特許第6881997号(P6881997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881997
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】試験計画装置及び試験計画方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   G05B23/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-23543(P2017-23543)
(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2018-128995(P2018-128995A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 和貴
(72)【発明者】
【氏名】山崎 義倫
(72)【発明者】
【氏名】堂本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】チャウラシア アルン クマール
(72)【発明者】
【氏名】三田 尚
(72)【発明者】
【氏名】平原 悠智
(72)【発明者】
【氏名】宮田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】久保 博義
(72)【発明者】
【氏名】馬場 寿宏
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4989421(JP,B2)
【文献】 特開2007−205001(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/133049(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00−23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラのモデルデータに対して複数の入力パラメータの試験条件を提示する試験計画装置であって、
前記複数の入力パラメータの試験条件を提示する入力パラメータ提示部と、
前記入力パラメータの試験条件をボイラの仮想的な動作を規定したモデルデータへ適用して仮想プロセス値を演算するシミュレーション部と、
前記入力パラメータの試験条件を前記ボイラに設定して実運転を行って得られる実プロセス値を取得する実プロセス値取得部と、
前記モデルデータに対して修正処理を行うモデルデータ学習部と、
前記試験条件を適用して得られた前記仮想プロセス値及び前記実プロセス値を出力する出力制御部と、を備え、
前記入力パラメータの試験条件において
前記複数の入力パラメータ、各実プロセス値に対する各入力パラメータの相互の関係が与える影響が少ないものを予め複数にグルーピングされることにより複数のパラメータ群に分類され、前記パラメータ群は、前記複数の入力パラメータを前記ボイラの燃焼ガスの下流側から上流側に向かう順序に沿って複数の領域で区分けされて構成され、
前記入力パラメータ提示部は、前記順序に沿って前記複数のパラメータ群から学習対象パラメータ群を一つ選択し、当該学習対象パラメータ群の入力パラメータは変数とし、残りの他のパラメータ群は非学習対象パラメータ群として、当該非学習対象パラメータ群の入力パラメータは固定値とする試験条件を提示し、
前記モデルデータ学習部は、前記実プロセス値及び前記仮想プロセス値の乖離が予め定めた許容範囲外にある場合、前記実プロセス値とほぼ同じ前記仮想プロセス値が得られるように前記モデルデータに対する修正処理を行い、修正後のモデルデータで演算した仮想プロセス値と前記実プロセス値との乖離が前記許容範囲内になると前記モデルデータに対する修正処理を終了する、
ことを特徴とする試験計画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試験計画装置において、
前記入力パラメータ提示部は、前記複数のパラメータ群から新たな学習対象パラメータ群を選択した場合、当該新たな学習パラメータ群の入力パラメータは変数とし、過去に学習対象パラメータ群として選択された入力パラメータは、当該学習対象パラメータ群を用いて提示された試験条件のうち、試験結果が相対的に良好であった試験条件の入力パラメータを固定値とする新たな試験条件を提示する、
ことを特徴とする試験計画装置。
【請求項3】
請求項1に記載の試験計画装置において、
前記学習対象パラメータ群に含まれる各入力パラメータに対して設定された変数の個数を基に予め定められた学習試行回数決定条件に従って学習試行回数を決定する学習試行回数決定部を更に備える、
ことを特徴とする試験計画装置。
【請求項4】
請求項1に記載の試験計画装置において、
前記実プロセス値及び前記修正処理が行われたモデルデータを用いて前記シミュレーション部により演算された仮想プロセス値の乖離が予め定められた許容範囲外にある場合、前記入力パラメータ提示部は、前記学習対象パラメータ群の変数とされた入力パラメータの間隔もしくは範囲を変更する、
ことを特徴とする試験計画装置。
【請求項5】
ボイラの仮想的な動作を規定したモデルデータに対して複数の入力パラメータの試験条件を提示する試験計画方法であって、
