特許第6882068号(P6882068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882068
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】モデル作成装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/20 20060101AFI20210524BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20210524BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   G06T17/20
   G01C15/00 103Z
   G01C15/06 T
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-102200(P2017-102200)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-197949(P2018-197949A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398040642
【氏名又は名称】ジェイアール東海コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】今井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 秀麿
(72)【発明者】
【氏名】浅野 嘉文
(72)【発明者】
【氏名】小野 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】地主 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 将也
【審査官】 片岡 利延
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−012095(JP,A)
【文献】 特開2010−133752(JP,A)
【文献】 特開2009−217660(JP,A)
【文献】 特開2003−114121(JP,A)
【文献】 特開2001−306658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/20
G01C 15/00
G01C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の評価対象物が分布し、前記各評価対象物が一部ずつ所定面下に没し、前記各評価対象物の周囲の前記所定面上で複数の非評価対象物が発生することがあり、かつ、外部から力を受けて前記各評価対象物が個別に移動することもある評価区域内での前記各評価対象物の移動の程度を評価するため、前記評価区域の前記所定面上の立体形状を示すポリゴンモデルである区域ポリゴンモデルを作成するモデル作成方法であって、
3次元スキャナを用いて前記評価区域を走査して作成された3次元の座標値を持つ点群データを作成する点群データ作成工程と、
前記評価区域内での前記非評価対象物の分布密度が、所定の分布密度よりも低い場合と、所定の分布密度よりも高い場合とで、ポリゴンモデルを作成する基準となるパラメータであって、前記点群データが示す点群の中で、前記評価対象物を示すと想定される点を結ぶ数を変更可能なパラメータを調整して前記区域ポリゴンモデルを作成するモデル作成工程と
を有し、
前記モデル作成工程では、
前記非評価対象物の分布密度が高い場合、前記パラメータの値を、前記点群データが示す点群の中で、前記評価対象物を示していると想定される点を結ぶ数が、前記非評価対象物の分布密度が低い場合に比べて少なくなる値に調整して、前記区域ポリゴンモデルを作成するモデル作成方法。
【請求項2】
請求項1のモデル作成方法において、
前記所定の分布密度としては、前記評価区域で発生する前記非評価対象物の平均的な分布密度であることを特徴とするモデル作成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のモデル作成方法において、
前記パラメータとしては、ポリゴンモデルのエッジの長さの最大値を規定する最大エッジ長、又は、ポリゴンモデルの各エッジがなす角度の最大値を規定する最大角度の少なくとも一方を用いることを特徴とするモデル作成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモデル作成方法で作成した前記区域ポリゴンモデルを記憶し、
作成した前記区域ポリゴンモデルと、記憶した過去の前記評価区域の前記区域ポリゴンモデルとを重ねて、これらを重ねた前記区域ポリゴンモデルの上にさらに平面形状のメッシュを掛け、これら異なる時期に作成した前記区域ポリゴンモデルを比較して、前記メッシュを構成する目のうち、移動した距離が大きい前記評価対象物のポリゴンモデルを囲う目と、移動した距離が小さい前記評価対象物のポリゴンモデルを囲う目とを異なる色で色づけして表示する表示方法。
【請求項5】
複数の評価対象物が分布し、前記各評価対象物が一部ずつ所定面下に没し、前記各評価対象物の周囲の前記所定面上で複数の非評価対象物が発生することがあり、かつ、外部から力を受けて前記各評価対象物が個別に移動することもある評価区域内での前記各評価対象物の移動の程度を評価するため、前記評価区域の前記所定面上の立体形状を示すポリゴンモデルである区域ポリゴンモデルを作成するモデル作成装置であって、
