(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るロボット用架台、ロボットシステム、および、高さ調整方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施の形態のロボットシステム10を示す斜視図、
図2は、実施の形態のロボットシステム10を示す側面図である。ロボットシステム10は、ロボット12と、ロボット12が搭載されるロボット用架台14とを備える。ロボットシステム10(ロボット12が搭載されたロボット用架台14)は、射出成形機Mに近接して配置される。この射出成形機Mは、機種に応じてその大きさが異なる。
【0013】
ロボット12は、複数の関節を有する多関節アーム20と、多関節アーム20を支持する機台22とを備える、多関節型の産業ロボットである。多関節アーム20の先端には、エンドエフェクタが取り付けられる取付部20aが設けられている。エンドエフェクタとしては、例えば、ロボット12によって取り扱われる対象物を保持可能なハンド等が挙げられる。ロボット12の動作範囲(取付部20aの動作範囲)AFは、ロボット12の種類、具体的には、ロボット12の大きさ、構造等によって異なる。
【0014】
ロボット12により取り扱われる対象物としては、例えば、射出成形機Mの金型から回収する成形品、および、射出成形機Mの金型内にインサートするインサート部品等が挙げられる。つまり、ロボット12は、射出成形機Mによって成形された成形品の金型からの取り出し、および、射出成形機Mの金型内へのインサート部品のインサートのうち、少なくとも一方を行う。
【0015】
ロボット用架台14は、ロボット12を搭載するように構成された第1の架台30と、対象物を載置するように構成された第2の架台32とを有する。この第1の架台30と第2の架台32とは連結されている。
【0016】
また、ロボット用架台14は、ロボット12と第1の架台30との間に設置され、ロボット12の高さ位置を調整する高さ調整部34を備える。つまり、ロボット12の機台22は、高さ調整部34を介して第1の架台30の上面30aに固定されている。第1の架台30の内部には、ロボット12を制御する制御装置(例えば、数値制御装置)36が配置されている。
【0017】
第2の架台32は、第1の架台30に対して水平方向に隣接して配置されている。第2の架台32は、第1の架台30よりも高く構成されている。つまり、第2の架台32の上面32aは、第1の架台30の上面30aよりも高い。なお、第2の架台32は、第1の架台30と同じ高さ、或いは、第1の架台30よりも低く構成されていてもよい。第2の架台32の高さは、作業者の作業性を考慮して人間工学的に基づいた高さである。
【0018】
第2の架台32の上面32aには、対象物を載置するためのパレット部38が設けられている。パレット部38は、底部38aと底部38aの周縁部から全周に亘って上方に突出した周壁部38bとを有する。
【0019】
第2の架台32には、ロボット用架台14を移動させる際に作業者が握ることが可能なグリップハンドル40が設けられている。グリップハンドル40は、第2の架台32の第1の架台30が設けられた側とは反対側に設けられている。第1の架台30および第2の架台32は、連結部42によって一体的に移動可能に連結されており、例えば、ロボット用架台14(具体的には、第1の架台30および第2の架台32)の下部には、複数のキャスタ44が設けられている。
【0020】
なお、
図1、
図2においては、フレーム状に構成された第1の架台30および第2の架台32を図示したが、第1の架台30および第2の架台32は、箱状に構成されていてもよい。また、
図1の符号46は、ロボット用架台14の位置を固定するためのストッパである。ストッパ46は、上下方向に位置調整可能であり、ロボット用架台14が設置される床面に当接することで、ロボット用架台14の位置を固定できるようになっている。
【0021】