前記入力パラメータの試験条件において、前記複数の入力パラメータは、前記複数の入力パラメータをボイラに設定して実運転を行って得られる実プロセス値に対する各入力パラメータの相互の関係が与える影響が少ないものを予め複数にグルーピングされることにより複数のパラメータ群に分類され、前記パラメータ群は、前記複数の入力パラメータを前記ボイラの燃焼ガスの下流側から上流側に向かう順序に沿って複数の領域で区分けされた前記複数の入力パラメータを取得するステップと、
前記複数のパラメータ群のうち、前記順序に沿って1つ選択した学習対象パラメータ群の入力パラメータは変数とし、他の非学習対象パラメータ群の入力パラメータは固定値とされた複数の入力パラメータの試験条件を提示するステップと、
前記入力パラメータの試験条件を前記ボイラに設定して実運転を行って得られる実プロセス値を取得するステップと、
前記入力パラメータの試験条件を前記モデルデータへ適用して仮想プロセス値を演算するステップと、
前記実プロセス値及び前記仮想プロセス値の乖離が予め定めた許容範囲外にある場合、前記実プロセス値とほぼ同じ前記仮想プロセス値が得られるように前記モデルデータに対する修正処理を行い、修正後のモデルデータで演算した仮想プロセス値と前記実プロセス値との乖離が前記許容範囲内になると前記モデルデータに対する修正処理を終了するステップと、
前記修正されたモデルデータに前記試験条件を適用して得られた前記仮想プロセス値及び前記実プロセス値を出力するステップと、
を含むことを特徴とする試験計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備のモデルデータ用の試験条件を提示する試験計画装置及び試験計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所に設置されるボイラの運転に際しては、ボイラを運転させた結果のアウトプットとして各出力プロセス値、例えばNOxやCOの濃度、各伝熱管のメタル温度を得て、各出力プロセス値が最適となるように多くの操作入力パラメータを設定する必要がある。操作入力パラメータには値を変化させると出力プロセス値が改善するものと悪化するものとが混在しており、更に運転条件により出力プロセス値の変動も変化することから、ボイラの運転制御は複雑であるという実情がある。
【0003】
そのため、運転支援の一環としてボイラ内の挙動シミュレーションのモデルデータを使用することがある。この点に関し、特許文献1には、運転入力パラメータと出力プロセス値との関係についての運転データをモデルデータ作成の学習データとして使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4989421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボイラの新設、設備修正時の際は試験運転を行い、学習用データを取得する。しかし操作入力パラメータは複数あり、それぞれ多段階で条件設定を行うと試験ケースは莫大となる。その結果試験期間が長くなり、運転開始が遅れる。更にモデルデータ学習用パラメータが多くなり、時間・手間を要する。
【0006】
一方で、試験ケースを根拠なく減らすと、モデルデータによる挙動シミュレーションの精度が悪化し、運転の参考とならならないという課題がある。
【0007】
この点に関し、特許文献1ではモデル入力数にかかわらず、制御周期以内での学習を行うために(同文献段落0012参照)、モデルに入力するモデル入力及びモデル出力を複数のグループに分割して、各グループのモデル出力が予め定めた目標値を達成するように、各グループのモデル入力の生成方法を学習させるが(同文献段落0013参照)、その際にグループ間についてのモデル入力を変化させる順序は考慮していないので、複数のグループのモデル入力を変化させた結果モデル出力が変化した場合には、どのモデル入力の変化がモデル出力の変化に対して影響を及ぼしたのかが把握できないという課題がある。
【0008】
またボイラ内の例えば各燃焼バーナにおける燃焼用空気と燃料による燃焼挙動は複雑で、ボイラの形式、使用する燃料、その他条件で結果のアウトプットの各出力プロセス値として、NOx,COの濃度、伝熱管表面温度、蒸気温度等が変化しうる。ニューラルネットワーク等を用いて多変数入力―多変数出力モデルデータを一気に作成することは可能だが、この場合、技術者が経験や物理的な理論と整合するかという観点からチェックすることが困難であるという課題もある。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、少ない試験ケース数の学習データにより、モデルデータの精度を確認しながらモデルデータを作成できる装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明は、ボイラのモデルデータに対して複数の入力パラメータの試験条件を提示する試験計画装置であって、前記複数の入力パラメータの試験条件を提示する入力パラメータ提示部と、前記入力パラメータの試験条件をボイラの仮想的な動作を規定したモデルデータへ適用して仮想プロセス値を演算するシミュレーション部と、前記入力パラメータの試験条件を前記ボイラに設定して実運転を行って得られる実プロセス値を取得する実プロセス値取得部と、前記モデルデータに対して修正処理を行うモデルデータ学習部と、前記試験条件を適用して得られた前記仮想プロセス値及び前記実プロセス値を出力する出力制御部と、を備え、前記入力パラメータの試験条件において、前記複数の入力パラメータ、各実プロセス値に対する各入力パラメータの相互の関係が与える影響が少ないものを予め複数にグルーピングされることにより複数のパラメータ群に分類され、前記