄化剤、フォトレジスト被膜を表面から除去するための該清浄化剤の使用、およびフォトレジスト被膜を表面から除去する方法について説明する。
【0002】
本発明に係る多相系は、特に、被膜、フォトレジスト被膜、高分子層、汚物層、絶縁層、および金属層を表面から除去するために使用される。
【背景技術】
【0003】
シリコンチップの製造は、シリコン単結晶製の、プレートサイズのシリコンウェハを用いて開始される。前記ウェハは、約1mmの厚さである。これらのウェハ上に、回路、導線、および電子部品が一層ずつ形成される。前記製造は、望まれる特定の製品に応じて、数百のプロセスステップで行われ、前記ステップの幾つかは複数回繰り返される。
【0004】
前記ウェハのシリコン表面に所望の構造を付与するために、前記表面は、初めに、蒸気で酸化される。前記酸化層は、フルオロケミストリーを用いた化学反応によって、前記表面における構造形成を可能にする。
【0005】
次に、フォトレジストが付与される。前記フォトレジストは、リソグラフィー法によって、マスクを介して転写される。フォトレジストは、ミクロンおよびサブミクロンの範囲で構造を作るマイクロエレクトロニクスおよびマイクロシステム技術、並びにプリント回路基板の製造において使用される。化学的見地から言うと、これらは、メタクリル酸メチル、ノボラック、ポリメチルグルタルイミド、またはエポキシ樹脂を基礎とするプレポリマーまたはポリマーと、溶媒および感光性成分との混合物である。
【0006】
フォトレジストには、2つの基本的な型がある。
・いわゆるネガティブレジストは、現像された後に、照明された領域が残るように、照明によって、かつ必要に応じてその後の熱安定化によって重合する。非照明領域は、マスクを介して保護されるため、可溶性のままであり、溶媒を用いて、またはアルカリ溶液を用いて除去される。前記ネガティブフォトレジストは、主に、ミクロンおよびサブミクロン範囲の極めて小さな構造を作るためのマイクロシステム技術において使用される。
・ポジティブレジストの場合、既に重合された被膜の一部が、照明により、適切な現像液に対して、再度、可溶化される(脱重合する)ようになる。前記フォトレジストの残部は、ケイ素または二酸化ケイ素の表面部を変化しないように保護するのに対し、露出位置では、化学修飾が可能である。この場合、二酸化ケイ素は、フッ化水素酸またはCFを用いて、エッチングステップによって除去されてもよいし、または遊離ケイ素がイオン衝撃によってドープされてもよい。
【0007】
上記の、コーティング、照明、剥離、およびエッチング作業は、異なるマスクを用いて、複数回繰り返されることが多い。
【0008】
湿式化学法の適用分野は、以下のように分類される場合がある。
・ウェットエッチング
前記表面の全部または一部における、ドープされた酸化層およびドープされていない酸化層の除去を指す。
・ウェハ洗浄
前記ケイ素表面の、粒子、有機物質および金属物質、並びに自然酸化物層が連続的に除去される必要がある。
・被膜除去
前記被膜の下方の構造が、エッチングプロセスにおいて切断された後、または前記被膜が、埋め込みプロセス中にマスキング層として使用された後、前記被膜は除去される必要がある。
・金属リフトオフ
さらに、前記被膜に付与された金属層も除去される必要がある、被膜除去の特殊な形態。
・背面処理
オーブンプロセス中に前記ウェハの背面側に現像された層の除去。
・ポリマー除去
プラズマエッチング中に生じ、かつ前記ウェハディスク上に集まる副生成物の除去。
【0009】
したがって、マイクロチップの製造には、洗浄作業が必須である。しかしながら、これまで、前記問題を解決するためのアプローチにおいて、上述の洗浄形式の全てが取り組まれた訳ではなかった。
【0010】
一定の繰り返し洗浄作業の最も重要な一つは、前記フォトレジストの除去である。前記フォトレジストは、マスキング層として使用された後に、除去される必要がある。
【0011】
このことは、従来技術においては、二つの異なる方法で行う。つまり、乾式プラズマアッシング、または例えば、アセトンのような可燃性溶媒を用いた前記被膜の湿式化学剥離である。しかしながら、プロセスの信頼性の一貫として、特に引火点を考慮した場合、アセトンと同じ速さで前記フォトレジストを除去できる投入材料についての探求は、増加の一途を辿る。難点として、溶媒の引火点が高いほど、フォトレジストの除去が遅くなるということがある。他の問題点は、この方法では、架橋されたフォトレジストのほんの僅かしか除去されない場合があるということである。前記被膜の溶解性は、架橋結合の増加に伴って、大いに低減する。