前記評価区域内での前記非評価対象物の分布密度が、所定の分布密度よりも低い場合と、所定の分布密度よりも高い場合とで、ポリゴンモデルを作成する基準となるパラメータであって、3次元スキャナによって前記評価区域を走査して得られた3次元の座標値を持つ点群データが示す点群の中で、前記評価対象物を示すと想定される点を結ぶ数を変更可能なパラメータを設定する設定部と。
前記設定部で設定されたパラメータを用いて前記点群データに基づいて前記区域ポリゴンモデルを作成するモデル作成部と
を有し、
前記設定部では、
前記非評価対象物の分布密度が高い場合、前記パラメータの値を、前記点群データが示す点群の中で、前記評価対象物を示していると想定される点を結ぶ数が、前記非評価対象物の分布密度が低い場合に比べて少なくなる値に設定して、前記区域ポリゴンモデルを作成するモデル作成装置。
【請求項6】
請求項5の前記モデル作成装置において、
前記所定の分布密度は、前記評価区域で発生する前記非評価対象物の平均的な分布密度であることを特徴とするモデル作成装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6のいずれか1項に記載のモデル作成装置において、
前記パラメータとしては、ポリゴンモデルのエッジの長さの最大値を規定する最大エッジ長、又は、ポリゴンモデルの各エッジがなす角度の最大値を規定する最大角度の少なくとも一方を用いることを特徴とするモデル作成装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のモデル作成装置で作成した前記区域ポリゴンモデルを記憶する記憶部と、
作成した前記区域ポリゴンモデルと、記憶した過去の前記評価区域の前記区域ポリゴンモデルとを重ねて、これらを重ねた前記区域ポリゴンモデルの上にさらに平面形状のメッシュを掛け、これら異なる時期に作成した前記区域ポリゴンモデルを比較して、前記メッシュを構成する目のうち、移動した距離が大きい前記評価対象物のポリゴンモデルを囲う目と、移動した距離が小さい前記評価対象物のポリゴンモデルを囲う目とを異なる色で色づけして表示する色付表示部と
を備えることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の評価対象物が分布し、各評価対象物が一部ずつ所定面下に没し、各評価対象物の周囲の所定面上で複数の非評価対象物が発生することがある評価区域の所定面上の立体形状を示すポリゴンモデルを作成するモデル作成方法、およびモデル作成装置、モデル作成方法で作成したポリゴンモデルを利用した表示方法、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の根固工で用いられる各根固ブロックの移動の程度についての評価、すなわち根固工の健全性の評価は、現在下記のように行われている(非特許文献1)。
1)ヘリコプターを用いて、専門業者が根固工が設置された区域を上空から撮影する。
【0003】
2)撮影した画像を専門業者が解析する。
3)過去に撮影した画像と、1)2)の工程で撮影した現在の画像とを比較し、根固工で用いられる根固ブロックの移動の程度を作業員が評価する。
【0004】
このうち撮影には、高性能なカメラが用いられる。しかし、撮影された画像は、根固ブロックの水面上に出た部分と、その近くを流れる水の水しぶきとの区別がつきにくい画像であることが多い。これは、根固工からかなり離れた上空から撮影が行われるためである。そこで、ヘリコプターを用いた手法で根固工の健全性を評価する場合、根固工が設置された区域を撮影した後、撮影した画像を、根固ブロックの水面上に出た部分の形状がはっきり分かる画像に加工する作業が行われていた。
【0005】
しかし、この加工作業は、非常に手間がかかる作業であった。
そのため、根固工の健全性を評価する新たな手法として、発明者は、3次元スキャナを用いた手法を検討した。
【0006】
この新たな手法では、最初に、3Dスキャナを橋桁に設置し、根固工が設置された区域を3Dスキャナで走査する作業が実行される。すると、3Dスキャナでは、根固工が設置された区域の立体形状を示す点群データが形成される。次に、その点群データが示す点群を結んで根固工が設置された区域の立体形状を示すポリゴンモデル、すなわち区域ポリゴンモデルを作成する処理が実行される。そして最後に、その作成した区域ポリゴンモデルと過去に作成した区域ポリゴンモデルとを比較して、根固工の健全性を評価するのである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】土木学会 第63回年次学術講演会(平成20年9月)、講演紙 pp281- 282「ヘリコプターを活用した根固めブロック工の測量」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この新しい手法で作成される区域ポリゴンモデルに含まれる、根固ブロックを示すポリゴンモデルは、水しぶきの発生度合いによって、同じ根固ブロックであっても、大きさが様々に異なってしまう。
これは、根固ブロックを示すポリゴンモデルを作成するとき、根固ブロックを示すと想定される点群の周りに存在する、水しぶきを示すと想定される点の数が、水しぶきの発生度合いによって異なるためと考えられる。つまり、根固ブロックを示すポリゴンモデルを作成する場合、水しぶきを示すと想定される点を一定程度エッジで結んでしまうが、水しぶきが多く発生していればいるほど、エッジで結ぶ点の数が多くなってくるためと考えられる。
【0009】
そのため、異なる時期に作成された区域ポリゴンモデル同士を比べても、各区域ポリゴンモデルに含まれる同じ根固ブロックを示す各ポリゴンモデルの大きさが異なるので、根固工の健全度を正確に評価することが難しかった。
【0010】