パラメータ群は、前記複数の入力パラメータを前記ボイラの燃焼ガスの下流側から上流側に向かう順序に沿って複数の領域で区分けされて構成され、前記入力パラメータ提示部は、前記順序に沿って前記複数のパラメータ群から学習対象パラメータ群を一つ選択し、当該学習対象パラメータ群の入力パラメータは変数とし、残りの他のパラメータ群は非学習対象パラメータ群として、当該非学習対象パラメータ群の入力パラメータは固定値とする試験条件を提示し、前記モデルデータ学習部は、前記実プロセス値及び前記仮想プロセス値の乖離が予め定めた許容範囲外にある場合、前記実プロセス値とほぼ同じ前記仮想プロセス値が得られるように前記モデルデータに対する修正処理を行い、修正後のモデルデータで演算した仮想プロセス値と前記実プロセス値との乖離が前記許容範囲内になると前記モデルデータに対する修正処理を終了する、ことを特徴とする。
【0011】
入力パラメータを各入力パラメータの相互の関係に基づいて、予め複数のパラメータ群にグルーピングしておき、学習対象パラメータ群の入力パラメータは変数とし、非学習対象パラメータ群の入力パラメータは固定値とする試験条件を用いた仮想プロセス値及び実プロセス値の比較を行う。そして、乖離が許容範囲内であればモデルデータの修正は不要、許容範囲外であればモデルデータを修正するので、入力パラメータの全組み合わせ数の試験を行って最適値を見つけモデルデータを一気に修正する場合と比較して試験回数を減らすことができる。また、仮想プロセス値及び実プロセス値の乖離が小さいほどモデルデータの精度が高いことから、技術者は出力制御部から出力された乖離を参照することでモデルデータの精度を認識しやすくなり、どの入力パラメータを変化させてどのようにモデルデータが変化したかを把握しやすくなる。
【0012】
また前記入力パラメータ提示部は、前記複数のパラメータ群から新たな学習対象パラメータ群を選択した場合、当該新たな学習パラメータ群の入力パラメータは変数とし、過去に学習対象パラメータ群として選択して行った入力パラメータは、当該学習対象パラメータ群を用いて提示された試験条件のうち、試験結果が相対的に良好であった試験条件の入力パラメータを固定値とする新たな試験条件を提示してもよい。
【0013】
上記「相対的に良好」とは実プロセス値もしくは仮想プロセス値が、発電設備のプロセス値の目標値(最適値)により近いことを意味する。
【0014】
これにより、学習対象パラメータ群を順次変更しながら新たな試験条件を提示する際に、既に学習対象パラメータ群として選択された入力パラメータは、試験結果が良好であった値を固定値として採用するため、より発電設備の運転結果が良好となりやすい試験条件を提示することができる。
【0016】
技術者が同一のパラメータ群に含まれる入力パラメータの種類や学習パラメータの選択順序をより認識しやすくなる。更にボイラの実プロセス値に与える入力パラメータの相互の関係に沿ったグルーピングが実現できる。
【0017】
また、前記学習対象パラメータ群に含まれる各入力パラメータに対して設定された変数の個数を基に予め定められた学習試行回数決定条件に従って学習試行回数を決定する学習試行回数決定部を更に備えてもよい。
【0018】
上記「学習試行回数決定条件」とは例えば統計的手法による学習対象パラメータ群内の全組み合わせを試行した場合の信頼性に対して、統計学的に一定以上の信頼性があると見做せる試験回数を算出するために設けられた条件でもよい。これにより、学習対象パラメータ群内の入力パラメータの全組み合わせよりも少ない学習試行回数に絞り込むので、更に試験回数を減らしつつ、効率的にモデルデータの精度を高めることができる。
【0019】
また前記実プロセス値及び前記修正処理が行われたモデルデータを用いて前記シミュレーション部により演算された仮想プロセス値の乖離が予め定められた許容範囲外にある場合、前記入力パラメータ提示部は、前記学習対象パラメータ群の変数とされた入力パラメータの間隔もしくは範囲を変更してもよい。
【0020】
修正処理後のモデルデータの精度が未だに良好でない場合には、学習対象パラメータ群の変数とされた入力パラメータの間隔もしくは範囲を変更する。これにより、入力パラメータ提示部が初回に提示した試験条件ではモデルデータの精度が十分に得られない場合でも、更に好適な試験条件を提示してモデルデータの精度を向上させることができる。
【0021】
また本発明は発電設備のモデルデータ用の試験条件を提示する試験計画方法であって、前記複数の入力パラメータを発電設備に設定して実運転を行って得られる実プロセス値に対する各入力パラメータの相互の関係に基づき、複数のパラメータ群に分類された複数の入力パラメータを取得するステップと、前記複数のパラメータ群のうち、1つ選択した学習対象パラメータ群の入力パラメータは変数とし、他の非学習対象パラメータ群の入力パラメータは固定値とされた複数の入力パラメータの試験条件を提示するステップと、前記入力パラメータの試験条件を前記発電設備に設定して実運転を行って得られる実プロセス値を取得するステップと、前記入力パラメータの試験条件を前記モデルデータへ適用して仮想プロセス値を演算するステップと、前記実プロセス値及び前記仮想プロセス値の乖離が予め定めた許容範囲外にある場合、前記実プロセス値を用いて前記モデルデータに対する修正処理を実行するステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