【0012】
高架橋された、または(ドーピング後に)平らに実装されたフォトレジストは、溶媒にとって、除去することが難しいため、該フォトレジストは、エッチングステップまたはプラズマアッシングによって除去される必要がある。しかしながら、不都合なことに、プラズマアッシングによれば、レジストの除去が不完全になる。つまり、アッシング後に、概して、追加の湿式洗浄ステップがさらに実行される。加えて、前記アッシングは高温で起こるため、異なる膨張係数を有する異なる材料からなる複雑な構成部分について、歪みのような材料応力、熱応力などが生じるようになる。さらに、攻撃的なラジカルが再結合する前に、反応性の高い燃焼生成物が前記基板表面を攻撃する場合がある。その結果、小構造の破壊が生じる場合がある。
【0013】
ラジカル生成の複雑なプロセス技術、必須である制御されたプロセス管理、および材料の処分も、高コストになる。
【0014】
金属リフトオフの場合も同様に、前記基板から層を剥離することは難しい。この方法は、マイクロエレクトロニクス部品、センサ、またはレーザの製造における標準的なプロセスである。前記フォトレジスト被膜に加えて、連続的な金属層も剥離される必要がある。
【0015】
それに応じて、自動化の程度も高くなる。一般的な機械によれば、毎時80ユニットまでのウェハスループットが達成される。枚葉プロセスに加えて、バッチプロセスがある。加えて、両方の組み合わせがあり、該両方の組み合わせが市場において優勢である。前記剥離剤は、加熱可能な槽において、所望の温度(例えば、NMPの場合85℃)にされる。前記フォトレジストは、特定の均熱時間(約10〜30分)の間、可溶化され、溶解され、または剥離される。次のステップにおいて、各ウェハは、前記層からそれぞれ取り出され、枚葉プロセスに供される。前記フォトレジストの残部、前記剥離剤の残部、および前記金属層の残部が排出される。前記表面の純度は、さらなる洗い流しステップにおいて、例えば、IPA、脱塩水などを用いて増される。
【0016】
したがって、マイクロエレクトロニクス分野内の清浄化プロセスについて、環境、健康、および基板により優しい、より効果的な清浄化剤が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、上記のような清浄化剤、および、例えば、フォトレジスト被膜を表面から除去するための該清浄化剤の使用を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
このような清浄化剤は、攻撃性が高く、かつそれにより侵襲的である清浄化剤に置き換えられるものとして、使用されることが意図されている。また、生分解性成分、毒物学的および皮膚科学的に許容できる成分を使用することにより、廃棄処分が減り、作業における保護が減ると考えられる。安全面に加えて、本発明の目的は、新規な清浄化剤によって時間および手順に関してプロセスを最適化することである。そのため、プロセスステップ、例えば、プラズマアッシング後の湿式ステップを省略することが有利である。
【0019】
本発明によれば、前記目的は、2種類の非混和性の液体を含む多相系によって実現され、前記液体の一方は、水または水と同様の物質であり、前記2種類の液体の他方は、水に対する溶解度が4g/L未満の水不溶性物質であり、前記多相系は、少なくとも1種の界面活性剤、両親媒性物質の他に、前記界面活性剤に関連する物質、および必要に応じて、添加剤および/または補助剤をさらに含んでおり、前記多相系は、0NTUよりも大きく、200NTUまでの濁度特性を有するという特徴を備える。
【0020】
ネフェロ分析濁度ユニット(NTU)は、液体の濁度測定のために、水処理において使用される単位である。上記単位は、目盛り付きのネフェロメーターを用いて測定された液体の濁度の単位である。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、使用される前記界面活性剤は、非イオン界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤である。
【0022】