本発明では、水しぶき(非評価対象物)の発生度合いによる影響を軽減して、根固工が設置された区域(評価区域)内で、根固ブロック(評価対象物)が移動する程度の評価、いわゆる健全度を評価可能な、評価区域の区域ポリゴンモデルを作成するためのモデル作成方法、および、モデル作成装置を提供する。
【0011】
また、本発明では、モデル作成方法で作成したポリゴンモデルを利用した表示方法、および表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のモデル作成方法は、複数の評価対象物が分布し、前記各評価対象物が一部ずつ所定面下に没し、前記各評価対象物の周囲の前記所定面上で複数の非評価対象物が発生することがあり、かつ、外部から力を受けて前記各評価対象物が個別に移動することもある評価区域内での前記各評価対象物の移動の程度を評価するため、前記評価区域の前記所定面上の立体形状を示すポリゴンモデルである区域ポリゴンモデルを作成するもの このモデル作成方法は、3次元スキャナを用いて前記評価区域を走査して作成された3次元の座標値を持つ点群データを作成する点群データ作成工程と、前記評価区域内での前記非評価対象物の分布密度が、所定の分布密度よりも相対的に低い場合と、所定の分布密度よりも相対的に高い場合とで、ポリゴンモデルを作成する基準となるパラメータであって、前記点群データが示す点群の中で、前記評価対象物を示していると想定される点を結ぶ数を変更可能なパラメータを調整して前記区域ポリゴンモデルを作成するモデル作成工程とを実行する。
【0013】
そして、このモデル作成方法のモデル作成工程では、前記非評価対象物の分布密度が高い場合、前記パラメータの値を、前記点群データが示す点群の中で、前記評価対象物を示していると想定される点を結ぶ数が、前記非評価対象物の分布密度が低い場合に比べて少なくなる値に調整して、前記区域ポリゴンモデルを作成する。
【0014】
本発明のモデル作成方法では、評価区域内での非評価対象物の分布密度が、所定の分布密度よりも低い場合、点群データが示す点群の中で、評価対象物を示していると想定される点を結ぶ数が多くなるようにパラメータの値を調整する。一方、評価区域内での非評価対象物の分布密度が、所定の分布密度よりも高い場合、点群データが示す点群の中で、評価対象物を示していると想定される点を結ぶ数が少なくなるようにパラメータの値を調整している。
【0015】
つまり、本発明のモデル作成方法では、非評価対象物の分布密度をみて、評価対象物のポリゴンモデルの大きさが大きくなりすぎたり、小さくなりすぎることを抑制している。
そのため、本発明のモデル作成方法を用いると、異なる時期に作成した区域ポリゴンモデルの非評価対象物の分布密度が違っても、各区域ポリゴンモデルの評価対象物の大きさが調整されるので、評価区域内で評価対象物が移動する程度の評価、いわゆる根固工の健全度を評価することができる。
【0016】
なお、所定の分布密度としては、例えば、評価区域で発生する非評価対象物の平均的な分布密度等でもよい。
本発明のモデル作成方法では、パラメータとして、ポリゴンモデルのエッジの長さの最大値を規定する最大エッジ長、又は、ポリゴンモデルの各エッジがなす角度の最大値を規定する最大角度の少なくとも一方を用いるようにしてもよい。パラメータはこれらに限られるものではないが、これらを挙げたのは、ポリゴンモデルを作成するときの代表的なパラメータだからである。
【0017】
ところで、区域ポリゴンモデルを比較する方法として、本発明の表示方法を用いてもよい。この表示方法では、モデル作成方法で作成した区域ポリゴンモデルを記憶し、作成した区域ポリゴンモデルと、記憶した過去の評価区域の区域ポリゴンモデルとを重ねて、これらを重ねた区域ポリゴンモデルの上にさらに平面形状のメッシュを掛け、これら異なる時期に作成した区域ポリゴンモデルを比較して、メッシュを構成する目のうち、移動した距離が大きい評価対象物のポリゴンモデルを囲う目と、移動した距離が小さい評価対象物のポリゴンモデルを囲う目とを異なる色で色づけして表示する。
【0018】
このように、2時期の区域ポリゴンモデルを重ねてメッシュをかけて、評価対象物の移動の程度の大きい部分と小さい部分とにかかる目を異なる色で表示すれば、評価区域の健全度が一目で分かるので、評価区域の健全性の評価を簡単に行うことができる。
【0019】
なお、上述した各モデル作成方法を適用した各モデル作成装置も、各モデル作成方法と同様の作用効果をそれぞれ奏する。また、上述した表示装置も、上述した表示方法と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態のターゲットが設置された橋脚の正面図である。
図2】実施形態の3Dレーザスキャナを橋桁に設置する様子を説明するための模式図である。
図3】(a)は、橋梁を平面視した説明図であり、実施形態の3Dレーザスキャナの設置位置と走査範囲を説明する説明図である。(b)は、橋梁を正面視した説明図であり、実施形態の3Dレーザスキャナの設置位置と走査範囲を説明する説明図である。(c)は、3Dレーザスキャナが走査した評価区域の点群によって形成された画像である。
図4】実施形態のモデル作成装置のブロック図である。
図5】(a)は、第1処理のフローチャートである。(b)は、ターゲットの識別情報を入力するウインドウが表示された画像である。
図6】(a)は、第2処理のフローチャートである。(b)は、第2処理を実行するときに最初に表示される画像である。(c)は、最大エッジ長や最大角度を入力するウインドウの画像である。
図7】(a)非評価対象物である水しぶきの分布密度が相対的に低い場合に、評価対象物である根固ブロックのポリゴンモデルを作成する様子を説明する説明図である。(b)非評価対象物である水しぶきの分布密度が相対的に高い場合に、評価対象物である根固ブロックのポリゴンモデルを作成する様子を説明する説明図である。