これにより、入力パラメータの全組み合わせ数の試験を行って最適値を見つけモデルデータを一気に修正する場合と比較して試験回数を減らすことができる。また、技術者は乖離を参照することでモデルデータの精度を認識しやすくなり、どの入力パラメータを変化させてどのようにモデルデータが変化したかを把握しやすくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、少ない試験ケース数の学習データにより、モデルデータの精度を確認しながらモデルデータを作成できる装置及び方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ボイラを表す概略構成図
図2】試験計画装置のハードウェア構成図
図3】試験計画装置の機能ブロック図
図4】試験計画装置の動作の流れを示すフローチャート
図5】試験計画装置の動作の流れを示すフローチャート
図6】入力パラメータのグループ分けの説明図
図7】試験条件の初回設定例を示す図
図8】仮想プロセス値と実プロセス値との相関図
図9】スコア換算データ例を示す図
図10】試験条件の2回目設定例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一又は関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下の実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0026】
以下では、発電設備として火力発電所に設置されたボイラの仮想的な動作を規定したモデルデータ用の試験条件を試験計画装置が提示する例について説明するが、発電設備はボイラに限定されない。
【0027】
図1は上記ボイラを表す概略構成図である。図1に示すボイラ1は、例えば固体燃料を燃焼させるものとして、石炭を粉砕した微粉炭を微粉燃料(固体燃料)として用い、この微粉炭を火炉の燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して蒸気を生成することが可能な石炭焚きボイラである。
【0028】
ボイラ1は、火炉11と燃焼装置12と煙道13を有している。火炉11は、例えば四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11は、壁面が、蒸発管(伝熱管)と蒸発管を接続するフィンとで構成され、給水や蒸気と熱交換することにより火炉壁の温度上昇を抑制している。具体的には、火炉11の側壁面には、複数の蒸発管が例えば鉛直方向に沿って配置され、水平方向に並んで配置されている。フィンは、蒸発管と蒸発管との間を閉塞している。火炉11は、炉底に傾斜面が設けられており、傾斜面に炉底蒸発管が設けられて底面となる。
【0029】
燃焼装置12は、この火炉11を構成する火炉壁の鉛直下部側に設けられている。本実施形態では、この燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ(例えば21,22,23,24,25)を有している。例えば、この燃焼バーナ(バーナ)21,22,23,24,25は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で複数配設されている。但し、火炉の形状や一つの段における燃焼バーナの数、段数はこの実施形態に限定されるものではない。
【0030】
この各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭供給管26,27,28,29,30を介して粉砕機(微粉炭機/ミル)31,32,33,34,35に連結されている。石炭が図示しない搬送系統で搬送されて、この粉砕機31,32,33,34,35に投入されると、ここで所定の微粉の大きさに粉砕され、搬送用空気(1次空気)とともに微粉炭供給管26,27,28,29,30から燃焼バーナ21,22,23,24,25に粉砕された石炭(微粉炭)を供給することができる。
【0031】
また、火炉11は、各燃焼バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト37bの一端部が連結されて、他端部は空気を供給する空気ダクト37aに連結点37dにおいて連結される。
【0032】
また、火炉11の鉛直方向上方には煙道13が連結されており、この煙道13に蒸気を生成するための複数の熱交換器(41,42,43,44,45,46,47)が配置されている。そのため、燃焼バーナ21,22,23,24,25が火炉11内に微粉炭燃料と燃焼用空気との混合気を噴射することで火炎が形成され、燃焼ガスを生成されて煙道13に流れる。そして、燃焼ガスにより火炉壁及び熱交換器(41〜47)を流れる給水や蒸気を加熱して過熱蒸気が生成され、生成された過熱蒸気を供給して図示しない蒸気タービンを回転駆動させ、蒸気タービンの回転軸に連結した図示しない発電機を回転駆動して発電を行うことができる。また、この煙道13は、排ガス通路48が連結され、燃焼ガスの浄化を行うための脱硝装置50、送風機38から空気ダクト37aへ送気する空気と排ガス通路48を送気する排ガスとの間で熱交換を行うエアヒータ49、煤塵処理装置51、誘引送風機52などが設けられ、下流端部に煙突53が設けられている。
【0033】
火炉11は、微粉炭の搬送用空気(1次空気)及び風箱36から火炉11に投入される燃焼用空気(2次空気)による燃料過剰燃焼後、新たに燃焼用空気(アフタエア)を投入して燃料希薄燃焼を行わせる、所謂2段燃焼方式の火炉である。そのため、火炉11にはアフタエアポート39が備えられ、アフタエアポート39に空気ダクト37cの一端部が連結され、他端部は連結点37dにおいて空気を供給する空気ダクト37aに連結される。