本発明の意味の範囲内の界面活性剤は、液体の表面張力または二相間の界面張力を低くする物質であって、分散液/エマルションを形成させることができ、または分散液/エマルションの形成を促進させることができ、あるいは可溶化剤として作用する物質である。界面活性剤の作用下では、油と水のような、実際には互いに混ざり合わない2種類の液体が、きれいに混合(分散)されていてもよい。界面活性剤によって、一般的なミセル構造が形成される。つまり、所定の濃度を超えると、界面活性剤によって、かなり大きく、緩い構造が形成される。これは、本明細書の文脈では、「構造形成」として参照される。本発明の意味の範囲内の界面活性剤は、配向構造を有し、一の部分は、概して、親油性の撥水炭素部分からなり、他の部分は、前記分子の親水性の耐水部分からなる。
【0023】
本発明の意味の範囲内の界面活性剤の例は、これらに限られる訳ではないが、高級アルコール、特に、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、およびドデカノールのn(ノルマル)−およびiso(イソ)−異性体のような親水性分子部分−親油性分子部分を有する高級アルコール、または、前記分子の親油性および/または親水性部分において、それらの修飾された誘導体を含む。
【0024】
例えば、長鎖脂肪酸、アルキル(ベンゼン)スルホネート、パラフィンスルホネート、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸、およびアルキルスルホネートのアルカリ塩またはアンモニウム塩、主として、ドデシルスルホン酸ナトリウムが、陰イオン性界面活性剤として使用されてもよく、例えば、腐食防止を含む特定の用途の場合、アルキルホスフェート(例えば、Phospholan(登録商標)PE65、Akzo Nobel社)が使用される場合があってもよい。
【0025】
ポリアルキレンオキシドで修飾された脂肪族アルコール、例えば、Berol(登録商標)タイプ(Akzo−Nobel社)およびHoesch(登録商標)Tタイプ(Julius Hoesch社)、およびアルキルエトキシレートに加えて、対応するオクチルフェノール(トリトンタイプ)またはノニルフェノール(後者は、大量に環境に放出されないと仮定する)が、非イオン界面活性剤として使用できる。一つの特定の適用分野においては、ヘプタメチルトリシロキサン(例えば、Silwet(登録商標)タイプ、GE Silicones社)が 液体の拡展性を大きく増加させるため、または界面張力を大きく低減させるための剤として使用されてもよい。
【0026】
例えば、ココビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド、またはポリオキシエチレン修飾タルクメチルアンモニウムクロライドが、陽イオン性界面活性剤として使用されてもよい。種々の両性界面活性剤も使用できる。広いpH範囲をカバーする場合、ココジメチルアミンオキサイド(Aormox(登録商標)MCD、Akzo−Nobel社)が好適であることが立証されている。
【0027】
前記界面活性剤は、好ましくは、本発明に係る多相系中に含まれていて、その量は、多相系の総重量を基準として、2〜20重量%である。
【0028】
本発明によれば、水不溶性物質は、水に対する溶解度が4g/L未満であり、2g/L未満であることが好ましい。これらの物質は、膨張性および/または分解性を有していることが好ましいと考えられる。例としては、アルカン(ガソリン)およびシクロアルカン(好ましくはシクロヘキサン)が含まれる。トルエン、キシレン、または他のアルキルベンゼン、およびナフタレンのような芳香族も好適である。脂肪油および脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)のような長鎖アルカン酸エステルが好ましい。本発明によれば、酢酸ベンジルも、使用される水不溶性物質中に含まれる。しかしながら、テルペン、例えば、シクロヘキサン骨格を有する単環式モノテルペンもまた使用されてもよい。柑橘類の果実から得られる、シトラステルペンおよび/またはオレンジテルペンなどのテルペン、または柑橘類の果実に含まれるリモネンが、ここでは特に好ましい。水不溶性物質は、好ましくは、前記多相系中に含まれていて、その量は、1.5〜30重量%である。
【0029】