高さ調整部34は、高さ方向(上下方向)に沿って伸縮可能である。高さ調整部34は、例えば、ジャッキ等によって構成される。ジャッキの種類としては、機械式のジャッキ(ねじジャッキ、ラック駆動ジャッキ)、空気作動式のジャッキ(エアージャッキ)、または、液体作動式のジャッキ(油圧ジャッキ)等が挙げられる。高さ調整部34が高さ方向に伸縮することで、ロボット12の第1の架台30に対する高さ位置が変更される。この高さ調整部34は、作業者の操作によって伸縮して、ロボット12の高さ位置を調整する。
【0022】
ここで、高さ調整部34が設けられていない場合のロボットシステム10を用いた場合について説明する。
図3Aは、高さ調整部34が設けられていない場合のロボットシステム10と小型の射出成形機M(M1)とを示す側面図であり、
図3Bは、高さ調整部34が設けられていない場合のロボットシステム10と大型の射出成形機M(M2)とを示す側面図である。
図3A、
図3Bは、射出成形機M1、M2の型締装置側からみた図である。
【0023】
ロボット12は、金型から成形品を取り出して、パレット部38に成形品を載置したり、パレット部38に載置されているインサート部品を保持して金型内にインサートする。そのため、ロボット12の動作範囲(取付部20aの到達可能領域)AF内に、パレット部38および金型中心Cが含まれていることが好ましい。なお、ロボット12の動作範囲AF内に、パレット部38が位置するように、第1の架台30と第2の架台32とが連結されている。
【0024】
図3Aに示すように、高さ調整部34が設けられていないロボットシステム10を小型の射出成形機M1に近接配置したときには、小型の射出成形機M1の金型中心C(C1)は、ロボット12の動作範囲AF内に含まれている。しかしながら、
図3Bに示すように、高さ調整部34が設けられていないロボットシステム10を大型の射出成形機M2に近接配置したときには、大型の射出成形機M2の金型中心C(C2)は、ロボット12の動作範囲AFから外れてしまう。したがって、
図3Bに示す場合では、成形品の取り出しや、金型内へのインサート部品のインサートが行なえない可能性が大きい。
【0025】
そこで、本実施の形態では、ロボットシステム10に高さ調整部34を設けることで、ロボット12の高さ位置を調整可能にしている。高さ調整部34は、射出成形機Mの機種に応じた高さ位置となるように、ロボット12の高さ位置を調整する。つまり、高さ調整部34は、射出成形機Mの金型中心Cがロボット12の動作範囲AF内となるように、ロボット12の高さ位置を調整する。なお、
図4に示す射出成形機Mは、
図3Bに示す大型の射出成形機M2と機種が同一であるものとする。
【0026】
このように、射出成形機Mの機種が変更された場合であっても、射出成形機Mの金型中心Cがロボット12の動作範囲AF内に入るように、ロボット12の高さ位置を簡単に調整することができる。その結果、射出成形機Mの機種が変更された場合であっても、ロボット12は、成形品の金型からの取り出しや、金型内へのインサート部品のインサートを良好に行うことができる。また、1つのロボット用架台14(またはロボットシステム10)で、複数機種の射出成形機Mに対応することができ、射出成形機Mの機種毎に、ロボット用架台14(またはロボットシステム10)を用意する必要がなく、コストが低廉になる。
【0027】
[変形例]
上記実施の形態は、以下のように変形にしてもよい。
【0028】
<変形例1>
上記実施の形態では、伸縮可能な高さ調整部34を用いて、ロボット12の高さ位置を調整したが、
図5に示すように、単に、ブロック状の高さ調整部34Aを用いて、ロボット12の高さ位置を調整してもよい。この場合は、高さが異なる複数のブロック状の高さ調整部34Aを予め用意し、射出成形機Mの機種に応じた高さの高さ調整部34Aを、第1の架台30とロボット12との間に設置すればよい。なお、
図5に示す射出成形機Mは、
図3Bに示す大型の射出成形機M2と機種が同一であるものとする。
【0029】
このように、変形例1でも上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0030】
<変形例2>
上記実施の形態では、高さ調整部34を手動で操作することで、高さ調整部34を伸縮させてロボット12の高さ位置を調整したが、自動で高さ調整部34を伸縮させてロボット12の高さ位置を調整してもよい。