【0034】
送風機38から空気ダクト37aに送気された空気は、エアヒータ49で燃焼ガスと熱交換により温められ、連結点37dにおいて空気ダクト37bを経由して風箱36へ導かれる2次空気と、空気ダクト37cを経由してアフタエアポート39へと導かれるアフタエアとに分岐する。
【0035】
図2は、試験計画装置210のハードウェア構成図である。試験計画装置210は、CPU(Central Processing Unit)211、RAM(Random Access Memory)212、ROM(Read Only Memory)213、HDD (Hard Disk Drive) 214、入出力インターフェース(I/F)215、及び通信インターフェース(I/F)216を含み、これらがバス217を介して互いに接続されて構成される。入出力インターフェース(I/F)215にはキーボード等の入力装置218及びディスプレイやプリンタ等の出力装置219がそれぞれ接続される。また試験計画装置210の通信I/F216及びボイラ1は、ネットワーク100を介して接続されてもよいし、記憶媒体201、例えばメモリーカードに接続され、後述する実プロセス値を取得する。なお、試験計画装置210のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。
【0036】
図3は、試験計画装置210の機能ブロック図である。試験計画装置210は、入力パラメータ提示部211a、シミュレーション部211b、実プロセス値取得部211c、モデルデータ学習部211d、スコア算出部211e、学習試行回数決定部211f、出力制御部211gを含む。これらの各構成要素は、ROM213やHDD214に予め格納された各機能を実現するソフトウェアをCPU211がRAM212上にロードして実行することで、ソフトウェアとハードウェアとが協働して構成されてもよいし、各機能を実現する制御回路により構成されてもよい。更に試験計画装置210は、入力パラメータ記憶部214a、モデルデータ記憶部214b、試験結果記憶部214c、及びスコア換算データ記憶部214dを含む。試験結果記憶部214cには、試験条件記憶領域214c1、仮想プロセス値記憶領域214c2、実プロセス値記憶領域214c3、及びスコア記憶領域214c4が含まれ、各記憶領域が互いに関係付けられて構成される。上記各記憶部及び記憶領域は、RAM212、ROM213、又はHDD214の一部領域に構成されてもよい。
【0037】
図4から図10を参照して試験計画装置210の動作について説明する。図4及び図5は、試験計画装置210の動作の流れを示すフローチャートである。図6は、入力パラメータのグループ分けの説明図である。なお図6では仮想プロセス値及び実プロセス値の区別をすることなく単にプロセス値と記載している。図7は試験条件の初回設定例を示す図である。図8は、仮想プロセス値と実プロセス値との相関図である。図9はスコア換算データ例を示す図である。図10は試験条件の2回目設定例を示す図である。
【0038】
以下の処理に先立ち、図3に示した試験条件記憶領域214c1には予めシミュレーションに用いる入力パラメータが各プロセス値に対する各入力パラメータの相互の関係に基づき複数のパラメータ群にグルーピングされて記憶される。
【0039】
本実施形態では入力パラメータの相互の関係はプロセス値への影響を考慮する。また、ボイラ内における入力パラメータの位置(入力パラメータに関係する機器の位置、入力パラメータを変更した場合の影響範囲の位置など)も考慮する。例えば、本実施形態では、入力パラメータを各入力パラメータの相互関係がプロセス値への影響が少ないものを予め複数にグルーピングされたパラメータ群とし、このパラメータ群は、複数の入力パラメータをボイラ1の燃焼ガスの下流側から上流側に向かう順序に沿って複数の領域で区分けされて構成される。結果が一層に決定されている燃焼ガスの下流側の領域でのプロセス値から、今後結果が決定される燃焼ガスの上流側の領域へと順次区分けすることで、入力パラメータの相互関係に沿ったグルーピングが実現できるので、グルーピングしたパラメータ群から得られるプロセス値の精度が向上する。そこで本実施形態では図6に示すように複数の領域で区分けされ、例えば、入力パラメータ群G1はボイラ出口近傍(例えば火炉11出口から熱交換器41近傍)の入力パラメータの値pA1、pA2を含む。また入力パラメータ群G2はボイラ出口からバーナ(例えば火炉11出口から燃焼バーナ21近傍)の入力パラメータの値pB1、pB2、入力パラメータ群G3はバーナ(例えば燃焼バーナ21,22,23,24,25近傍)の入力パラメータの値pC1を、入力パラメータ群G4は燃料供給設備(例えば粉砕機31,32,33,34,35近傍)に関する入力パラメータの値pD1、pD2、pD3を含む。
【0040】
モデルデータ記憶部214bには7種類の仮想プロセス値vA、vB、vC、vD、vE、vF、vG(図6では仮想プロセス値及び実プロセス値の区別をすることなく単に、プロセス値A、プロセス値B、・・プロセス値Gと記載)を演算するための7つのモデルデータfA(p)、fB(p)、fC(p)、fD(p)、fE(p)、fF(p)、fG(p)が記憶される。
【0041】
各モデルデータfA(p)、fB(p)、fC(p)、fD(p)、fE(p)、fF(p)、fG(p)に対してすべての入力パラメータの値pA1、pA2、pB1、pB2、pC1、pD1、pD2、pD3を当てはめて7つの仮想プロセス値vA、vB、vC、vD、vE、vF、vGを算出する。