一実施形態によれば、前記多相系は、二酸化炭素、特に超臨界二酸化炭素の形態で二酸化炭素を有さない場合が好ましい。
【0030】
一実施形態によれば、少なくとも一つの両親媒性物質は、以下より選ばれる。
a)式Iで表されるジオール:
COH−(CH−COHR(式I)
ここで、nは0、1、2、3、または4であり、
およびRは、それぞれの場合において、独立して、水素、あるいは非分岐または分岐のC−Cアルキルであり、この場合、n=0であるときに、Rが水素となり得ず、かつジオールが2−メチル−2,4−ペンタンジオールでなく、
または、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、または2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールから選ばれ、
b)式IIで表されるアセト酢酸:
C(R−CO−CH−CO−O−R(式II)
ここで、Rは、それぞれの場合において、独立して、水素またはC〜Cアルキルであり、Rは、分岐または非分岐C〜Cアルキルであり、
または、
式IIIで表されるアセト酢酸:
CH−CO−CH−CO−O−R(式III)
ここで、RはC〜Cアルキルであり、
または、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸n−プロピル、若しくはアセト酢酸tert−ブチルから選ばれ、
c)式IVで表されるジオン
CH−(CH−CO−(CH−CO−(CH−CH(式IV)
ここで、p、q、rは、独立して、0、1、または2であり、この場合、p、q、およびrの総和が2であるときに、さらに式IVに係る化合物が環状(シクロヘキサンジオン)であり、
または、2,3−ブタンジオン(ジアセチル)、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)、3,4−ヘキサンジオン、2,5−ヘキサンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、1,4−シクロヘキサンジオン、若しくは1,3−シクロヘキサンジオンから選ばれ、
d)式Vで表されるエステル:
−CO−O−R(式V)
ここで、Rは、Rに環結合するもの、CH、またはCOCHであり、
は、R環結合する(CH−O−、または(CH−O−(CH−CH、CH−CH、若しくはRに環結合するCH−CH(CH)−O−であり、
または、酢酸(1−メトキシ−2−プロピル)、酢酸(2−ブトキシエチル)、炭酸エチレン、ピルビン酸エチル(2−オキソプロピオン酸エチルエステル)、若しくは炭酸プロピレンから選ばれ、
e)式VIで表されるマレイン酸アミドまたはフマル酸アミド:
−HN−CO−C=C−CO−O−R(式VI)
ここで、Rは、水素、分岐または非分岐のC−Cアルキル、あるいは、分岐または非分岐の、直鎖状または環状C−Cアルキルであり、該C−Cアルキルは、OH、NH、COOH、CO、SOH、OP(OH)から選ばれる、1または複数の基で置換されていて、かつRは、水素、あるいは分岐または非分岐C−Cアルキルであり、
または、以下のマレイン酸アミドおよびそれらのメチル、エチル、プロピル、およびブチルエステル、すなわち、N−メチルマレアミド、N−エチルマレアミド、N−(n−プロピル)マレアミド、N−(イソプロピル)マレアミド、N−(n−ブチル)マレアミド、N−(イソブチルマレアミド)、N−(tert−ブチルマレアミド)、および対応するフマル酸アミド、並びにそれらのメチル、エチル、プロピル、およびブチルエステルから選ばれ、
f)2,2−ジメトキシプロパン、ピルビン酸アルデヒド−1,1−ジメチルアセタール、ジアセトンアルコール(2−メチル−2−ペンタノール−4−オン)、2−ブタノール、2−アセチル−ガンマ−ブチロラクトン、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ガンマ−ブチロラクトン、ニコチンアミド、アスコルビン酸、N−アセチルアミノ酸、特に、N−アセチルグリシン、N−アセチルアラニン、N−アセチルシステイン、N−アセチルバリン、若しくはN−アセチルアルギニン、リン酸トリエチル、酢酸n−ブチル、ジメチルスルホキシド、または2,2,2−トリフルオロエタノール、から選ばれることが好ましい。
【0031】