図8】(a)は、第3処理のフローチャートである。(b)は、第3処理を実行するときに最初に表示される画像である。
図9】(a)は、第3処理の2時期比較処理の実行時に表示される画像である。(b)は、第3処理の差分解析処理の実行時に表示される画像である。(c)は、第3処理のレポート作成処理の実行時に表示される画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
以下で説明する根固工評価システムは、川に架けられた橋梁の根固工の健全度を評価するためのものである。
【0022】
根固工が設置された区域は、複数の根固ブロックが分布し、各根固ブロックが一部ずつ水面下に没し、各根固ブロックの周囲の水面上で複数の水しぶきが発生することがあり、かつ、川の水の力を受けて各根固ブロックが個別に移動することもある区域である。
【0023】
根固工評価システムは、このような根固工が設置された区域内での各根固ブロックの移動の程度を評価するためのものである。
この根固工評価システムは、3つの構成を備えている。
【0024】
第1の構成は、根固工の健全度を評価する現場に取り付けられるターゲットである。第2の構成は、現場内で持ち運ばれて使用される3Dレーザスキャナである。第3の構成は、3Dレーザスキャナで作成された点群データを処理するモデル作成装置である。
【0025】
以下、これらの各構成を順に説明する。
1)ターゲット
ターゲットは、さまざまな基準として用いられる。ターゲットは、3Dレーザスキャナで、根固工が設置された区域とともに走査される。そして、この走査が実行されると、根固工が設置された区域とともにターゲットを含んだ3次元の座標を持つ点群データが作成される。後述するように 複数の点群データが合成されるが、ターゲットを示す点群データは、これら点群データを合成する場合などに、合成する位置を決めるための基準として用いられる。
【0026】
ターゲットは、橋梁を構成する各脚部に取り付けられる。具体的には、ターゲット1は、隣り合う各脚部の各対向面に取り付けられる。橋梁を構成する脚部としては、橋脚や橋台等がある。図1は、ターゲット1を橋脚に設置した例を示している。図1に示すように、ターゲット1は、橋脚100のうち張出部101を構成する部分の対向面102に取り付けられる。なお、以下、本実施形態では、ターゲット1は、橋脚100に取り付けられているものとして説明する。
【0027】
ターゲット1は、各橋脚100の対向面102に2つずつに取り付けられる。1つのターゲット1は、張出部101の対向面の幅方向の一端側近傍に取り付けられ、もう一つのターゲット1は、幅方向の他端側近傍に取り付けられる。
【0028】
ターゲット1は、3Dレーザスキャナの走査精度に合わせた大きさに形成されている。具体的には、本実施形態で用いられる3Dレーザスキャナが、30m先の物体に対して約2cmピッチでレーザを当てて走査を行うものなので、ターゲット1は、3Dレーザスキャナから30m離れた位置で縦横28点ずつレーザを当てることが可能な大きさに形成されている。
【0029】
2)3Dレーザスキャナ
3Dレーザスキャナは、専用の取付具を用いて橋桁に取り付けられる。図2に示すように、取付具2は、全体に棒状に形成されている。この取付具2は、軸方向の数か所で分割可能に形成されており、分割された部分の数を変更することで長さ調整が可能である。また、取付具2の一端側にはクッション部20が巻かれている。3Dレーザスキャナ3は、この取付具2の他端側の先端に固定される。また、取付具2は、クッション部20が巻かれた一端側から延設され、遊端側が90°折り曲げられ、橋桁110の欄干111に引っ掛けることが可能な引掛部21が設けられている。3Dレーザスキャナ3は、この取付具2の他端側の先端に取り付けられた後、引掛部21が欄干111に引っ掛けられて、橋桁110の下面よりも下方に位置するように吊り下げられる。
【0030】
3Dレーザスキャナ3は、数個所に持ち運ばれる。3Dレーザスキャナ3は、図3(a)に示すように、隣り合う各橋脚100の間の略中間位置であって、橋桁110の幅方向の両端の各位置(符号3に対応する位置)に持ち運ばれる。図3(a)では、3つの橋脚100を備えている例を示しているので、この場合、4か所に持ち運ばれる。そして、3Dレーザスキャナ3は、持ち運ばれた先の各測定位置で、上述の取付具2を用いて欄干111から吊り下げられる。
【0031】
3Dレーザスキャナ3は、持ち運ばれた先の各測定位置で走査を実行する。3Dレーザスキャナ3は、図3(b)に示すように、各橋脚100の間の根固工9が敷設された部分と、各橋脚100の各対向面102に設けられた各ターゲット1が設置された部分とを含む区域を走査して、3次元の座標値を持つ点群データを作成する。この点群データが示す点群の画像の一例を示すと、図3(c)のような画像となる。
【0032】
3)モデル作成装置
モデル作成装置は、コンピュータ装置である。図4に示すように、モデル作成装置4は、本体5と、モニタ40と、キーボード41と、マウス42とを備えている。本体5は、主に、中央制御部50と、主記憶部54と、インターフェイス部58とを備えている。中央制御部50は、モデル作成装置4全体を制御する機能部である。中央制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53を備えている。主記憶部54は、中央制御部50が実行する制御において、記憶が必要な情報を記憶する機能部である。主記憶部54には、3Dレーザスキャナ3から入力した点群データを記憶する点群データ記憶領域55と、後述するモデル作成処理で作成されたポリゴンモデルを記憶するポリゴンモデル記憶領域56と、各ターゲット1の地理上の絶対位置情報(緯度経度情報)及び各ターゲット1を識別するための識別情報とを関連づけて記憶する特定情報記憶領域57とが少なくとも設定されている。インターフェイス部58は、3Dレーザスキャナ3や、モニタ40、キーボード41、マウス42と、中央制御部50や主記憶部54との間の通信を取り持つ機能部である。