【0042】
ここで各入力パラメータは、相対的に関係が強い(各入力パラメータに対する実プロセス値への応答性や値の変化率などが高い)ものと、相対的に関係が低い(各入力パラメータに対する実プロセス値への応答性や値の変化率などが低い)ものとがあり、相互の関係に基づき複数のパラメータ群へグルーピングする。上記燃焼ガスから順に入力パラメータをグルーピングした結果、入力パラメータ群G1は実プロセス値rA、rB、rC、rD、rE(図6では仮想プロセス値及び実プロセス値の区別をすることなく単に、プロセス値A、プロセス値B、・・プロセス値Gと記載)に対する応答性や値の変化率などが比較的高く相対的に関係が強い入力パラメータの値pA1、pA2の集合を形成している。同様に、入力パラメータ群G2は実プロセス値rA、rC、rD、rE、rFに対する相対的に関係が強い入力パラメータの値pB1、pB2の集合を形成している。入力パラメータ群G3は実プロセス値rA、rF、rGに対する相対的に関係が強い入力パラメータの値pC1を含んで形成される。入力パラメータ群G4は実プロセスの値rA、rFに対する相対的に関係が強い入力パラメータの値pD1、pD2、pD3を含む集合として形成される。
【0043】
上記入力パラメータの具体例として、ボイラ1の場合では燃焼用空気の供給量、バーナ角度、燃料供給設備の稼働台数、アフタエアポートの弁開度(アフタエア供給流量)があり、プロセス値の具体例として環境負荷量(NOx,COの濃度)、設備効率、部品温度、蒸気温度、伝熱管メタル温度などがある。
【0044】
図4に戻り、試験計画装置210の動作の流れを示すフローチャートを説明する。まず、入力パラメータ提示部211aは、試験条件記憶領域214c1を参照し、複数のパラメータ群のうちの1つを学習対象パラメータ群として決定し、それ以外を非学習対象パラメータ群として決定し、各入力パラメータを取得する(S101)。特に本実施形態の例では入力パラメータ提示部211aは、燃焼ガスの下流側の領域から上流側の領域に向かう順序に沿って学習対象パラメータ群を選択する。よって、初回の試験条件提示は図7の例に示すように学習対象パラメータ群を入力パラメータ群G1、非学習対象パラメータ群を入力パラメータ群G2、G3、G4と決定する。
【0045】
学習試行回数決定部211fは学習対象パラメータ群に含まれる入力パラメータの種類数及び各入力パラメータの変数の数を基に学習試行回数nを決定する(S102)。図7の例では入力パラメータ群G1の変数の種類数はpA1とpA2の2個、変数の数は試験条件1,2,3の3個であるので、G1の全ての変数の組み合わせの試験を実行しようとすると、3(3×3)で9パターンの試験条件でシミュレーションを行う必要がある。そこで、学習試行回数決定部211fは、統計的手法を用いて予め定められた学習試行回数決定条件に従って、全ての変数の組み合わせを網羅した試験回数よりも少ない学習試行回数nを決定する。本例ではn=3とする。
【0046】
入力パラメータ提示部211aは、学習試行回数決定部211fが決定したn回の試験に用いるための試験条件、すなわちnパターンの試験条件の各入力パラメータを決定し、試験条件を提示する(S103)。本例では3パターンの試験条件1〜3の全てにおいて、入力パラメータ群G1のパラメータは変数とし、入力パラメータ群G2、G3、G4のパラメータは固定値とする。この固定値は、各入力パラメータの標準的な値や設計値、また最適値と予想される値を用いてもよい。
【0047】
入力パラメータ提示部211aは提示したnパターンの試験条件を試験条件記憶領域214c1に記憶すると共に、出力制御部211gに出力する。
【0048】
出力制御部211gから出力されたnパターンの試験条件はボイラ1で実際に試運転を行い実プロセス値rAk〜rGk(k=1〜n)が得られる。実プロセス値取得部211cはこの実プロセス値rAk〜rGkをネットワーク100や記憶媒体201、また入力装置218を介して取得し(S104)、実プロセス値記憶領域214c3に記憶する。
【0049】
シミュレーション部211bは、試験条件記憶領域214c1から各試験条件を読み出し、各仮想プロセス値vAk〜vGkを演算するために設けられたモデルデータfA(p)、fB(p)・・・、fG(p)にあてはめて、仮想プロセス値vAk〜vGkの其々を演算する。そして出力制御部211gは、試験条件とそれを適用した場合の仮想プロセス値及び実プロセス値を出力する(S105)。
【0050】
モデルデータ記憶部214bには、仮想プロセス値vA〜vGの種類に応じて決定されたモデルデータfA(p)、fB(p)・・・、fG(p)が仮想プロセス値の種類数と同数、記憶されている。シミュレーション部211bは順次試験条件k(pA1k、pA2k、pB1k、pB2k、pC1k、pD1k、pD2k、pD3k)を各モデルデータに適用し、下式(1)により試験条件kの各仮想プロセス値vAk〜vGkを算出する。
【数1】
【0051】
式(1)において、試験条件1〜3ではpA1k、pA2kは変数であり、pB1k、pB2k、pC1k、pD1k、pD2k、pD3kは固定値である。
【0052】
モデルデータ学習部211dは、各プロセス値の種類ごとに仮想プロセス値及び実プロセス値を比較し、全てのプロセス値について、仮想プロセス値及び実プロセス値の乖離(仮想プロセス値と実プロセス値の差の絶対値)が所定値として予め定められた許容範囲(以下「許容範囲」と略記する)内にあるかを判断する(S106)。許容範囲外となるモデルデータが一つでもあれば(S106/No)、許容範囲外となるモデルデータのみを修正して修正後のモデルデータを生成する(S107)。図7の例では修正後のモデルデータfAa(p)を生成する。