【0031】
図6は、変形例2における高さ調整部34を制御する制御装置50の構成を示す図である。この制御装置50は、第1の架台30の内部に配置されていてもよい。また、ロボット12を制御する制御装置36と、高さ調整部34を制御する制御装置50とを1つの制御装置で構成してもよい。
【0032】
この制御装置50は、ロボットシステム10に含まれてもよいし、ロボット用架台14に含まれてもよい。つまり、ロボット12、ロボット用架台14、および、制御装置50で、ロボットシステム10を構成してもよいし、第1の架台30、第2の架台32、高さ調整部34、および、制御装置50で、ロボット用架台14を構成してもよい。
【0033】
制御装置50は、入力部52、制御部54、記憶媒体56、および、表示部58を備える。入力部52は、作業者の操作を受けるものであり、作業者は、入力部52を操作することで所定の情報を入力することができる。入力部52は、例えば、キーボード等によって構成される。
【0034】
制御部54は、CPU等のプロセッサによって構成されており、演算処理を行うとともに、高さ調整部34を制御する。記憶媒体56は、制御部54の制御に必要なデータを記憶するとともに、後述するテーブル56aを格納している。表示部58は、作業者に必要な情報を表示するものであり、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等によって構成されている。
【0035】
作業者は、入力部52を操作することで、ロボットシステム10の処理対象となる射出成形機Mの機種を入力する。制御部54は、ロボット12の高さ位置が、入力された機種に応じた高さ位置となるように、高さ調整部34を制御する。高さ調整部34は、制御部54から送られてきた制御信号に基づいて伸縮し、ロボット12の高さ位置を調整する。
【0036】
具体的には、テーブル56aには、
図7に示すように、射出成形機Mの機種とロボット12の高さ位置とが対応付けられて記憶されている。そして、制御部54は、入力された機種に応じたロボット12の高さ位置をテーブル56aから取得し、ロボット12が取得した高さ位置となるように、高さ調整部34を制御する。
【0037】
なお、ロボットシステム10に設けられた撮像部がロボットシステム10の処理対象となる射出成形機Mを撮像することで得られた画像データから射出成形機Mの機種を取得してもよい。この場合は、制御部54は、撮像部が撮像した画像データに対して画像認識処理を施すことで、射出成形機Mの機種を特定する。
【0038】
このように、変形例2でも上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、変形例2では、射出成形機Mの機種に応じて、自動的にロボット12の高さ位置が調整されるので、手間が省け、作業者の作業時間を短縮することができる。
【0039】
〔実施の形態から得られる技術的思想〕
上記実施の形態および変形例1、2から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0040】
<第1の技術的思想>
第1の技術的思想は、ロボット用架台(14)であって、ロボット(12)を搭載するように構成された第1の架台(30)と、ロボット(12)と第1の架台(30)との間に配置され、ロボット(12)の高さ位置を調整する高さ調整部(34、34A)と、第1の架台(30)に連結され、ロボット(12)により取り扱われる対象物を載置するように構成された第2の架台(32)と、を備える。
【0041】
これにより、ロボット(12)の高さ位置を簡単に調整することができる。また、射出成形機(M)の金型中心(C)がロボット(12)の動作範囲(AF)内に入るように、ロボット(12)の高さ位置を簡単に調整することが可能となる。その結果、ロボット(12)は、成形品の金型からの取り出しや、金型内へのインサート部品のインサートを良好に行うことができる。また、1つのロボット用架台(14)で、複数機種の射出成形機(M)に対応することができ、射出成形機(M)の機種毎に、ロボット用架台(14)を用意する必要がなく、コストが低廉になる。
【0042】