【0033】
中央制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53が協働してモデル作成装置4全体の制御を実行する。ROM52には、各種制御の処理に必要な複数のプログラムが記憶されており、RAM53には各プログラムの実行に当たって必要な情報が記憶される。また、RAM53に記憶された情報は不要になったら消去される。CPU51は、ROM52に記憶された各種のプログラムを実行し、その実行にあたりRAM53との間で必要な情報を通信しながら、モデル作成装置4全体の制御を実行する。
【0034】
次に、モデル作成装置4が実行する各種処理について説明する。
モデル作成装置4が実行する処理は、CPU51が主導して行う処理であり、モデル作成装置4は、主に以下の第1処理〜第3処理を実行する。
【0035】
第1処理は、3Dレーザスキャナ3から点群データを取り込むときに行われる取込関連処理である。第2処理は、第1処理で取り込んだ点群データに基づいてポリゴンモデルを作成するときに行われるモデル関連処理である。第3処理は、第2処理で作成したポリゴンモデルを用いて、根固工の健全度を評価する評価関連処理である。
【0036】
以下、これらの各処理を順に説明する。
A)第1処理(取込関連処理)
第1処理では、図5(a)に示すように、主に2つの処理が実行される。1つ目の処理は、取込処理およびファイル形式変換処理である(S10)。2つ目の処理は、ターゲット抽出処理およびターゲット登録処理である(S12)。
【0037】
1つ目の処理(S10)で実行される取込処理は、3Dレーザスキャナ3をインターフェイス部58に接続し、操作者がマウス42を操作して中央制御部50に取込処理の実行を指示すると、実行される。図3(a)に示すように、3Dレーザスキャナ3は、持ち運ばれて吊り下げられた各吊下位置で走査を実行して、各走査の結果得られた複数の点群データを記憶する。図5(a)に示すように、中央制御部50は、取込処理の実行が指示されると、3Dレーザスキャナ3に記憶された複数の点群データを、インターフェイス部58を介してRAM53に送り、RAM53に記憶する制御を実行する。
【0038】
1つ目の処理(S10)で実行されるファイル形式変換処理は、取込処理により、RAM53に記憶された各点群データのファイル形式を変換する処理である。RAM53に送られてきたばかりの各点群データは、3Dレーザスキャナ3で用いられる形式のデータである。そのため、ファイル形式変換処理では、RAM53に記憶された各点群データのファイル形式を、モデル作成装置4で処理可能なファイル形式に変換する処理が実行される。
【0039】
2つ目の処理(S12)であるターゲット抽出処理は、各点群データが示す点群の中での各ターゲット1を示す点群の位置である特定位置を特定するための処理である。ターゲット1は、前述したように、30m先の物体に対して約2cmピッチでレーザを当てて走査する3Dレーザスキャナ3に合わせた大きさに形成されている。そのため、各点群データが示す各点群の中には、図5(b)に示すように、その大きさに対応した各ターゲット1を示す所定の大きさの各点群が存在する。また、各ターゲット1には、ターゲット用の模様が施されている。このターゲット抽出処理では、その模様を持つ、各ターゲット1を示す所定の大きさの各点群を、全体の各点群の中から抽出し、全体の各点群の中で、各ターゲット1を示す各点群の位置である各特定位置を特定する。そして、各特定位置を特定したら、これら特定位置を示す情報である各特定位置情報を、これら各特定位置を特定する対象となった各点群データに関連づける処理が実行される。
【0040】
ターゲット登録処理は、各特定位置情報に、各ターゲット1の絶対位置情報を関連づける処理である。ターゲット抽出処理により、各特定位置情報が対応する各点群データに関連づけられると、次のような指定が可能となる。すなわち、各点群データが示す各点群によって形成された画像の中で、各ターゲット1を示す各点群が位置する部分に、マウス42を操作してポインタを移動させ、マウス42をクリックすると、各ターゲット1を指定することが可能になる。そのためまず、各ターゲット1について、マウス42を使って各ターゲット1を指定する。すると、図5(b)に示すように、モニタ40上にウインドウが表示される。そして、そのウインドウ内の欄であって、ターゲット1を識別するための識別情報を入力する欄に、キーボード41を用いて識別情報を入力する。すると、その識別情報に対応するターゲット1の地理上の位置(絶対位置)を示す位置識別情報が特定情報記憶領域57から読み出されて、そのターゲット1の特定位置情報に位置識別情報が関連付けられる。この特定位置情報への位置識別情報の関連付けは、各点群データに含まれるすべてのターゲット1について実行される。そして、ここまでの処理が終了すると、RAM53に記憶された各点群データは、複数の特定情報、複数の位置識別情報とともに、点群データ記憶領域55に記憶される。
【0041】
B)第2処理(モデル関連作成処理)
第2処理では、図6(a)に示すように、主に4つの処理が実行される。1つ目の処理は、点群データ取込処理およびモデル作成条件設定処理である(S20)。2つ目の処理は、座標変換処理およびデータ重合処理である(S22)。3つ目の処理は、モデル作成範囲設定処理である(S24)。4つ目の処理は、モデル作成処理である(S26)。