【0053】
図8は、仮想プロセス値及び実プロセス値の相関図である。グラフ1は、試験条件1,2,3によりボイラ1で試運転を行って得られた実プロセス値、例えばrA1、rA2、rA3をプロットした点を基に生成したグラフ(例えば最小二乗法による)である。このグラフを中心に、モデルデータfA(p)の修正の要否判断に用いる許容範囲を設けておく。そして仮想プロセス値がその許容範囲内に含まれていればモデルデータfA(p)は修正不要、含まれていなければモデルデータ学習部211dは入力パラメータに対して実プロセス値rA1が得られるようにモデルデータfA(p)を修正して修正後のモデルデータfAa(p)を生成する。他のモデルデータについてもモデルデータfA(p)と同様の手順で修正要否の判断及び修正要の場合は修正する。
【0054】
モデルデータ学習部211dは、修正後のモデルデータを用いて再度シミュレーション処理を実行し、修正後の仮想プロセス値を演算する。出力制御部211gは、修正後のモデルデータに適用した試験条件とそのときの仮想プロセス値、及び実プロセス値とを出力する(S108)。図7の例では、修正後のモデルデータfAa(p)に試験条件1〜3をあてはめて仮想プロセス値vA1a、vA2a、vA3aを再度算出する。この仮想プロセス値vA1a、vA2a、vA3aと実プロセス値rA、rB、rCとの乖離が許容範囲に入っていれば(S109/Yes)修正が適切に行われたとしてモデルデータ記憶部214bに記憶されているモデルデータfA(p)を修正後のモデルデータfAa(p)に書き換え(S110)、ステップS106へ戻る。
【0055】
修正後のモデルデータで得られた仮想プロセス値、例えば上記仮想プロセス値vA1a、vA2a、vA3aが実プロセス値rA、rB、rCの許容範囲に入っていなければ(S109/No)、再試験条件提示処理を実行する(S111)。
【0056】
再試験条件提示処理(S111)では、入力パラメータ提示部211aは、実プロセス値と修正後のモデルデータを用いてシミュレーション部211bにより演算された仮想プロセス値との乖離が予め定められた許容範囲外にある場合、学習対象パラメータ群の変数とされた入力パラメータの間隔もしくは範囲を変更し、再度試験条件を提示する。そして、再提示された試験条件を用いてステップS104からステップS111を実行する。その後ステップS106へ戻る。
【0057】
モデルデータ学習部211dは、全ての仮想プロセス値及びそれに対応する実プロセス値の乖離が許容範囲内であれば(S106/Yes)、モデルデータの修正は不要である。そこで、図5に示すように入力パラメータ提示部211aは学習対象パラメータ群として選択していない入力パラメータ群が残っているかを判定し(S112)、残っていれば新たな学習対象パラメータ群を用いた試験条件の提示処理を開始する(S112/No)。
【0058】
そこでスコア算出部211eは、スコア換算データ記憶部214dに予め設定されたスコア換算データ(図9参照)を用いて、ステップS101で選択した学習対象パラメータ群を用いた試験条件1〜kの評価スコアを算出し、スコア記憶領域214c4に記憶する(S113)。
【0059】
図9はスコア換算データの一例を示す図である。各実プロセス値は、所定の目標より遠ざかるに従いスコアの値が小さくなるものとし、各実プロセス値の特性には、例えばプロセス値が小さいほどスコアの値が増加するものを例示している。スコア換算データ記憶部214dには、各実プロセス値rA〜rGの種類の其々に対応するスコア換算データが記憶されている。スコア算出部211eは実プロセス値rA1を読み出し、実プロセス値rA1に対応するスコア換算データを用いて実プロセス値rA1に対するスコアを算出する。同様に、全ての実プロセス値rB1〜rG1に対するスコアを算出する。そして、試験条件1で得られた各実プロセス値を基に算出したスコアの集計値を用いて試験条件1の全体スコアを算出する。同様に試験条件2、3の全体スコアも算出する。
【0060】
上記では、実プロセス値を用いて各試験条件の全体スコアを算出するとしたが、仮想プロセス値は実プロセス値との乖離が許容範囲内にあれば仮想プロセス値に対してスコア付を行い、各試験条件の全体スコアを算出してもよい。
【0061】
入力パラメータ提示部211aはスコア記憶領域214c4に記憶された評価スコアを参照し、試験結果が実プロセス値の所定の目標値(最適値)により近いとして相対的に良好なもの、望ましくは最も良好なものを選択する(S114)。
【0062】
入力パラメータ提示部211aは次の新たな学習対象パラメータ群、例えば入力パラメータ群G2を選択し(S115)、学習試行回数決定部211fが入力パラメータ群G2に含まれる入力パラメータの種類数及び変数の数を基に学習試行回数nを新たに決定する(S116)。
【0063】
入力パラメータ提示部211aは新たに決定された学習試行回数nと同数のパターン数からなる新たな試験条件を提示する(S117)。
【0064】