第1の架台(30)および第2の架台(32)は、一体的に移動可能であってもよい。これにより、ロボット用架台(14)を簡単に移動させることができ、利便性が向上する。
【0043】
高さ調整部(34、34A)は、射出成形機(M)の機種に応じた高さ位置となるように、ロボット(12)の高さ位置を調整してもよい。これにより、射出成形機(M)の機種が変更された場合であっても、簡単に、射出成形機(M)の金型中心(C)を、ロボット(12)の動作範囲(AF)内にすることができる。その結果、射出成形機(M)の機種が変更された場合であっても、ロボット(12)は、成形品の金型からの取り出しや、金型内へのインサート部品のインサートを良好に行うことができる。
【0044】
ロボット(12)は、射出成形機(M)によって成形された成形品の取り出し、および、射出成形機(M)の金型内へのインサート部品のインサートのうち、少なくとも一方を行ってもよい。これにより、成形品の金型からの取り出しや、金型内へのインサート部品のインサートを自動で行うことができる。
【0045】
<第2の技術的思想>
第2の技術的思想は、第1の技術的思想のロボット用架台(14)を有するロボットシステム(10)であって、高さ調整部(34)を制御する制御部(54)と、作業者の操作を受け付ける入力部(52)と、を有する。制御部(54)は、ロボット(12)の高さ位置が、作業者の入力部(52)の操作によって入力された射出成形機(M)の機種に応じた高さ位置となるように、高さ調整部(34)を制御する。
【0046】
これにより、射出成形機(M)の機種が変更された場合であっても、射出成形機(M)の金型中心(C)がロボット(12)の動作範囲(AF)内に入るように、ロボット(12)の高さ位置を簡単に調整することができる。その結果、射出成形機(M)の機種が変更された場合であっても、ロボット(12)は、成形品の金型からの取り出しや、金型内へのインサート部品のインサートを良好に行うことができる。また、1つのロボット用架台(14)で、複数機種の射出成形機(M)に対応することができ、射出成形機(M)の機種毎に、ロボット用架台(14)を用意する必要がなく、コストが低廉になる。さらに、自動でロボット(12)の高さ位置が調整されるので、手間が省け、作業者の作業時間が短縮する。
【0047】
ロボットシステム(10)は、射出成形機(M)の機種とロボット(12)の高さ位置とが対応付けて記憶されたテーブル(56a)を備えてもよい。制御部(54)は、テーブル(56a)を用いて、高さ調整部(34)を制御してもよい。これにより、簡単に、射出成形機(M)の機種に応じてロボット(12)の高さ位置を調整することができる。
【0048】
<第3の技術的思想>
第3の技術的思想は、第1の技術的思想のロボット用架台(14)を用いて、制御装置(50)がロボット(12)の高さ位置を調整する高さ調整方法であって、ロボット(12)の高さ位置が、作業者によって入力された射出成形機(M)の機種に応じた高さ位置となるように、制御装置(50)が高さ調整部(34)を制御する制御ステップを含む。
【0049】
これにより、射出成形機(M)の機種が変更された場合であっても、射出成形機(M)の金型中心(C)がロボット(12)の動作範囲(AF)内に入るように、ロボット(12)の高さ位置を簡単に調整することができる。その結果、射出成形機(M)の機種が変更された場合であっても、ロボット(12)は、成形品の金型からの取り出しや、金型内へのインサート部品のインサートを良好に行うことができる。また、1つのロボット用架台(14)で、複数機種の射出成形機(M)に対応することができ、射出成形機(M)の機種毎に、ロボット用架台(14)を用意する必要がなく、コストが低廉になる。さらに、自動でロボット(12)の高さ位置が調整されるので、手間が省け、作業者の作業時間が短縮する。
【0050】
制御装置(50)は、射出成形機(M)の機種とロボット(12)の高さ位置とが対応付けて記憶されたテーブル(56a)を備えてもよい。制御ステップは、テーブル(56a)を用いて、高さ調整部(34)を制御してもよい。これにより、簡単に、射出成形機(M)の機種に応じてロボット(12)の高さ位置を調整することができる。