【0042】
第2処理は、マウス42を用いて中央制御部50に対して第2処理の実行を指示すると開始される。第2処理が開始されると、図6(b)に示すように、モニタ40の画面左上に1〜4の数字が中央に示された四角形状のアイコンが4つ並んだ画面が表示される。以下で説明する各処理は、マウス42を操作して、いずれかのアイコンにポインタを重ね、重ねたときにマウス42のボタンを操作することで、いずれかのアイコンを指示する操作を行うごとに実行される。実行される処理は、アイコンが示す数字に対応する処理が実行される。
【0043】
1つ目の処理である点群データ取込処理およびモデル作成条件設定処理について説明する(S20)。これら処理は、1の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。
【0044】
点群データ取込処理は、点群データ記憶領域55に記憶された全ての点群データを読み込んで、RAM53に記憶させる処理である。モデル作成条件設定処理は、根固工が設置された区域のポリゴンモデルである区域ポリゴンモデルを作成するときの最大エッジ長及び最大角度を設定する処理である。
【0045】
このうち、モデル作成条件設定処理が実行されると、図6(c)に示すように、モニタ40上に区域ポリゴンモデルの作成条件を設定するためのウインドウが表示される。モデル作成装置4の操作者は、このウインドウが表示されたら、最大エッジ長および最大角度を入力する欄にキーボード41を用いてこれらを示す数字を入力する。最大エッジ長は、根固工が設置された区域の区域ポリゴンモデルを構成する各エッジの長さの最大値を規定するものである。最大角度は、各エッジがなす角度の最大値を規定するものである。最大エッジ長および最大角度は、RAM53に記憶される。
【0046】
ここでは、根固工が設置された区域内での水しぶきの分布密度が、所定の分布密度よりも低い場合(いわゆる平常時)、最大エッジ長として0.1、最大角度として75度を設定する。また、根固工が設置された区域内での水しぶきの分布密度が、所定の分布密度よりも高い場合(いわゆる卓越時)、最大エッジ長として0.05、最大角度として50度を設定する。
【0047】
ここでは、根固工が設置された区域内での水しぶきの分布密度が、所定の分布密度よりも低い場合(いわゆる平常時)、図7(a)に示すように、根固工を設置した区域の点群データが示す点群の中で、根固ブロックを示していると想定される点を結ぶ数が多くなるようにパラメータ(最大エッジ長や最大角度)の値を調整している。
【0048】
一方、根固工が設置された区域内での水しぶきの分布密度が、所定の分布密度よりも高い場合(いわゆる卓越時)、図7(b)に示すように、根固工を設置した区域の点群データが示す点群の中で、根固ブロックを示していると想定される点を結ぶ数が少なくなるようにパラメータの値を調整している。
【0049】
なお、所定の分布密度は、例えば、根固工が設置された部分の川の水量について、年
間、月間、週間等の所定期間の統計を取った場合に、平均的な水量の水が根固工を流れたときに発生する水しぶきの分布密度としてもよい。また、この所定の分布密度は、他の基準で設定してもよい。
【0050】
2つ目の処理である座標変換処理およびデータ重合処理について説明する(S22)。この処理は、2の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。
座標変換処理は、点群データ記憶領域55から読み込んだ全ての点群データについて、モデル作成装置4で処理可能な点群データに変換する処理である。その変換方法の説明については省略する。
【0051】
データ重合処理は、点群データ記憶領域55から読み込んだ全ての点群データを重ね合わせる処理である。本実施形態では、4カ所で点群データを作成しているので、これらすべてを重ね合わせる。この重ね合わせの際に基準になるのは、各点群データに関連付けられた各ターゲット1の特定情報、位置識別情報である。データ重合処理では、全ての点群データが1つにまとまった点群データが形成される。そして、1つにまとまった点群の点群データ(以下「集約点群データ」とよぶ)はRAM53に記憶される。
【0052】
3つ目の処理であるモデル作成範囲設定処理について説明する(S24)。この処理は、3の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。
モデル作成範囲設定処理は、モニタ40に表示された点群データに基づく画像からポリゴンモデルを作成する範囲を指定する処理である。3の数字のアイコンがマウス42で指定されると、RAM53から集約点群データが読み出されて、集約点群データに基づく点群の画像がモニタ40に表示される。このとき表示される画像は、根固工9が設置された区域よりも広い範囲の画像が表示されるので、操作者は、画面を見て根固工9が設置された区域をマウス等を用いて指定する。すると、その指定された範囲の集約点群データがRAM53に記憶される。このモデル作成範囲設定処理が実行された後にRAM53に記憶される点群データを、処理後点群データと呼ぶ。
【0053】
4つ目の処理であるモデル作成処理について説明する(S26)。この処理は、4の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。
モデル作成処理は、モデル作成条件設定処理で設定された最大エッジ長および最大角度に基づいて、モデル作成範囲設定処理でRAM53に記憶された処理後点群データからポリゴンモデルを作成する処理が実行される。このポリゴンモデルは、以下、区域ポリゴンモデルとよぶ。ポリゴンモデルを作成する処理は、一般に用いられる手法により行われる。作成された区域ポリゴンモデルは、作成された時の日時情報が付加され、ポリゴンモデル記憶領域56に記憶される。