本ステップでは、新たに選択された学習対象パラメータ群の入力パラメータは変数とし、既に学習対象パラメータ群として選択された入力パラメータ群の入力パラメータ(例えば、入力パラメータ群G1)は、予め設定されたスコア換算データを用いて算出した評価スコアを基に、実プロセス値の所定の目標値(最適値)により近い最適条件に最も近いとして選択された試験条件の入力パラメータを用いる。図10の例では、試験条件が2回目の設定として、新たな学習対象パラメータ群を入力パラメータ群G2とし入力パラメータの値pB1k、pB2kは変数、非学習対象パラメータ群の1つである入力パラメータ群G1の入力パラメータは最適条件と判断された試験条件3の入力パラメータの値pA13、pA23、入力パラメータ群G3、G4の入力パラメータの値は固定値pC1f、pD1f、pD2fとする。
【0065】
全ての入力パラメータ群を学習対象パラメータ群として選択し終えた場合は(S112/Yes)、一連の処理を終了する。
【0066】
発電設備として、火力発電所に設置されるボイラの運転に用いられる入力パラメータは例えば10項目以上の多数あり、プロセス値も多数ある。しかもある入力パラメータを変更すると良好となるプロセス値と悪化するプロセス値とが混在しており運転制御が複雑であるため、運転支援の一環として、ボイラの仮想的な動作を規定したモデルデータを構成し、これを用いたシミュレーションを行うことがある。このシミュレーションの精度を向上させるために、入力パラメータを多段階に設定して試運転をする際に、試行する試験条件が増えるほど試運転の時間が長くかかる一方、試験条件を特別な根拠なく減らすとモデルデータの精度が悪化することから、試験条件を適切に設定したいという要望がある。
【0067】
本実施形態によれば、入力パラメータを各入力パラメータの相互の関係に基づいて、予め複数のパラメータ群にグルーピングしてある。例えば各入力パラメータの相互関係がプロセス値への影響が少ないものを予めグルーピングして複数の入力パラメータ群としてある。学習対象パラメータ群の入力パラメータは変数とし、非学習対象パラメータ群の入力パラメータは固定値とする試験条件を用いた仮想プロセス値及び実プロセス値の比較を基に、最初にモデルデータを修正し最適値が見つかればそれを固定値として用い、順次学習対象パラメータ群を変更しながらモデルデータを修正する。そのため、入力パラメータを予めグルーピングをすることなく入力パラメータの全組み合わせ数の試験を行って最適値を見つけモデルデータを一気に修正する場合と比較して、試験回数を減らすことができる。また試験条件と共に実プロセス値及び仮想プロセス値を出力することで、技術者はどの入力パラメータを変化させてどのようにモデルデータが変化したかを把握しやすくなる。また技術者は実プロセス値及び仮想プロセス値の乖離の大小を基にモデルデータの精度を把握しやすくなる。
【0068】
また複数の入力パラメータをボイラの燃焼ガスの下流側から上流側に向かう順序に沿って複数の領域で区分けし、この順序に沿って学習対象パラメータ群を選択することにより、技術者が同一のパラメータ群に含まれる入力パラメータの種類をより認識しやすくなる。更にボイラの実プロセス値に与える入力パラメータの相互の関係に沿ったグルーピングが実現できるので、グルーピングしたパラメータ群から得られるプロセス値の精度が向上する。
【0069】
また、学習試行回数決定部211fにより、学習対象パラメータ群内の入力パラメータの全組み合わせ(例えば3=9パターン)よりも少ない学習試行回数(例えば3回)に絞り込むので、入力パラメータのグルーピングの効果による試験回数の低減に加えて、更なる試験回数の低減を図りつつ、効率的にモデルデータの精度を高めることができる。
【0070】
また修正後モデルデータの精度が不十分な場合には、入力パラメータ提示部211aが学習対象パラメータ群の変数とされた入力パラメータの間隔もしくは範囲を変更して新たな試験条件を提示するので、修正後のモデルデータの精度不良の改善が行える。
【0071】
上記実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない様々な変更態様は、本実施形態に含まれる。例えば図4のステップS104、S105において、実プロセス値の取得と仮想プロセス値の演算順序を入れ替えてもよい。また、ステップS105やステップS108において実プロセス値の取得と仮想プロセス値の技術者に対する出力は行わず、試験計画装置内部において、例えば実プロセス値の取得と仮想プロセス値をモデルデータ学習部に出力する態様に代えてもよい。またスコア算出部211eによる評価スコアの算出は試験結果が良好な条件の抽出例に過ぎず、スコアを用いることなく実プロセス値及び仮想プロセス値の実値を用いて良好な試験条件を抽出してもよい。
【0072】
更に発電設備としてボイラとは異なる運転設備のモデルデータの学習に本発明を適用してもよい。
【0073】
また入力パラメータ提示部211aは提示した試験条件を出力制御部211gから出力装置219に出力し、技術者が随時提示された試験条件を視認できるように構成してもよい。更に提示された試験条件に対して入力装置218を介して技術者が修正操作が行えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1:ボイラ
100:ネットワーク
210:試験計画装置
211a:入力パラメータ提示部
211b:シミュレーション部
211c:実プロセス値取得部
211d:モデルデータ学習部
211e:スコア算出部
211f:学習試行回数決定部
214a:入力パラメータ記憶部
214b:モデルデータ記憶部
214c:試験結果記憶部
214d:スコア換算データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10