前記両親媒性物質は、特に、式IIIで表されるアセト酢酸から選ばれることが好ましい。
CH−CO−CH−CO−O−R(式III)
ここで、RはC〜Cアルキルである。
【0032】
本発明のさらなる主題は、フォトレジストを表面から除去するための、上述の多相系の使用に関する。前記表面は、チップ製造において公知であるように、非金属表面または金属表面、好ましくは、シリコンウェハである。特に、前記表面は、非金属表面、好ましくは、シリコンウェハまたはガラスウェハ、および/または前記非金属表面上にある金属表面であり、好ましくは、銅またはアルミニウム表面である。前記フォトレジストは、好ましくは、架橋されたフォトレジストである。架橋の程度は、前記フォトレジスト中の架橋可能な基を基準として、0.5%よりも高いことが好ましく、1%よりも高いことがより好ましく、5%より高いことがさらにより好ましく、10%よりも高いことがさらにより好ましく、25%よりも高いことが最適である。多くの場合、金属層が前記フォトレジスト上に形成されている。特に、該金属層は、導電性の高い金属、例えば、金を含む。
【0033】
本発明に係る多相系の使用によって、前記フォトレジストに加えて、前記金属層も、同時に容易に剥離されるようになる。前記金属層が、前記非金属表面または金属表面、例えば、シリコンウェハに直に接触する箇所においては、剥離は生じない。したがって、金属層は、前記非金属表面または金属表面上に残存する。
【0034】
本発明のさらなる主題は、表面からフォト(レジスト)被膜を除去する方法に関し、上述の組成物が使用される。
【0035】
前記表面は、チップ製造において公知であるように、非金属または金属表面であり、好ましくは、シリコンウェハまたはガラスウェハである。前記金属表面は、銅またはアルミニウムを含んでいてもよい。前記フォトレジストは、好ましくは、架橋されたフォトレジストである。架橋の程度は、前記フォトレジスト中の架橋基を基準として、0.5%よりも高いことが好ましく、1%よりも高いことがより好ましく、5%よりも高いことがさらにより好ましく、10%よりも高いことがさらにより好ましく、25%よりも高いことが最適である。多くの場合、金属層が前記フォトレジストに付与される。特に、該金属層は、導電性の高い金属層、例えば、金層を含む。
【0036】
本発明に係る多相系の使用によって、前記フォトレジストに加えて、前記金属層も、同時に容易に剥離されるようになる。前記金属層が、前記非金属表面または金属表面、例えば、シリコンウェハに直に接触する箇所においては、剥離は生じない。したがって、金属層は、前記非金属表面または金属表面上に残存する。
【0037】
前記方法は、前記多相系を処理される表面に付与すること、および前記多相系が30秒〜5時間の間、作用できるようにすることによって実行される。次に、前記多相系は、除去される。
【0038】
本発明に係る剤の清浄化作用は、前記塗布層および金属層への侵入により生じ、前記塗布層および金属層の断片化、および前記基材面からのこれらの剥離に伴うことが多く、従来技術と比べると、前記層の化学的分解は必ずしも必要ではなく、その代わりに、避けられると都合がよい。加えて、物理的分離は、避けられる、または大部分が避けられる。このことは、本発明に係る多相系によって可能になる。
【0039】
したがって、本発明に係る多相系は、攻撃性が高く、かつそれにより侵襲的である公知の清浄化剤に置き換えられるものとして、極めて良く適合すると考えられる。また、生分解性成分、毒物学的および皮膚科学的に許容できる成分を使用することにより、廃棄処分が減り、作業における保護が減ることとなる。安全面に加えて、前記新規な清浄化剤を用いて、時間および手順に関してプロセスの最適化が実現されてもよい。プロセスステップ、例えば、プラズマアッシング後の湿式ステップが省略されてよい。
【実施例】
【0040】
ここで、本発明は、例示的な実施形態を参照して説明される。該実施形態は、保護の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
全ての多相系は、0より大きく200NTU以下の範囲の濁度値を示す。前記濁度値は、10〜95℃の広い温度範囲に亘って維持されてもよい。前記濁度値の決定は、濁度計、例えば、Hach 2100 Turbidimeterを用いて極めて簡単に実行されてもよく、前記濁度値の決定は、当業者に公知である。