【0054】
C)第3処理(評価関連処理)
第3処理では、図8(a)に示すように、主に5つの処理が実行される。1つ目の処理は、2時期比較処理である(S30)。2つ目の処理は、差分解析処理である(S32)。3つ目の処理は、断面作成処理である(S34)。4つ目の処理は、レポート出力処理である(S36)。5つ目の処理は断面図エクスポート処理である(S38)。
【0055】
第3処理は、マウス42を用いて中央制御部50に対して実行を指示すると開始される。第3処理が開始されると、図8(b)に示すように、画面左上に0〜5の数字が中央に示された四角形状のアイコンが6つ並んで示される。以下で説明する各処理は、マウス42を操作して、いずれかのアイコンにポインタを重ね、重ねたときにマウス42のボタンを操作することで、マウス42でいずれかのアイコンを指示するごとに実行される。実行される処理は、アイコンが示す数字に対応する処理が実行される。
【0056】
なお、0のアイコンは初期化を示すアイコンなので、このアイコンに関係する処理の説明は省略する。
1つ目の処理は2時期比較処理である(S30)。この処理は、1の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。
【0057】
この2時期比較処理は、2時期の区域ポリゴンモデルを比較する処理である。1の数字のアイコンが指定されると、ポリゴンモデル記憶領域56から、日時情報に基づいて、最新の日付の区域ポリゴンモデルと、その次に新しい日付の区域ポリゴンモデルがRAM53に読み出されて記憶される。そして、それぞれの区域ポリゴンモデルは、図9(a)に示すように、色づけされ、各ターゲット1を基準に重ねられて、モニタ40上に表示される。図9(a)では、最新の区域ポリゴンモデルが青、その次に新しい区域ポリゴンモデルが赤で示されるので、各区域ポリゴンモデルが重なった部分は紫で表される。そのため、図9(a)に示すように、根固ブロックが移動した部分が青く表示されるので、根固ブロックの移動の具合がわかりやすく表示される。この一つ目の処理は、50cm以上移動した根固ブロックが存在するかどうかを判断するのに適している。2時期比較処理では、モニタ40上に画像を表示しているときに、画像上の青色部分の表出状態から、50cm以上移動した部分を特定する処理が実行される。そして、その特定によって得られた第1特定情報はRAM53に記憶される。第1特定情報は、中央制御装置50が50cm以上のずれがある部分を探索し、その探索結果を第1特定情報としてもよいし、作業者が、50cm以上のずれがある部分を指定し、その指定結果を第1情報としてもよい。
【0058】
2つ目の処理は差分解析処理である(S32)。この処理は、2の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。
この差分解析処理も、2時期のポリゴンモデルを比較する処理である。2の数字のアイコンが指定されると、RAM53に記憶された2つの区域ポリゴンモデル(最新の日付の区域ポリゴンモデルと、その次に新しい日付の区域ポリゴンモデル)に基づいて、差分解析がなされる。2時期比較処理では、2つの区域ポリゴンモデルを重ねて青色が表示された部分の表出状態を見ていたが、差分解析処理では、2つの区域ポリゴンモデルが重なっていない部分を抽出して、その抽出された部分の大きさの度合いによって色づけをする処理が実行される。そのため、この処理が終了すると、処理結果がモニタ40に表示されるが、その表示された画像としては、図9(b)に示すように、2つのポリゴンモデルが重なっていない部分が様々に色づけた画像が表示される。そのため、図9(b)に示す画像を見ると、根固ブロックの移動具合が細々した部分まで分かる。ただし一定以上の大きさの移動があるとすべて同じ色で表示されるので、この差分処理は、50cm未満移動した部分を特定するのに適している。差分解析処理では、モニタ40上に画像を表示しているときに、25cm以上50cm未満の移動した部分を特定する処理が実行される。そして、その特定によって得られた第2特定情報はRAM53に記憶される。第2特定情報は、中央制御装置50が25cm以上50cm未満のずれがある部分を探索し、その探索結果を第2特定情報としてもよいし、作業者が、25cm以上50cm未満のずれがある部分を指定し、その指定結果を第2情報としてもよい。
【0059】
3つ目の処理は、断面作成処理である(S34)。この処理は、3の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。なお、この処理については説明を割愛する。
4つ目の処理は、レポート作成処理である(S36)。この処理は、4の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。
【0060】
4の数字のアイコンが指定されると、RAM53に記憶された第1特定情報および第2特定情報を読み出すとともに、RAM53に記憶された2つの区域ポリゴンモデル(最新の日付の区域ポリゴンモデルと、その次に新しい日付の区域ポリゴンモデル)を読み出す処理が実行される。そして、これら区域ポリゴンモデルを重ねて、その上から平面上のメッシュを掛け、そのメッシュの目であって、第1特定情報と第2特定情報が示す位置にた対応する目を、図9(c)に示すように、異なる色で色分けした画像をモニタ40に表示する処理が実行される。また、このモニタ40に表示された画像は、プリントアウトされる。
【0061】
5つ目の処理は、断面図作成処理である(S38)。この処理は、5の数字のアイコンがマウス42で指定されると、実行される。なお、この処理については説明を割愛する。
以上説明したように、本実施形態のモデル作成装置4は、アイコンをマウス42を操作して指定するだけの非常に簡単な操作で、一連の処理をすべて実行できる。
【0062】
以上説明した根固工評価システムを構成するモデル作成装置4は次のような特徴的な作用効果を奏する。
本実施形態では、根固ブロックが設置された区域内での水しぶきの分布密度が、所定の分布密度よりも低い場合、図7(a)に示すように、点群データが示す点群の中で、根固ブロックを示していると想定される点を結ぶ数が多くなるようにパラメータの値を調整している(S20)。一方、根固工が設置された区域内での水しぶきの分布密度が、所定の分布密度よりも高い場合、図7(b)に示すように、点群データが示す点群の中で、根固ブロックを示していると想定される点を結ぶ数が少なくなるようにパラメータの値を調整している(S20)。
【0063】
つまり、本実施形態では、水しぶきの分布密度をみて、根固ブロックのポリゴンモデルの大きさが大きくなりすぎたり、小さくなりすぎることを抑制しているのである。
そのため、本実施形態のモデル作成装置4を用いると、異なる時期に作成した区域ポリゴンモデルの水しぶきの分布密度が違っても、各区域ポリゴンモデルの根固ブロックの大きさが調整されるので、根固工が設置された区域内で根固ブロックが移動する程度の評価、いわゆる根固工の健全度を評価することができる。
【0064】
ところで、区域ポリゴンモデルを比較する方法として、本実施形態では、作成した区域ポリゴンモデルと、過去の根固工が設置された区域の区域ポリゴンモデルとを重ねて、これらを重ねた区域ポリゴンモデルの上にさらに平面形状のメッシュを掛けている。そして、これら異なる時期に作成した区域ポリゴンモデルを比較して、メッシュを構成する目のうち、移動した距離が大きい根固ブロックのポリゴンモデルを囲う目と、移動した距離が小さい根固ブロックのポリゴンモデルを囲う目とを異なる色で色づけして表示している(S36)。
【0065】
このように、2時期の区域ポリゴンモデルを重ねてメッシュをかけて、根固ブロックの移動の程度の大きい部分と小さい部分とにかかる目を異なる色で表示すれば、根固工が設置された区域の健全度が一目で分かるので、根固工が設置された区域の健全性の評価を簡単に行うことができる。
【0066】
なお、最大角度は、2つのエッジがなす角度であって、2つのエッジの外角を指す。
(本発明との対応関係)
本実施形態の根固ブロックは、本発明の評価対象物に相当する。本実施形態の水しぶきは、本発明の水しぶきに相当する。本実施形態の根固工9が設置された区域が、本発明の評価区域に相当する。
【0067】
本実施形態の3Dレーザスキャナ3は、本発明の3次元スキャナに相当する。
本実施形態において、橋桁110の各所で吊り下げられた3Dレーザスキャナ3を動かして、根固工9が設置された区域を走査して点群データを作成する工程が、本発明の点群データ作成工程に相当する。
【0068】
本実施形態の第2処理のS20の処理が、本発明の設定部に相当する。
本実施形態の第2処理のS26の処理が、本発明のモデル作成工程およびモデル作成部に相当する。
【0069】
本実施形態のポリゴンモデル記憶領域56は、本発明の記憶部に相当する。
本実施形態の第3処理のS36の処理が、本発明の色付表示部に相当する。
[他の実施形態]
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲に記載された発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
【0070】
(1)上記実施形態では、橋脚100(図1参照)にターゲット1を取り付けた例について説明したが、ターゲット1は、橋台に取り付けてもよい。また、上記実施形態では、橋脚100にターゲット1を2つずつ設置した例を説明したが、3つ以上設置してもよい。また、ターゲット1が2つ設置された橋脚100に対向する橋脚100の対向面102には、ターゲット1は1つだけ設置するようにしてもよい。3Dレーザスキャナ3は、少なくとも3点のターゲットを1回の走査で走査できれば、走査点群が示す点群の向きを特定できるからである。
【0071】
(2)上記実施形態では、3Dレーザスキャナを用いたが、走査した区域の3次元の座標値を持つ点群データを作成可能なスキャナであればどのようなものでもよい。
(3)上記実施形態では、パラメータとして、最大エッジ長、および最大角度を用いたが、いずれか一方を用いてもよい。また、パラメータはこれらに限られるものではないが、これらを挙げたのは、ポリゴンモデルを作成するときの代表的なパラメータだからである。
【0072】
(4)本発明の各構成要素は概念的なものであり、上記実施形態に限定されない。例えば、1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…ターゲット、2…取付具、3…レーザスキャナ、4…モデル作成装置、5…本体、9…根固工、20…クッション部、21…引掛部、40…モニタ、41…キーボード、42…マウス、50…中央制御部、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…主記憶部、55…点群データ記憶領域、56…ポリゴンモデル記憶領域、57…特定情報記憶領域、58…インターフェイス部、100…橋脚、101…張出部、102…対向面、110…橋桁、111…欄干。
図1
図2
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図9